説明

筐体および該筐体を備えた携帯電子機器、並びに該筐体の製造方法

【課題】製造期間を延長させることなく、収納空間の大きさを維持したまま小型化、薄型化が可能な防水機能を有する筐体を提供する。
【解決手段】筐体本体2と、蓋部材3と、枠部材9と、パッキン7と、を備える筐体11に係る。筐体本体2は、収納空間となる凹みを有する。蓋部材3は、筐体本体2の凹みの周縁と着脱可能に係合されており、少なくとも一部が凹みを覆う。枠部材9は、筐体本体2の凹みの周縁に沿って環状に形成され、蓋部材3の、筐体本体2の凹みを覆う側の面3aに溶着されている。パッキン7は、枠部材9の、蓋部材3に溶着された側とは反対の側に形成されており、筐体本体2の凹みの周縁と蓋部材3との間の隙間を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ部品や電子回路基板などの電子部品を収納する筐体および該筐体を備えた電子機器、並びに該筐体の製造方法に関する。特に、防水機能を有する筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やデジタルカメラなどの携帯型の電子機器の筐体に防水機能を付与することが求められている。筐体に防水機能を付与する方法として、互いに組み合わされて収納空間を形成する一対の部材の間の隙間をパッキンで閉塞する方法が知られている。
【0003】
図4は、互いに組み合わされて収納空間を形成する一対の部材の間にパッキンを備えた筐体の断面図である。図4に示すように、筐体1は、収容空間となる凹みを有する筐体本体2と、筐体本体2に着脱可能に係合され、筐体本体2の凹みを覆う蓋部材3と、を備えている。筐体1の収納空間には、バッテリ部品といった電子部品4が収納されている。なお、図4は、筐体本体2および蓋部材3の両方と交わる面で切断したときの断面図である。
【0004】
筐体本体2の、収容空間となる凹みを形成している側壁の上端には、収容空間を囲むように溝5が形成されている。蓋部材3の、筐体本体2側には、溝5と嵌合する凸条部6が形成されており、凸条部6の先端に、ゴム材料からなるパッキン7が一体形成されている。パッキン7は、溝5に対応する凸条部6に沿って環状に設けられており、蓋部材3が筐体本体2に装着された際にパッキン7は溝5内へ圧入される。したがって、筐体本体2と蓋部材3との間の隙間が閉塞され、液体が筐体1の外側から収納空間へ流入しなくなる。
【0005】
しかしながら、蓋部材3上にパッキン7を一体成形する場合、筐体1を製造するために必要な製造期間が長くなり、また蓋部材3の製造歩留まりも低下していた。その理由は次のとおりである。
【0006】
すなわち、蓋部材3は筐体1の外観の一部を構成するため、蓋部材3の表面(おもて面)には塗装や印字といった加飾がなされている。パッキン7に塗料が付着するとパッキン7のシール性能が低下する。そのため、パッキン7を一体成形する工程と、蓋部材3に加飾を施す工程とを同時に行うことができない。蓋部材3に加飾を施す工程の後にパッキン7を一体成形する工程が行われるため、筐体1の製造期間が長くなっていた。
【0007】
また、蓋部材3にパッキン7を一体成形すると、パッキン7と蓋部材3とを分離することができない。そのため、蓋部材3への加飾が良好に行われたがパッキン7は良好に成形されなかった場合、蓋部材3は不良品として扱われていた。その結果、パッキン7の製造歩留まりだけでなく、蓋部材3の製造歩留まりの低下を招いていた。
【0008】
特許文献1では、筐体本体と蓋部材との間にパッキンを備えた筐体であって、蓋部材の製造歩留まりを低下させることなく、かつより短い期間で製造することができる筐体が開示されている。以下、図5,6を用いて特許文献1に開示されている筐体を説明するが、図4と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0009】
図5は、特許文献1に開示されている筐体8を、筐体本体2および蓋部材3の両方と交わる面で切断したときの断面図である。図6は、図5に示した筐体8の分解斜視図である。なお、図6には、筐体本体2および電子部品4は示されていない。
【0010】
図5,6に示すように、特許文献1に開示されている筐体8は、筐体8の内部に位置するインナー部材9を備えている。インナー部材9は、筐体本体2の凹みの周縁に対応するように環状に形成された枠状の部材である。また、インナー部材9は、インナー部材9の形状に合わせて環状に形成された両面テープ10を用いて、蓋部材3の内側面に固着されている。したがって、インナー部材9と蓋部材3との間の隙間は、両面テープ10によって閉塞されている。
【0011】
