説明

管内濁質除去装置並びにその吸込ノズルの設置方法

【課題】 配水管を流下する沈降性物質だけでなく、管内全体を流動する浮遊性物質も捕集できる管内濁質除去装置とその設置方法を提供する。
【解決手段】 配水管(1)の分岐管(2)にノズル収納ケース(4)を着脱自在に立設し、ノズル収納ケース(4)に垂下した吸込管(8)の下端部に可撓性の吸込ノズル(13)を連結すると共に、吸込ノズル(13)を配水管(1)の上流側(H)の管底(1a)に摺接させて先端部の先端ノズル(13a)を管頂(1b)方向に拡開させ、吸込ノズル(13)の曲折部に中間ノズル(13b)を配設したもので、管底(1a)を流下する比重大、粒径大の砂等の懸濁物質と、配水管(1)全体を浮遊しながら流下する懸濁物質を捕集することができる。工事対象配水管近傍に一時的に取り付けが可能となり、現地施工とメンテナンスが簡単で設置スペースの小さい管内濁質除去装置となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上水、工業用水などの配水管から流水を抜き出して、流水に含まれる懸濁物質を除去した後、分離水を配水管に返送させる管内濁質除去装置とその吸込ノズルの設置方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上水、工業用水などの配水管の補修工事、取替え工事を行った場合、或いは、配管の老朽化等から、砂粒、金属錆、塗装片等の懸濁物質が配水管内に混入する。これらの懸濁物質のうち、比重の大きい懸濁物質や、形状の大きい懸濁物質は配水管の管底を移動し、或いは堆積する。配管工事に伴い混入する砂は、一般的に2〜4mmの粒径が主成分であり、この砂は配水管内の流水速度が、0.3m/sにて管底を移動し始める。0.8〜1.0m/sにて管内全体に浮遊して流下するが、一般的な管内運用流速の0.5m/sでは管底を移動する。これらの流水に含まれる懸濁物質を除去するための従来の除去方法としては、配水管に設置した消火栓にホース等を接続し、懸濁物質が移動し得る流速で管内の流水を放水し、流水とともに懸濁物質を排出する洗管作業が主流となっている。この場合、消火栓に抜出す水の流速が早くなければ配管中の懸濁物質の排出が難しく、多量の水を必要とする。水の有効利用から問題であり、洗浄ポイントが多くなると作業時間も長くなり、多量の水を排水して無駄が多い。また、本作業による排水は、通常の流れと比較して著しく大きいため、広範囲に渡る管網に水理変化を及ぼして、微細錆等の赤水を誘引する恐れがある。
【0003】
これらの課題を解決するために、管路にストレーナを設置して流水の全量をフイルターでろ過し、流下する懸濁物質を捕集して下流に流さない方式が近年採用されている。例えば、特許文献1では、流水管にフイルターメッシュを有するフイルター部材を張設し、夾雑物を下流方向に案内する案内バーを設けた夾雑物除去装置を開示してある。また、配水管に大径の異径管を連結し、大径管部に流れ込んだ砂、錆などを管底部の異物排出管から流水とともに排出する管内異物排出装置も、例えば、特許文献2に記載してあるように公知である。そして、極力洗浄排水を減らす方法としては、一対の消火栓の間に接続したバイパス管路を、移動車両に載置した異物回収装置に接続する管路内異物の回収装置も、例えば、特許文献3に記載してあるように公知である。更に、簡単な装置で夾雑物を分離する手段としては、案内筒を分岐管に配設し、案内筒に内挿したホースの流入口を所定方向に送り出し、水圧により、懸濁物質を排出する夾雑物排出装置も、例えば、特許文献4に記載してあるように公知である。
【特許文献1】特許第3125833号公報(段落番号0009及び段落番号0010、図2及び図3)
