説明

第2の薬剤との組み合わせにおいてリンホトキシンベータ受容体結合分子を使用する複合療法

本発明は1個以上の他の生物学的薬剤と組み合わせたリンホトキシンベータ受容体シグナリングを活性化する組成物を包含する複合療法、並びに、治療方法を特徴とする。本発明は部分的には癌の治療のための方法及び製品を提供する。より詳細には、リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子、例えば抗LT−β−R抗体及びリンホトキシン受容体結合分子ではない少なくとも1つの別の薬剤(例えば血管形成を抑制する薬剤、又は生物学的薬剤)の使用は、何れかの薬剤単独よりも、特定の腫瘍、例えば固形腫瘍の大きさを低減する場合により効果的であることがわかった。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本願は、2006年6月15日に出願された「Combination Therapy Employing Lymphotoxin Beta Receptor Binding Molecules in Combination With Second Agents」という発明の名称の、米国仮特許出願第60/814,357号の利益を請求する。上記の仮特許出願の全内容が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の背景)
癌は合衆国においてほぼ5人に1人が罹患している現在世界中で最も蔓延している健康問題の1つである。多くの分子が抗体系療法のための潜在的標的として腫瘍細胞上で発見されている。
【0003】
例えばリンホトキシンベータ受容体(本明細書においては、LT−β−Rと称する)は免疫系の発達において、そして濾胞樹状細胞を包含する免疫系の多くの細胞及び多くの支質細胞型の機能的維持において、十分解明された役割を有する腫瘍壊死因子ファミリーのメンバーである(Crowe等(1994)Science264:707;Browning等(1993)72:847;Browning等(1995)154:33;Matsumoto等(1997)Immunol.Rev.156:137)。LT−β−Rの活性化はインビボで特定の癌細胞系統のアポトーシス死を誘導することが分かっている(PCT/US96/01386)。特定のヒト化抗LT−β−R抗体のようなLT−β−R活性化剤の抗腫瘍作用を増強する方法は対象(例えばヒト)における新生物の進行、重症度又は影響を治療又は低減する場合に有用であると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は部分的には癌の治療のための方法及び製品を提供する。より詳細には、リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子、例えば抗LT−β−R抗体及びリンホトキシン受容体結合分子ではない少なくとも1つの別の薬剤(例えば血管形成を抑制する薬剤、又は生物学的薬剤)の使用は、何れかの薬剤単独よりも、特定の腫瘍、例えば固形腫瘍の大きさを低減する場合により効果的であることがわかった。本明細書に記載する通り、本発明の複合療法による樹立された固形腫瘍の治療は何れかの薬剤単独による腫瘍野治療と比較して、有意の腫瘍生育抑制(%抑制)をもたらす。更に又、抗体と第2の薬剤との組み合わせが固形腫瘍の脈管形成を低減及び/又は固形腫瘍の透過性を増大する場合により効果的であることがわかった。
【0005】
更に又、本発明の複合療法は別の利益も有する。本発明の1つの実施形態において、本発明の複合療法は向上した安全性のプロファイルを有する。別の実施形態においては、本発明の複合療法は、複合療法の成分の何れか又は両方を、それらが単独で使用された場合よりも低い用量において使用可能とする。
【0006】
従って、1つの態様において、本明細書は約2mm×2mm超の大きさの腫瘍を有する対象における腫瘍の大きさを低減するための方法であって、腫瘍の大きさが低減されるように抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子及び少なくとも1つの別の薬剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0007】
本発明は又、固形腫瘍を有する対象における固形腫瘍の脈管形成を低減するための方法であって、固形腫瘍の脈管形成が低減されるように抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子及び少なくとも1つの別の薬剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0008】
本発明は又、固形腫瘍を有する対象における固形腫瘍の透過性を増大させるための方法であって、抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)抗体に対する固形腫瘍の透過性が増大するように抗LT−β−R結合分子及び少なくとも1つの別の薬剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0009】
本発明は又、抗LT−β−R結合分子で腫瘍細胞を感作すること、及び化学療法剤及び少なくとも1つの別の薬剤を投与することを含む癌の治療方法を包含する。
【0010】
その少なくとも1つの別の薬剤は抗LT−β−R結合分子の投与の前に対象に投与することができ、或いは、その少なくとも1つの別の薬剤は抗LT−β−R結合分子の投与と同時に対象に投与することができる。
【0011】
1つの実施形態において、その少なくとも1つの別の薬剤は血管形成を抑制する。1つの実施形態において、その少なくとも1つの別の薬剤は生物学的薬剤である。1つの実施形態において、血管形成を抑制する生物学的薬剤は抗体又はその抗原結合フラグメントである。別の実施形態において、生物学的薬剤は抗VEGF抗体である。1つの実施形態において、抗VEGF抗体はベバシツマブである。別の実施形態においては、生物学的薬剤は抗EGFR抗体である。1つの実施形態において、抗EGFR抗体はセツキシマブである。
【0012】
更に別の実施形態においては、生物学的薬剤はリツキシマブ、トラスツズマブ、トシツモマブ、イブリツモマブ、アレルムツズマブ、エプラツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、オブリメルセン及びパニツムマブよりなる群から選択される。
【0013】
1つの実施形態において、生物学的薬剤はインターフェロン又はインターロイキンである。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、LT−β−R結合分子はヒト化結合分子である。本発明の1つの実施形態において、ヒト化結合分子はヒト化CBE11である。
【0015】
本発明の別の実施形態において、抗LT−β−R結合分子は多価抗LT−β−R結合分子である。1つの実施形態において、多価抗LT−β−R結合分子はCBE11抗体誘導された抗原結合部位少なくとも1つを含む。
【0016】
更に別の実施形態において、抗LT−β−R結合分子は化学療法剤又は免疫毒素にコンジュゲートされる。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、腫瘍は癌腫、例えば腺癌又は扁平上皮癌腫である。
【0018】
別の実施形態において、腫瘍は結腸腫瘍、子宮頚部腫瘍、胃の腫瘍、又は膵臓の腫瘍よりなる群から選択される。
【0019】
更に別の実施形態においては、腫瘍は病期I、病期II、病期III、病期IVよりなる群から選択される病期にある。
【0020】
1つの実施形態において、腫瘍は少なくとも約1mm×1mmである。別の実施形態において、腫瘍は少なくとも約2mm×2mmである。更に別の実施形態において、腫瘍は少なくとも約1cmの体積を有する。
【0021】
1つの実施形態において、腫瘍は転移性である。
【0022】
1つの実施形態において、本発明の方法は更に対象に化学療法剤を投与することを含む。1つの実施形態において、化学療法剤はゲムシタビン、アドリアマイシ、カンプトサール、カルボプラチン、シスプラチン、及びタキソールよりなる群から選択される。
【0023】
本発明は約2mm×2mm超の大きさの腫瘍を有する対象における腫瘍の大きさを低減するための方法であって、腫瘍の大きさが低減されるように抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子及び血管形成を抑制する少なくとも1つの別の薬剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0024】
本発明は又、固形腫瘍を有する対象における固形腫瘍の脈管形成を低減するための方法であって、固形腫瘍の脈管形成が低減されるように抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子及び血管形成を抑制する少なくとも1つの別の薬剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0025】
本発明は又、固形腫瘍を有する対象における固形腫瘍の透過性を増大するための方法であって、抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子に対する固形腫瘍の透過性が増大されるように抗LT−β−R結合分子及び血管形成を抑制する少なくとも1つの別の薬剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0026】
血管形成を抑制する少なくとも1つの別の薬剤は抗LT−β−R結合分子の投与の前に対象に投与することができ、或いは、血管形成を抑制する少なくとも1つの別の薬剤は抗LT−β−R結合分子と同時に対象に投与することができる。
【0027】
1つの実施形態において、血管形成を抑制する少なくとも1つの別の薬剤は生物学的薬剤である。1つの実施形態において、血管形成を抑制する生物学的薬剤はゲフィチニブ、イマチニブメシレート、及びボルテゾミブよりなる群から選択される。
【0028】
本発明の1つの実施形態においてLT−β−R結合分子はヒト化結合分子である。本発明の1つの実施形態において、ヒト化結合分子はヒト化CBE11である。本発明の別の実施形態において、抗LT−β−R結合分子は多価抗LT−β−R結合分子である。1つの実施形態において、多価抗LT−β−R結合分子はCBE11抗体から誘導された抗原結合部位少なくとも1つを含む。
【0029】
更に別の実施形態において、抗LT−β−R結合分子は化学療法剤又は免疫毒素にコンジュゲートされる。
【0030】
本発明の1つの実施形態において、腫瘍は癌腫、例えば、腺癌又は扁平上皮癌腫である。
【0031】
本発明の別の実施形態において、腫瘍は結腸腫瘍、子宮頚部腫瘍、胃の腫瘍、又は膵臓腫瘍よりなる群から選択される。
【0032】
更に別の実施形態においては、腫瘍は病期I、病期II、病期III、病期IVよりなる群から選択される病期にある。
【0033】
1つの実施形態において、腫瘍は少なくとも約1mm×1mmである。別の実施形態において、腫瘍は少なくとも約2mm×2mmである。更に別の実施形態において、腫瘍は少なくとも約1cmの体積を有する。
【0034】
1つの実施形態において、腫瘍は転移性である。
【0035】
1つの実施形態において、本発明の方法は更に対象に化学療法剤を投与することを含む。1つの実施形態において、化学療法剤はゲムシタビン、アドリアマイシ、カンプトサール、カルボプラチン、シスプラチン、及びタキソールよりなる群から選択される。
【0036】
1つの実施形態において、抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子又はその抗原結合フラグメント及び少なくとも1つの血管形成を抑制する薬剤の投与は約58%以上の%腫瘍抑制をもたらす。
【0037】
本発明は又、約2mm×2mm超の大きさの結腸腫瘍を有する対象における腫瘍の大きさを低減するための方法であって、腫瘍の大きさが低減されるようにヒト化CBE11抗体(huCBE11)及びベバシツマブを対象に投与することを含む方法を提供する。
【0038】
本発明は又、約2mm×2mm超の大きさの結腸腫瘍を有する対象における腫瘍の大きさを低減するための方法であって、腫瘍の大きさが低減されるように抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子及び少なくとも1つのEGFR抑制剤を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0039】
1つの実施形態において、EGFR抑制剤はセツキシマブ又はエルロチニブである。
【0040】
1つの実施形態において、抗LT−β−R結合分子はhuCBE11である。
【0041】
本発明は更に、パッケージング材料、抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子、及び抗LT−β−R結合分子を少なくとも1つの別の薬剤と共に投与できることを示すパッケージング材料内に含有されるラベル又はパッケージインサートを含む製品を提供する。
【0042】
本発明は更に、パッケージング材料、第2の薬剤、及び少なくとも1つの別の薬剤を抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子と共に投与できることを示すパッケージング材料内に含有されるラベル又はパッケージインサートを含む製品を提供する。
【0043】
1つの実施形態において、製品における少なくとも1つの別の薬剤は血管形成を抑制する薬剤である。1つの実施形態において、製品における薬剤は生物学的薬剤である。1つの実施形態において、製品における生物学的薬剤はベバシツマブ又はセツキシマブである。
【0044】
1つの実施形態において、製品における抗LT−β−R結合分子はhuCBE11である。
【0045】
本発明は更に、パッケージング材料、huCBE11抗体、及びhuCBE11抗体をベバシツマブ又はセツキシマブと共に投与できることを示すパッケージング材料内に含有されるラベル又はパッケージインサートを含む製品を提供する。
【0046】
本発明は更に、パッケージング材料、ベバシツマブ又はセツキシマブ、及び生物学的薬剤をhuCBE11抗体と共に投与できることを示すパッケージング材料内に含有されるラベル又はパッケージインサートを含む製品を提供する。
【0047】
本発明の他の特徴及び利点は以下の詳細な説明から、及び特許請求の範囲から明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対する0.2mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、及び20mg/kgにおけるhuCBE11の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約65mgになった時点で開始した。初回用量は矢印で示す。
【図2】図2はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対する1mg/kg、2mg/kg、及び4mg/kgのベバシツマブ(Avastin)の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約75mgになった時点で開始した。初回用量は矢印で示す。
【図3】図3はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対する1mg/kg、2mg/kg、及び4mg/kgのベバシツマブ(Avastin)の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約100mgになった時点で開始した。初回用量は矢印で示す。
【図4】図4はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対するhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約65mgになった時点で開始した。各薬剤の初回用量は矢印で示す。
【図5】図5はベヒクル対照と比較した場合の試験の第51日におけるKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対するhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の作用を示す散布図である。投与は異種移植片腫瘍が約65mgになった時点で開始した。
【図6】図6はKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおけるhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の腫瘍生育抑制(%T/C)の評価を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約65mgになった時点で開始した。
【図7】図7はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対するhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約200mgになった時点で開始した。各薬剤の初回用量は矢印で示す。
【図8】図8はベヒクル対照と比較した場合の試験の第57日におけるKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対するhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の作用を示す散布図である。投与は異種移植片腫瘍が約200mgになった時点で開始した。
【図9】図9はKM−20L2ヒト結腸腺癌モデルにおけるhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の腫瘍生育抑制(%T/C)の評価を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約200mgになった時点で開始した。
【図10】図10はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したWiDr腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対する0.2mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、及び20mg/kgにおけるhuCBE11の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約65mgになった時点で開始した。初回用量は矢印で示す。
【図11】図11はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したWiDr腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対する0.25mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、及び8mg/kgのベバシツマブ(Avastin)の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約100mgになった時点で開始した。初回用量は矢印で示す。
【図12】図12はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したWiDr腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対するhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約65mgになった時点で開始した。各薬剤の初回用量は矢印で示す。
【図13】図13はベヒクル対照と比較した場合の試験の第54日におけるWiDr腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対するhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の作用を示す散布図である。投与は異種移植片腫瘍が約65mgになった時点で開始した。
【図14】図14はWiDr腺癌モデルにおけるhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の腫瘍生育抑制(%T/C)の評価を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約65mgになった時点で開始した。
【図15】図15はベヒクル対照と比較した場合の投与過程を通したWiDr腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対するhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の作用を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約200mgになった時点で開始した。各薬剤の初回用量は矢印で示す。
【図16】図16はベヒクル対照と比較した場合の試験の第54日におけるWiDr腺癌モデルにおける腫瘍重量(長さ×幅/2)に対するhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の作用を示す散布図である。投与は異種移植片腫瘍が約200mgになった時点で開始した。
【図17】図17はWiDr腺癌モデルにおけるhuCBE11と組み合わせたベバシツマブ(Avastin)の腫瘍生育抑制(%T/C)の評価を示すグラフである。投与は異種移植片腫瘍が約200mgになった時点で開始した。
【発明を実施するための形態】
【0049】
1.定義
都合上、本発明を更に説明する前に、明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において使用する特定の用語をここで定義する。
【0050】
単数表記「A」「An」及び「The」は文脈により明確に別様に記載されない限り複数に言及する場合を包含する。
【0051】
「投与する」という用語は対象の系内へ、又は対象中又は対象上の特定の領域への、医薬組成物又は治療薬の送達の何れかの方法を包含する。「全身投与」、「全身に投与する」、「末梢投与」、及び「末梢に投与する」という表現は、本明細書においては、それが対象の系内に進入し、そしてそれにより代謝及び他の同様のプロセスに付されるような、中枢神経系に直接行う以外の化合物、薬物又は他の物質の投与、例えば皮下投与を意味する。「非経口投与」及び「非経口に投与する」とは通常は注射による経腸的及び局所的な投与以外の投与の様式を意味し、そして限定しないが静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入を包含する。
【0052】
