管楽器
【課題】演奏者の指にて直接操作する指貝やレバーのみについて動作を検出しても、演奏者の高度な演奏技術を忠実に反映するように各動作を検出することは困難であった。
【解決手段】複数の操作子とボディ部とを備える管楽器本体と、前記複数の操作子の前記ボディ部に対する相対的な動作を検出する動作検出手段とを備える管楽器において、前記複数の操作子は、複数の音孔のそれぞれを開閉するための複数のキーを含み、前記複数のキーの少なくともひとつに、当該キーと一体の部材に対して取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている。
【解決手段】複数の操作子とボディ部とを備える管楽器本体と、前記複数の操作子の前記ボディ部に対する相対的な動作を検出する動作検出手段とを備える管楽器において、前記複数の操作子は、複数の音孔のそれぞれを開閉するための複数のキーを含み、前記複数のキーの少なくともひとつに、当該キーと一体の部材に対して取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器およびアコースティック楽器のいずれとしても利用可能な管楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
管楽器を電子楽器として構成するため、従来、指による演奏操作を検出するためのセンサを実装する手法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実開昭63−47397号公報
【特許文献2】特開2005−316417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
演奏者の指にて直接操作する指貝やレバーのみについて動作を検出しても、演奏者の高度な演奏技術を忠実に反映するように各動作を検出することは困難であった。また、管楽器をアコースティック楽器と電子楽器とのいずれとしても利用できるようにするために、指による演奏操作を検出するセンサをアコースティック楽器に対して実装することが困難であった。
すなわち、指貝やレバーにおいてはその部材の撓みなどが生じ得るため、すべての操作を指貝やレバーにて検出する構成は出力音の決定精度上、好ましくない。
【0004】
また、アコースティック楽器としての管楽器はキーを回動させて音孔を開閉するための複雑な機構を備えている。従って、電子楽器およびアコースティック楽器のいずれとしても利用可能な管楽器を提供するためには、これらの複雑な機構を維持したまますべてのキーの開閉を検出するためのセンサや当該センサの検出結果に対応した音を出力するための回路などを実装する必要がある。しかし、アルトサックスなど一般的なアコースティック管楽器においては、その本体に上述の機構が高密度で備えられており、この機構とセンサに関連した電子回路との双方を、操作性の低下を誘発することなく管楽器本体に実装して実用性のある管楽器を提供することは困難であり、製品化に至っていなかった。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、必要十分な精度でセンシングを行うことが可能なセンサを実装し、また、狭い空間に対して多数のセンサを確実に実装することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる管楽器の本体は、複数の操作子とボディ部とを備え、管楽器を電子楽器として機能させるために、当該複数の操作子の前記ボディ部に対する相対的な動作を検出する動作検出手段を備えている。また、前記複数の操作子は、複数の音孔のそれぞれを開閉するための複数のキーを含み、本発明にかかる管楽器においては、複数のキーの少なくともひとつにおいて、当該キーと一体の部材に対して取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている。
【0006】
すなわち、管楽器において、口による操作との組み合わせによって音を決定する要素は管楽器本体における音孔の開閉状態であり、当該音孔を開閉する部材が各音孔に対応した複数のキーである。そこで、キーのうち、少なくとも一つには当該キーと一体になっている部材に対して取付部材を取り付け、当該取付部材に当該キーの動作を検出するための被検出体が取り付けられている構成とした。
【0007】
この構成により、音を決定する最も直接的な要素であるキーの開閉を、少なくとも一つのキーにおいて直接的に検出することができ、少なくとも一つのキーにおいては音を決定するキーの動作を正確に検出することが可能になる。このため、演奏者の演奏技術を忠実に反映した音を出力するための検出を行うことができる。
【0008】
また、管楽器においては、当該管楽器をアコースティック楽器として機能させるための複雑な機構を備えているが、キーの少なくとも一つ(好ましくは複数)に対してその動作を検出するための被検出体を取り付け、当該被検出体によって操作子のボディ部に対する相対的な動作を検出する構成とすることは容易である。従って、アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための要素を容易に実装することが可能である。
【0009】
ここで、複数の操作子は、管楽器から出力する音を調整するための操作子であればよく、音を調整するために動作するすべての部材が含まれる。例えば、音孔を開閉するためのキー,キーを動作させるための指貝やレバー,指貝やレバーに連動して動作する各種のアーム,キーを回動可能に支持する回転軸などが含まれる。
【0010】
また、ボディ部は、管楽器本体の一部を構成する管体であり、管楽器本体において指で直接操作する操作子が取り付けられた管体である。むろん、管楽器本体は、他に、ベル部やボウ部を備えていてもよいし、屈曲した管体を備えていなくてもよい。従って、本発明は、各種の管楽器、例えば、カーブドソプラノ,アルト,テナー,バリトンの各サックスやフルート、ピッコロ、クラリネット、オーボエ、ファゴット等に適用することができる。むろん、管楽器本体には、管楽器をアコースティック楽器として機能させるための各部品が取り付けられていてもよいし、他の部品(例えば、ネック部)を連結可能であってもよい。
【0011】
さらに、動作検出手段は、音を特定するため、複数の操作子のボディ部に対する相対的な動作を検出することができればよい。従って、当該検出のための構成は、操作子のいずれの部位におけるボディ部に対する動作を検出する構成としてもよい。例えば、上述のキー,指貝,レバー,アーム,回転軸等の動作を検出するセンサを採用することが可能である。センサはキー,指貝,レバー,アーム,回転軸等の動作を検出することができればよく、キー,指貝,レバー,アーム,回転軸等に連動するように取付部材に取り付けられた被検出体によって動作を検出する構成(例えば、マグネットとホール素子との組み合わせ)を採用可能である。
【0012】
むろん、動作を検出するための素子はホール素子に限定されず、導電ゴムと抵抗体との組み合わせや、各種の光センサ,磁気センサ,スイッチ等を採用可能である。なお、いずれの構成においても、磁場や位置、光、接触の有無など、検出対象が存在し、当該検出対象そのものや検出対象を生成する物体が被検出体となる。例えば、上述のマグネットは被検出体である。
【0013】
また、操作子の動作を検出したときには、その検出結果を示す信号に基づいて複数の操作子に対する操作の組み合わせを特定して音を特定するための回路に当該信号を入力すればよい。なお、動作検出手段においては、複数の操作子に対する操作を検出することによって音を特定することができればよく、少なくとも独立した動作が可能な各操作子についてその動作を検出することができればよい。従って、必ず連動して動作する複数のキーについてはその一方のキーについて動作を検出する構成としてもよい。
【0014】
さらに、本発明においては、できるだけ正確に音孔の開閉を検出するためにキーの動作を直接的に検出することができればよく、この意味でキーと一体の部材に取付部材を連結すればよい。なお、キーと一体の部材には、キー自体およびキーに対して不可分に連結された部材が含まれるが、キーの動作を誤差なく正確に反映するためにはキーに極めて近い位置にある部材(例えば、キーに連結されたアームやキーに連結された指貝等)であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明においては、少なくともひとつのキーについて当該キーと一体の部材に取付部材を連結すれば、少なくともこのキーについて音孔の開閉を正確に検出するという効果を奏するが、むろん、できるだけ多くのキーについて、当該キーと一体の部材に取付部材を連結してその動作を直接的に検出することが好ましい。例えば、ボディ部において電子楽器に関連した構成要素を実装可能な面積を考慮して、できるだけ多くのキーについてその動作を直接的に検出する構成としたり、動きの激しい操作子や使用頻度の高い操作子に連動するキーについて優先的にキーの動作を直接的に検出する構成としてもよい。
【0016】
さらに、被検出体がキー以外の操作子にも取り付けられる構成を採用してもよい。例えば、演奏者が指で直接する直接操作子(例えば、複数の指貝と複数のレバー)の少なくともひとつに取付部材を連結し、当該取付部材に被検出体を取り付ける構成としてもよい。この構成によれば、指で直接操作する指貝やレバーの動作を直接的に検出することができるので、演奏者の演奏技術を忠実に反映した音を出力するための検出を行うことができる。
【0017】
この構成において、指貝やレバーは、もっぱら管楽器本体のボディ部側に近づき、また、遠ざかる動作をするので、この動作を検出できるように取付部材を構成すればよく、例えば、指貝やレバーからボディ部側に延びる部材によって前記取付部材を構成し、当該取付部材の先端に被検出体を取り付ける構成を採用可能である。この構成によれば、ボディ部側に当該被検出体の動作を検出するセンサを実装することによって容易に操作子としての指貝やレバーの動作を検出することが可能になる。むろん、この構成において、取付部材がボディ部に接触する衝撃を和らげるために取付部材やボディ部に緩衝部材を取り付ける構成等を採用してもよい。
【0018】
さらに、被検出体が回転軸に支持される取付部材に取り付けられる構成としてもよい。例えば、複数のキーを回動可能に支持する回転軸の少なくともひとつに取付部材が回動可能に連結すると、当該取付部材はキーの開度に連動して回動することとなる。そこで、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体を取り付ければ、キー等を含む操作子の動作に連動した動作を被検出体によって検出することができる。
【0019】
この構成は、キーや指貝,レバー等と異なる部位における動作を検出する構成となる。しかし、この構成を採用すれば、キーや指貝,レバーの付近に被検出体や当該被検出体を検出するためのセンサを実装する面積が小さい場合であってもアコースティック楽器としての構成要素を変更することなく、他の代替部位に対して容易に被検出体やセンサを実装することができる。
【0020】
むろん、ここでは、取付部材を回転軸に対していずれの方向に延ばしてもよい。すなわち、取付部材に取り付けられた被検出体の動作を検出することによって操作子のボディ部に対する相対的な動作を検出することができればよい。従って、操作子の動作に応じて取付部材がボディ部に対して相対的に動作する限りにおいて、当該取付部材を回転軸から見てキーと逆側に延ばしてもよいし、キーと同じ側に延ばしてもよく、種々の構成を採用可能である。
【0021】
さらに、キーの動作を直接的に検出するための構成例として、指貝と貝皿とが備えられたキーにおいて貝皿に対して取付部材を連結する構成を採用してもよい。すなわち、指貝と一体になっているキーは最も動きが激しく使用頻度が高いので、当該キーの動作を直接的に検出することが好ましい。このようなキーを備える、例えば、アルトサックスなどの管楽器においてはキーと貝皿とが一体に構成されるとともに当該貝皿の上に指貝が取り付けられ、かつ、貝皿がキーから飛び出しているものが存在する。
【0022】
そこで、この構成において貝皿の下に貝皿からボディ部に向けて延びる取付部材を連結し、当該取付部材の先端に被検出体を取り付ける構成とすれば、演奏者の指の操作に従って動作するキーの動きを極めて正確に検出できるように被検出体を操作子に対して実装することが可能になる。
