説明

管状物の製造方法

スチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなる層を有する管状体(a)とポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなる管状体(b)とを挿入接着してなる管状物の製造方法であって、細管の外径と太管の内径との比(細管外径/太管内径=X)を1<X<1.25とし、前記管状体(a)および/または前記管状体(b)の接着部に吸収波長700〜2,500mmの吸収剤を介在させた後にレーザー光を照射することを特徴とする。特定組成の樹脂組成物および特定内径および外径の管状体を結合することで、結合部位を強固に接着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟な熱可塑性樹脂組成物からなる管状物と、より硬度の高い樹脂組成物とからなる管状物とをレーザー溶着することを特徴とする、管状物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂は、耐熱温度が高く、剛性、耐衝撃性、気体透過性に優れるため、テレビ、ビデオ等の家庭用電気製品、バンパー等の自動車用部品、ビールのコンテナー、荷造り用バンドなどに多用されている。また、剛性の高いポリオレフィン系樹脂に柔軟性を付与するため、熱可塑性ブロック共重合体エラストマーを配合する場合がある。得られる熱可塑性樹脂組成物は、シート、フィルム、チューブ・ホースなどの押出成形品や、ゴーグル、足ひれ、各種グリップ、文房具などの射出成形品とすることができるため、幅広い用途で多用されている。このような樹脂はそれぞれ特有の性質を有するが、用途の拡大、製品の改良などの目的で、異なる複数の樹脂を接着して一部材とした複合体も種々開発されている。
【0003】
一般に、複数の部材から製品を製造する際に、前記熱可塑性樹脂組成物からなる成形品同士を接着したり、または熱可塑性樹脂組成物と他の樹脂とを接着させる場合がある。このような接着工程では、熱可塑性ブロック共重合体エラストマーを有機溶剤に溶解させた溶剤接着剤を塗布して貼り合わせる方法や、ホットメルト接着剤などを塗布し貼り合わせる方法が行われている。しかしながら、前者の方法は接着剤の取り扱いが面倒であり、また、余分な接着剤がはみ出るために接着部付近が汚くなることがある。また、接着力が高まるまでの時間が長いという問題もある。一方、後者のホットメルト接着剤による方法では、接着作業の前に接着剤を加温する必要があり、接着剤を長時間加熱した場合には粘度変化によってノズル詰まりが発生する場合もある。また、接着品の接着性自体もあまり高くはない。
【0004】
更に、接着剤を塗布しにくいところへ接着するために、成形品同士を熱溶着させる方法があり、例えば、超音波溶着法がある。これは接着個所の形状に合わせた振動子を接着面に直接当てて接着界面を振動させ、摩擦熱を発生させて溶着する方法である。該方法は高い接着力が得られ、かつ平面を接着する場合には比較的綺麗に仕上がるが、柔軟な材料同士を接着させると印加したエネルギーが材料部材に吸収され、この結果、接着しなかったり、または接着不良となる場合もある。特に、曲面形状を持つ成形体を接着する場合には、ホーンの当り具合によって成形品の表面が溶けて外観が低下したり、接着性にばらつきが生じるなどの問題もあった。加えて、接着界面を振動させると削りかすが発生するなど致命的な問題もあり、流体輸送用に使用する場合には、不純物が混入する恐れもある。
【0005】
また、その他の方法として高周波溶着法もある。これは、材料を金型と支持体とで挟み高周波を与えて材料自体を加熱させる方法であるが、ポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物は誘電損失が非常に小さいため発熱が困難で、金型を加温構造にする必要がある。接着性を確保するためにエチレン・酢酸ビニル共重合体などを添加する方法もあるが、熱可塑性樹脂組成物にエチレン・酢酸ビニル共重合体を添加すると著しく透明性を損ない材料の膠着性が増し、一般的な用途には使用できない場合がある。さらに、接着する際にはプレス工程が必要なため、プレス圧によって成形体が変形したり、溶融物がはみ出すなど外観を損なう場合もあった。
【0006】
また、赤外線レーザーを照射する溶着方法もある。レーザー光に対して高い透過性を示す成形体と、レーザー光に対して高い吸収性を示す成形体とを重ね合わせ、レーザー光の透過側からレーザーを照射し、重ね合わせた面を発熱させて接着する方法というものである(特開2001−71384号公報を参照)。
【0007】
また、透明樹脂部材間にレーザー光を吸収する薄い赤外線吸収透明フィルムを介在させ、ここにレーザー光を照射して接着する方法も提案されている(特開2003−181931号公報を参照)。
【0008】
さらに、成形体の接着部にレーザー波長に適合する吸収帯を有する放射線吸収剤を設け、レーザーを照射する方法もある(特表2002−526261号)。実施態様にはシート状の硬質樹脂又は布帛が記載されており、平板状のシート類を重ね合わせた成形体の接着後にプレス工程を行っている。
【発明の開示】
【0009】
ポリオレフィン系樹脂は、耐熱温度、剛性、耐衝撃性、透明性などに優れるため、不純物の混入を目視またはレーザー等の検査器を用いて監視する用途や、流体への気泡混入を監視するために透明性が要求される用途、または管状物の内部汚れを観察して取替え時期を判断できるチューブなどでの需要が高い。しかしながら、硬度が高いために高い気密性を維持して他の樹脂と接着することが容易でなく、特に透明性と密着性を同時に確保することは困難である。例えば、上記特開2001−71384号公報に記載される方法では、材料中にカーボンブラックなどの補助材が添加されるため接合部が黒色に着色され、可視光領域では不透明となる場合がある。このため、成形体の透明性や視認性が必要な用途では不向きである。
【0010】
また、特開2003−181931号公報に記載されている方法では、平面同士の接着には好適であるが、曲面形状や菱形形状、筒状形状などを接着する場合には、接着界面にフィルムをセットする工程が手間となり量産する場合には操作が煩雑である。
【0011】
また、特表2002−526261号の方法では接着後にプレス工程が必要であり、不定形状の成形体や管状物の場合には接着が極めて困難となる。
【0012】
このような現状下、本発明は、ポリオレフィンを含む樹脂からなる管状体を簡便に接着して長尺の管状物を製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、ポリオレフィンを含む樹脂からなる管状体を含む管状物を、透明性を維持しつつ曲面であっても容易に接着する方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、管状物が、スチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物からなる管状体(a)とポリオレフィン系樹脂からなる管状体(b)との連結物の場合には、両者を挿入し、かつレーザー光の吸収剤を介在させてレーザー照射を行うと両管状体の透明性を維持したまま溶着でき、かつ接着強度に優れる管状物を製造できることを見出し本発明を完成させた。
