説明

管搬送用台車

【課題】台車及び新管を搬入する竪坑等の作業スペースを小さくする。
【解決手段】台車10の前後にゴム製補助車輪13a、13b、14a、14bを設ける。その両補助車輪でもって、台車10を新管B内にその内面を傷つけることなく、両方向に貫通走行することができる。このため、竪坑等の作業スペースでは、台車10を既設配管路A内に退避させた状態で、新管Bをその作業スペースに降ろし、その新管B内に既設配管路A内の台車10を後側の補助車輪14を突出させた状態で後進させて挿入して支持することができる。台車10を既設配管路A内に退避させ得れば、その作業スペースは、台車10を設置するスペースが必要でなくなり、それだけ、狭いものとし得る。また、既設配管路A内での新配管との接合後には、新管B内に台車10を前側の補助車輪13を突出させた状態で後進させて退避させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、老朽化した既設水路トンネル又は既設管水路等に新管を順々に挿入してその各新管を継ぎ合わせて新配管を形成し、その新配管と前記既設水路トンネル等の間に新管の注入口を介してグラウト材を充填するパイプイントンネル工法等において、前記既設配管路等内に管を搬入するための管搬送用台車及びその台車による管の搬送方法、並びに管の搬送継合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、上下水管路、農業用水配管路等として、過去に、ボックスカルバート、ヒューム管等により形成した既設水路トンネル又は既設管水路が老朽化した場合、それらのトンネル等内に、新管を順々に挿入して新配管を形成する等のパイプイントンネル工法により、その水路を更新することが行われている。
【0003】
また、地中にガス導管などの配管を設置する際、その導管の防食被覆の損傷防止や敷設後の配管保護のために、その導管の外側に鞘管を設ける工法が行われている。以下、このトンネル等のように地中横方向に筒状の空間を形成した構造物を、総称して「既設配管路」と称し、その既設配管路内に配設される導管、新管からなる配管を「新配管」という。
【0004】
これらの工法は、更新する既設配管路の両端に竪坑等を形成して、新管の搬入等の作業スペースを確保し、そのスペースに新管を降した後に既設配管路内に搬入する。その搬送には台車が使用され、その台車に、新管内周面側から新管を支持するとともに、新管の前後において新管外に突出する前後の走行車輪により前記既設配管路内を走行するようにしたものがある。
この台車は、新管を支持する部材が、前後走行車輪しか新管外面から突出しないため、既設配管路内面と新管外面の間隙を最小にできる。このため、既設配管路内への新管の配設による既設配管路の流通断面積の減少を最小限に抑え得る利点を有する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−33599号公報
【0005】
また、その台車において、既設配管路内に新管を挿入する際、及び挿入搬送後に台車を新管から引き出す際、前輪(前側走行車輪)が新管内面を走行するため、台車前側部分(走行方向前側)にゴム製の補助車輪を設けて、その挿入及び引き出しの際には、その補助車輪を新管内面に当接させると共に、前輪を新管内面レベルより上方位置に退避させ、その補助車輪でもって新管内面を走行して、その内面を傷つけないようにしたものもある(特許文献1参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、上記台車に新管を載せる(支持する)作業は、上記竪坑などの作業スペース内で行われ、台車を作業スペース内の新管搬入位置後方に位置させた状態で、新管を作業スペース内に搬入し(降ろし)、その新管内に後方の台車を前進挿入して支持している。
このため、作業スペースは、台車及び新管を設置する大きさが必要であり、さらに、その台車を牽引・押し出しするバッテリー・ロコ(蓄電池式の坑内電車)等の収納スペースも必要である。
しかし、今日では、竪坑などの作業スペースを広く確保することは困難となっており、できるだけ、省スペース化することが望まれている。
【0007】
また、その台車に新管を支持する際、台車を新管の後方からその内部に挿入し、その支持状態で既設配管路内に挿入搬送後、台車を新管から引き出す際には、台車を後方に引き出すこととなり、台車の後側は新管内を通らないため、新管内面を傷つけない補助車輪は台車の前側にしか設けていない(特許文献1参照)。
【0008】
この発明は、広い作業スペースを確保できない今日に鑑み、上記台車及び新管等を搬入する作業スペースを小さくし得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は、台車の前後に上記補助車輪を設け、かつその後側補助車輪を後側の走行車輪より外側としたのである。