インナー部材9の、蓋部材3に固着されている側とは反対の側には溝5と嵌合する凸条部6が形成されており、凸条部6の先端にパッキン7が一体形成されている。蓋部材3が筐体本体2に装着された際に、筐体本体2とインナー部材9と間の隙間がパッキン7により閉塞される。
【0012】
筐体8の、蓋部材3とインナー部材9との間の隙間、および筐体本体2とパッキン7との間の隙間が閉塞されることによって、液体が筐体8の外側から収納空間へ流入しなくなる。
【0013】
特許文献1で開示されている筐体8によれば、蓋部材3へ加飾を施す加飾工程と、インナー部材9へパッキン7を一体成形する成形工程と、を別々の場所で実施することができる。すなわち、加飾工程と成形工程とを同時に行っても、パッキン7に塗料が付着することがなく、パッキン7のシール性能が低下しない。
【0014】
インナー部材9を蓋部材3へ両面テープ10を用いて固着する工程は、パッキン7を蓋部材3に成形する工程に比べて短い時間で完了する。したがって、筐体8は、蓋部材3へ加飾が施された後に蓋部材3にパッキン7が成形されることによって製造された筐体1(図4)に比べて、より短い期間で製造される。
【0015】
また、蓋部材3はインナー部材9と分離して製造されている。したがって、インナー部材9にパッキン7を成形する工程においてパッキン7の成形不良が生じても、蓋部材3は不良品として扱われないため、蓋部材3の歩留まりの低下が抑制される。
【0016】
さらに、近年では、携帯型の電子機器の筐体には、収納空間を縮小させることなく筐体の外形を小型化、薄型化することが要求されている。そこで、特許文献1で開示されている筐体8では、インナー部材9は枠部材である。インナー部材9の、筐体8の内部を占める割合を小さくし、筐体8の収納空間が縮小されることを抑制するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2010−258808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1に開示されている筐体8では、インナー部材9は蓋部材3へ両面テープ10を用いて固着されている。そのため、図4の筐体1が筐体8と同じ大きさの収納空間を有する筐体である場合、そのような筐体に比べて、筐体8は少なくとも両面テープ10の厚み分だけ両面テープ10の厚み方向に厚くなっている。
【0019】
そこで、本発明の目的の一例は、製造期間を延長させることなく、収納空間の大きさを維持したまま小型化、薄型化が可能な防水機能を有する筐体、および該筐体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様は、筐体本体と、蓋部材と、枠部材と、パッキンと、を備える筐体に係る。この態様において、筐体本体は、収納空間となる凹みを有する。蓋部材は、筐体本体の凹みの周縁と着脱可能に係合され、少なくとも一部が凹みを覆う。枠部材は、凹みの周縁に対応するように環状に形成され、蓋部材の、凹みを覆う側の面に溶着されている。パッキンは、枠部材の、蓋部材に溶着された側とは反対の側に形成され、筐体本体の凹みの周縁と蓋部材との間の隙間を閉塞する。
【0021】
また、本発明の他の態様は、収納空間となる凹みを有する筐体本体と、筐体本体の凹みの周縁と着脱可能に係合され、少なくとも一部が凹みを覆う、加飾された蓋部材と、凹みの周縁に対応するように環状に形成され、蓋部材の、凹みを覆う側の面に溶着された枠部材と、枠部材の、蓋部材に溶着された側とは反対の側に一体形成された、筐体本体の凹みに周縁と蓋部材との間の隙間を閉塞するためのパッキンと、を備えた筐体の製造方法に係る。この態様において、筐体本体、加飾されていない蓋部材、パッキンが一体成形されていない枠部材を用意する工程と、少なくとも蓋部材に加飾を施す加飾工程と、枠部材にパッキンを一体成形する成形工程と、成形工程においてパッキンが一体成形された枠部材を、加飾工程において加飾された蓋部材に溶着する工程と、を含む。加飾工程と成形工程とを別々の場所で実施する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の筐体および該筐体の製造方法によれば、製造期間を延長させることなく、収納空間の大きさを維持したまま小型化、薄型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る筐体の斜視図である。
【図2】図1に示す筐体をA−A面で切断したときの断面図である。
【図3】図2に示す筐体の収納空間にバッテリ部品を収納し、該バッテリ部品が膨張した状態の断面図である
【図4】筐体本体と蓋部材との間にパッキンを備えた筐体の断面図である。
【図5】特許文献1に開示されている筐体の断面図である。
