説明

管構造体及びその製造方法、管構造体を利用した手すり

【課題】
所要形状を有する管構造体が現場等で簡単に形成できるようにした、管構造体及びその製造方法、管構造体を利用した手すりを提供する。
【解決手段】
手すりTは、管構造体1と、管構造体1を固定するための固定具である固定金具2を備えている。各固定金具2は、管構造体1が上記した壁面の表面に及び階段の傾斜角度に沿った状態で固定できるよう、予め決められた所定箇所に複数設けてある。管構造体1は所要長さの変形性を有する管体10を備えている。管体10内部には芯材11が貫通させて設けてあり、更にモルタル12が芯材11を埋め込むよう充填して固化してある。管体10は、壁面の表面に及び階段の傾斜角度に沿うように曲げて、壁面に取り付けた固定金具2に架け渡した状態で固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管構造体及びその製造方法、管構造体を利用した手すりに関する。 更に詳しくは、所要形状を有する管構造体が現場等で簡単に形成できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建築物は、バリアフリーの思想を取り入れて建てられているものが多い。このような建築物の階段や廊下の壁面には手すりが取り付けられている。前記した手すりは、直棒状やL型状等に形成した手すりの構成部材をつなぎ合わせて、壁面の表面に沿った状態で取り付けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−199319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来からある手すりには、次のような課題があった。
まず、直棒状やL型状等に形成した構成部材をつなぎ合わせるものでは、設計図にしたがって予め決められた長さや形状を有する構成部材を、工場等で決められた数だけ製造しておく必要があった。
【0005】
また、このような手すりの構成部材は、予め工場等で寸法通りに製造した場合であっても、現場では取り付けの対象となる壁面自体がやや設計図からずれて製造されていたりするなど、そのままの状態でつないでぴったり合わせるのは困難である。従って、手すりの取り付けに際しては、通常、現場での合わせ作業が必要であり、このため取付作業は簡単でなく手間が掛かっていた。
【0006】
本発明は管構造体及びその製造方法、管構造体を利用した手すりを提供するものであって、その目的は、例えば、予め手すりを構成するための構成部材となるものを施工箇所に適した長さや形状に形成した状態で用意しておく必要がないようにし、また、構成部材同士のつなぎといった現場での合わせ作業もなくして、取付作業の簡単化及び施工期間の短縮を図ることができるようにすることにある。
更に、本発明の他の目的は、多様な形状の管構造体が簡単に製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては、
変形性を有する管体の中空部内に充填物が充填して固化していることを特徴とする、
管構造体である。
【0008】
第2の発明にあっては、
変形性を有する管体が所要形状に形成してあり、当該管体の中空部内には充填物が充填してあり、当該充填物は固化していることを特徴とする、
管構造体である。
【0009】
第3の発明にあっては、
管体の中空部内には、所要の強度を有しており当該管体の変形に伴って変形可能な芯材が通してあることを特徴とする、
第1または第2の発明に係る管構造体である。
【0010】
第4の発明にあっては、
芯材は、線状体または棒状体と、当該線状体または棒状体が中空部の中心部かまたは実質的に中心部となる位置を通るようにするスペーサとを備えていることを特徴とする、
第3の発明に係る管構造体である。
【0011】
第5の発明にあっては、
芯材を構成する線状体または棒状体は保形性を有することを特徴とする、
第4の発明に係る管構造体である。
【0012】
第6の発明にあっては、
変形性を有する管体を所要形状に形成し、当該管体の中空部内に充填物を充填して固化するか、または上記管体の中空部内に充填物を充填し、固化する前に当該管体を所要形状に形成することを特徴とする、
管構造体の製造方法である。
【0013】
第7の発明にあっては、
充填物を充填する前に管体の中空部内に、所要の強度を有しており当該管体の変形に伴って変形可能な芯材を通すことを特徴とする、
第6の発明に係る管構造体の製造方法である。
【0014】
第8の発明にあっては、
第1,第2,第3,第4または第5の発明に係る管構造体と、
当該管構造体を取付部に固定するための固定具と、
を備えたことを特徴とする、
手すりである。
【0015】