【特許文献2】実用新案登録第2529012号公報(段落番号0007及び段落番号0009、図2)
【特許文献3】特公平8−23157号公報(段落番号0008及び段落番号0009、図1)
【特許文献4】特許第3077734号公報(段落番号0037乃至段落番号0041、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のストレーナ方式は、スクリーンで捕集した懸濁物質が開閉弁を開けば水圧差で排出でき、流水中の懸濁物質を全量除去できる利点はあるが、微細粒子が多量に流入してくると、スクリーンは目幅以下のものまで捕捉してケーキろ過となる。フイルター面は定期的又は差圧を検出して自動的に逆洗するか人的に手動逆洗するが、自動的洗浄は設定圧力損失が増大すると流体管を断水しなければスクリーンを洗浄できず、手洗浄では人手を要し、自動化では電気機器等が必要となる。特に、不測の火災等で大量の水を使用する場合、管路内堆積の懸濁物質が管内流速の上昇と共に、一度に流れ出しフイルターを閉塞する恐れがある。抵抗物であるスクリーンを流水中に入れることは、水流抵抗が大きくなり好ましくない。また、拡幅方式は、管路拡大による流速の低下により流下する懸濁物質は沈降分離するが、低流速で浮遊するシールコート類には沈降しないため適さない。沈降した砂類も管内流速が変化して流速が上昇すると、再浮上して流下することが多い。
【0005】
従来の異物回収装置を移動車両に搭載した循環方式の異物の回収装置は、迅速に配水管の補修工事、取替え工事の現地に移動できるものであるが、管路に垂直に設置された消火栓等の分岐管から沈降性砂などを浮遊排出させるためには、管内流速が必要となる。消火栓から懸濁物質を排出する従来の方法は、配水管の分岐部内側付近に局所的な乱流を発生させ、乱流に乗って懸濁物質を消火栓に移動させている。一般的な管内運用流速の0.5m/sでは2〜4mmの粒径の砂等は浮遊せずに管底を移動するため、立設した分岐管に懸濁物質の流入が困難で管底に堆積し、管路が閉塞する恐れもある。また、分岐管に垂下したホースを流水管の上流側に開口する夾雑物排出装置は、簡単な装置で夾雑物を除去できるものであるが、浮遊する比重の小さい異物や粒径の大きい異物は、水圧だけでは排出が困難である。この発明は、消火栓や工事対象配水管近傍に一時的に設置が可能で、配水管の断水を発生させずに、配水管の管底部を流下する沈降性物質だけでなく、管内全体を流動する浮遊性物質も捕集できる管内濁質除去装置とその吸込ノズルの設置方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の管内濁質除去装置の要旨は、配水管の流水を吸込側の循環配管に抜き出して、流水中に含まれる懸濁物質を濁質除去ユニットで分離した後、分離水を配水管に返送させる濁質回収装置において、配水管の分岐管にノズル収納ケースを着脱自在に立設し、ノズル収納ケースに垂下した吸込管の下端部に可撓性の吸込ノズルを連結すると共に、吸込ノズルを配水管の上流側の管底に摺接させて先端部の先端ノズルを管頂方向に拡開し、吸込ノズルの曲折部に中間ノズルを配設したもので、管頂方向に広がる形状の先端ノズルは、管底を流下する比重大、粒径大の砂等の懸濁物質を捕集でき、管路全体の流体に均一に浮遊流動しながら流下する懸濁物質も、中間ノズルから吸込むことができる。そして、濁質回収装置は工事対象配水管近傍に一時的に取り付けが可能となり、現地施工とメンテナンスが簡単で設置スペースの小さい管内濁質除去装置となる。また、消火栓を利用することも可能であり、ノズル収納ケースを取外すことなく、消火活動を行うこともできる。
【0007】
