説明

管ライニング工法及びライニング管

【課題】加熱冷却過程でライニング材が熱変形しても、フランジ部の液漏れが生じない管ライニング工法を提供する。
【解決手段】管路の内部ライニング材方法において、未硬化の硬化性樹脂が含浸された挿入筒部,5及び挿入筒部の一端から外側に屈曲状に連設された硬化状態の鍔部,6からなる管口シール部材,4を用い、鍔部をフランジ部の外側にスペース,8を介して臨ませた状態で未硬化の挿入筒部を管路内に挿入して管口シール部材を管路の端部に取り付ける管口シール部材取り付け工程と、ライニング材として未硬化の硬化性樹脂が含浸された管状樹脂材を用い、未硬化状態のライニング材を管路に反転挿入する反転挿入工程と、ライニング材の内部に流体圧を作用させてライニング材を管路の内面に押圧した状態で、ライニング材及び挿入筒部を硬化させる硬化工程と、スペースに充填剤を充填してスペースを埋めるスペース埋設工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管ライニング工法及びライニング管に係り、より詳しくは、老朽化した圧力パイプラインを樹脂製ライニング材で修復する管ライニング工法及びライニング管に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した農業用水管、水道管、工業用水管、ガス管などの圧力パイプラインを修復するライニング工法としては、特開2004−148512号公報に開示されたものがある。この工法は、管状樹脂吸着材に未硬化の硬化性樹脂を含浸させたライニング材を用いるもので、まず、管状樹脂吸着材の一端を外側に折り返して返し部を硬化させ、管路のフランジと略同形状の鍔部を含む管口シール部材を形成する。次に、管口シール部材を管路の開口部にセットし、ライニング材を管口シール部材の内部を通って管路内に反転挿入する。その後、ライニング材の内部に流体圧を作用させてライニング材を管路の内面に押圧した状態で、ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させるものである。
【0003】
しかしながら従来の工法では、ライニング材を管路の内面に押圧した状態を維持してライニング材内部を加熱し、ライニング材を硬化させた後、常温まで冷却すると、加熱冷却過程でライニング材が熱変形を生じる。一方、ライニング材と管口シール部材は固定されているため、熱変形によるライニング材の収縮により管口シール部材の中心部が、老朽管内に引き込まれる現象が発生し、管口シール部材の中心部が、老朽管内に引き込まれると、管口シール部材の鍔部が変形して管口シール部材と老朽管のフランジ部の間に隙間が発生していた。そして、このフランジ部と新しいフランジ継ぎ手をボルと、ナットで締結すると管口シール部材に割れが発生し、内部の流体が漏出する問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−148512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱硬化のための加熱冷却過程でライニング材が熱変形しても、液漏れが生じない管ライニング工法及びライニング管の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管ライニング工法は、外側に広がるフランジ部が端部に一体形成された管路の内部にライニング材を施工する方法において、未硬化の硬化性樹脂が含浸された挿入筒部及び挿入筒部の一端から外側に屈曲状に連設された硬化状態の鍔部からなる管口シール部材を用い、前記鍔部を前記フランジ部の外側にスペースを介して臨ませた状態で未硬化の前記挿入筒部を前記管路内に挿入して前記管口シール部材を前記管路の端部に取り付ける管口シール部材取り付け工程と、前記ライニング材として未硬化の硬化性樹脂が含浸された管状樹脂材を用い、未硬化状態のライニング材を前記管路に反転挿入する反転挿入工程と、前記ライニング材の内部に流体圧を作用させてライニング材を前記管路の内面に押圧した状態で、前記ライニング材及び前記挿入筒部を硬化させる硬化工程と、前記スペースに充填剤を充填してスペースを埋めるスペース埋設工程と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
前記ライニング材を前記挿入筒部よりも外側に突出させて突出部を形成し、未硬化の硬化性樹脂含浸材からなる外周部材を前記突出部の外周に取り付けて硬化させる工程をさらに含むことを特徴とする。
【0008】