本明細書でいう「管構造体」は、長尺状のものを示しており、その断面形状は特に限定するものではない。例えば、断面略円形状や断面略楕円形状、または断面略三角形状、断面略四角形状、断面略五角形状、断面略六角形状、断面略七角形状、断面略八角形状等の多角形状を有するものが使用できる。
【0016】
本明細書でいう「変形性」の用語は、曲げることができるという意味を含むものとして使用しており、可撓性や柔軟性も含む概念である。
【0017】
芯材は、管体の中空部内の全長にわたり連続した状態で設けることもできるし、断続した状態で設けることもできる。また、芯材は、剛性を有するものや、可撓性または変形性を有するものが使用できる。
【0018】
管体は、変形性を有していれば特に材質は限定するものではなく、例えば、合成樹脂、ゴム、金属等が使用可能である。また、透光性(透明、半透明、不透明性を含む)を有するものでも、不透光性のものでも使用可能である。例えば、管体に透光性を備えたものを使用した場合では、中空部内に発光体を入れることで管体を光らせることができ、管構造体が照明や案内灯として使用可能である。
【0019】
充填物も、充填した後に管体内で固化できるものであれば、特に材料は限定するものではなく、例えば、モルタルや合成樹脂等が使用可能である。また、透光性(透明、半透明、不透明性を含む)を有するものでも、不透光性のものでも使用可能である。
【0020】
管構造体には装飾、標識(案内標識や点字等)や目印等を設けることもできる。これらは特に限定するものではないが、例えば、塗装や印刷(プリント)、シール、包装、成形等によって設けることができる。また、これらは管体の表面に設けることもできるし、透明性または半透明性を有する管体を使用した場合では管体の内部に設けることもできる。更に、管体の全長にわたって設けることもできるし、部分的に設けることもできる。
【0021】
管構造体には発熱手段を設けることもできる。発熱手段を設けることにより管構造体を温めたり冷たくしたりすることが可能である。発熱手段は、温める場合では、例えば、ニクロム線等の発熱体を内蔵したり、芯材に電気を通して発熱させたりすることによって構成できる。また、発熱手段は、管体の全長にわたって設けることもできるし、部分的に設けることもできる。
【0022】
管構造体の表面には、滑り止め手段を設けることも可能である。滑り止め手段は、例えば、管構造体の表面に予め細かい凹凸部を形成したり、滑り止め効果を備えるシール材やシート材を設けたりして構成できる。
【0023】
管構造体には、例えば、表面に光触媒(例えば、酸化チタン等)を設けることもでき、これにより脱臭効果、防汚効果、抗菌効果等を付与することも可能である。なお、これらの効果は光触媒以外の手段によって付与することもできる。
【0024】
本発明に係る管構造体は、手すりの他、例えば、欄干、柵、ベランダ枠、ドアのハンドル、絵画や看板等の額縁材、柱材、各種化粧材、等、多種多様な用途のものに使用できる。
【0025】
本発明に係る管構造体及び手すりは、管体を充填物から取り除いて使用することもできる。つまり、管体は充填物を所要の形状に固化させるための型枠として使用することもできる。
【0026】
(作 用)
本発明に係る管構造体及びその製造方法、管構造体を利用した手すりは、管体を所要形状に形成して当該管体の中空部内に充填物を充填して固化するか、または管体の中空部内に充填物を充填し、固化する前に当該管体を所要形状に形成することで製造される。従って、任意の形状を有する管構造体が簡単に形成できる。
【0027】
芯材を備えるものは、充填物の充填前に管体の中空部内に通し、その後に充填物を充填することで製造される。
【0028】
芯材が、線状体または棒状体と、当該線状体または棒状体が中空部の中心部かまたは実質的に中心部となる位置を通るようにするスペーサとを備えているものは、線状体または棒状体を管体が備える中空部に通して、当該中空部内の略中心部を通る位置に配置することができる。
【0029】
芯材を構成する線状体または棒状体が保形性を有するものは、この芯材によって管体を所要形状に保形することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。
(a)本発明に係る管構造体及びその製造方法、管構造体を利用した手すりは、管体を所要形状に形成して当該管体の中空部内に充填物を充填して固化するか、または管体の中空部内に充填物を充填し、固化する前に当該管体を所要形状に形成することで任意の形状を有する管構造体が簡単に形成できる。従って、例えば、設置する場所の形状に合うよう自由に変形させて対応させることができ、いろいろな形状のものが簡単にできるので、特注品等といった一品物であっても簡単に製造及び施工できる。
【0031】
(b)本発明に係る管構造体及びその製造方法、管構造体を利用した手すりは、上記したように設置する場所の形状に合うよう自由に変形させて対応させて製造することができる。従って、予め施工箇所に適した長さや形状に形成した部材を用意する必要がなく、これらをつないだりすることもない。また、手間のかかっていた部材の現場合わせ等の作業をなくすことができ、施工が迅速にでき、ひいては施工期間の短縮を図ることができる。
