説明

筆記具用インキ組成物及びこのインキ組成物を用いた筆記具

【課題】 比重の重い酸化チタンなどの着色剤の沈降を抑制することができ、また、インキ貯留体の外観的装飾効果(美的効果)をも有するサインペン、ボールペン、修正ペン等に好適な筆記具用インキ組成物及びこのインキ組成物を用いた筆記具を提供する。
【解決手段】 少なくとも、着色液体を内包した破壊可能な微小カプセルと、粘性液体とを含有することを特徴とする筆記具用インキ組成物。
筆記具としては、上記筆記具用インキ組成物がインキ貯留体に収容されると共に、微小カプセルはインキ貯留体内では破壊されることなく存在し、筆記時において、筆記具先端部にて微小カプセルが破壊された後若しくは破壊されながらペン先から流出する構造となるものが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比重の重い酸化チタンなどの着色剤の沈降を抑制することができ、また、インキ貯留体の外観的装飾効果(美的効果)をも有するサインペン、ボールペン、修正ペン等に好適な筆記具用インキ組成物及びこのインキ組成物を用いた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸化チタン等の比重の重い顔料等の着色剤を含有したインキ組成物は、その比重が重いため経時的に沈降分離するという問題点がある。そのため、使用前にインキ組成物を十分に再撹拌してから使用する手段、または、インキ組成物にせん断減粘性を付与させ、酸化チタンの沈降を抑制する手段などが従来から採られている。
【0003】
従来より、インキ組成物に、せん断減粘性を付与する手段としては、従来から増粘剤やゲル化剤などを添加すること、例えば、モンモリロナイト系粘土鉱物の使用(例えば、特許文献1参照)、フッ素金雲母の使用(例えば、特許文献2参照)、デキストリン脂肪酸エステルの使用(例えば、特許文献3参照)、脂肪酸アマイド類(例えば、特許文献4参照)、2−エチルヘキサン酸アルミニウムの使用(例えば、特許文献5参照)などが知られている。
しかしながら、これらの増粘剤等も用いても、インキの底部には次第に沈降層が生成するため、顔料沈降による筆記不良が生じるなどの課題が未だあるのが現状である。
【0004】
一方、一度の筆記で色調の異なる複数のインキを紙面に連続的に転写して色彩感覚や立体感が得られるマーブル調筆記を可能とする筆記具も知られている(例えば、特許文献6参照)。
しかしながら、この筆記具におけるインキタンク内は、基本的には2色の色調が縦断方向に充填するものに過ぎず、未だそのインキタンクの外観的装飾効果(美的効果)は不十分であり、更なる外観的装飾効果とマーブル調筆記を可能とする筆記具の出現が望まれているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平6−264012号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平7−173417号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開平7−324177号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2001−279183号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2001−158869号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特許第2960062号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、比重の高い着色剤の沈降を抑制することができ、また、インキ貯留体の外観的装飾効果(美的効果)を更に向上することができるサインペン、ボールペン、修正ペン等に好適な筆記具用インキ組成物及びこのインキ組成物を用いた筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来技術の課題等について鋭意検討の結果、少なくとも、着色液体を内包した特定物性の微小カプセルと、粘性液体とを含有することにより上記目的の筆記具用インキ組成物が得られ、この筆記具用インキ組成物を特定の構造の筆記具に収容することにより、上記目的の筆記具が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(7)に存する。
(1) 少なくとも、着色液体を内包した破壊可能な微小カプセルと、粘性液体とを含有することを特徴とする筆記具用インキ組成物。
(2) 着色液体が、染料、有機顔料及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種の着色剤にて着色されている上記(1)記載の筆記具用インキ組成物。
