説明

管アクセスデバイスの抗菌性材料および液

医療用デバイスは、抗菌性層を含む。医療用デバイスの本体上にあるいは中に抗菌剤を堆積させる方法は、表面を貫く複数の孔を有する耐熱管を管アクセスデバイスの中へ差し込むこと、および、デバイスにおよびデバイスの内面に抗菌剤をコートしたりあるいは送ったりしたりすることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管アクセスデバイスを備えた注入療法に関する。
【背景技術】
【0002】
注入療法は、もっとも一般的なヘルスケア手段の一つである。入院している、在宅治療の、および他の患者は、流体、医薬品、および血液製剤を、脈管系へ挿入された管アクセスデバイスを介して受ける。注入療法は、感染症を治療したり、麻酔や無痛覚を与えたり、栄養補給を与えたり、癌成長を治療したり、血圧や心拍リズムを維持したり、あるいは多くの他の臨床上重要な使用に用いたりするように、用いられ得る。
【0003】
注入療法は、管アクセスデバイスによって円滑にされる。管アクセスデバイスは、患者の末梢のあるいは主要な血管系にアクセスすることができる。管アクセスデバイスは、短い期間(数日)、中程度の期間(数週)、あるいは長い期間(数月から数年)、内在され得る。管アクセスデバイスは、継続的な注入療法あるいは間欠治療法のために用いられ得る。
【0004】
一般的な管アクセスデバイスは、患者の血管の中へ入れられるプラスチックカテーテルである。カテーテルの長さは、末梢アクセス用の2〜3センチメーターから、中枢アクセス用の多センチメーターまで変化し得る。カテーテルは、皮膚を通して挿入されるか、あるいは、患者の皮膚の下に外科的に埋没されることができる。カテーテルあるいはそれに取り付けられる他の管アクセスデバイスは、同時に多くの流体を注入するために、単一の孔(lumen)あるいは複数の孔を有し得る。
【0005】
管アクセスデバイスの基端部は、一般に、他の医療用デバイスが取り付けられることができるルアーアダプターを含む。例えば、投与セットは、一端部で、管アクセスデバイスに取り付けられ、他端部で、点滴(IV)バッグに取り付けられ得る。投与セットは、流体や薬の継続的な注入用の流体導管である。一般的に、IVアクセスデバイスは、別の管アクセスデバイスに取り付けられ得る管アクセスデバイスであり、管アクセスデバイスを閉じるかあるいはシールし、そして、流体および薬の間欠的な注入あるいは注射を可能にする。IVアクセスデバイスは、ハウジング、および、システムを閉じるための隔壁を含み得る。隔壁は、医療用デバイスの、とがっていないカニューレ、あるいは、雄ルアーで開かれ得る。
【0006】
注入療法に関係がある併発症は、かなりの疾病率および互角の死亡率をもたらし得る。1つの重要な併発症は、カテーテル関連血流感染(CRBSI)である。米国の病院における、BSI関連の中心静脈カテーテル(CVC)の250,000〜400,000のケースの見積もりは、年1回存在する。寄与死亡率は、各感染に対して推定12%〜25%であり、症状の出現あたり、25,000ドル〜56,000ドルのヘルスケアーシステムのコストである。
【0007】
CRBSIをもたらしている管アクセスデバイス感染は、定期的にそのデバイスを浄化しなかったことや、殺菌しなかった挿入技術、あるいは、カテーテル挿入後に流体流路のいずれか端部を通して流体流路に入る病原体によって、引き起こされ得る。研究は、CRBSIの危険性がカテーテル内在期間と共に増加することを示している。管アクセスデバイスが汚染されたとき、病原体は、管アクセスデバイスに付着し、コロニーを形成し、そして、バイオフィルムを形成する。バイオフィルムは、大部分の殺生剤に耐性があり、患者の血流に入る病原体の補給源を提供し、BSIをもたらす。したがって、必要とされるものは、CRBSIの危険性および発生を低減するための、システム、デバイス、および方法である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、現在のところ利用できる管アクセスシステム、デバイス、および方法によってまだ十分に解決されていない、当該技術分野における、問題および必要性に対して、作り上げられた。したがって、これらのシステム、デバイスおよび方法は、CRBSIの危険性および発生を低減するように、開発されている。
【0009】