他の発明の管内濁質除去装置は、配水管の上流側と下流側の分岐管にノズル収納ケースを着脱自在に立設し、上流側のノズル収納ケースに吸込管を挿通して、吸込管に連結した可撓性の吸込ノズルを配水管に垂下して、吸込管を循環配管の吸込側に接続し、下流側のノズル収納ケースに循環配管の吐出側を接続したもので、循環配管からの戻り流れが配水管を流下する水流を乱すことがなく、吸込ノズルの懸濁物質の吸引に影響を与えることもない。そして、配水管に垂下する吸込ノズルの吸引面積は、配水管の管径の1/15〜1/20とし、先端ノズルの吸引面積を中間ノズルの吸引面積より大きくしたもので、吸引箇所が先端ノズルと中間ノズルに分かれても、先端ノズルでの流速低下がなく、吸引効果を損なうことがない。そして、配水管の管断面積に対しノズル断面積が大きくなり、懸濁物質の流向変化に対応できる。
【0008】
互換性を有するノズル収納ケースの構造は、ノズル収納ケースの分岐管にボール弁を介してノズル収納ケースを立設し、ノズル収納ケースの上端部に接続口と側壁に吐出口を配設して、ノズル収納ケースの接続口に嵌着したシール部材に吸込管の基端部を摺動自在に吊設すると共に、吸込管の吸込口に開閉弁を介して循環配管の吸込側を連結し、ノズル収納ケースの吐出口に開閉弁を介して循環配管の吐出側を連結したもので、分岐管に立設した一つのノズル収納ケースに循環配管の吸込側と吐出側を接続することも、或いは、配水管の上流側と下流側の分岐管に立設したノズル収納ケースに循環配管の吸込側と吐出側をそれぞれ接続することも可能となる。そして、ノズル収納ケースを配水管の上流側と下流側に配設する管内濁質除去装置では、管底に摺接させた吸込ノズルより下流側の配水管に膨縮式空気止水弁を配設し、ノズル収納ケースに挿入した空気供給管に連通させてもよいもので、配水管を局部的に止水して強制循環を付与し、全水量の流水から懸濁物質が除去できる。必要時にのみ止水して、懸濁物質が除去できる。
【0009】
管内濁質除去装置の吸込ノズルの設置方法は、配水管の分岐管にノズル収納ケースを立設し、ノズル収納ケースの接続口に吸込管とガイド杆を摺動自在に吊設して、吸込管に連結した可撓性の吸込ノズルの下方近傍にガイド杆の下端の案内ガイドを配置し、吸込ノズルと案内ガイドを配水管に降下させた後、吸込ノズルを案内ガイドの湾曲傾斜面に案内させて曲折し、配水管の管底に摺接させて先端部の先端ノズルを上流側の管頂の方向に拡開し、吸込ノズルの湾曲面に中間ノズルを開口し、吸込管の吸込口とノズル収納ケースの吐出口に循環配管の吸込側と吐出側をそれぞれ接続する管内濁質除去装置の設置方法であり、吸込管に連結した可撓性の吸込ノズルをガイド杆の案内ガイドに摺接させて配水管に適切に挿入設置させることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係わる管内濁質除去装置は、上記のように構成してあり、管路底部に設置する吸込ノズルの先端ノズルから管底を流下する比重大・粒径大の砂などの懸濁物質を捕集し、管路全体の流水に均一に浮遊流動する懸濁物質は、吸込ノズルの曲折部の中間ノズルから、流体を乱すことなく吸込むことができる。そして、砂の混入や錆の剥離が予想される流域の配水管に一時的に取り付けが可能となり、管内濁質除去装置を固定化する必要がない。消火栓を利用すれば、配水管の断水状態等の不測の事態が発生せずに、安定した水道水等の供給が行なわれ、ノズル収納ケースを取外すことなく、消火活動が行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明に係る管内濁質除去装置を図面に基づき詳述すると、図1は分岐管にノズル収納ケースを連結して配水管に吸込ノズルを設置した管内濁質除去装置の縦断面図であって、上水、工業用水等の配水管1から分岐した分岐管2にボール弁3を配設して、ボール弁3にノズル収納ケース4を着脱自在に連結してある。