前後に補助車輪があれば、まず、その両補助車輪を新管内面に当接することにより、その両補助車輪でもって、台車を新管内にその内面を傷つけることなく前後方向何れも挿通走行することができる。
【0010】
つぎに、後側走行車輪の後側に補助車輪を設ければ、台車を、既設配管路内に退避させた状態から、作業スペースに降ろした新管内に後進させて挿入する際、後側走行車輪が新管に至る前に、その補助車輪が新管内に入るため、その補助車輪を突出状態とすれば、その補助車輪と前側走行車輪でもって、台車は新管内を走行させ得る。このため、その走行時、後側走行車輪を上げておけば、その走行車輪が新管内面に触れず、傷つけることもない。
【0011】
このように、台車を既設配管路内に退避させ得れば、その作業スペースは、台車を設置するスペースが必要でなくなり、それだけ、狭いものとし得る。また、既設配管路内での新配管との接合が終了すれば、台車の前側の補助車輪を突出させるとともに前側走行車輪を新管内面レベルより上方位置に退避させ、その状態の台車を新管内を後退させて引き出す。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、台車の前後に上記補助車輪を設け、かつその後側補助車輪を後側の走行車輪より外側としたので、台車を新管内にその内面を傷つけることなく挿通走行することができ、台車を既設配管路内に退避させ得て、竪坑等の作業スペースを従来に比べて小さいものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施形態としては、地中に敷設された既設配管路内に新管を順々に挿入してその各新管を継ぎ合わせて新配管を形成する際、その新管を前記既設配管路内に搬送する台車において、前記新管に挿入されてその両端が新管の両端から突出する長さを台車フレームが有し、前記新管にその台車フレームが挿入された状態で、その新管の両端から出る台車フレームの両端に既設配管路の内面に接する走行車輪をそれぞれ設けるとともに、その後側走行車輪の後側の台車フレームに新管の内面に接する上記補助車輪を設け、前側走行車輪の前側又は後側の台車フレームに新管の内面に接する上記補助車輪を設けて、前記走行車輪及び補助車輪を、選択的に走行車輪が既設配管路の内面に当接又は補助車輪が新管Bの内面に当接するとともに、走行車輪が既設配管路の内面に接している際には補助車輪が、補助車輪が新管の内面に接している際には走行車輪が、それぞれ新管の内面レベルより上方位置に退避可能とし、かつ、台車フレームには新管をその内面上部に当接して持ち上げるアームを設けた構成を採用できる。
【0014】
この構成において、後側補助車輪が外側(後側走行車輪の後側)のみであると、新管内への台車の挿入時、後側走行車輪が新管の後端から突出するまで、新管をその外補助車輪で支えておらねばならず、その外補助車輪は、既設配管路内面を走行させることとなる。
このため、後側走行車輪の前側台車フレームにも補助車輪(内補助車輪)を設け、後側走行車輪の新管の後端からの突出時、その内補助車輪が新管内面に当接しているようにすれば、その内補助車輪でもって台車の後側を支持し得るため、その突出時、後側走行車輪の前側台車フレームに設けた補助車輪(外補助車輪)は上昇させて既設配管路内面から退避させておくことができる。退避すれば、既設配管路内面の走行による損傷の恐れはない。
【0015】
また、前側走行車輪の前側の台車フレームに新管の内面に接する上記補助車輪(外補助車輪)を設ければ、既設配管路内での新管と新配管との接合時、その外補助車輪を新配管内面に当接させて、その補助車輪と後側走行車輪でもって、台車を新管内面上と新配管内面上に支持することとなり、前側走行車輪の後側の台車フレームに新管の内面に接する補助車輪(内補助車輪)を設ければ、その接合時、その内補助車輪を新管内面に当接させて、その内補助車輪と後側走行車輪でもって、台車を新管内面上で支持することとなる。この作用を成す限りにおいて、その前側補助車輪の位置及び数は、使用態様により適宜に決定すればよいが、前側走行車輪の前後に設けることが好ましい(内外補助車輪の両者を設けることが好ましい)。
【0016】
なお、各補助車輪は、従来と同様に、新管内面を傷つけないものとする必要があり、その外周面の素材としては、例えば、樹脂、ゴム等の公知のものを使用する。そのとき、車輪全体をその素材で形成することもできる。
【0017】