「リンホトキシンβ受容体」(「LT−β−R」)という用語は生得及び適応型の免疫応答の機能の広範な範囲を媒介する分子の腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーの当該技術で知られたメンバーを指す(例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれるGommerman及びBrowning(2003)Nat Rev 3:642参照)。
【0053】
「結合分子」という用語は標的分子(例えば抗原)に特異的に結合する結合部位を含む少なくとも1つの結合ドメインを含む分子を指す。例えば、1つの実施形態において、本発明の方法における使用のための結合分子は免疫グロブリン抗原結合部位又は受容体結合を担うリガンド分子の部分を含む。
【0054】
1つの実施形態において、結合分子は結合部位少なくとも2つを含む。1つの実施形態において、結合分子は結合部位2つを含む。1つの実施形態において、結合分子は結合部位3つを含む。別の実施形態においては、結合分子は結合部位4つを含む。
【0055】
「LT−β−R結合分子」という用語はリンホトキシンβ受容体(LT−β−R)結合分位少なくとも1つを含む分子を指す。本発明の方法及び製品において使用できるLT−β−R結合分子の例は限定しないが、各々が参照により全体が本明細書に組み込まれるWO96/22788、WO02/30986、及びWO04/002431に記載されている結合分子を包含する。
【0056】
1つの実施形態において、本発明の結合分子は「抗体」又は「免疫グロブリン」の分子、例えば天然に存在する抗体又は免疫グロブリンの分子であるか、又は抗体分子と同様の態様において抗原に結合する遺伝子操作された抗体分子である。本明細書においては、「免疫グロブリン」という用語は自身が何れかの該当する特異的な免疫反応性を保有するか否かにかかわらず、2つの重鎖および2つの軽鎖の組み合わせを有するポリペプチドを包含する。「抗体」とは、抗原に対する有意な知られた特異的な免疫反応性の活性を有するそのような組立物を指す。抗体及び免疫グロブリンは軽鎖及び重鎖を含み、その間に鎖間共有結合連結部を有する場合と有さない場合がある。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリンの構造は相対的に十分理解されている。
【0057】
包括的な用語である「免疫グロブリン」は生化学的に区別できる抗体の5種類の異なるクラスを含む。抗体の全5クラスは明確に本発明の範囲に包含され、以下の考察は一般的に免疫グロブリン分子のIgGクラスを意図したものとなる。IgGに関しては、免疫グロブリンは分子量約23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチド鎖及び分子量約53,000〜70,000の2つの同一の重鎖を含む。4つの鎖は「Y字」の配置においてジスルフィド結合により連結され、ここで、「Y字」の開口部を起点として可変領域を通じて継続している重鎖を軽鎖が包囲する。
【0058】
軽鎖及び重鎖の両方が構造的及び機能的に相同の領域に分割される。「定常」及び「可変」という用語は機能的に使用される。この点に関し、当然ながら、軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の部分の両方の可変ドメインが抗原認識及び特異性を決定する。逆に、軽鎖(CL)及び重鎖(CH1、CH2又はCH3)の定常ドメインは重要な生物学的特性、例えば分泌、経胎盤運動性、Fc受容体結合、補体結合等を付与する。慣例として、定常領域ドメインのナンバリングは、それらが抗原結合部位又は抗体のアミノ末端から遠位となるに従って増大する。N末端は可変領域であり、そしてC末端は定常領域であり;CH3及びCLドメインは実際にはそれぞれ重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端を含む。
【0059】
軽鎖はカッパ又はラムダ(κ、λ)の何れかに分類される。各重鎖クラスはカッパ又はラムダ軽鎖の何れかと結合してよい。一般的に軽鎖及び重鎖は相互に共有結合し、そして2つの重鎖の「テール」部分は、ハイブリドーマ、B細胞又は遺伝子操作された宿主細胞の何れかにより免疫グロブリンが形成される場合に、共有結合ジスルフィド結合又は非共有結合的連結により相互に結合する。重鎖において、アミノ酸配列はY字配置のフォーク型末端におけるN末端から、各鎖の底部におけるC末端まで伸長している。当業者に知られる通り重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)及びそれらのうちの幾つかのサブクラス(例えばγ1〜γ4)として分類される。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG又はIgEと決定するものはこの鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgA等もまた十分特性化されており、そして、機能的特殊性を付与するものとして知られている。これらのクラス及びアイソタイプの各々の修飾された型は本明細書の開示内容を鑑みれば当業者が容易に判別できるものであり、従って本発明の範囲内である。
【0060】
可変領域は抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識して特異的に結合できるようにする。即ち抗体のVドメイン及びVドメインは組み合わせられて3次元の抗原結合部位を定義する可変領域を形成する。この第4型の抗体構造はY字の各アーム部の末端に存在する抗原結合部位を形成する。より詳細には、抗原結合部位はV及びV鎖の各々の上にある3つの相補性決定領域(CDR)により定義される。
【0061】
「抗体」という用語は本明細書においては、例えば何れかのアイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgE等)の全抗体を包含し、そしてその抗原結合フラグメントを包含する。例示的な抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、及び多価抗体を包含する。抗体は従来の手法を用いてフラグメント化してよい。即ち、抗体という用語は特定の抗原に能動的に結合することができる抗体分子の蛋白質分解的に切断された、又は組み換えにより製造された部分のセグメントを包含する。蛋白質分解性及び/又は組み換えの抗原結合フラグメントの非限定的な例は、ペプチドリンカーにより連結されたV[L]及び/又はV[H]ドメインを含有するFab、F(ab’)2、Fab’、Fv及び単鎖抗体(sFv)を包含する。
【0062】
本明細書においては、「ヒト化抗体」という用語は1つの種に由来する抗体の相補性決定領域(CDR)がヒトの可変領域のフレームワーク領域上にグラフトされている抗体又は抗体コンストラクトを指す。そのような抗体は抗原結合を最適化するためのフレームワーク突然変異、復帰突然変異、及び/又はCDR突然変異を包含してもしなくてもよい。
【0063】
「多重特異的」という用語は1つより多い標的抗原に対する特異性を有する結合分子を包含する。そのような分子は1つより多い結合部位を有しており、そしてその場合、各結合部位は異なる標的分子又は同じ標的上の異なる抗原部位に特異的に結合する(例えば免疫反応する)。
【0064】
1つの実施形態において、本発明の多重特異性結合分子は少なくとも2つの標的、例えば1つより多い標的分子、又は同じ標的分子上の1つより多いエピトープに対して結合特異性を有する二重特異性分子(例えば抗体、ミニボディー、ドメイン欠失抗体、又は融合蛋白質)である。
【0065】
1つの実施形態において、抗体の修飾された形態は当該分野で知られた手法を用いて全体の前駆体又は親抗体から作成できる。例示的な手法は後により詳細に考察する。特に好ましい実施形態においては、本発明のポリペプチドの可変及び定常領域の両方がヒト型である。1つの実施形態において、完全ヒト型の抗体は、当該分野で知られた手法を用いることにより作成できる。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト型抗体は、抗原攻撃に応答してそのような抗体を生産するように修飾されているが、自身の内因性の遺伝子座は不能化されているトランスジェニック動物に抗原を投与することにより製造できる。抗体を作成するために使用できる例示的な手法は米国特許第6,150,584;6,458,592;6,420,140に記載されている。他の手法は当業者の知る通りである。
【0066】
1つの実施形態において、本発明の結合分子は抗体分子、例えば未損傷の抗体分子、又は抗体分子のフラグメントを含む。別の実施形態においては、本発明の結合分子は修飾された、又は合成の抗体分子である。1つの実施形態において、本発明の結合分子はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は組み換え的に製造された抗体(に由来する抗原結合部位少なくとも1つ、由来するCDR少なくとも1つ)の全て又は一部分を含む。
【0067】
結合分子が抗体又は修飾された抗体である実施形態において抗原結合部位及び重鎖部分は同じ免疫グロブリン分子から誘導される必要はない。この点に関し、可変領域は、液性の応答を生じさせ、そして所望の抗原に対する免疫グロブリンを形成するように誘導することができる動物の何れかの型から誘導してよい。即ち、ポリペプチドの可変領域は、例えば哺乳類起源であってよく、例えばヒト、ネズミ、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル、マカクザル等)、オオカミ、ラクダ類(例えばラクダ、ラマ及び関連の種)型であってよい。別の実施形態においては、可変領域は起源においてcondricthoid(例えばサメ由来)であってよい。
【0068】
1つの実施形態において、本発明の結合分子は修飾された抗体である。本明細書においては、「修飾された抗体」という用語はそれらが天然には存在しないように改変されている抗体、例えば完全な重鎖を含まない抗体(例えばドメイン欠失抗体又はミニボディー)の合成形態;2つ以上の異なる抗原に対して、又は単一の抗原上の異なるエピトープに対して結合するように改変された抗体の多重特異性形態(例えば二重特異性、三重特異性等);scFv分子に連結された重鎖分子等を包含する。scFv分子は当該分野で知られており、例えば米国特許5,892,019に記載されている。更に又、「修飾された抗体」という用語は抗体の多価の形態(例えば3価、4価等、同じ抗原の3つ以上のコピーに結合する抗体)を包含する。
【0069】
1つの実施形態において、「修飾された抗体」という用語は、本発明によれば、免疫グロブリン、抗体、又はその免疫反応性フラグメント又は組み換え体であって、定常領域ドメインの1つ以上の少なくとも画分が欠失しているか、あるいは改変されていることにより、概ね同じ免疫原性の完全な未改変の抗体と比較して所望の生化学的特性、例えば非共有結合的に2量化する能力、腫瘍の部位に局在する増大した能力、又は低減した血清中半減期を与えるものを包含する。好ましい実施形態においては、本発明のポリペプチドは免疫グロブリン重鎖と同様のポリペプチド鎖を含むが重鎖ドメイン1つ以上の少なくとも一部分を欠いているドメイン欠失抗体である。より好ましくは修飾された抗体の定常領域の完全ドメインの1つが欠失することになり、そして更に好ましくはCH2ドメインの全て又は部分が欠失することになる。
【0070】
好ましい実施形態においては、本発明の結合分子はヒトにおいて有害な免疫応答を誘発しない。本明細書に適合する定常領域の修飾は、ドメイン1つ以上におけるアミノ酸1つ以上の付加、欠失又は置換を包含する。即ち、本発明の結合分子は重鎖定常ドメインの3つ(CH1、CH2又はCH3)及び/又は軽鎖定常領域ドメイン(CL)の1つ以上に対する改変又は修飾を含んでよい。
【0071】
1つの実施形態において、本発明の結合分子は当該分野で知られた手法を用いてその免疫原性を低減するために修飾してよい。例えば、本発明の抗体又はポリペプチドはヒト化、脱免疫化することができ、又はキメラ抗体を作成することができる。抗体のこれらの型は親抗体の抗原結合特性を保持するか実質的に保持しているが、ヒトにおいて低免疫原性である非ヒト抗体、典型的にはネズミ抗体から誘導される。これは種々の方法、例えば(a)ヒト定常領域上に完全な非ヒト可変ドメインをグラフトしてキメラ抗体を形成すること;(b)重要なフレームワーク残基の保持を伴うか伴うことなく、ヒトフレームワーク及び定常領域内に非ヒトの相補性決定領域(CDR)の1つ以上の少なくとも一部分をグラフトすること;又は(c)完全な非ヒト可変ドメインを移植するが、表面残基の置き換えによりヒト様のセクションでそれらを「クローキング」することにより達成してよい。そのような方法はMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851−5(1984);Morrison等、Adv.Immunol.44:65−92(1988);Verhoeyen等、Science239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immun.31:169−217(1994)、及び米国特許5,585,089、5,693,761及び5,693,762に記載されており、これら全ては参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
「血管形成を抑制する薬剤」とは、例えば血管形成の開始、血管の発達、及び/又は血管の維持を抑制する何れかの薬剤である。
【0073】
1つの実施形態において、血管形成を抑制する薬剤は生物学的薬剤である。
【0074】
「生物学的物質」又は「生物学的薬剤」という用語は、治療薬としての使用を意図する、生物から作成した何れかの薬学的に活性な薬剤、及び/又はそれらの製品を指す。本発明の1つの実施形態において、抗LT−β−R結合分子と組み合わせて使用できる生物学的薬剤は、限定しないが、抗体、核酸分子、例えばアンチセンス核酸分子、ポリペプチド又は蛋白質を包含する。そのような生物学的物質は、生物学的薬剤を例えば抗LT−β−R結合分子の投与の前に、抗LT−β−R結合分子と同時に、又は抗LT−β−R結合分子の後に投与することにより、抗LT−β−R結合分子と組み合わせて投与できる。
【0075】
1つの実施形態において、対象由来の細胞を抗LT−β−R結合分子及び/又は生物学的薬剤にインビトロで接触させ、そして次に対象内に導入することができる。次に対象を複合療法の第2の相、例えば抗LT−β−R結合分子及び/又は生物学的薬剤により治療してよい。
【0076】
「複合療法」という用語は本明細書においては、例えば抗LT−β−R結合分子及び第2の薬剤、例えば血管形成を抑制する薬剤、又は生物学的薬剤を含む治療用法を指す。抗LT−β−R結合分子及び第2の薬剤は別個の投与のために製剤してもよく、或いは、共に投与するために製剤してもよい。
【0077】
「癌」又は「新生物形成」という用語は一般的に何れかの悪性の新生物又は細胞の自発的生育又は増殖を指す。例えば「癌」を有する対象は白血病、リンパ腫、又は他の悪性の血液細胞を有する場合がある。特定の実施形態においては、本方法は固形腫瘍を治療するために使用される。例示的な固形腫瘍は限定しないが、非小細胞肺癌(NSCLC)、精巣癌、肺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚部癌、膵臓癌、結腸直腸癌(CRC)、乳癌、並びに前立腺、胃、皮膚、腹部、食道、及び膀胱の癌を包含する。本発明の1つの実施形態においては、固形腫瘍は結腸腫瘍である。本発明の別の実施形態においては、固形腫瘍は結腸腫瘍、子宮頚部腫瘍、胃腫瘍、及び膵臓腫瘍よりなる群から選択される。
【0078】
本発明の特定の実施形態においては、本方法は樹立された腫瘍を治療(例えば腫瘍の大きさを低減、脈管形成を低下、及び/又は腫瘍の透過性を増大)するために使用される。本明細書においては、「樹立された腫瘍」とは、栄養、即ち酸素が浸透圧により対象の脈管から腫瘍の中心にまでもはや透過することができないため、腫瘍が栄養を受け取るためにそれ自身の血管供給を必要とするような十分な大きさの固形腫瘍である。
【0079】
1つの実施形態において、本方法は脈管形成腫瘍を治療するために使用される。脈管形成腫瘍は樹立された脈管の特徴を有する腫瘍を包含する。そのような腫瘍はそれらの大きさにより、及び/又は血管又は血管形成のマーカーの存在により、発見される。
【0080】
別の実施形態において、本方法は休止期になく、活発に指数的生育を進行させている固形腫瘍を治療するために使用される。
【0081】
「癌腫」という用語は上皮細胞、例えば腺細胞(「腺腫」又は「腺癌」)又は扁平上皮細胞(「扁平上皮細胞癌」)から誘導される悪性の新生物の種々の型の何れかを指す。癌腫は隣接組織に浸潤し、そして遠隔の臓器、例えば骨、肝臓、肺又は脳に拡張(転移)する場合が多い。
【0082】
本明細書においては、「子宮頚癌」とは、子宮頚部、即ち子宮の下部の狭小な部分に生じる腫瘍を指す。本明細書においては、子宮頚癌という用語は子宮頚部の扁平上皮細胞癌、腺癌、及び混合型の癌腫、即ち腺扁平上皮癌腫を包含する。
【0083】
FIGOシステムに基づけば、子宮頚癌は「病期0〜IV」であることができる。「病期0」は「インサイチュ癌腫」とも称され、子宮頚部の管壁である上皮細胞のみに検出され、より深部の組織を侵襲していない腫瘍である。「病期I」の子宮頚癌とは、子宮頚部に限定される腫瘍である。「病期IA」においては、極めて少量の腫瘍が顕微鏡下に観察できる。「病期IA1」においては、腫瘍は深度3ミリメートル未満、幅7ミリメートル未満の区域に浸透している。「病期IA2」においては、腫瘍は深度3〜5ミリメートル、幅7ミリメートル未満の区域に浸透している。「病期IB」においては、腫瘍は顕微鏡を使用することなく観察できる。病期IBは又、顕微鏡を用いなくては観察できないが幅7ミリメートル超であり、子宮頚部の結合組織に5ミリメートル超浸透している腫瘍を包含する。「病期IB1」は4センチメートル以下の腫瘍である。「病期IB2」の腫瘍は4センチメートル超であり、子宮頚部外の臓器及び組織に拡張しているが骨盤区域のみになお限定されている。「病期II」の子宮頚癌は子宮頚部及び/又は膣上部3分の2を超えて伸長しているが骨盤壁上には至っていない腫瘍を指す。「病期IIA」においては、腫瘍は子宮頚部を超えて膣上部まで拡張している。「病期IIB」においては、腫瘍は子宮頚部の次の組織にまで拡張している。「病期III」の子宮頚癌は膣下部3分の1まで、又は骨盤壁上にまで拡張している腫瘍を指し;腫瘍が腎臓から膀胱への尿の流動を遮蔽する場合がある。「病期IIIA」においては、腫瘍は膣下部3分の1まで拡張している。「病期IIIB」においては、腫瘍は骨盤壁部まで拡張しており、及び/又は腎臓から膀胱への尿の流動を遮蔽している。「病期IV」の子宮頚癌は身体の他の部分、即ち、膀胱又は直腸(「病期IVA」)又はその他、例えば肝臓又は肺(「病期IVB」)に拡張(転移)している腫瘍を指す。
【0084】
本明細書においては、「結腸癌」又は「結腸直腸癌」とは大腸又は結腸の内管壁から生じる腫瘍を指す。これらの癌の全てではないが大部分は結腸ポリープから生じる。「結腸癌」という用語は又、結腸の癌腫、リンパ腫、カルチノイド腫、黒色腫、及び肉腫を指す。
【0085】
結腸直腸癌は病期0〜IVに分割できる。「病期0」の結腸直腸癌は結腸又は直腸の最内層の管壁にのみ存在する。インサイチュの癌腫は病期0結腸直腸癌に対する別の名称である。「病期I」結腸直腸癌は結腸又は直腸の内壁内部に成長している腫瘍を指す。腫瘍は結腸の外壁には到達しておらず、また結腸外部に伸長していない。「デュークスA」とは病期Iの結腸直腸癌に対する別の名称である。「病期II」の結腸直腸癌においては、腫瘍は結腸又は直腸の壁部の内部に、又はそれを通過してより深部まで伸長している。侵襲された近傍組織を有する場合があるが、癌細胞はリンパ節にまでは拡張していない。「デュークスB」は病期II結腸直腸癌の別の名称である。「病期III」の結腸直腸癌は近傍のリンパ節にまで拡張しているが、身体の他の部分には至っていない腫瘍である。「デュークスC」は病期III結腸直腸癌の別の名称である。「病期IV」の結腸直腸癌においては、腫瘍は身体の他の部分、例えば肝臓又は肺にまで拡張している。「デュークスD」は病期IV結腸直腸癌の別の名称である。
【0086】
本明細書においては、「胃腸癌」又は「GI癌」とは、胃腸管の臓器、又は消化管の臓器、即ち口腔、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸又は結腸、直腸、及び肛門の何れかの癌である。
【0087】
「胃癌」又は「胃新生物」という用語は「腹部の癌」とも称され、本明細書においては、腹部の腺癌、リンパ腫、支質腫瘍、扁平上皮細胞腫瘍、腺扁平上皮癌腫、カルチノイド、及び平滑筋肉腫を包含する。胃癌は、本明細書においては、胃管壁(粘膜)に生じる腫瘍、胃下部(幽門)、胃中央部(体部)に生じる腫瘍、上部(噴門)に生じるもの、並びに胃一か所より多くに生じる腫瘍を指す。胃癌は他の発生源(例えば結腸)から「転移」したものであってよく、或いは、「原発」(胃細胞起源の腫瘍)であってもよい。例えば、胃癌は食道又は小腸に転移することができ、そして胃壁を通過して近傍のリンパ節及び臓器(例えば肝臓、膵臓及び結腸)まで伸長することができる。胃癌は又身体の他の部分(例えば肺、卵巣、骨)に転移することができる。
【0088】
胃癌は病期0〜IVであることができる。「病期0」の胃癌は「インサイチュ癌腫」とも称され、胃の壁部の粘膜層の内部管壁にのみ存在する腫瘍である。「病期Iの胃癌」は癌が拡張している場所に応じて「病期IA」及び「病期IB」に分割される。病期IAにおいては、癌は胃壁の粘膜層を完全に通過して拡張している。病期IBにおいては、癌は胃壁の粘膜層を完全に通過して拡張し、そして腫瘍近傍の6リンパ節以下で観察されるか;又は胃壁の筋層に至る。「病期II胃癌」においては、癌は胃壁の粘膜層を完全に通過して拡張し、そして腫瘍近傍の7〜15リンパ節で観察されるか;又は胃壁の筋層に至り、そして腫瘍近傍の6リンパ節以下で観察されるか;又は胃壁の漿膜層に至っているがリンパ節や他の臓器には至らない。「病期IIIの胃癌」は癌が拡張している場所に応じて「病期IIIA」及び「病期IIIB」に分割される。病期IIIAは胃壁の筋層に拡張し、そして腫瘍近傍の7〜15リンパ節で観察されるか;又は胃壁の漿膜層に至っており、そして腫瘍近傍の1〜6リンパ節で観察されるか;又は胃の次の臓器に至っているが、リンパ節又は身体の他の部分には至っていない癌を指す。病期IIIBは胃壁の漿膜層に拡張しており、腫瘍近傍の7〜15リンパ節で観察される癌を指す。「病期IV胃癌」においては、癌は胃の次の臓器に、そして少なくとも1つのリンパ節に;又は15リンパ節より多くに;又は身体の他の部分に拡張している。
【0089】
本明細書においては、「膵臓癌」という用語は膵臓に生じる腫瘍を指し、そして「導管腺癌」及び「島細胞癌腫」を包含する。
【0090】