【0023】
さらに、キーの動作を直接的に検出するためにキーに対して取付部材を取り付ける構成例として、当該キーのキー連結アームに取付部材を取り付ける構成としてもよい。すなわち、キーは略円盤状であって、当該円の大半は音孔に対応しているため、その動作を検出するためにはその周の部分に被検出体を実装することが要求されるが、キーは音孔を開閉するために極めて重大な部品であるため、その周の部分であってもキーに対して直接的に細工を施すことをさけたい場合も多い。そこで、キーが連結されたキー連結アームに対して取付部材を取り付ける構成とすれば、キーに対して直接的に細工を施すことなく取付部材とキーとを連動させることが可能になる
【0024】
なお、当該キー連結アームに対する取付部材の取り付け態様は種々の態様を採用可能であり、キー連結アームとボディ部との間においてキー連結アームからボディ部に延びる取付部材を当該キー連結アームに対して連結してもよいし、キー連結アームからキーを跨ぐようにしてキーの逆側のボディ部まで延びる取付部材を当該キー連結アームに対して連結してもよく、種々の構成を採用可能である。
【0025】
さらに、当該キー連結アームに連結された取付部材を、キーの外周に沿って延びる部位を備える部材とし、キーの外周やその付近に被検出体を配置してその動作を検出する構成としてもよい。この構成においては、キー連結アームに対して取り付けた取付部材をキーの外周に沿って延ばすことにより、当該取付部材に取り付けた被検出体を、ボディ部に実装するセンサによって容易に検出することが可能になる。
【0026】
すなわち、キーの円形において大半の面積を占める部分は音孔に対応しているため、ボディ部にてキーの動作を検出するためには音孔の周囲のボディ部にセンサを実装する必要があるが、上述のように取付部材をキーの外周に沿って延ばす構成とすれば、極めて容易に、センサを実装可能な部位に被検出体を配置することが可能になり、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装することが可能になる。
【0027】
さらに、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装するための構成例として、指貝やレバー等の直接操作子を回転軸に対して連結するための直接操作子連結アームに、取付部材を連結する構成としてもよい。すなわち、直接操作子(複数の指貝と複数のレバー)のなかには、回転軸に対して回動可能に支持されるものが存在し、直接操作子を回転軸に対して回動可能に支持する部材として直接操作子連結アームが存在する場合に、当該直接操作子連結アームに対して取付部材を連結する。
【0028】
当該直接操作子連結アームは、回転軸と指貝、あるいは回転軸とレバーの間で指貝やレバーの動作に伴って動作するため、直接操作子連結アームに連結された取付部材も同様の動作を行う。従って、当該取付部材に被検出体を取り付けることにより、操作子の動作を検出することが可能になる。また、操作子の動作を検出するための構成として多用な選択肢を提供することができるので、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装することが可能になる。
【0029】
なお、当該直接操作子連結アームに対する取付部材の取り付け態様は種々の態様を採用可能であり、直接操作子連結アームとボディ部との間において直接操作子連結アームからボディ部に延びる取付部材を当該直接操作子連結アームに対して連結してもよいし、別の位置まで延びる取付部材を当該直接操作子連結アームに対して連結してもよく、種々の構成を採用可能である。
【0030】
さらに、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装するための構成例として、前記直接操作子連結アームに対して前記回転軸の逆側に延びる取付部材を連結する構成としてもよい。すなわち、直接操作子連結アームは回転軸と指貝、あるいは回転軸とレバーを連結する部材であるため、連結される両者の間に存在するが、当該両者の間に被検出体やそのセンサを実装するための面積を確保できない場合がある。
【0031】
この場合、取付部材を回転軸の逆側に延ばす構成とすれば、取付部材を延長した部位に被検出体やそのセンサを実装するための面積を確保できる場合がある。このため、操作子の動作を検出するための構成として多用な選択肢を提供することができるので、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)管楽器の構成:
(1−1)被検出体の取り付け構造:
(1−1a)取り付け構造1:
(1−1b)取り付け構造2:
(1−1c)取り付け構造3:
(1−1d)取り付け構造4:
(1−1e)取り付け構造5:
(1−1f)取り付け構造6:
(1−2)信号処理回路:
(2)他の実施形態:
【0033】
(1)管楽器の構成:
図1〜図4は本発明にかかるアルトサックスの管楽器本体を示す図であり、図1〜図4はそれぞれ、アルトサックスのボディ部40(2番管),ボウ部30(1番管),ベル部20(朝顔管)を示す左側面図,背面図,正面図,右側面図であり、図5はネック部50およびマウスピース60の右側面図である。なお、本明細書においては、演奏者がアルトサックス10を構えた状態において演奏者から見た方向をアルトサックス10における方向に対応づけており、アルトサックス10を構えた状態における演奏者の上下左右前後の各方向をアルトサックス10の上下左右前後の各方向としている。
【0034】
これらの図に示すように、ベル部20はボウ部30に連結されボウ部30はボディ部40に連結されており、ボウ部30が屈曲した管体であることによってベル部20とボウ部30とボディ部40とはボディ部40からベル部20にかけて屈曲した一つながりの管体となっている。また、ボディ部40とベル部20とはベル部20の上部付近にてベル支柱に連結されている。なお、図に示すようにボディ部40が上下方向に長い管体であることからアルトサックス10の長手方向(ボディ部40が延びる方向)は図における上下方向である。
【0035】
本実施形態におけるアルトサックス10は、電子楽器およびアコースティック楽器のいずれとしても利用可能な管楽器であり、アコースティック楽器として機能するように、各種の操作子は従来のアコースティック楽器と同様の構成となっている。すなわち、ボディ部40とボウ部30とベル部20とにおいては、音の高さを選択するための音孔が形成されており、各音孔には当該音孔を開閉するためのキーが対応している。例えば、ボディ部40には、高音側のHighF#キー40aから低音側のDキー40bまで複数の音孔に対応したキーが備えられている。また、ボウ部30には、LowCキー30aやLowC#キー30b等が備えられ、ベル部20には、LowBキー20aとLowB♭キー20bとが備えられている。
【0036】
これらのキーはボディ部40に取り付けられた回転軸に対して回転可能に支持されている。例えば、HighF#キー40aにはキー連結アーム42aが連結され、当該キー連結アーム42aはボディ部40の表面に対して略垂直方向に延びる柱状部材に取り付けられた回転軸41aに支持されている。従って、当該回転軸41aがその軸を中心に回転すると、その回転動作がキー連結アーム42aを介してHighF#キー40aに伝達され、当該回転動作に対応してHighF#キー40aが回動する。
【0037】
同様に、LowCキー30aにはキー連結アーム32aが連結され、当該キー連結アーム32aはボディ部40に取り付けられた回転軸31aに対して連結されている。従って、回転軸31aにおける回転動作に対応してLowCキー30aが回動する。LowB♭キー20bにはキー連結アーム22bが連結され、当該キー連結アーム22bはボディ部40に取り付けられた回転軸21bに対して連結されている。従って、回転軸21bにおける回転動作に対応してLowB♭キー20bが回動する。また、HighFキー40c等のように、ボディ部40の長手方向と略垂直に設けられた回転軸41cに対して回動するキー連結アーム42cに対して連結されたキーも存在する。
【0038】
さらに、これらのキーを回動させるための操作は、指貝やレバーによってなされる。すなわち、ボディ部40の上部には左手の指によって操作するための指貝43a〜43eやレバー44a〜44e、右手の指によって操作するための指貝43f〜43hやレバー44f〜44lが備えられている。また、これらの指貝43a〜43e,43f〜43hやレバー44a〜44e,44f〜44lは、キーを開閉するために直接操作する直接操作子となる。すなわち、直接操作子連結アームを介して回転軸に連結される指貝やレバーを操作することにより、回転軸を介してキーを開閉することができる。また、キーに対して直接的に取り付けられた指貝を介してキーを開閉することができる。
【0039】
例えば、レバー44iは図示しない直接操作子連結アームや他の回転軸を介して回転軸41aに連結されているので、当該レバー44iに対する操作によってHighF#キー40aを開閉することができる。また、レバー44cは直接操作子連結アーム45cを介して回転軸41cに連結されているので、当該レバー44cに対する操作によってHighFキー40cを開閉することができる。また、指貝43hはDキー40bに対して直接的に取り付けられているので、指貝43hに対する操作によってDキー40bを開閉することができる。
【0040】
なお、指貝43a〜43hとレバー44a〜44lとは演奏者の指によって操作される部位であり、これらの指貝43a〜43hとレバー44a〜44lとの付近に指を配置するため、アルトサックス10はサムレスト48aとフィンガーフック48cとを備えている。すなわち、サムレスト48aは左手の親指を置くための部材であり、アルトサックス10の上部においてレバー44a〜44cの後方に設けられる。また、フィンガーフック48cは右手の親指を掛けるための略鉤型の部材であり、アルトサックス10の下部において指貝43f,43gの後方に設けられる。また、ボディ部40の後方の中央部には、演奏者の首に掛けるストラップを取り付けるためのストラップ掛部48bが形成されている。
【0041】
さらに、本実施形態にかかるアルトサックス10においては、ボディ部40に対して図5に示すネック部(吹込管)50を連結することが可能である。ネック部50は、屈曲した管体によって構成されるとともに、一方の端部がボディ部40に対して挿入可能な連結部51であり、他方の端部にはマウスピース60を連結するためのコルク52が取り付けられている。また、ネック部50においてはボディ部40の機構に連動することによって音孔を開閉可能なオクターブキー50aが備えられている。
【0042】
マウスピース60は、コルク52に対して取り付け可能であり、本実施形態においては、2種類のマウスピースが用意される。すなわち、リガチャーによってリードを取り付ける中空のマウスピースと、ウィンドセンサ,タンギングセンサ,リップセンサが備えられたマウスピースとが用意され、アコースティック楽器として使用する場合には前者、電子楽器として使用する場合には後者をコルク52に対して取り付ける。
【0043】
図5においては、電子楽器として利用する際のマウスピース60を図示している。当該マウスピース60は、上述のウィンドセンサ,タンギングセンサ,リップセンサによって検出した口による操作に対応した信号が信号線61に出力される。
【0044】
なお、ウィンドセンサは、マウスピース60に口から吹き込まれる息圧を検出するセンサであり、例えば、圧力センサ等で構成することができる。タンギングセンサは、マウスピース60の先端部に対する舌の接触を検出するセンサであり、例えば、光センサ等で構成することができる。リップセンサは、マウスピース60に対して唇が押しつけられている度合いを検出するセンサであり、例えば、圧力センサ等で構成することができる。以上の構成により、マウスピース60においては、口による操作を検出し、検出した操作に対応する信号を信号線61から出力することができる。
【0045】
