説明

第3種の気体の排気用高コンダクタンス・クライオポンプ

【課題】第3種の気体について高い排気速度をもたらすクライオポンプを提供する。
【解決手段】前部クライオパネル・アレイが開放的な構成であることで、気体を第2段のアレイに向かって集中させるように形作られた放射シールドへの気体の高いコンダクタンスがもたらされる。第2段のアレイは、吸着剤で被覆されたバッフルからなる開放的な構成を有している。実質的にすべての吸着剤が、放射シールドまたは放射シールドの開口への直接の視線を有しており、実質的にすべてのバッフルが、吸着剤で被覆されている。1つの形態において、第2段のクライオポンプ・アレイは、円板をおおむね球形の包絡面を形成するように扇形に配置したアレイを有している。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2004年9月24日付の米国特許出願第10/948,955号の継続出願であって、この米国特許出願第10/948,955号の利益を主張する。上記出願の教示の全体が、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、基板上に材料をエピタキシャル成長させる方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現時点で入手可能なクライオポンプは、開放型または閉鎖型のいずれの極低温サイクルによって冷却されるにせよ、一般的には同じ設計概念に従っている。通常は4〜25oKの範囲で動作する低温の第2段アレイが、主たるポンプ表面である。この表面は高温の円筒によって囲まれ、前記高温の円筒は、通常は40〜130oKの温度範囲で運転され、低温アレイに放射シールドをもたらしている。放射シールドは、一般的には、主たるポンプ表面と排気しようとする排気チャンバとの間に位置する前部アレイを除いて閉じられているハウジングからなる。この高温の第1段の前部アレイが、水蒸気などといった高沸点の気体(第1種の気体として知られる)のためのポンプ部として機能する。
【0004】
動作時、水蒸気などの高沸点の気体は、前部アレイ上に凝縮する。より低い沸点の気体は、前部アレイを通過して放射シールド内の空間へと入る。窒素などの第2種の気体が、第2段のアレイ上に凝縮する。水素、ヘリウム、およびネオンなどといった第3種の気体は、4oKにおいてもかなりの蒸気圧を有している。第3種の気体を捕捉するために、第2段のアレイの内表面を、活性炭、ゼオライト、または分子ふるいなどといった吸着剤で被覆することができる。吸着は、極低温に保持された材料によって気体を物理的に捕捉し、環境から取り除くプロセスである。このようにして気体をポンプ表面へと凝縮または吸着させることで、作業室には真空のみが残される。
【0005】
閉サイクルの冷却器によって冷却されるシステムにおいては、冷却器が、典型的には、放射シールドを貫いて延出する低温フィンガを有する2段の冷凍機である。冷凍機の第2の最低温段の低温端が、低温フィンガの先端に位置する。主ポンプ表面またはクライオパネルが、低温フィンガの第2段の最低温端のヒートシンクに接続されている。このクライオパネルは、例えばここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする米国特許第4,494,381号のように、第2段のヒートシンクの周囲に配置されて第2段のヒートシンクへと接続される単純な金属板、カップ、または金属バッフルの円筒形アレイであってよい。この第2段のクライオパネルによって、すでに述べたように、活性炭またはゼオライトなどといった低温凝縮気体用の吸着剤を支持することができる。
【0006】
冷凍機の低温フィンガは、カップ状の放射シールドの基部を貫いて延出してもよく、シールドと同心であってよい。他のシステムにおいては、低温フィンガが、放射シールドの側面を貫いて延びている。そのような構成は、場合によっては、クライオポンプの配置に利用できる空間に、よりうまく適合する。
【0007】
放射シールドは、冷凍機の第1段の最低温端のヒートシンクまたはヒートステーションに接続されている。このシールドが、第2段のクライオパネルを、放射熱から保護するように囲んでいる。放射シールドを閉じている前部アレイは、シールドを介して第1段のヒートシンクによって冷却され、あるいはここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする米国特許第4,356,701号に開示されているように、熱支柱を介して第1段のヒートシンクによって冷却されている。