医療用デバイスは、管アクセスデバイスであって、表面と、抗菌剤を含むことができるデバイスの層とを含む管アクセスデバイスであり得る。デバイスの層は、管アクセスデバイスの本体の材料とまとめられ得、あるいは、その材料と結合され得る。管アクセスデバイスの本体は、本体内に収容された隔壁を含み得る。隔壁は、表面を有するスリットを含み得る。
【0010】
層は、スリットの表面を覆う、抗菌剤と潤滑オイルとの混合物を含む溶液を含み得る。デバイスの層と接触状態にある第2層は、低摩擦係数を有する潤滑オイルを含むことができる。層は、スリットの表面を覆う、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含み得る。デバイスの層と接触状態にある第2層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含み得る。層は、放射性同位元素を含み得る。
【0011】
表面は、表面を覆う、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含む、隔壁の頂面であり得る。デバイスの層と接触状態にある第2層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含み得る。層は、フッ素化シリコーンを含み得る。第2層は、デバイスの層と接触状態にあり得、第1洗浄用化合物に溶解でき、第2洗浄用化合物に抵抗力があり得るのに対して、層は、第2洗浄用化合物に溶解でき、そして、第1洗浄用化合物に抵抗力がある。
【0012】
医療用デバイスの表面上にあるいは中に、抗菌剤を堆積させる方法は、基端部および末端部を有すると共に表面を貫く複数の孔を含む耐熱管を準備することと、管アクセスデバイスであってその長さに沿う2つの対向する内面を形成するスリットを備えた隔壁を収容する管アクセスデバイスを準備することと、スリットの2つの対向する内面に末端部の孔が面するようにスリットに管の末端部を差し込むことと、基端部の中へ抗菌剤を有するコーティング溶液を入れることと、そして、末端部の孔を通して2つの対向する内面に溶液を送ることとを含むことができる。
【0013】
耐熱管は、金属、ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、および/あるいは、低摩擦係数を有する材料を含むことができる。溶液は、約150℃で、約15分間、2つの対向する内面に保持される溶剤であり得る。
【0014】
患者の脈管系にアクセスする手段は、患者の脈管系にアクセスする手段内に存在し得る病原体を抑制する手段を備えることができる。病原体を抑制する手段は、抗菌剤を含むスリット隔壁を含むことができる。抗菌剤は、隔壁の表面にコートされることができ、および/あるいは、隔壁の材料と複合されたり、混ぜられたり、あるいは一体にされたりすることができる。
【0015】
本発明のこれらのおよび他の特徴および利点は、本発明の特定の実施形態に組み入れられ、以下の説明および添付された特許請求の範囲からより十分に明らかになるだろう、あるいは、以下に記載されているように本発明の実践によって理解されることができる。本発明は、全ての有利な特徴および説明された全ての利点がここに本発明の全ての実施形態に組み込まれることを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】患者の脈管系につなげられた管外システムの透視図である。
【図2】放射性同位元素を含むシリコーン隔壁の断面図である。
【図3】交互に重なる抗菌性コーティングを含む隔壁の断面図である。
【図4】図3の交互に重なるコーティングおよび隔壁の一部の拡大断面図である。
【図5】図4の交互に重なるコーティングの一部の拡大断面図である。
【図6】隔壁の頂面に複数の抗菌性コーティングを有する管アクセスデバイスの断面図である。
【図7】隔壁の内面に複数の抗菌性コーティングを有する管アクセスデバイスの断面図である。
【図8】管の閉端部に複数の孔を有する管の一部の側面図である。
【図9】管アクセスデバイスの表面を抗菌性コーティングでコーティングするためのステップを説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の上記および他の特徴および利点が得られる様式が容易に理解されるように、簡単に上で説明された本発明のより詳細な説明が、添付図面に示された具体的な実施形態を参照することにより、提供されるだろう。図面は本発明の代表的な実施形態のみを表現し、それ故、本発明の範囲を限定するようにみなされるべきではない。