信号線61の先端はコネクタ61aとなっており、ボディ部40に取り付けられた筒状部47が備えるコネクタ47aに接続される。すなわち、筒状部47は、軽金属(例えば、アルミ)によって構成された筒状の部材であって、ボディ部40の上部に取り付けられているとともに、コネクタ47aに対して導通する信号線が筒状部47の内部を貫通している。また、筒状部47における下方の端部には、フレキシブル基板46に対して接続されるコネクタ47bが形成されており、当該コネクタ47bを介してフレキシブル基板上の配線に上記信号線61から出力する信号が伝達される。以上の構成により、本実施形態においては、マウスピースにおける口による操作に対応した信号を筒状部47内の信号線によってフレキシブル基板46に伝達し、さらに、後述するユニット70内の回路に伝達する。
【0046】
(1−1)被検出体の取り付け構造:
一方、ボディ部40においては、図1〜図4に示すように複数の操作子を備えており、これらの操作子に対する操作を検出するために、ボディ部40においては、複数の操作センサを備えている。本実施形態においては、操作センサとしてホール素子を採用しており、キー,指貝,レバー,アーム,回転軸等の操作子に対して取付部材を連結し、当該取付部材に対して磁石(被検出体)を取り付ける構成とした。従って、当該磁石による磁場の変化を当該ホール素子にて検出することによって複数の操作子に対する操作を検出することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、フレキシブル基板に当該ホール素子およびホール素子に対する配線を実装し、ボディ部40に対して取り付ける構成とした。図1および図2においては、当該フレキシブル基板46をハッチングによって示している。当該フレキシブル基板46は、可撓性のある基板であり、テーパー状のボディ部40に巻き付けるようにして取り付けられる。なお、フレキシブル基板46においては、複数のホール素子およびホール素子に対する配線を実装した後に、その表面を保護部材で保護してある。
【0048】
(1−1a)取り付け構造1:
以下、本実施形態において採用している被検出体の取り付け構造を説明する。図6は直接操作子であるレバーに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるレバーL0とボディ部40との間をボディ部40側から見た斜視図である。図6において、レバーL0とボディ部40との間には、レバーL0からボディ部40側に延びる取付部材80が連結されている。本実施形態において、当該取付部材80はレバーL0からボディ部40側に延びる部材81と当該取付部材80の途中で略直角に屈曲されてボディ部40に対して略平行に延びる部材82とを備えている。
【0049】
演奏者がレバーL0を操作することにより、レバーL0はボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行うが、取付部材80は当該レバーL0に連結されているため、当該レバーL0の動作に伴って取付部材80はボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。なお、部材82においては、当該部材82がボディ部40に対して激突しないように取付部材80の途中で屈曲されるが、本実施形態においては、より確実に激突を防止するために部材82においてボディ部40方向に延びる突起84が形成され、突起84の先端に緩衝部材(コルク等)84aが連結されている。
【0050】
また、部材82には磁石83が取り付けられており、演奏者がレバーL0を操作することによって磁石83が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子49が実装されている。従って、当該ホール素子49によって磁石83の磁場を検出することによって演奏者によるレバーL0の操作を検出することができる。
【0051】
(1−1b)取り付け構造2:
図7は直接操作子であるレバーに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるレバーL1とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図7において、レバーL1は直接操作子連結アーム830を介して回転軸840に支持されおり、レバーL1は当該回転軸840を中心に回動することができる。
【0052】
直接操作子連結アーム830に対しては、当該直接操作子連結アーム830とほぼ同じ曲率であるがより長い部材である取付部材800が連結されている。当該取付部材800は、直接操作子連結アーム830と同じ回転軸840に対して回転可能に支持され、本実施形態においては、回転軸840を基準にしてレバーL1と逆側に延びるように配置されている。
【0053】
また、本実施形態において、当該取付部材800は回転軸840を基準にしてレバーL1と逆側に延びる部材810と当該部材810に対して略直角に取り付けられた部材820とを備えている。演奏者がレバーL1を操作すると、レバーL1はボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行うので、部材820は当該レバーL1の動作に伴ってボディ部40から遠ざかり、また、ボディ部40に対して近づく動作を行う。
【0054】
この例においても、部材820には磁石が取り付けられており、演奏者がレバーL1を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子が実装されている。従って、当該ホール素子によって磁石の磁場を検出することによって演奏者によるレバーL1の操作を検出することができる。
【0055】
以上の構成においては、回転軸840を基準にしてレバーL1と逆側に磁石およびホール素子を実装するので、回転軸840よりもレバーL1に近い比較的複雑な構成部位に磁石やホール素子を実装することなく、スペースに余裕のある部位にて磁石やホール素子を実装することが可能になる。むろん、管楽器のボディ部40において回転軸840よりもレバーL1に近い部位においてスペースに余裕がある場合には、取付部材800を回転軸840に対してレバーL1側に伸びるように構成してもよい。
【0056】
(1−1c)取り付け構造3:
図8はキーに一体化された指貝に対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるキーK0と指貝L2とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図8において、キーK0はキー連結アーム831を介して回転軸841に支持されおり、キーK0は当該回転軸841を中心に回動して音孔を開閉することができる。
【0057】
さらに、キーK0に対しては、当該キーK0によって構成される円盤に対して平行な円盤かつキーK0よりも小さな円盤状の指貝L2が取り付けられている。すなわち、指貝L2は貝皿L2Dに対して指で直接操作するための部材を取り付けることで構成されており、図8に示す例において、指貝L2が構成する円盤の中心はキーK0の外周とほぼ同じ位置にある。従って、貝皿L2Dの一部はキーK0の外周より外側に突出した状態になっている。
【0058】
さらに、本実施形態において、貝皿L2Dとボディ部40との間には、貝皿L2Dからボディ部40へ延びるように円柱状の取付部材801が取り付けられている。演奏者が指貝L2を操作すると、キーK0および指貝L2はボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行うので、取付部材801は当該キーK0の動作に伴ってボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。
【0059】
取付部材801においては、そのボディ部40側の端部に磁石が取り付けられており、演奏者がキーK0を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子49が実装されている。従って、当該ホール素子49によって磁石の磁場を検出することによって演奏者によるキーK0の操作を検出することができる。
【0060】
以上の構成においては、キーK0に対して一体的に構成された指貝L2に対して取付部材801を取り付け、当該取付部材801に磁石を取り付けてその動作を検出する。従って、キーK0の動作を直接的に検出することができ、正確に音孔の開閉を検出することができる。
【0061】
(1−1d)取り付け構造4:
図9はキーに一体化されたアームに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるキーK1とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図9において、キーK1はキー連結アーム832を介して回転軸842に支持されおり、キーK1は当該回転軸842を中心に回動して音孔を開閉することができる。
【0062】
さらに、本実施形態において、キー連結アーム832には取付部材802が連結されている。すなわち、取付部材802は板状の部材を複数回屈曲させて構成された部材であり、キー連結アーム832からキーK1の外周に沿って当該外周の約1/4程度の長さに渡って延びる部材812と、当該部材812からボディ部40側へと延びる部材822とを備えている。
【0063】
演奏者が図示しない直接操作子を操作すると、キーK1は回転軸842を回転中心として回動し、ボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。従って、取付部材802も当該キーK1の動作に伴ってボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。
【0064】
取付部材802の部材822には磁石が取り付けられており、演奏者がキーK1を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子が実装されている。従って、当該ホール素子によって磁石の磁場を検出することによって演奏者によるキーK1の操作を検出することができる。
【0065】
以上の構成においては、キーK1に対して一体的に構成されたキー連結アーム832に対して取付部材802を取り付け、当該取付部材802に磁石を取り付けてその動作を検出する。従って、キーK1の動作を直接的に検出することができ、正確に音孔の開閉を検出することができる。
【0066】
(1−1e)取り付け構造5:
図10は直接操作子である指貝L3を回転軸に連結するためのアームに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、ある指貝L3とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図10において、指貝L3は直接操作子連結アーム833を介して回転軸843に支持されおり、指貝L3の操作が回転軸843によって他の部位に伝達されることによって図示しないキーが回動する。
【0067】
さらに、本実施形態において、直接操作子連結アーム833には取付部材803が連結されている。すなわち、取付部材803は板状の部材を複数回屈曲させて構成された部材であり、直接操作子連結アーム833に連結される部材813と、当該部材813から一旦ボディ部40側へと延びるとともに屈曲されてボディ部40の表面と略平行に延びる部材823とを備えている。
【0068】
演奏者が指貝L3を操作すると、指貝L3は回転軸843を回転中心として回動し、ボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。従って、取付部材803も当該指貝L3の動作に伴ってボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。
【0069】
取付部材803の部材823には磁石が取り付けられており、演奏者が指貝L3を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子49が実装されている。従って、当該ホール素子49によって磁石の磁場を検出することによって演奏者による指貝L3の操作を検出することができる。以上の構成によれば、回転軸843や指貝L3の付近に磁石やホール素子を実装するためのスペースを確保しづらい場合であっても、回転軸843と指貝L3との間においてスペースに余裕のある部位にて磁石やホール素子を実装することが可能になる。
