説明

筐体構造、及び電子機器

【課題】横の開放端側の隙間を少なくするため、ヒンジに傾き角を設けた場合において、縦方向に開放しても上側筐体が傾くことのない状態にする。
【解決手段】第1の筐体1と第2の筐体2とを折り畳んだ状態から相対的に回転させて、第1の方向に開放させる第1の回転軸と、第1の方向と異なる第2の方向に開放させる第2の回転軸と、第1の回転軸と第2の回転軸を互いに傾き角を設けて連結して、第1の筐体1及び第2の筐体2に夫々取り付けた筐体構造であって、第1の筐体1及び第2の筐体2の開放にともなって、回転軸側の各筐体が係合して傾きを補正する傾き補正部5・6を備える。具体的には、第1の方向は縦方向で、第2の方向は横方向である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾き角を設けた2軸ヒンジを備える筐体構造と、その筐体構造を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話において、表示部を有する上側筐体と操作部を有する下側筐体とを、縦方向の折畳み方向あるいは、この折り畳み方向と直交する横方向に、相対的に回転自在に接続したヒンジを備えたものが特許文献1に開示されている。
この特許文献1のように、上側筐体と下側筐体とを、縦方向あるいは横方向に回転自在にしたものでは、上側筐体と下側筐体とを閉じている状態において、縦と横の開放端側は、上側筐体と下側筐体との隙間に何らかのものが入ってむやみに開かないようにするため、その隙間を少なくなるようにヒンジに傾き角を夫々設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−113686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように、横の開放端側の隙間を少なくするため、ヒンジに傾き角を設けている場合、縦方向に開放すると上側筐体が傾いた状態となってしまう。
【0005】
本発明の課題は、横の開放端側の隙間を少なくするため、ヒンジに傾き角を設けた場合において、縦方向に開放しても上側筐体が傾くことのない状態にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、第1の筐体と第2の筐体とを折り畳んだ状態から相対的に回転させて、第1の方向に開放させる第1の回転軸と、前記第1の方向と異なる第2の方向に開放させる第2の回転軸と、前記第1の回転軸と第2の回転軸を互いに傾き角を設けて連結して、前記第1の筐体及び第2の筐体に夫々取り付けた筐体構造であって、前記第1の筐体及び第2の筐体の開放にともなって、前記回転軸側の各筐体が係合して傾きを補正する傾き補正部を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の筐体構造であって、前記第1の方向は縦方向で、前記第2の方向は横方向であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の筐体構造であって、前記傾き補正部は、前記第1の筐体の端部に設けた突起であり、前記第1の筐体及び第2の筐体の開放にともなって、第2の筐体の端部が前記突起に係合して傾きを補正することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の筐体構造であって、前記突起は、前記第1の筐体の端部の両側位置に夫々設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の筐体構造であって、前記突起は、前記第1の筐体の端部の両側位置に跨って設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の筐体構造であって、前記第1の筐体及び第2の筐体の開放位置を規制する規制部を設け、前記傾き補正部は前記規制部の手前側位置に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の筐体構造を備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、横の開放端側の隙間を少なくした場合にあっても、縦方向に開放しても上側筐体が傾くことのない状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、携帯電話を示した斜視図である。
【図2】図1の携帯電話の側面図(a)と正面図(b)である。
【図3】図1の携帯電話の傾き補正部を備える端部側を示した斜視図である。
【図4】図3の傾き補正部を備える端部側の正面図で、係合前の図(a)と片方の係合時の図(b)と両方の係合状態の図(c)である。
【図5】図4の傾き補正部の側面図で、係合前の図(a)と係合途中の図(b)と係合状態の図(c)である。
【図6】図4の傾き補正部の模式図で、同じく係合前の図(a)と片方の係合時の図(b)と両方の係合状態の図(c)である。
【図7】変形例を示した要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び図2は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成として携帯電話を示したもので、1は第1の筐体、2は第2の筐体、3は2軸ヒンジ部、4は規制部、5・6は傾き補正部である。
【0016】
図示のように、第1の筐体1と第2の筐体2が片側の2軸ヒンジ部3を介して縦方向と横方向に夫々折り畳み可能(開閉可能)に結合されている。すなわち、2軸ヒンジ部3は、図示しない操作部を有する第1の筐体1の一側に設ける第1のヒンジカバー31で覆われる内部に、軸線を第1の筐体1の短辺部に沿って横方向に向けた第1の回転軸が設けられている。また、図示しない表示部を有する第2の筐体2の一側に設ける第2のヒンジカバー32で覆われる内部に、軸線を第2の筐体2の長辺部に沿って縦方向に向けた第2の回転軸が設けられている。
【0017】
従って、第1の筐体1に対し第2の筐体2は、2軸ヒンジ部3の第1の回転軸を介して、図2(a)に示すように、第1のヒンジカバー31及び第2のヒンジカバー32と一体に縦方向に回転自在となっている。また、2軸ヒンジ部3の第2の回転軸を介して、図2(b)に示すように、第1のヒンジカバー31に対し第2のヒンジカバー32と一体に横方向に回転自在となっている。
【0018】