膵臓癌は「病期I〜IV」であることができる。「病期I」の膵臓癌においては、癌は膵臓に限定され、そして「切除可能」とみなされる場合が多い。「病期IA」においては、腫瘍は膵臓に限定され、そして大きさは2cm未満であり;近傍のリンパ節や遠隔部位に拡張していない。「病期IB」においては、腫瘍は膵臓に限定され、そして大きさは2cm超であり、近傍のリンパ節や遠隔部位に拡張していない。「病期II」の膵臓癌はもはや切除可能ではない。「病期IIA」においては、腫瘍は膵臓の外部まで成長しているが、膵臓にすぐ隣接する臓器内、例えば胆管又は十二指腸には至っておらず、近傍のリンパ節にも拡張していない。「病期IIB」においては、腫瘍は膵臓に限定されるか、膵臓の外部に成長しているが、膵臓にすぐ隣接する臓器内、例えば胆管又は十二指腸には至っていないものの、近傍のリンパ節には拡張している。「病期III」においては、腫瘍は膵臓の外部に成長して結腸、胃、又は脾臓のような近傍臓器内に至っており、そして近傍リンパ節への拡張はある場合とない場合がある。「病期IV」においては、腫瘍は身体の他の部分、例えば肝臓又は肺にまで拡張している。
【0091】
「化学療法剤」という用語は、悪性疾患を治療するために使用される分子又は組成物を指す。そのような薬剤は抗LT−β−R結合分子と組み合わせて、又は本発明の複合療法と共に使用してよい。化学療法剤は抗LT−β−R結合分子とコンジュゲートすることができるか、及び/又は未コンジュゲート形態において複合療法と組み合わせて使用してよい薬剤を包含する。例示的な化学療法剤は後に考察する。
【0092】
「有効量」という用語は癌性の細胞又は腫瘍に対して望ましい結果、例えば限定しないが腫瘍の大きさの低減、腫瘍の体積の低減、固形腫瘍の脈管形成の低下、及び/又は薬剤に対する固形腫瘍の透過性の増大をインビトロ又はインビボの何れかで可能とするために十分な複合療法剤の量を指す。本発明の特定の実施形態においては、複合療法剤の有効量は約58%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%超の%腫瘍抑制をもたらす量である。用語は又、所望の臨床的結果、例えば限定しないが疾患の緩解、患者の安定化、患者における癌の発症又は進行の防止又は遅延を達成するために十分な複合療法剤の量を包含する。複合療法剤の有効量は1回の投与又は反復投与に基づいて決定できる。上記した指標の検出及び測定のための方法は当業者の知る通りである。そのような方法は限定しないが、全身腫瘍組織量の低減、腫瘍の大きさの低減、腫瘍の体積の低減、二次腫瘍の増殖の低減、固形腫瘍脈管形成の低下、腫瘍組織における遺伝子の発現、バイオマーカーの存在、リンパ節の関与、組織学的等級、及び核の等級を測定することを包含する。
【0093】
本発明の1つの実施形態において、全身腫瘍組織量を測定する。「全身腫瘍組織量」はまた「腫瘍負荷」とも称され、身体全体に渡って分布した腫瘍物質の総量を指す。全身腫瘍組織量はリンパ節及び骨髄を包含する身体全体に渡る癌細胞の総数、又は腫瘍の全体的大きさを指す。全身腫瘍組織量は当該分野で知られた種々の方法により、例えば腫瘍の寸法を、対象からの除去時に例えばカリパスを用いて、或いは身体内にある時点で画像化手法、例えば超音波、コンピューター断層撮影(CT)、又は磁気共鳴画像化(MRI)スキャンを用いて計測することにより、測定することができる。
【0094】
本発明の1つの実施形態において、腫瘍の大きさを測定する。「腫瘍の大きさ」という用語は腫瘍の長さ及び幅として測定できる腫瘍の全体的大きさを指す。腫瘍の大きさは当該分野で知られた種々の方法により、例えば腫瘍の寸法を、対象からの除去時に例えばカリパスを用いて、或いは身体内にある時点で画像化手法、例えば超音波、コンピューター断層撮影(CT)、又は磁気共鳴画像化(MRI)スキャンを用いて計測することにより、測定することができる。
【0095】
本発明の1つの実施形態において、腫瘍の大きさは腫瘍の重量を測定することにより測定される。1つの実施形態において、腫瘍重量は腫瘍の長さを計測し、それを腫瘍の幅の二乗とかけ、そしてその総和を2で割ることにより求められる(後述する実施例のセクションにおいて説明)。
【0096】
本発明の1つの実施形態において、腫瘍の大きさは腫瘍の体積を測定することにより測定される。「腫瘍の体積」という用語は腫瘍の全体的大きさを指し、これは腫瘍そのもの+罹患リンパ節を適宜包含する。腫瘍体積は当該分野で知られた種々の方法により、例えば腫瘍の寸法を、対象からの除去時に例えばカリパスを用いて、或いは身体内にある時点で画像化手法、例えば超音波、コンピューター断層撮影(CT)、又は磁気共鳴画像化(MRI)スキャンを用いて計測すること、及び、例えばz軸直径に基づくか、又は標準的な形状、例えば球形、楕円形、又は立方体に基づく方程式を用いて体積を計算することにより、測定することができる。1つの実施形態において、腫瘍体積(mm)は2次元腫瘍計測から得られる長球楕円形に関して、即ち腫瘍体積(mm)=(長さ×幅[L×W])÷2で計算される。単位密度を仮定して腫瘍体積を腫瘍重量に変換する(即ち1mm=1mg)。
【0097】
「固形腫瘍の脈管形成」という用語は固形腫瘍における血管の形成を指す。腫瘍の脈管形成を抑制する薬剤は血管の創生、発達及び/又は維持を抑制し、例えば腫瘍内の血管の数及び/又は密度の低減をもたらす。
【0098】
「固形腫瘍の透過性」という用語は、治療薬に対する固形腫瘍の透過性を指す。固形腫瘍は治療薬が腫瘍の中心部において細胞に到達することができる場合に、治療薬に対して透過性といってよい。腫瘍の透過性を増大させる薬剤は例えば固形腫瘍の脈管を正常化、例えば維持してよい。腫瘍の脈管形成及び/又は腫瘍の透過性は当該分野で知られた種々の方法により、例えば生検標本の免疫組織学的分析により、又は腫瘍の超音波撮影、コンピューター断層撮影(CT)、又は磁気共鳴画像化(MRI)スキャンのような画像化手法により測定してよい。
【0099】
「%T/C」という用語は投与群(T)の平均腫瘍重量を対照群(C)の平均腫瘍重量で割ったものに100を掛けたパーセント値である。42%以下の%T/C値はNational Cancer Institute(USA)により有意の活動性を示すものとみなされている。
【0100】
「%抑制」という用語は100−%T/Cである。58%以上の%抑制値はNational Cancer Institute(USA)により有意の活動性を示すものとみなされている。
【0101】
「統計学的に有意」又は「統計学的有意性」という用語は、ある独立変数が有効でないか、推定ゼロ仮説が真である場合に、ある結果が偶然に起こる確率を指す。統計学的有意性は確率の値を示す「P値」(P)を求めることにより調べることができる。p値は実験により得られた結果が偶然のみに起因することがどの程度可能性があるかを示す。本発明の1つの実施形態において、統計学的有意性は両側1標本T検定のp値を得ることにより調べることができる。0.05未満のp値は統計学的に有意、即ち偶然のみに起因する可能性は低いとみなされる。或いは、統計学的に有意なp値は約0.05〜約0.04;約0.04〜約0.03;約0.03〜約0.02;約0.02〜約0.01であってよい。一部の場合においてはp値は0.01未満である。p値は、複合療法を用いて腫瘍、例えば固形腫瘍を有する対象を治療する場合に、腫瘍の大きさ及び/又は固形腫瘍の脈管形成の統計学的に有意な低減及び/又は固形腫瘍の透過性における統計学的に有意な増大があるか否かを調べるために使用してよい。偶発的な1日ではなく一連の治療の日々に渡って統計学的有意性が観察される場合に、P値に対する生物学的関連性がある。
【0102】
「癌を治療する」又は「癌を有する対象を治療する」とは、癌細胞の複製の抑制、癌の拡張の抑制、腫瘍の大きさの低減、身体内の癌性の細胞の縮小又は数の低減、及び/又は癌の症状の緩解又は軽減を包含する。治療は、死亡率、及び/又は罹患率の低下がある場合に治療であると見なされ、そして予防的に、又は治療的に実施してよい。
【0103】
「免疫毒素」という用語は完全な毒素又は毒素のA鎖を結合分子にカップリングさせることにより形成されるハイブリッド分子を指す。得られる分子は結合分子の特異性を有し、そして毒素により付与される毒性を有する。そのような毒素は抗LT−β−R結合分子又は生物学的薬剤にコンジュゲートしてよい。毒素の非限定的な例は、例えばマイタンシノイド、CC−1065類縁体、カリケアマイシン誘導体、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、リシン、ジフテリア毒素及びシュードモナスのエキソトキシンを包含する。例示的な免疫毒性生物学的薬剤は、限定しないがカリケアマイシンにコンジュゲートした抗CD33抗体、即ちゲムツズマブオゾガマイシン、及びトランケーションされたシュードモナスエキソトキシンに融合された抗CD−22可変ドメイン(Fv)、即ちRFB4(dsFv)−PE38(BL22)、及びジフテリア毒素を含むインターロイキン−2(IL−2)融合蛋白質、即ちデニロイキンジフチトックスを包含する。
【0104】
「患者」又は「対象」又は「宿主」とはヒト又は非ヒト動物の何れかを指す。
【0105】
「植物アルカロイド」という用語は生物学的に活性であり細胞毒性である植物から誘導されたアルカリ性の窒素含有分子のファミリーに属する化合物を指す。植物アルカロイドの例は限定しないが、タキサン類、例えばドセタキセル及びパクリタキセル及びビンカ類、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンを包含する。1つの実施形態においては、植物アルカロイドはタキソールである。
【0106】
2.抗リンホトキシン−β−受容体(LT−β−R)結合分子
本発明の好ましい抗LT−β−R結合分子はLT−β−Rを活性化し、即ち、LT−β−Rのアゴニストである。内容が参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許6,312,691及びWO96/22788は、癌細胞の死滅をトリガーするためにLT−β−Rアゴニスト、例えば抗体を用いる癌の治療のための方法及び組成物を記載している。例えば米国特許6,312,691は膜結合LT−α/β複合体、可溶性LT−α/β複合体、及び抗LT−β−R抗体を包含する発明において使用するためのLT−β−Rアゴニスト、及びそれらの製造および精製のための方法を記載している。
【0107】
好ましい実施形態においては、LT−β−R結合分子は抗LT−β−R抗体である。抗LT−β−R抗体の種々の形態が標準的な組換えDNA手法を用いて作成できる(Winter and Milstein,Nature,349,pp.293−99(1991))。
【0108】
特定の実施形態においては、抗LT−β−R結合分子はポリクローナル抗体であってよい。例えば、抗体は該当する抗原及びアジュバントの多数回の皮下又は腹腔内注射により哺乳類内に発生させてよい。この免疫化は典型的には活性化された脾細胞又はリンパ球からの抗原反応性抗体の生産を含む免疫応答を誘発する。得られた抗体を動物の血清から回収し、ポリクローナルの調製品を得てよい。
【0109】
別の実施形態においては抗LT−β−R結合分子はモノクローナル抗体である。特定の実施形態においては、本発明のモノクローナル抗体は各々がWO96/22788に記載されているBKA11、CDH10、BCG6、AGH1、BDA8、CBE11及びBHA10よりなる群から選択される。
【0110】
本発明において使用するためのモノクローナル抗体は表1の細胞系よりなる群から選択される細胞系により特定の実施形態において生産してよい。
【0111】
【表1】

モノクローナル抗体の製造はよく知られたプロセス(Kohler等、Nature,256:495(1975))であり、ここで、抗原を注射してある哺乳類に由来する比較的短い寿命又は非不朽化のリンパ球を不朽化された腫瘍細胞系(例えば骨髄腫細胞系)に融合し、これによりともに不朽化されておりB細胞の遺伝子的にコーディングされている抗体を生産することができるハイブリッド細胞又は「ハイブリドーマ」を作成する。得られたハイブリッドは、選択、希釈、及び単一の抗体の形成のための特異的遺伝子を含む各個々の系統と共に再生育させることにより単一の遺伝子系統に分離する。それらは所望の抗原に対して同種である抗体を生産し、そしてそれらの純粋な遺伝子的パーセンテージを指して、「モノクローナル」と称される。
【0112】
このようにして製造されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは未融合の親骨髄腫細胞の生育又は生存を抑制する物質1つ以上を含有する適当な培地中に播種して生育させる。当業者の知る通り、ハイブリドーマの形成、選択及び生育のための試薬、細胞系及び培地は多くの入手元より市販されており、標準的なプロトコルが確立されている。一般的にハイブリドーマ細胞を生育させる培地は所望の抗原に対するモノクローナル抗体の生産に関して試験される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により生産されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降により、又はインビトロの試験、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素連結免疫吸着試験(ELISA)により測定される。所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を生産するハイブリドーマが発見された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、そして標準的な方法により生育させてよい(Goding,Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,pp59−103(Academic Press,1986))。やはり当然ながら、サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の精製操作法、例えばプロテインA、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーにより、培地、腹水、又は血清から分離してよい。
【0113】
別の実施形態において、所望のモノクローナル抗体をコードするDNAは従来の操作法を用いて(例えばネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離され、そして配列決定される場合がある。単離され、サブクローニングされたハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい原料として機能する。単離後はDNAを発現ベクター内に入れ、次にこれを原核生物又は真核生物の宿主細胞、例えばE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は免疫グロブリンを生産しない骨髄腫細胞内にトランスフェクトする。より詳細には、単離されたDNA(本明細書に記載する通り修飾されていてよい)を用いて参照により本明細書に組み込まれる1995年1月25日に出願されたNewman等の米国特許5,658,570に記載の通り製造抗体のための定常及び可変領域の配列をクローニングしてよい。本質的には、これは選択された細胞からのRNAの抽出、cDNAへの変換、及びIg特異的プライマーを用いたPCRによる増幅を包含する。この目的のための適当なプライマーも又、米国特許5,658,570に記載されている。後により詳細に考察する通り、所望の抗体を発現する形質転換された細胞を比較的大量に生育させることにより、免疫グロブリンを臨床用及び商業用に供給してよい。
【0114】
やはり当業者の知る通り、抗体又は抗体フラグメントをコードするDNAは又、抗体ファージライブラリから、例えばpdファージ又はFdファージミド技術を用いて誘導してよい。例示的な方法は例えば各々が参照により本明細書に組み込まれるEP368684 B1;米国特許5,969,108,Hoogenboom,H.R.及びChames.2000.Immunol.Today 21:371;Nagy等、2002.Nat.Med.8:801;Huie等、2001.Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:2682;Lui等、2002.J.Mol.Biol.315:1063に記載されている。幾つかの出版物(例えばMarks等Bio/Technology10:779−783(1992))は鎖シャフリングによる高親和性ヒト抗体の製造、並びに大型ファージライブラリを構築するための方策としてのコンビナトリアルな感染及びインビボの組み換えを記載している。別の実施形態において、リボソームディスプレイを用いることによりディスプレイプラットホームとしてのバクテリオファージを置き換えることができる(例えばHanes等、2000.Nat.Biotechnol.18:1287;Wilson等、2001.Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:3750;又はIrving等、2001J.Immunol.Methods248:31参照)。更に別の実施形態においては、細胞表面ライブラリを抗体に関してスクリーニングできる(Boder等、2000.Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:10701;Daugherty等、2000 J.Immunol.Methods 243:211)。このような操作法はモノクローナル抗体の単離及びその後のクローニングのための伝統的なハイブリドーマ手法の代替となりえる。
【0115】
本発明の更に別の実施形態は、ヒト免疫グロブリントランスジーン1つ以上を保有しているトランスジェニック動物のような非ヒト動物におけるヒト型又は実質的にヒト型の抗体の形成を含む。そのような動物は参照により本明細書に組み込まれる米国特許5,569,825、WO00076310、WO00058499及びWO00037504に記載の通り、ハイブリドーマを製造するための脾細胞のための原料として使用してよい。
【0116】
組み換え抗体を形成するための更に別の高効率の手段は、Newman,Biotechnology,10:1455−1460(1992)に記載されている。特記すれば、この手法はサルの可変ドメイン及びヒトの定常配列を含有する霊長類化された抗体の形成をもたらす。この参考文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。更に又、この手法は共通譲渡されている各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許5,658,570、5,693,780及び5,756,096にも記載されている。
【0117】
別の実施形態において、リンパ球はマイクロマニピュレーションにより選択することができ、そして可変遺伝子を単離する。例えば、末梢血液単核細胞を免疫化動物から単離し、インビトロで約7日間培養することができる。培養物をスクリーニング基準に合致する特定のIgGに関してスクリーニングできる。陽性ウェル由来の細胞を単離する。個々のIg産生B細胞は、FACSによるか、又は補体媒介溶血プラーク試験においてそれらを識別することにより単離することができる。Ig産生B細胞を試験管内にマイクロマニピュレートし、そしてVh及びVlの遺伝子を例えばRT−PCRを用いて増幅することができる。VH及びVL遺伝子は抗体発現ベクターにクローニングし、そして発現のために細胞(例えば真核生物又は原核生物の細胞)にトランスフェクトすることができる。
【0118】
或いは、抗体産生細胞系を当業者に良く知られている手法を用いて選択し、培養してよい。そのような手法は種々の実験室マニュアル及び主要な出版物に記載されている。この点に関し、後に記載する通り本発明における使用に適する手法は、補遺を含めて参照により全体が本明細書に組み込まれるCurrent Protocols in Immunology,Coligan等、Eds.,Green Publishing Associates and Wiley−Interscience,John Wiley and Sons,New York(1991)に記載されている。
【0119】
可変及び定常領域ドメインは何れかの原料(例えば本明細書に記載する抗LT−β−R抗体1つ以上から)から得ることができ、そして本発明の修飾された結合分子内に取り込むことができる。例えば、抗体をクローニングするためには、mRNAをハイブリドーマ、脾臓又はリンパ細胞から単離し、DNAに逆転写し、そして抗体遺伝子をPCR増幅することができる。PCRはコンセンサス定常領域プライマーによるか、又は公開されている重鎖及び軽鎖のDNA及びアミノ酸の配列に基づいたより特異的なプライマーにより、開始してよい。上記した通りPCRはまた抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用してもよい。この場合、ライブラリはコンセンサスプライマー又はより大型の相同プローブ、例えばマウス定常領域プローブによりスクリーニングしてよい。抗体遺伝子の増幅に適する多くのプライマーセットが当該分野で知られている(例えば精製された抗体のN末端配列((Benhar及びPastan.1994.Protein Engineering7:1509);cDNA末端の急速増幅(Ruberti,F.等、1994.J.Immunol.Methods173:33);抗体リーダ配列(Larrick等、1989 Biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250)に基づいた;又はKabat(Kabat等、1991.Sequences of Proteins of Immunological Interest.Bethesda,MD:JS Dep.Health Hum.Serv.第5版)の既知の可変領域フレームワークアミノ酸配列、又はV塩基データベース(例えばOrlandi等、1989.Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:3833;Sblattero等、1998.Immunotechnology 3:271;又はKrebber等、1997.J.Immunol.Methods 201:35)に基づいた5’プライマー)。定常領域ドメインは特定のエフェクター機能を有する(又は特定のエフェクター機能を欠いた)もの、又は免疫原性を低下させる特定の修飾を有するものを選択できる。可変又は定常ドメインは例えばポリメラーゼ連鎖反応及び目的のドメインを増幅するために選択されたプライマーを用いてクローニングすることができる。PCR増幅方法は米国特許4,683,195;4,683,202;4,800,159;4,965,188;及び例えば「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」Innis等、編,Academic Press,San Diego,CA(1990);Ho等、1989.Gene 77:51;Horton等、1993.Methods Enzymol.217:270に記載されている。
【0120】
