説明

等速自在継手

【課題】ブーツがアダプタとシャフトとの間に挟まれるのを回避して、この挟まれによるブーツの損傷等を防止することができる等速自在継手を提供する。
【解決手段】シャフト突出側の外側継手部材開口部を塞ぐ密封装置30を備えた等速自在継手である。密封装置30が、一端部33aが外側継手部材22に嵌合される金属製円筒状のアダプタ33と、大径部31aがアダプタ33の他端部33bに連結されると共に小径部31bがシャフト28に嵌合される可撓性材料からなるブーツ31とを有する。内側継手部材21に、継手許容角度を規制してシャフト28とアダプタ33との間のブーツ挟まれを防止する角度抑制機構40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
プロペラシャフト用等の等速自在継手は、例えば、図8に示すように、内輪1、外輪2、ボール3およびケージ4を主要な構成要素としている。
【0003】
内輪1は、その外周面に複数のトラック溝6が形成されている。この内輪1の中心孔(内径孔)5にシャフト8を挿入してスプライン嵌合させ、そのスプライン嵌合により両者間でトルク伝達可能としている。
【0004】
外輪2は、その内周面に内輪1のトラック溝6と同数のトラック溝7が形成されている。外輪2のトラック溝7と内輪1のトラック溝6との間にトルクを伝達する複数のボール3が組み込まれている。内輪1と外輪2の間にケージ4が配置され、ボール3は、ケージ4のポケット9内に保持されている。
【0005】
シャフト突出側において、外輪2とシャフト8との間には密封装置10が装着されている。密封装置10は、継手内部への塵埃等の異物進入防止や継手内部に封入されたグリースの漏れ防止を目的としている。
【0006】
プロペラシャフト用等速自在継手は、ドライブシャフト用等速自在継手と比較して3〜4倍の高速回転で使用されるため、外輪2に取り付けたブーツ固定板(金属製アダプタ)13とシャフト間に凹タイプのゴムブーツ11を装着したシール構造(密封装置)10が一般的である。
【0007】
すなわち、密封装置10は、ゴム材料又は樹脂材料等の可撓性材料にて構成されるブーツ11と、金属製のアダプタ13とからなる。ブーツ11は大径部11aと、小径部11bと、大径部11aと小径部11bとを連結する断面略U字形の屈曲部11cとを備える。アダプタ13は略円筒形で、一端部13aが外輪2の端部外周面にOリング等のシール部材14を介して圧入加締められ、他端部13bがブーツ11の大径部11aを加締めにて保持している。また、ブーツ11は、その小径部11bがシャフト8に外嵌されてブーツバンド14で締め付けられている。
【0008】
ブーツ11の屈曲部11cは、アダプタ13の内周面とシャフト8の外周面との間の空間に介挿され、継手が作動角をとって回転する際、半径方向の屈伸動作を繰り返すことになる。
【0009】
ところで、プロペラシャフト用等速自在継手の内部構造は、ドライブシャフト用等速自在継手と同様の構造であるため、プロペラシャフト用等速自在継手特有のブーツを装着しない場合、ジョイント最大許容角度は46.5°までとすることができる。
【0010】
しかしながら、プロペラシャフト用等速自在継手特有のブーツを装着した場合、継手軸心(外輪の軸心)に対してシャフト軸心の許容角度(20°前後)以上になると、アダプタ13とシャフト8との間にブーツ11が挟まれる状態となる。挟まれれば、ブーツ11が損傷したり破れたり、金属製アダプタ13が変形することがある。
【0011】
そこで、このようなブーツ11の損傷を防止するための構造の等速自在継手が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0012】
特許文献1に記載のものは、図9に示すように、アダプタ13の他端部13bをブーツ11の大径部11aにて囲繞して、緩衝部分16を形成している。さらに、他端部13bの内周面に接着される接着部16aの軸方向長さL1を、他端部13bの外周面に接着される接着部16bの軸方向長さL2をよりも長くしている。
【0013】