以上、第1の回転軸と第2の回転軸は互いに傾き角を設けて連結されて、第1の筐体1及び第2の筐体2に夫々取り付けられている。これにより、第1の筐体1上に第2の筐体2を重ねた折り畳み状態において、第1の筐体1に対し第1の回転軸を介して開閉動作する第2の筐体2の先端側短辺部が、図1及び図2(a)の矢印Aで示す下向きの傾き角となって、第1の筐体1に対し第2の回転軸を介して開閉動作する第2の筐体2の先端側長辺部が、図1及び図2(b)の矢印Bで示す下向きの傾き角となるよう設定されている。
【0019】
このため、図2(b)に示すように、第1の筐体1に対し第2の回転軸を介して第2の筐体2を横方向に開放動作した場合に問題は生じないが、図2(a)に示すように、第1の筐体1に対し第1の回転軸を介して第2の筐体2を縦方向に開放動作した場合は、前記傾き角により、縦方向に開放状態の第2の筐体2の先端側長辺部が上向きに傾く問題がある。
【0020】
そこで、第1の筐体1の第1のヒンジカバー31側の短辺部端面には、図3に示すように、第2の筐体2が係合して開放位置を規制する規制部4と、第2の筐体2が係合して傾きを補正する左右一対の傾き補正部5・6が設けられている。すなわち、規制部4は横方向に延びる突条により形成されていて、この規制部4の上方の手前側位置に左右一対の傾き補正部5・6が形成されている。この左右一対の傾き補正部5・6は突起により形成されている。
【0021】
図4は傾き補正部5・6を備える端部側を示したもので、第1の筐体1に対し第1の回転軸を介して第2の筐体2を縦方向に開放動作した場合、先ず、図4(a)に示すように、左右一対の傾き補正部5・6に第2の筐体2の短辺部が夫々突き当たる。
続いて、前記傾き角により、図4(b)に示すように、第1のヒンジカバー31側の突起による傾き補正部5に第2の筐体2の短辺部が係合する。
そして、第2の筐体2の先端側長辺部を下向きに押すことで、図4(c)に示すように、残る突起による傾き補正部6にも第2の筐体2の短辺部が係合状態となるとともに、第2の筐体2の短辺部が横方向に延びる突条による規制部4に突き当たった状態となる。
【0022】
図5は傾き補正部5・6の側面から示したもので、図5(a)は第2の筐体2の短辺部の係合前の状態を示し、図5(b)は係合途中の状態を示し、図5(c)は係合状態を示している。
【0023】
図6は図4の傾き補正部5・6の模式図で、図6(a)は第2の筐体2の短辺部の係合前の状態を示し、図6(b)は片方の傾き補正部5の係合時を示し、図6(c)は両方の傾き補正部5・6の係合状態を示している。
【0024】
以上、実施形態の携帯電話によれば、第1の筐体1及び第2の筐体2の開放にともなって、第1の回転軸及び第2の回転軸側の各筐体1・2が係合して傾きを補正する左右一対の突起による傾き補正部5・6を備えるため、横の開放端側の隙間を少なくした場合にあっても、縦方向に開放しても上側筐体2が傾くことのない状態にすることができる。
【0025】
(変形例1)
図6(c)は仮想線で変形例を示したもので、仮想線で示したように、前記左右一対の突起による傾き補正部5・6に跨る横方向に延びる一本の突起による傾き補正部7を形成する。
【0026】
このような横方向に延びる一本の突起による傾き補正部7としても、前述した実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0027】
(変形例2)
図7は変形例を示したもので、図示のように、横方向に延びる突条による規制部4と同じく横方向に延びる一本の突起による傾き補正部7とで第2の筐体2の短辺部を挟むように構成する。
【0028】
このように、横方向に延びる突条による規制部4と同じく横方向に延びる一本の突起による傾き補正部7とで第2の筐体2の短辺部を挟んで、第2の筐体2の傾きを補正するようにしても良い。
【0029】
(他の変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書などの縦横開きするヒンジ機構を備えた携帯電子機器すべてに用いることができる。
また、回転軸の構成等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 第1の筐体
2 第2の筐体
3 2軸ヒンジ部
31 第1のヒンジカバー
32 第2のヒンジカバー
4 規制部
5 傾き補正部
6 傾き補正部
7 傾き補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と第2の筐体とを折り畳んだ状態から相対的に回転させて、第1の方向に開放させる第1の回転軸と、前記第1の方向と異なる第2の方向に開放させる第2の回転軸と、前記第1の回転軸と第2の回転軸を互いに傾き角を設けて連結して、前記第1の筐体及び第2の筐体に夫々取り付けた筐体構造であって、
前記第1の筐体及び第2の筐体の開放にともなって、前記回転軸側の各筐体が係合して傾きを補正する傾き補正部を備えたことを特徴とする筐体構造。
【請求項2】
前記第1の方向は縦方向で、前記第2の方向は横方向であることを特徴とする請求項1に記載の筐体構造。
【請求項3】
前記傾き補正部は、前記第1の筐体の端部に設けた突起であり、
前記第1の筐体及び第2の筐体の開放にともなって、第2の筐体の端部が前記突起に係合して傾きを補正することを特徴とする請求項1または2に記載の筐体構造。
【請求項4】
前記突起は、前記第1の筐体の端部の両側位置に夫々設けたことを特徴とする請求項3に記載の筐体構造。
【請求項5】
前記突起は、前記第1の筐体の端部の両側位置に跨って設けたことを特徴とする請求項3に記載の筐体構造。
【請求項6】
前記第1の筐体及び第2の筐体の開放位置を規制する規制部を設け、
前記傾き補正部は前記規制部の手前側位置に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の筐体構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の筐体構造を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−166367(P2010−166367A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7511(P2009−7511)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】