或いは、Vドメインは選択された動物に由来するV遺伝子配列のライブラリから得ることができる。ドメイン、例えばVH及びVLドメインのランダムな組み合わせを発現するライブラリを所望の抗原でスクリーニングすることにより、所望の結合特性を有するエレメントを発見することができる。そのようなスクリーニングの方法は当該分野で良く知られている。例えば抗体遺伝子レパートリーをλバクテリオファージ発現ベクター内にクローニングすることができる(Huse,WD等、1989.Science 2476:1275)。更に又、自身の表面上に抗体を発現する細胞(Boder and Wittrup.1997.Nat.Biotechnol.15:553;Daugtherty,P.等、2000.J.Immunol.Methods.243:211;Francisco等、1994.Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:10444;Georgiou等、1997.Nature Biotechnology15:29)又はウィルス(例えばHoogenboom,HR.1998Immunotechnology4:1Winter等、1994.Annu.Rev.Immunol.12:433;Griffiths,AD.1998.Curr.Opin.Biotechnol.9:102)もスクリーニングできる。リポソームディスプレイもまた抗体ライブラリをスクリーニングするために使用できる(Hanes J.等、1998.Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:14130;Hanes,J.and Pluckthun.1999.Curr.Top.Microbiol.Immunol.243:107;He,M.and Taussig.1997.Nucleic Acids Research 25:5132)。
【0121】
スクリーニングのために好ましいライブラリはヒトV遺伝子ライブラリである。非ヒト原料由来のVL及びVHドメインも使用してよい。1つの実施形態において、そのような非ヒトVドメインは当該分野で知られた手法を用いてその免疫原性を低減するために改変することが出来る。
【0122】
ライブラリはナイーブ、免疫化対象由来、又は半合成であることができる(Hoogenboom,H.R.and Winter.1992.J.Mol.Biol.227:381;Griffiths,AD等、EMBO J.13:3245;de Kruif,J.等、1995.J.Mol.Biol.248:97;Barbas,C.F.等、1992.Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:4457)。
【0123】
更に又、多くの抗体のV及びCドメインの配列が知られており、そしてそのようなドメインは当該分野で良く知られている方法を用いて合成できる。1つの実施形態において、突然変異を免疫グロブリンドメインに対して行うことにより大きい異種性を有する核酸分子のライブラリを作成できる(Thompson,J.等、1996.J.Mol.Biol.256:77;Lamminmaki,U.等、1999.J.Mol.Biol.291:589;Caldwell,R.C.及びJoyce GF.1992.PCR Methods Appl.2:28;Caldwell RC及びJoyce GF.1994.PCR Methods Appl.3:S136)。高親和性の変異体を選択するためには標準的なスクリーニングの操作法を使用できる。別の実施形態においては、VH及びVL配列の変化は例えば当該分野で知られた手法を用いて結晶構造から得られる情報を用いて抗体のアビディテイーを増大するために行うことができる。
【0124】
抗原認識部位又は全体としての可変領域は、親抗体1つ以上から誘導してよい。親抗体は天然に存在する抗体又は抗体フラグメント、天然に存在する抗体から適応させた抗体又は抗体フラグメント、LT−ベータ受容体に特異的であることが分かっている抗体又は抗体フラグメントの配列を用いて新規に構築された抗体を包含できる。親抗体から誘導してよい配列は重鎖及び/又は軽鎖の可変領域及び/又はCDR、フレームワーク領域、それらの他の部分を包含する。
【0125】
1つの実施形態において、抗LT−β−R結合分子はヒト化抗体である。ヒト化抗体を作成するためには、動物を所望の抗原で免疫化し、相当する抗体を単離し、そして特定の抗原結合を担っている可変領域配列の部分を取り出す。次に動物から誘導された抗原結合領域を抗原結合領域が欠失しているヒト抗体遺伝子の適切な部分内にクローニングする。例えばJones,P.等(1986),Nature321,522−525又はTempest等(1991)Biotechnology 9,266−273を参照できる。更に又トランスジェニックマウス、又は他の哺乳類を使用してヒト化抗体を発現させてよい。そのようなヒト化は部分的又は完全であってよい。ヒト化抗体はヒト抗体における非相同(種間)の配列の使用を最小限にし、そして治療対象において免疫応答を誘発する可能性が低い。本発明で使用するためのヒト化抗体は特定の実施形態においてはE46.4(huCBE11:ATCC特許寄託名称PTA−3357)又は細胞系E77.4(huCBE11:ATCC特許寄託名称3765)よりなる群から選択される細胞系により生産されてよい。
【0126】
一部の実施形態においては、ヒト化抗体は、PCT公開WO02/30986及び米国特許出願10/412,406にそのヌクレオチド及びアミノ酸配列も含めて記載されているヒト化CBE11(huCBE11)である。別の実施形態においては、ヒト化抗体はPCT公開WO/04002431及び米国特許出願11/021819にそのヌクレオチド及びアミノ酸配列も含めて記載されているヒト化BHA10(huBHA10)である。内容が参照により全体が本明細書に組み込まれる上記した出願人の出願は癌の細胞死をトリガーするためにhuCBE11及びhuBHA10を使用した癌の治療のための方法及び組成物を記載している。
【0127】
別の実施形態においては、動物の結合分子由来の抗原結合ドメインがヒト定常ドメインに連結されている「キメラ」結合分子を構築できる(例えばCabilly等、米国特許4,816,567;Morrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,pp.6851−55(1984))。キメラ結合分子はヒトの臨床治療に用いられる場合に動物抗体により誘発される観察される免疫原性応答を低減する。組み換え抗LT−β−R結合分子の異なるクラスの構築も又、抗LT−β−R可変ドメイン及び免疫グロブリンの異なるクラスから単離されたヒト定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)を含むキメラ又はヒト化結合分子を作成することにより行うことができる。例えば増大した抗原結合部位の価数を有する抗LT−β−RIgM結合分子はヒトμ鎖定常領域を担持したベクター内に抗原結合部位をクローニングすることにより組み換え生産することができる(Arulanandam等、J.Exp.Med.,177,pp.1439−50(1993);Lane等、Eur.J.Immunol.,22,pp.2573−78(1993);Traunecker等、Nature,339,pp.68−70(1989))。更に又、標準的な組み換えDNA手法を使用しながら、組み換え結合分子のその抗原との結合親和性の改変を、抗原結合部位の近接部におけるアミノ酸残基の改変により行うことができる。例えばQueen等、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86,pp.10029−33(1989);WO94/04679を参照できる。
【0128】
本発明の抗LT−β−R結合分子は又修飾された結合分子であってよい。例示的な修飾された結合分子は、例えばミニボディー、ダイアボディー、CH3分子に融合されたダイアボディー、4価の抗体、イントラダイアボディー(例えばJendreyko等、2003.J.Biol.Chem.278:47813)、二重特異性抗体、融合蛋白質(例えば抗体サイトカイン融合蛋白質、Fc受容体の少なくとも一部分に融合された蛋白質)、二重特異性抗体を包含する。他の免疫グロブリン(Ig)及びその特定の変異体は例えば米国特許4,745,055;EP256,654;Faulkner等、Nature298:286(1982);EP120,694;EP125,023;Morrison,J.Immun.123:793(1979);Kohler等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:2197(1980);Raso等、Cancer Res.41:2073(1981);Morrison等、Ann.Rev.Immunol.2:239(1984);Morrison,Science 229:1202(1985);Morrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:6851(1984);EP255,694;EP266,663;及びWO88/03559に記載されている。再分類された免疫グロブリン鎖もまた知られている。例えば米国特許4,444,878;WO88/03565;及びEP68,763及びその引用文献を参照できる。
【0129】
1つの実施形態において、本発明の抗LT−β−R結合分子は野生型と比較してアミノ酸少なくとも1つの欠失又は置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えばCH2ドメインの選択された区域における単一のアミノ酸の1つ以上の突然変異はFc結合を実質的に低減し、これにより腫瘍の局在化を増大させるために十分である場合がある。同様に、モジュレートすべきエフェクター機能(例えば補体結合)を制御する定常領域ドメイン1つ以上のそのような部分を単に欠失させることが望ましい場合がある。定常領域のそのような部分的欠失は抗体の選択された特性(血清中半減期)を向上させつつ、対象定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能は未損傷のままとする。従って、1つの実施形態において、本発明の結合分子はCH2ドメインの全て又は部分を欠いている。更に又、本発明の抗LT−β−R結合分子の定常領域は得られるコンストラクトのプロファイルを増強するアミノ酸1つ以上の突然変異又は置換により修飾してよい。この点に関し、保存された結合部位により与えられる活性(例えばFc結合)を途絶しつつ、修飾された結合分子の配置及び免疫原性のプロファイルを実質的に維持することが可能となる。更に別の好ましい実施形態はエフェクター機能のような望ましい特性を増強するため、又はより多くの細胞毒又は炭水化物の結合を可能にするための定常領域へのアミノ酸1つ以上の付加を含む。そのような実施形態においては、選択された定常領域ドメインから誘導された特定の配列を挿入又は複製することが望ましい場合がある。
【0130】
別の実施形態において、天然に存在するヒンジ領域に対する突然変異を行うことができる。本発明による定常領域へのそのような修飾は、当該分野で知られている既知の生化学又は分子操作手法を用いて容易に行える。
【0131】
1つの実施形態において、本発明の抗LT−β−R結合分子はドメイン1つ以上が部分的又は完全に欠失している修飾された定常領域を含む(「ドメイン欠失抗体」)。特に好ましい実施形態においては、適合する修飾された結合分子はCH2ドメイン全体が除去されているドメイン欠失コンストラクト又は変異体を含むことになる。
【0132】
1つの実施形態において、本発明の修飾された結合分子はミニボディーである。ミニボディーは例えば連結ペプチドを介してCH3ドメインに融合されたVHドメインにフレキシブルリンカーにより連結されたVLドメインのような抗原結合部位1つ以上を含む単一のポリペプチドであるScFv分子を各々含むポリペプチド鎖2つから構成されている2量体分子である。
【0133】
ScFv分子はVH−リンカー−VLの方向において、又はVL−リンカー−VHの方向において構築できる。
【0134】
抗原結合部位を構成するVL及びVHドメインを連結するフレキシブルヒンジは好ましくは約10〜50アミノ酸残基を含み、例えばHuston等、1988.Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879を参照できる。
【0135】
単鎖抗体を作成する方法は当該分野で良く知られており、例えばHo等、1989.Gene77:51;Bird等、1988 Science242:423;Pantoliano等、1991.Biochemistry30:10117;Milenic等、1991.Cancer Research 51:6363;Takkinen等、1991.Protein Engineering 4:837を参照できる。
【0136】
ミニボディーは当該分野で知られた方法を用いてScFv成分を構築し、そしてペプチド−CH3成分を連結することにより作成できる(例えば米国特許5,837,821又はWO94/09817A1参照)。これらの成分は制限フラグメントとして別個のプラスミドから単離し、そして次に適切なベクター内にライゲーションして再クローニングすることができる。適切な組立物は制限消化及びDNA配列分析により確認できる。
【0137】
別の実施形態においては、4価のミニボディーを構築できる。4価のミニボディーはScFv分子2つをフレキシブルリンカーを用いて連結する以外は、ミニボディーと同様の態様において構築できる。
【0138】
別の実施形態において、本発明の修飾された抗体はCH2ドメイン欠失抗体である。ドメイン欠失コンストラクトはIgGヒト定常ドメインをコードするベクター(例えばIDEC Pharmaceuticals,San Diegoより入手)から誘導できる(例えばWO02/060955A2及びWO02/096948A2参照)。
【0139】
全定常領域ドメインの欠失のほかに、当然ながら、本発明の抗体は数個のアミノ酸、更には単一のアミノ酸を部分的に欠失又は置換するように操作することができる。例えば、C2ドメインの選択された区域の単一のアミノ酸の突然変異はFc結合を実質的に低減し、これにより腫瘍の局在化を増大させるために十分である場合がある。同様に、エフェクター機能(例えば補体C1Q結合)を制御する定常領域ドメイン1つ以上のそのような部分を単に欠失させることが望ましい場合がある。定常領域のそのような部分的欠失は抗体の選択された特性(血清中半減期)を向上させつつ、対象定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能は未損傷のままとする。
【0140】
2ドメイン欠失型の創生はオーバーラッピングPCR突然変異誘発により達成できる。ガンマ1定常ドメインはプラスミドコードNheI部位により開始し、免疫グロブリン配列を有する翻訳読み枠内にある。5’PCRプライマーはNheI部位並びに直ぐ下流の配列をコードするように構築されている。3’PCRプライマーメイトはそれが免疫グロブリンヒンジ領域に3’末端でアニーリングし、そしてガンマ1CH3ドメインの最初の数個のアミノ酸をインフレームにコードするように構築されている。第2のPCRプライマー対はC3ドメイン内のBsrGI制限部位に渡っている遺伝子座においてアニーリングする5’プライマー及び3’プライマーとしての第1の対(上記)に由来する3’PCRプライマーのリバース相補体よりなるものとしている。各PCR増幅の後、得られた産物をそれぞれNheI及びBsrGIの5’及び3’プライマーと共に鋳型として利用している。次に増幅産物をN5KG1に戻しクローニングすることによりプラスミドN5KG1ΔC2を創生した。この構築により未損傷のCH3ドメインが未損傷ヒンジ領域の直ぐ下流でインフレームに置かれることになる。同様の操作法を用いることにより、CH3ドメインが連結ペプチドの直ぐ下流にあるドメイン欠失コンストラクトを創生することができる。例えばC2B8抗体のドメイン欠失型は、各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許5,648,267及び5,736,137に記載されている態様において創生されている。
【0141】
1つの実施形態においては、4価のドメイン欠失抗体は、ScFv分子にドメイン欠失抗体をコードするDNA配列を組み合わせることにより製造できる。例えば、1つの実施形態においてはこれらの配列を、ScFv分子がフレキシブルリンカーを介してドメイン欠失抗体のCH3ドメインにそのN末端において連結されるように組み合わせる。
【0142】
別の実施形態においては、4価の抗体は連結ペプチドにScFv分子を融合することにより作成でき、これをCH1ドメインに融合することによりScFv−Fab4価分子が構築される(Coloma及びMorrison.1997.Nature Biotechnology.15:159;WO95/09917)。
【0143】
別の実施形態においては、本発明の修飾された抗体はダイアボディーである。ダイアボディーはscFv分子と同様であるが、通常は、同じポリペプチド鎖上のVL及びVHドメインが相互作用できないように両方のVドメインを連結している短鎖(10及び好ましくは1〜5)アミノ酸残基リンカーを有する。むしろ、1つのポリペプチド鎖上のVL及びVHドメインは第2のポリペプチド鎖上のVH及びVLドメインと(それぞれ)相互作用する(WO02/02781)。1つの実施形態において、本発明の結合分子は重鎖部分少なくとも1つに融合したダイアボディーである。好ましい実施形態においては、本発明の結合分子はCH3ドメインに融合したダイアボディーである。
【0144】
1つの実施形態において、本発明の修飾された抗体は軽鎖のN末端に付加されたscFvを有する4価又は二重特異性4価のCH2ドメイン欠失抗体を含む。本発明の別の実施形態においては、結合分子は重鎖のN末端に付加されたscFvを有する4価又は二重特異性4価のCH2ドメイン欠失抗体を含む。1つの実施形態において、N末端へのscFvの結合はscFvがカルボキシ末端において結合している分子と比較して、分子の凝集が低減される。修飾された結合分子の他の形態は本発明の範囲内である(例えばWO 02/02781A1;5,959,083;6,476,198B1;US2002/0103345A1;WO00/06605;Byrn等、1990.Nature.344:667−70;Chamow及びAshkenazi.1996.Trends Biotechnol.14:52)。
【0145】
更に別の実施形態において、抗LT−β−R結合分子は多価抗LT−β−R抗体である。1つの実施形態において、多価抗体はLT−β−Rエピトープに対して特異的な抗原認識部位少なくとも1つを含む。特定の実施形態においては、抗原認識部位の少なくとも1つはscFvドメイン内に位置し、別の実施形態においては、全ての抗原認識部位がscFvドメイン内に位置する。
【0146】
結合分子は2価、3価、4価、又は5価であってよい。特定の実施形態においては、結合分子は単一特異性である。1つの実施形態において、結合分子はCBE11が結合するエピトープに対して特異的である。別の実施形態においては、本発明の結合分子はCBE11抗原認識部位4つを含む単一特異性の4価のLT−β−Rアゴニスト抗体である。別の実施形態においては、結合分子はBHA10エピトープに対して特異的であり、そして一部の実施形態においては4価である。これらの実施形態の何れかにおいて、抗原認識部位少なくとも1つはscFvドメイン上に位置してよく、そしてこれらの実施形態の特定のものにおいては、全ての抗原認識部位がscFvドメイン上に位置してよい。結合分子は多重特異性であってよく、ここで、本発明の結合分子はヒトLT−β受容体上の異なるエピトープに結合する。
【0147】
特定の実施形態においては、抗LT−β−R多価結合分子は多重特異性であってよく、即ち、LT−β−R又はLT−β−Rのエピトープに結合する結合部位少なくとも1つ、及び、第2の異なる分子に、又はLT−β−Rの第2の異なるエピトープに結合する第2の結合部位少なくとも1つを有する。
【0148】
多価の多重特異性の結合分子は可変領域2つ以上を含む重鎖及び/又は可変領域1つ以上を含む軽鎖を含有してよく、ここで、可変領域の少なくとも2つはLT−ベータ受容体上の異なるエピトープを認識する。
【0149】
1つの実施形態において、多価結合分子はリンホトキシン−ベータ受容体のアゴニストであり、そして、受容体に結合してLT−β−Rシグナリングを誘導することができるドメイン少なくとも2つを含む。これらのコンストラクトはLT−ベータ受容体への結合に関して特異的な抗原認識部位を含む可変領域2つ以上を含有する重鎖、及び、可変領域1つ以上を含有する軽鎖を包含することができ、或いは、LT−ベータ受容体の結合のために特異的なCDRを含む可変領域2つ以上を含有する重鎖又は軽鎖のみを含むように構築することができる。
【0150】
本発明の特定の実施形態においては、結合分子は以下の抗体:BKA11、CDH10、BCG6、AGH1、BDA8、CBE11及びBHA10の1つが結合するエピトープよりなるリンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)エピトープの群のメンバー少なくとも2つに対して特異的である。1つの実施形態において、結合分子はCBE11及びBHA10抗体が結合するエピトープに対して特異的であり、そして特定の実施形態においては、4価である。1つの実施形態において、結合分子は2つのCBE11特異的抗原認識部位及び2つのBHA10特異的認識部位を有し、ここで、結合分子は二重特異性の4価のLT−β−Rアゴニスト結合分子である。多重特異性結合分子の何れかにおいて、少なくとも1つの抗原認識部位はscFvドメイン上に位置してよく、そして特定の実施形態においては、全ての抗原認識部位がscFvドメイン上に位置する。
【0151】
特定の実施形態においては、結合分子は二重特異性である。二重特異性分子は例えば同じ標的分子上、又は異なる標的分子上の2つの異なる標的部位に結合できる。例えば抗体の場合、二重特異性分子は例えば同じ抗原上、又は2つの異なる抗原上の2つの異なるエピトープに結合できる。二重特異性分子は又、例えば細胞毒性を特定の標的に施行させることにより、(例えば病原体又は腫瘍細胞に、そして細胞毒性トリガー分子、例えばT細胞受容体又はFcγ受容体に結合することにより)ヒトの治療のために使用できる。二重特異性抗体は又、例えば線維溶解剤又はワクチンアジュバントとしても使用できる。
【0152】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子はLT−β−Rに対して指向されたアーム部(即ち結合部位)少なくとも1つ、及び細胞表面分子又は可溶性分子に対して指向されたアーム部少なくとも1つを包含する。例示的な細胞表面分子は腫瘍又は新生物細胞の表面上に過剰発現される受容体又は腫瘍細胞抗原を包含する。例示的な可溶性分子は抗腫瘍剤(例えば毒素、化学療法剤、及びそれらのプロドラッグ)、及び可溶性酵素(例えばプロドラッグ変換酵素)を包含する。