前記挿入筒部に管状の可撓性シートからなるライナー部材を取り付け、前記ライナー部材を前記管路の内面と前記ライニング材との間に配置し、前記未硬化のライニング材を前記管路の内面に押圧するとき、前記ライナー部材を前記管路の内面に密着させることを特徴とする。
【0009】
前記鍔部と前記フランジ部との間のスペースにスペーサを挿入し、前記硬化工程の後、前記スペーサを除去して前記スペース埋設工程を行うことを特徴とする。
【0010】
前記スペース埋設工程は、未硬化の硬化性樹脂を含浸させたロービングを前記スペースから露出している前記挿入筒部の外面に巻き付けた後、前記硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする。
【0011】
前記スペース埋設工程は、未硬化の硬化性樹脂を含浸させたロービング及びファイバー複合不織布を前記スペースから露出している前記挿入筒部の外面に交互に巻き付けた後、前記硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のライニング管は、外側に広がるフランジ部が端部に一体形成された管路の内部にライニング材が施工されたライニング管であって、未硬化の硬化性樹脂が含浸され未硬化の状態で前記フランジ部を通って前記管路内に挿入される挿入筒部及び硬化状態で前記挿入筒部の一端から外側に屈曲状に連設され前記フランジ部にスペースを介して臨む鍔部からなり、前記管路の端部に取り付けられる管口シール部材と、未硬化の硬化性樹脂が含浸された管状樹脂材からなり、未硬化の状態で前記管路内に反転挿入されるライニング材とを備え、前記未硬化のライニング材が前記管路の内面に押圧された状態で前記ライニング材及び前記挿入筒部が硬化され、前記スペースに充填剤が充填されてスペースが埋設されていることを特徴とする。
【0013】
前記ライニング材に、前記鍔部よりも外側に突出した突出部が形成され、未硬化の硬化性樹脂含浸材からなる外周部材が前記突出部の外周に取り付けられて硬化されていることを特徴とする。
【0014】
前記挿入筒部に管状の可撓性シートからなるライナー部材が取り付けられた状態で、前記管路の内面と前記ライニング材との間に配置されており、前記ライナー部材が前記管路の内面に密着されることを特徴とする。
【0015】
前記充填剤は、未硬化の硬化性樹脂を含浸させたロービングからなり、前記ロービングが前記スペースから露出している前記挿入筒部の外面に巻き付けられた後、前記硬化性樹脂が硬化されていることを特徴とする。
【0016】
前記充填剤は、未硬化の硬化性樹脂を含浸させたロービング及びファイバー複合不織布からなり、これらが前記ロービングが前記スペースから露出している前記挿入筒部の外面に交互に巻き付けられた後、前記硬化性樹脂が硬化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の管ライニング工法及びライニング管では、施工過程で管口シール部材の鍔部にスペースを設けることにより、ライニング材の熱収縮による管口シール部材の鍔部の変形や割れが解消し、水密性を確保することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の管口シール部材の加工状況を示す概略図である。
【図2】本発明の管口シール部材の概略図である。
【図3】本発明の管状ネットを用いたライニング材の反転状況を示す概略図である。
【図4】老朽管路とフランジ部を示す図である。
【図5】管口シール部材設置後のライニング材反転挿入状況を示す図である。
【図6】ライニング材の硬化状況を示す図である。
【図7】ライニング材の硬化前の反転到達端の状況を示す図である。
【図8】ライニング材の硬化中の反転発進端の状況を示す図である。
【図9】スペースにロービング及び帯状マットを巻き付ける状況を示す図である。
【図10】スペースへのロービング及び帯状マット巻き付けが完了した状況を示す図である。