【0008】
クライオポンプは、大量の気体を集めた後、時々再生する必要がある。再生は、クライオポンプによってすでに捕捉されている気体を解放するプロセスである。再生は、通常は、クライオポンプを室温へと戻すことによって達成され、次いで気体が、二次ポンプによってクライオポンプから取り去られる。この気体の解放および除去に続いて、クライオポンプは元に戻され、再度の冷却の後、再び作業室から大量の気体を取り除くことができる。
【0009】
従来技術での実務としては、凝縮気体が吸着剤層へと凝縮して吸着剤層を塞ぐことがないようにするため、例えば第2段の吸着剤を山形バッフル(chevrons)で囲むことによって、第2段のクライオパネルに配置された吸着材料を保護することが挙げられる。このやり方で、この吸着剤層が、水素、ネオン、またはヘリウムなどといった非凝縮の気体の吸着のために確保される。これにより、再生サイクルの頻度を少なくできる。しかしながら、山形バッフルにより、非凝縮の気体が吸着剤へ接近するのは困難になる。
【0010】
クライオポンプの性能指数とは、水素の捕捉確率であり、ポンプの外部からクライオポンプの開口部へと達する水素分子がアレイの第2段に捕捉される確率である。捕捉確率は、水素の排気の速度に直接関係し、1秒あたりにポンプによって捕捉されるリットル数に直接関係する。従来の設計の高速ポンプは、20%またはそれ以上の水素捕捉確率を有している。
【0011】
第3種の気体の排気速度を向上させるため、さまざまなポンプ設計が提案されてきている。例えば、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする米国特許第4,718,241号が、非凝縮気体の排気の速度を向上させると同時に、システムの再生の頻度を抑えるように設計された第2段のアレイを提示している。これは、クライオパネルの円板の内表面に配置されている吸着材料へと、水素、ネオン、またはヘリウムなどといった非凝縮気体がより容易に接近できるよう、第2段のクライオパネルを開放することによって達成されている。これにより、非凝縮気体をより迅速に吸着することが可能になり、すなわち非凝縮気体の排気速度を向上させることができる。同時に、第2段のアレイが、すべての気体分子がまずはクライオパネルのうちの吸着材料で覆われていない表面に衝突するように保証すべく設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭58−125698号公報
【特許文献2】特開昭58−140391号公報
【特許文献3】特開平4−074858号公報
【特許文献4】特開平5−335622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
イオン打ち込みなどといった特定の用途においては、第2種の気体はあまり多くなく、クライオポンプの負荷は、第3種の水素ガスに支配される。このような認識において、本発明の設計は、第2種の気体の捕捉ならびに第1種および第2種の気体からの吸着剤の保護にあまり重きを置かない一方で、吸着剤によって第3種の気体を速やかに集めるために、吸着剤へのコンダクタンスを改善すべくクライオポンプ・アレイを開放的にする。本明細書に開示される実施形態は、高コンダクタンスの前部アレイ、気体を第2段のクライオパネルに向かって集中させるように形作られた放射シールド、および第2段のクライオパネルの開放的な構造を提供するが、本発明の実施例が必ずしもこれらの特徴をすべて含む必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%の水素捕捉確率を有するクライオポンプを可能にする。本明細書に開示される実施形態は、少なくとも30%の水素捕捉確率を有している。クライオポンプが、第1段および第2段を備える冷凍機を備えている。冷凍機の第2段に熱的に接触している第2段のクライオパネルが、低温凝縮気体を凝縮させる。放射シールドは、第2段のクライオパネルを囲むとともに、冷凍機の第1段に熱的に接触している。放射シールドの開口を横切っている前部クライオパネルが、第2段のクライオパネルのための放射シールドとして機能するとともに、より高い凝縮温度の気体のためのクライオポンプ表面として機能する。第2段のクライオパネルは、吸着剤を担持してなる複数のバッフルからなるアレイを有しており、少なくとも吸着剤の約80%が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されている。さらに好ましくは、吸着剤の少なくとも90%が上述のように露出され、最も好ましくは、吸着剤の実質的にすべてが上述のように露出される。好ましくは、吸着剤の過半数が、放射シールドの円筒形の側面または前部開口に対して露出されている。特定の実施形態においては、第2段のクライオパネルの表面積の少なくとも約90%が、吸着剤で覆われている。