【0015】
特に、両管状体の挿入部の径を特定範囲に調整すると接着力に優れ、プレス工程がなくても接着面を密着して接続することができる。また、管状体(a)のスチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂の配合の割合を変えることで、優れた接着性を維持したまま用途や要求される製品物性などに応じた柔軟性を確保できる。
【0016】
本発明の管状物の製造方法によれば、ポリオレフィン系樹脂からなる管状体(b)にスチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる層を有する管状体(a)を挿入し、接合部をレーザー溶着することで極めて接着強度に優れる管状物を製造することができる。
【0017】
本発明によれば、管状体(a)と管状体(b)との挿入部の内径および/または外径を特定範囲に調整することで、曲面からなる成形体であっても外観を損なわず、しかも高い接着強度で接着することができる。また、過度のレーザー光を照射する必要がないため、処理中に発生しやすい成形体の変形を防止することができる。
【0018】
本発明の管状物は、柔軟な管状体(a)と硬度の高い管状体(b)との連結体であり、異なる特性の樹脂で構成されることを必要とする玩具、日用品、食品容器、雑貨品、弱電部品、自動車部品、医療用具、工業部品などの広範な用途に用いることができる。このような用途としては、流体を輸送する用途において、不純物の混入を目視またはレーザー等の検査器を用いて監視する用途、流体の気泡混入を監視するために透明性が要求される用途、管状物の内部汚れを観察して取替え時期を判断できるチューブなどに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
[図1]実施例および比較例に用いた半導体レーザー照射装置を示した図である。
[図2]実施例1〜3および比較例1において接着された管状体と管状体の接合方法を示した図である。図2において、18は単層管状体(横断面)、19は単層管状体(基材A)、20は単層管状体(基材B)、21は単層管状体(基材C)、22は吸収剤を示す。
[図3]実施例4において接着された管状体と管状体の接合方法を示した図である。図3において、23は3層多層管状体(基材A:横断面)、24は3層多層管状体(基材A)、25は単層管状体(基材B)、26は3層多層管状体(基材C)、27は吸収剤を示す。
[図4]実施例5、6、比較例2において接着された管状体と管状体の接合方法を示した図である。図4において、28は3層多層管状体(基材A:横断面)、29は3層多層管状体(基材A)、30は単層管状体(基材B)、32は吸収剤、33は3層多層管状体(基材C)、39は3層多層管状体(基材C:横断面)を示す。
[図5]実施例7〜9において接着された管状体と管状体の接合方法を示した図である。図5において、34は3層多層管状体(基材A:横断面)、35は3層多層管状体(基材A)、36は単層管状体(基材B:コネクター)、37は3層多層管状体(基材C)、38は吸収剤を示す。
[図6]管状体と管状体を挿入接合した場合の接合部を模式的に示す図である。図6において、10は接合部、20は単層管状体(基材B)、22は吸着剤、23は3層多層管状体(基材A)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の第一は、スチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなる層を有する管状体(a)とポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなる管状体(b)とを挿入接着してなる管状物の製造方法において、細管の外径と太管の内径との比(細管外径/太管内径=X)が、1<X<1.25の関係にある前記管状体(a)と前記管状体(b)との該接合部の前記管状体(a)および/または前記管状体(b)に吸収波長700〜2,500nmの吸収剤を介在させる工程と、
前記管状体(a)と前記管状体(b)とを互いに挿入して接合する工程と、
該接合部にレーザー光を照射して接着させる工程とを含み、
前記管状体(a)の貯蔵弾性率が1.0×10〜6.7×10Paであり、前記管状体(b)の貯蔵弾性率が2×10〜9×10Paであり、かつ管状体(a)よりも管状体(b)の貯蔵弾性率が高い事を特徴とする管状物の製造方法である。
【0021】
本発明の特徴は、前記管状体(a)と前記管状体(b)とを互いに挿入する際に、細管の外径と太管の内径との比(細管外径/太管内径=X)が、1<X<1.25、好ましくは1.001<X<1.2、より好ましくは1.01<X<1.15、特に好ましくは1.02<X<1.10の関係にある前記管状体(a)と前記管状体(b)とを挿入により接合し、これに上記吸収剤を介してレーザー溶着を行うことで、曲面を有する管状体同士を均一かつ密着して接続して管状物を製造する点にある。レーザー溶着による接着は、接着対象物同士を重ねて接合し、レーザー光の吸収剤を介してレーザー光を照射し、接着対象物を物理的接触圧以上の強度で接着するものである。本発明では、管状体同士を一方を他方に挿入して接合する場合に、接着面の圧力が高いほどレーザー溶着後の接着強度が高くなることを見出し、挿入の容易さと接着性とを評価したところ、細管外径/太管内径比が上記範囲にあると、挿入性およびレーザー溶着による接着性に優れることが判明した。なお、本発明において「細管」および「太管」とは、それらの内径、外径によらず、両者を挿入接合した場合に、内側にある管状体を細管とし、外側にある管状体を太管とする。細管外径/太管内径比が1以下であると、挿入は容易であるが太管と細管との接続部に空隙ができ、レーザー溶着による均一な密着が困難となる。一方、細管外径/太管内径比が1.25以上の場合は、接着面圧が高く、レーザー溶着による強度に優れる接着が可能であるが、細管と太管との挿入接合が困難となる。また、Xが1.25以上の場合には、管状体の挿入が困難となる場合がある。
【0022】
本発明においては、管状体(a)と管状体(b)とにおいて、いずれが細管であっても太管であってもよい。従って、硬度が高い管状体(b)を細管とし、柔軟な管状体(a)を太管として連結してもよいし、管状体(b)の両端が異なる内径および外径を有する異形の管状体である場合には、一方を管状体(a)を細管として管状体(b)の内径に挿入し、他方を管状体(a)を太管としてその内径に管状体(b)を連結してもよい。また、管状体(a)および(b)の断面形状は、円形であっても楕円であってもよい。
【0023】
(1)管状体(a)