【0070】
(1−1f)取り付け構造6:
図11は直接操作子であるレバーL4を回転軸に連結するためのアームに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるレバーL4とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図11において、レバーL4は直接操作子連結アーム834を介して回転軸844に支持されおり、レバーL4の操作が直接操作子連結アーム834を介してキーK2に伝達されることによって当該キーK2が回動する。
【0071】
さらに、本実施形態において、直接操作子連結アーム834には取付部材804が連結されている。すなわち、取付部材804は直接操作子連結アーム834と一体の部材であるとともに回転軸844からボディ部40の長手方向に対して略平行方向に延びる部材である。また、取付部材804の先端には磁石804aが取り付けられ、当該先端と回転軸844との間の位置にはボディ部へ向けた突起が形成され、当該突起の先端に緩衝部材(例えば、コルク)804bが取り付けられる。この例においても、演奏者がレバーL4を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子49が実装されている。
【0072】
演奏者がレバーL4を操作すると、レバーL4は回転軸844を回転中心として回動し、ボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。従って、取付部材804も当該レバーL4の動作に伴ってボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。従って、ホール素子49によって磁石の磁場を検出することによって演奏者によるレバーL4の操作を検出することができる。以上の構成によれば、付部材804を延ばして磁石を所望の位置に配置することができるので、磁石やホール素子を実装するためのスペースを容易に確保することのできる部位に当該磁石やホール素子を実装することが可能になる。
【0073】
以上のように、本実施形態においては、種々の取付部材に対して被検出体を取り付け、当該被検出体をホール素子によって検出する構成を採用している。むろん、取付部材や当該取付部材に取り付ける磁石は、演奏者の操作によって動作するいずれの操作子に対して取り付けられていてもよいが、ベル部20やボウ部30にホール素子が実装される構成は、配線の取り回しが極めて煩雑になる。そこで、本実施形態においては、フレキシブル基板46をボディ部40のみに取り付け、他の部位(ベル部20やボウ部30)に基板を取り付けないようにするため、ボディ部40上で動作する操作部に対して磁石を取り付けている。
【0074】
従って、管楽器本体においてフレキシブル基板46を配置し、ホール素子を実装可能な部位はボディ部40上に限定される。上述のように、ボディ部40上には、管楽器本体をアコースティック楽器として機能させるための複雑な機構が配置されており、磁石やホール素子の実装スペースを自由に確保できるとは限らない。そこで、上述の各種取り付け構造を駆使して磁石を実装することにより、スペースが限られた管楽器本体においても磁石を実装することが可能になり、管楽器本体をアコースティック楽器として機能させるための構成を維持しながら電子楽器に関連した構成要素を実装することが可能になる。
【0075】
(1−2)信号処理回路:
本実施形態にかかるアルトサックス10は、ホール素子に接続された配線を一カ所に集約する構成を採用しており、ユニット70は、これらの配線を集約して各ホール素子の出力信号に基づく処理を行う回路を備えている。すなわち、フレキシブル基板46上に実装されたすべてのホール素子への配線はユニット70からフレキシブル基板46上を伝って、各ホール素子に接続されている。
【0076】
なお、ユニット70は、ベル支柱に対して連結されており、その筐体の内部に信号処理回路を備えている。また、この信号処理回路によって、複数の操作子に対する操作の組み合わせとマウスピース60における口による操作に応じて出力音を示す信号を生成する。図12はユニット70の内部における回路構成を示すブロック図であり、ユニット70は当該図12に示すようにCPU71とメモリ72と差動バッファ73a〜73qを備えている。
【0077】
差動バッファ73a〜73qは入力信号を適宜増幅して出力する回路であり、ウィンドセンサ62a,タンギングセンサ62b,リップセンサ62cの出力信号が差動バッファ73a〜73cに入力され、操作センサ46a〜46n(操作センサの数は独立して動作を検出すべき操作子の数)の出力信号が差動バッファ73d〜73qに入力される。従って、各センサによって検出された信号は適宜増幅されて出力される。
【0078】
CPU71は、メモリ72をワークエリアとして利用しながら所定のプログラムを実行可能であり、本実施形態においては、アナログポートに入力される信号をMIDIデータ(社団法人音楽電子事業協会の登録商標)に変換するプログラムを実行する。また、各差動バッファ73a〜73qの出力信号はCPU71のアナログポートに入力される。従って、CPU71は、各センサの出力信号を取得し、そのレベルに応じて出力音を決定するとともに当該出力音を示すMIDIデータを出力する。当該MIDIデータは図示しないMIDIデータ処理回路に入力され、当該MIDIデータ処理回路における処理によって前記出力音がスピーカーから出力される。すなわち、本実施形態にかかるアルトサックス10が電子楽器として機能する。
【0079】
(2)他の実施形態:
本発明においては、電子楽器に関連する構成要素をアコースティック楽器に対して実装することができればよく、上述の実施形態以外にも種々の構成を採用可能である。例えば、管楽器本体においては、ボディ部と複数の操作子とを備えていればよく、このような管楽器本体はアルトサックスに限られない。例えば、カーブドソプラノ,テナー,バリトンの各サックスやフルート、ピッコロ、クラリネット、オーボエ、ファゴット等に本発明を適用することができる。
【0080】
また、ユニットは、複数の操作子の操作に対応した信号を取得して、前記複数の操作子に対する操作の組み合わせに対応した音を示す信号を出力する回路を備えていればよい。従って、この回路は、上述のようにMIDIデータを出力する回路であってもよいし、ユニット内に複数の操作子の操作に対応した信号を増幅して出力する回路を構成し、外部機器によってMIDIデータを生成する構成としてもよい。
【0081】
さらに、磁石等の被検出体を取り付ける取付部材の構造は、上述の構造に限定されない。例えば、柱状の取付部材を連結する対象となる操作子は指貝に限られず、レバーであってもよい。また、回転軸に対して取付部材を取り付ける構成においては、図7に示すようにレバーや指貝の近くにてそのアームに取り付ける構成としてもよいが、他の構成を採用してもよい。例えば、レバーや指貝と離れた位置において、回転軸に対して単に回転軸と同様の回転動作をする取付部材を設け、当該取付部材によってボディ部40に対して進退する被検出体の動作を検出する構成としてもよい。
【0082】
さらに、取付部材は、被検出体をキーの動作に応じてボディ部40に対して進退させることができればよく、図9に示すような構成に限られない。例えば、回転軸やキー連結アーム等に取付部材の一端を連結するとともに、当該取付部材を複数回屈曲させながらキーの上を跨ぐように構成し、回転軸やキー連結アームの逆側において取付部材の他端に磁石を取り付ける構成としてもよい。むろん、ひとつの管楽器において、上述の取り付け構造1〜6のすべてを採用してもよいし、少なくともひとつを採用してもよく、各構造を任意に組み合わせることが可能である。
【0083】
さらに、被検出体は、複数の操作子のボディ部に対する相対的な動作を検出するための検出対象となればよく、磁石に限定されない。例えば、光センサを利用する場合には、当該光を反射あるいは吸収する物体等を被検出体とする構成等を採用可能であるし、物理的な接触を検出するスイッチを利用する場合には、当該接触が検出されるべき物体の部分が被検出体となる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】管楽器本体を示す左側面図である。
【図2】管楽器本体を示す背面図である。
【図3】管楽器本体を示す正面図である。
【図4】管楽器本体を示す右側面図である。
【図5】ネック部およびマウスピースの右側面図である。
【図6】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図7】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図8】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図9】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図10】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図11】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図12】ユニットの内部における回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
10…アルトサックス、20…ベル部、30…ボウ部、40…ボディ部、46…フレキシブル基板、49…ホール素子、50…ネック部、60…マウスピース、70…ユニット、80,800〜804…取付部材、83,804a…磁石、84…突起、830,833,834…直接操作子連結アーム、831,832…キー連結アーム、840,842〜844…回転軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器およびアコースティック楽器のいずれとしても利用可能な管楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
管楽器を電子楽器として構成するため、従来、指による演奏操作を検出するためのセンサを実装する手法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】実開昭63−47397号公報
【特許文献2】特開2005−316417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
演奏者の指にて直接操作する指貝やレバーのみについて動作を検出しても、演奏者の高度な演奏技術を忠実に反映するように各動作を検出することは困難であった。また、管楽器をアコースティック楽器と電子楽器とのいずれとしても利用できるようにするために、指による演奏操作を検出するセンサをアコースティック楽器に対して実装することが困難であった。
すなわち、指貝やレバーにおいてはその部材の撓みなどが生じ得るため、すべての操作を指貝やレバーにて検出する構成は出力音の決定精度上、好ましくない。
【0004】
また、アコースティック楽器としての管楽器はキーを回動させて音孔を開閉するための複雑な機構を備えている。従って、電子楽器およびアコースティック楽器のいずれとしても利用可能な管楽器を提供するためには、これらの複雑な機構を維持したまますべてのキーの開閉を検出するためのセンサや当該センサの検出結果に対応した音を出力するための回路などを実装する必要がある。しかし、アルトサックスなど一般的なアコースティック管楽器においては、その本体に上述の機構が高密度で備えられており、この機構とセンサに関連した電子回路との双方を、操作性の低下を誘発することなく管楽器本体に実装して実用性のある管楽器を提供することは困難であり、製品化に至っていなかった。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、必要十分な精度でセンシングを行うことが可能なセンサを実装し、また、狭い空間に対して多数のセンサを確実に実装することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる管楽器の本体は、複数の操作子とボディ部とを備え、管楽器を電子楽器として機能させるために、当該複数の操作子の前記ボディ部に対する相対的な動作を検出する動作検出手段を備えている。また、前記複数の操作子は、複数の音孔のそれぞれを開閉するための複数のキーを含み、本発明にかかる管楽器においては、複数のキーの少なくともひとつにおいて、当該キーと一体の部材に対して取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている。