このため、図9に示すものでは、緩衝部分16により、アダプタ13に他端部13bが直接的にブーツ11に接触しないようにして、ブーツ11の損傷等を防止しようとしている。また、他端部13bの内周面に接着される接着部16aの軸方向長さL1を、他端部13bの外周面に接着される接着部16bの軸方向長さL2をよりも長くすることによって、ブーツ11の屈曲部11c(中間可撓性部)が継手外方(軸方向外方)へ膨張した際に、この中間可撓性部がアダプタ13の他端縁(自由端)に届かないようにしている。これによって、ブーツ11の損傷等を防止しようとしている。
【0014】
さらに、ブーツ11の小径部11bの内周面に通気孔17を設け、内圧が上昇した際に、内圧を抜くようにして、内圧上昇によるブーツ11の膨張を回避して、ブーツ11の損傷等を防止しようとしている。
【0015】
特許文献2に記載のものは、図10に示すように、屈曲部11cから分岐される枝部18を設け、この枝部18をアダプタ13の径方向壁13cに内面に沿わせている。そして、この枝部18を、アダプタ13の径方向壁13cと、外輪端面とで挟持している。このため、ブーツ11の屈曲部11cが軸方向外方へ膨張しようとしても、枝部18にてこの膨張を防止している。これによって、高速回転に伴う遠心力を受けても、軸方向外方への膨張を回避して、ブーツ11の損傷等を防止しようとしている。
【0016】
また、枝部18とアダプタ13との間に密封室19を設け、これによって、屈曲部11c(中間可撓性部)の膨張を防止しようとしている。
【特許文献1】特開平8−284972号公報
【特許文献2】特開平8−296662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1に記載のものでは、大きな作動角をとった場合、アダプタ13は、ブーツ11に対して、緩衝部分16を介して当たることになる。しかしながら、緩衝部分16内には、金属製等のアダプタ13の他端部13bが収納されている。このため、他端部13bとシャフト8との間にブーツ11が挟まれた状態となり、ブーツ11の損傷等を防止することができない。しかも、アダプタ13の他端部13bをブーツ11の大径部11aにて囲繞しなければなければならず、組立性に劣っていた。
【0018】
特許文献2に記載のものでは、図9に示した密封装置と同様、アダプタ13の他端部13bが外部に露出し、アダプタ13とシャフト8との間にブーツ11が挟まれる状態となるのを回避することができない。
【0019】
また、組立て時、搬送時、及び車両への組付け時に、継手軸心とシャフト軸心との角度が最大許容角度以上となる危険性がある。そこで、搬送時においては、許容角度以上とならないようにするため、等速自在継手を固定支持して運ぶ必要がある。また、ブーツに塗装・バランシング・車両への組み付け時等には許容角度以上の角度とならないように取り扱かわねばならなかった。
【0020】
本発明は、上記課題に鑑みて、ブーツがアダプタとシャフトとの間に挟まれるのを回避して、この挟まれによるブーツの損傷等を防止することができる等速自在継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の等速自在継手は、内周面に軸方向に延びる複数のトラック溝を形成した外側継手部材と、外周面に軸方向に延びる複数のトラック溝を形成するとともに内径孔にシャフトの一端が連結された内側継手部材と、それら内外継手部材のトラック溝間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外側継手部材と内側継手部材との間に保持されてボールを保持するケージと、シャフト突出側の外側継手部材開口部を塞ぐ密封装置とを備え、前記密封装置が、一端部が前記外側継手部材に嵌合される金属製円筒状のアダプタと、大径部が前記アダプタの他端部に連結されると共に小径部が前記シャフトに嵌合される可撓性材料からなるブーツとを有する等速自在継手において、継手許容角度をとった状態でボールに当接し、継手許容角度を規制してシャフトとアダプタとの間のブーツ挟まれを防止する角度抑制機構を内側継手部材に設けたものである。
【0022】
内側継手部材に、継手許容角度を規制する角度抑制機構を設けることによって、シャフトとアダプタとの間にブーツが挟まれる状態となる屈曲状態を回避することができ、ブーツ挟まれを防止することができる。
【0023】
前記角度抑制機構は、内側継手部材端面からトラック溝に侵入して、前記ボールに当接する間座部材を備えたものである。また、前記間座部材の爪部は、トラック溝の底面に沿って内側継手部材端面から軸方向内方に延びる。