上記走行車輪及び補助車輪を、選択的に走行車輪が既設配管路の内面に当接又は補助車輪が新管の内面に当接するとともに、走行車輪が既設配管路の内面に接している際には補助車輪が、補助車輪が新管の内面に接している際には走行車輪が、それぞれ新管の内面レベルより上方位置に退避可能とする作用を成す手段としては、例えば、走行車輪又は補助車輪を上下動可能とし、その上下動により、走行車輪と補助車輪のレベルを相対的に上下させて、その上方位置への退避作用を成して他の車輪の走行に支障がないようにする。また、走行車輪及び補助車輪の両者を上下動するようにもし得る。この場合には、それらを個々に上下動させてその上方位置への退避作用をなす。
【0018】
上記アームに新管をその軸方向に移動させる車輪を設ければ、その軸方向の移動がスムースとなる。また、アームに新管のその周方向の回転を許容し得る手段を設ければ、断面馬蹄形管のように、円筒管でない新管の場合には、回転させることにより、新配管の接合端面と一致させる(芯だしする)ことができて、作業性が良い。その手段としては、ローラなどを採用する。
【0019】
これらの台車を使用して、新管を既設配管路内に搬送する方法としては、その台車を既設配管路の一端内に挿入した状態で、新管を既設配管路の一端手前の作業スペースに搬送し、前記台車を、その後側補助車輪を新管の内面に接しさせるとともに後側走行車輪を新管の内面レベルより上方位置に退避させた状態として、その台車を前記新管内に前記補助車輪を介し走行させて挿入し、その後側走行車輪が新管B後端から出た時点で、後側走行車輪を既設配管路の内面に降ろすとともに、上記アームを新管内面上部に当接させて新管を持ち上げて、台車に新管を支持し、その状態で、台車を走行させて、既設配管路内にその他端に向かって新管を搬送する構成を採用できる。
【0020】
この搬送方法において、その台車を,後側走行車輪の内側の台車フレームにも補助車輪を設けたものであれば(後側走行車輪の前後に外内補助車輪を設ければ)、作業スペースの新管内に後側外補助車輪及び前側走行車輪を介し走行させて挿入し、その走行行程途中で後側内補助車輪を降ろして新管の内面に接しさせ、後側走行車輪が新管の後端から出た時点で、その後側の走行車輪を既設配管路の内面に降ろすとともに後側内補助車輪を新管Bの内面レベルより上方位置に退避させる方法を採用できる。
【0021】
このとき、台車の新管内の走行行程途中で、後側内補助車輪を降ろして新管の内面に接しさせる代わりに、後側外補助車輪を新管の内面に接しさせるとともに、後側内補助車輪を新管の内面に接する高さに位置させて、その後側外補助車輪が新管内に入った時点でその内面に当接するようにし得る。
【0022】
これらの構成であれば、後側走行車輪が新管の後端から出た時点では、台車の後側を内補助車輪が新管内で支えているため、上記のように、外補助車輪を既設配管路内面に走行させる必要がなくなり、外補助車輪は既設配管路の内面に触れることは殆ど無く、その走行による損傷の恐れはない。
但し、その外補助車輪の既設配管路内面への接触を確実になくすには、台車の新管内の走行行程途中で、後側外補助車輪を新管の内面レベルより上方位置に退避させることが好ましい。
【0023】
これらの管の搬送方法により、新管を支持した台車を走行させて、既設配管路内にその他端に向かって新管を搬送して新配管の一端に至れば、前記台車の前側補助車輪を新管内面に降ろす、又は前側補助車輪をその新配管の一端内面に挿入してその内面に降ろすとともに前側の走行車輪を新管の内面レベル以上に退避させ、その状態で、搬送してきた新管を新配管に接続し、その後、台車を後退させてその前側走行車輪が搬送してきた新管の後端を出た時点で、その前側走行車輪を既設配管路の内面に降ろし、その後、前後の走行車輪でもって、台車を既設配管路一端の作業スペースまで走行する。
【0024】
このとき、上記台車を、前側走行車輪1の前後の台車フレームに補助車輪を設けたもの(内外補助車輪を設けたもの)とすれば、その台車を走行させて、既設配管路内にその他端に向かって新管を搬送して新配管の一端に至れば、外補助車輪をその新配管の他端内面に挿入してその内面に降ろすとともに前側の走行車輪を新管の内面レベル以上に退避させるようにし得る。
【0025】
また、新管が断面馬蹄形のもの場合には、アームに新管のその周方向の回転を許容する得る手段を設けた台車を使用し、その新管を新配管に接続する際、新管を回転させて、その新管と新配管の芯だしを行った後、新管を新配管に接続する。
【実施例】
【0026】
台車10の一実施例を図1〜図6に示し、この実施例は、四角枠状に台車フレーム11の前後左右に、前側走行車輪12a及び後側走行車輪12b、前側外補助車輪13a及び内補助車輪13b、後側外補助車輪14a及び内補助車輪14bがそれぞれ設けられている。以下、前後の走行車輪12a、12bの総称符号を12、前側補助車輪13a、13bの総称符号を13、後側補助車輪14a、14bの総称符号を14とする。
【0027】