【0006】
すなわち、管楽器において、口による操作との組み合わせによって音を決定する要素は管楽器本体における音孔の開閉状態であり、当該音孔を開閉する部材が各音孔に対応した複数のキーである。そこで、キーのうち、少なくとも一つには当該キーと一体になっている部材に対して取付部材を取り付け、当該取付部材に当該キーの動作を検出するための被検出体が取り付けられている構成とした。
【0007】
この構成により、音を決定する最も直接的な要素であるキーの開閉を、少なくとも一つのキーにおいて直接的に検出することができ、少なくとも一つのキーにおいては音を決定するキーの動作を正確に検出することが可能になる。このため、演奏者の演奏技術を忠実に反映した音を出力するための検出を行うことができる。
【0008】
また、管楽器においては、当該管楽器をアコースティック楽器として機能させるための複雑な機構を備えているが、キーの少なくとも一つ(好ましくは複数)に対してその動作を検出するための被検出体を取り付け、当該被検出体によって操作子のボディ部に対する相対的な動作を検出する構成とすることは容易である。従って、アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための要素を容易に実装することが可能である。
【0009】
ここで、複数の操作子は、管楽器から出力する音を調整するための操作子であればよく、音を調整するために動作するすべての部材が含まれる。例えば、音孔を開閉するためのキー,キーを動作させるための指貝やレバー,指貝やレバーに連動して動作する各種のアーム,キーを回動可能に支持する回転軸などが含まれる。
【0010】
また、ボディ部は、管楽器本体の一部を構成する管体であり、管楽器本体において指で直接操作する操作子が取り付けられた管体である。むろん、管楽器本体は、他に、ベル部やボウ部を備えていてもよいし、屈曲した管体を備えていなくてもよい。従って、本発明は、各種の管楽器、例えば、カーブドソプラノ,アルト,テナー,バリトンの各サックスやフルート、ピッコロ、クラリネット、オーボエ、ファゴット等に適用することができる。むろん、管楽器本体には、管楽器をアコースティック楽器として機能させるための各部品が取り付けられていてもよいし、他の部品(例えば、ネック部)を連結可能であってもよい。
【0011】
さらに、動作検出手段は、音を特定するため、複数の操作子のボディ部に対する相対的な動作を検出することができればよい。従って、当該検出のための構成は、操作子のいずれの部位におけるボディ部に対する動作を検出する構成としてもよい。例えば、上述のキー,指貝,レバー,アーム,回転軸等の動作を検出するセンサを採用することが可能である。センサはキー,指貝,レバー,アーム,回転軸等の動作を検出することができればよく、キー,指貝,レバー,アーム,回転軸等に連動するように取付部材に取り付けられた被検出体によって動作を検出する構成(例えば、マグネットとホール素子との組み合わせ)を採用可能である。
【0012】
むろん、動作を検出するための素子はホール素子に限定されず、導電ゴムと抵抗体との組み合わせや、各種の光センサ,磁気センサ,スイッチ等を採用可能である。なお、いずれの構成においても、磁場や位置、光、接触の有無など、検出対象が存在し、当該検出対象そのものや検出対象を生成する物体が被検出体となる。例えば、上述のマグネットは被検出体である。
【0013】
また、操作子の動作を検出したときには、その検出結果を示す信号に基づいて複数の操作子に対する操作の組み合わせを特定して音を特定するための回路に当該信号を入力すればよい。なお、動作検出手段においては、複数の操作子に対する操作を検出することによって音を特定することができればよく、少なくとも独立した動作が可能な各操作子についてその動作を検出することができればよい。従って、必ず連動して動作する複数のキーについてはその一方のキーについて動作を検出する構成としてもよい。
【0014】
さらに、本発明においては、できるだけ正確に音孔の開閉を検出するためにキーの動作を直接的に検出することができればよく、この意味でキーと一体の部材に取付部材を連結すればよい。なお、キーと一体の部材には、キー自体およびキーに対して不可分に連結された部材が含まれるが、キーの動作を誤差なく正確に反映するためにはキーに極めて近い位置にある部材(例えば、キーに連結されたアームやキーに連結された指貝等)であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明においては、少なくともひとつのキーについて当該キーと一体の部材に取付部材を連結すれば、少なくともこのキーについて音孔の開閉を正確に検出するという効果を奏するが、むろん、できるだけ多くのキーについて、当該キーと一体の部材に取付部材を連結してその動作を直接的に検出することが好ましい。例えば、ボディ部において電子楽器に関連した構成要素を実装可能な面積を考慮して、できるだけ多くのキーについてその動作を直接的に検出する構成としたり、動きの激しい操作子や使用頻度の高い操作子に連動するキーについて優先的にキーの動作を直接的に検出する構成としてもよい。
【0016】
さらに、被検出体がキー以外の操作子にも取り付けられる構成を採用してもよい。例えば、演奏者が指で直接する直接操作子(例えば、複数の指貝と複数のレバー)の少なくともひとつに取付部材を連結し、当該取付部材に被検出体を取り付ける構成としてもよい。この構成によれば、指で直接操作する指貝やレバーの動作を直接的に検出することができるので、演奏者の演奏技術を忠実に反映した音を出力するための検出を行うことができる。
【0017】
この構成において、指貝やレバーは、もっぱら管楽器本体のボディ部側に近づき、また、遠ざかる動作をするので、この動作を検出できるように取付部材を構成すればよく、例えば、指貝やレバーからボディ部側に延びる部材によって前記取付部材を構成し、当該取付部材の先端に被検出体を取り付ける構成を採用可能である。この構成によれば、ボディ部側に当該被検出体の動作を検出するセンサを実装することによって容易に操作子としての指貝やレバーの動作を検出することが可能になる。むろん、この構成において、取付部材がボディ部に接触する衝撃を和らげるために取付部材やボディ部に緩衝部材を取り付ける構成等を採用してもよい。
【0018】
さらに、被検出体が回転軸に支持される取付部材に取り付けられる構成としてもよい。例えば、複数のキーを回動可能に支持する回転軸の少なくともひとつに取付部材が回動可能に連結すると、当該取付部材はキーの開度に連動して回動することとなる。そこで、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体を取り付ければ、キー等を含む操作子の動作に連動した動作を被検出体によって検出することができる。
【0019】
この構成は、キーや指貝,レバー等と異なる部位における動作を検出する構成となる。しかし、この構成を採用すれば、キーや指貝,レバーの付近に被検出体や当該被検出体を検出するためのセンサを実装する面積が小さい場合であってもアコースティック楽器としての構成要素を変更することなく、他の代替部位に対して容易に被検出体やセンサを実装することができる。
【0020】
むろん、ここでは、取付部材を回転軸に対していずれの方向に延ばしてもよい。すなわち、取付部材に取り付けられた被検出体の動作を検出することによって操作子のボディ部に対する相対的な動作を検出することができればよい。従って、操作子の動作に応じて取付部材がボディ部に対して相対的に動作する限りにおいて、当該取付部材を回転軸から見てキーと逆側に延ばしてもよいし、キーと同じ側に延ばしてもよく、種々の構成を採用可能である。
【0021】
さらに、キーの動作を直接的に検出するための構成例として、指貝と貝皿とが備えられたキーにおいて貝皿に対して取付部材を連結する構成を採用してもよい。すなわち、指貝と一体になっているキーは最も動きが激しく使用頻度が高いので、当該キーの動作を直接的に検出することが好ましい。このようなキーを備える、例えば、アルトサックスなどの管楽器においてはキーと貝皿とが一体に構成されるとともに当該貝皿の上に指貝が取り付けられ、かつ、貝皿がキーから飛び出しているものが存在する。
【0022】
そこで、この構成において貝皿の下に貝皿からボディ部に向けて延びる取付部材を連結し、当該取付部材の先端に被検出体を取り付ける構成とすれば、演奏者の指の操作に従って動作するキーの動きを極めて正確に検出できるように被検出体を操作子に対して実装することが可能になる。
【0023】
さらに、キーの動作を直接的に検出するためにキーに対して取付部材を取り付ける構成例として、当該キーのキー連結アームに取付部材を取り付ける構成としてもよい。すなわち、キーは略円盤状であって、当該円の大半は音孔に対応しているため、その動作を検出するためにはその周の部分に被検出体を実装することが要求されるが、キーは音孔を開閉するために極めて重大な部品であるため、その周の部分であってもキーに対して直接的に細工を施すことをさけたい場合も多い。そこで、キーが連結されたキー連結アームに対して取付部材を取り付ける構成とすれば、キーに対して直接的に細工を施すことなく取付部材とキーとを連動させることが可能になる
【0024】
なお、当該キー連結アームに対する取付部材の取り付け態様は種々の態様を採用可能であり、キー連結アームとボディ部との間においてキー連結アームからボディ部に延びる取付部材を当該キー連結アームに対して連結してもよいし、キー連結アームからキーを跨ぐようにしてキーの逆側のボディ部まで延びる取付部材を当該キー連結アームに対して連結してもよく、種々の構成を採用可能である。
【0025】
さらに、当該キー連結アームに連結された取付部材を、キーの外周に沿って延びる部位を備える部材とし、キーの外周やその付近に被検出体を配置してその動作を検出する構成としてもよい。この構成においては、キー連結アームに対して取り付けた取付部材をキーの外周に沿って延ばすことにより、当該取付部材に取り付けた被検出体を、ボディ部に実装するセンサによって容易に検出することが可能になる。
【0026】
すなわち、キーの円形において大半の面積を占める部分は音孔に対応しているため、ボディ部にてキーの動作を検出するためには音孔の周囲のボディ部にセンサを実装する必要があるが、上述のように取付部材をキーの外周に沿って延ばす構成とすれば、極めて容易に、センサを実装可能な部位に被検出体を配置することが可能になり、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装することが可能になる。
【0027】
さらに、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装するための構成例として、指貝やレバー等の直接操作子を回転軸に対して連結するための直接操作子連結アームに、取付部材を連結する構成としてもよい。すなわち、直接操作子(複数の指貝と複数のレバー)のなかには、回転軸に対して回動可能に支持されるものが存在し、直接操作子を回転軸に対して回動可能に支持する部材として直接操作子連結アームが存在する場合に、当該直接操作子連結アームに対して取付部材を連結する。
【0028】
当該直接操作子連結アームは、回転軸と指貝、あるいは回転軸とレバーの間で指貝やレバーの動作に伴って動作するため、直接操作子連結アームに連結された取付部材も同様の動作を行う。従って、当該取付部材に被検出体を取り付けることにより、操作子の動作を検出することが可能になる。また、操作子の動作を検出するための構成として多用な選択肢を提供することができるので、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装することが可能になる。