【0024】
前記間座部材を設けることにより、継手軸心に対してシャフト軸心が所定角度に屈曲したときに、前記ボールに前記間座部材の爪部が当接して、前記所定角度以上の屈曲を規制する。すなわち、ボールが間座部材の爪部の先端縁に当接することにより、子午線方向(継手の折り曲げ点を中心とする球に沿った円弧)の移動が規制され、継手許容角度を規制することができる。
【0025】
前記間座部材の爪部の外面先端部を軸方向内方側に向かって順次内径側に傾斜するテーパ面とすると共に、前記爪部の先端縁を凸曲面としたものである。これにより、ボールと間座部材が接触する際に、ボールが間座部材を押す荷重を多方向に分散させることができる。
【0026】
前記間座部材は、シャフトに外嵌され、リング状からなる本体部と、この本体部の外周に連設された前記爪部を備え、シャフト抜け止め用の止め輪(スナップリング)を介して前記本体部を内側継手部材に装着したものである。すなわち、シャフトを固定するために必要である止め輪を使用して、この間座部材を反ブーツ側の内側継手部材端面に固定することができる。
【0027】
自動車のプロペラシャフトに用いられる等速自在継手は作動角(常用角)が小さいので、前記等速自在継手はプロペラシャフトに用いるのが最適となる。
【発明の効果】
【0028】
内側継手部材に、継手許容角度を規制する角度抑制機構を設けることによって、シャフトとアダプタとの間にブーツが挟まれる状態となる屈曲状態を回避することができ、ブーツ挟まれを防止することができる。これによって、ブーツが損傷したり、ブーツ固定板(アダプタ)が変形したりするのを防止でき、密封装置が長期にわたってその機能を発揮することができる。しかも、アダプタの他端部をブーツの大径部にて囲繞する必要がないので、組立性の向上を図ることができる。
【0029】
前記間座部材の爪部により、ボールの子午線方向の移動が規制される。すなわち、継手軸心に対してシャフト軸心が所定角度に屈曲したときに、ボールに間座部材の爪部が当接して、前記所定角度以上の屈曲を規制するものであり、その角度規制を確実に行わせることができる。このため、ブーツ挟み防止の信頼性が向上する。また、間座部材の爪部はトラック溝に沿って延びるため、装着安定性の向上を図ることができる。
【0030】
ボールが間座部材を押す荷重を多方向に分散させることにより、一箇所に荷重が集中しないので、間座部材の耐久性を増すことができる。
【0031】
シャフト抜け止め用の止め輪を介して前記間座部材を内側継手部材に装着するので、前記間座部材を内側継手部材に固定するための特別な部材を必要とせず、しかも、簡単に取り付け及び取り外しが可能となる。
【0032】
自動車のプロペラシャフトに用いられる等速自在継手は作動角(常用角)が小さいので、前記等速自在継手はプロペラシャフトに用いるのが最適となり、このように、プロペラシャフトにこの等速自在継手を用いれば、長期にわたって安定した機能を発揮することができる。特に、プロペラシャフトに組付けた状態でのバランス修正や、塗装工程及び車両への組付け時の取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。
【0034】
本発明の第1実施形態における等速自在継手は、内側継手部材としての内輪21、外側継手部材としての外輪22、ボール23およびケージ24を主要な構成要素としている。
【0035】
内輪21は、その外周面(凸球状外周面)に複数のトラック溝26が形成されている。この内輪21の中心孔(内径孔)25にシャフト28を挿してスプライン嵌合させ、そのスプライン嵌合により両者間でトルク伝達可能としている。なお、シャフト28は、スナップリング32により内輪21に対して抜け止めされている。
【0036】
外輪22は、その内周面(円筒状内周面)に内輪21のトラック溝26と同数のトラック溝27が形成されている。外輪22のトラック溝27と内輪21のトラック溝26との間にトルクを伝達する複数のボール23が組み込まれている。内輪21と外輪22の間にケージ24が配置され、ボール23は、ケージ24のポケット29内に保持されている。
【0037】