【0015】
前部クライオパネルは、第2段のクライオパネルの投影部よりも大きく、放射シールドの開口の50%未満である面積を覆うことができる。第2段のクライオパネルの直径は、好ましくは放射シールドの開口の直径の60%未満である。
【0016】
放射シールドは、円筒および円筒の端部を閉じる基部を有することができ、円筒と基部との接合部が、気体を第2段のクライオパネルに向かって集中させるべく湾曲している。
【0017】
第2段のクライオパネルは、放射シールドへと向けられた縁を有する平坦なバッフルを備えてもよい。また、複数の前部バッフルは、外向きに傾斜し、放射シールドの開口へと向けられた縁を有し、放射シールドの開口へと向かって延びる包絡面を形成する。そして、この包絡面は、傾斜した外周面を形成している。複数の後部バッフルを、外向きかつ放射シールドの開口から離れるように傾けることができ、これらの後部バッフルの縁が、放射シールドの開口から離れるように延びる包絡面を形成しており、この包絡面が傾斜した外周面を形成している。1つの実施形態においては、前部および後部バッフルは、扇形に配置された円板である。他の実施形態においては、前部および後部バッフルは、同心の円錐台形バッフルを備えている。
【0018】
本発明の他の態様によれば、第2段のクライオパネル・アレイが、円板からなるアレイを有しており、それら円板が、おおむね球形の包絡面を形成するように扇形に配置されている。具体的には、アレイは、平行な円板からなる積み重ね、積み重ねの一端においてドームを形成している円板からなる扇形、および積み重ねの他端において逆さのドームを形成している円板からなる扇形を有することができる。円板を、極低温冷凍機のヒートステーションへと取り付けられるように設定された一対のブラケットに取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の以上の目的、特徴、および利点、ならびに他の目的、特徴、および利点が、添付の図面に示した本発明の好ましい実施形態についての以下のさらに詳細な説明から、明らかになるであろう。添付の図面においては、種々の図のすべてを通して、同様の参照符号が同じ部分を指し示している。図面は必ずしも比例尺ではなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
【0020】
【図1】本発明を具現化するクライオポンプの斜視図であり、真空容器および放射シールドが切断されている。
【図2】図1の実施形態の第2段クライオパネルの一部分の斜視図である。
【図3】図1に示したものと同様の斜視図であるが、第2段クライオパネル組立体の半分が取り除かれている。
【図4】図1の第2段クライオパネルの側面図である。
【図5】図1の第2段クライオパネルの側面図であり、図4に対して90°回転している。
【図6】本発明の他の実施形態の斜視図である。
【図7】図6の第2段クライオパネル・アレイの半分について、クライオポンプへの取り付け前の斜視図である。
【図8】クライオポンプへと取り付けられた図7のアレイの半分の斜視図である。
【図9】図6の実施形態の第2段クライオパネルの側面図である。
【図10】図6の実施形態の第2段クライオパネルの側面図であり、図9に対して90°回転している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0022】