【0018】
本発明の現在、好ましい実施形態が、図を参照して最も理解されるだろう。同様の参照符号は、同一のあるいは機能上同様の要素を指し示す。本発明の構成要素は、ここで概して説明されかつ示されるように、とても様々な異なる構成に配置され、かつ、設計され得ることが容易に理解されるだろう。したがって、以下のより詳細な説明は、図に表されているが、請求される本発明の範囲を限定することを目的としておらず、本発明の現在の好ましい実施形態の単に代表に過ぎない。
【0019】
さて、図1を参照して、(管外デバイス、静脈アクセスデバイス、アクセスポート、および/または、管外システムに取り付けられたりあるいはと共に働いたりする任意のデバイスとも称される)管アクセスデバイス10は、患者18の皮膚14を横切って血管16の中へ、カテーテル12を介して、物質を導入するために用いられる。管アクセスデバイス10は、孔(lumen)と、該孔内に置かれた隔壁22とを備えた本体20を含む。隔壁22は、スリット24を有し、それを通して、注射器のような別個の管外デバイス26は管アクセスデバイス10の中へ物質を導入することができる。
【0020】
デバイス10は、また、デバイス10の表面上のあるいはその表面の中の少なくとも1つの抗菌剤を含む(以下で図を参照して説明される)層、管外システム28および/または隔壁22を含む。その層は、管アクセスデバイス10の本体、隔壁22および/またはシステム28の材料の中へ直接的にまとめられたりあるいは統合されたりすることができる。層の抗菌剤は、管アクセスデバイス10、あるいは、管外システム28に接続された任意の他のデバイスが取り付けられた患者において、血流感染の発生率を低減するように少なくとも1つの病原体を抑制する。
【0021】
この明細書を通じて説明されるように、病原体は、患者の脈管系の中へ受け入れられた場合、病気を引き起こしたり、そうでなければ患者に悪影響を与えたり、患者に悪影響を与える可能性を有したりするあらゆるエージェントを含み、病原体、細菌、寄生虫、微生物、バイオフィルム、真菌、ウイルス、病原体を送り込むたんぱく質、原生動物、および/または他の有害な微生物および/またはエージェントおよびその生成物を含む。層は、病原体に関して、次の作用のいずれか1つあるいは組み合わせによって、発病させる活動を抑制する。次の作用とは、排除すること、除去すること、成長を抑制すること、ある位置に引き付けること、ある位置から追い払うこと、退化させること、失敗させること、消滅させること、成長や増殖を妨げること、発散すること、および/または任意の他の類似するプロセスあるいは活動である。
【0022】
病原体は、かなりの数の方法のうちのいずれかで、デバイス10やシステム28に入ることができる。例えば、病原体は、デバイス10やシステム28内に、最初の使用の前に、存在し得る。病原体は、また、別個のデバイス26の先端30のような構成物が隔壁22のスリット24を通してデバイス10へ差し込まれるとき、デバイスの外面から、別個のデバイス26の外面から、および/または、周囲の環境からデバイス10の中へ導入され得る。病原体は、別個のデバイス26からシステムへ注入される流体内に導入され得る。最後に、病原体は、採血の間、あるいは、デバイス10が使用されているときの血液逆流の期間の間、カテーテル12の端部32を通して入ることによって、血管16からシステム28の中へ導入され得る。したがって、層は、要望どおり、発病させる活動を抑制するために、システム28の入口、接合部、および/または流路の任意の表面にあるいは表面上に位置付けられるとよい。
【0023】
さて、図2を参照して、管アクセスデバイス10は、管アクセスデバイス10の本体20の表面内にあるいはその表面に対して収容された隔壁22を含む。隔壁22は、管アクセスデバイス10の本体20の表面上の層の一例である。隔壁22は、隔壁22の材料内に混ぜられた放射性同位元素を含む。隔壁22の材料は、シリコーンあるいは類似特性を有する材料で形成され得る。シリコーンの放射性同位元素との混合物は、安定性が達成されるまで、α、β、あるいはγ線を放出して、崩壊する、複数の不安定原子核を有する材料を提供するだろう。崩壊の間、その材料は、病原体に危険な放射線を放出する。したがって、図2を参照して説明された層に近接する、あるいは、その層と接触するあらゆる病原体は抑制されるだろう。図2の層は、病原体を抑制するために、この明細書を通して説明される材料あるいは溶液のいずれかを含むとよい。