【図11】ライニング完了後の老朽管路と新継手管との連結状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、外側に広がるフランジ部2が端部に一体形成された老朽管路1(以下管路とも記載する)の内部にライニング材3を施工する方法であり、管口シール部材4を取り付ける管口シール部材取り付け工程と、ライニング材3を反転して老朽管路1の内部に挿入する反転挿入工程と、ライニング材3を硬化する硬化工程と、スペース8を埋設するスペース埋設工程からなる。管口シール部材取り付け工程は、未硬化の硬化性樹脂が含浸された挿入筒部5及び挿入筒部5の一端から外側に屈曲状に連設された硬化状態の鍔部6からなる管口シール部材4を用い、鍔部6をフランジ部2の外側にスペーサ7を介して臨ませた状態で未硬化の挿入筒部5を老朽管路1内に挿入して管口シール部材4を老朽管路1の端部に取り付ける。反転挿入工程は、ライニング材3として未硬化の硬化性樹脂が含浸された管状樹脂材を用い、未硬化状態のライニング材3を管路に反転挿入する。硬化工程は、ライニング材3の内部に流体圧を作用させてライニング材3を管路の内面に押圧した状態で、ライニング材3及び挿入筒部を硬化させる。スペース埋設工程は、スペースに充填剤を充填してスペースを埋める。
【0020】
本発明は、外側に広がるフランジ部2が端部に一体形成された老朽管路1の内部に施工されるもので、管口シール部材4とライニング材3とを備え、未硬化のライニング材3が老朽管路1の内面に押圧された状態でライニング材3及び挿入筒部5が硬化され、スペース8に充填剤が充填されてスペース8が埋設される。管口シール部材4は、挿入筒部5、鍔部6を含み、挿入筒部5には未硬化の硬化性樹脂が含浸され未硬化の状態でフランジ部2を通って老朽管路1の内部に挿入される。鍔部6は硬化状態で挿入筒部5の一端から外側に屈曲状に連設され、フランジ部2にスペース8を介して取り付けられる。ライニング材3は、未硬化の硬化性樹脂が含浸された管状樹脂材を含み未硬化の状態で老朽管路1内部に反転挿入される。
【0021】
管ライニング工法について詳しく説明する。先ず、最初に管口シール部材4を製造する。管口シール部材4は、挿入筒部5と鍔部6からなるもので、挿入筒部5は管状樹脂材から出来ている。管状樹脂材は、プラスチックファイバーの不織布或はプラスチックファイバーにグラスファイバーを複合させた帯状不織布の両端部を縫合又は接着等により接合して管状に加工し、これに未硬化の熱硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を含浸させる。管状樹脂材は、2層以上の多層構造とするのが好ましい。図1、2に示す通り、第1の管状樹脂材の一端を花弁状に切り開き、花弁の先端を鍔部6の外径に合わせて型枠にセットする。そして、花弁状に切り開いた管状樹脂材に液状の熱硬化性樹脂を含浸させ、その上に鍔部の大きさに合わせて切り抜いたドーナツ状の第2の樹脂材23を重ねる。更に、第2の樹脂材を第1の樹脂材に重ねて同様の加工することにより、2層構造の管口シール部材4を作製する。
【0022】
管口シール部材4は、鍔部6が老朽管路1のフランジ部2と同大、同形状になるようにして硬化させ、鍔部以外の管状樹脂部は未硬化のままとしておく。
上記実施例では、2層構造としたが、3層以上にしても良い。多層構造にする場合は、管状に加工する際に各層の接合部はずらしておく。
鍔部の形成に使用する液状の熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル、ビニールエステル、エポキシ樹脂等であり、ライニング材に使用する樹脂と同種のものが好ましい。管口シール部材4の鍔部6には老朽管路1の端部のフランジ部2のボルト孔2aと同形の孔6aを同間隔で設ける。
【0023】
図3は、本発明の管状ネットを用いたライニング材の反転状況を示す概略図である。管口シール部材4の挿入筒部5を老朽管路1に挿入し、管口シール部材4の鍔部6と老朽管路1のフランジ部2(図4)との間にスペーサ7を挟み、クランプ等を使用して仮固定するとともにボルト孔にボルトを通して仮固定する。ライニング後にライニング材3を衝撃圧等から保護するためライナー部材としての管状補強布10を使用する。管状補強布10は、反転発進側では管口シール部材4の先端に縫合され、内部に反転挿入したライニング材3が管状に拡がることによりライニング材3の外周全面を覆うことになる。反転されたライニング材3が到達する反転到達端では、管状補強布10を老朽管路1に合わせて切断し、その管状補強布10の管端内部に管口シール部材4の挿入筒部5を挿入し、挿入筒部5の端部を拡張して内部にライニング材3を反転挿入させる。
【0024】
管状補強布10の端部において管状補強布10の内部に長さが短い管状ネット11を挿入し、管状補強布10に管状ネット11の一端を縫合又は接着により接合する。管状ネット11が接合された管状補強布10の一端と反対側の他端に管口シール部材4を接合し、老朽管路1内部全長にわたって管状補強布10を配備する。この時、ライニング材3反転発進端には、管口シール部材4の挿入筒部5を接合した管状補強布10の端部を配置し、ライニング材3の反転到達端には、管状ネット11を接合した端部が配置される。