図1〜5が、本発明の1つの実施形態を示している。図1は、真空容器12および放射シールド14を切断して示したクライオポンプの斜視図である。真空容器12を、フランジ16にて作業室へと直接取り付けることができ、あるいは真空容器12と作業室との間の中間ゲート弁に取り付けることができる。極低温冷凍機15の2段低温フィンガが、側面の開口を通ってハウジング内へと突き出している。この実施形態においては、冷凍機の第2段が、冷凍機の第2段を遮蔽する円筒18によって囲まれている。シリンダ18は、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする米国特許第5,156,007号に記載されているように、低温フィンガに沿った温度の変動による低温フィンガ上での気体の気化およびその後の再凝縮を最小限にする。
【0023】
冷凍機は、モータによって駆動されるディスプレイサ(displacer)を低温フィンガに備えている。低温フィンガに進入するヘリウム・ガスが、きわめて低い温度を生み出す様相で膨張させられ、すなわち冷却される。このような冷凍機は、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとするChellisらの米国特許第3,218,815号に開示されている。
【0024】
第1段のヒートシンクに取り付けられたカップ状の放射シールド14は、典型的には、約65〜100oKの間の温度で動作する。放射シールドは、第2段のクライオポンプ領域を囲んでおり、直接の放射またはより高い凝縮温度の蒸気による当該領域の温度上昇を最小限にしている。第1段のポンプ表面は、第2段のポンプ領域のための放射シールドおよび水蒸気などのより高温の凝縮気体のためのクライオポンプ表面の両者として機能する前部クライオパネル・アレイ20からなる。このアレイは、より低い凝縮温度の気体の第2段のポンプ領域への通過を許容する。
【0025】
典型的な前部クライオパネル・アレイは、放射シールド14の開口の全体を横切って広がっており、第1種の気体の大部分が前部クライオパネル・アレイに衝突し、すなわち放射シールド内の空間に進入する前にクライオパネル・アレイ上に凝縮することを保証するため、山形のバッフルを備えている。これとは対照的に、ここに開示されている実施形態の前部クライオパネル・アレイ20は、放射シールド14の開口方向における投影面が第2段のクライオパネル・アレイ22よりも大きくてこれを完全に覆っているが、放射シールドの開口の外周までは広がっていない。好ましくは、前部クライオパネル・アレイ20が、開口の50%未満しか覆っていない。放射シールドが304mmの直径を有している1つの実施形態においては、前部クライオパネル・アレイが開口の面積の3分の1未満しか覆わないよう、前部クライオパネル・アレイの直径が、わずか165mmである。この実施形態において、第2段のクライオパネル・アレイ22は、134mmの直径を有している。図4に示されているように、前部クライオパネル・アレイ20は、円錐台形状の板からなる3つのバッフル24を使用するだけであり、山形のバッフルを使用していない。前部クライオパネル・アレイの面積縮小および開放的設計により、冷凍機の熱負荷の増大との引き換えであるが、気体分子が放射シールド内の空間に進入して捕捉される確率が高くなり、排気速度が向上する。しかしながら、第2段のクライオパネル・アレイの直径を小さくすることで、前部クライオパネル・アレイ20が第2段のクライオパネル・アレイ22の投影よりも大きな面積を覆い、熱負荷の過剰な増加は防止される。
【0026】
従来からの設計と対照的に、第2段のクライオパネル22は、きわめて開放的な構造を有している。具体的には、両面に吸着剤を担持し、放射シールド14の円筒形の側面へと向かう平坦なバッフルまたは円板26を間隔を空けて平行に重ねて形成されている。円板の表面に吸着剤を保持すべく、それら表面への接着剤の付着を促進するため、円板に孔が形成されている。
【0027】
前部バッフル28,30,32は、円錐台の形状であり、やはり吸着剤で被覆されている。図示の実施形態においては、これらのバッフルのそれぞれが異なる角度を形成しているが、すべて外向きかつ放射シールドの開口の方向を向いている。図4に破線34によって示されているように、円錐台形バッフル28,30,32の縁は、その軸心方向と一致する放射シールドの開口の方向を向くように、軸心に向かって傾いている包絡面を形成している。この前部クライオパネル・アレイの包絡面の軸心に対する傾きにより、前部バッフル24間を通過した気体の直接接触が最小限になり、気体がまずは第1種の気体を凝縮させる放射シールド14と交わる傾向となる。後部の円錐台形バッフル37,38,39は、第3種の気体を捕捉するための吸着剤で被覆されたさらなる表面をもたらしている。