【0024】
種々の抗菌性潤滑オイルあるいは他の潤滑油が、隔壁22近くに抗菌性環境を提供するために、図2を参照して同様に説明されるように、隔壁22のシリコーンと混ぜられることができる。そのような環境は、オイルあるいは潤滑油が隔壁22の材料から必然的にしみ出るので、病原体を抑制するだろう。例えば、フッ素化シリコーンは、例えば、トリクロサン、クロルヘキシジン、二塩酸塩および/またはクロルヘキシジン基である、抗菌剤を含むことができる。フッ化シリコーンのトリクロサンとの組み合わせは、いくつかの再結晶を生じさせて、きれいな溶液を形成することができる。しかし、フッ素化シリコーンと混ぜられたクロルヘキシジン、二塩酸塩およびクロルヘキシジン基は、隔壁22の使用の間、シリコーン材料からの潤滑油の安定的な放出を提供するようにみえる。
【0025】
すぐ上で説明された、それら3つの抗菌性の潤滑油の各々は、ホイットマン2番フィルターペーパー(Whitman No.2 filter paper)パンチ上に位置付けられ、ゾーンを決定するべく送られ、そのゾーンにおいて、病原体は各液体の2滴をじかに囲むエリアにおいて抑制されるかあるいはそうでなければ阻害された。種々の病原体あるいは細菌に対するこれらの結果は、以下の表1にまとめられている。この結果は、シリコーンの抗菌性潤滑油との組み合わせが、管アクセスデバイス10内に、病原体を抑制することができる環境をもたらしそうであるということを示唆する。
【0026】
【表1】

【0027】
隔壁の表面の、あるいは、隔壁の材料の中へ組み込まれた、シリコーン潤滑油は、細菌のような病原体がデバイス10の表面に付着することを防止するために、エチレン・オキサイドのような多くの防汚材料のいずれかを含むことができる。そのような防汚材料は、デバイス10のあらゆる表面に付けられることができる。病原体はそのような表面に付着することができないだろうから、病原体は、後で患者に病気をもたらし得る有害なバイオフィルムを形成することができないだろう。
【0028】
さて、図3を参照すると、管アクセスデバイス10は、隔壁22によって形成された少なくとも1つの層を含み、隔壁22は、隔壁22の表面に様々な物質の、交互に重なるコーティング34を有する。交互に重なるコーティング34の各々は、デバイス10の使用の間、隔壁22のスリット24を通して流されるように、種々の化合物に対して溶解できる。さらに、交互に重なるコーティング34の各々は、この明細書において説明された、抗菌性材料および/あるいは溶液のうちのいずれかを含むことができ、次の表2にリストアップされた抗菌剤を含む。表2において説明された薬剤は、発病させる環境あるいはカクテルを提供するように、個別に、あるいは、表2の任意の他の薬剤との任意の組み合わせにおいて、本発明の様々な実施形態と共に用いられることができる。様々な薬剤は、病原体がその混合物との接触状態になり、次いでカクテルの残った薬剤を受けて害されたりあるいは消滅させられたりするように病原体を誘うためにカクテルに適用され得る。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
さて、図4を参照すると、図3の交互に重なるコーティング34の一部の拡大断面図が示されている。交互に重なるコーティング34は、隔壁22の表面に存在する層36を含む。層36は、抗菌剤を含み、洗浄用化合物Aに溶解でき、そして、化合物Bに対して抵抗力を有する。層36と接触状態の第2層38は、化合物Aに対して抵抗力を有し、洗浄用化合物Bに溶解できる。付加的な層36は第2層38上に存在し、付加的な第2層38は付加的な層36上に存在する。
【0035】
あらゆる化合物が、隔壁22の表面から層および付加的な層36、38を流したり、そうでなければ、溶かしたりするように用いられ得る。例えば、塩水(例えば化合物A)は、デバイス10をきれいにするために、隔壁22のスリット24を通してしばしば注ぎ込まれる。そして、デバイス10がきれいにされた後、薬(例えば化合物B)が、患者の治療をするために、隔壁22のスリット24を通して、注ぎ込まれ得る。
【0036】