【0029】
なお、当該直接操作子連結アームに対する取付部材の取り付け態様は種々の態様を採用可能であり、直接操作子連結アームとボディ部との間において直接操作子連結アームからボディ部に延びる取付部材を当該直接操作子連結アームに対して連結してもよいし、別の位置まで延びる取付部材を当該直接操作子連結アームに対して連結してもよく、種々の構成を採用可能である。
【0030】
さらに、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装するための構成例として、前記直接操作子連結アームに対して前記回転軸の逆側に延びる取付部材を連結する構成としてもよい。すなわち、直接操作子連結アームは回転軸と指貝、あるいは回転軸とレバーを連結する部材であるため、連結される両者の間に存在するが、当該両者の間に被検出体やそのセンサを実装するための面積を確保できない場合がある。
【0031】
この場合、取付部材を回転軸の逆側に延ばす構成とすれば、取付部材を延長した部位に被検出体やそのセンサを実装するための面積を確保できる場合がある。このため、操作子の動作を検出するための構成として多用な選択肢を提供することができるので、高密度に部品が実装されているアコースティック楽器に対して、当該アコースティック楽器を電子楽器として機能させるための構成要素を実装することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)管楽器の構成:
(1−1)被検出体の取り付け構造:
(1−1a)取り付け構造1:
(1−1b)取り付け構造2:
(1−1c)取り付け構造3:
(1−1d)取り付け構造4:
(1−1e)取り付け構造5:
(1−1f)取り付け構造6:
(1−2)信号処理回路:
(2)他の実施形態:
【0033】
(1)管楽器の構成:
図1〜図4は本発明にかかるアルトサックスの管楽器本体を示す図であり、図1〜図4はそれぞれ、アルトサックスのボディ部40(2番管),ボウ部30(1番管),ベル部20(朝顔管)を示す左側面図,背面図,正面図,右側面図であり、図5はネック部50およびマウスピース60の右側面図である。なお、本明細書においては、演奏者がアルトサックス10を構えた状態において演奏者から見た方向をアルトサックス10における方向に対応づけており、アルトサックス10を構えた状態における演奏者の上下左右前後の各方向をアルトサックス10の上下左右前後の各方向としている。
【0034】
これらの図に示すように、ベル部20はボウ部30に連結されボウ部30はボディ部40に連結されており、ボウ部30が屈曲した管体であることによってベル部20とボウ部30とボディ部40とはボディ部40からベル部20にかけて屈曲した一つながりの管体となっている。また、ボディ部40とベル部20とはベル部20の上部付近にてベル支柱に連結されている。なお、図に示すようにボディ部40が上下方向に長い管体であることからアルトサックス10の長手方向(ボディ部40が延びる方向)は図における上下方向である。
【0035】
本実施形態におけるアルトサックス10は、電子楽器およびアコースティック楽器のいずれとしても利用可能な管楽器であり、アコースティック楽器として機能するように、各種の操作子は従来のアコースティック楽器と同様の構成となっている。すなわち、ボディ部40とボウ部30とベル部20とにおいては、音の高さを選択するための音孔が形成されており、各音孔には当該音孔を開閉するためのキーが対応している。例えば、ボディ部40には、高音側のHighF#キー40aから低音側のDキー40bまで複数の音孔に対応したキーが備えられている。また、ボウ部30には、LowCキー30aやLowC#キー30b等が備えられ、ベル部20には、LowBキー20aとLowB♭キー20bとが備えられている。
【0036】
これらのキーはボディ部40に取り付けられた回転軸に対して回転可能に支持されている。例えば、HighF#キー40aにはキー連結アーム42aが連結され、当該キー連結アーム42aはボディ部40の表面に対して略垂直方向に延びる柱状部材に取り付けられた回転軸41aに支持されている。従って、当該回転軸41aがその軸を中心に回転すると、その回転動作がキー連結アーム42aを介してHighF#キー40aに伝達され、当該回転動作に対応してHighF#キー40aが回動する。
【0037】
同様に、LowCキー30aにはキー連結アーム32aが連結され、当該キー連結アーム32aはボディ部40に取り付けられた回転軸31aに対して連結されている。従って、回転軸31aにおける回転動作に対応してLowCキー30aが回動する。LowB♭キー20bにはキー連結アーム22bが連結され、当該キー連結アーム22bはボディ部40に取り付けられた回転軸21bに対して連結されている。従って、回転軸21bにおける回転動作に対応してLowB♭キー20bが回動する。また、HighFキー40c等のように、ボディ部40の長手方向と略垂直に設けられた回転軸41cに対して回動するキー連結アーム42cに対して連結されたキーも存在する。
【0038】
さらに、これらのキーを回動させるための操作は、指貝やレバーによってなされる。すなわち、ボディ部40の上部には左手の指によって操作するための指貝43a〜43eやレバー44a〜44e、右手の指によって操作するための指貝43f〜43hやレバー44f〜44lが備えられている。また、これらの指貝43a〜43e,43f〜43hやレバー44a〜44e,44f〜44lは、キーを開閉するために直接操作する直接操作子となる。すなわち、直接操作子連結アームを介して回転軸に連結される指貝やレバーを操作することにより、回転軸を介してキーを開閉することができる。また、キーに対して直接的に取り付けられた指貝を介してキーを開閉することができる。
【0039】
例えば、レバー44iは図示しない直接操作子連結アームや他の回転軸を介して回転軸41aに連結されているので、当該レバー44iに対する操作によってHighF#キー40aを開閉することができる。また、レバー44cは直接操作子連結アーム45cを介して回転軸41cに連結されているので、当該レバー44cに対する操作によってHighFキー40cを開閉することができる。また、指貝43hはDキー40bに対して直接的に取り付けられているので、指貝43hに対する操作によってDキー40bを開閉することができる。
【0040】
なお、指貝43a〜43hとレバー44a〜44lとは演奏者の指によって操作される部位であり、これらの指貝43a〜43hとレバー44a〜44lとの付近に指を配置するため、アルトサックス10はサムレスト48aとフィンガーフック48cとを備えている。すなわち、サムレスト48aは左手の親指を置くための部材であり、アルトサックス10の上部においてレバー44a〜44cの後方に設けられる。また、フィンガーフック48cは右手の親指を掛けるための略鉤型の部材であり、アルトサックス10の下部において指貝43f,43gの後方に設けられる。また、ボディ部40の後方の中央部には、演奏者の首に掛けるストラップを取り付けるためのストラップ掛部48bが形成されている。
【0041】
さらに、本実施形態にかかるアルトサックス10においては、ボディ部40に対して図5に示すネック部(吹込管)50を連結することが可能である。ネック部50は、屈曲した管体によって構成されるとともに、一方の端部がボディ部40に対して挿入可能な連結部51であり、他方の端部にはマウスピース60を連結するためのコルク52が取り付けられている。また、ネック部50においてはボディ部40の機構に連動することによって音孔を開閉可能なオクターブキー50aが備えられている。
【0042】
マウスピース60は、コルク52に対して取り付け可能であり、本実施形態においては、2種類のマウスピースが用意される。すなわち、リガチャーによってリードを取り付ける中空のマウスピースと、ウィンドセンサ,タンギングセンサ,リップセンサが備えられたマウスピースとが用意され、アコースティック楽器として使用する場合には前者、電子楽器として使用する場合には後者をコルク52に対して取り付ける。
【0043】
図5においては、電子楽器として利用する際のマウスピース60を図示している。当該マウスピース60は、上述のウィンドセンサ,タンギングセンサ,リップセンサによって検出した口による操作に対応した信号が信号線61に出力される。
【0044】
なお、ウィンドセンサは、マウスピース60に口から吹き込まれる息圧を検出するセンサであり、例えば、圧力センサ等で構成することができる。タンギングセンサは、マウスピース60の先端部に対する舌の接触を検出するセンサであり、例えば、光センサ等で構成することができる。リップセンサは、マウスピース60に対して唇が押しつけられている度合いを検出するセンサであり、例えば、圧力センサ等で構成することができる。以上の構成により、マウスピース60においては、口による操作を検出し、検出した操作に対応する信号を信号線61から出力することができる。
【0045】
信号線61の先端はコネクタ61aとなっており、ボディ部40に取り付けられた筒状部47が備えるコネクタ47aに接続される。すなわち、筒状部47は、軽金属(例えば、アルミ)によって構成された筒状の部材であって、ボディ部40の上部に取り付けられているとともに、コネクタ47aに対して導通する信号線が筒状部47の内部を貫通している。また、筒状部47における下方の端部には、フレキシブル基板46に対して接続されるコネクタ47bが形成されており、当該コネクタ47bを介してフレキシブル基板上の配線に上記信号線61から出力する信号が伝達される。以上の構成により、本実施形態においては、マウスピースにおける口による操作に対応した信号を筒状部47内の信号線によってフレキシブル基板46に伝達し、さらに、後述するユニット70内の回路に伝達する。
【0046】
(1−1)被検出体の取り付け構造:
一方、ボディ部40においては、図1〜図4に示すように複数の操作子を備えており、これらの操作子に対する操作を検出するために、ボディ部40においては、複数の操作センサを備えている。本実施形態においては、操作センサとしてホール素子を採用しており、キー,指貝,レバー,アーム,回転軸等の操作子に対して取付部材を連結し、当該取付部材に対して磁石(被検出体)を取り付ける構成とした。従って、当該磁石による磁場の変化を当該ホール素子にて検出することによって複数の操作子に対する操作を検出することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、フレキシブル基板に当該ホール素子およびホール素子に対する配線を実装し、ボディ部40に対して取り付ける構成とした。図1および図2においては、当該フレキシブル基板46をハッチングによって示している。当該フレキシブル基板46は、可撓性のある基板であり、テーパー状のボディ部40に巻き付けるようにして取り付けられる。なお、フレキシブル基板46においては、複数のホール素子およびホール素子に対する配線を実装した後に、その表面を保護部材で保護してある。
【0048】
(1−1a)取り付け構造1:
以下、本実施形態において採用している被検出体の取り付け構造を説明する。図6は直接操作子であるレバーに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるレバーL0とボディ部40との間をボディ部40側から見た斜視図である。図6において、レバーL0とボディ部40との間には、レバーL0からボディ部40側に延びる取付部材80が連結されている。本実施形態において、当該取付部材80はレバーL0からボディ部40側に延びる部材81と当該取付部材80の途中で略直角に屈曲されてボディ部40に対して略平行に延びる部材82とを備えている。
【0049】
演奏者がレバーL0を操作することにより、レバーL0はボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行うが、取付部材80は当該レバーL0に連結されているため、当該レバーL0の動作に伴って取付部材80はボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。なお、部材82においては、当該部材82がボディ部40に対して激突しないように取付部材80の途中で屈曲されるが、本実施形態においては、より確実に激突を防止するために部材82においてボディ部40方向に延びる突起84が形成され、突起84の先端に緩衝部材(コルク等)84aが連結されている。