前記熱可塑性樹脂組成物(A)に使用されるスチレン系エラストマーとしては、芳香族ビニル重合体ブロック(I)と共役ジエン系重合体ブロックまたその水添ブロック(II)とからなるブロック共重合体であることが好ましい。
【0024】
芳香族ビニル重合体ブロック(I)は、芳香族ビニル単量体単位で構成され、このような単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレンなどが挙げられる。これらの中でもコスト面で、スチレンやα−メチルスチレンが好ましい。従って、前記芳香族ビニル重合体ブロックとしては、ポリスチレンやポリα−メチルスチレンが好適に使用される。
【0025】
前記スチレン系エラストマーにおける芳香族ビニル単量体単位の含有量は、10〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜30質量%である。芳香族ビニル単量体単位の含有量が10質量%を下回ると、スチレン系エラストマーの機械的強度が低下する場合がある。一方、芳香族ビニル単量体の含有量が40質量%を越えると、該スチレン系エラストマーの溶融粘度が高くなり、ポリオレフィン系樹脂との均一混合が困難となり、成形加工上の制約を受ける場合がある。芳香族ビニル重合体ブロック(I)の数平均分子量は特に制限されないが、一般には2,500〜20,000の範囲内であることが好ましい。この範囲であれば、柔軟性および成形性に優れたものとなる。
【0026】
上記の共役ジエン系重合体ブロックまたはその水添重合体ブロック(II)としては、ポリイソプレンブロック、イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックおよびポリブタジエンブロックからなる群から選ばれる少なくと1種の重合体ブロックであることが好ましい。より好ましくは、(1)1,2−結合単位および3,4−結合単位の含有量が10〜75モル%であり、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたポリイソプレン、(2)イソプレン/ブタジエンを5/95〜95/5(質量比)の割合で含み1,2−結合単位および3,4−結合単位の含有量が20〜85モル%であり、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたイソプレン−ブタジエン共重合体、または(3)1,2−結合単位の含有量が45モル%以上であり、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたポリブタジエンである。その理由は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が向上し、透明性が良好になるからである。なお、共役ジエン系重合体ブロック及びその水添重合体ブロックの数平均分子量は特に制限されないが、好ましくは10,000〜200,000である。
【0027】
本発明で使用するスチレン系エラストマーとしては、前記芳香族ビニル重合体ブロックが、ポリスチレンまたはポリα−メチルスチレンからなり、共役ジエン系重合体ブロックが、ポリイソプレン、イソプレン/ブタジエンの共重合、ポリブタジエンまたはそれら水素添加物からなることが好ましい。柔軟性に優れると共に透明性を確保することができるからである。
【0028】
なお、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとの結合様式には特に制限はなく、線状や分岐状であってもよく、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。スチレン系エラストマーの分子構造としては、芳香族ビニル重合体ブロックを(I)とし、共役ジエン系重合体ブロックまたはその水添重合体ブロックを(II)とし、nを自然数とした場合に、I−(II−I)n、(I−II)nで表示されるブロック共重合体のいずれであってもよい。さらに、スチレン系エラストマーとしては、上記ブロック共重合体の1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよく、更に、トリブロック型のものとジブロック型のものを混合するなど、異なる分子構造のものを2種以上併用してもよい。なお、本発明で使用するスチレン系エラストマーの数平均分子量は、30,000〜300,000であることが好ましい。
【0029】
本発明の管状体(a)に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高圧法エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレン樹脂、ホモポリプロピレン、エチレンとプロピレンのランダムコポリマー、エチレンブロックを含むブロックタイプのポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン樹脂や環状ポリオレフィンが好適である。上記ポリオレフィン系樹脂は、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。本発明に用いるポリオレフィン系樹脂の溶融粘度は、ASTM−1238に従って230℃、荷重2160gにおいて測定したときのメルトフローレート(MFR)が0.1〜500の範囲内にあることが好ましく、2〜200の範囲であればより好ましい。メルトフローレートが上記範囲にあれば、成形性に優れるからである。
【0030】
前記熱可塑性樹脂組成物(A)は、上記スチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含み、組成物中のスチレン系エラストマーの含有量は5〜85質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%である。スチレン系エラストマーが85質量%を超えると、成形加工性や膠着性、また、縦方向と横方向の硬さが異なるなどの材料の異方性が発生する場合がある。また、5質量%を下回ると、例えば食品や医療用途に使用されるため除菌や滅菌を目的に放射線照射を受ける場合に、ポリプロピレンの分子量低下が起こり材料物性が低下する場合がある。なお、ポリオレフィン系樹脂の好ましい配合量は、該組成物(A)中に15〜95質量%である。
【0031】
更に、上記熱可塑性樹脂組成物(A)には、その特性を損なわない範囲でプロセスオイルを含有していてもよい。プロセスオイルを含有させることにより、管状体(a)に柔軟性を付与することができる。配合できるプロセスオイルとしては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系のプロセスオイル、それら混合物などのいずれかが使用でき、その中でもパラフィン系プロセスオイルが好適に用いられる。
【0032】
更に、上記熱可塑性樹脂組成物(A)には透明性を損なわない範囲で必要に応じて各種の他の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば無機充填材、滑剤、各種安定剤、ブロッキング防止剤、耐候性向上剤、加工助剤、などを挙げることができる。