走行車輪12は、鉄製であって、既設配管路A内面全長に亘って予め設置されたレール1に嵌って、列車の車輪のごとく走行する。補助車輪13、14は、ウレタンゴムからなって、強化プラスチック複合管(FRPM)からなる新管Bの内面を走行しても傷を付けないようになっている。これらの各車輪12、13、14は、台車フレーム11の幅方向の支持杆15の下面両端に設けられ、その支持杆15が台車フレーム11に設けた軸受16にロッド17を介して昇降自在になっており、その昇降により、車輪12、13、14も昇降する。
【0028】
走行車輪12の支持杆15の中央には、台車10に設けた油圧ジャッキ18のロッド18aが連結されており、このロッド18aの進退により、支持杆15が昇降し、後述の既設配管の内面に接する(降りる)位置(レベル)と新管Bの内面レベル(位置)より上位の位置を昇降する。その昇降において、走行車輪12が新管Bの内面レベルより上位にあるとき、補助車輪13、14は、その位置より下位にあって走行車輪12が邪魔になることなく新管Bの内面に接する(降りる)ことができる。
【0029】
補助車輪13、14の支持杆15の中央には、台車フレーム11に設けた手動のジャッキ19が設けられており、そのハンドル(ラチェットレンチ)19aを回すことにより、支持杆15が昇降して、補助車輪13、14が昇降するとともに、上下方向の任意位置に固定可能である。このため、このジャッキ19により、走行車輪12の昇降長さに対する補助車輪13,14の位置を適宜に設定することにより、走行車輪12の昇降に基づく、走行車輪12の既成配管A内面への載置及び補助車輪13、14の新管B内面への載置が確実になされるようにし得る。
【0030】
台車10の後側の縦フレーム21の上面前後左右に新管Bの周方向移動用ローラ22及び軸方向移動用ローラ23が設けられている。そのローラ22、23は、上記走行車輪12等と同様に、台車10の幅方向の支持杆25の上面両端に設けられ、その支持杆25が縦フレーム21に設けた軸受26にロッド27を介して昇降自在になっている。その両支持杆25の中央には、縦フレーム21に設けた油圧ジャッキ28のロッド28aが連結されており、このロッド28aの進退により、支持杆25が昇降して、ローラ22、23が新管Bの上方内面に接離する(図2、図4、図5参照)。
【0031】
台車フレーム10の前側上面左右に今一つの新管Bの周方向移動用ローラ32が配置され、そのローラ32、32は、台車フレーム11から立ち上がった支持脚33に設けられている。その支持脚33には移動体34が上下移動自在に嵌り、その移動体34は、両支持脚33の連結部材33aに設けた油圧ジャッキ35のロッド35aの上端が固定されており、このロッド35aの進退により、移動体34が昇降して、ローラ32が新管Bの上方内面に接離する。ローラ32の軸にはハンドル36が設けられており、そのハンドル36を回すことによりローラ32が回転する。このため、このローラ32を新管Bの内面に当接して回せば、それにつれて、新管Bが回る(自転する)。なお、移動体34は、支持脚33に設けた軸受37にロッド38を摺動自在に嵌めて昇降を円滑かつ正確に行うようになっている(図2、図6参照)。
【0032】
因みに、この実施例では、請求の範囲で言う「アーム」は、台車10の後側にあっては、縦フレーム21、支持杆25、軸受26、ロッド27、油圧ジャッキ28、ロッド28a及びーラ22、23で構成され、前側にあっては、支持脚33、移動体34、軸受37、ロッド38、油圧キャッキ35、ロッド35a及びローラ32で構成される。
【0033】
各油圧ジャッキ18、28、35は、台車フレーム11の後側に設けた手動の油圧ユニット40から開閉弁、圧力計等を介して油圧ホース(図示せず)が適宜に接続されており、その油圧ユニット40を作動するとともに、各開閉弁を適宜に開閉することにより、各油圧ジャッキ18、28、35に選択的に油が給排されて、そのロッド18a、28a、35aが適宜に進退し、走行車輪12が昇降、ローラ22、23、32が昇降する。油圧ユニット40は、手動に代えて、電動機、内燃機関等によって作動するものとし得る。
【0034】
なお、各ローラ22、23及び32は、それぞれ手動のジャッキを介して縦フレーム21等に設けることができ、そのジャッキのハンドルを回すことにより、各ローラを昇降させて上下方向の任意位置に固定可能とし得る。
【0035】
この実施例の台車10は以上の構成であり、つぎに、図7(a)〜(n)を参照し、この台車10を使用して、農業用水のトンネル既設配管路A内に新管Bを順々に挿入してその各新管Bを継ぎ合わせて新配管B´を形成する場合について説明する。その既設配管路Aはその底面全長に亘って2本のレール1が予め設置され、その両端には、竪坑等により、作業スペースSが形成されている。
【0036】