ノズル収納ケース4の上端部に接続口5とノズル収納ケース4の側壁に吐出口6が開口してあり、ノズル収納ケース4の接続口5に嵌着したシール部材7に吸込管8の基端部が摺動自在に吊設してある。ノズル収納ケース4から突設した吸込管8の上端部の吸込口9に開閉弁10を介して循環配管11の吸込側を接続し、ノズル収納ケース4の側壁の吐出口6に開閉弁12を介して循環配管11の吐出側を接続してある。ノズル収納ケース4に垂設した吸込管8の下端部に可撓性の吸込ノズル13を連結してあり、吸込ノズル13を配水管1に垂下して設置してある。
【0012】
図2は配水管に垂下した吸込ノズルの要部拡大図であって、吸込管8の下端に連結した可撓性の吸込ノズル13は、配水管1の上流側Hに曲折してあり、吸込ノズル13は配水管1の管底1aに摺接させて先端部の先端ノズル13aを、上流流線(管中心線)Mに対し上流側Hの管頂1bの方向に広がる形状としてあり、管底1aを流下する比重大、粒径大の砂等の濁質を捕集できる構造としてある。図3は配水管に垂下して吸込ノズルに開口した先端ノズルと中間ノズルの正面図であって、配水管1の上流側Hに向かって曲折した吸込ノズル13の湾曲面に中間ノズル13bが開口してあり、管路全体の流体に均一に浮遊しながら流下する懸濁物質の捕集が行える。なお、中間ノズル13bは配水管1の口径に応じて複数個配設してもよいもので複数個の中間ノズル13b・・・を配設すれば、配水管1の上中部を流動する浮遊性物質の捕捉効果を高める。
【0013】
図2及び図3に示すように、吸込ノズル13の吸引面積Aは、配水管径の1/15〜1/20が最良となるが、吸込ノズル13の吸引箇所が先端ノズル13aと中間ノズル13bに増えるため、先端ノズル13aでの流量低下(流速低下)となり、吸引効果が損なわれる恐れがある。それを回避するため、先端ノズル13aの吸引面積A’と中間ノズル13bの吸引面積A”の関係は下記のようになる。
A:全体の吸引面積(概ね配水管径の1/15〜1/20)
A’:先端ノズル部の吸引面積
A”:1個当りの中間ノズル孔の吸引面積
α:中間ノズル孔の個数(1または複数個)
A=(A’+α×A”)(A’>α×A”)
先端ノズル13aの吸引面積A’を中間ノズル13bの吸引面積α×A”より大きくすれば、先端ノズル13aでの流量低下(流速低下)となる恐れはなく、配水管1の管底1aを流下する比重大、粒径大の砂等の濁質も捕集できる。中間ノズル13bを設けることにより、配水管1の管断面積に対し全吸引面積A=(A’+α×A”)が大きくなり、懸濁物質の流向変化に対応できる。
【0014】
図4はノズル収納ケースに垂設した吸込管の縦断面図であって、ノズル収納ケース4の接続口5に吊設した吸込管8に隣接して、ガイド杆14が配水管1の下流側Lに配設してあり、ノズル収納ケース4の上端部の接続口15に嵌着したシール部材16に摺動自在に吊設してある。ガイド杆14の下端に上流側Hに湾曲傾斜させた案内ガイド14aが配設してあり、ガイド杆14の下端を下流側Lに曲折させた返り部14bを設けてある。吸込管8に連結した吸込ノズル13の配水管1への設置方法は、可撓性の吸込ノズル13の下方にガイド杆14の湾曲傾斜させた案内ガイド14aを配置し、ボール弁3を開放して、吸込管8とガイド杆14を降下させ、分岐管2から配水管1の所定の位置まで吸込管8に連結した吸込ノズル13とガイド杆14の案内ガイド14aを垂下させる。図5はガイド杆を使用して吸込ノズルを配水管に設置した縦断面図であって、吸込管8をさらに垂下して、吸込ノズル13を上流側Hに湾曲傾斜させた案内ガイド14aに案内させて、可撓性による反発力により吸込ノズル13を曲折させる。