【0033】
上記熱可塑性樹脂組成物(A)の調製方法は特に制限されず、公知の方法で混合することにより調整することができる。例えば、単軸押出機や二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどの混練機を用いて均一に混合することによって調整される。
【0034】
本発明において、管状体(a)は、スチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含む上記熱可塑性樹脂組成物(A)からなる層を有する。本発明で使用する管状体(a)は、上記熱可塑性樹脂組成物(A)からなる層の単層構造体であってもよいが、該層を含む2層以上の積層体であってもよい。この際、該層は積層体のいずれに含まれていてもよい。従って、管状体(a)が細管であるか太管であるかを問わず、内層、中間層、外層のいずれであってもよい。熱可塑性樹脂組成物(A)からなる層は、上記構成によって弾性に富むため接合部での柔軟性に富み、このため管状体(b)との挿入接合を容易にすることができ、かつレーザー溶着による接着強度を増強させることができる。
【0035】
なお、本発明では管状体の挿入の容易さやレーザー溶着の際の接着強度を問題とするため、上記熱可塑性樹脂組成物(A)からなる層が、管状体(a)の全体にわたって積層されている必要はない。このような場合には、上記組成物(A)からなる層は、管状体(b)との挿入接合部を構成する積層体のいずれかの層に含まれていればよい。なお、上記組成物(A)からなる層はポリオレフィン系樹脂を含むため、同じくポリオレフィン系樹脂を含む管状体(b)との親和性に優れるため、管状体(b)との接触層を構成することが好ましい。
【0036】
上記管状体(a)の貯蔵弾性率は、1.0×10〜6.7×10Paであり、好ましくは1.0×10〜3.3×10Paである。1.0×10Paを下回るとチューブとして腰がなく取扱い性が低下する場合があり、一方6.7×10Paを上回るとチューブとして硬くなり柔軟性が低下する場合があり、不利である。なお、本願明細書における「貯蔵弾性率」とは、後記する実施例の項で記載した方法で測定した値とする。貯蔵弾性率を評価基準としたのは、チューブの柔軟性と相関が得られるからである。前記貯蔵弾性率は、少なくとも管状体(b)との接合部が上記条件を具備していることが好ましい。
【0037】
なお、管状体において、外圧(p=0)で、内圧のみが作用している場合の内周における半径方向変位uは、次式(1)で示される。
【0038】
=p×r/E/{(r+r)/(r−r)+1/m}・・・(1)
(式中、u:内周における半径方向の変位(m)、p:内周に働く圧力(Pa)、r:内周の半径(m)、r:外周の半径(m)、m:ポアソン数(ポアソン比の逆数)、E:縦弾性係数(Pa)である。)
式(1)に示すように、半径方向変位uは縦弾性係数Eと反比例するため、E値が大きくなると、uが小さくなる。半径方向変位uが小さければ、2本の管状体を挿入する場合に大きな挿入力が必要となることを意味する。そこで本発明では、管状体の細管の外径と太管の内径との比(細管外径/太管内径=X)を、所定範囲に限定すると共に、前記管状体(a)と前記管状体(b)の貯蔵弾性率も所定範囲に限定した。なお、Xが所定範囲を超えると大きな挿入力が必要となることも、上式(1)から理解できる。
【0039】
更に、管状体(a)のヘイズ値は40%以下であることが好ましい。40%を上回ると透明性が損なわれる場合がある。
【0040】
本発明で使用する管状体(a)の形状は、貫通口を有する管状体であり少なくとも管状体(b)との接合部が接合に適する平滑性を有すれば他の部分の形状は問われず、用途に応じて適宜選択することができる。従って、該管状体の全長にわたって同一内径および外径を有する長尺物のほか、例えば、管状体の両端の内径および外径をそれぞれ異にする形状であってもよく、管状体の両端の内径と外径は同じであるが、その中間部が両端の内径および外径と異なっていてもよい。このような管状体は、従来の管状物の製造方法によって製造することができる。
【0041】
(2)管状体(b)
ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物(B)に使用されるポリオレフィン系樹脂は、上記した管状体(a)に使用するものと同じものを使用することができる。この際、管状体(a)と管状体(b)とに配合するポリオレフィン系樹脂は、同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
また、前記ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物(B)におけるポリオレフィンの含有率は20〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜100質量%、特に好ましくは60〜100質量%である。20質量%を下回ると材料特有のべたつきにより挿入性が低下したり、ポリオレフィンの特性である剛性や耐衝撃性に劣る場合がある。
【0043】
ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物(B)を構成する他の樹脂としては、管状体(a)の項で記載したスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどがある。上記熱可塑性樹脂組成物(B)を構成する他の樹脂としては、スチレン系エラストマーであることが好適である。
【0044】
また、熱可塑性樹脂組成物(B)にはその特性を損なわない範囲で必要に応じて各種の他の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば無機充填材、滑剤、各種安定剤、ブロッキング防止剤、耐候性向上剤、加工助剤、などを挙げることができる。
【0045】
前記管状体(b)の貯蔵弾性率は、2×10〜9×10Paであることが好ましく、より好ましくは10×10〜9×10Paである。2×10Paを下回ると特に射出成形の場合には型からの離型性が低下する場合があり、一方9×10Paを上回ると結晶化度が高くなるためヘイズ値が高くなり視認性が低下する場合があり、不利である。更に、管状体(b)の貯蔵弾性率は管状体(a)のそれよりも高い事が好ましい。その理由は、組立ての際のチューブの挿入性に優れ材料コストが安価だからである。なお、上記貯蔵弾性率の特性は、少なくとも管状体(a)との接合部が上記条件を具備していることが好ましい。
【0046】
更に、管状体(b)のヘイズ値は85%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。85%を上回ると透明性が損なわれ内容物の視認が困難となる場合がある。なお、食品や医療用に使用する場合には、気泡などの内容物が確認できることが好ましく、このためヘイズ値は低い方が好ましい。