【0032】
(c)芯材が、線状体または棒状体と、当該線状体または棒状体が中空部の中心部かまたは実質的に中心部となる位置を通るようにするスペーサとを備えているるものは、線状体または棒状体を管体が備える中空部に通して、当該中空部内の略中心部を通る位置に配置することができる。従って、本発明に係る管構造体及び手すりは、全長にわたって強度に偏りが生じ難く、略均等な強度を備えるようできる。
【0033】
(d)芯材を構成する線状体または棒状体が保形性を有するものは、この芯材によって管体を所要形状に保形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る手すりの一実施の形態を示しており、階段の壁面に取り付けた状態を示す使用状態斜視説明図、
図2は図1に示す手すりの一部を切り欠いた状態を示す断面説明図である。
図3は管体の内部に配置する芯材の一部を示す斜視説明図である。
【0035】
符号Kは手すり構造を示している。手すり構造Kは、取付部である壁面に手すりTを取り付けて構成されている。本実施の形態で示す手すり構造Kは、表面が曲面状の壁面に手すりTを取り付けて構成したが、壁面の形状は特に限定するものではない。
【0036】
手すりTは、管構造体1と、管構造体1を固定するための固定具である固定金具2・・・を備えている。各固定金具2は、管構造体1が上記した壁面の表面に及び階段の傾斜角度に沿った状態で固定できるよう、予め決められた所定箇所に複数設けてある。
手すりTは、管構造体1を壁面の表面に及び階段の傾斜角度に沿うよう曲げた状態で固定金具2・・・に固定して構成されている。
【0037】
管構造体1は所要長さの変形性を有する管体10を備えている。本実施の形態で管体10は、略20mの長さを有し、略30mmの直径(外径)を備える合成樹脂製の不透光性のホースを使用した。管体10には中空部内の空気を抜く空気穴100が所要間隔で複数箇所に形成されている。
【0038】
管体10の中空部である内部には、金属製の芯材11が貫通させて設けてある。芯材11は、所要の引っ張り強度及び変形性を有する線状体であるワイヤー110と、ワイヤー110が管体10内の略中心部を通る位置に配置されるようにする略「十」型状に形成したスペーサ111と、線材を所要ピッチでコイル状に巻いて直径が管体10の内径よりやや径小になるよう形成してある螺旋体112を備えて構成してある。
【0039】
芯材11は、螺旋体112の内部にワイヤー110を貫通させて、螺旋体112とワイヤー110との間にスペーサ111を介在させることで、ワイヤー110が螺旋体112の略中心部を通る位置に配置されるよう組み合わせてある。詳しくはスペーサ111は、交差部近傍をワイヤー110に溶接し、四方の端部を螺旋体112の対応する箇所に溶接して組み合わせてある。スペーサ111はワイヤー110の長さ方向に所要ピッチで取り付けてある。
【0040】
芯材11は、組み合わせた状態で管体10の内部に入れることにより、螺旋体112の外部側が管体10の内面に実質的に当たり、これにより管体10が曲がった状態になってもワイヤー110が管体10内の略中心部を通る位置に配置される。
【0041】
管体10は、壁面の表面に及び階段の傾斜角度に沿うように曲げて、壁面に取り付けた固定金具2に架け渡した状態で固定されている。このとき管体10は、空気穴100が上部に配置されるよう固定される。
【0042】
芯材11が設けられた管体10の内部には、充填物であるモルタル12が芯材11を埋め込むよう充填して固化してある。モルタル12は管体10の内部に入れた後、管体10に振動等を与えたりすることによって、モルタル12と共に管体10の内部に入った空気を空気穴100から抜いた状態で固化してある。なお、管体10内部にモルタル12を充填したときに固定金具2間の部分が撓んでしまうような場合では、固定金具2と同じように管体10を受けて支持するサポート部材を壁面に仮設して、管体10の撓みを防止することもできる。
【0043】
固定金具2は、管体10を載せて受ける受け部20と、ネジ等の固定手段によって壁部に固定される固定部21と、受け部20と固定部21を繋ぐ略「L」型状の連結部22を組み合わせて構成されている。なお、固定金具2は公知構造のものを使用したので詳細な説明は省略する。
【0044】
(作 用)
図1ないし図3を参照して、本実施の形態で示す手すりTの施工方法及び作用を説明する。
手すりTの施工にあたっては、まず、管体10が壁面の表面及び階段の傾斜角度に沿った状態で固定できるよう、固定金具2・・・を壁面の予め決められた所定箇所に複数取り付ける。次に、芯材11を内蔵した管体10を、壁面の表面に及び階段の傾斜角度に沿うよう曲げて、固定金具2の受け部20上に載せて固定する。そして、上記管体10内にモルタル12を充填して固化することによって形成される。