【0153】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子が結合する可溶性分子は、TNFファミリーの可溶性リガンドである。TNFファミリーリガンドの例は限定しないが、LTA(TNFR1/TNFRSF1Aに結合)、TNF(CD120b/TNFRSF1Bに結合)、LTB(LTBR/TNFRSF3に結合)、OX40L(OX40/TNFRSF4に結合)、CD40L(CD40/TNFRSF5に結合)、(Fas/TNFRSF6及びDcR3/TNFRSF6Bに結合)、CD27L(CD27/TNFRSF7に結合)、CD30L(CD30/TNFRSF8に結合)、4−1−BB−L(4−1−BB/TNFRSF9に結合)、TRAIL(TRAIL−R1/TNFRSF10A、TRAIL−R2/TNFRSF10B、TRAIL−R3/TNFRSF10C、及びTRAIL−R4/TNFRSF10Dに結合)、RANKL(RANK/TNFRSF11A及びOsteoprotegrin/TNFRSF11Bに結合)、APO−3L(APO−3/TNFRSF12及びDR3L/TNFRSF12Lに結合)、APRIL(TACI/TNFRSF13Bに結合)、BAFF(BAFFR/TNFRSF13Aに結合)、LIGHT(HVEM/TNFRSF14に結合)、NGFリガンド(LNGFR、例えばNGF−β、NGF−2/NTF3、NTF5、BDNF、IFRD1に結合)、GITRL(GITR/TNFRSF18に結合)、EDAR1&XEDARリガンド、Fn14リガンド、及びTroy/Tradeリガンドを包含する。
【0154】
別の実施形態においては、本発明の二重特異性結合分子が結合する可溶性分子はTNFファミリーの受容体、即ちLT−β−R以外のTNF受容体である。単一特異性TNFR結合分子を用いた腫瘍の治療における制限因子は腫瘍のサブセットのみがこの治療薬に感受性であると考えられる点である。二重特異性TNFR結合分子はTNFRを特異的に活性化し、そして、例えば1つより多くのTNFR又はTNFR型をターゲティングしてシグナリングを増強できるような近接部にまでTNFRを運搬することにより受容体シグナリングを増強し、これにより癌の治療の進歩した方法を与える。1つの実施形態において、二重特異性TNFR結合分子は同じ型のTNFR2つ以上に結合し、集合するTNFRの数を増大させることによりシグナル強度を増大させる。別のより好ましい実施形態においては、二重特異性TNFR結合分子はTNFファミリーの2つの異なる受容体に結合することができる。
【0155】
1つの実施形態において、二重特異性結合分子が結合するTNFRはデスドメインを含有する。「デスドメイン」という用語はTNFファミリー受容体の細胞質領域を指し、これはTNF媒介細胞死又はアポトーシスのシグナリング及びこれらの受容体により媒介される細胞毒性の誘導に関与している。この領域はアダプター蛋白質を介したカスパーゼの活性化に受容体をカップリングさせることにより、外因性の死滅経路を活性化する。
【0156】
デスドメインを含有するTNF受容体の例は、限定しないが、TNFR1(TNFRSF1A)、Fas(TNFRSF6)、DR−3(TNFRSF6B)、LNGFR(TNFRSF16)TRAIL−R1(TNFRSF10A)、TRAIL−R2(TNFRSF10B)及びDR6(TNFRSF21)を包含する。これらの受容体のアポトーシスシグナリングは同族体リガンドの結合及び以下の受容体−リガンド対:TNFR1/TNFα、Fas/FasL、DR−3/DR−3LG、TRAIL−R1/TRAIL、又はTRAIL−R2/TRAIL何れかの形成によりモジュレートされる。
【0157】
デスドメインを含有するTNFファミリー受容体をターゲティングする二重特異性結合分子は、この型のTNFRが腫瘍細胞上で過剰発現される場合が多く、そして受容体の刺激が腫瘍細胞アポトーシスを活性化できることから、癌の治療のために有用である。好ましい実施形態においては、本発明の二重特異性結合分子が結合するTNFRを含有するデスドメインはTRAIL−R2である。TRAIL−R2は、その活性化が肝細胞のアポトーシスをトリガーせず、従って低減された毒性を有するはずであることから、ヒトの腫瘍の治療のために好ましい。
【0158】
デスドメイン含有受容体、例えばTNFR1又はFasの一部の活性化はインビボの用途においては毒性であったが、これらの受容体を他のTNF受容体に係留させることは毒性を減衰させ、そしてこれにより毒性の抗体をより低毒性とすると考えられる。
【0159】
デスドメイン含有TNF受容体に対しては多くの抗体が形成されており、当該分野で良く知られている。そのような抗体は抗TNF−R1モノクローナル抗体(R&D systems抗TNF−R1;TularikmAb#985、米国特許6,110,690;6,437,113),抗Fas受容体mAbCH−11(米国特許6,312,691;WO95/10540)、抗DR3抗体(米国特許5,985,547;Johnson等(1984)ImmunoBiology of HLA,編集Dupont、B.O.Springer、New York;米国特許6,462,176;6,469,166)、及び抗TRAIL−R抗体(米国特許5,763,223;6,072,047;6,284,236;6,521,228;6,569,642;6,642,358;及び米国特許6,417,328)を包含する。
【0160】
腫瘍形成において役割を有する他の標的TNFファミリー受容体は種々の腫瘍上に存在するか、又は理想的に過剰発現されるTNFファミリー受容体を定義することを可能にする種々の細胞型における受容体の発現の既存のRNAデータベースを用いて発見できる。更に又、既存のRNAデータベースは本発明の二重特異性TNFR結合分子が結合するTNFファミリー受容体の対は、腫瘍の型又は腫瘍のサブセット上でよりユニークに発現されるが、正常組織、特に肝臓及び脈管上には豊富ではない受容体対を発見することにより最適化され得るという点において追加的利点を与える。そのような態様において、腫瘍には強力なシグナルを送達し、正常組織には影響しない受容体対(又はそれ以上のもの)が発見される。
【0161】
本発明の多重特異性結合分子は各特異性に関して1価、又は各特異性に対して多価であってよい。1つの実施形態において、本発明の二重特異性結合分子は第1の標的分子、即ちLT−β−Rと反応する結合部位1つ、及び、第2の標的分子と反応する結合部位1つを含んでよい(例えば二重特異性抗体分子、融合蛋白質、又はミニボディー)。別の実施形態においては、本発明の二重特異性結合分子は第1の標的分子、即ちLT−β−Rと反応する結合部位2つ、及び、第2の標的分子と反応する結合部位2つを含んでよい(例えば二重特異性scFv2の4価抗体、4価ミニボディー、又はダイアボディー)。
【0162】
1つの実施形態において、本発明の多重特異性結合分子の結合部位の少なくとも1つは抗LT−β−R抗体又はその抗原結合フラグメントの抗原結合領域である。
【0163】
別の実施形態において、多重特異性結合分子の結合部位の少なくとも1つは単鎖Fvフラグメントである。1つの実施形態において、本発明の多重特異性結合分子は第1の標的分子、即ちLT−β−Rに指向されたscFvフラグメントを含有するアーム部1つ、及び、第2の標的分子に指向されたscFvを含有する第2のアーム部を有する2価のミニボディーである。
【0164】
別の実施形態において、本発明の多重特異性結合分子はscFv4価ミニボディーであり、scFv4価ミニボディーの各重鎖部分は第1及び第2のscFvフラグメントを含有する。該第2のscFvフラグメントは第1のscFvフラグメントのN末端に連結していてよい(例えば二重特異性NscFv4価ミニボディー又は二重特異性NscFv4価ミニボディー)。或いは、第2のscFvフラグメントは該第1のscFvフラグメントを含有する該重鎖の部分のC末端に連結してよい(例えば二重特異性C−scFv4価ミニボディー)。1つの実施形態において、第1及び第2のscFvフラグメントは同じかまたは異なる標的分子に結合してよい。二重特異性4価ミニボディーの第1の重鎖部分の第1及び第2のscFvフラグメントが同じ標的分子に結合する場合、二重特異性4価ミニボディーの第2の重鎖部分の第1及び第2のscFvフラグメントの少なくとも1つは異なる標的分子に結合する。
【0165】
別の実施形態において、本発明の多重特異性結合分子は二重特異性ダイアボディーであり、ダイアボディーの各アーム部は縦列のscFvフラグメントを含んでいる。1つの実施形態において、二重特異性ダイアボディーは第1の結合特異性を有する第1のアーム部及び第2の結合特異性を有する第2のアーム部を含んでよい。別の実施形態において、ダイアボディーの各アーム部は第1の結合特異性を有する第1のscFvフラグメント及び第2の結合特異性を有する第2のscFvフラグメントを含んでよい。
【0166】
別の実施形態において、本発明の多重特異性結合分子はscFv2の4価抗体であり、scFv2の4価抗体の各重鎖部分はscFvフラグメントを含有する。scFvフラグメントは重鎖部分の可変領域のN末端に連結してよい(例えば二重特異性NscFv2の4価抗体又は二重特異性NscFv2の4価抗体)。或いは、scFvフラグメントはscFv2の4価抗体の重鎖部分のC末端に連結してよい(例えば二重特異性C−scFv2の4価抗体)。scFv2の4価抗体又の各重鎖部分は同じか又は異なる標的分子に結合する可変領域及びscFvフラグメントを有してよい。二重特異性scFv2の4価抗体の第1の重鎖部分のscFvフラグメント及び可変領域が同じ標的分子に結合する場合、二重特異性4価ミニボディーの第2の重鎖部分の第1及び第2のscFvフラグメントの少なくとも1つは異なる標的分子に結合する。
【0167】
別の実施形態においては、本発明の多重特異性結合分子はscFv2の4価ドメイン欠失抗体であり、scFv2の4価抗体の各重鎖部分はscFvフラグメントを含有している。scFvフラグメントは重鎖部分の可変領域のN末端に連結されていてよい(例えば二重特異性NscFv2の4価ドメイン欠失抗体又は二重特異性NscFv2の4価抗体)。或いは、scFvフラグメントはscFv2の4価抗体の重鎖部分のC末端に連結してよい(例えば二重特異性C−scFv2の4価抗体)。
【0168】
多価の多重特異性抗体を作成するための方法は当業者の知る通りである。完全長二重特異性抗体の伝統的製造は2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいており、その場合、2つの鎖は異なる特異性を有する(Milstein等、Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな分類のために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内僅か1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常はアフィニティークロマトグラフィーにより行われる正しい分子の精製は面倒であり、そして生成物の収率は低い。同様の操作法はWO93/08829及びTraunecker等、EMBO J.,10:3655−3659(1991)において開示されている。
【0169】
多価の抗LT−β−R抗体はネズミ又はヒト化BHA10(Browning等、J.Immunol.154:33(1995);Browning等、J.Exp.Med.183:867(1996))及び/又はネズミ又はヒト化CBE11(米国特許6,312,691)を包含する親抗LT−β−R抗体から誘導された種々の異なる配列を用いて、種々の異なる方法において構築してよい。
【0170】
二重特異性分子を製造する方法は当該分野で良く知られている。例えば組み換え手法を用いて二重特異性分子、例えばダイアボディー、単鎖ダイアボディー、縦列scFv等を製造できる。二重特異性分子を製造するための例示的な方法は当該分野で知られている(例えばKontermann等、Methods in Molecular Biology Vol.248:Antibody Engineering:Methods and Protocols.Pp227−242 US2003/0207346A1及びその引用文献)。1つの実施形態において、多量体二重特異性分子はUS2003/0207346A1又は米国特許5,821,333又はUS2004/0058400に記載のもののような方法を用いて製造される。
【0171】
別の実施形態において、本発明の多重特異性結合分子は多重特異性融合蛋白質である。本明細書においては、「多重特異性融合蛋白質」という表現は少なくとも2つの結合特異性を有する、即ち2つ以上の結合ドメインを組み合わせた融合蛋白質を指す。多重特異性融合蛋白質は、本質的にはWO89/02922(1989年4月6日公開)、EP314,317(1989年5月3日公開)、及び1992年5発2日発行の米国特許5,116,964に開示されている通りヘテロ2量体、ヘテロ3量体、又はヘテロ4量体として組み立てることができる。好ましい多重特異性融合蛋白質は二重特異性である。
【0172】
1つの実施形態において、要件となる二重特異性分子は抗体分子を発現するために使用される発現系、例えば哺乳類細胞、酵母、例えばPicchia、E.coli、バキュロウィルスなどにおいて発現される。1つの実施形態において、要件となる二重特異性分子はNEOSPLAベクター系において発現される(例えば米国特許6,159,730参照)。このベクターはサイトメガロウィルスのプロモーター/エンハンサー、マウスベータグロビン主要プロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエクソン1及びエクソン2、ジヒドロホレート還元酵素遺伝子及びリーダー配列を含有する。
【0173】
種々の他の多価の抗体コンストラクトが類型的な組み換えDNA手法、例えばPCT国際特許出願PCT/US86/02269;欧州特許出願184,187;欧州特許出願171,496;欧州特許出願173,494;PCT国際特許公開WO86/01533;米国特許4,816,567;欧州特許出願125,023;Better等(1988)Science240:1041−1043;Liu等(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:3439−3443;Liu等(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun等(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimura等(1987)Cancer Res.47:999−1005;Wood等(1985)Nature 314:446−449;Shaw等(1988)J.Natl.CancerInst.80:1553−1559);Morrison(1985)Science229:1202−1207;Oi等(1986)BioTechniques 4:214;米国特許5,225,539;Jones等(1986)Nature321:552−525;Verhoeyan等(1988)Science239:1534;Beidler等(1988)J.Immunol.141:4053−4060;及びWinter及びMilstein,Nature,349,pp.293−99(1991)に記載されているものを用いて当業者により開発されてよい。好ましくは、非ヒト抗体は非ヒト抗原結合ドメインをヒト定常ドメインと連結することにより「ヒト化」される(例えばCabilly等、米国特許4,816,567;Morrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,pp.6851−55(1984))。
【0174】
多価抗体コンストラクトを製造するために使用してよい他の方法は以下の公開物:Ghetie,Maria−Ana等(2001)Blood 97:1392−1398;Wolff,Edith A.等(1993)Cancer Research 53:2560−2565;Ghetie,Maria−Ana等(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.94:7509−7514;Kim,J.C.等(2002)Int.J.Cancer 97(4):542−547;Todorovska,Aneta等(2001)Journal of Immunological Methods 248:47−66;Coloma M.J.等(1997)Nature Biotechnology 15:159−163;Zuo,Zhuang等(2000)Protein Engineering(Suppl.)13(5):361−367;Santos A.D.,等(1999)Clinical Cancer Research 5:3118s−3123s;Presta,Leonard G.(2002)Current Pharmaceutical Biotechnology3:237−256;van Spriel,Annemiek等(2000)Review Immunology Today21(8)391−397に記載されている。
【0175】
一部の実施形態においては、本発明の結合分子及び結合分子フラグメントは所望の作用を与えるために化学的に修飾してよい。例えば、本発明の抗体及び抗体フラグメントのPEG化は、例えば以下の参考文献:Focus on Growth Factors3:4−10(1992);EP0154316;及びEP0401384(これらの各々は参照により全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているような、当該分野で知られたPEG化反応の何れかにより実施してよい。好ましくは、PEG化は反応性のポリエチレングリコール分子(又は類似の反応性の水溶性重合体)を用いたアシル化反応又はアルキル化反応を介して実施される。本発明の結合分子及び結合分子フラグメントのPEG化のための好ましい水溶性重合体はポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書においては、「ポリエチレングリコール」とはモノ(C1−C10)アルコキシ又はアリールオキシ−ポリエチレングリコールのような他の蛋白質を誘導体化するために使用されているPEGの形態の何れかを包含する意味を有する。
【0176】
本発明のPEG化結合分子及び結合分子フラグメントを製造するための方法は一般的に(a)結合分子又は結合分子フラグメントがPEG基1つ以上に結合されるような条件下でPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体のようなポリエチレングリコールに結合分子又は結合分子フラグメントを反応させること、及び(b)反応産物を得ること、という工程を含むことになる。既知のパラメーター及び所望の結果に基づいて最適な反応条件又はアシル化反応を選択することは当業者の知る通りである。
【0177】
PEG化結合分子及び結合分子フラグメントは一般的に本明細書に記載する結合分子及び結合分子フラグメントの投与により軽減又は調整される可能性のある状態を治療するために使用してよい。一般的に、PEG化結合分子及び結合分子フラグメントは非PEG化の結合分子及び結合分子フラグメントと比較して増大した半減期を有する。PEG化結合分子及び結合分子フラグメントは単独で、合同で、又は他の医薬組成物と組み合わせて使用してよい。
【0178】
本発明の別の実施形態において、結合分子又はその抗原結合フラグメントは当該分野で知られた手法を用いてアルブミンにコンジュゲートされる。
【0179】
本発明の別の実施形態においては、結合分子又はそのフラグメントは潜在的なグリコシル化部位を低減又は排除するために修飾される。そのような修飾された抗体は頻繁には「アグリコシル化」結合分子と称される。結合分子又はその抗原結合フラグメントの結合親和性を向上させるためには結合分子のグリコシル化部位を例えば突然変異誘発(例えば部位指向性突然変異誘発)により改変することができる。「グリコシル化部位」とは糖残基の結合のための位置として真核生物細胞により認識されるアミノ酸残基を指す。炭水化物、例えばオリゴ糖が結合しているアミノ酸は典型的にはアスパラギン(N連結部)、セリン(O連結部)、及びスレオニン(O連結部)の残基である。結合分子又は抗原結合フラグメント内部の潜在的グリコシル化部位を発見するためには、結合分子の配列を例えば、Center for Biological Sequence Analysis(N連結グリコシル化部位に関してはhttp://www.cbs.dtu.dk/services/NetNGlyc/参照)及びO連結グリコシル化部位に関してはhttp://www.cbs.dtu.dk/services/NetOGlyc/参照)により提供されるウエブサイトのような公的に使用できるデータベースを用いて調べる。結合分子のグリコシル化部位を改変するための追加的方法は米国特許6,350,861及び5,714,350に記載されている。
【0180】
本発明の更に別の実施形態において、結合分子又はその抗原結合フラグメントは、未修飾の結合分子と相対比較して少なくとも1つの定常領域媒介生物学的エフェクター機能が低減されるように結合分子の定常領域が修飾されるように改変できる。本発明の結合分子をそれがFc受容体(FcR)に対して低減された結合を示すように修飾するためには、結合分子の免疫グロブリン定常領域セグメントをFcR相互作用のために必要な特定の領域において突然変異させることができる(例えばCanfield等(1991)J.Exp.Med.173:1483;及びLund,J.等(1991)J.of Immunol.147:2657参照)。結合分子のFcR結合能力の低減は又、FcR相互作用に依存している他のエフェクター機能、例えばオプソニン作用及び貪食作用及び抗原依存性細胞性細胞毒性も低減する場合がある。
【0181】
特定の実施形態においては、本発明は更に、例えばエフェクター細胞上の補体又は受容体のようなエフェクター分子に結合する能力のようなエフェクター機能の改変された結合分子を特徴とする。特に本発明のヒト化結合分子は改変された定常領域、例えばFc領域の少なくとも1つのアミノ酸残基が異なる残基又は側鎖により置き換えられていることにより結合分子のFcRに結合する能力が低減されているFc領域を有している。結合分子のFcR結合能力の低減は又、FcR相互作用に依存している他のエフェクター機能、例えばオプソニン作用及び貪食作用及び抗原依存性細胞性細胞毒性も低減する場合がある。1つの実施形態において、修飾されたヒト化結合分子はIgGクラスのものであり、ヒト化結合分子が例えば未修飾のヒト化結合分子と比較して改変されたエフェクター機能を有するようにFc領域における少なくとも1つアミノ酸残基の置き換えを含む。特定の実施形態においては、本発明のヒト化結合分子は、それが低免疫原性となるように(例えば望ましくないエフェクター細胞活性、溶解、又は補体結合を惹起しないように)、及び/又はLT−β−R又はそのリガンドに対する特異性を保持しつつより望ましい半減期を有するように改変されたエフェクター機能を有する。
【0182】
或いは、本発明はFcR結合、例えばFcγR3結合を増強するように改変された定常領域を有するヒト化結合分子を特徴とする。そのような結合分子はエフェクター細胞機能を調製するため、例えばADCC活性を増大するため、例えば特に本発明の腫瘍学的用途における使用のために有用である。
【0183】