その発進側の作業スペースSには、バッテリー・ロコEが搬入されて、レール1上を自走可能になっているとともに、台車10が搬入され、図7(a)に示すように、この台車10は既設配管路A内に退避した(入れた)状態となっている。この退避により、この作業スペースSは、バッテリー・ロコEを設置でき、かつ新管Bを搬入できる広さを有すればよいこととなる。台車10は、レール1上にあるため、前後の走行車輪12が下方に突出して(降ろされて)レール1に走行可能に係合しており、各補助車輪13、14は新管Bの内面レベルより上位にある。
【0037】
この作業スペースSの後側にバッテリー・ロコEが位置し、台車10が既設配管路A内に退避した状態において、図7(a)に示すように、クレーン等により新管Bを作業スペースSに降ろし、その後、同(b)に示すように、台車10を人力によりその新管Bの前端(他端)内面に後側外補助車輪14aが至るまで走行させ、同(c)に示すように、後側外補助車輪14aを新管Bの内面に降ろすとともに、後側走行車輪12bを新管Bの内面レベルより上位に上昇させる。
【0038】
この状態は、後側走行車輪12bが新管Bの内面レベルより高位にあって、台車10をさらに新管B内に挿入し、図7(e)に示すように、後側走行車輪12bが新管Bの後端(一端)から突出した所で台車10を止める。このとき、前もって、後側内補助車輪14bを新管Bの内面に降ろしておく。その作業は、台車10の新管B内の走行途中の任意位置、例えば、同図(d)に示すように、後側内補助車輪14bが新管B前端(他端)内に至った時点などで行ったり、上記外補助車輪14aの下降と同時でもよいが、前者は、その外補助車輪14aを新管Bの内面に確実に当接できるため、好ましい。
【0039】
その後、後側走行車輪12bを下降させて作業スペースS内のレール1に載置する。このとき、後側内補助車輪14bが新管Bの内面に当接しているため、新管Bは台車10に支持されたレベル状態を維持する。後側走行車輪12bをレール1に載置後、内補助車輪14bを新管Bの内面から離す。外補助車輪14aが下がっておれば、上げる。
【0040】
つぎに、台車10の前後の周方向移動用ローラ22、32を上昇させて新管Bの内面に当接させ、新管Bを持ち上げて台車10で支持する。このとき、前側周方向移動用ローラ32をハンドル36でもって回転させ、新管Bを回転させてグラウト材の注入孔が真上になるようにすると良い。この状態で、バッテリー・ロコEを台車10の後端に接続し、図7(f)に示すように、このバッテリー・ロコEにより、台車10を既設配管路A内をその他端に向かって走行させて、新配管B´の後端(一端)に至らす。
【0041】
新管Bが新配管B´の後端に至れば、図7(g)に示すように、台車10からバッテリー・ロコEを離し、その新管Bの前端(挿し口)外周面のゴム輪及び新配管B´の一端(受口)内面に滑材を塗布する。
この後、図7(h)に示すように、人力により、さらに台車10を前側の外補助車輪13aがその新配管B´の一端内に至るまで走行させる。
このとき、接合補助機50が新配管B´内に走行可能に設置されており、この接合補助機50は、機体フレーム51が上下のジャッキ52、53により昇降自在となって、前方のアーム54先端にジャッキ56付きの軸方向に向くローラ55を有する。接合補助機50は、台車10の前側の外補助車輪13aがその新配管B´の一端内に至ったとき、そのアーム54が新管B内に至るように位置されているようにしてもよい。
【0042】
図7(h)の状態になれば、前側外補助車輪13aを降ろして新配管B´の一端内面に当接させ、前側走行車輪12aを上げる。このとき、前側内補助車輪13bを降ろして新配管B´の一端内面に当接させると、仮に、前側外補助車輪13aが新配管B´の一端内面至っていない等により、その新配管B´の一端内面に当接していなくても、その前側内補助車輪13bで台車10を支えるため、前側走行車輪12aを上昇させても支障がない。
【0043】
この後、図7(i)に示すように、人力により、さらに台車10を押して新管Bと新配管B´を突合せ、その新管Bの前端面と新配管B´の一端面の幅及び高さ位置が一致しているか、その両者に設けた印により確認する(芯だしする)。このとき、新管Bの前端(他端)面部と新配管B´の一端(後端)面部の上下及び左右の4等分位に天地マークを付すなどで印を付けると、芯だしが容易であり、その4等分位の天地マークが一致しているかどうかで確認する。
【0044】
一致していない場合には、前側の周方向移動用ローラ32をハンドル36により回して一致させる。その一致が確認できた後、同図(i)に示すように、接合補助機50を人力により押してそのアーム54のローラ55を新管Bの前端内に挿入し、その上下の
ジャッキ52、53を作動させて新配管B´内に接合補助機50を固定する。
