説明

管内塗布装置

【課題】中空鋼管の内面の補修処理を効率的に実施することができる管内塗布装置を提供する。
【解決手段】液体を噴射するノズルが形成されたノズル部11と一端側にノズル部11に接続されると共に他端側が液体を供給する供給装置12に連通する供給チューブ13とを具備する塗布ユニットと、一方の端部がノズル部11近傍に配置されると共に他方の端部が吸引装置14に連通する吸引チューブ15と中空鋼管3の内面に当接して中空鋼管3内を密封可能な密封部材16と有し密封部材16で密封されている中空鋼管内を吸引する吸引ユニットとを具備し、供給チューブ13及び吸引チューブ15を中空鋼管3の上端開口から中空鋼管3内に吊り下げた状態で吸引ユニットによって中空鋼管3内を実質的に真空状態とすると共に塗布ユニットによって中空鋼管3の内面に液体を塗布するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電鉄塔等に用いられる中空鋼管内に、例えば、塗料、防錆剤等の所定の液体を塗布する管内塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧線等の送電線を支持する鉄塔(送電鉄塔)等は、一般的に、主柱材として中空鋼管が用いられている。このような中空鋼管は、水分等による腐蝕を防止するために、例えば、大量の雨水が中空鋼管内へ侵入したり、中空鋼管の内部で結露した水分が鋼管内に溜まったりするのを抑える工夫がなされている。しかしながら、中空鋼管内に水分が入り込むのを完全に防止するのは困難であり、長期間の使用によりどうしても腐蝕が生じてしまう。鋼管に腐蝕が生じると鉄塔等の構造物の耐力や強度を低下させるため、腐食が生じた部分は、塗装や防錆処理等の補修処理を施す必要がある。また、塗装等の補修処理は、腐食、例えば、錆等を取り除いた後に、施すことが好ましい。錆等が生じた状態では、塗料等が良好に付着しない虞があるからである。
【0003】
ここで、鋼管の外周面に生じた腐蝕は、発見が容易であり、また錆等の除去作業も比較的容易であるため、良好に補修処理を施すことができる。これに対し、中空鋼管の内面に生じた腐蝕は、発見すること自体が難しく、また錆等の除去作業を実施するのも困難である。このため、腐食部分に補修処理を良好に施すことができないという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するために、中空鋼管の内面をカメラで撮影して観察することで、腐食部分(徐錆部)を検出し、この徐錆部をマグカップで覆って内部を真空状態として錆を除去すると共に塗装を施すようにした装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このような装置は、複雑な機構が必要であるため極めて高価な装置になると思われる。また、腐食部分毎に塗装等の処理を施しているため、複数箇所、あるいは広範囲に腐食部分が存在していると、処理に時間がかかってしまい効率が悪いという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−11013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、中空鋼管の内面の補修処理を効率的に実施することができる管内塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、中空鋼管の内面に所定の液体を塗布する管内塗布装置であって、前記液体を噴射するノズルが形成されたノズル部と一端側に前記ノズル部に接続されると共に他端側が前記液体を供給する供給装置に連通する供給チューブとを具備する塗布ユニットと、一方の端部が前記ノズル部近傍に配置されると共に他方の端部が吸引装置に連通する吸引チューブと前記中空鋼管の内面に当接して当該中空鋼管内を密封可能な密封部材と有し当該密封部材で密封されている前記中空鋼管内を吸引する吸引ユニットとを具備し、前記供給チューブ及び前記吸引チューブを前記中空鋼管の上端開口から当該中空鋼管内に吊り下げた状態で前記吸引ユニットによって前記中空鋼管内を実質的に真空状態とすると共に前記塗布ユニットによって前記中空鋼管の内面に前記液体を塗布することを特徴とする管内塗布装置にある。
【0009】
かかる第1の態様では、中空鋼管内を実質的に真空の状態で、塗料等の液体が中空鋼管の内面に塗布されるため、中空鋼管の内面の状態に拘わらず、中空鋼管の内面に液体を良好に付着させることができる。したがって、中空鋼管の内面の補修処理等を効率的に実施することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記密封部材が前記供給チューブ及び前記吸引チューブと共に前記中空鋼管内を移動可能に設けられていることを特徴とする第1の態様の管内塗布装置にある。