【0050】
また、部材82には磁石83が取り付けられており、演奏者がレバーL0を操作することによって磁石83が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子49が実装されている。従って、当該ホール素子49によって磁石83の磁場を検出することによって演奏者によるレバーL0の操作を検出することができる。
【0051】
(1−1b)取り付け構造2:
図7は直接操作子であるレバーに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるレバーL1とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図7において、レバーL1は直接操作子連結アーム830を介して回転軸840に支持されおり、レバーL1は当該回転軸840を中心に回動することができる。
【0052】
直接操作子連結アーム830に対しては、当該直接操作子連結アーム830とほぼ同じ曲率であるがより長い部材である取付部材800が連結されている。当該取付部材800は、直接操作子連結アーム830と同じ回転軸840に対して回転可能に支持され、本実施形態においては、回転軸840を基準にしてレバーL1と逆側に延びるように配置されている。
【0053】
また、本実施形態において、当該取付部材800は回転軸840を基準にしてレバーL1と逆側に延びる部材810と当該部材810に対して略直角に取り付けられた部材820とを備えている。演奏者がレバーL1を操作すると、レバーL1はボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行うので、部材820は当該レバーL1の動作に伴ってボディ部40から遠ざかり、また、ボディ部40に対して近づく動作を行う。
【0054】
この例においても、部材820には磁石が取り付けられており、演奏者がレバーL1を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子が実装されている。従って、当該ホール素子によって磁石の磁場を検出することによって演奏者によるレバーL1の操作を検出することができる。
【0055】
以上の構成においては、回転軸840を基準にしてレバーL1と逆側に磁石およびホール素子を実装するので、回転軸840よりもレバーL1に近い比較的複雑な構成部位に磁石やホール素子を実装することなく、スペースに余裕のある部位にて磁石やホール素子を実装することが可能になる。むろん、管楽器のボディ部40において回転軸840よりもレバーL1に近い部位においてスペースに余裕がある場合には、取付部材800を回転軸840に対してレバーL1側に伸びるように構成してもよい。
【0056】
(1−1c)取り付け構造3:
図8はキーに一体化された指貝に対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるキーK0と指貝L2とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図8において、キーK0はキー連結アーム831を介して回転軸841に支持されおり、キーK0は当該回転軸841を中心に回動して音孔を開閉することができる。
【0057】
さらに、キーK0に対しては、当該キーK0によって構成される円盤に対して平行な円盤かつキーK0よりも小さな円盤状の指貝L2が取り付けられている。すなわち、指貝L2は貝皿L2Dに対して指で直接操作するための部材を取り付けることで構成されており、図8に示す例において、指貝L2が構成する円盤の中心はキーK0の外周とほぼ同じ位置にある。従って、貝皿L2Dの一部はキーK0の外周より外側に突出した状態になっている。
【0058】
さらに、本実施形態において、貝皿L2Dとボディ部40との間には、貝皿L2Dからボディ部40へ延びるように円柱状の取付部材801が取り付けられている。演奏者が指貝L2を操作すると、キーK0および指貝L2はボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行うので、取付部材801は当該キーK0の動作に伴ってボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。
【0059】
取付部材801においては、そのボディ部40側の端部に磁石が取り付けられており、演奏者がキーK0を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子49が実装されている。従って、当該ホール素子49によって磁石の磁場を検出することによって演奏者によるキーK0の操作を検出することができる。
【0060】
以上の構成においては、キーK0に対して一体的に構成された指貝L2に対して取付部材801を取り付け、当該取付部材801に磁石を取り付けてその動作を検出する。従って、キーK0の動作を直接的に検出することができ、正確に音孔の開閉を検出することができる。
【0061】
(1−1d)取り付け構造4:
図9はキーに一体化されたアームに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるキーK1とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図9において、キーK1はキー連結アーム832を介して回転軸842に支持されおり、キーK1は当該回転軸842を中心に回動して音孔を開閉することができる。
【0062】
さらに、本実施形態において、キー連結アーム832には取付部材802が連結されている。すなわち、取付部材802は板状の部材を複数回屈曲させて構成された部材であり、キー連結アーム832からキーK1の外周に沿って当該外周の約1/4程度の長さに渡って延びる部材812と、当該部材812からボディ部40側へと延びる部材822とを備えている。
【0063】
演奏者が図示しない直接操作子を操作すると、キーK1は回転軸842を回転中心として回動し、ボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。従って、取付部材802も当該キーK1の動作に伴ってボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。
【0064】
取付部材802の部材822には磁石が取り付けられており、演奏者がキーK1を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子が実装されている。従って、当該ホール素子によって磁石の磁場を検出することによって演奏者によるキーK1の操作を検出することができる。
【0065】
以上の構成においては、キーK1に対して一体的に構成されたキー連結アーム832に対して取付部材802を取り付け、当該取付部材802に磁石を取り付けてその動作を検出する。従って、キーK1の動作を直接的に検出することができ、正確に音孔の開閉を検出することができる。
【0066】
(1−1e)取り付け構造5:
図10は直接操作子である指貝L3を回転軸に連結するためのアームに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、ある指貝L3とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図10において、指貝L3は直接操作子連結アーム833を介して回転軸843に支持されおり、指貝L3の操作が回転軸843によって他の部位に伝達されることによって図示しないキーが回動する。
【0067】
さらに、本実施形態において、直接操作子連結アーム833には取付部材803が連結されている。すなわち、取付部材803は板状の部材を複数回屈曲させて構成された部材であり、直接操作子連結アーム833に連結される部材813と、当該部材813から一旦ボディ部40側へと延びるとともに屈曲されてボディ部40の表面と略平行に延びる部材823とを備えている。
【0068】
演奏者が指貝L3を操作すると、指貝L3は回転軸843を回転中心として回動し、ボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。従って、取付部材803も当該指貝L3の動作に伴ってボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。
【0069】
取付部材803の部材823には磁石が取り付けられており、演奏者が指貝L3を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子49が実装されている。従って、当該ホール素子49によって磁石の磁場を検出することによって演奏者による指貝L3の操作を検出することができる。以上の構成によれば、回転軸843や指貝L3の付近に磁石やホール素子を実装するためのスペースを確保しづらい場合であっても、回転軸843と指貝L3との間においてスペースに余裕のある部位にて磁石やホール素子を実装することが可能になる。
【0070】
(1−1f)取り付け構造6:
図11は直接操作子であるレバーL4を回転軸に連結するためのアームに対して取付部材を取り付けた例を示す図であり、あるレバーL4とボディ部40とを視野に含むように眺めた状態を示す斜視図である。図11において、レバーL4は直接操作子連結アーム834を介して回転軸844に支持されおり、レバーL4の操作が直接操作子連結アーム834を介してキーK2に伝達されることによって当該キーK2が回動する。
【0071】
さらに、本実施形態において、直接操作子連結アーム834には取付部材804が連結されている。すなわち、取付部材804は直接操作子連結アーム834と一体の部材であるとともに回転軸844からボディ部40の長手方向に対して略平行方向に延びる部材である。また、取付部材804の先端には磁石804aが取り付けられ、当該先端と回転軸844との間の位置にはボディ部へ向けた突起が形成され、当該突起の先端に緩衝部材(例えば、コルク)804bが取り付けられる。この例においても、演奏者がレバーL4を操作することによって磁石が最もボディ部40に近づく位置には、フレキシブル基板46上にホール素子49が実装されている。
【0072】
演奏者がレバーL4を操作すると、レバーL4は回転軸844を回転中心として回動し、ボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。従って、取付部材804も当該レバーL4の動作に伴ってボディ部40に対して近づき、また、ボディ部40から遠ざかる動作を行う。従って、ホール素子49によって磁石の磁場を検出することによって演奏者によるレバーL4の操作を検出することができる。以上の構成によれば、付部材804を延ばして磁石を所望の位置に配置することができるので、磁石やホール素子を実装するためのスペースを容易に確保することのできる部位に当該磁石やホール素子を実装することが可能になる。
【0073】
以上のように、本実施形態においては、種々の取付部材に対して被検出体を取り付け、当該被検出体をホール素子によって検出する構成を採用している。むろん、取付部材や当該取付部材に取り付ける磁石は、演奏者の操作によって動作するいずれの操作子に対して取り付けられていてもよいが、ベル部20やボウ部30にホール素子が実装される構成は、配線の取り回しが極めて煩雑になる。そこで、本実施形態においては、フレキシブル基板46をボディ部40のみに取り付け、他の部位(ベル部20やボウ部30)に基板を取り付けないようにするため、ボディ部40上で動作する操作部に対して磁石を取り付けている。
【0074】
従って、管楽器本体においてフレキシブル基板46を配置し、ホール素子を実装可能な部位はボディ部40上に限定される。上述のように、ボディ部40上には、管楽器本体をアコースティック楽器として機能させるための複雑な機構が配置されており、磁石やホール素子の実装スペースを自由に確保できるとは限らない。そこで、上述の各種取り付け構造を駆使して磁石を実装することにより、スペースが限られた管楽器本体においても磁石を実装することが可能になり、管楽器本体をアコースティック楽器として機能させるための構成を維持しながら電子楽器に関連した構成要素を実装することが可能になる。