【0045】
上記したように手すりTは、変形性を有する管体10を壁面の表面に及び階段の傾斜角度に沿うように曲げて、壁面に取り付けた固定金具2に架け渡した状態で固定し、内部にモルタル12を充填して固化するだけで形成できるので、施工が簡単である。
【0046】
また、手すりTは、従来のものように直棒状の構成部材やL型状等に曲げた構成部材を施工箇所に適した長さや形状に形成した状態で用意し、これらをつないだりすることもなく、現場で管構造体1の形状を決めることができるので、手間のかかっていた構成部材の現場合わせ等の作業をなくすことができ、施工が迅速にできる。従って、施工期間の短縮を図ることができる。
【0047】
手すりTは、変形性を有する管体10を所要の形状に形成して、その状態で内部にモルタル12を充填して固化することで形成できるので、設置する場所の形状に合うよう自由に変形させて対応させることができる。つまり、いろいろな形状の手すりが簡単にできるので、特注品等といった一品物であっても簡単に製造及び施工できる。
【0048】
手すりTでは、ワイヤー110が管体10内の略中心部を通る位置に配置できるので、全長にわたって強度に偏りが生じ難くなり、略均等な強度を備えるようできる。
【0049】
本実施の形態において固定金具2を構成する受け部20と、固定部21と、連結部22は、いずれも鋳造品で、腐食防止のために全体にメッキが施してあるものを使用した。しかし、固定具はこれに限定するものではなく、例えば、木材、合成樹脂、陶磁器を使用したもの等を使用することもできる。
【0050】
本実施の形態において芯材を構成する線状体はワイヤーを用いたが、これは限定するものではなく、例えば、芯材に保形性を有する針金等を用いた場合では、この芯材によって管体を所要形状に保形することができる。
【0051】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る手すりの一実施の形態を示しており、階段の壁面に取り付けた状態を示す使用状態斜視説明図。
【図2】図1に示す手すりの一部を切り欠いた状態を示す断面説明図。
【図3】管体の内部に配置する芯材の一部を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0053】
K 手すり構造
T 手すり
1 管構造体
10 管体
100 空気穴
11 芯材
110 ワイヤー
111 スペーサ
112 螺旋体
12 モルタル
2 固定金具
20 受け部
21 固定部
22 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形性を有する管体の中空部内に充填物が充填して固化していることを特徴とする、
管構造体。
【請求項2】
変形性を有する管体が所要形状に形成してあり、当該管体の中空部内には充填物が充填してあり、当該充填物は固化していることを特徴とする、
管構造体。
【請求項3】
管体の中空部内には、所要の強度を有しており当該管体の変形に伴って変形可能な芯材が通してあることを特徴とする、
請求項1または2記載の管構造体。
【請求項4】
芯材は、線状体または棒状体と、当該線状体または棒状体が中空部の中心部かまたは実質的に中心部となる位置を通るようにするスペーサとを備えていることを特徴とする、
請求項3記載の管構造体。
【請求項5】
芯材を構成する線状体または棒状体は保形性を有することを特徴とする、
請求項4記載の管構造体。
【請求項6】
変形性を有する管体を所要形状に形成し、当該管体の中空部内に充填物を充填して固化するか、または上記管体の中空部内に充填物を充填し、固化する前に当該管体を所要形状に形成することを特徴とする、
管構造体の製造方法。
【請求項7】
充填物を充填する前に管体の中空部内に、所要の強度を有しており当該管体の変形に伴って変形可能な芯材を通すことを特徴とする、
請求項6記載の管構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1,2,3,4または5記載の管構造体と、
当該管構造体を取付部に固定するための固定具と、
を備えたことを特徴とする、
手すり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−307580(P2006−307580A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132905(P2005−132905)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(500494499)株式会社シマブン (12)
【Fターム(参考)】