【0011】
かかる第2の態様では、中空鋼管内で密封する領域を比較的狭くすることができるため、作業効率がさらに向上する。
【0012】
本発明の第3の態様は、前記ノズル部及び前記吸引チューブの前記一方の端部の上方及び下方にそれぞれ配される一対の密封部材を有し、前記中空鋼管内のこれら一対の密封部材間を実質的に真空状態にして当該中空鋼管の内面に前記液体を塗布することを特徴とする第2の態様の管内塗布装置にある。
【0013】
かかる第3の態様では、中空鋼管内で密封する領域が狭くなるため、作業効率がさらに向上する。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記密封部材が、少なくとも前記中空鋼管の内面近傍が膨縮可能な膨縮部材で構成され、該膨縮部材を膨張させて当該膨縮部材が前記中空鋼管の内面に当接することで当該中空鋼管内が密封されることを特徴とする第1〜3の何れかの態様の管内塗布装置にある。
【0015】
かかる第4の態様では、中空鋼管を所定の位置で比較的容易且つ確実に密封することができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、前記吸引チューブの前記一方の端部には、当該吸引チューブの開口を封止可能且つ前記中空鋼管内を吸引する際に開放可能な開閉部材が設けられていることを特徴とする第1〜4の何れかの態様の管内塗布装置にある。
【0017】
かかる第5の態様では、ノズル部から液体を塗布する際には、吸引チューブの開口が塞がれた状態となるため、吸引チューブ内への液体の侵入が防止される。
【0018】
本発明の第6の態様は、前記開閉部材は、先端面に開口を有する枠体と該枠体内に設けられるバネ部材及び蓋体とで構成され、前記バネ部材の付勢力によって前記蓋体が前記枠体の先端面に当接することで当該枠体の開口が封止されると共に、前記吸引装置によって前記吸引チューブ内を吸引することで前記蓋体が内側に移動して前記枠体の開口が開放されることを特徴とする第5の態様の管内塗布装置にある。
【0019】
かかる第6の態様では、開閉部材を作動させるための動力を必要とすることなく、吸引チューブの開口を比較的容易且つ確実に開閉することができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、前記ノズル部は、前記供給チューブよりも内径の大きい球状体の全面に複数のノズルが形成されてなることを特徴とする第1〜6の何れかの態様の管内塗布装置にある。
【0021】
かかる第7の態様では、ノズル部からほぼ全方位に向かって液体が噴射されるため、極めて効率的に中空鋼管の内面に液体を塗布することができる。
【0022】
本発明の第8の態様は、前記中空鋼管の内面に摺接可能に配されて当該供給チューブの横断面方向での移動を規制する規制部材が前記供給チューブに設けられていることを特徴とする第1〜7の何れかの態様の管内塗布装置にある。
【0023】
かかる第8の態様では、ノズル部が常に中空鋼管の中心部に配置されるため、中空鋼管の内面に液体を略均一に塗布することができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、前記規制部材は、少なくとも上方側の一方が前記供給チューブに沿って移動可能に設けられる一対のリング状部材と、前記供給チューブに沿って配されて両端が各リング状部材にそれぞれ接続される所定長さの屈曲可能な線状部材とで構成されていることを特徴とする第8の態様の管内塗布装置にある。
【0025】
かかる第9の態様では、比較的容易且つ確実にノズル部を常に中空鋼管の中心部に配置することができる。
【発明の効果】
【0026】
かかる本発明の管内塗布装置では、腐食部分を取り除かなくても中空鋼管の内面を良好に塗装することができる。すなわち、腐食部分にも確実に塗料が付着するため、腐食の進行は抑えられる。このため、中空鋼管の内部を調査して腐食部分を確認する必要もなくなる。したがって、例えば、送電鉄塔等の主柱内の補修作業等の作業効率を大幅に向上することができ、作業コストを削減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1は中空鋼管を用いた構造物の一例である送電鉄塔の概略図であり、図2は、本発明に係る管内塗布装置を示す概略図である。