この外輪22の軸方向一端側(反シャフト突出側の開口部)には、エンドキャップ50が嵌着され、シャフト突出側の外輪開口部は密封装置30にて塞がれている。エンドキャップ50と密封装置30にて、継手内部に充填したグリースの漏洩を防ぐと共に異物の侵入を防止している。
【0038】
この密封装置30は、図8に示す従来の密封装置10と同様であって、ゴム材料又は樹脂材料等の可撓性材料にて構成されるブーツ31と、金属製のアダプタ33とからなる。ブーツ31は、前記アダプタ33を介して外輪22に固定される大径部31aと、シャフト28にブーツバンド35で固定される小径部31bと、大径部31aと小径部31bとを連結(接続)する断面略Uの字状の屈曲部31cとを備える。
【0039】
アダプタ33の一端部33aは外輪22に対するシール性と抜け強度を確保するために、外輪22の端部外周面のOリング等のシール部材34を介して圧入された後、ローリング加締等によって加締固定される。アダプタ33の他端部33bは、ブーツ31の大径部31aを抱込み把持している。すなわち、ブーツ31の大径部31aはアダプタ33の他端部33bにて包囲されている。
【0040】
シャフト28の外周面には環状凹部37が形成され、この環状凹部37にブーツ31の小径部31bが外嵌され、ブーツバンド35で締め付けられている。また、小径部31bの外周面には周方向溝38が形成され、この周方向溝38にブーツバンド35が嵌合している。
【0041】
エンドキャップ50は、円盤状の本体部50aと、この本体部50aの軸心部に装着された小キャップ部50bとを備えている。本体部50aは、平板状の中央部51と、この中央部51の外周側の嵌合部52とを備える。そして、嵌合部52が反ブーツ側の外輪開口部の大径部53に嵌合されている。
【0042】
内輪21には、継手許容角度を規制してシャフト28とアダプタ33との間のブーツ挟まれを防止する角度抑制機構40を設けている。
【0043】
図6及び図7に示すように、内輪21端面に凹部44を設け、この凹部44に間座部材41を嵌合させることによって、前記角度抑制機構40を構成している。前記間座部材41は、図3〜図5に示すように、リング状の本体部43と、この本体部43の外周に連設された爪部42とを備える。爪部42は周方向に沿って60°ピッチで6個配設されている。前記間座部材41の爪部42は、外面先端部を軸方向内方側に向かって順次内径側に傾斜するテーパ面45とすると共に、前記爪部42の先端縁を凸曲面とする。つまり、爪部42の先端縁に丸みを付けている。
【0044】
前記間座部材41は、シャフト抜け止め用の止め輪(スナップリング)32を介して前記本体部43を内輪21に装着したものである。すなわち、シャフト28を固定するために必要である止め輪32が、間座部材41の本体部43と当接して、この間座部材41を内輪端面に固定することができる。
【0045】
このように、前記間座部材41を、内輪21端面に設けた凹部44に嵌合させると、前記爪部42が、内輪21端面からトラック溝26に侵入して、トラック溝26の底面に沿って内輪21端面から軸方向内方に延びる。
【0046】
このため、継手軸心(外輪22の軸心)Oとシャフト28の軸心O1とが一致した状態から、図1に示すように、シャフト28の軸心O1が外輪22の軸心Oに対して屈曲して、所定屈曲状態になれば、図2に示すように、屈曲方向側のボール23に間座部材41の爪部42の先端縁が当接する。ここで、所定屈曲状態とは、この等速自在継手が、使用される部位に対して必要とする屈曲状態である。
【0047】
このようにボール23に間座部材41の爪部42が当接すれば、前記ボール23の子午線方向(継手の折り曲げ点を中心とする球に沿った円弧)の移動が規制され、これ以上この方向の屈曲が規制される。すなわち、この角度抑制機構40がなければ、継手軸心Oに対する屈曲角θが最大許容角度以上となる。
【0048】
しかしながら、角度抑制機構40にて、ブーツ31の一部がアダプタ33の他端部33bとシャフト28とで挟まれる状態となるまで屈曲しない。また、前記間座部材41の爪部42の外面先端部を軸方向内方側に向かって順次内径側に傾斜するテーパ面45とすると共に、前記爪部の先端縁を凸曲面としたものである。これにより、ボール23と間座部材41が接触する際に、ボール23が間座部材41を押す荷重を多方向に分散させることができる。
【0049】