【図6】特許文献1に開示されている筐体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る筐体および筐体の製造方法について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、図4ないし図6に示されるものと同一の構成要素には、同一の符号を付して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る筐体の斜視図である。本発明に係る筐体は、電子部品を内部に備え、内部への液体の流入の防止が必要とされる携帯電子機器(例えば携帯電話機やゲーム機、タブレットPC、ノートPCなど)の筐体に適用可能である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る筐体11は、収容空間となる凹みを有する筐体本体2と、少なくとも一部が筐体本体2の凹みを覆う蓋部材3と、を備えている。蓋部材3は、筐体本体2の凹みの周縁と着脱可能に係合されている。図1では、蓋部材3が筐体本体2から分離されている状態の斜視図である。収納空間は、バッテリ部品や電子回路基板といった電子部品4を収納することができるようになっている。
【0027】
また、図示していないが、筐体本体2や蓋部材3の表面(おもて面)には、塗装や印字といった加飾が施されている。
【0028】
図2は、図1に示す筐体11を、筐体本体2および蓋部材3の両方と交わる面(図1のA−A面)で切断したときの断面図である。図2に示すように、筐体本体2の、収容空間となる凹みを形成している側壁の上端には、収容空間を囲むように溝5が形成されている。
【0029】
また、筐体11は、筐体11の内部に位置するインナー部材9を備えている。インナー部材9は、筐体本体2の凹みの周縁に対応するように環状に形成された枠部材であり、蓋部材3の、筐体本体2の凹みを覆う側の面3aに溶着されている。
【0030】
インナー部材9や蓋部材3が合成樹脂で形成されている場合には、インナー部材9を蓋部材3へ溶着させる方法として熱板溶着法や振動溶着法、超音波溶着法といった方法が挙げられる。
【0031】
熱板溶着法では、作業者または製造装置は、まず、合成樹脂からなるインナー部材9および蓋部材3の溶着させる面に、加熱した金属板を接触させてインナー部材9および蓋部材3を部分的に融解する。続いて、インナー部材9および蓋部材3の融解された領域を互いに押し当てる。その後、インナー部材9および蓋部材3を冷却固化し、インナー部材9を蓋部材3に固定する。
【0032】
振動溶着法では、作業者または製造装置は、まず、インナー部材9を蓋部材3へ押し当てる。その状態でインナー部材9および蓋部材3を往復移動させてインナー部材9および蓋部材3をこすり合わせ、摩擦熱を生じさせ、インナー部材9と蓋部材3とが接触している領域を融解させる。その後、インナー部材9および蓋部材3を冷却固化し、インナー部材9を蓋部材3に固定する。
【0033】
超音波溶着法では、作業者または製造装置は、インナー部材9を蓋部材3へ押し当て、超音波による振動をインナー部材9および蓋部材3に加える。超音波による振動により、インナー部材9および蓋部材3の互いに接触している領域が融解する。その後、合成樹脂を冷却固化し、インナー部材9を蓋部材3に固定する。
【0034】
インナー部材9と蓋部材3とが溶着されている領域は、インナー部材の形状に合わせて環状に広がっている。したがって、蓋部材3とインナー部材9との間の隙間が閉塞されており、当該隙間から液体が収納空間へ流入しないようになっている。
【0035】
インナー部材9の、蓋部材3に溶着されている側とは反対の側には溝5と嵌合する凸条部6が形成されており、凸条部6の先端にパッキン7が形成されている。蓋部材3が筐体本体2に装着された際に、溝5へパッキン7が圧入され、筐体本体2とパッキン7との間の隙間が閉塞される。
【0036】
筐体11の、蓋部材3とパッキン7との間の隙間、および筐体本体2とパッキン7との間の隙間が閉塞されているため、液体が筐体11の外側から収納空間へ流入しなくなる。
【0037】
なお、パッキン7を筐体本体2の、凹みの周縁に押圧して、筐体本体2とインナー部材9との間の隙間を閉塞してもよい。この場合、溝5や凸条部6を筐体本体2や蓋部材3に設けなくてもよく、より容易に筐体11を製造することが可能になる。
【0038】
本発明に係る筐体11によれば、パッキン7はインナー部材9の部位に成形されるため、蓋部材3へ塗装や印字といった加飾を施す加飾工程と、インナー部材9へパッキン7を一体成形する成形工程と、を別々の場所で実施することができる。すなわち、加飾工程と成形工程とを同時に行っても、パッキン7に塗料が付着することがない。したがって、パッキン7のシール性能が低下しない。