吸込ノズル13を配水管1の管底1aに角度を持って接触させながら所定距離を移動させて、吸込ノズル13の先端ノズル13aを上流側Hの管頂1b方向に広がる形状として、配水管1の上流側Hに適切に設置できる。ガイド杆14を引き抜く際には、ガイド杆14の下端に返り部14bを設けたので、吸込ノズル13にガイド杆14の案内ガイド14aが係合されることもなく、ガイド杆14の上部引抜きが容易となる。吸込管8の上端部の吸込口9とノズル収納ケース4の側壁の吐出口6に開閉弁10、12を介して循環配管11を接続すれば、管内濁質除去装置を構成する。
【0015】
図6は管内濁質除去装置のフローチャートであって、吸込管8の吸込口9とノズル収納ケース4の吐出口6に接続した循環配管11に流水中の濁質を除去する濁質除去ユニット17が配設してある。濁質除去ユニット17は配水管1の懸濁物質を含む流水を循環配管11に吸引する吸水ポンプ18と、流水に含まれる浮遊物、錆、砂等の比較的大きい固形物を分離するストレーナ19と、微細粒子を分離する膜装置20が配設してある。膜装置20を設置すれば、水道水に含まれる赤水等の原因となる微細な鉄錆の除去も可能となる。ストレーナ19と膜装置20が目詰まりした時に、循環配管11の流路を切り替える開閉弁21・・・が配設してあり、懸濁物質が濁質除去ユニット17に配設した自家発電機22と制御盤23で吸水ポンプ18と開閉弁21・・・を操作して逆洗する。濁質除去ユニット17は自動車の車台に積載して移動可能としてもよいもので、緊急の漏水工事や配水計画変更によるバルブ操作等、砂の混入や錆の剥離が予想される流域に移動して、配水管1の消火栓等の分岐管2に濁質除去ユニット17を連結すれば、緊急を要する濁質除去が行える。工事対象の配水管1の近傍に一時的に取り付けが可能となり、下流への濁質の流下を阻止し、水道水等の濁質問題を容易に軽減できる。捕集された濁質を洗浄する水量は、運転中はストレーナ19での洗浄のみ必要で、従来の洗管作業の濁質とともに廃棄する水量に比べ、最小限の洗浄排水のみを排出するだけでよい。また、膜装置20の洗浄においては、作業終了後に簡易洗浄程度でよい。
【0016】
図7は配水管の上流側と下流側の分岐管に配設する濁質除去装置の構成図であって、配水管1の上流側Hと下流側Lの分岐管2、2にノズル収納ケース4、4を着脱自在に連結してある。上流側Hのノズル収納ケース4に挿通した吸込管8の下端部の吸込ノズル13を配水管1に垂下して、吸込管8の吸込口9に開閉弁10を介して循環配管11の吸込側に接続し、下流側のノズル収納ケース4の吐出口6を開閉弁12を介して循環配管11の吐出側に接続してある。上流側Hの吸込管8から吸上げた流水から濁質除去ユニット17で懸濁物質を分離し、分離水を下流側Lのノズル収納ケース4から配水管1に返送させる。循環配管11からの戻り流れが配水管1を流下する水流を乱すことがなく、吸込ノズル13の懸濁物質の吸引に影響を与えることもない。
【0017】
図7に示すように、先端部に収縮させた膨縮式空気止水弁24に連結した空気供給管25を、上流側Hのノズル収納ケース4の吐出口6から挿入し、分岐管2から配水管1に垂下して、吸込ノズル13より下流側Lの配水管1に膨縮式空気止水弁24を設置してある。地上の空気供給装置26から空気供給管25に圧縮空気を供給し、膨張式空気止水弁24を膨張させて配水管1を止水して、吸込管8の上端部に配設した開閉弁10を開放すれば、配水管1に流れる全水量の流水を循環配管11に流入させて、濁質除去ユニット17で懸濁物質を除去し、下流側Lの配水管1に分離水を流下させることができる。図8は吸込管より下流側の配水管に膨縮式空気止水弁を配設した他の実施例の濁質除去装置であって、循環配管11の吐出側を下流側Lのノズル収納ケース4の吐出口6に連結してあり、ノズル収納ケース4の接続口5から空気供給管25を挿入して、空気供給管25に接続した膨縮式空気止水弁24を下流側Lの分岐管2より上流側Hの配水管1に配設してある。なお、上流側Hと下流側Lの配水管1の間に仕切弁があれば、その仕切弁を利用して配水管1に流れる全水量の流水を循環配管11に流入させてもよいものである。