本発明では、内輪21に、継手許容角度を規制する角度抑制機構40を設けることによって、屈曲角θが最大許容角度以上となるのを防止できる。このため、シャフト28とアダプタ33との間にブーツが挟まれる状態となる屈曲状態を回避することができ、ブーツ挟まれを防止することができる。これによって、ブーツ31が損傷したり、ブーツ固定板(アダプタ)33が変形したりするのを防止でき、密封装置30が長期にわたってその機能を発揮することができる。しかも、アダプタ33の他端部をブーツ31の大径部31aにて囲繞する必要がないので、組立性の向上を図ることができる。
【0050】
前記間座部材43の爪部42により、ボール23の子午線方向の移動が規制される。すなわち、継手軸心Oに対してシャフト軸心O1が所定角度に屈曲したときに、ボール23に間座部材43の爪部42が当接して、前記所定角度以上の屈曲を規制するものであり、その角度規制を確実に行わせることができる。このため、ブーツ挟み防止の信頼性が向上する。また、間座部材43の爪部42はトラック溝26と類似形状(トラック底面に沿った形状)となるため、装着安定性の向上を図ることができる。
【0051】
ボール23が間座部材41を押す荷重を多方向に分散させることにより、一箇所に荷重が集中しないので、間座部材41の耐久性を増すことができる。
【0052】
シャフト抜け止め用の止め輪32を介して前記間座部材41を内輪21に装着するので、前記間座部材41を内輪21に固定するための特別な部材を必要とせず、しかも、簡単に取り付け及び取り外しが可能となる。
【0053】
また、自動車のプロペラシャフトに用いられる等速自在継手は作動角(常用角)が小さいので、本発明の等速自在継手はプロペラシャフトに用いるのが最適となり、このように、プロペラシャフトにこの等速自在継手を用いれば、長期に渡って安定した機能を発揮することができる。特に、プロペラシャフトに組付けた状態でのバランス修正や、塗装工程及び車両への組付け時の取り扱いが容易となる。
【0054】
なお、本発明の等速自在継手は、前記したように、自動車のプロペラシャフトに用いるのが好ましいが、もちろんプロペラシャフト以外に用いることができる。
【0055】
また、角度抑制機構40による角度規制の前記所定角度としては、ブーツ31の大径部31aの外径や小径部31bの外径等の応じて種々変更できる。すなわち、所定角度は、ブーツ挟まれを防止することができるとともに、使用環境下での屈曲に対応できる屈曲が可能な範囲であればよい。
【0056】
前記実施形態では反ブーツ側の内輪21端面側に角度抑制機構40を設けたが、ブーツ側の内輪21端面側に角度抑制機構40を設けてもよい。すなわち、継手許容角度を規制する間座部材41を、ブーツ側の内輪21端面に当接するように装着してもよい。また、反ブーツ側の内輪21端面側およびブーツ側の内輪21端面側の両端に間座部材41を設けてもよい。この場合、内輪21の両端面側で継手許容角度を規制することができ、安定した規制が可能となる。
【0057】
内輪21に、間座部材41を嵌合させるための凹部44を設けたが、前記凹部44を設けなくてもよい。また、シャフト抜け止め用の止め輪(スナップリング)32を介して前記間座部材41を内輪21端面に固定したが、止め輪32を使用することなく、他の固定手段にて間座部材41を固定するようにしてもよい。
【0058】
また、間座部材41の本体部43は、周方向凹溝41に嵌合可能であれば、エンドレスであっても、一部に切欠きを有するものであってもよい。そのため、間座部材41の材質も、この等速自在継手が使用される環境に対応でき、しかも、ボール23に間座部材41の爪部42が当接した際に、継手許容角度を規制することができるものであれば、ゴム、樹脂、金属等の種々のものを使用することができる。
【0059】
本発明の等速自在継手としても、トルク伝達手段としてボールを使用する等速自在継手に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態を示す等速自在継手の断面図である。
【図2】前記等速自在継手の角度抑制状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】前記等速自在継手の間座部材の斜視図である。
【図4】前記等速自在継手の間座部材の正面図である。
【図5】前記等速自在継手の間座部材の側面図である。