【0028】
実質的にすべての表面が吸着剤で被覆されている第2段のクライオパネル・アレイ22の多数のバッフルにより、第3種の気体を捕捉するための大容量をもたらしている。放射シールド14の開口から吸着剤の大部分へと至る視線が遮られている従来の設計と対照的に、円板26、前部バッフル28、30、および32、ならびに後部バッフル37、38、および39上の吸着剤の実質的にすべてが、放射シールドまたは放射シールドの前部開口へ向かう直接の視線に対してさらされている、すなわち直接露出されている。これらのアレイのバッフル表面の大部分が、放射シールドの円筒形の側面または円筒形の前部開口へと露出されている。この露出は、吸着剤をより大きな熱負荷にさらすとともに、第1種および第2種の気体へも暴露させるが、第3種の気体の排気の速度を大きく向上させる。
【0029】
第2段のクライオパネル・アレイ22が、放射シールド14の直径よりも大幅に小さい直径を有していることを、図4に見ることができる。1つの実施形態においては、アレイの直径が134mmである一方で、放射シールドの直径は304mmである。結果として、両者の間に大きな開放空間が存在し、第1種の気体が放射シールドの表面に集まるにもかかわらず、第2段のクライオパネルに高い気体のコンダクタンスをもたらす。一般に、第2段のクライオパネルの直径は、放射シールドの直径の60%未満であることが好ましい。
【0030】
第2段のクライオパネル22と放射シールド14との間の開放空間によって、かなりの量の気体が、放射シールドの閉じた基部に達すると予想できる。低圧の環境において、気体の分子はまっすぐな経路に沿って移動し、或る表面に衝突すると、余弦則に従って表面から再放射される可能性が最も高い。図示の実施形態においては、放射シールド14の円筒と閉じた基部との接合部36は湾曲し、そのような接合部に衝突するが放射シールド上には凝縮しない気体を、第2段のクライオパネルに向かって集中させる。従って、第1種の気体の凝縮が予想される一方で、第2種および第3種の気体は、第2段のクライオパネルに向かって案内され、第2段にて速やかに凝縮または吸着される。好ましくは、湾曲部は、第2段のクライオパネルの外周付近まで広がっている。
【0031】
第2段のクライオパネル・アレイ22は、2つの組立体にて形成され、その一方が図2に示されている。アレイの水平円板のそれぞれは、実際には、2つの半円板で構成されており、この半円板がそれぞれの組立体に1つずつ設けられている。以下では半円板のそれぞれを円板と称する。それぞれの円板は、中央から曲げられたタブ27(図1、4、および5)を有する金属薄板で形成されている。タブは、ブラケット40に当接し、リベットでブラケットに取り付けられている。円錐台形バッフル37、38、および39からなる下部または後部アレイは、図2のブラケット40の下部水平部42に取り付けられている。ブラケットに取り付けられた半円筒44が、図3のシールド円筒18の内側にシールド円筒18から離間して設けられ、極低温の冷凍機の第2段への遮蔽を完成させている。
【0032】
図示の実施形態は、必要に応じて設けられる後部バッフル37、38、および39の組を備えており、これらが放射シールドの基部に向かい、具体的には放射シールドの円筒形の側面と平坦な基部との湾曲した接合部に向かって、外向きかつ下方へと向けられている。これらのバッフルは、放射シールドの下部から案内される気体を容易に集めることができる。
【0033】
組み立てにおいては、図2の組立体が、極低温の冷凍機の第2段の端部の図3に示すヒートステーション46へと、ヒートステーションの端部に取り付けられた別のブラケット48を介して、取り付けられる。次いで、前部の円錐台形バッフルが、やはりブラケット48にねじ止めされる。
【0034】