この後、図7(j)に示すように、接合補助機50のアーム54先端のローラ55を上昇させて新管Bを支持し、前後の周方向移動用ローラ22、32を下げるとともに、軸方向移動用ローラ23を上げて新管Bの内面に当接させて支持する。この後、そのローラ55を昇降させて新管Bと新配管B´(接合部)の芯合わせをする。
【0045】
この状態で、台車10は、その後側を後側走行車輪12bで、前側を前側外補助車輪13aでそれぞれ支えられ、新管Bは、その接合補助機50側のローラ55と台車10の後側の軸方向移動ローラ23でもって台車10に宙吊り状態で支持された状態となる。このため、新管Bを押すと、両ローラ55、23の回転により新管Bはその軸方向に円滑に移動する。
【0046】
この後、同図(j)に示すように、内面接合冶具61を新管Bの後端両側と新配管B´の一端両側に取付け、その両者61、61にワイヤ62(2本)を張ってレバーブロック63によりそのワイヤ62を縮めて、新管Bを新配管B´側に引き寄せてその受口に嵌めて接合する(同図(k))。このとき、接合端面にはスペーサを介在して、つぎの内面接合冶具61を嵌め(係合)易くしておく。
【0047】
つぎに、図7(l)に示すように、ワイヤ62及びレバーブロック63を外し、接合補助機50のアーム54先端のローラ55を下げ、台車10の軸方向移動ローラ23を昇降させて、新管Bの高さ調整(芯だし)を行い、調整が終われば、その新管Bの後端(受口)と既設配管路Aの間にスペーサ65を介在して、新管Bを固定する。その後、軸方向移動ローラ23を下げて新管Bから切り離すとともに、接合補助機50の上下のジャッキ52、53を作動させて、新配管B´への固定を解除し、移動可能とする(図7(m)参照)。なお、受口は、従来と同様に、新管Bと同一断面形状のFRPM製管継手Cを新管Bの後端に嵌めることにより予め形成されている(図7(a)参照)。
【0048】
新管Bと新配管B´の接合が終われば、図7(m)に示すように、人力により、台車10をその前側走行車輪12aを既設配管路Aの内面に降ろせる位置まで後進させ、その前側走行車輪12aを既設配管路Aの内面に降ろすとともに、前側外補助車輪13aを上昇させる。この状態になれば、図7(n)に示すように、バッテリー・ロコEを移動させて台車10に連結し、このバッテリー・ロコEでもって、台車10を既設配管路A一端の作業スペースSまで走行する。
【0049】
作業スペースSに至れば、図7(a)に示す作用に戻り、以後、同様な作用を繰り返して、既設配管路A内に新管Bを順々に挿入してその各新管Bを継ぎ合わせて新配管(新配管)B´を形成する。
【0050】
既設配管路A内に、所要の長さ、例えば、全長に亘って新配管B´が形成されれば、従来と同様にして、例えば、特許文献2に記載等の公知の種々の方法により、各新管Bの注入孔から、グラウト材を新配管B´と既設配管路Aの間に注入充填して、既設配管路Aの更新を完了する。
【特許文献2】特開平9−166242号公報
【0051】
実施例では、走行車輪12と補助車輪13、14をそれぞれジャッキ18、19で昇降可能(上下動可能)として、走行車輪12及び補助車輪13、14を、選択的に走行車輪12が既設配管路Aの内面に当接又は補助車輪13、14が新管Bの内面に当接するとともに、走行車輪12が既設配管路Aの内面に接している際には補助車輪13、14が、補助車輪13、14が新管Bの内面に接している際には走行車輪12が、それぞれ新管Bの内面レベルより上方位置に退避可能としたが、一方が昇降すれば、必然的に他方はその一方に対し相対的に昇降するため、一方の車輪の上下動によりその作用を成すようにすることができる。例えば、補助車輪13、14は、その高さの微調整はできても、走行車輪12の位置を超えた昇降ができなくても、又は固定でも、走行車輪12の昇降により、その作用を成すようにし得る。
【0052】
また、接合補助機50がない場合には、図7(i)で示す、前側外補助車輪13aが新配管B´の一端内面に降りて、台車10がその前側外補助車輪13aと後側走行車輪12bで支えられ、新管Bを前後のローラ23、32で支持している状態で、同図(j)で示すように、ワイヤ62及びレバーブロック63等を介して新管Bを無理押して新配管B´に接続する。このとき、台車10の前側に、軸方向の移動を許容するローラを別個に設けたり、ローラ32の方向を軸方向に変換可能なものとすれば、その新管Bの押し込みは円滑となる。
【0053】
実施例は、農業用水用トンネル水路Aの更新の場合であったが、この発明は、農業用水用トンネル水路Aの更新に限らず、上下水管などの既設管を更新すべく、その既設管を鞘管(既設配管)としてその中に新管Bを順々に挿入して新配管B´を形成する等の既設管更新工法やパイプインパイプ工法のみならず、地中にガス導管などの配管を設置する際、その導管の防食被覆の損傷防止や敷設後の配管保護のために、その導管の外側に鞘管を設ける工法などにおいても採用できることは言うまでもない。そのとき、トンネル等の両端に開口部がある管路ではなく、水道管などの開口部がない管路では、例えば、竪坑を形成して、作業スペースSとする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】台車の一実施例の概略斜視図