【0039】
また、蓋部材3へ加飾を施す加飾工程と、インナー部材9へパッキン7を一体成形する成形工程と、を並行して行うことができる。インナー部材9と蓋部材3とを溶着する工程は、ゴム材料からなるパッキン7を蓋部材3に一体成形する工程に比べて短い時間で完了することが一般的に知られている。したがって、本発明に係る筐体11は、蓋部材3へ加飾が施された後に蓋部材3上にパッキン7が一体成形されて製造された筐体1(図4)に比べて、より短い期間で製造される。
【0040】
蓋部材3はインナー部材9と分離して製造されている。したがって、インナー部材9にパッキン7を成形する工程においてパッキン7の成形不良が生じても、蓋部材3は不良品として扱われないため、蓋部材3の歩留まりの低下が抑制される。
【0041】
さらに、蓋部材3はインナー部材9に溶着されている。すなわち、インナー部材9を蓋部材3へ固着する際に両面テープ(厚みが0.15mm〜0.3mm程度)を用いる必要がない。したがって、筐体11の、蓋部材3の内側面3aと交わる方向の寸法を、両面テープ10を用いてインナー部材9が蓋部材3へ固着された筐体8(図5)に比べて、収納空間を縮小させることなく両面テープの厚み分だけ小さくすることができる。
【0042】
また、インナー部材9は環状に形成された枠部材であるため、インナー部材9の、筐体11の内部を占める割合が小さくなり、収納空間をより大きくすることができる。
【0043】
特に、電子機器の電源となるバッテリ部品は、充放電を繰り返すと、概ね中央が膨張する変形を生じることがある。図3は、筐体11の収納空間に収納される電子部品4がバッテリ部品であり、当該バッテリ部品が膨張した状態における、筐体11の断面図である。なお、図3では、筐体本体2は示されていない。図3に示すように、バッテリ部品12は、バッテリ部品12の、蓋部材3と対向する面12aの中央部分が凸状の弧の形に膨張する。
【0044】
本実施形態では、インナー部材9は、筐体本体2(図2)の、凹みを形成する側壁面よりも筐体11の内側に向かって延びる延長部分13を有している。
【0045】
バッテリ部品12は、バッテリ部品12の面12aの端部が、延長部分13に接触した状態で収納空間に収納されている。すなわち、バッテリ部品12と蓋部材3との間に隙間が設けられた状態でバッテリ部品12は筐体11内に収納される。したがって、バッテリ部品12の、膨張により変形する部分は当該隙間内に収まる。
【0046】
パッキン7が一体成形されている部材(本実施形態の、環状に形成されたインナー部材9に相当する部材)として、平面形状の板部材を用いた場合には、当該板部材とバッテリ部品12との間に、バッテリ部品12の膨張を考慮して隙間を設ける必要がある。具体的には、板部材とバッテリ部品12の間にスペーサといった部材が必要とされる。
【0047】
本実施形態では延長部分13をスペーサとして用いることができ、インナー部材9とバッテリ部品12との間に隙間を確保するための部材を要しない。当該部材がない分、筐体11の小型化、薄型化を図ることができ、筐体11の製造コストを削減することもできる。
【0048】
次に、本実施形態に係る筐体11の製造方法について、図2を用いて説明する。
【0049】
まず、収容空間となる凹みを有する筐体本体2と、筐体本体2の凹みを覆う蓋部材3と、インナー部材9を用意する。筐体本体2の、収容空間となる凹みを形成している側壁の上端には、収容空間を囲むように溝5がすでに形成されている。インナー部材9は、筐体本体2の凹みの周縁に対応するように環状に形成された枠部材となっている。
【0050】
次に、筐体本体2および蓋部材3の、筐体11の外観を構成する領域に加飾を施す加飾工程を実施する。加飾工程と並行して、加飾工程を実施している場所から離れた位置で、インナー部材9に、溝5へ圧入させることができるパッキン7を一体形成する形成工程を実施する。
【0051】
その後、インナー部材9の、パッキン7が一体成形されている側とは反対側を、蓋部材3の内側面3aに溶着する。このとき、インナー部材9を、筐体本体2の凹みの周縁に対応する位置に配置する。また、環状に形成されたインナー部材9の形状に合わせて環状にインナー部材9と蓋部材3とを溶着する。したがって、インナー部材9と蓋部材3との間の隙間が閉塞され、当該隙間から収納空間内に液体が流入しなくなる。
【0052】
続いて、蓋部材3を筐体本体2に装着する。このとき、パッキン7が溝5に圧入され、インナー部材9と筐体本体2との間の隙間が閉塞される。したがって、筐体11の外部から収納空間へ当該隙間を通って流体が流入しなくなり、筐体11に防水構造が付与される。
【0053】