【0018】
配水管1に配設した消火栓は分岐管2として利用できるもので、懸濁物質除去の機器類が配水管1に取付けられていないため、配水管1の断水状態等の不測の事態が発生せず、安定した水道水等の供給が行える。ノズル収納ケース4に消火ホースを着脱自在とすれば、ノズル収納ケース4を取外すことなく、消火活動を行うこともできる。消火栓を利用すれば、目詰まりにより、ケーキろ過が発生する可能性がある従来の埋設型ストレーナに比べ、圧力損失を抑えることができ、工事費用が発生せずに経済的である。砂の混入や錆の剥離が予想される流域の配水管1の消火栓にノズル収納ケース4を連結すれば、工事対象の配水管1の近傍の砂の混入や錆の剥離が予想される流域に、一時的に取り付けが可能となる。特別な固定構造物を配置する必要がなく、現地施工とメンテナンスが簡単で設置スペースの小さい管内濁質除去装置となり、循環配管の循環用のポンプ動力を抑えることもでき、経済的である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明の管内濁質除去装置は上記のように構成してあり、吸込ノズルを配水管の上流側の管底に摺接させて先端部の先端ノズルを管頂方向に拡開させ、吸込ノズルの曲折部に中間ノズルを配設したもので、管底に流動または堆積する懸濁物質だけでなく、配水管の全体に浮遊流動する懸濁物質の捕集が可能となる。そして、消火栓や工事対象配水管近傍に一時的に設置が可能となり、現地施工とメンテナンスが簡単で設置スペースの小さい管内濁質除去装置となる。ノズル収納ケースを取外すことなく、消火活動を行うこともできる。従って、住民からの苦情のあるポイント設置の他、配管工事箇所の下流側に一時的に設置が可能であり、上水や工業用水等の配水管の管内濁質除去装置に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る管内濁質除去装置の、分岐管にノズル収納ケースを連結して配水管に吸込ノズル設置した縦断面図である。
【図2】同じく、配水管に垂下した吸込ノズルの要部拡大図である。
【図3】同じく、配水管に垂下して吸込ノズルに開口した先端ノズルと中間ノズルの正面図である。
【図4】同じく、ノズル収納ケースに垂設した吸込管の縦断面図である。
【図5】同じく、ガイド杆を使用して吸込ノズルを配水管に設置した縦断面図である。
【図6】同じく、管内濁質除去装置のフローチャートである。
【図7】同じく、上流側と下流側の配水管にノズル収納ケースを配設した濁質除去装置の構成図である。
【図8】同じく、吸込管より下流側の配水管に膨縮式空気止水弁を配設した他の実施例の濁質除去装置の構成図である。である。
【符号の説明】
【0021】
1 配水管
1a 管底
1b 管頂
2 分岐管
4 ノズル収納ケース
5、15 接続口
6 吐出口
8 吸込管
9 吸込口
11 循環配管
13 吸込ノズル
13a 先端ノズル
13b 中間ノズル
14 ガイド杆
14a 案内ガイド
17 濁質除去ユニット
24 膨縮式空気止水弁
25 空気供給管
H 上流側