【図2】同概略正面図
【図3】同概略平面図
【図4】図2のX−X線概略断面図
【図5】同Y−Y線概略断面図
【図6】同Z−Z線概略断面図
【図7(a)】同実施例の作用説明図
【図7(b)】同実施例の作用説明図
【図7(c)】同実施例の作用説明図
【図7(d)】同実施例の作用説明図
【図7(e)】同実施例の作用説明図
【図7(f)】同実施例の作用説明図
【図7(g)】同実施例の作用説明図
【図7(h)】同実施例の作用説明図
【図7(i)】同実施例の作用説明図
【図7(j)】同実施例の作用説明図
【図7(k)】同実施例の作用説明図
【図7(l)】同実施例の作用説明図
【図7(m)】同実施例の作用説明図
【図7(n)】同実施例の作用説明図
【符号の説明】
【0055】
A 既設配管路(農業用水トンネル水路)
B 新管
B´ 新配管
10 台車
11 台車フレーム
12a、12b 走行車輪
13a、13b 前側補助車輪
14a、14b 後側補助車輪
15 支持杆
16 軸受
17 ロッド
18 油圧ジャッキ
19 手動ジャッキ
22、32 周方向移動用ローラ
23 軸方向移動用ローラ
28、35 油圧ジャッキ
40 手動油圧ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に敷設された既設配管路A内に新管Bを順々に挿入してその各新管Bを継ぎ合わせて新配管B´を形成する際、その新管Bを前記既設配管路A内に搬送する台車10であって、
上記新管Bに挿入されてその両端が新管Bの両端から突出する長さを台車フレーム11が有し、前記新管Bにその台車フレーム11が挿入された状態で、その新管Bの両端から出る台車フレーム11の両端に既設配管路Aの内面に接する走行車輪12a、12bをそれぞれ設けるとともに、その後側走行車輪12bの後側の台車フレーム11に新管Bの内面に接する補助車輪14aを設け、前側走行車輪12aの前側又は後側の台車フレーム11に新管Bの内面に接する補助車輪13を設けて、その補助車輪13、14aの外周面は前記新管Bの内面を傷つけない素材とし、前記走行車輪12及び補助車輪13、14aを、選択的に走行車輪12が既設配管路Aの内面に当接又は補助車輪13、14aが新管Bの内面に当接するとともに、走行車輪12が既設配管路Aの内面に接している際には補助車輪13、14aが、補助車輪13、14aが新管Bの内面に接している際には走行車輪12が、それぞれ新管Bの内面レベルより上方位置に退避可能とし、かつ、台車フレーム11には新管Bをその内面上部に当接して持ち上げるアームを設けたことを特徴とする管搬送用台車。
【請求項2】
上記後側走行車輪12bの後側の台車フレーム11に設けた補助車輪を外補助車輪14aとし、後側走行車輪12bの前側の台車フレーム11にも内補助車輪14bとなる上記補助車輪を設けたことを特徴とする請求項1に記載の管搬送用台車。
【請求項3】
上記前側走行車輪12aの前後の台車フレーム11に上記前側補助車輪からなる前側内外側補助車輪13b、13aをそれぞれ設けことを特徴とする請求項1又は2に記載の管搬送用台車。
【請求項4】
上記アームに新管Bをその軸方向に移動させるローラ23を設けた請求項1乃至3の何れかに記載の管搬送用台車。
【請求項5】
上記アームに新管Bをその周方向の回転を許容する手段22、32を設けた請求項1乃至4の何れかに記載の管搬送用台車。
【請求項6】
地中に敷設された既設配管路Aの一端から他端に向かってその既設配管路A内に新管Bを順々に挿入してその各新管Bを継ぎ合わせて新配管B´を形成する際、その新管Bを前記既設配管路A内に請求項1記載の管搬送用台車10により搬送する方法であって、
上記台車10を上記既設配管路Aの一端内に挿入した状態で、上記新管Bを前記既設配管路Aの一端手前の作業スペースSに搬送し、前記台車10を、その後側補助車輪14aを新管Bの内面に接しさせるとともに後側走行車輪12bを新管Bの内面レベルより上方位置に退避させた状態として、その台車10を前記新管B内に前記補助車輪14aを介し走行させて挿入し、その後側走行車輪12bが新管Bの後端から出た時点で、後側走行車輪12bを既設配管路Aの内面に降ろすとともに、上記アームを新管B内面上部に当接させて新管Bを持ち上げて、台車10に新管Bを支持し、その状態で、台車10を走行させて、既設配管路A内にその他端に向かって新管Bを搬送することを特徴とする管の搬送方法。
【請求項7】