(3) 微小カプセルには、酸化チタンが内包された上記(1)又は(2)記載の筆記具用インキ組成物。
(4) 微小カプセルは、色調が異なる少なくとも2色以上のものが混合されたものからなる上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の筆記具用インキ組成物。
(5) 微小カプセルが少なくとも1μm以上のサイズを有する上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の筆記具用インキ組成物。
(6) 上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の筆記具用インキ組成物がインキ貯留体に収容されると共に、微小カプセルはインキ貯留体内では破壊されることなく存在し、筆記時において、筆記具先端部にて微小カプセルが破壊された後若しくは破壊されながらペン先から流出することを特徴とする筆記具。
(7) インキ貯留体後端部から加圧されることにより、インキが流出される上記(6)記載の筆記具。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微小カプセル内に着色液体が内包されているため、着色液体の劣化を防止することができると共に、インキ貯留体内では、微小カプセルが破壊されることなく存在するため、カプセル内部に顔料インキ、特に比重の重い酸化チタンを含むようなインキであっても、インキ貯留体全体での顔料の沈降を抑制できるため、インキの追従不足や顔料沈降による筆記不良などが生じにくい筆記具用インキ組成物及びこのインキ組成物を用いた筆記具が提供される。
また、着色液体を内包した破壊可能な微小カプセルと、粘性液体とを少なくとも含有する筆記具用インキ組成物は、筆記具先端部においての破壊が容易に生じ、筆記面には全体的に均一に混合された状態で存在することとなるため、描線の鮮明さを損なうことがない優れた描線が得られるものとなる。
更に、微小カプセルの壁は微細に破壊することができるため、筆記具先端での目詰まりやざらつき感を起こすことなく筆記が可能となる。
更にまた、インキ貯留体のインキを視認すれば、見た目の斬新さから、筆記具全体の構造と相俟って、意匠的にも優れた外観的装飾効果を有するものとなり、消費者の目に引き、購買意欲も高めることもでき、また、微小カプセルを色調が異なる少なくとも2色以上のものが混合されたものからなるものでは、紙面に連続的に転写して色彩感覚や立体感に優れたマーブル調筆記を可能とする筆記具が得られるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の筆記具用インキ組成物は、少なくとも、着色液体を内包した破壊可能な微小カプセルと、粘性液体とを含有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の微小カプセルは、着色液体を内包し、筆記の際に破壊可能となるものであれば、特に限定されず、従来より知られているマイクロカプセルに使用可能な材料を用いてカプセルを形成することができる。例えば、寒天とアルギン酸塩により形成されるカプセルに着色液体成分を内包したもの、ゼラチンと硫酸ナトリウムにより形成されるカプセルに着色液体成分を内包したもの、ニトロセルロースとフタル酸セルロースを用いて形成されたカプセルに着色液体成分を内包したもの、ゼラチンとアラビアゴムにより形成されるカプセルに着色液体成分を内包したものなどが挙げられる。
また、微小カプセルの膜厚は、着色液体を内包し、インキ貯留体内では破壊されることなく存在し、筆記の際に破壊可能となる厚さであれば、特に限定されるものでなく、カプセルの粒子径に依存し、おおむね0.001〜100μm程度である。
【0012】
本発明において、着色液体は、微小カプセルに内包できるものであり、例えば、着色液体が、染料、有機顔料及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種の着色剤にて着色されているものが挙げられる。
具体的に用いることができる着色液体としては、従来用いられている筆記具用インキ、印刷インキ、インキジェット用インキなどを用いることができるし、上記インキの構成材料から樹脂製分を除いたインキなどを用いることも可能である。
当該着色液体は、マイクロカプセルの壁材料や製造方法に適した形で、適宜決定されることとなる。
【0013】
本発明において、微小カプセルの調製は、従来知られているマイクロカプセルの調製法のいずれも用いることが可能であり、これらに限定されるものではないが、内包しようとする着色液体等に応じて、適宜決定されることとなる。
具体的には、単純コアセルべーション法、複合コアセルべーション法、界面重合方、in situ重合法、液中硬化被覆法、スプレードライング法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