【0047】
本発明で使用する管状体(b)は、上記ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなり、その形状は、貫通口を有する管状体であり少なくとも管状体(a)との接合部が接合に適する平滑性を有すれば他の部分の形状は問われず、用途に応じて適宜選択することができる。従って、該管状体の全長にわたって同一内径および外径を有する長尺物のほか、例えば、管状体の両端の内径および外径をそれぞれ異にする形状であってもよく、管状体の両端の内径と外径は同じであるが、その中間部が両端の内径および外径と異なっていてもよい。
【0048】
管状体(b)は、従来法によって製造することができ、例えば、管状体(a)を接続するためのコネクタなどの形状であってよい。
【0049】
(c)管状体(a)と管状体(b)との接合
管状体(a)と管状体(b)との接合方法に限定はない。したがって、例えば、垂直な端部を有する細管に、端部を斜めにカットした太管を挿入したり、管状体の接合時に物理的に細管を短時間拡張し、太管を挿入した後にもとの内径に戻す方法などが採用できる。
【0050】
(d)吸収剤
本発明では、管状体(a)と管状体(b)との接合部において、前記管状体(a)および/または前記管状体(b)に、吸収波長700〜2,500nmの吸収剤が介在することが必要である。この際、「接合部」とは、管状体(a)と管状体(b)との接触面に限られず、細管の内側、太管の外側に吸収剤を介在させ、または管状体(a)が積層構造体である場合には、積層体のいずれかの層に吸収剤を含ませていてもよい。同様に、単層の場合であっても、接合部に吸収剤を含ませてもよい。このような吸収剤の介在場所を図6に例示する。従って、本発明における「介在させる工程」とは、積層体の接着部となる層に吸収剤などの染料を含ませることや、接着部の表面に吸収剤を何らかの方法で塗布することなどをいう。
【0051】
本発明で使用する吸収波長700〜2,500nmの吸収剤としては、フタロシアニン、シアニン、アミニウム、イモニウム、スクオリウム、ポリメチン、アントラキノンなどの染料類、カーボンブラックなどの黒色顔料類およびプラスチックス用塗料からなる群から選択される1種類以上を使用することができる。特に、吸収剤に染料類を用いると透明性を有する用途に好適に用いられる。使用量は、従来レーザー溶着に使用される範囲でよい。
【0052】
吸収剤は、溶剤、またはポリマー溶解液、または塗料中に添加されたものを管状体(a)または管状体(b)のいずれか一方、または両方に塗布するか、熱可塑性樹脂組成物(A)または(B)に予め添加しておいてもよい。塗布法としては、ディッピング法やはけにより塗る方法、スプレー塗装、印字用プリンターなどに用いられるインクジェット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、その他、あらかじめ吸収剤を塗布したテープや転写フィルムを貼り付ける方法などが挙げられる。
【0053】
上記の吸収剤を溶解する溶剤として、イソプロパノール、アセトン、メタノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、シクロヘキサン、酢酸ブチル、キシレン、トルエンなどが好ましく、より好ましくはクロロホルム、シクロヘキサノンなどが挙げられる。吸収剤の濃度は好ましくは0.001〜0.3質量%、より好ましくは0.01〜0.2質量%、さらに好ましくは0.02〜0.1質量%である。0.001質量%より薄い場合はレーザー溶着時の発熱量が不足し、0.3質量%を超えるとコストが高くなり不都合である。
【0054】
パッド印刷の場合は、幅が好ましくは1〜50mm、より好ましくは2〜20mm、さらに好ましくは3〜7mmである。幅が1mmより狭い場合は溶着部の強さが不足し、50mmを超える場合は作業性が悪くなる。また、管状体が溶剤をはじくなど塗布性が悪い場合は、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などによって管状体に表面処理を施した後に塗布や貼付を行なってもよい。
【0055】
なお、前記管状体(a)と管状体(b)とを接合した後に吸収剤を介在させることが困難な場合には、前記管状体(a)と管状体(b)との接合前に接合部に吸収剤を介在させておく。一方、前記管状体(a)または管状体(b)を構成する熱可塑性樹脂組成物(A)または熱可塑性樹脂組成物(B)に前記吸収剤が予め添加されている場合には、既に管状体(a)と管状体(b)との接合前に吸収剤が介在されている。
【0056】
(e)レーザー接着
本発明のレーザー接着に用いるレーザーは、一般的な半導体レーザー(波長:800〜960nm)及びYAGレーザー(波長:1096nm)などの透明樹脂を透過しやすい近赤外線レーザーを用いることが望ましい。それ以上の高い波長域になると熱可塑性樹脂組成物(A)やポリオレフィン系樹脂がレーザーを吸収し、接着が困難となる場合がある。特に半導体レーザーは比較的安価であり、熱変換効率も他の波長のレーザーに比べて高いといった利点があり、消費電力の低下が図れるため好ましい。なお、レーザー接着によれば、接着部からの接着剤の溶出を回避でき、得られる管状体の安全性を向上させることができる。
【0057】
(f)管状物
本発明の管状物は、上記管状体(a)と管状体(b)とをレーザー溶着したものであり、用途に応じて至適な管状体を使用することで、各種の中空成形品とすることができる。これらの用途は、例えば、玩具、日用品、食品容器、雑貨、弱電部品、医療用品、自動車部品、工業部品などを挙げることができる。その中でも、透明性が要求される管状物であって、かつ高い接合部の気密性が要求される食品や医療用品、その他、流体の輸送に関し、内容物の観察が必要な用途に好適に用いられる。さらに食品や医療用品の製造において本発明の方法を用いると、管状体からの接着剤などの溶出物を回避できるので安全性の面で好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお、各種物性や性能などの測定、算出または評価は次のようにして行なった。
【0059】
(評価方法)
(1)ポリスチレン重合体ブロックの含有量は、スチレン系エラストマーの製造に用いた全単量体の合計質量に対する、スチレンの使用割合から算出した。
【0060】
(2)スチレン系エラストマーの各重合体ブロック及び全体の数平均分子量は、ポリスチレン換算によるGPC測定によってスチレン重合体ブロックの数平均分子量(Mn)およびスチレン系エラストマー全体の数平均分子量(Mn)を求めた。
【0061】
(3)スチレン系エラストマーの水素添加率は、水素添加前後におけるスチレン系エラストマーのヨウ素価をそれぞれ測定し、それらの測定値より水素添加率(%)を算出した。
【0062】
(4)スチレン系エラストマーの軟質ブロック重合体ブロックにおけるビニル結合量は、NMR測定し、そのスペクトルからビニル結合量を算出した。
【0063】