さて、図5を参照すると、図4の交互に重なるコーティング34が示されていて、交互に重なるコーティング34を溶かすための方法の一例に関連して説明されるだろう。使用に際して、交互に重なるコーティング34の種々の層は、隔壁22のスリット24を通して種々の化合物を流した結果として、取り除かれるだろう。例えば、オペレーターは、図5の層1として特定される、付加的な第2層38越しに薬剤Bを注ぎ込んだりあるいは流したりして、付加的な第2層38に、その薬剤が付加的な第2層38と接触状態になるので、溶解することをもたらすことができる。しかし、図5において層2として特定される、隣り合った付加的な層36は洗浄用化合物Bすなわち薬剤に抵抗力があるので、その付加的な層36は溶けないだろう。層1は、抗菌剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。しかし、層2は、塩水がデバイスへ流されて層2に溶けることをもたらして、デバイス10がきれいにされるとき、解放される抗菌剤を好ましくは含むだろう。層2は塩水に溶解できるので、層2は溶解するだろう。しかし、また図5において層3として特定される、第2層38は、塩水に溶解できないので、層3は、オペレーターがデバイス10を塩水で洗い終えるまで、塩水に影響されず、とどまるだろう。層2は抗菌剤を含むので、その抗菌剤は、デバイスの洗浄の間、塩水と混ざり、洗浄の間デバイス10内の抗菌剤と接触するようになるあらゆる病原体を抑制するだろう。
【0037】
オペレーターは、層3が溶解できる薬剤を注ぎ込むことによって、デバイス10を繰り返して使用することができる。そして、次に、オペレーターは、隔壁22に直接的に隣接すると共に図5において層4として特定される層36が溶解できる、塩水を注ぎ込むことができる。上で図5を参照して説明された方法あるいはそのあらゆる変形は、オペレーターの要求どおりに、様々な洗浄用化合物に対して、溶解度を変える、および/あるいは、抵抗力がある、2つ以上の層の、同数の交互に重なるコーティングを備えて用いられることができる。
【0038】
本発明の交互に重なるコーティング34は、上で説明されたように、様々な実施形態に適合され得る。以下の実施形態は、上の図3〜図5を参照して説明された実施形態の様々な代替を明らかにする。
【0039】
さて、図6を参照して、管アクセスデバイス10は、管アクセスデバイス10の隔壁22の頂面に様々な抗菌性コーティングを含む。抗菌性コーティングは、頂部層40と、中間部層42と、そして底部層44とを含む。任意の数の層が、隔壁22の頂面に置かれてもよい。隔壁22は、シリコーンのようなエラストマー系材料で形成される。
【0040】
抗菌性コーティングは、様々な材料および溶液で形成され得、この明細書を通して述べられた抗菌剤のうちのいずれかを含み得る。例えば、抗菌性コーティングの層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングであり、好ましくは、溶解力のある、あるいは、溶解力のない、低係数のシリコーンコーティングである。そのコーティングは、また、低係数のシリコーンコーティングの、重量で5パーセント以上の抗菌剤とのブレンドで形成されてもよい。コーティングは、0.2マイクロメーター以上の厚さであるべきであり、好ましくは、0.5マイクロメーター以上の厚さであり、最も好ましくは0.5〜5.0マイクロメーターの間の厚さであるだろう。
【0041】
多くの様々なコーティング構成のうちの1つが図6に示されていて、多くの様々なコーティング構成が用いられることができる。例えば、抗菌性コーティングは、低係数のシリコーンコーティングの、重量で5パーセント以上である抗菌剤とのブレンドからなる単一層あるいは複数の層を含むことができる。別の例として、底部層44は、低摩擦係数のポリマーコーティングであり得、頂部層40は、低係数のシリコーンの抗菌剤とのブレンドであり得る。さらに別の例として、底部層44は、低係数のシリコーンコーティングの抗菌剤とのブレンドであり得、頂部層40は、低係数のポリマーコーティングであり得る。さらに別の例として、頂部層40および底部層44は、低係数の高分子コーティングで形成され、中間部層42は、抗菌剤を備えた低係数のシリコーンコーティングで形成される。
【0042】
ここで述べられるあらゆるコーティングあるいは抗菌性層は、様々な方法を用いて隔壁22に適合されることができる。例えば、コーティングは、吹き付け塗装され、はけ塗りされ、ロール塗りされ、あるいは、あらゆる従来のコーティング方法で塗られることができる。コーティングが隔壁22に適合され、あるいは、いずれかの他の層に適合された後、コーティングは、約150℃で15分間保持されるとよい。そして、任意の数の付加的なコーティングあるいは抗菌性層は、硬化されたコーティングに適合されてもよい。
【0043】