微小カプセルの大きさ(サイズ)としては、少なくとも1μm以上のサイズ、好ましくは、視認性を発揮せしめる点から、0.5〜5mmに調製されるものが望ましい。
なお、このサイズの調製は、マイクロカプセルの製造時において知られている手法を用いることができ、滴下ノズル径、界面活性剤の量、撹拌速度、温度、粘度等の調整をすることにより容易に行うことができる。
【0015】
着色液体として酸化チタンを内包した微小カプセルでは、従来の直接酸化チタンを含有せしめたインキ組成物に較べ、酸化チタンの沈降を抑制することができるものとなる。
これは、本発明のインキでは、微小化カプセルが細密充填されるか、あるいはそれに近い状態で存在することにより、見かけ上酸化チタンがかさ高い状態で存在していることに起因する。微小カプセル自体は、インキ中で沈降することなく互いに接しつつ存在するため、微小カプセルに内包された酸化チタンは、カプセル内では沈降することが生じるかもしれないが、インキ全体としては、酸化チタンが均一に存在するに等しい状態となっているからである。
また、そのような微小カプセル内で沈降した酸化チタンは、筆記時にカプセルが破壊される際に再分散させられることとなる。
また、得られる微小カプセルとしては、着色液体が一色からなるもの、または、着色液体を二色とし、微小カプセル内で当該二色が半分に区別化された状態でカプセル化することもできる。
【0016】
本発明における粘性液体は、インキ貯留体内で微小カプセルが破壊されてしまうのを防止すると共に、微小カプセルをインキの消費に伴ない筆記部側へ追従させる役割等をするものであり、また、筆記時において、微小カプセルが破壊された状態では、カプセル内包物と混合される等して、固着剤として働く等、インキの一機能成分を担うものである。
【0017】
用いることができる粘性液体としては、粘性液体となるものであれば特に限定されないが、好ましくは、ゲル状の粘性液体が望ましく、例えば、水系インキの場合には、従来より用いられている水溶性樹脂成分等、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル樹脂;スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体及び酢酸ビニル−エチレン共重合休、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等の酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリルアマイド、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム、エコーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、ローカストビーンガム又はこれらの誘導体などの少なくとも1種〔残部を水(精製水、イオン交換水、純水等)を用いて粘性液体を調製することができる。
また、油性系インキの場合には、従来より用いられている油溶性樹脂成分等、例えば、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等などの少なくとも1種(残部を有機溶剤等)を用いて粘性液体を調製することができる。
【0018】
本発明において、微小カプセルに対する粘性液体の含有量は、微小カプセルがインキ貯留体に細密充填された場合のカプセル粒子間の空隙を埋めることができる量を少なくとも含んでいる必要があり、その含有量は、微小カプセルの粒子径によって、その都度最適量が決められることとなる。粘性液体の量が少なく、カプセル粒子間の空隙を十分に埋めることができない場合には、インキの追従が悪くなるなどして筆記面に影響を及ぼし、また、カプセルがきれいに破壊されなかったり、インキの逆流が生じるなどして好ましくない。一方、粘性液体の量が多くなると、インキ貯留体においてカプセル粒子が偏在するなどして、筆記時の描線に濃淡が生じたりするなどとして好ましくない。従って、粘性液体の含有量は、カプセル粒子間の空隙を埋めることができる量の2倍以下、更に好ましくは、0.9〜1.2倍とすることが望ましい。
【0019】
本発明の筆記具用インキ組成物は、上記微小カプセル、粘性液体を少なくとも含有するものであるが、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、潤滑剤等の筆記具用インキの添加成分を必要に応じて適宜含有することができる。
【0020】
このように構成される本発明の筆記具用インキ組成物は、サインペン、ボールペン、修正ペンを含めた筆記具に用いることができ、例えば、先端にペン先(ボールペンチップ)を備えたインキ貯留体(リフィール)内に上記構成の筆記具用インキ組成物が収容して使用に供される。なお、筆記具のインキ貯留体内に収容された筆記具用インキ組成物の端部には、該インキ組成物と相溶しない末端部可動栓(逆流防止体)を接触状態で充填してもよい。