(5)熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率は、以下の方法で測定した。まず、シート状または円筒状の成形体から、試験片(幅3mm×長さ20mm×厚み1mm)を切り出した。該試験片について、引張型動的粘弾性装置(レオロジ社製、「DVE−4:FTレオスペクトラー」)を使用して、以下の条件にて測定を行った。
【0064】
(測定条件)
測定温度:25℃
チャック間距離:φ10mm
ひずみ率:0.03%
周波数:1Hz(正弦波)
静荷重:自動静荷重制御
(6)ヘイズ値は、以下の方法で測定した。単層および多層の円筒状成形体の場合には、試験片(円筒状、長さ50mm)を切り出し、縦に切断し、湾曲を平面に矯正した。これらの試験片について、全自動直読ヘーズコンピューター(スガ試験機製、「HGM−2DP(C光源用)」を使用して、以下の条件にて測定を行った。なお、実施例1〜実施例3、および比較例2の基材Bは湾曲させるのが困難なため、新たに試験片(縦50mm×横50mm×厚み1mm)のシート状の成形体を作成して代用した。
【0065】
〈測定条件〉
測定温度:25℃
測定面積:φ7mm
光源:ハロゲンランプ(12V、50W)
ヘイズ値の算出方法:
【0066】

【0067】
(製造例1:スチレン系エラストマーの製造)
乾燥し、窒素で置換された耐圧反応器に、溶媒としてシクロヘキサンを4.2kg、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム1.3mol/Lシクロヘキサン溶液を87ml、スチレンを1.0kg加え、40℃にてスチレンを重合した。その後、ルイス塩基としてテトラヒドロフランを0.08kg加えて、イソプレン8.0kg及びスチレン1.0kgを逐次重合させて、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン型のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体をシクロヘキサン中で、Pd/Cを触媒として、1.96Mpaの水素雰囲気下で10時間水素添加反応を行い、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体の水素添加物(以下これを「スチレン系エラストマー」という。)を得た。得られた水添トリブロック共重合体中の数平均分子量は110000、ビニル結合含有量は55%、水素添加率は80%であった。
【0068】
[実施例1]
(1)上記製造例1で得たスチレン系エラストマー85質量%およびポリプロピレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名「F327」、ランダムタイプのポリプロピレン)15質量%をタンブラーにて混合した後、二軸押出機(KRUPP WERNER & PFLEIDERER製「ZSK−25」)に供給し、200℃にて混練した後、ストランド状に押出し、切断して、熱可塑性重合体組成物ペレットを製造した。
【0069】
該熱可塑性重合体組成物ペレットを単軸押出機3(TAKAYASU IRON WORKS LTD製「PFE−50」)に材料を供給し、設定温度200℃にてサーキュラータイプの環状ダイを通して押出成形して外径6mmおよび内径4mmの単層管状体(基材A、C)を得た。
【0070】
(2)スチレン系エラストマーとポリプロピレンとの配合比(スチレン系エラストマー:ポリプロピレン)を5質量%:95質量%に変更した以外は、上記(1)と同様に操作して押出成形し、外径7.5mmおよび内径5.5mmの単層管状体(基材B)を得た。
【0071】
(3)吸収剤0.06質量%濃度のクロロホルム溶液に単層チューブ(基材A)と単層チューブ(基材C)との接合部をディッピングさせ吸収剤を塗布させ、各接合部にシアニン系染料(日本化薬株式会社KAYASORB CY−10)を介在させ(図2参照)、図1に示す半導体レーザー(808nm、出力100W、照射速度20mm/sec)を照射して接着させた。図1に示すように、レーザー発生装置5で発生させたレーザー光を光ファイバー4によってレーザー集光レンズ3に集め、基材A1と基材B2とを吸収剤を介して接合した後に、レーザー照射を行った。基材A、基材Bおよび基材Cの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。なお、表1の接着性および挿入性の項において、○は良好を示し、×は不可を示し、−は評価不能を示す。
【0072】
[実施例2]
(1)スチレン系エラストマーとポリプロピレンとの配合比(スチレン系エラストマー:ポリプロピレン)を50質量%:50質量%に変更した以外は、実施例1の(1)と同様に操作して、2本の外径6mmおよび内径4mmの単層管状体(基材A、C)を得た。
【0073】
(2)上記(1)で使用したポリプロピレンのみを用い、単軸押出機3の設定温度を180℃にした以外は上記(1)と同様の方法で外径7.5mmおよび内径5.5mm単層管状体(基材B)を得た。
【0074】
(3)2本の単層チューブ(基材A、C)と単層チューブ(基材B)とを用いて、実施例1の(3)で使用した吸収剤を介して、実施例1の(3)と同様の条件で両基材を接合した。基材A、Bおよび基材Cの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0075】
[実施例3]
(1)スチレン系エラストマーとポリプロピレンとの配合比(スチレン系エラストマー:ポリプロピレン)を30質量%:70質量%に変更した以外は、実施例1の(1)と同様に操作して、2本の外径6mmおよび内径4mmの単層管状体(基材A、C)を得た。
【0076】
(2)上記(1)で使用したポリプロピレンのみを用い、単軸押出機3の設定温度を180℃にした以外は上記(1)と同様の方法で外径7.5mmおよび内径5.5mmの単層管状体(基材B)を得た。
【0077】
(3)単層チューブ(基材A、C)と単層チューブ(基材B)とを用いて、実施例1の(3)で使用した吸収剤を介して実施例1の(3)と同様の条件で両基材を接合した。基材A、Bおよび基材Cの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0078】
[実施例4]
(1)製造例1で得たスチレン系エラストマー80質量%とポリプロピレン(三井住友ポリオレフィン株式会社製、商品名「F327」、ランダムタイプのポリプロピレン)20質量%とをタンブラーで混合した後、二軸押出機(KRUPP WERNER & PFLEIDERER製「ZSK−25」)に供給し、200℃にて混練した後、ストランド状に押出し、切断して、熱可塑性重合体組成物ペレット(9−1)を製造した。
【0079】
また、スチレン系エラストマーとポリプロピレンとの配合比(スチレン系エラストマー:ポリプロピレン)を50質量%:50質量%に変更した以外は上記と同様にして熱可塑性重合体ペレット(9−2)を得、同様にして、スチレン系エラストマーとポリプロピレンとの配合比(スチレン系エラストマー:ポリプロピレン)を5質量%:95質量%に変更した以外は上記と同様にして熱可塑性重合体ペレット(9−3)を得た。