本明細書においては、「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」及び「ADCC」とは、FcRを発現する非特異的細胞毒性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合した結合分子を認識し、そして後に標的細胞の溶解を誘発する細胞媒介性の反応を指す。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は例えば結合分子と他の薬剤又は結合分子のコンジュゲートのような抗体のFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。
【0184】
更に別の実施形態において、本発明の抗LT−β−R結合分子又は生物学的薬剤は本発明の方法における使用のための化学療法剤又は毒素にコンジュゲートできる。本発明の抗体にコンジュゲートできる化学療法剤の例は限定しないが、ラジオコンジュゲートを包含する(90Y、131I、99mTc、111In、186Rh等)。
【0185】
腫瘍上のLT−β−R結合分子の細胞毒性作用はLT−β−R活性化剤、特にIFNガンマの存在により増強してよい。インターフェロン、好ましくはIFNガンマを誘導することができ、そして腫瘍細胞上のLT−アルファ/ベータヘテロマー複合体及び抗LT−β−R結合分子の細胞毒性作用を強化する何れかの薬剤は、LT−β−R結合分子のグループに属する。例えば、臨床試験により2本鎖RNA(dsRNA)投与によるインターフェロンの誘導が明らかにされている。従ってポリリボグアニル/ポリリボシチジル酸(ポリ−rG/rC)及び他の形態のdsRNAはインターフェロン誘導物質として有効である(Juraskova等、Eur.J.Pharmacol.,221,pp.107−11(1992))。
【0186】
上記した通り製造されたLT−β−R結合分子は医薬組成物としての使用のために適当な純度にまで精製してよい。一般的に精製された組成物は組成物中に存在する全ての物質種の約85%超、存在する全ての物質種の約85%超、90%超、95%超、99%超、又はそれより高値に相当する1つの物質種を有することになる。対象となる物質種は組成物が単一の物質種より本質的になるような本質的均質性(従来の検出方法によっては組成物中に夾雑物質種が検出できない)にまで精製してよい。当業者は本明細書の教示を鑑みながら蛋白質の精製のための標準的な手法を用いて本発明のポリペプチドを精製してよい。ポリペプチドの純度は当業者に知られた多くの方法、例えばアミノ末端アミノ酸配列分析、ゲル電気泳動、及び質量スペクトル分析により測定してよい。
【0187】
3.生物学的薬剤
生物学的薬剤(生物学的物質とも称する)は生物学的な系、例えば生物、細胞、又は組み換え系の産物である。そのような生物学的薬剤の例は核酸分子、例えばアンチセンス核酸分子、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、抗体、例えばモノクローナル抗体、及びサイトカインを包含する。例示的な生物学的薬剤を以下により詳細に考察する。
【0188】
インターフェロン(IFN)は身体内に天然に存在する型の生物学的薬剤である。インターフェロンは実験室においても生産され、そして生物学的治療において癌患者に投与されている。それらは癌患者の免疫系が癌細胞に対抗して作用する態様を向上させることが分かっている。インターフェロンは癌細胞に直接作用することにより、その生育を遅らせる場合があり、或いは、それらは癌細胞をより正常な挙動を示す細胞に変化させる場合もある。一部のインターフェロンは又、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、及びマクロファージ、即ち癌細胞と戦うことを支援する血流中の白血球の型も刺激する場合がある。
【0189】
インターロイキン(IL)は多くの免疫細胞の生育及び活性を刺激する。それらは身体内に天然に存在するが、実験室において作成することもできる蛋白質(サイトカイン及びケモカイン)である。一部のインターロイキンは免疫細胞、例えば癌細胞を破壊するために作用するリンパ球の生育及び活性を刺激する。
【0190】
コロニー刺激因子(CSF)は骨髄内の幹細胞により多くの血球を生産させるために患者に投与される蛋白質である。身体は常時新しい白血球、赤血球、及び血小板を、特に癌が存在する場合に、必要としている。CSFは化学療法剤とともに投与されることにより免疫系のブーストを支援している。癌患者が化学療法剤を投与されると、新しい血球を生産する骨髄の能力が抑制され、患者はより感染症を発症しやすくなる。免疫系の一部は血球非存在下では機能することができず、従ってコロニー刺激因子が骨髄幹細胞に白血球、血小板、及び赤血球を生産させている。適切な細胞生産があれば、他の癌治療を継続することができ、より高用量の化学療法剤を安全に患者に投与できるようになる。
【0191】
抗体、例えばモノクローナル抗体は、癌細胞に結合する実験室において製造される薬剤である。癌破壊剤が身体内に導入されると、それらは抗体を発見し、癌細胞を殺傷する。モノクローナル抗体剤は健康な細胞は破壊しない。モノクローナル抗体は種々の機序を介してその治療作用を達成する。それらはアポトーシス又はプログラムされた細胞死をもたらすことにおいて直接の作用を有することができる。それらは成長因子受容体をブロックすることができ、腫瘍細胞の増殖を効果的に停止させる。モノクローナル抗体を発現する細胞においては、それらは抗イディオタイプ抗体形成をもたらすことができる。
【0192】
本発明の複合投与において使用してよい抗体の例は抗CD20抗体、例えば限定しないが、セツキシマブ、トシツモマブ、リツキシマブ、及びイブリツモマブを包含する。抗HER2抗体もまた癌の治療のために抗LT−β−R抗体と組み合わせて使用してよい。1つの実施形態において、抗HER2抗体はトラスツズマブ(ヘルセプチン)である。癌の治療のために抗LT−β−R抗体と組み合わせて使用してよい抗体の別の例は、抗CD52抗体(例えばアレルムツズマブ)、抗CD22抗体(例えばエプラツズマブ)、及び抗CD33抗体(例えばゲムツズマブオゾガマイシン)を包含する。特定の実施形態においては、生物学的薬剤は血管形成を抑制する抗体であり、抗VEGF抗体、例えばベバシツマブである。他の実施形態においては、生物学的薬剤は抗EGFR抗体である抗体、例えばセツキシマブである。別の例は抗糖蛋白質17−1A抗体エドレコロマブである。
【0193】
サイトカイン治療は対象の免疫系が癌性である細胞を認識して破壊することを支援するために蛋白(サイトカイン)を使用する。サイトカインは免疫系により身体内で天然に生産されるが、実験室で製造することもできる。この療法は進行した黒色腫において、及び、アジュバント療法において使用される(治療薬は主要な癌治療の後に、又はそれに追加的に与えられる)。サイトカイン療法は身体の全ての部分に到達して癌細胞を殺傷し、腫瘍の生育を防止する。
【0194】
融合蛋白質も使用してよい。例えば、組み換えヒトApo2L/TRAIL(Genentech)を複合療法において使用してよい。Apo2/TRAILはアポトーシス(プログラムされた細胞死)の調節に関与しているプロアポトーシス受容体DR4及びDR5の両方を活性化するために設計された最初の二元的なプロアポトーシス受容体アゴニストである。
【0195】
アンチセンス核酸分子もまた本発明の方法において使用してよい。本明細書においては、「アンチセンス」核酸は例えば2本鎖cDNA分子のコーディング鎖に相補、mRNA配列に相補であるか、又は遺伝子のコーディング鎖に相補である蛋白質をコードする「センス」核酸に相補なヌクレオチド配列を含む。従って、アンチセンス核酸はセンス核酸に水素結合できる。
【0196】
1つの実施形態において、生物学的薬剤は例えばbFGF、VEGF及びEGFRのような血管形成を増強する分子のsiRNA分子である。1つの実施形態において、血管形成を抑制する生物学的薬剤はRNAiを媒介する。RNA干渉(RNAi)は転写後のターゲティングされた遺伝子サイレント化の手法であり、2本鎖RNA(dsRNA)と同じ配列を含有するメッセンジャーRNA(mRNA)を分解するためにdsRNAを使用している(Sharp,P.A.及びZamore,P.D.287,2431−2432(2000);Zamore,P.D.等、Cell 101,25−33(2000).Tuschl,T.等、Genes Dev.13,3191−3197(1999);Cottrell TR及びDoering TL.2003.Trends Microbiol.11:37−43;Bushman F.2003.Mol Therapy.7:9−10;McManus MT及びSharp PA.2002.Nat Rev Genet.3:737−47)。プロセスは内因性リボヌクレアーゼがより長いdsRNAを切断してより短い、例えば21又は22ヌクレオチド長のRNA、即ち短鎖干渉RNA又はsiRNAと称されるものにする場合に起こる。その後、より小型のRNAセグメントは標的mRNAの分解を媒介する。RNAiの合成のためのキットは例えばNew England Biolabs又はAmbionから市販されている。1つの実施形態においてアンチセンスRNAにおいて使用するための本明細書に記載する化学的特性の1つ以上はRNAiを媒介する分子において使用することができる。
【0197】
細胞における特定の蛋白質の発現をダウンレギュレートするためのアンチセンス核酸の使用は当該分野で良く知られている(例えばWeintraub,H.等、Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis,Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1)1986;Askari,F.K.及びMcDonnell,W.M.(1996)N.Eng.J.Med.334:316−318;Bennett,M.R.及びSchwartz,S.M.(1995)Circulation 92:1981−1993;Mercola,D.及びCohen,J.S.(1995)Cancer Gene Ther.2:47−59;Rossi,J.J.(1995)Br.Med.Bull.51:217−225;Wagner,R.W.(1994)Nature 372:333−335参照)。アンチセンス核酸分子は別の核酸分子のコーディング鎖(例えばmRNA配列)に相補であるヌクレオチド配列を含み、従って他の核酸分子のコーディング鎖に水素結合することができる。mRNAの配列に相補なアンチセンス配列はmRNAのコーディング領域、mRNAの5’又は3’未翻訳領域、又はコーディング領域と未翻訳領域を架橋している領域(例えば5’未翻訳領域及びコーディング領域の接合部)に存在する配列に相補であることができる。更にまた、アンチセンス核酸は例えば転写開始配列又は調節エレメントのようなmRNAをコードしている遺伝子の調節領域に対して配列において相補であることができる。好ましくは、アンチセンス核酸はmRNAのコーディング鎖上の開始コドンに先行するかそれに渡っている領域に対し、又は3’未翻訳領域において相補であるように設計される。
【0198】
血管形成を増強する分子のコーディング鎖配列がある場合、本発明のアンチセンス核酸はワトソンとクリックの塩基対形成の規則に従って設計できる。アンチセンス核酸分子はmRNAの全コーディング領域に相補であることができるが、より好ましくはmRNAのコーディング又は非コーディング領域の一部分のみに対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドはmRNAの翻訳開始部位の周囲の領域に対して相補であることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50ヌクレオチド長であることができる。本発明のアンチセンス核酸は当該分野で知られた操作法を用いた化学合成及び酵素的ライゲーション反応を用いて構築できる。例えばアンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は天然に存在するヌクレオチドを用いて化学合成することができ、或いは、例えばホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドのように、分子の生物学的安定性を増大させるため、又はアンチセンスとセンス核酸の間に形成されるデュプレックスの物理的安定性を増大させるために設計された多様に修飾されたヌクレオチドを使用できる。アンチセンス核酸を形成するために使用できる修飾されたヌクレオチドの例は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ウイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンを包含する。細胞内での発現を抑制するためにはアンチセンスオリゴヌクレオチド1つ以上を使用できる。或いは、アンチセンス核酸はアンチセンス方向に核酸がサブクローニングされている(即ち挿入された核酸から転写されたRNAが、後述するセクションにおいて更に説明する通り目的の標的核酸に対してアンチセンス方向となることになる)発現ベクターを用いて生物学的に製造できる。
【0199】
更に別の実施形態においては、本発明のアンチセンス核酸分子はα−アノマー核酸分子である。α−アノマー核酸分子は相補RNAと特異的な2本鎖ハイブリッドを形成し、ここで、通常のβ−ユニットとは逆に、鎖は相互に平行となる(Gaultier等(1987)Nucleic Acids.Res.15:6625−6641)。アンチセンス核酸分子は又2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue等、(1987)Nucleic Acids Res.15:6131−6148))又はキメラRNA−DNA類縁体(Inoue等、(1987)FEBSLett.215:327−330)を含むことができる。
【0200】
別の実施形態において本発明のアンチセンス核酸はRNAiを媒介する化合物である。RNA干渉剤は、限定しないが、核酸分子、例えば標的の遺伝子又はゲノム配列に相同であるRNA分子、「短鎖干渉RNA」(siRNA)、「短鎖ヘアピン」又は「小型ヘアピンRNA」(shRNA)、及びRNA干渉(RNAi)により標的遺伝子の発現を妨害又は抑制する小分子を包含する。RNA干渉は2本鎖RNA(dsRNA)を用いることによりdsRNAと同じ配列を含有するメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する転写後のターゲティングされた遺伝子サイレント化手法である(Sharp,P.A.及びZamore,P.D.287,2431−2432(2000);Zamore,P.D.等、Cell 101,25−33(2000).Tuschl,T.等、Genes Dev.13,3191−3197(1999))。プロセスは内因性リボヌクレアーゼがより長いdsRNAを切断してより短い、例えば21又は22ヌクレオチド長のRNA、即ち短鎖干渉RNA又はsiRNAと称されるものにする場合に起こる。その後、より小型のRNAセグメントは標的mRNAの分解を媒介する。RNAiの合成のためのキットは例えばNew England Biolabs又はAmbionから市販されている。1つの実施形態においてアンチセンスRNAにおいて使用するための上記した化学的特性の1つ以上を使用できる。
【0201】
血管形成を抑制する分子をコードする核酸分子は対象の細胞内におけるコードされた蛋白質の発現のために適する形態で対象内に導入してよく、本明細書の方法においても使用してよい。例示的な血管形成を抑制する分子は、TSP−1、TSP−2、IFN−α、IFN−β、アンジオスタチン、エンドスチン、ツマスタチン、カンスタチン、VEGI、PEDF、バソヒビン、及びプロラクチン2−メトキシエストラジオールの16kDaのフラグメントを包含する(Kerbel(2004)J.Clin Invest 114:884参照)。
【0202】
例えば完全長又は部分的なcDNAの配列を標準的な分子生物学の手法を用いながら組み換え発現ベクターにクローニングし、そしてベクターを細胞にトランスフェクトする。cDNAは例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いた増幅によるか、又は適切なcDNAライブラリをスクリーニングすることにより得ることができる。cDNAのヌクレオチド配列は、標準的なPCR法によるcDNAの増幅を可能にするPCRプライマーの設計のため、又は標準的なハイブリダイゼーション方法を用いたcDNAライブラリのスクリーニングのために使用できるハイブリダイゼーションプローブの設計のために使用することができる。cDNAの単離又は増幅の後、DNAフラグメントを適当な発現ベクター内に導入する。
【0203】
当然ながら1種より多い生物学的薬剤を抗LT−β−R結合分子と組み合わせて投与しておい。
【0204】
即ち、本発明は癌を治療するため、即ち腫瘍の大きさ及び/又は腫瘍の脈管形成を低減するため、及び/又は腫瘍の透過性を増大するための複合療法及び少なくとも1つの追加的薬剤の使用を可能にする。
【0205】
本発明は又、例えば透過性を増大すること、例えば脈管を正常化すること、例えば維持することにより例えば固形腫瘍の脈管が増大するように抗LT−β−R結合分子で腫瘍細胞を感作すること、そして次いでその後別の薬剤少なくとも1つを投与することによる癌の治療の方法を包含する。1つの実施形態において、化学療法剤は複合療法に追加的に投与される。
【0206】
好ましい実施形態においては、第2の薬剤は血管形成を抑制する。特定の好ましい実施形態においては、血管形成を抑制する薬剤は生物学的薬剤である。血管形成を抑制する生物学的薬剤は抗体又はその抗原結合フラグメントであってよい。特定の実施形態においては、血管形成を抑制する生物学的薬剤は抗VEGF抗体、例えばベバシツマブである。別の実施形態においては、生物学的薬剤は抗EGFR抗体、例えばセツキシマブである。
【0207】
本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つの生物学的薬剤はリツキシマブ、トラスツズマブ、トシツモマブ、イブリツモマブ、アレルムツズマブ、エプラツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、オブリメルセン及びパニツムマブよりなる群から選択される。
【0208】
別の実施形態において、血管形成を抑制する薬剤は小分子である。1つの実施形態において、小分子は表皮成長因子1型/表皮成長因子受容体(HER1/EGFR)抑制剤、例えばエルロチニブである。
【0209】
本発明の別の実施形態において、生物学的薬剤はインターフェロン又はインターロイキンである。
【0210】
生物学的薬剤の種々の形態を使用してよい。それらには、限定しないが、プロフォルム分子、未荷電の分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド等のような形態が包含され、これらは腫瘍内に移植、注射、あるいは挿入された場合に生物学的に活性化される。
【0211】
4.治療方法
本発明は更に、約2mm×2mm超の大きさの腫瘍を有する対象における腫瘍の大きさを低減する、固形腫瘍を有する対象における固形腫瘍、例えば約2mm×2mm超の大きさの腫瘍の脈管形成を低下させる、及び/又は、固形腫瘍を有する対象における固形腫瘍、例えば約2mm×2mm超の大きさの腫瘍の透過性を増大する、新しい治療方法を提供する。本方法では一般的に複合療法を対象に対して行う。本発明の特定の実施形態においては、方法は更に化学療法剤を対象に投与することを含んでよい。
【0212】
本発明の方法は癌を治療するため、例えば限定しないが固形腫瘍、例えば癌腫を治療するために使用してよい。本発明の化合物により治療できる固形腫瘍、例えば癌腫の例は、限定しないが、乳癌、精巣癌、肺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、膵臓癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌、並びに前立腺癌、胃癌、皮膚癌、腹部癌、食道癌及び膀胱癌を包含する。1つの実施形態において、腫瘍は結腸腫瘍である。別の実施形態においては、腫瘍は結腸腫瘍、子宮頚部腫瘍、胃の腫瘍、又は膵臓の腫瘍よりなる群から選択される。別の実施形態においては、腫瘍は病期I、病期II、病期III、及び病期IVの腫瘍よりなる群から選択される。
【0213】
本発明の1つの実施形態において、要件となる複合療法は樹立された腫瘍、例えば栄養が浸透圧により対象の脈管から腫瘍の中心にまでもはや透過することができないため、腫瘍が栄養を受け取るためにそれ自身の血管供給を必要とするような十分な大きさの腫瘍、即ち脈管形成腫瘍を治療するために使用される。1つの実施形態において、複合療法は少なくとも約1mm×1mmの寸法を有する腫瘍を治療するために使用される。本発明の別の実施形態においては、複合療法は少なくとも約2mm×2mmである腫瘍を治療するために使用される。本発明の更に別の実施形態においては、複合療法は少なくとも約5mm×5mmである腫瘍を治療するために使用される。本発明の別の実施形態において、腫瘍は少なくとも約1cmの体積を有する。1つの実施形態において、本発明の複合療法は触診により、又は当該分野で良く知られている画像化手法、例えばMRI、超音波、又はCATスキャンにより発見されるために十分大きい腫瘍を治療するために使用される。
【0214】
本発明の特定の実施形態においては、要件となる方法は約58%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%超の%腫瘍抑制をもたらす。1つの実施形態において、抗リンホトキシン−ベータ受容体(LT−β−R)結合分子、又はその抗原結合フラグメント、及び少なくとも1つの血管形成を抑制する薬剤の投与は、約58%以上の%腫瘍抑制をもたらす。
【0215】
特定の実施形態においては、方法は対象に有効量の抗LT−β−R結合分子及び第2の薬剤を非経口投与することを含む。1つの実施形態において、方法は対象への抗LT−β−R結合分子及び少なくとも1つの追加的薬剤の動脈内投与を含む。別の実施形態において、方法は有効量の抗LT−β−R結合分子及び少なくとも1つの追加的薬剤を直接対象の腫瘍の供給動脈血に投与することを含む。1つの実施形態において、方法は有効量の抗LT−β−R結合分子及び少なくとも1つの追加的薬剤を、直接カテーテルを用いて癌性腫瘍の供給動脈血に投与することを含む。抗LT−β−R結合分子及び少なくとも1つの追加的薬剤を投与するためにカテーテルを使用する実施形態においては、カテーテルの挿入は、蛍光測定、又はカテーテルの挿入を観察及び/又は誘導する当該分野で知られた他の方法により、誘導又は観察してよい。別の実施形態においては、方法は化学塞栓形成法を含む。例えば化学塞栓形成法は油脂基剤(例えばエチオドール中のポリビニルアルコール)及び1つ以上の生物学的薬剤と混合した樹脂様物質を含む組成物で癌性腫瘍に供給している血管をブロックすることを包含してよい。更に別の実施形態においては、方法は対象への抗LT−β−R結合分子及び少なくとも1つの追加的薬剤の全身投与を含む。
【0216】