【0021】
本発明の筆記具としては、上述の如く、先端にボ−ルペンのチップと後方にインキ貯留体(インキ収容管)を備え、先端ボ−ルがチップ先端のボ−ル抱持部の内縁に密接するように先端ボ−ルの背面にバネ圧が付与されており、上記インキ貯留体に上述の構成となる筆記具用インキ組成物が充填されているものであり、微小カプセルはインキ貯留体内では破壊されることなく存在し、筆記時において、筆記具先端部にて微小カプセルが破壊された後若しくは破壊されながらペン先から流出するものであれば、特に限定されるものでない。
好ましくは、安定したインキ流出を行う点から、インキ貯留体後端部から加圧されることにより、インキが流出される構成となるもの、例えば、図1〜図3に示すような加圧機構を有する本体部に着脱着自在とした加圧型のノック式筆記具Aなどが挙げられる。
【0022】
この図1〜図3に示す加圧型のノック式筆記具Aの構成等を簡単に説明すると、先端にボールペンチップ(塗布部の例)12と後方にインキ貯留体(リフィール)10を備えたリフィールユニット14が、第1のスプリング16で後方に向けて弾発された状態で軸本体18内に装填されると共に、前記リフィールユニット14のボールペンチップ12を、軸本体18の後端側に設けたノック機構20の押し出し操作及び押し出し解除操作に連動させて先端開口18aから出没可能となる筆記具であって、前記リフィールユニット14のインキ貯留体10内の後部10rが開放され、軸本体18内には、該後部10rとノック機構20との間にリフィール10内圧力を増加させる加圧機構22が設けられ、加圧機構22は、シール部24と前端開放の筒部26とシール部24及び筒部26を離隔させる方向に弾発させる第2のスプリング28とを有するものであり、前記ノック機構20の押し出し操作終了後に、軸本体18から突出したボールペンチップ12先端を押圧してリフィールユニット14を後退させた場合に、加圧機構22では前記シール部24が後退して相対的に筒部26が前進して内部加圧室40の内部空気を圧縮し、その圧縮された内部空気により逆止弁29を開きシール部24を通してリフィール10内を加圧するようになっている。また、加圧機構22は、ノック機構20の押し出し解除時における前記リフィールユニット14のボールペンチップ12のペン先の軸本体18内への没入状態でリフィール10内の加圧状態を解除するものである。
【0023】
更に、前記リフィールユニット14は、少なくとも、着色液体を内包した破壊可能な微小カプセル30aと、粘性液体30bとを含有する筆記具用インキ組成物30とその後端にインキ組成物30に追従するフォロア32を充填したリフィール10と、該リフィール10の前方に圧入されたボールペンチップ12とを備えて構成され、ボールペンチップ12先端内部に回動可能に遊嵌されたボール11は、押し棒11aを介してスプリング(バネ圧)11bにより先方に向けて付勢されて背圧が付与されており、非筆記時にはボールペンチップ12先端開口部を塞いでいる。また、ボールペンチップ12内には、ボール受け座12aを有すると共に、微小カプセルを破砕するための破壊ブレード12bを有している。また、押し棒11aの先端側にも微小カプセルを破砕するための破壊ブレード11cを有している。この各破砕ブレード11cと12b間に微小カプセルが通過する際に破砕されて、ボール11から破砕したインキ組成物が流出する構造となるものである。この破砕ブレード11cと12bとの間隔(距離)は、非筆記時にボールペンチップ12先端開口部がボールで塞いでいる状態のときが最小となっており、インキ流出時に最大となるように設定されている。この最大のときの破砕ブレード11cと12bの間隔(距離)は、微小カプセルの直径より若干小さく設定されて、微小カプセルが通過する際に破砕されるものとなっている。
なお、リフィール10内のインキ組成物30の後部には、インキ組成物30の溶剤分の揮発を防止する目的でフォロア32が充填されている。
【0024】
この筆記具では、筆記具用インキ組成物の流量が必要なときには軸本体18より突出した筆記部12の先端を筆記面に押し付けることで、リフィール10を加圧機構の中に更に押し込ませてより大きな加圧力をリフィール10内に加圧することができる。このように使用時のみ加圧できるので、非使用時のインキ組成物の漏れを防止できる。
【0025】
このように構成される本発明では、微小カプセル内に着色液体が内包されているため、着色液体の劣化を防止することができると共に、筆記具のインキ貯留体内では、微小カプセルが破壊されることなく存在するため、カプセル内部に顔料インキ、特に比重の重い酸化チタンを含むようなインキであっても、インキ貯留体全体での顔料の沈降を抑制できるため、インキの追従不足や顔料沈降による筆記不良などが生じにくいものとなる。