図6〜10は、本発明の他の実施形態を説明している。この実施形態において、図6の放射シールド14および前部クライオパネル20は、第1の実施形態に見られるものと類似している。同様に、第2段のクライオパネル60は、平坦なバッフル66が吸着剤で覆われ、吸着剤が周囲の放射シールド14またはその前部開口からの直接の視線にさらされている、つまり直接露出されている開放的な設計を有している。しかしながら、この実施形態によれば、バッフルの部品を少なくするとともに、表面積を増加させることができる。この実施形態においては、アレイが、おおむね球状のアレイを形成するように扇形に広がる複数の円板で構成されている。この設計も、やはり2つのバッフル組立体を採用しており、その一方が図7に示されている。半円形の円板が、鉛直部64と両端に徐々に傾いていく部分とを有するブラケット62に取り付けられている。4つの円板66が、ブラケットの鉛直部に対して水平に取り付けられる。ブラケットのそれぞれの端部にある3つの円板は、外向きに傾けられて、放射シールドのそれぞれの端部に向けられている。最後の円板が、それぞれの組立体のブラケットの上端または下端に取り付けられており、ほぼ鉛直である。バッフル組立体のブラケットのそれぞれが、図8に示されているとおり極低温の冷凍機の第2段であるヒートステーション46に取り付けられる。
【0035】
図10に示されているように、複数の扇状円板群の端部が、放射シールド14の前部開口に向かう球状のドーム68、および放射シールドの基部に向かう逆さのドーム70を形成する包絡面を形成している。第1の実施形態と同様、このドーム形状が、表面積を増加させつつ前部クライオパネル・アレイ20のバッフル間を通過する放射の直接的な妨げを最小限にする包絡面の傾きをもたらす。第1の実施形態と同様、バッフルの全表面積を吸着剤で被覆することができ、これらの吸着剤に高レベルのコンダクタンスが存在する。
【0036】
400mmの直径を有する典型的な従来技術のクライオポンプは、72°Fにおいて毎秒約12,000リットルの水素捕捉速度を有し、約22%の水素捕捉確率を有する。最初に開示した実施形態の実施例においては、前記400mmのシステムの約3分の2の開口面積を持つ直径320mmシステムが、毎秒約11,000リットルの水素捕捉速度、および約31%の水素捕捉確率を有している。320mmの直径を有する2番目に開示した実施形態の実施例においては、毎秒約13,000リットルの水素捕捉速度、および約37%の水素捕捉確率が得られる。他の比較として、従来からの250mmのシステムは、水素について、毎秒約4,500リットルの捕捉速度および約21%の捕捉確率を有している。本発明の第2の実施形態による250mmのシステムでは、水素について、毎秒約7,000リットルの水素捕捉速度および約32%の水素捕捉確率が得られた。
【0037】
本発明を、本発明の好ましい実施形態を参照しつつ詳しく示して説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の技術的範囲から離れることなく、これらの実施形態において形態および細部についてさまざまな変更が可能であることを、当業者であれば理解できるであろう。
【符号の説明】
【0038】
1,17 基板
2 基板支持体
3 キャリヤ
4,4’ チャンバ
6 第1注入口
9,19 供給管
10 第2注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1段および第2段を備える冷凍機、
低温凝縮気体を凝縮させるため、冷凍機の第2段に熱的に接触している第2段のクライオパネル、
第2段のクライオパネルを囲むとともに、冷凍機の第1段に熱的に接触している放射シールド、および
前記放射シールドの開口を横切っており、より高い凝縮温度の気体のためのクライオポンプ表面として機能する前部クライオパネル
を備えるクライオポンプであって、
少なくとも20%の水素捕捉確率を有しており、
前記第2段のクライオパネルが、吸着剤を担持した複数のバッフルからなるアレイを有していて、少なくとも吸着剤の約80%が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項2】
請求項1において、第2段のクライオパネルの表面積の少なくとも約90%が、吸着剤で覆われているクライオポンプ。
【請求項3】
請求項2において、第2段のクライオパネルが、放射シールドへと向かう縁部を有する平坦なバッフルを備えているクライオポンプ。
【請求項4】
請求項3において、第2段のクライオパネルが、外向きに傾けられ放射シールドの開口へと向けられた複数の前部バッフルをさらに備えているクライオポンプ。
【請求項5】
請求項4において、複数の前部バッフルの縁が、放射シールドの開口へと向かって延びる包絡面を形成しており、該包絡面が傾斜した外周面を形成しているクライオポンプ。
【請求項6】
請求項5において、前部バッフルが、扇形に広がる円板であるクライオポンプ。
【請求項7】
請求項5において、前部バッフルが、同心の複数の円錐台形バッフルを有しているクライオポンプ。