【0029】
図1に示すように、送電線を支持する送電鉄塔1の主柱2は、複数の中空鋼管3が連結されてなる。また、各中空鋼管3は、その端部に設けられるフランジ部4同士を当接させた状態で、例えば、ボルト及びナット等の締結部材によって締結することによって固定されている。また、このような送電鉄塔1の主柱2を構成する各中空鋼管3の直径は、一般的に、頂部側が細く、地面側に近づくほど太くなっている。
【0030】
そして、本発明に係る管内塗布装置10は、図2に示すように、複数の中空鋼管3が連結された主柱2の上端開口から挿入され吊り下げられた状態で所定の液体、例えば、塗料を中空鋼管3の内面に塗布するための装置であり、中空鋼管3の内面の腐食部分の補修処理を行う際等に用いられる。
【0031】
この管内塗布装置10は、液体を噴射する複数のノズルが形成されたノズル部11と、一端側にこのノズル部11が接続されると共に他端側が塗料を供給する供給装置12に連通される供給チューブ13とを具備する塗布ユニットと、吸引装置14に連通する吸引チューブ15と、中空鋼管3内を密封する密封部材16とを有する吸引ユニットとを具備する。
【0032】
塗布ユニットを構成するノズル部11は、例えば、本実施形態では、所定メッシュの金属製網体を供給チューブ13よりも内径の大きい球体状に成形したものであり、各編み目がノズルとして機能する。なお、ノズル部11は、特に限定されるものではなく、例えば、円筒体の側面に複数のノズルが形成されたもの等であってもよい。また、供給チューブ13は、ノズル部11に塗料を供給でき、且つ中空鋼管3内に吊り下げられた状態でノズル部11を支持できる強度を有するものであれば、特に限定されず、例えば、所定の硬度を有するゴムチューブ等で形成される。また、供給装置12は、例えば、ポンプ等の圧力によって塗料を供給チューブ13に送り出すものである。塗料を供給チューブ13に送り出すことができるものであれば、供給装置12の構成は特に限定されるものではない。
【0033】
そして、このような塗布ユニットでは、ノズル部11が供給チューブ13によって中空鋼管3内に吊り下げられた状態で、所定のタイミングで供給装置12を作動させることにより供給チューブ13を介して塗料がノズル部11に供給され、供給された塗料が各ノズル(図示なし)から噴射することによって中空鋼管3の内面に付着して塗布膜が形成される。すなわち、中空鋼管3の内面が塗装される。このとき、本実施形態に係るノズル部11からは、ほぼ全方位に向かって塗料が噴射されるため、極めて効率的に中空鋼管3の内面を塗装することができる。
【0034】
一方、吸引ユニットを構成する吸引チューブ15は、供給チューブ13と同様に、ゴムチューブ等からなり、例えば、真空ポンプ等で構成される吸引装置14に接続されている。この吸引チューブの先端部は、中空鋼管3内ではノズル部11近傍に配置されるが、ノズル部11との間には所定の間隔が確保されている。例えば、本実施形態では、供給チューブ13は、その先端部とノズル部11との間隔が1m程度となるように配置されている。ノズル部11から噴射された塗料が吸引チューブ15内に入り込むのを防止するためである。
【0035】
密封部材16は、例えば、中空のゴム製パッキン等からなり、主柱2(中空鋼管3)の上端開口部に配置される。そして、この密封部材16によって主柱2の上端開口を封止することで、主柱2の内部全体が密封されることになる。実際には、例えば、主柱2の上端開口を塞いでいる上蓋を取り外した後、図3に示すように、密封部材16が係合保持される凹部17を有する連結管18を主柱2の上端部に取り付けておく。そして、供給チューブ13及び吸引チューブ15が予め挿通された密封部材16をこの連結管18の凹部17に挿入し、例えば、ポンプ等の加圧手段(図示なし)に連通する加圧チューブ19を接続してこの加圧チューブ19から密封部材16内に気体を送り込むことで密封部材16を連結管18の内面に密着させる。これにより、主柱2の上端開口が密封される。
【0036】
なお、複数の中空鋼管3が連結された主柱2では、例えば、図4に示すように、フランジ部4が変形すること等により、各中空鋼管3の間に隙間Aが生じてしまう場合がある。このような場合には、この隙間Aに防水シリコーン等を塗布して隙間Aを予め塞いでおく必要がある。また、送電鉄塔を構成する主柱2の下端部近傍には、一般的に、中空鋼管3内に侵入した雨水等を排出するための排出口が設けられている場合がある。その場合、この排出口も予め塞いでおく必要がある。
【0037】