また、着色液体を内包した破壊可能な微小カプセルと、粘性液体とを少なくとも含有する筆記具用インキ組成物は、筆記具先端部において破壊が容易に生じ、例えば図1〜図3に示す筆記具では破砕ブレードで破壊が容易に生じ、筆記面には全体的に均一に混合された状態で存在することとなるため、描線の鮮明さを損なうことがない優れた筆記描線が得られるものとなる。
【0026】
更に、微小カプセルの壁は微細に破壊することができるため、筆記具先端での目詰まりやざらつき感を起こすことなく筆記が可能となる。
更に、インキ貯留体(リフィール)10自体を、視認性を有する単層又は複合層となる視認性を有する合成樹脂等で構成されるので、インキ貯留体の微小カプセル30aを視認すれば、見た目の斬新さから、筆記具全体の構造と相俟って、意匠的にも優れた外観的装飾効果を有するものとなり、消費者の目に引き、購買意欲も高めることもできる。
また、微小カプセル30aを色調が異なる少なくとも2色以上のもの、例えば、赤色の微小カプセルと黄色の微小カプセルや、青色の微小カプセルと赤色の微小カプセルとが混合された微小カプセルからなるものでは、紙面に連続的に転写して色彩感覚や立体感に優れたマーブル調又は各色が混合されて別色となった描線となる筆記を可能とする筆記具が得られるものとなる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例の配合量は、全て重量部で示した。
【0028】
〔実施例1〕
下記配合1〜4を用いて下記方法に従って筆記具用インキ組成物を得た。
(配合1)
アスパラギン酸ナトリウム 0.1
寒天 0.25
精製水 42.5
ツイーン80(和光純薬社製、界面活性剤) 0.5
(配合2)
オクタン 15.0
酸化チタン 10.0
ソルビタントリオレエート 1.0
(配合3)
塩化カルシウム 1.5
精製水 29.5
(配合4)
エコーガム 2.0
精製水 120.0
【0029】
上記配合1に示す成分を均一な液とした後、酸化チタンを分散しておいた配合2の成分を配合1の液中に滴下して加えた。その後、配合1と配合2の成分が均一に混じり合うように撹拌した。
得られた混合液体を、予め溶解しておいた配合3中に、ノズル径0.5μmの孔から滴下することにより、内部に白色インキを包含する微小カプセルを得た。このときのカプセル径は、約1.5mmであった。
次いで、得られた微小カプセルを、予め溶解させておいた配合4中に分散せしめ、図1〜図3に準拠する内径6mmの視認性を有するポリプロピレンン製のインキ貯留体を有するボールペン用リフィールに詰めた。また、後端部には従来筆記具に使用しているインキ追従体を充填した後、5000rpm、2分間遠心分離機によって、脱気を行った。
この際、インキ貯留体内では、微小カプセルがそれぞれ接するように細密充填に近い状態に存在させ、微小カプセルの隙間(空隙)を配合4の粘性液体が埋める状態(埋めることができる量の約1倍)となるように調整した。
ボールペンの径としては、1.3mmのチップを用い、ボールペンチップとインキ貯留体の間は、内径2.0mmの管でつないだ。
内径2.0mmの管の途中には、刃物状の金属片(破砕用ブレード)を固定し、微小カプセルが当該管内を通過する際に、破砕される構造とした。
更に、ボールペンの後端側からインキ貯留体内の当該微小カプセルを含むゲル状インキを加圧するにより、ボールペンチップ側にインキを押し出す構造とした。
【0030】
得られた筆記具を用いて筆記を行ったところ、インキ貯留体内では、カプセルが破壊されることなく、ボールペンチップとインキ貯留体の間に存在する刃物上の金属片部(破砕ブレード間)でカプセルが破壊され、チップ部のボールの回転と紙面への転写(筆記)時にカプセルが十分に破壊されて筆記することができた。また、インキ貯留体のインキを視認すれば、酸化チタンが内包された白色の微小カプセルが視認でき、見た目の斬新さから、筆記具全体の構造と相俟って、意匠的にも優れた外観的装飾効果を有するものとなった。
また、得られた筆記具を、温度40℃、湿度65%の環境下でボールペンチップを上向き、下向き、横向きになうように1ヶ月保存したが、どの方向で保存した状態であっても、インキ貯留体内での沈降や偏り、カプセルの破壊は見られず、安定性に優れることが判った。更に、保存前の筆記状態と保存後の筆記状態にも差は見られなかった。
【0031】
〔実施例2〕
下記配合5〜9を用いて筆記具用インキ組成物を調製し、上記実施例1と同様の方法、構造の筆記具に充填した。
(配合5)
アスパラギン酸ナトリウム 0.1
寒天 0.25
精製水 42.5
ツイーン80(和光純薬社製、界面活性剤) 0.5
(配合6)
オクタン 15.0
酸化チタン 10.0
ソルビタントリオレエート 1.0
(配合7)
オクタン 15.0
フタロシアニンブルー 10.0
ソルビタントリオレエート 1.0
(配合8)
塩化カルシウム 1.5
精製水 29.5
(配合9)