L 下流側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配水管(1)の流水を吸込側の循環配管(11)に抜き出して、流水中に含まれる懸濁物質を濁質除去ユニット(17)で分離した後、分離水を配水管(1)に返送させる濁質回収装置において、配水管(1)の分岐管(2)にノズル収納ケース(4)を着脱自在に立設し、ノズル収納ケース(4)に垂下した吸込管(8)の下端部に可撓性の吸込ノズル(13)を連結すると共に、吸込ノズル(13)を配水管(1)の上流側(H)の管底(1a)に摺接させて先端部の先端ノズル(13a)を管頂(1b)方向に拡開し、吸込ノズル(13)の曲折部に中間ノズル(13b)を配設したことを特徴とする管内濁質除去装置。
【請求項2】
上記配水管(1)の上流側(H)と下流側(L)の分岐管(2、2)にノズル収納ケース(4、4)を着脱自在に立設し、上流側(H)のノズル収納ケース(4)に吸込管(8)を挿通して、吸込管(8)に連結した可撓性の吸込ノズル(13)を配水管(1)に垂下して、吸込管(8)を循環配管(11)の吸込側に接続し、下流側(L)のノズル収納ケース(4)に循環配管(11)の吐出側を接続したことを特徴とする請求項1に記載の管内濁質除去装置。
【請求項3】
上記吸込ノズル(13)の吸引面積(A)を配水管(1)の管径の1/15〜1/20とし、先端ノズル(13a)の吸引面積(A’)を中間ノズル(13b)の吸引面積(α×A”)より大きく(A’>α×A”)したことを特徴とする請求項1又は2に記載の管内濁質除去装置。
【請求項4】
上記分岐管(2)にボール弁(3)を介してノズル収納ケース(4)を立設し、ノズル収納ケース(4)の上端部に接続口(5)と側壁に吐出口(6)を配設して、ノズル収納ケース(4)の接続口(5)に嵌着したシール部材(7)に吸込管(8)の基端部を摺動自在に吊設すると共に、吸込管(8)の吸込口(9)に開閉弁(10)を介して循環配管(11)の吸込側を連結し、ノズル収納ケース(4)の吐出口(6)に開閉弁(12)を介して循環配管(11)の吐出側を連結したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の管内濁質除去装置。
【請求項5】
上記管底(1a)に摺接させた吸込ノズル(13)より下流側(L)の配水管(1)に膨縮式空気止水弁(24)を配設し、ノズル収納ケース(4)に挿入した空気供給管(25)に連通させたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の管内濁質除去装置。
【請求項6】
配水管(1)の分岐管(2)にノズル収納ケース(4)を立設し、ノズル収納ケース(4)の接続口(5、15)に吸込管(8)とガイド杆(14)を摺動自在に吊設して、吸込管(8)に連結した可撓性の吸込ノズル(13)の下方近傍にガイド杆(14)の下端の案内ガイド(14a)を配置し、吸込ノズル(13)と案内ガイド(14a)を配水管(1)に降下させた後、吸込ノズル(13)を案内ガイド(14a)の湾曲傾斜面に案内させて曲折し、配水管(1)の管底(1a)に摺接させて先端部の先端ノズル(13a)を上流側(H)の管頂(1b)の方向に拡開し、吸込ノズル(13)の湾曲面に中間ノズル(13b)を開口し、吸込管(8)の吸込口(9)とノズル収納ケース(4)の吐出口(6)に循環配管(11)の吸込側と吐出側をそれぞれ接続したことを特徴とする管内濁質除去装置の吸込ノズルの設置方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−38396(P2008−38396A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211562(P2006−211562)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】