そして、このような管内塗布装置10では、まず、密封部材16によって主柱2の内部を完全に密封し、この状態で吸引装置14を作動させて吸引チューブ15を介して主柱2の内部を吸引することで、主柱2の内部を実質的に真空状態とする。その後、上述したように、供給装置12を作動させてノズル部11から塗料を噴射させて中空鋼管3内面の塗装を開始し、ノズル部11から塗料を噴射しながら、ノズル部11を所定速度で移動させることで主柱2の内面全体を塗装する。例えば、ノズル部11を主柱2の下端部近傍に配置した状態で内面の塗装を開始し、その後、供給チューブ13を引き上げることでノズル部11が主柱2の上端部まで移動させることで、主柱2の内面全体の塗装が終了する。
【0038】
このように、中空鋼管3内を実質的に真空状態として中空鋼管3の内面に所定の液体、例えば、塗料を塗布することにより、腐食部分を取り除かなくても中空鋼管3の内面を良好に塗装することができる。すなわち、腐食部分にも確実に塗料が付着するため、腐食の進行は抑えられる。このため、中空鋼管3の内部を調査して腐食部分を確認する必要もなくなる。したがって、本発明の管内塗布装置によって送電鉄塔等の主柱内の補修処理(塗装処理)等を行うことで、作業効率を大幅に向上することができ、作業コストを削減することもできる。
【0039】
また、本実施形態では、吸引チューブ15の先端部に、吸引チューブ15の先端開口を開閉可能な開閉部材20が設けられている。この開閉部材20は、例えば、図5に示すように、先端面に開口21aを有する枠体21と、枠体21内に設けられる、例えば、コイルバネ等のバネ部材22及び板状の蓋体23とで構成されている。このような開閉部材20では、蓋体23がバネ部材22によって付勢されているため、通常は、この蓋体23がバネ部材22の付勢力によって枠体21の先端面に当接し、これにより枠体21の開口21aが塞がれた状態となっている。すなわち、吸引チューブ15の先端開口が塞がれた状態となっている。そして、中空鋼管3内を吸引するために吸引装置14を作動させると、吸引チューブ15内が吸引され、その吸引力によって蓋体23がバネ部材22の付勢力に反して内側に若干移動し、枠体21の開口21aが開放されるようになっている。なお、開閉部材20の構成は、特に限定されるものではなく、例えば、電磁弁等であってもよい。このような開閉部材20を吸引チューブ15の先端部に設けておくことで、中空鋼管3内を吸引するときのみ、吸引チューブ15の先端開口(枠体21の開口21a)が開放される。すなわち、塗装時には吸引チューブ15の先端開口は塞がれた状態となっているため、吸引チューブ15内に塗料が入り込むことがない。
【0040】
さらに、中空鋼管3の内面を均一に塗装するためには、ノズル部11を中空鋼管3の横断面の中心に配置しておくことが好ましい。このため、中空鋼管3の内面に摺接可能に配置されて供給チューブ13の移動を規制する規制部材24を供給チューブ13に設けている。例えば、本実施形態に係る規制部材24は、第1のリング状部材25及び第2のリング状部材26と、供給チューブ13に沿って配されてその両端がこれら第1及び第2のリング状部材25,26にそれぞれ接続される所定長さの屈曲可能な線状部材27とで構成されている。第1のリング状部材25は、供給チューブ13に固定されており移動することはない。一方、第2のリング状部材26は、供給チューブ13の外径よりも若干広い内径で形成されており、供給チューブ13に沿って移動可能に設けられている。線状部材27は、屈曲可能な程度の所定硬度を有する金属製のワイヤ等からなり、供給チューブ13の周囲に複数本、例えば、本実施形態では4本、一定間隔で設けられている。
【0041】
このような規制部材24は、例えば、図6(a)及び(b)に示すように、供給チューブ13を中空鋼管3内に挿入する前は、第1のリング状部材25と第2のリング状部材26とが当接し線状部材27が屈曲して周囲に広がった状態となっている。そして、このような規制部材24が設けられた供給チューブ13を中空鋼管3内に挿入する際には、線状部材27が中空鋼管3に接触して第2のリング状部材と共に上方に押し上げられ、線状部材27が徐々に窄まりながら供給チューブ13と共に中空鋼管3内に挿入される。そして、供給チューブ13を移動させた場合でも、この線状部材27は常に中空鋼管3の内面に接触した状態となる。また、上述したように、異なる内径の中空鋼管3が連結されている場合がある。例えば、図6(c)に示すように、中空鋼管3の内径が広くなった場合でも、第2のリング状部材26が下方に移動して線状部材27が広がることで、線状部材27は中空鋼管3の内面に接触した状態となる。これにより、供給チューブ13は、常に中空鋼管3の略中心に位置するようになっている。