エコーガム 2.0
精製水 120.0
【0032】
上記配合5に示す成分を均一な液とした後、酸化チタンを分散しておいた配合6の成分を配合5の液中に滴下して加えた。その後、配合5と配合6の成分が均一に混じり合うように撹拌した。
得られた混合液体を、予め溶解しておいた配合8中に、ノズル径0.5μmの孔から滴下することにより、内部に酸化チタンを包含する微小カプセルを得た。このときのカプセル径は、約1.5mmであった。
また、上記配合5に示す成分を均一な液とした後、着色剤(フタロシアニンブルー)を分散しておいた配合7の成分を配合5の液中に滴下して加えた。その後、配合5と配合7の成分が均一に混じり合うように撹拌した。
得られた混合液体を、予め溶解しておいた配合8中に、ノズル径0.5μmの孔から滴下することにより、内部に青色インキを包含する微小カプセルを得た。このときのカプセル径は、約1.5mmであった。
次いで、得られた各白色と青色との微小カプセル混合物を、予め溶解させておいた配合9中に分散せしめ、内径6mmの視認性を有するポリプロピレンン製のインキ貯留体を有するボールペン用リフィールに詰め、上記実施例1と同様にして加圧型の筆記具を作製した。
【0033】
得られた筆記具を用いて筆記を行ったところ、インキ貯留体内では、各色のカプセルが破壊されることなく、ボールペンチップとインキ貯留体の間に存在する刃物上の金属片部(破砕ブレード間)でカプセルが破壊され、チップ部のボールの回転と紙面への転写(筆記)時にカプセルが十分に破壊されて筆記することができた。また、インキ貯留体のインキを視認すれば、白色と青色の微小カプセルが視認でき、見た目の斬新さから、筆記具全体の構造と相俟って、意匠的にも優れた外観的装飾効果を有するものであった。また、紙面に連続的に筆記すると、白色と青色が混ざった色彩感覚や立体感に優れたマーブル調筆記を可能とする筆記具が得られることが判った。
また、得られた筆記具を、温度40℃、湿度65%の環境下でボールペンチップを上向き、下向き、横向きになうように1ヶ月保存したが、どの方向で保存した筆記具であっても、インキ貯留体内での沈降や偏り、カプセルの破壊は見られず、安定性に優れることが判った。更に、保存前の筆記状態と保存後の筆記状態にも差は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の塗布具の一例を示す部分縦断面図である。
【図2】(a)は、図1のインキ貯留体の部分縦断面図、(b)はインキ貯留体に筆記具用インキ組成物を充填した状態を示す正面図である。
【図3】ペン先となるボールペンチップの要部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
A 筆記具
10 インキ貯留体
12 ボールペンチップ
14 リフィールユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色液体を内包した破壊可能な微小カプセルと、粘性液体とを含有することを特徴とする筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
着色液体が、染料、有機顔料及び無機顔料から選ばれる少なくとも1種の着色剤にて着色されている請求項1記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項3】
微小カプセルには、酸化チタンが内包された請求項1又は2記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項4】
微小カプセルは、色調が異なる少なくとも2色以上のものが混合されたものからなる請求項1〜3の何れか一つに記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項5】
微小カプセルが少なくとも1μm以上のサイズを有する請求項1〜4の何れか一つに記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一つに記載の筆記具用インキ組成物がインキ貯留体に収容されると共に、微小カプセルはインキ貯留体内では破壊されることなく存在し、筆記時において、筆記具先端部にて微小カプセルが破壊された後若しくは破壊されながらペン先から流出することを特徴とする筆記具。
【請求項7】
インキ貯留体後端部から加圧されることにより、インキが流出される請求項6記載の筆記具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−111761(P2006−111761A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301569(P2004−301569)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】