【0025】
管口シール部材4の挿入筒部5の外側には、管状補強布10を配置し、管状ネット11は挿入筒部5の内部に配置する。管状補強布10の内部を反転進行するライニング材3は、管状補強布10の内部の管状ネット11との接合部に達すると管状ネット11の内部を反転進行し、同時に管口シール部材4の挿入筒部5を円筒状に拡げながら進行する。管状ネット11は、樹脂ファイバー、グラスファイバーロービング、または、炭素繊維ロービング等をネット状に編んだ部材からなり、帯状の素材から両端部を接着剤等で固定して管状に加工する。
【0026】
ライニング材3は、管状樹脂材に液状の熱硬化性樹脂を含浸して製造する。管状樹脂材は、通常、ポリエステルファイバーの不織布で構成されるが、ポリエステルファイバーにグラスファイバーを複合した不織布で構成した管状樹脂材は熱収縮が小さいため本発明に対しては好適である。工法には最適となる。管状樹脂材に含浸させる熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、ビニールエステル、または、エポキシ等を使用する。上記の通り、管口シール部材4の鍔部6は、老朽管路1の両端部のフランジ部2との間にスペーサ7を挿入して締結具により仮固着する。管状補強布10は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の織布を縫合により管状に加工した部材であり、修復される老朽管路1の内圧が高い場合に使用されるものであり、必須の素材ではない。
【0027】
図5は、管口シール部材設置後のライニング材反転挿入状況を示す図であり、図6は、ライニング材の硬化状況を示す図であり、図7は、ライニング材の硬化前の反転到達端の状況を示す図であり、図8は、ライニング材の硬化中の反転発進端の状況を示す図である。一端には管口シール部材4の挿入筒部5を接合し、他端に管状ネット11を接合した管状補強布10を老朽管路1内に配備し、老朽管路1の一端より管状補強布10の内部にライニング材3を反転挿入させる。
反転挿入が完了すると、ライニング材3の内部を加圧して老朽管路1の壁面に管状補強布10およびライニング材3を密着させ、ライニング材3の内部を温水等で加圧し、ライニング材3を硬化させる。ライニング材3の硬化が終了すると、管口シール部材4の鍔部6と老朽管路1のフランジ部2との間に挿入したスペーサ7を取り外す。
【0028】
硬化が終了しても高温状態にあるライニング材3は、冷却と共に熱収縮するが、管口シール部材4の鍔部6も収縮して、その歪みが鍔部6と老朽管路1のフランジ部2の間のスペース8にしわ寄せされる。収縮の大きさは、ライニング材3の長さが長くなるほど大きくなる。従って、スペースの大きさは予め老朽管路1の長さからライニング材3の膨張率を考慮して算出する。ライニング材の熱収縮が終了すると、収縮歪みがしわ寄せされる鍔部6と老朽管路1のフランジ部2の間のスペース8は、スペース8底部の挿入筒部5の外周にエポキシ樹脂を含浸させたグラスファイバーロービング14a又は帯状フェルト14b等の充填材14を巻き付け、スペース8全体を埋める。この際、グラスファイバーロービングの他に、グラスファイバー複合ポリエステルフェルトを帯状に加工し、グラスファイバーロービングと交互に巻き付けても良い。巻き付けたグラスファイバーロービングが硬化した後、フランジ部2にボルト孔を穿孔する。
【0029】
硬化したライニング材3の端部は、鍔部6の内周部に予め設けられていた管口カバー材12を取り外し、鍔部6より少しライニング材3が突出するように切断する。その後、突出したライニング材3の外周に外周部材21としてのエポキシ樹脂を含浸させたファイバーロービングを巻き付け硬化させる。巻き付け厚さは、管口シール部材4の挿入筒部5の厚さを越えないようにする。ライニングを施した老朽管路1の端部の加工が全て終了すると、その端部に、フランジの外径を調整した別の新継手管13のフランジを設置してボルト、ナットで締結する。
【0030】
図9は、スペースに充填材14としてのロービング14a及び帯状フェルト14bを巻き付ける状況を示す図であり、図10は、スペースへのロービング及び帯状マット巻き付けが完了した状況を示す図である。本発明の管ライニング工法及びライニング管では、施工過程で管口シール部材4の鍔部6にスペース8を設けることにより、ライニング材3が熱収縮しても鍔部6はスペース8間を移動して収縮するため拘束されることがなく、変形や割れが解消して、水密性を確保することが出来、従来工法の課題が解決できる。本実施例では、スペーサ7を装着して熱硬化樹脂を硬化させたが、必ずしもスペーサ7を使用する必要はなく、適切なスペースを確保できるのであればどのような方法を採用しても良い。