さて、図7を参照して、管アクセスデバイス10は、隔壁22のスリット24の表面に位置付けられた複数の抗菌性コーティングあるいは層を含む。抗菌性層は、隔壁22の表面に位置させられた、内側層46と、中間層48と、そして、外側層50とを含む。隔壁22は、シリコーンのようなエラストマーで好ましくは形成される。
【0044】
コーティング46、48、50は、様々な材料および溶液で形成されることができる。例えば、コーティングのいずれもが、低係数のポリマーコーティングで、好ましくは、溶解力のあるあるいは溶解力のない低係数のシリコーンコーティングで作成されることができる。コーティングのうちのいずれもが、もう1つの選択肢として、あるいは付加的に、低係数のシリコーンコーティングの、重量で5パーセント以上の1つの抗菌剤あるいは複数の抗菌剤とのブレンドであり得る。様々な抗菌性層は、低係数のシリコーンコーティングの、抗菌剤とのブレンドである、単一あるいは複数の層を含むことができる。抗菌性層は、低係数のポリマーコーティングである内側層46と、低係数のシリコーンコーティングの、抗菌剤とのブレンドである外側層50とをまた含むことができる。抗菌性層は、また、低係数のシリコーンの抗菌剤とのブレンドである内側層46と、低係数のポリマーコーティングである外側層50とを含むことができる。抗菌性層は、また、低係数のポリマーコーティングである内側層46および外側層50と、低係数のシリコーンコーティングの、抗菌剤とのブレンドである中間層48とを含むことができる。
【0045】
様々な抗菌性コーティングあるいは層は、0.2マイクロメーター以上の厚さであるべきであり、好ましくは、0.5マイクロメーター以上の厚さであり、さらに好ましくは0.5〜5.0マイクロメーターの間の厚さである。コーティングの各々は、約150℃で15分間保持されるとよい。そして、コーティングの各々は、この明細書を通して述べられる抗菌剤を含む、単一のあるいは複数の抗菌剤の任意の数あるいは組み合わせを含むことができる。
【0046】
さて、図8を参照すると、管52の端部に複数の孔54を有する管52が、図7のデバイス10のスリット24の内面に抗菌性コーティングを適合するために用いられることができる。管52は、好ましくは、管の閉端部に孔54を有するように、孔を開けられた、そうでなければ、形成された耐熱管である。孔54の位置は、隔壁22のスリット24の内面に一致するべきである。そして、管52は、スリット24に差し込まれ得、流体抗菌性コーティングは、管52の中へ注入され、孔54を通して送られて、スリット24の表面に適合され得る。
【0047】
さて、図9を参照すると、スリット24の内面に少なくとも1つの抗菌性コーティングを適用する方法が説明されている。耐熱管52は、ステップ56で、閉じられた管の端部に孔54をドリルで開けられる。そして、管52は、ステップ58で、隔壁22のスリット24へ差し込まれる。耐熱管は、金属、ポリマー、あるいは類似する材料で作られ得、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンおよび/または他の非シリコーン系の低係数の材料から製造される。そして、管52は、ステップ60で、管52の孔54がスリット24の表面と接触状態にあるように、スリット24に位置合わせされる。(溶解力のあるあるいは溶解力のない)コーティング溶液は、ステップ62で、管52の開口頂端部から、管52の孔54を通して、スリット24の内面に対して、導入される。そして、コーティング溶液は、ステップ64で、150℃で15分間保持される。コーティング溶液を保持した後、管52は、ステップ66で、スリット24から引き抜かれる。上記方法は、デバイス10のスリット24に様々なおよび複数の抗菌性コーティングを適用するのに、必要に応じて、繰り返され、あるいは修正され得る。
【0048】
図2〜図9を参照して説明された実施形態は、隔壁22の表面に抗菌性潤滑オイルのコーティングを提供するように、下記のように変更されてもよい。この実施形態において、コーティングは、ポリジメチシロキサンあるいはポリフェニルシロキサンなどのシリコーンオイルか、あるいは、5パーセントから100パーセントのフッ素含有率を有するフッ素化シリコーンオイル・コポリマーであり得る、低係数の潤滑オイルである。潤滑オイルの粘度は、300cps以上、好ましくは900cps以上であるべきである。潤滑オイルコーティングは、潤滑オイルと少なくとも1つの抗菌剤とのブレンドである。潤滑オイルコーティングは、0.54平方センチメートル(0.084平方インチ)あたり0.10ミリグラム以上であるべきであり、好ましくは0.54平方センチメートル(0.084平方インチ)あたり0.40ミリグラム以上であり、最も好ましくは0.54平方センチメートル(0.084平方インチ)あたり0.60ミリグラム以上である。