蓋部材3を筐体本体2に装着する前に収納空間に電子部品4を配置することによって、防水機能を有する筐体11の内部に電子部品4を備えた電子機器を製造することができる。
【0054】
本発明に係る筐体11の製造方法によれば、蓋部材3へ加飾を施す加飾工程と、インナー部材9へパッキン7を一体成形する成形工程と、を別々の場所で実施することができる。したがって、加飾工程で用いられる塗料がパッキン7に付着することがなく、パッキン7のシール性能が低下しなくなる。
【0055】
また、別々に用意した蓋部材3とインナー部材9とを溶着することによって蓋部材3にパッキン7が設けられるので、蓋部材3へ加飾が施された後に蓋部材3にパッキン7が成形されて製造された筐体1(図4)に比べて、より短い期間で製造される。
【0056】
蓋部材3はインナー部材9と分離して製造されている。したがって、インナー部材9にパッキン7を一体成形する成形工程においてパッキン7の成形不良が生じても、蓋部材3は不良品として扱われないため、蓋部材3の歩留まりの低下が抑制される。
【0057】
さらに、蓋部材3とインナー部材9は溶着されている。すなわち、インナー部材9を蓋部材3へ固着する際に両面テープを用いる必要がない。したがって、筐体11の、蓋部材3の内側面3aと交わる方向の寸法を、両面テープ10を用いてインナー部材9が蓋部材3へ固着された筐体8(図5)に比べて、収納空間を縮小させることなく両面テープの厚み分だけ小さくすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 筐体
2 筐体本体
3 蓋部材
4 電子部品
7 パッキン
8 筐体
9 インナー部材
11 筐体
12 バッテリ部品
13 延長部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納空間となる凹みを有する筐体本体と、
前記筐体本体の前記凹みの周縁と着脱可能に係合された、少なくとも一部が前記凹みを覆う蓋部材と、
前記凹みの周縁に対応するように環状に形成され、前記蓋部材の、前記凹みを覆う側の面に溶着された枠部材と、
前記枠部材の、前記蓋部材に溶着された側とは反対の側に形成され、前記筐体本体の前記凹みの周縁と前記蓋部材との間の隙間を閉塞するためのパッキンと、を備えた筐体。
【請求項2】
少なくとも前記蓋部材が加飾されている、請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記パッキンが、前記枠部材と一体成形されたゴム材料からなる、請求項1または2に記載の筐体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の筐体と、
前記収納空間に収納された電子部品と、を備えた携帯電子機器。
【請求項5】
前記枠部材が、前記筐体本体の前記凹みを形成する側壁面よりも前記筐体の内側に向かって延びる延長部分を有し、
前記電子部品が、前記延長部分に接触した状態で前記収納空間に収納されている、請求項4に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記電子部品がバッテリ部品である、請求項4または5に記載の携帯電子機器。
【請求項7】
収納空間となる凹みを有する筐体本体と、
前記筐体本体の前記凹みの周縁と着脱可能に係合され、少なくとも一部が前記凹みを覆う、加飾された蓋部材と、
前記凹みの周縁に対応するように環状に形成され、前記蓋部材の、前記凹みを覆う側の面に溶着された枠部材と、
前記枠部材の、前記蓋部材に溶着された側とは反対の側に一体成形された、前記筐体本体の前記凹みに周縁と前記蓋部材との間の隙間を閉塞するためのパッキンと、を備えた筐体の製造方法であって、
前記筐体本体、加飾されていない前記蓋部材、および前記パッキンが一体成形されていない前記枠部材を用意する工程と、
少なくとも前記蓋部材に加飾を施す加飾工程と、
前記枠部材に前記パッキンを一体成形する成形工程と、
前記成形工程において前記パッキンが一体成形された前記枠部材を、前記加飾工程において加飾された前記蓋部材に溶着する工程と、を含み、
前記加飾工程と前記成形工程とを別々の場所で実施する、筐体の製造方法。
【請求項8】
前記加飾工程と前記成形工程とを同時に実施する、請求項7に記載の筐体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−8844(P2013−8844A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140601(P2011−140601)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】