【0031】
ライニング材3には熱硬化後冷却により熱収縮が発生するため、その影響を受ける管口シール部材4の鍔部6との間に着脱可能なスペーサ7を装着してスペース8を設ける。スペーサ7は硬化、冷却が終了するまで伸びや変形が発生しないようにボルトで固定している。スペーサ7を着脱可能とすることにより、ライニング材3が硬化して熱収縮が始まる時点でスペーサ7を取り外すことができる。即ち、ライニング材3の硬化中は鍔部6を任意の位置で固定しておき、ライニング材3が硬化して形状が定まった時点で熱収縮させることによりスペース部でライニング材3の伸びや変形を吸収できる効果がある。
【0032】
老朽管路1のフランジ部2と管口シール部材4の鍔部6との間に設けられるスペース8は、ライニング材3の熱収縮を見込んで安全サイドで設定される。このため、ライニング材3の熱収縮が完了した時点では収縮残が発生しスペースは完全になくならない。しかもこのスペース残の程度はライニング材の収縮レベルにより多様に変化する。ここで発生したスペースは、何等かの方法で完全に埋めておかないと、フランジをボルト・ナットで締め付けた際に鍔部6が割れる恐れがある。そこで、グラスファイバーロービング又は帯状フェルトに液状のエポキシ樹脂を含浸させて、スペースの底部である硬化した挿入筒部5の外周部に巻き付け、不規則に発生するスペース残を完全に埋めるようにしている。
【0033】
上記グラスファイバーロービング又は帯状フェルトに液状のエポキシ樹脂を含浸させた充填材14の硬化後の特性は、鍔部6の特性と同等で、ボルト・ナットによる締め付け強度伝達性も良好であるため鍔部6に割れが生じることはない。
グラスファイバーロービング又は帯状フェルトは、柔軟な特性を有するため、形状を自由に変えることも容易であり、不規則な大きさで発生するスペースの充填材としては最適である。
【0034】
図11は、ライニング完了後の老朽管路と新継手管との連結状況を示す図である。挿入筒部5とライニング材3が重なり合って硬化するライニング材3の端部では硬化後の板厚が厚くなるため新継手管13との間に内径差が生じる。また、ライニング材3を、鍔部6から突出した部分の先端部と一致させて切断して新継手管13と接続すると、接続部において内径差による段差が発生し、施工後流体の流れを阻害する原因となる。これに対し、本実施例ではライニング材3は鍔部6より少し突出させて切断し、突出部の内面を斜めに切削加工することにより段差をなくして斜面にし、流体の流れを妨げないようにした。ライニング材3と新継手管13の内径差は、挿入筒部5の肉厚分となって隙間が発生する。本実施例では、エポキシ樹脂を含浸させたグラスファイバー又はカーボンファイバーのロービングからなる外周部材21を巻き付けて内径差を埋めておく(図11)。
【0035】
上記ライニング材の熱収縮を考慮した端部処理をすることにより、老朽管路と新継手部との間の水密性を確実にすると共に接続部での流れを円滑にできるライニング施工を可能とすることができる。本発明は、以上の実施例に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、管口シール部材4の挿入筒部5に管状補強布(ライナー部材)10を取り付けることなく施工してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 老朽管路
2 フランジ部
2a、6a ボルト孔
3 ライニング材
4 管口シール部材
5 挿入筒部
6 鍔部
7 スペーサ
8 スペース
10 管状補強布
11 管状ネット
12 管口カバー材
13 新継手管
14 充填材
14a グラスファイバーロービング
14b 帯状フェルト
21 外周部材
23 第2の樹脂材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に広がるフランジ部が端部に一体形成された管路の内部にライニング材を施工する方法において、
未硬化の硬化性樹脂が含浸された挿入筒部及び前記挿入筒部の一端から外側に屈曲状に連設された硬化状態の鍔部からなる管口シール部材を用い、前記鍔部を前記フランジ部の外側にスペースを介して臨ませた状態で未硬化の前記挿入筒部を前記管路内に挿入して前記管口シール部材を前記管路の端部に取り付ける管口シール部材取り付け工程と、