【請求項8】
請求項5において、外向きかつ放射シールドの開口から離れるように傾けられた複数の後部バッフルをさらに有しており、該複数の後部バッフルの縁が、放射シールドの開口から離れるように延びる包絡面を形成しており、該包絡面が傾斜した外周面を形成しているクライオポンプ。
【請求項9】
請求項1において、放射シールドが、円筒および該円筒の端部を閉じる基部を有しており、円筒と基部との接合部が、気体を第2段のクライオパネルに向かって集中させるべく湾曲しているクライオポンプ。
【請求項10】
請求項9において、第2段のクライオパネルが、外向きかつ放射シールドの開口から離れるように傾けられた複数の後部バッフルをさらに備えているクライオポンプ。
【請求項11】
請求項10において、複数の後部バッフルの縁が、自身の外周縁に沿って傾斜した包絡面を形成しているクライオポンプ。
【請求項12】
請求項1において、前部クライオパネルが、第2段のクライオパネルの投影よりも大きいが、放射シールドの開口の50%未満である面積を覆っているクライオポンプ。
【請求項13】
請求項1において、第2段のクライオパネルの直径が、放射シールドの開口の直径の60%未満であるクライオポンプ。
【請求項14】
請求項1において、第2段のクライオパネルが、円板からなるアレイを有している場合に、該円板が扇形に広がり、おおむね球形の包絡面を形成するクライオポンプ。
【請求項15】
請求項14において、球形の包絡面が、平行な複数の円板からなる平行円板群、該平行円板群の一端においてドームを形成する複数の円板からなる扇形円板群、および該平行円板群の他端において逆さのドームを形成する複数の円板からなる扇形円板群から形成されているクライオポンプ。
【請求項16】
請求項1において、少なくとも吸着剤の90%が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項17】
請求項1において、実質的にすべての吸着剤が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項18】
請求項1において、少なくとも25%の水素捕捉確率を有しているクライオポンプ。
【請求項19】
請求項1において、少なくとも30%の水素捕捉確率を有しているクライオポンプ。
【請求項20】
第1段および第2段を備える冷凍機、
低温凝縮気体を凝縮させるため、冷凍機の第2段に熱的に接触している第2段のクライオパネル、
第2段のクライオパネルを囲むとともに、冷凍機の第1段に熱的に接触している放射シールド、および
放射シールドの開口を横切って、放射シールドの開口の50%未満の面積を覆っており、より高い凝縮温度の気体のためのクライオポンプ表面として機能する前部クライオパネル
を備えるクライオポンプであって、
前記第2段のクライオパネルが、吸着剤を担持した複数のバッフルからなるアレイを有していて、少なくとも吸着剤の80%が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項21】
請求項20において、少なくとも吸着剤の90%が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項22】
請求項20において、実質的にすべての吸着剤が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項23】
請求項20において、少なくとも25%の水素捕捉確率を有しているクライオポンプ。
【請求項24】
請求項20において、少なくとも30%の水素捕捉確率を有しているクライオポンプ。
【請求項25】
第1段および第2段を備える冷凍機、
低温凝縮気体を凝縮させるため、冷凍機の第2段に熱的に接触している第2段のクライオパネル、
第2段のクライオパネルを囲むとともに、冷凍機の第1段に熱的に接触している放射シールド、および
放射シールドの開口を横切っており、より高い凝縮温度の気体のためのクライオポンプ表面として機能する前部クライオパネル
を備えるクライオポンプであって、
第2段のクライオパネルが、吸着剤を担持した複数のバッフルからなるアレイを有していて、少なくとも吸着剤の約80%が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されており、吸着剤の過半数が、放射シールドの円筒形の側面または放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項26】