【0042】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る管内塗布装置の一部を示す概略図である。
【0043】
実施形態1では、密封部材16によって主柱2の上端部を密封して主柱2の内部全体を真空状態として内面を塗装するようにしたが、本実施形態は、中空鋼管3内を部分的に真空状態としながら塗装を施すことができるようにした例である。
【0044】
具体的には、図7に示すように、本実施形態では、主柱2の上端部に設けられる密封部材の替わりに、第1の密封部材31及び第2の密封部材32が、ノズル部11及び開閉部材20(吸引チューブ15の先端部)を挟んで上下方向両側にそれぞれ配置されている。また、これら第1及び第2の密封部材31,32は、供給チューブ13及び吸引チューブ15と共に中空鋼管3内を移動可能に設けられている。例えば、本実施形態に係る第1及び第2の密封部材31,32は、中空鋼管3の内径よりも若干狭い直径を有する封止板33を有し、この封止板33の周縁部には全周に亘って連続する溝部34が設けられている。また、この封止板33の周縁部には、加圧することで膨縮可能な膨縮部材35が全周に亘って設けられて封止板33の溝部34が塞がれている。また、第1及び第2の密封部材31,32には、これら第1及び第2の密封部材31,32を支持すると共に、各溝部34に連通する気体供給チューブ36が接続されている。この気体供給チューブ36は、例えば、ポンプ等で構成されて空気等の気体を供給する気体供給装置(図示なし)が接続されている。
【0045】
そして、このような本実施形態の管内塗布装置では、図7(a)に示すように、第1及び第2の密封部材31,32の膨縮部材35が収縮している状態で、供給チューブ13等と共に第1及び第2の密封部材31,32を中空鋼管3内に挿入する。このように膨縮部材が収縮した状態では、第1及び第2の密封部材31,32の外径は中空鋼管3の内径よりも小さいため、これら第1及び第2の密封部材31,32を中空鋼管3内に容易に挿入することができる。そして、中空鋼管3内の所定位置で、気体供給チューブ36を介して第1及び第2の密封部材31,32の溝部34内に気体を供給することで、図7(b)に示すように、膨縮部材35が膨張して中空鋼管3の内面に接触する。この接触状態を保持することでこれら第1及び第2の密封部材31,32間の空間Bは完全に密封された状態となる。
【0046】
その後は、実施形態1の場合と同様に、吸引チューブ15を介してこの空間B内を吸引して実質的に真空状態とし、その状態でノズル部11から塗料を噴射して空間B内の中空鋼管3の内面の塗装を行う。
【0047】
空間B内の塗装が終了すると、第1及び第2の密封部材31,32の膨縮部材を一旦収縮させて、ノズル部11、供給チューブ13、吸引チューブ15等を中空鋼管3内の未塗装領域に移動させ、再び、上述したように第1及び第2の密封部材31,32の間の空間において内面の塗装を行う。そして、このような手順を繰り返すことによって、主柱2の内面全体の塗装を行うことができる。
【0048】
このような本実施形態の構成においても、実施形態1の場合と同様に、作業効率を大幅に向上することができる。また、本実施形態では、密封部材によって密封されている空間が比較的狭くなり、比較的短時間で密封空間を実質的に真空状態とすることができるため、作業効率がさらに向上する。
【0049】
以上、本発明の実施形態に説明したが、勿論、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、上述した実施形態では、中空鋼管内の腐食部分を除去することなく、内面塗装を行うようにした例を説明したが、勿論、腐食部分を除去した後に、本発明の管内塗布装置を用いて内面の塗装等を行うことで、中空鋼管の内面をさらに良好に塗装することができる。また、上述した実施形態では、液体として塗料を噴射する管内塗布装置を例示したが、勿論、噴射する液体は塗料に限定されず、例えば、防錆剤等の他の液体であってもよい。さらに、上述の実施形態では、送電鉄塔を例示して本発明の管内塗布装置を説明したが、本発明の管内塗布装置は、中空鋼管を用いた構造物であれば、勿論、送電鉄塔以外にも適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】送電鉄塔の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る管内塗布装置を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る密封部材を示す斜視図である。