【0080】
熱可塑性重合体組成物ペレット(9−2)を単軸押出機1(株式会社プラエンジ製、「PSV22」)、熱可塑性重合体組成物ペレット(9−1)を単軸押出機2(株式会社プラエンジ製、「PSV22」)、熱可塑性重合体組成物ペレット(9−3)を単軸押出機3(TAKAYASU IRON WORKS LTD製「PFE−50」)に供給し、設定温度200℃にてサーキュラータイプの環状ダイを通して押出成形して外径6mmおよび内径4mmの3層多層管状体を2本(基材A、C)を得た。チューブ構成は、外層、中間層、内層の順に熱可塑性重合体組成物ペレット(9−2)、(9−1)、(9−3)とし、各厚み構成比は0.04:99.2:0.04であった。
【0081】
(2)実施例1の(2)と同様に操作して、スチレン系エラストマーとポリプロピレンとの配合比(スチレン系エラストマー:ポリプロピレン)が5質量%:95質量%である、外径7.5mmおよび内径5.5mm単層チューブ(基材B)を得た。
【0082】
(3)2本の3層多層チューブ(基材A、C)と単層チューブ(基材B)との各接合部先端に実施例1の(3)で使用した吸収剤を載置し(図3参照)、半導体レーザー(808nm、出力100W、照射速度20mm/sec)を照射して接着させた。基材A、Bおよび基材Cの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0083】
[実施例5]
(1)熱可塑性重合体組成物としてスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=50質量%:50質量%、スチレン系エラストマー:ポリプロピレン=70質量%:30質量%、およびポリプロピレンのみの3種を使用し、実施例4の(1)と同様に操作して外径12mmおよび内径8mmの3層多層管状体(基材A)と、外径17mmおよび内径13.6mmの3層多層管状体(基材C)とを得た。チューブ構成は、外層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=50質量%:50質量%、中間層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=70質量%:30質量%、内層がポリプロピレンであり厚み構成比は0.025:0.95:0.025であった。
【0084】
(2)実施例1の(2)と同様に操作して、スチレン系エラストマー:ポリプロピレン比が5質量%:95質量%である、外径15mmおよび内径11mmの単層チューブ(基材B)を得た。
【0085】
(3)3層多層チューブ(基材A)と3層多層チューブ(基材C)とを単層チューブ(基材B)を介して接合した。接合部において、基材A、基材Bおよび基材Cの接合部先端に実施例1の(3)で使用した吸収剤を載置し(図4参照)、半導体レーザー(808nm、出力100W、照射速度20mm/sec)を照射して接着させた。基材Aおよび基材Bの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0086】
[実施例6]
(1)熱可塑性重合体組成物としてスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=50質量%:50質量%、スチレン系エラストマー:ポリプロピレン=70質量%:30質量%、およびポリプロピレンのみの3種を使用し、実施例4の(1)と同様に操作して外径12mmおよび内径8mmの3層多層管状体(基材A)と、外径17mmおよび内径13.6mmの3層多層管状体(基材C)とを得た。
【0087】
チューブ構成は、外層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=50質量%:50質量%、中間層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=70質量%:30質量%、内層がポリプロピレンであり厚み構成比は0.025:0.95:0.025であった。
【0088】
(2)単軸押出機3の設定温度を180℃にした以外は実施例2の(2)と同様に操作して、外径15mmおよび内径11mmの単層管状体(基材B)を得た。
【0089】
(3)3層多層チューブ(基材A)と3層多層チューブ(基材C)とを単層チューブ(基材B)を介して接合した。接合部において、基材A、基材Bおよび基材Cの接合部先端に実施例1の(3)で使用した吸収剤を載置し(図4参照)、半導体レーザー(808nm、出力100W、照射速度20mm/sec)を照射して接着させた。基材Aおよび基材Bの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0090】
[実施例7]
(1)実施例6の(1)と同様に操作して、2本の外径12mmおよび内径8mmの3層多層管状体(基材A、C)を得た。チューブ構成は、外層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=50質量%:50質量%、中間層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=70質量%:30質量%、内層がポリプロピレンであり厚み構成比は0.025:9.95:0.025であった。
【0091】
また、上記(1)で使用したポリプロピレンを射出成形機3(TAKAYASU IRON WORKS LTD製「PFE−50」)に材料を供給し、230℃の条件にて外径15mm、内径10mmであり、中央内部が更に凸部を有するコネクター(基材B)を成形した。
【0092】
(2)2本の3層多層管状体(基材A、C)とコネクター(基材B)とを、基材A、Cと基材Bとの接合部に実施例1の(3)で使用した吸収剤を載置した後(図5参照)、半導体レーザー(808nm、出力100W、照射速度20mm/sec)を照射して接着させた。基材Aおよび基材Bの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0093】
[実施例8]
(1)実施例7と同様にして、外径12mmおよび内径8mmの3層多層管状体2本(基材A、C)を得た。チューブ構成は、外層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=50質量%:50質量%、中間層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=70質量%:30質量%、内層がポリプロピレンであり厚み構成比は0.025:9.95:0.025であった。また、実施例7の(1)と同様にして、外径15mm、内径11mm、中央内部が更に凸部を有するコネクター(基材B)を成形した。
【0094】