請求項25において、少なくとも吸着剤の90%が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項27】
請求項25において、実質的にすべての吸着剤が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項28】
請求項25において、少なくとも25%の水素捕捉確率を有しているクライオポンプ。
【請求項29】
請求項25において、少なくとも30%の水素捕捉確率を有しているクライオポンプ。
【請求項30】
第1段および第2段を備える冷凍機、
低温凝縮気体を凝縮させるため、冷凍機の第2段に熱的に接触している第2段のクライオパネル、
第2段のクライオパネルを囲むとともに、冷凍機の第1段に熱的に接触しており、円筒および該円筒の端部を閉じる基部を有しており、円筒と基部との接合部が、気体を第2段のクライオパネルに向かって集中させるべく湾曲している放射シールド、および
放射シールドの開口を横切って、第2段のクライオパネルの投影部よりも大きく、放射シールドの開口の50%未満である面積を覆っており、より高い凝縮温度の気体のためのクライオポンプ表面として機能する前部クライオパネル
を有するクライオポンプであって、
前記第2段のクライオパネルが、
放射シールドに向けた縁を有する複数の平坦なバッフルからなるアレイ、
外向きに傾けられて放射シールドの開口へと向けられており、縁が、放射シールドの開口へと向かって延びる包絡面を形成するとともに、該包絡面が傾斜した外周面を形成している複数の前部バッフル、および
外向きかつ放射シールドの開口から離れるように傾けられ、自身の外周縁に沿って傾斜した包絡面を定めている複数の後部バッフル
を有しており、
第2段のクライオパネルのこれらのバッフルが、吸着剤を担持しており、少なくとも吸着剤の約80%が、放射シールドまたは放射シールドの開口に対して直接露出されているクライオポンプ。
【請求項31】
複数の円板からなるアレイを有しており、該円板が扇形に広がり、おおむね球形の包絡面を形成するクライオパネル・アレイ。
【請求項32】
請求項31において、
平行な円板からなる平行円板群、
前記平行円板群の一端においてドームを形成する複数の円板からなる扇形円板群、および
前記平行円板群の他端において逆さのドームを形成する複数の円板からなる扇形円板群
を有しているクライオパネル・アレイ。
【請求項33】
請求項32において、前記円板が、極低温冷凍機のヒートステーションへと取り付けられるように設定された一対のブラケットに取り付けられているクライオパネル・アレイ。
【請求項34】
第1段および第2段を備える冷凍機、
低温凝縮気体を凝縮させるため、冷凍機の第2段に熱的に接触しており、複数の円板がおおむね球形の包絡面を形成するように扇形に配置されたアレイを備える第2段のクライオパネル、
第2段のクライオパネルを囲むとともに、第1段のヒートシンクに対して熱的に接触している放射シールド、および
放射シールドの開口を横切っており、より高い凝縮温度の気体のためのクライオポンプ表面として機能する前部クライオパネル
を備えるクライオポンプ。
【請求項35】
請求項34において、第2段のクライオパネルが
平行な円板からなる平行円板群、
前記平行円板群の一端においてドームを形成する複数の円板からなる扇形円板群、および
前記平行円板群の他端において逆さのドームを形成する複数の円板からなる扇形円板群
を有しているクライオポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−180846(P2012−180846A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−144083(P2012−144083)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2007−533461(P2007−533461)の分割
【原出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(398029692)ブルックス オートメーション インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】