【図4】中空鋼管の連結部分を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る開閉部材の概略を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る規制部材を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る管内塗布装置の一部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 送電鉄塔
2 主柱
3 中空鋼管
4 フランジ部
10 管内塗布装置
11 ノズル部
12 供給装置
13 供給チューブ
14 吸引装置
15 吸引チューブ
16 密封部材
17 凹部
18 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空鋼管の内面に所定の液体を塗布する管内塗布装置であって、前記液体を噴射するノズルが形成されたノズル部と一端側に前記ノズル部に接続されると共に他端側が前記液体を供給する供給装置に連通する供給チューブとを具備する塗布ユニットと、一方の端部が前記ノズル部近傍に配置されると共に他方の端部が吸引装置に連通する吸引チューブと前記中空鋼管の内面に当接して当該中空鋼管内を密封可能な密封部材と有し当該密封部材で密封されている前記中空鋼管内を吸引する吸引ユニットとを具備し、前記供給チューブ及び前記吸引チューブを前記中空鋼管の上端開口から当該中空鋼管内に吊り下げた状態で前記吸引ユニットによって前記中空鋼管内を実質的に真空状態とすると共に前記塗布ユニットによって前記中空鋼管の内面に前記液体を塗布することを特徴とする管内塗布装置。
【請求項2】
前記密封部材が前記供給チューブ及び前記吸引チューブと共に前記中空鋼管内を移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の管内塗布装置。
【請求項3】
前記ノズル部及び前記吸引チューブの前記一方の端部の上方及び下方にそれぞれ配される一対の密封部材を有し、前記中空鋼管内のこれら一対の密封部材間を実質的に真空状態にして当該中空鋼管の内面に前記液体を塗布することを特徴とする請求項2に記載の管内塗布装置。
【請求項4】
前記密封部材が、少なくとも前記中空鋼管の内面近傍が膨縮可能な膨縮部材で構成され、該膨縮部材を膨張させて当該膨縮部材が前記中空鋼管の内面に当接することで当該中空鋼管内が密封されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の管内塗布装置。
【請求項5】
前記吸引チューブの前記一方の端部には、当該吸引チューブの開口を封止可能且つ前記中空鋼管内を吸引する際に開放可能な開閉部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の管内塗布装置。
【請求項6】
前記開閉部材は、先端面に開口を有する枠体と該枠体内に設けられるバネ部材及び蓋体とで構成され、前記バネ部材の付勢力によって前記蓋体が前記枠体の先端面に当接することで当該枠体の開口が封止されると共に、前記吸引装置によって前記吸引チューブ内を吸引することで前記蓋体が内側に移動して前記枠体の開口が開放されることを特徴とする請求項5に記載の管内塗布装置。
【請求項7】
前記ノズル部は、前記供給チューブよりも内径の大きい球状体の全面に複数のノズルが形成されてなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の管内塗布装置。
【請求項8】
前記中空鋼管の内面に摺接可能に配されて当該供給チューブの横断面方向での移動を規制する規制部材が前記供給チューブに設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の管内塗布装置。
【請求項9】
前記規制部材は、少なくとも上方側の一方が前記供給チューブに沿って移動可能に設けられる一対のリング状部材と、前記供給チューブに沿って配されて両端が各リング状部材にそれぞれ接続される所定長さの屈曲可能な線状部材とで構成されていることを特徴とする請求項8に記載の管内塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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