請求項6に記載の管の搬送方法において、上記台車10を請求項2に記載のものとし、
その台車10を上記新管B内に上記後側外補助車輪14a及び前側走行車輪12aを介し走行させて挿入し、その走行行程途中で後側内補助車輪14bを降ろして新管Bの内面に接しさせ、
又は、上記後側外補助車輪14aを新管Bの内面に接しさせるとともに、後側内補助車輪14bを新管Bの内面に接する高さに位置させて、前記台車10を前記新管B内に上記後側外補助車輪14a及び前側走行車輪12aを介し走行させて挿入し、
後側走行車輪12bが新管Bの後端から出た時点で、その後側の走行車輪12bを既設配管路Aの内面に降ろすとともに後側内補助車輪14bを新管Bの内面レベルより上方位置に退避させることを特徴とする管の搬送方法。
【請求項8】
請求項7に記載の管の搬送方法において、上記台車10の新管B内の走行行程途中で、後側内補助車輪14bが降りて新管Bの内面に接した状態で、後側外補助車輪14aを新管Bの内面レベルより上方位置に退避させることを特徴とする管の搬送方法。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れかに記載の管の搬送方法により、上記新管Bを支持した上記台車10を走行させて、既設配管路A内にその他端に向かって新管Bを搬送して新配管B´の一端に至れば、前記台車10の前側補助車輪13を新管B内面に降ろし、又は前側補助車輪13をその新配管B´の一端内面に挿入してその内面に降ろし、
続いて、前側の走行車輪12aを新管Bの内面レベル以上に退避させ、その状態で、その搬送してきた新管Bを新配管B´に接続し、その後、台車10を後退させてその前側走行車輪12aが搬送してきた新管Bの後端を出た時点で、その前側走行車輪12aを既設配管路Aの内面に降ろし、その後、前後の走行車輪12a、12bでもって、台車10を既設配管路Aの一端まで走行することを特徴とする管の搬送継合方法。
【請求項10】
請求項9に記載の管の搬送継合方法において、上記台車10を請求項3に記載のものとし、その台車10を走行させて、既設配管路A内にその他端に向かって新管Bを搬送して新配管B´の一端に至れば、上記前側外補助車輪13aをその新配管B´の一端内面に挿入してその内面に降ろすとともに前側の走行車輪12aを新管Bの内面レベル以上に退避させるようにしたことを特徴とする管の搬送継合方法。
【請求項11】
新管Bが断面馬蹄形のものにあっては、請求項5記載の台車でもって、請求項9又は10に記載の管の搬送継合方法を行い、その新管Bを新配管B´に接続する際、新管Bを回転させて、その新管Bと新配管B´の芯だしを行った後、新管Bを新配管B´に接続することを特徴とする管の搬送継合方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図7(d)】
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【図7(e)】
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【図7(f)】
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【図7(g)】
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【図7(h)】
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【図7(i)】
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【図7(j)】
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【図7(k)】
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【図7(l)】
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【図7(m)】
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【図7(n)】
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【公開番号】特開2006−22618(P2006−22618A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203701(P2004−203701)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(391051049)株式会社エステック (28)
【Fターム(参考)】