一般的に、本明細書の医薬組成物を利用した化学塞栓形成法又は直接の動脈内又は静脈内の注射による療法は、典型的には部位にかかわらず同様の態様において実施される。慨すれば、血管造影法(血管のロードマップ)、又は特定の実施形態においてより詳細には、塞栓すべき区域の血管造影法を、先ず、X線を撮りながら動脈又は静脈(塞栓形成又は注射すべき部位による)内に挿入したカテーテルを介して放射線不透明性の造影剤を注射することにより実施してよい。カテーテルは経皮的に、又は手術により挿入してよい。次に流動の停止が観察されるまでカテーテルを介して本発明の医薬組成物を還流させることにより血管を塞栓させる。閉塞は血管造影法を反復することにより確認してよい。直接の注射を使用する実施形態においては、次に血管に所望の用量の本発明の医薬組成物を注入する。
【0217】
塞栓形成法による療法は一般的に治療すべき腫瘍又は血管塊の間質全体に渡る抑制剤を含有する組成物の分布をもたらす。動脈管腔を詰まらせる塞栓粒子の物理的な嵩は血液供給の閉塞をもたらす。この作用に加えて、抗血管形成因子の存在により腫瘍又は血管塊に供給するための新しい血管の形成が防止され、血液供給を遮断する不活性化の作用が増強される。直接の動脈内又は静脈内投与は一般的にやはり、治療すべき腫瘍又は血管の塊の間質全体に渡る抑制剤を含有する組成物の分布をもたらす。しかしながら、血液供給はこの方法では閉塞されるとは一般的には期待されない。
【0218】
本発明の1つの特徴において、肝臓又は他の組織の原発及び二次腫瘍は塞栓形成又は直接の動脈内又は静脈内の注射療法を利用しながら治療してよい。慨すれば蛍光測定ガイダンスの下に動脈系を通過させながらカテーテルを操舵することにより、これを大腿又は上腕動脈経由により挿入し、肝動脈に進行する。腫瘍に供給している血管の完全なブロックを可能にするために必要な限り肝動脈樹内にカテーテルを進め、その際正常な構造に供給している動脈支部は可能な限り多く温存しておく。理想的にはこれは肝動脈の区分的な支部であるが、腫瘍及びそれぞれの血液供給の程度に応じて胃十二指腸動脈の起点に対して遠位の全肝動脈、或いは更に複数の別個の動脈をブロックする必要が生じる場合がある。所望のカテーテル位置が達成された後、ブロックすべき動脈における血流が好ましくは5分間観察後にも停止しているようになるまで、動脈カテーテルを介して組成物(上記)を注射することにより動脈を塞栓する。動脈の閉塞は、放射線不透明の造影剤をカテーテルを介して注射し、そして先に造影剤を充填されていた血管がもはやそうではないことを蛍光測定又はX線フィルムにより明らかにすることにより、確認してよい。直接の注射を用いる実施形態においては、所望の用量において動脈カテーテルを介して組成物(上記)を注射することにより動脈に注入する。閉塞すべき各供給動脈に対し同じ操作法を反復してよい。
【0219】
大部分の実施形態において、複合療法は、治療有効量の配合治療薬又は他の物質を予防的又は施療的な治療の部分として患者に送達するために十分な量で送達すべき物質を配合することになる。粒子中の活性化合物の所望濃度は薬物の吸収、不活性化、及び排出の速度、並びに化合物の送達速度に応じたものとなる。当然ながら用量の値は更に軽減すべき状態の重症度により変動してよい。更に又、何れかの特定の対象に対し、個々のニーズ及び組成物投与を管理又は監督している人物の専門的判断に応じて経時的に特定の投薬用法を調節する必要がある。典型的には投薬量は当業者に知られた手法を用いて決定される。選択される用量レベルは種々の要因、例えば使用する本発明の特定の化合物、又はそのエステル、塩又はアミドの活性、投与経路、投与時間、使用する特定の化合物の排出又は代謝の速度、治療の継続期間、使用する特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、及び/又は物質、治療すべき患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康度、及び病歴、及び医学分野でよく知られている類似の要因に依存する。
【0220】
用量は患者の体重のkgあたりの組成物の量に基づいてよい。他の量は当業者の知る通りであり、容易に決定できる。或いは、本発明の用量は組成物の血漿中濃度を参照することにより決定してよい。例えば最大血漿中濃度(Cmax)及びゼロ時から無限大までの血漿中濃度−時間の曲線の下部面積(AUC(0−4))を使用してよい。本発明に関する用量はCmax及びAUC(0−4)に関する上記数値をもたらすもの、及び、これらのパラメーターのより高値又は低値をもたらす他の用量を包含する。
【0221】
当業者である医師又は獣医師は必要な医薬組成物の有効量を容易に決定して処方することができる。例えば、医師又は獣医師は医薬組成物中で使用される本発明の化合物の用量を所望の治療効果を達成するために必要なものより低値のレベルにおいて開始し、そして所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増大させることができる。
【0222】
一般的に、抗LT−β−R結合分子及び少なくとも1つの追加的薬剤の複合療法の適当な1日当たり用量は治療効果をもたらすために有効な最低用量である複合療法の量となる。そのような有効用量は一般的に上記した要因に依存する。
【0223】
1つの実施形態において、本発明の複合療法における各薬剤の有効用量はその薬剤単独について有効であることが分かっている用量である。1つの実施形態において、抗LT−β−R結合分子の有効用量は約16mg/mである。別の実施形態においては、抗LT−β−R結合分子の有効用量は約20mg/mである。1つの実施形態において、血管形成を抑制する薬剤、例えば抗VEGF抗体の有効用量は約0.25〜8mg/kg、好ましくは約4mg/kgである(約0.75〜24mg/m)。当業者の知る通り、マウスモデルにおいて有効であることがわかった用量は数学的変換を用いてヒト対象における使用に適切である用量に容易に変換でき、例えば、mg/kg単位のマウスにおける用量を12.1で割り、そして次に37を掛ければヒトに対して適切であるmg/m単位の用量が得られる。
【0224】
別の実施形態においては、複合療法の一方又は両方の薬剤の有効用量は各薬剤単独について有効であることが分かっているよりも低値の用量となる。
【0225】
所定の患者において最も有効な治療をもたらすことになる何れかの特定の化合物の厳密な投与時間及び量は、特定の化合物の活性、薬物動態、及び生体利用性、患者の生理学的条件(例えば年齢、性別、疾患の型および病期、全身状態、所定の用量に対する応答性、及び医薬の型)、投与経路等に依存する。本明細書に示した指針を用いて治療を最適化、例えば投与の最適な時期及び/又は量の決定を行ってよく、それは対象をモニタリングし、そして用量及び/又は時期を調節することからなる類型的な実験を超えるものを必要としない。
【0226】
対象を治療している間、患者の健康状態は24時間の期間の所定の時期において該当する指標1つ以上を計測することによりモニタリングしてよい。栄養補給を包含する治療、量、投与回数及び製剤はそのようなモニタリングの結果に従って最適化してよい。同じパラメーターを計測することにより改善の程度を調べるために患者を周期的に再評価してよく、そのような再評価の初回は典型的には治療開始から4週間の終わりに行われ、そしてその後の再評価は治療中の各4〜8週毎、そしてその後は3カ月毎に行われる。治療は数カ月、更には数年間継続する場合があり、最低1カ月がヒトの場合の典型的な治療期間である。投与する薬剤の量、及び場合によって投与時期の調節は、これらの再評価に基づいて行われる。
【0227】
治療は化合物の最適用量より低値であるより少量の用量から開始してよい。その後、最適な治療効果が達成されるまで少量ずつ用量を増量してよい。
【0228】
これを知ることにより腫瘍学者はどの薬物が共同して功を奏するかを決定しやすくなり、そして、1種より多い薬物を使用する場合には薬物の各々の投与すべき時期(順序及び頻度)を厳密に計画しやすくなる。
【0229】
本発明の1つの実施形態においては、化学療法剤を更に本発明の複合療法において使用する。使用してよい化学療法剤の例は限定しないが、以下のもの:白金類(即ちシスプラチナ類)、アントラサイクリン類、ヌクレオシド類縁体(プリン及びピリミジン)、タキサン類、カンプトテシン類、エピポドフィロトキシン類、DNAアルキル化剤、フォレート拮抗剤、ビンカアルカロイド類、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、エストロゲン抑制剤、プロゲステロン抑制剤、アンドロゲン抑制剤、アロマターゼ抑制剤、インターフェロン、インターロイキン、モノクローナル抗体、タキソール、カンプトサール、アドリアマイシン(ドックス)、5−FU及びゲムシタビンを包含する。このような化学療法剤は複合療法と化学療法剤の同時投与による本発明の実施において使用してよい。1つの実施形態において、抗LT−β−R結合分子は少なくとも1つの追加的薬剤及びゲムシタビン、アドリアマイシン、カンプトサール、カルボプラチン、シスプラチン、及びタキソールよりなる群から選択される化学療法剤と組み合わせて投与される。抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子及び少なくとも1つの化学療法剤を投与することを含む癌を治療するための方法は又、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願11/156109にも記載されている。
【0230】
1つの実施形態において、抗LT−β−R結合分子又は生物学的薬剤は化学療法剤にコンジュゲートされる。1つの実施形態において抗LT−β−R結合分子又は生物学的薬剤は化学療法剤にコンジュゲートされない。本発明の別の実施形態においては、生物学的薬剤と抗LT−β−R結合分子の両方がコンジュゲートされる。
【0231】
本明細書に記載する抗LT−β−R結合分子と少なくとも1つの第2の薬剤の複合使用(任意に他の化学療法剤及び/又は生物学的薬剤と組み合わせる)は例えば異なる成分の作用の発生および持続期間が補足的である場合には、何れかの個々の成分に関する必要用量を低減してよい。そのような複合療法において、異なる活性剤を共に、又は別個に、そして同時に、又はその日の異なる時間に送達してよい。要件化合物の毒性及び治療効果は例えばLD50及びED50を測定するための細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的操作法により測定してよい。大きい治療指数を示す組成物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物も使用してよいが、副作用を低減するために所望の部位に化合物をターゲティングする送達系を設計するように留意する。
【0232】
細胞培養試験及び動物試験から得られたデータをヒトにおける使用のための用量の範囲を製剤する場合に使用してよい。何れかの栄養補給物、又は代替としてのその何れかの成分の用量は好ましくは毒性を殆ど又は全く伴わないED50を含む循環系中濃度の範囲にある。用量はこの範囲において使用する剤型及び利用する投与経路に依存して変動してよい。本発明の薬剤については、治療有効用量はまず細胞培養試験から推定してよい。ある用量を、細胞培養において決定されたIC50(即ち症状の50%最大抑制を達成する被験化合物の濃度)を包含する循環血漿中濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて製剤してよい。そのような情報はヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用してよい。血漿中のレベルは例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定してよい。
【0233】
血管形成を抑制する薬剤少なくとも1つがアンチセンス核酸分子である本発明の方法において、アンチセンス核酸分子は細胞性mRNA及び/又はゲノムDNAにハイブリダイズ又は結合することにより、例えば転写及び/又は翻訳を抑制することによる蛋白質の発現の抑制が達成されるように、対象への投与又はその形成は典型的にはインサイチュである。ハイブリダイゼーションは従来のヌクレオチド相補性により安定なデュプレックスを形成することによるか、又は例えばDNAデュプレックスに結合するアンチセンス核酸分子の場合は、二重らせんの深いほうの溝における特定の相互作用を介するものであることができる。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例は組織部位への直接の注射を包含する。或いは、アンチセンス核酸分子は選択された細胞をターゲティングするように修飾し、そして次に全身投与することができる。例えば、全身投与のためには、アンチセンス分子は、それらが選択された細胞の表面上に発現される受容体又は抗原に特異的に結合するように、例えばアンチセンス核酸分子を細胞表面受容体又は抗原に結合するペプチド又は抗体に連結することにより、修飾することができる。アンチセンス核酸分子は又、当業者に知られたベクターを用いて細胞に送達することもできる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するためには、アンチセンス核酸分子が強力なpolII又はpolIIIプロモーターの制御下に置かれているベクターコンストラクトが好ましい。
【0234】
対象への核酸分子の投与はインビトロ又はインビボの何れかにおいて実施できる(後者は後述するサブセクションにおいて更に考察する)。インビトロで方法を実施するためには、細胞を標準的な方法で対象から取得し、そして核酸分子と共にインビトロでインキュベート(即ち培養)し、そしてその後対象に投与することができる。免疫細胞を単離するための方法は当業者の知る通りである。細胞のエクスビボの遺伝子修飾とそれに続く対象への再投与の更なる考察については、W.F.Anderson等により米国特許5,399,346を参照。
【0235】
他の実施形態においては、核酸分子は対象にインビボで、例えば対象の関節部位に直接、投与される。例えば、核酸(例えば組み換え発現ベクター又はアンチセンスRNA)はインビボで細胞内に核酸(例えばDNA)を導入するための当該分野で知られた方法を用いて対象の細胞内に導入できる。そのような方法の例は以下を包含する。
【0236】
直接注射:ネイキッドのDNAは、細胞内にDNAを直接注射することにより、インビボで細胞内に導入することができる(例えばAcsadi等(1991)Nature332:815−818;Wolff等(1990)Science247:1465−1468参照)。例えばインビボで細胞内にDNAを注射するための送達装置(例えば「遺伝子銃」)を使用できる。そのような装置は市販されている(例えばBioRadから)。
【0237】
受容体媒介DNA取り込み:ネイキッドのDNAは又、細胞表面受容体に対するリガンドにカップリングされたポリリジンのようなカチオンにDNAを複合体化することにより、インビボで細胞内に導入できる(例えばWu,G.及びWu,C.H.(1988)J.Biol.Chem.263:14621;Wilson等(1992)J.Biol.Chem.267:963−967;及び米国特許5,166,320参照)。受容体へのDNA−リガンド複合体の結合は受容体媒介エンドサイトーシスによるDNAの取り込みを促進する。エンドソームを天然に破壊することにより物質を細胞質中に放出するアデノウィルスキャプシドに連結したDNA−リガンド複合体は、細胞内リソソームによる複合体の分解を回避するために使用できる(例えばCuriel等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8850;Cristiano等(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2122−2126参照)。
【0238】
レトロウィルス:欠損性レトロウィルスは遺伝子療法目的のための遺伝子転移における使用に関して十分特性化されている(例えばMiller,A.D.(1990)Blood 76:271参照)。レトロウィルスゲノム内に取り込まれた目的のヌクレオチド配列を有する組み換えレトロウィルスを構築できる。更に又、レトロウィルスゲノムの部分を除去してレトロウィルスを複製欠損とすることができる。複製欠損レトロウィルスを次に、標準的方法によりヘルパーウィルスの使用を介して標的細胞を感染させるために使用できるビリオン内にパッケージする。組み換えレトロウィルスを製造するため、及びそのようなウィルスでインビトロ又はインビボで細胞を感染させるためのプロトコルはCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M.等(編)Greene Publishing Associates,(1989),Sections9.10−9.14及び他の標準的な実験室マニュアルに記載されている。適当なレトロウィルスの例は当業者に良く知られているpLJ、pZIP、pWE及びpEMを包含する。適当なパッケージングウィルス系の例はΨCrip、ΨCre、Ψ2及びΨAmを包含する。レトロウィルスはインビトロ及び/又はインビボにおいて上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞、骨髄細胞を包含する多くの異なる細胞型内に種々の遺伝子を導入するために使用されている(例えばEglitis等(1985)Science 230:1395−1398;Danos及びMulligan(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460−6464;Wilson等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3014−3018;Armentano等(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:6141−6145;Huber等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8039−8043;Ferry等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8377−8381;Chowdhury等(1991)Science 254:1802−1805;van Beusechem等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7640−7644;Kay等(1992)Human Gene Therapy 3:641−647;Dai等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10892−10895;Hwu等(1993)J.Immunol.150:4104−4115;米国特許4,868,116;米国特許4,980,286;PCT出願WO89/07136;PCT出願WO89/02468;PCT出願WO89/05345;及びPCT出願WO92/07573参照)。レトロウィルスベクターはレトロウィルスゲノム(及びそれに挿入されている外来核酸)がホストゲノムに組み込まれて安定に核酸を細胞に導入するためには標的細胞の分裂を必要とする。即ち、標的細胞の複製を刺激することが必要となる。
【0239】
アデノウィルス:アデノウィルスのゲノムは、それが目的の遺伝子産物をコードして発現するが正常な溶解性のウィルスの生命周期において複製するその能力の点においては不活性化されているように操作することができる。例えばBerkner等(1988)BioTechniques 6:616;Rosenfeld等(1991)Science 252:431−434;及びRosenfeld等(1992)Cell 68:143−155を参照。アデノウィルス株Ad型5d1324又はアデノウィルスの他の株(例えばAd2、Ad3、Ad7等)から誘導した適当なアデノウィルスベクターは当業者に良く知られている。組み換えアデノウィルスはそれらが効果的な遺伝子送達ベヒクルであるために分裂細胞を必要とせず、そして広範な種類の細胞型、例えば気道上皮(Rosenfeld等(1992)上記引用)、内皮細胞(Lemarchand等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6482−6486)、肝細胞(Herz及びGerard(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2812−2816)及び筋肉細胞(Quantin等(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:2581−2584)を感染させるために使用できる点において好都合である。更に又、導入されたアデノウィルスDNA(及びそれに含有される外来DNA)は宿主細胞のゲノム内に組み込まれないが、エピソームとして残存することにより、導入されたDNAがホストゲノム(例えばレトロウィルスDNA)内に組み込まれることになった状況において挿入突然変異の結果として生じる場合がある潜在的問題を回避することができる。更に又、外来性DNAに対するアデノウィルスゲノムの担持容量は、他の遺伝子送達ベクターと相対比較して大きい(8キロ塩基まで)(Berkner等、上記引用;Haj−Ahmand及びGraham(1986)J.Virol.57:267)。現在使用されている大部分の複製欠損アデノウィルスベクターはウィルスE1及びE3遺伝子の全て又は部分について欠失されているが、アデノウィルスの遺伝子物質の80%をも保持している。
【0240】
アデノ随伴ウィルス:アデノ随伴ウィルス(AAV)は効率的な複製及び生産性の生命周期のためにはヘルパーウィルスとしてアデノウィルス又はヘルペスウイルスのような別のウィルスを必要とする天然に存在する欠損性のウィルスである(考察については例えばMuzyczka等、Curr.Topics in Micro.and Immunol.(1992)158:97−129参照)。これはまた自身のDNAを非分裂細胞に組み込む場合があり、そして安定な組み込みを高頻度で示す数少ないウィルスの1つである(例えばFlotte等(1992)Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.7:349−356;Samulski等(1989)J.Virol.63:3822−3828;及びMcLaughlin等(1989)J.Virol.62:1963−1973参照)。AAVの僅か300塩基対のみ含有するベクターもパッケージされ、そして組み込むことができる。外因性DNAのためのスペースは約4.5kbまでに限定される。Tratschin等(1985)Mol.Cell.Biol.5:3251−3260に記載のもののようなAAVベクターも細胞にDNAを導入するために使用できる。種々の核酸がAAVベクターを用いて異なる細胞型内に導入されている(例えばHermonat等(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6466−6470;Tratschin等(1985)Mol.Cell.Biol.4:2072−2081;Wondisford等(1988)Mol.Endocrinol.2:32−39;Tratschin等(1984)J.Virol.51:611−619;及びFlotte等(1993)J.Biol.Chem.268:3781−3790参照)。