【0049】
潤滑オイルコーティングは、上で述べられたように、本発明の1つ以上の層に適用され得る。例えば、潤滑オイルコーティングは、潤滑オイルの、少なくとも1つの抗菌剤とのブレンドである単一あるいは複数の層であり得る。層は、また、低係数の潤滑オイルである少なくとも1つの内側層46と、潤滑オイルと少なくとも1つの抗菌剤とのブレンドである少なくとも1つの外側層50とを含むように配されてもよい。一方、層は、潤滑オイルと少なくとも1つの抗菌剤とのブレンドである少なくとも1つの内側層46と、低係数の潤滑オイルである少なくとも1つの外側層50とを含むように配されてもよい。もう1つの選択肢として、層は、低係数の潤滑オイルである少なくとも1つの内側層46および外側層50と、潤滑オイルと少なくとも1つの抗菌剤とのブレンドである少なくとも1つの中間層48とを含むように、配されてもよい。
【0050】
すぐ上で述べられた抗菌性コーティングを適用する方法は、図9の方法に類似し得る。しかし、ステップ62で、潤滑オイルコーティング溶液が管を通して導入された後、管52は、スリット24の中のコーティングの均一な分布を確実にするように、スリット24の内部で回転される。このようにして、スリット24の2つの対向する面は、ここで説明される実施形態と適合して、抗菌性潤滑オイルあるいは他の抗菌性コーティング溶液で表面を覆われる。
【0051】
本発明は、ここで概して説明され、以下に請求されるように、他の特有の形態において、その構造、方法、あるいは他の本質的な特徴から逸脱することなしに、具体化され得る。説明された実施形態は、制限的ではなく、実例としてのみ、全ての点で考慮に入れられるべきである。それ故、本発明の範囲は、前述の説明というようはむしろ添付された特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の趣旨および等価の範囲内に入る全ての変更は、それらの範囲内に含まれるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体、および、本体内に収容された隔壁であって、スリットを含み、さらに表面を有する、隔壁と、
前記表面に配置された、抗菌剤を含む、層と
を含むことを特徴とする医療用デバイス。
【請求項2】
前記層は、前記抗菌剤と潤滑オイルとの混合物を含む溶液を含み、該溶液は前記スリットの前記表面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記デバイスの前記層と接触状態にある第2層をさらに備え、該第2層は、低摩擦係数を有する潤滑オイルを含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記表面は前記スリットに存在し、前記層は低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含み、該コーティングは前記スリットの前記表面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記デバイスの前記層と接触状態にある第2層をさらに備え、該第2層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記表面は、前記隔壁の頂面であり、前記層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含み、該コーティングは前記表面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記デバイスの前記層と接触状態にある第2層をさらに含み、該第2層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含むことを特徴とする請求項6に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記層は、フッ素化シリコーンを含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記デバイスの前記層と接触状態にある第2層をさらに備え、