【図6】前記等速自在継手の内輪の正面図である。
【図7】前記等速自在継手の内輪の断面図である。
【図8】従来の等速自在継手の断面図である。
【図9】従来の等速自在継手に用いられる他の密封装置の断面図である。
【図10】従来の等速自在継手に用いられる別の密封装置の断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 内輪
2 外輪
3 ボール
4 ケージ
6、7 トラック溝
8 シャフト
9 ポケット
10 密封装置
11 ブーツ
11a 大径部
11b 小径部
11c 屈曲部
13 ブーツアダプタ
13a 端部
13b 端部
13c 径方向壁
14 シール部材
15 ブーツバンド
16 緩衝部分
16a、16b 接着部
17 通気孔
18 枝部
19 密封室
21 内輪
22 外輪
23 ボール
24 ケージ
25 中心孔
26、27 トラック溝
28 シャフト
29 ポケット
30 密封装置
31 ブーツ
31a 大径部
31b 小径部
31c 屈曲部
32 スナップリング
33 ブーツアダプタ
33a 端部
33b 端部
34 シール部材
35 ブーツバンド
37 環状凹部
38 周方向溝
40 角度抑制機構
41 間座部材
42 爪部
43 本体部
44 凹部
50 エンドキャップ
50a 本体部
50b 小キャップ部
51 中央部
52 嵌合部
53 大径部
O 継手軸心
O1 シャフト軸心
θ 屈曲角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に軸方向に延びる複数のトラック溝を形成した外側継手部材と、外周面に軸方向に延びる複数のトラック溝を形成するとともに内径孔にシャフトの一端が連結された内側継手部材と、それら内外継手部材のトラック溝間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外側継手部材と内側継手部材との間に保持されてボールを保持するケージと、シャフト突出側の外側継手部材開口部を塞ぐ密封装置とを備え、前記密封装置が、一端部が前記外側継手部材に嵌合される金属製円筒状のアダプタと、大径部が前記アダプタの他端部に連結されると共に小径部が前記シャフトに嵌合される可撓性材料からなるブーツとを有する等速自在継手において、継手許容角度をとった状態でボールに当接し、継手許容角度を規制してシャフトとアダプタとの間のブーツ挟まれを防止する角度抑制機構を内側継手部材に設けたことを特徴とする等速自在継手。
【請求項2】
前記角度抑制機構は、内側継手部材端面からトラック溝に侵入して、前記ボールに当接する爪部を有する間座部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手。
【請求項3】
前記間座部材の爪部は、トラック溝の底面に沿って内側継手部材端面から軸方向内方に延びることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の等速自在継手。
【請求項4】
前記間座部材の爪部の外面先端部を軸方向内方側に向かって順次内径側に傾斜するテーパ面とすると共に、前記爪部の先端縁を凸曲面としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の等速自動継手。
【請求項5】
前記間座部材は、シャフトに外嵌され、リング状からなる本体部と、この本体部の外周に連設された前記爪部を備え、シャフト抜け止め用の止め輪を介して前記本体部を内側継手部材に装着したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の等速自動継手。
【請求項6】
自動車のプロペラシャフトに用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の等速自在継手。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−170575(P2007−170575A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370626(P2005−370626)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】