【0241】
特定の発現ベクター系及び細胞内に核酸を導入する方法の有効性は当該分野で類型的に使用されている標準的な方策により評価できる。例えば細胞に導入されたDNAはフィルターハイブリダイゼーションの手法(例えばサザンブロッティング)により検出でき、導入されたDNAの転写により生産されたRNAは例えばノーザンブロッテイング、RNase保護、又は逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により検出できる。遺伝子産物は適切な試験により、例えば生産された蛋白質の例えば特異的抗体を用いた免疫学的検出により、又は、酵素試験のような遺伝子産物の機能的活性を検出するための機能的試験により、検出することができる。
【0242】
5.製品
本発明は本発明の方法の使用のためのキット及び製品を提供する。本発明は又、癌の治療のために本発明において使用される抗LT−β−R結合分子を投与するためのパッケージされた医薬組成物又はキットにも関する。本発明の1つの実施形態において、キット又は製品は抗LT−β−R結合分子、及び、少なくとも1つの追加的薬剤、例えば血管形成を抑制する薬剤、例えば生物学的薬剤と組み合わせて、癌の治療のための投与に関する説明書を含む。別の実施形態においては、キットは抗LT−β−R結合分子と共に複合療法において使用するための少なくとも1つの追加的薬剤を含む第2の容器を含む。説明書は、どのように、例えば静脈内、そして何時、例えば第0週及び第2週、異なる用量の抗LT−β−R結合分子及び少なくとも1つの追加的薬剤を治療のために対象に投与すべきかを記載してよい。更に別の実施形態においては、キットは化学療法剤及び/又は化学療法剤を投与するための説明書を含む。
【0243】
或いはパッケージ又はキットは抗LT−β−R結合分子を含有することができ、そしてこれはパッケージ内において、又は添付の情報を介して、使用又は本明細書に記載する障害の治療に関して、使用を宣伝することができる。パッケージされた医薬品又はキットは更に、第2の薬剤(本明細書に記載のもの、例えば血管形成を抑制する薬剤、例えば生物学的薬剤)を、第1の薬剤、例えば抗LT−β−R結合分子と共に、第2の薬剤、例えば血管形成を抑制する薬剤、例えば生物学的薬剤の使用に関する説明書と共にパッケージされた、又は共同宣伝された状態で包含することができる。
【0244】
例えば製品はパッケージング材料、上記した通り、抗LT−β−R結合分子1つ以上、及び追加的薬剤少なくとも1つ、そして任意にラベル又はパッケージインサートを含んでよい。更に別の実施形態においては、本発明は抗LT−β−R結合分子1つ以上、及び追加的薬剤少なくとも1つ、及びそのような組成物の投与を達成するための装置1つ以上を含む製品を提供する。例えばキットは抗LT−β−R結合分子を含む医薬組成物及び固形腫瘍内への組成物の直接の動脈内注射を行うためのカテーテルを含んでよい。製品は任意に、製薬上許容しうる緩衝液及び組成物の使用に関する説明書を含む第2の容器のような付属成分を包含する。
【実施例】
【0245】
本発明は以下の実施例により更に説明するが、これらは如何なる点においても限定的とは見なされない。
【0246】
材料及び方法
WiDrマウスモデル
huCBE11と組み合わせた生物学的薬剤の作用を調べるために、WiDr異種移植片モデルを使用した。CBE11は重症複合免疫不全(SCID)を有するマウスにおいて異種移植片として生育させたWiDr腫瘍に対して抗腫瘍活性を示すことがわかっている(Browning等(1996)J.Exp.Med.183:867)。治療薬、即ちLT−β−R抗体及び生物学的薬剤を、WiDr腫瘍細胞を移植してある無胸腺ヌードマウスに投与した。抗腫瘍活性は、治療を樹立された予備形成された腫瘍塊に対して開始するWiDr異種移植片ヒト結腸直腸腫瘍の生育に従って調べた。
【0247】
WiDr細胞はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)から入手した。細胞は90%Eagle最小必須培地中で、2mML−グルタミン、及びEarle’s Balanced Salt Solution(BSS)と共に、1.5g/L重炭酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、及び1mMピルビン酸ナトリウムを含有するように調節し、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加しながら、抗生物質無添加においてインビトロで生育させた(5%CO)。移植後24及び48時間の両方において細菌の汚染に関して全ての培養物が陰性であることを確認するために、マウス内に移植した腫瘍ホモジネートプレパレーションの小分量に対して細菌の培養を実施した。
【0248】
血清非含有の200μLのRPMI1640中の2×10WiDr細胞の接種物を第0日において右脇腹区域に皮下移植した。腫瘍の重量及び体重の測定は第3日に開始し、週2回記録した。腫瘍が長さ約5mm幅約5mmと計測された時点で、マウスを投与群及び対照群に無作為に割りつけた。体重の測定は第0日に開始し、週2回記録した。
KM−20L2マウスモデル
huCBE11と組み合わせた生物学的薬剤の作用を調べるために、KM−20L2異種移植片モデルを使用した。治療薬、即ちLT−β−R抗体及び生物学的薬剤を、KM−20L2腫瘍細胞を移植してある無胸腺ヌードマウスに投与した。抗腫瘍活性は、治療を樹立された予備形成された腫瘍塊に対して開始するKM−20L2異種移植片の生育に従って調べた。
【0249】
KM−20L2はNCI腫瘍レポジトリから入手した。細胞は90%RPMI−1640中、10%ウシ胎児血清と共に、抗生物質非存在下で生育させた。移植後24及び48時間の両方において細菌の汚染に関して全ての培養物が陰性であることを確認するためにマウス内に移植した腫瘍細胞ホモジネートプレパレーションの小分量に対して細菌の培養を実施した。
【0250】
血清非含有の培地中の2×10又は3×10のKM−20L2細胞の接種物を第0日においてマウスの右脇腹区域に皮下移植した。腫瘍の大きさの計測を定期的に記録した。腫瘍が長さ約5mm幅約5mm(65mg)と計測された時点で、マウスを投与群及び対照群に無作為に割りあてた。
【0251】
腫瘍の計測
腫瘍の計測はVernierカリパスを用いて測定した。腫瘍の大きさの計測は試験終了時まで試験に従って定期的に記録した。長球楕円に関する体積を計算する式を用いて2次元の腫瘍計測から腫瘍の体積(mm)を推定:腫瘍体積(mm)=(長さ×幅[L×W])÷2とした。単位密度を仮定すれば腫瘍体積は腫瘍重量に変換される(即ち1mm=1mg)。腫瘍生育の抑制は%T/Cとし、ここでTは投与群の平均腫瘍重量、及びCは対照群の平均腫瘍重量である。このタイプの試験についての42%以下の%T/C値は、National Cancer Institute(USA)により有意の活動性を示すものとみなされている。動物は適宜屠殺した。
【0252】
統計学的分析
腫瘍重量計測の統計学的分析は標準的な統計学的方法に従って実施した。平均、標準偏差(SD)、及び平均の標準誤差(SEM)を全評価時において全用量群につき体重及び腫瘍重量に関して求めた。各試験終了時を含む各評価時に平均腫瘍重量に対してスチューデントのt検定を行うことにより、各投与群とベヒクル対照群の間、及び各複合投与群と対応するhuCBE11群との間に統計学的有意差があるかどうか調べた。
【0253】
治療の有効性は各投与群の腫瘍重量を対照群の腫瘍重量と比較することにより調べた。その他の統計学的分析も適宜実施した。
【0254】
実施例1:生物学的薬剤と組み合わせたLT−β−R抗体を用いた腫瘍の大きさの低減
A.KM−20L2ヒト結腸腺癌異種移植片モデルにおけるhuCBE11とベバシツマブの組み合わせを用いた腫瘍の大きさの低減
huCBE11と組み合わせた生物学的薬剤、例えば血管形成を抑制する生物学的物質、例えば抗VEGF抗体、例えばベバシツマブ(Avastin)の投与が腫瘍の大きさの低減において各化合物単独より有効であるかどうかを調べるために、KM−20L2(ヒト結腸腺癌)異種移植片モデルを用いてhuCBE11と組み合わせてベバシツマブを投与した。
【0255】
用量範囲試験を実施することによりベバシツマブ及びhuCBE11の抗腫瘍作用を検討するための適切なベバシツマブ及びhuCBE11の用量を求めた。用量試験では又、独立して腫瘍生育を抑制することに関し、各薬剤の抗腫瘍の薬効を調べた。約65mgのKM−20L2腫瘍(移植後約6〜7日)を担持した無胸腺ヌードマウスに食塩水(対照)(n=15;200μL腹腔内、週2回)又はhuCBE11(用量当たりn=10;0.2mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、又は20mg/kgを腹腔内、週2回)の何れかを投与した。同様に、約75mgのKM−20L2腫瘍又は100mgのKM−20L2腫瘍(移植後約6〜7日)を担持した無胸腺ヌードマウスに食塩水(対照)(n=15;200μL腹腔内、週2回)又はベバシツマブ(用量当たりn=10;1mg/kg、2mg/kg、又は4mg/kgを腹腔内、週2回)の何れかを投与した。腫瘍の重量は第5日、及びその後は動物屠殺時まで定期的に計測した。
【0256】
0.2mg/kg及び20mg/kgのhuCBE11用量群における腫瘍重量は移植後第35日において食塩水対照群と有意差がなかった。しかしながら、huCBE11は2mg/kg又は4mg/kgの用量においてはヌードマウスのKM−202L2ヒト結腸腺癌腫瘍重量の有意な抑制をもたらした(P<0.05)(図1)。並行した試験において、第38日にベバシツマブが4mg/kgの用量において投与開始時に約75mg(P<0.01)(図2)又は投与開始時に100mg/kg(P<0.001)(図3)の何れかの重量であった腫瘍に対して、腫瘍重量の有意な抑制をもたらしたことがわかった。
【0257】
ベバシツマブ及びhuCBE11の複合投与が腫瘍重量の抑制において有意な増大を有するかどうかを調べるために、約65mgのKM−20L2腫瘍を担持した無胸腺ヌードマウスに対して複合試験を実施した。この試験ではhuCBE11(2mg/kg)及びベバシツマブ(4mg/kg)の作用を比較することにより薬効を調べた。
【0258】
複合試験の結果(図4〜6に示す)はベヒクル又はベバシツマブ単独投与と比較してベバシツマブと組み合わせたhuCBE11は投与開始時に約65mgのKM−20L2腫瘍を担持していた投与マウスにおいて腫瘍重量を有意に低下させたことを示している(P=<0.001)。しかしながらhuCBE11単独投与と比較してベバシツマブと組み合わせたhuCBE11は投与開始時に約65mgのKM−20L2腫瘍を担持していた投与マウスにおいて腫瘍重量を有意に低下させなかった。
【0259】
意外にも、ベヒクル投与又はhuCBE11又はベバシツマブ単独投与と比較して、huCBE11とベバシツマブの組み合わせは投与開始時に約200mgのKM−20L2腫瘍を担持していた投与マウスにおいて腫瘍重量を有意に低下させた(図7及び8)。図9に示す通り、huCBE11とベバシツマブによる200mgのKM−20L2腫瘍の複合治療は26%の%T/C(即ち74%の%腫瘍抑制)を有しており、これは有意な42%のレベルより十分低値であり、そしてhuCBE11及びベバシツマブの何れか単独による大型の腫瘍の治療で観察された%T/Cより低値である。このように大型腫瘍の腫瘍の大きさの低減が増強されたことは、ベバシツマブが大型腫瘍の大きさの低減においては有効でないことが先の分析で示されていたことから、予期されないものであった。
【0260】
B.WiDrヒト結腸結腸直腸異種移植片モデルにおけるhuCBE11とベバシツマブの組み合わせを用いた腫瘍の大きさの低減
huCBE11と組み合わせた生物学的物質、例えば血管形成を抑制する生物学的物質、例えば抗VEGF抗体、例えばベバシツマブ(Avastin)の投与が腫瘍の大きさの低減において有効であるかどうかを調べるために、WiDr(ヒト結腸直腸)異種移植片モデルを用いてhuCBE11と組み合わせてベバシツマブを投与した。
【0261】
用量範囲試験を実施することによりベバシツマブ及びhuCBE11の抗腫瘍作用を検討するための適切なベバシツマブ及びhuCBE11の用量を求めた。用量試験では又、独立して腫瘍生育を抑制することに関し、各薬剤の抗腫瘍の薬効を調べた。約65mgのWiDr腫瘍(移植後約6〜7日)を担持した無胸腺ヌードマウスに食塩水(対照)(n=15;200μL腹腔内、週2回)又はhuCBE11(用量当たりn=10;0.2mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、又は20mg/kgを腹腔内、週2回)の何れかを投与した。同様に、約100mgのWiDr腫瘍又は100mgのWiDr腫瘍(移植後約6〜7日)を担持した無胸腺ヌードマウスに食塩水(対照)(n=15;200μL腹腔内、週2回)又はベバシツマブ(用量当たりn=10;1mg/kg、2mg/kg、又は4mg/kgを腹腔内、週2回)の何れかを投与した。腫瘍の重量は第5日、及びその後は動物屠殺時まで定期的に計測した。
【0262】
0.2mg/kg及び20mg/kgのhuCBE11用量群における腫瘍重量は移植後第35日において食塩水対照群と有意差がなかった。しかしながら、huCBE11は2mg/kg又は4mg/kgの用量においてはヌードマウスのWiDrヒト結腸腫瘍重量の有意な抑制をもたらした(P<0.05)(図10)。並行した試験において、第38日にベバシツマブが4mg/kgの用量において投与開始時に約100mg/kgの何れかの重量であった腫瘍に対して、腫瘍重量の有意な抑制をもたらしたことがわかった(P<0.01)(図11)。
【0263】
ベバシツマブ及びhuCBE11の複合投与が腫瘍重量の抑制において有意な増大を有するかどうかを調べるために、約65mgのWiDr腫瘍を担持した無胸腺ヌードマウスに対して複合試験を実施した。この試験ではhuCBE11(2mg/kg)及びベバシツマブ(4mg/kg)の作用を比較することにより薬効を調べた。
【0264】
複合試験の結果(図12〜14に示す)はベヒクル又はhuCBE11又はベバシツマブ単独投与と比較して、ベバシツマブと組み合わせたhuCBE11は投与開始時に約65mgのWiDr腫瘍を担持していた投与マウスにおいて腫瘍重量を有意に低下させたことを示している。しかしながらhuCBE11単独投与と比較してベバシツマブと組み合わせたhuCBE11は投与開始時に約65mgのWiDr腫瘍を担持していた投与マウスにおいて腫瘍重量を有意に低下させなかった。
【0265】
KM−20L2を用いた場合に得られた結果と同様に、ベヒクル投与又はhuCBE11又はベバシツマブ単独投与と比較して、huCBE11とベバシツマブの組み合わせは投与開始時に約200mgのWiDr腫瘍を担持していた投与マウスにおいて腫瘍重量を有意に低下させた(図15及び16)。図17に示す通り、huCBE11とベバシツマブによる200mgのWiDr腫瘍の複合治療は37%の%T/C(即ち63%の%腫瘍抑制)を有しており、これは有意な42%のレベルより十分低値であり、そしてhuCBE11又はベバシツマブの何れかを単独による大型の腫瘍の治療で観察された%T/Cより低値である。このように大型腫瘍の腫瘍の大きさの低減が増強されたことは、ベバシツマブが大型腫瘍の大きさの低減においては有効でないことが先の分析で示されていたことから、予期されないものであった。
【0266】
(等価物)
本発明は特にLT−β−R抗体の関与する複合療法を提供する。本発明の特定の実施形態を考察したが、上記明細書は説明であり、限定ではない。本発明の多くの変形例は本明細書を鑑みれば当業者には自明である。本発明の完全な範囲は特許請求の範囲、並びにその完全な範囲の等価物、及び明細書、並びにその変形例を参照することにより決定されるものである。
【0267】
本明細書において言及した全ての公開物及び特許は、以下に列挙する対象物を含めて、各々の個々の公開物又は特許が特定的及び個別に参照により取り込まれることが示されるが如く、参照により全体が本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合は、本明細書における何れかの定義を含めて本出願が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約2mm×2mm超の大きさの腫瘍を有する対象における腫瘍の大きさを低減するための方法であって、該腫瘍の大きさが低減されるように、抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子又はその抗原結合フラグメント、及び少なくとも1つの別の薬剤を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
固形腫瘍を有する対象における固形腫瘍の脈管形成を低減するための方法であって、該固形腫瘍の脈管形成が低減されるように、抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメント、及び少なくとも1つの別の薬剤を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
固形腫瘍を有する対象における固形腫瘍の透過性を増大させるための方法であって、抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメントに対する該固形腫瘍の透過性が増大するように、該抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメント、及び少なくとも1つの別の薬剤を対象に投与することを含む、方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの別の薬剤が、前記抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメントの投与の前、又は該抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメントと同時の何れかで、前記対象に投与される、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの別の薬剤が血管形成を抑制する、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
血管形成を抑制する前記薬剤が、ゲフィチニブ、イマチニブメシレート、エルロチニブ及びボルテゾミブよりなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
血管形成を抑制する前記薬剤が生物学的薬剤、例えば抗体又はその抗原結合フラグメントである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
血管形成を抑制する前記生物学的薬剤が、抗VEGF抗体又は抗EGFR抗体である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的薬剤が、ベバシツマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、トシツモマブ、イブリツモマブ、アレルムツズマブ、エプラツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、オブリメルセン及びパニツムマブよりなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメントが、ヒト化結合分子、例えばhuCBE11、又は多価抗LT−β−R結合分子である、請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍が、結腸腫瘍、子宮頚部腫瘍、胃の腫瘍、癌腫及び膵臓腫瘍よりなる群から選択される、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍の大きさが少なくとも約1mm×1mm、少なくとも約2mm×2mm、及び少なくとも約1cmの体積よりなる群から選択される、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象に化学療法剤を投与することを更に含む、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法剤が、ゲムシタビン、アドリアマイシ、カンプトサール、カルボプラチン、シスプラチン、及びタキソールよりなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記抗リンホトキシンベータ受容体(LT−β−R)結合分子又はその抗原結合フラグメント及び少なくとも1つの血管形成を抑制する薬剤の投与が、約58%以上の%腫瘍抑制をもたらす、請求項5記載の方法。
【請求項16】
下記成分:
a)パッケージング材料;
b)抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメント;及び、
c)該抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメントを少なくとも1つの別の薬剤と共に投与できることを示す、該パッケージング材料内に含まれるラベル又はパッケージインサート;
を含む製品。
【請求項17】
下記成分:
a)パッケージング材料;
b)少なくとも1つの別の薬剤;及び、
c)該少なくとも1つの別の薬剤を抗LT−β−R結合分子又はその抗原結合フラグメントと共に投与できることを示す、該パッケージング材料内に含まれるラベル又はパッケージインサート;
を含む製品。
【請求項18】
前記少なくとも1つの別の薬剤が血管形成を抑制する、請求項16又は17記載の製品。
【請求項19】
下記成分:
a)パッケージング材料;
b)huCBE11抗体又はその抗原結合フラグメント;及び、
c)該huCBE11抗体又はその抗原結合フラグメントをベバシツマブ又はセツキシマブと共に投与できることを示す、該パッケージング材料内に含まれるラベル又はパッケージインサート;
を含む製品。
【請求項20】
下記成分:
a)パッケージング材料;
b)ベバシツマブ又はセツキシマブ;及び、
c)ベバシツマブ又はセツキシマブをhuCBE11抗体又はその抗原結合フラグメントと共に投与できることを示す、該パッケージング材料内に含まれるラベル又はパッケージインサート;
を含む製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−539999(P2009−539999A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515510(P2009−515510)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/014051
【国際公開番号】WO2007/146414
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】