該第2層は、第1洗浄用化合物に溶解でき、
該第2層は、第2洗浄用化合物に抵抗力があり、
前記デバイスの前記層は、第2洗浄用化合物に溶解でき、そして、
前記デバイスの前記層は、前記第1洗浄用化合物に抵抗力がある
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記層は、放射性同位元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
管アクセスデバイスにおいて病原体を抑制する方法であって、
本体、および、表面と前記管アクセスデバイスを通してのアクセスを提供するためのスリットとを有する隔壁を備える、管アクセスデバイスを提供することと、
抗菌剤を有する層を提供することと、そして、
前記表面に前記層を配置することと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記層は前記抗菌剤と潤滑オイルとの混合物を含む溶液を含み、前記溶液は前記スリットの前記表面を覆うことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記デバイスの前記層と接触状態にある第2層をさらに備え、該第2層は、低摩擦係数を有する潤滑オイルを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記表面は前記スリットに存在し、前記層は低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含み、該コーティングは前記スリットの前記表面を覆うことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記デバイスの前記層と接触状態にある第2層をさらに備え、該第2層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記表面は、前記隔壁の頂面であり、前記層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含み、該コーティングは前記表面を覆うことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記デバイスの前記層と接触状態にある第2層をさらに備え、該第2層は、低摩擦係数を有するポリマーコーティングを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記層は、フッ素化シリコーンを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記デバイスの前記層と接触状態にある第2層をさらに備え、
該第2層は、第1洗浄用化合物に溶解でき、
該第2層は、第2洗浄用化合物に抵抗力があり、
前記デバイスの前記層は、第2洗浄用化合物に溶解でき、そして、
前記デバイスの前記層は、第1洗浄用化合物に抵抗力がある
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記層は、前記管アクセスデバイス内に収容された隔壁を形成し、前記層は、放射性同位元素を含むことを特徴とする請求項11に記載の医療用デバイス。
【請求項21】
患者の脈管系にアクセスする手段と、そして、
病原体を抑制する手段と
を備え、
前記病原体は、患者の前記脈管系にアクセスする前記手段内に存在し、そして、
前記病原体を抑制する前記手段は、抗菌剤を含むスリット隔壁を含むことを特徴とする医療用デバイス。
【請求項22】
前記抗菌剤は、前記隔壁の前記表面にコートされていることを特徴とする請求項21に記載の医療用デバイス。
【請求項23】
前記抗菌剤は、前記隔壁の材料と混ぜられていることを特徴とする請求項21に記載の医療用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−544454(P2009−544454A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522970(P2009−522970)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/074576
【国際公開番号】WO2008/014447
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】