【0075】
(1−2)信号処理回路:
本実施形態にかかるアルトサックス10は、ホール素子に接続された配線を一カ所に集約する構成を採用しており、ユニット70は、これらの配線を集約して各ホール素子の出力信号に基づく処理を行う回路を備えている。すなわち、フレキシブル基板46上に実装されたすべてのホール素子への配線はユニット70からフレキシブル基板46上を伝って、各ホール素子に接続されている。
【0076】
なお、ユニット70は、ベル支柱に対して連結されており、その筐体の内部に信号処理回路を備えている。また、この信号処理回路によって、複数の操作子に対する操作の組み合わせとマウスピース60における口による操作に応じて出力音を示す信号を生成する。図12はユニット70の内部における回路構成を示すブロック図であり、ユニット70は当該図12に示すようにCPU71とメモリ72と差動バッファ73a〜73qを備えている。
【0077】
差動バッファ73a〜73qは入力信号を適宜増幅して出力する回路であり、ウィンドセンサ62a,タンギングセンサ62b,リップセンサ62cの出力信号が差動バッファ73a〜73cに入力され、操作センサ46a〜46n(操作センサの数は独立して動作を検出すべき操作子の数)の出力信号が差動バッファ73d〜73qに入力される。従って、各センサによって検出された信号は適宜増幅されて出力される。
【0078】
CPU71は、メモリ72をワークエリアとして利用しながら所定のプログラムを実行可能であり、本実施形態においては、アナログポートに入力される信号をMIDIデータ(社団法人音楽電子事業協会の登録商標)に変換するプログラムを実行する。また、各差動バッファ73a〜73qの出力信号はCPU71のアナログポートに入力される。従って、CPU71は、各センサの出力信号を取得し、そのレベルに応じて出力音を決定するとともに当該出力音を示すMIDIデータを出力する。当該MIDIデータは図示しないMIDIデータ処理回路に入力され、当該MIDIデータ処理回路における処理によって前記出力音がスピーカーから出力される。すなわち、本実施形態にかかるアルトサックス10が電子楽器として機能する。
【0079】
(2)他の実施形態:
本発明においては、電子楽器に関連する構成要素をアコースティック楽器に対して実装することができればよく、上述の実施形態以外にも種々の構成を採用可能である。例えば、管楽器本体においては、ボディ部と複数の操作子とを備えていればよく、このような管楽器本体はアルトサックスに限られない。例えば、カーブドソプラノ,テナー,バリトンの各サックスやフルート、ピッコロ、クラリネット、オーボエ、ファゴット等に本発明を適用することができる。
【0080】
また、ユニットは、複数の操作子の操作に対応した信号を取得して、前記複数の操作子に対する操作の組み合わせに対応した音を示す信号を出力する回路を備えていればよい。従って、この回路は、上述のようにMIDIデータを出力する回路であってもよいし、ユニット内に複数の操作子の操作に対応した信号を増幅して出力する回路を構成し、外部機器によってMIDIデータを生成する構成としてもよい。
【0081】
さらに、磁石等の被検出体を取り付ける取付部材の構造は、上述の構造に限定されない。例えば、柱状の取付部材を連結する対象となる操作子は指貝に限られず、レバーであってもよい。また、回転軸に対して取付部材を取り付ける構成においては、図7に示すようにレバーや指貝の近くにてそのアームに取り付ける構成としてもよいが、他の構成を採用してもよい。例えば、レバーや指貝と離れた位置において、回転軸に対して単に回転軸と同様の回転動作をする取付部材を設け、当該取付部材によってボディ部40に対して進退する被検出体の動作を検出する構成としてもよい。
【0082】
さらに、取付部材は、被検出体をキーの動作に応じてボディ部40に対して進退させることができればよく、図9に示すような構成に限られない。例えば、回転軸やキー連結アーム等に取付部材の一端を連結するとともに、当該取付部材を複数回屈曲させながらキーの上を跨ぐように構成し、回転軸やキー連結アームの逆側において取付部材の他端に磁石を取り付ける構成としてもよい。むろん、ひとつの管楽器において、上述の取り付け構造1〜6のすべてを採用してもよいし、少なくともひとつを採用してもよく、各構造を任意に組み合わせることが可能である。
【0083】
さらに、被検出体は、複数の操作子のボディ部に対する相対的な動作を検出するための検出対象となればよく、磁石に限定されない。例えば、光センサを利用する場合には、当該光を反射あるいは吸収する物体等を被検出体とする構成等を採用可能であるし、物理的な接触を検出するスイッチを利用する場合には、当該接触が検出されるべき物体の部分が被検出体となる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】管楽器本体を示す左側面図である。
【図2】管楽器本体を示す背面図である。
【図3】管楽器本体を示す正面図である。
【図4】管楽器本体を示す右側面図である。
【図5】ネック部およびマウスピースの右側面図である。
【図6】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図7】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図8】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図9】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図10】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図11】被検出体の取り付け構造を説明するための斜視図である。
【図12】ユニットの内部における回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
10…アルトサックス、20…ベル部、30…ボウ部、40…ボディ部、46…フレキシブル基板、49…ホール素子、50…ネック部、60…マウスピース、70…ユニット、80,800〜804…取付部材、83,804a…磁石、84…突起、830,833,834…直接操作子連結アーム、831,832…キー連結アーム、840,842〜844…回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の操作子とボディ部とを備える管楽器本体と、
前記複数の操作子の前記ボディ部に対する相対的な動作を検出する動作検出手段とを備え、
前記複数の操作子は、複数の音孔のそれぞれを開閉するための複数のキーを含み、
前記複数のキーの少なくともひとつにおいて、当該キーと一体の部材に対して取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
管楽器。
【請求項2】
前記複数の操作子は、演奏者が指で直接操作する複数の直接操作子を含み、
前記直接操作子の少なくともひとつに取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
請求項1に記載の管楽器。
【請求項3】
前記複数の操作子は、前記複数のキーを回動可能に支持する回転軸を含み、
前記回転軸の少なくともひとつに取付部材が回動可能に連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の管楽器。
【請求項4】
前記複数のキーは、指貝および貝皿が取り付けられたキーを含み、
前記貝皿の少なくともひとつに当該貝皿からボディ部に向けて延びる取付部材が連結されている、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の管楽器。
【請求項5】
前記複数のキーは、当該キーを回転軸に連結するためのキー連結アームを備え、
前記取付部材は前記キー連結アームに連結される、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の管楽器。
【請求項6】
前記取付部材は前記キーの外周に沿って延びる部位を備える部材である、
請求項5に記載の管楽器。
【請求項7】
前記複数の操作子は、演奏者が指で直接操作する複数の直接操作子のそれぞれを回転軸に対して連結するための直接操作子連結アームを備え、
前記直接操作子連結アームの少なくともひとつに取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の管楽器。
【請求項8】
前記複数の操作子は、演奏者が指で直接操作する複数の直接操作子のそれぞれを回転軸に対して連結するための直接操作子連結アームを備え、
前記直接操作子連結アームの少なくともひとつには前記回転軸と逆側に延びる取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の管楽器。
【請求項1】
複数の操作子とボディ部とを備える管楽器本体と、
前記複数の操作子の前記ボディ部に対する相対的な動作を検出する動作検出手段とを備え、
前記複数の操作子は、複数の音孔のそれぞれを開閉するための複数のキーを含み、
前記複数のキーの少なくともひとつにおいて、当該キーと一体の部材に対して取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
管楽器。
【請求項2】
前記複数の操作子は、演奏者が指で直接操作する複数の直接操作子を含み、
前記直接操作子の少なくともひとつに取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
請求項1に記載の管楽器。
【請求項3】
前記複数の操作子は、前記複数のキーを回動可能に支持する回転軸を含み、
前記回転軸の少なくともひとつに取付部材が回動可能に連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の管楽器。
【請求項4】
前記複数のキーは、指貝および貝皿が取り付けられたキーを含み、
前記貝皿の少なくともひとつに当該貝皿からボディ部に向けて延びる取付部材が連結されている、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の管楽器。
【請求項5】
前記複数のキーは、当該キーを回転軸に連結するためのキー連結アームを備え、
前記取付部材は前記キー連結アームに連結される、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の管楽器。
【請求項6】
前記取付部材は前記キーの外周に沿って延びる部位を備える部材である、
請求項5に記載の管楽器。
【請求項7】
前記複数の操作子は、演奏者が指で直接操作する複数の直接操作子のそれぞれを回転軸に対して連結するための直接操作子連結アームを備え、
前記直接操作子連結アームの少なくともひとつに取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の管楽器。
【請求項8】
前記複数の操作子は、演奏者が指で直接操作する複数の直接操作子のそれぞれを回転軸に対して連結するための直接操作子連結アームを備え、
前記直接操作子連結アームの少なくともひとつには前記回転軸と逆側に延びる取付部材が連結され、当該取付部材に前記動作を検出するための被検出体が取り付けられている、
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の管楽器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−25359(P2009−25359A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185562(P2007−185562)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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