前記ライニング材として未硬化の硬化性樹脂が含浸された管状樹脂材を用い、未硬化状態のライニング材を前記管路に反転挿入する反転挿入工程と、
前記ライニング材の内部に流体圧を作用させてライニング材を前記管路の内面に押圧した状態で、前記ライニング材及び前記挿入筒部を硬化させる硬化工程と、
前記スペースに充填剤を充填してスペースを埋めるスペース埋設工程と、
を備えていることを特徴とする管ライニング工法。
【請求項2】
前記ライニング材を前記挿入筒部よりも外側に突出させて突出部を形成し、未硬化の硬化性樹脂含浸材からなる外周部材を前記突出部の外周に取り付けて硬化させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の管ライニング工法。
【請求項3】
前記挿入筒部に管状の可撓性シートからなるライナー部材を取り付け、前記ライナー部材を前記管路の内面と前記ライニング材との間に配置し、前記未硬化のライニング材を前記管路の内面に押圧するとき、前記ライナー部材を前記管路の内面に密着させることを特徴とする請求項1又は2記載の管ライニング工法。
【請求項4】
前記鍔部と前記フランジ部との間のスペースにスペーサを挿入し、前記硬化工程の後、前記スペーサを除去して前記スペース埋設工程を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の管ライニング工法。
【請求項5】
前記スペース埋設工程は、未硬化の硬化性樹脂を含浸させたロービングを前記スペースから露出している前記挿入筒部の外面に巻き付けた後、前記硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の管ライニング工法。
【請求項6】
前記スペース埋設工程は、未硬化の硬化性樹脂を含浸させたロービング及びファイバー複合不織布を前記スペースから露出している前記挿入筒部の外面に交互に巻き付けた後、前記硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の管ライニング工法。
【請求項7】
外側に広がるフランジ部が端部に一体形成された管路の内部にライニング材が施工されたライニング管であって、
未硬化の硬化性樹脂が含浸され未硬化の状態で前記フランジ部を通って前記管路内に挿入される挿入筒部及び硬化状態で前記挿入筒部の一端から外側に屈曲状に連設され前記フランジ部にスペースを介して臨む鍔部を含み前記管路の端部に取り付けられる管口シール部材と、
未硬化の硬化性樹脂が含浸された管状樹脂材を含み未硬化の状態で前記管路内に反転挿入されるライニング材とを備え、
前記未硬化のライニング材が前記管路の内面に押圧された状態で前記ライニング材及び前記挿入筒部が硬化され、前記スペースに充填剤が充填されてスペースが埋設されていることを特徴とするライニング管。
【請求項8】
前記ライニング材に、前記鍔部よりも外側に突出した突出部が形成され、未硬化の硬化性樹脂含浸材からなる外周部材が前記突出部の外周に取り付けられて硬化されていることを特徴とする請求項7記載のライニング管。
【請求項9】
前記挿入筒部に管状の可撓性シートからなるライナー部材が取り付けられた状態で、前記管路の内面と前記ライニング材との間に配置されており、前記ライナー部材が前記管路の内面に密着されることを特徴とする請求項7または8記載のライニング管。
【請求項10】
前記充填剤は、未硬化の硬化性樹脂を含浸させたロービングからなり、前記ロービングが前記スペースから露出している前記挿入筒部の外面に巻き付けられた後、前記硬化性樹脂が硬化されていることを特徴とする請求項6又は7記載のライニング管。
【請求項11】
前記充填剤は、未硬化の硬化性樹脂を含浸させたロービング及びファイバー複合不織布からなり、これらが前記ロービングが前記スペースから露出している前記挿入筒部の外面に交互に巻き付けられた後、前記硬化性樹脂が硬化されていることを特徴とする請求項6又は7記載のライニング管。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−25456(P2011−25456A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171501(P2009−171501)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(591240951)有限会社横島 (19)
【Fターム(参考)】