(2)2本の3層多層管状体(基材A、C)とコネクター(基材B)とを、基材Aと基材Bとの接合部にアクリル系黒色塗料(帝国インキ製PPE−911黒)からなる吸収剤を載置した後(図5参照)、半導体レーザー(808nm、出力100W、照射速度20mm/sec)を照射して接着させた。基材Aおよび基材Bの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0095】
[実施例9]
(1)実施例7と同様にして、外径12mmおよび内径8mmの3層多層管状体2本(基材A、C)を得た。チューブ構成は、外層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=50質量%:50質量%、中間層がスチレン系エラストマー:ポリプロピレン=70質量%:30質量%、内層がポリプロピレンであり厚み構成比は0.025:9.95:0.025であった。
【0096】
また、スチレン系エラストマー40質量%、ポリプロピレン60質量%に代えた以外は実施例1の(1)と同様にして、外径15mmおよび内径11mmの単層管状体(基材B)を得た。
【0097】
(2)2本の3層多層管状体(基材A、C)とコネクター(基材B)とを、基材Aと基材Bとの接合部に実施例1の(3)で使用した吸収剤を載置した後(図5参照)、半導体レーザー(808nm、出力100W、照射速度20mm/sec)を照射して接着させた。基材Aおよび基材Bの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0098】
(比較例1)
(1)スチレン系エラストマーとポリプロピレンとの組成物に代えてポリプロピレンを用いたほかは実施例1の(1)と同様に操作して、外径3mm、内径1mmの単層管状体(基材A)と、内径2.7m、外径4.7mmの単層管状体(基材B)を得た。
【0099】
(2)単層チューブ(基材A)と単層チューブ(基材B)の各接合部に実施例1の(3)で使用した吸収剤を載置したが(図2参照)、挿入が困難であり接着できなかった。基材Aおよび基材Bの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0100】
(比較例2)
(1)基材Bの外径を13.6mm、内径を9.6mmに代え、基材Cの外径を14.8mm、内径を10.8mmに代えた以外は、実施例5と同様に操作して、基材A、BおよびCを製造した。
【0101】
(2)3層多層チューブ(基材A)と3層多層チューブ(基材C)とを単層チューブ(基材B)を介して接合した。接合部において、基材A、基材Bおよび基材Cの接合部先端に実施例1の(3)で使用した吸収剤を載置したが(図4参照)、挿入が困難であり接着できなかった。基材Aおよび基材Bの弾性率、ヘイズ値、接着性を表1に示す。
【0102】


【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の管状物の製造方法は、管状体(a)と管状体(b)とが強固に密着し、しかも管状物の透明性を損なわないため、特に、流体を輸送する用途、例えば不純物の混入を目視又はレーザー等の検査器を用いて監視される用途、流体の気泡混入が問題になり、観察が必要な用途、成形体(チューブ)の内部汚れが問題になる用途に有である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなる層を有する管状体(a)とポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなる管状体(b)とを挿入接着してなる管状物の製造方法において、
細管の外径と太管の内径との比(細管外径/太管内径=X)が、1<X<1.25の関係にある前記管状体(a)と前記管状体(b)との該接合部の前記管状体(a)および/または前記管状体(b)に吸収波長700〜2,500nmの吸収剤を介在させる工程と、
前記管状体(a)と前記管状体(b)とを互いに挿入して接合する工程と、
該接合部にレーザー光を照射して接着させる工程とを含み、
前記管状体(a)の貯蔵弾性率が1.0×10〜6.7×10Paであり、前記管状体(b)の貯蔵弾性率が2×10〜9×10Paであり、かつ管状体(a)よりも管状体(b)の貯蔵弾性率が高い事を特徴とする管状物の製造方法。
【請求項2】
前記管状体(a)が2層以上の積層体であり、前記管状体(b)との接着部の組成がスチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物(A)であることを特徴とする、請求項1記載の管状物の製造方法。
【請求項3】
前記管状体(a)のヘイズ値が40%以下であり、前記管状体(b)のヘイズ値が85%以下である請求項1に記載の管状物の製造方法。
【請求項4】
前記スチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物(A)におけるスチレン系エラストマーの含有量が5〜85質量%である、請求項1に記載の管状物の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィンを含む熱可塑性樹脂組成物(B)におけるポリオレフィンの含有率が、20〜100質量%である、請求項1に記載の管状物の製造方法。
【請求項6】
前記スチレン系エラストマーが、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックとからなる請求項1に記載の管状物の製造方法。
【請求項7】
前記芳香族ビニル重合体ブロックが、ポリスチレンまたはポリ−αメチルスチレンからなり、共役ジエン系重合体ブロックが、ポリイソプレン、イソプレン/ブタジエンの共重合、ポリブタジエンまたはそれら水素添加物からなる請求項6に記載の管状物の製造方法。
【請求項8】
前記共役ジエン系重合体ブロックが、以下の(1)〜(3)のいずれかである、請求項6に記載の管状物の製造方法。
(1)1,2−結合単位および3,4−結合単位の含有量が10〜75モル%であり、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたポリイソプレン、
(2)イソプレン/ブタジエンを5/95〜95/5(質量比)の割合で含み、1,2−結合単位および3,4−結合単位の含有量が20〜85モル%であり、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたイソプレン−ブタジエン共重合体、
(3)1,2−結合単位の含有量が45モル%以上であり、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたポリブタジエン。
【請求項9】
前記管状体(a)および/または前記管状体(b)を構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン樹脂および/またはポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の管状物の製造方法。
【請求項10】
吸収剤が、フタロシアニン、シアニン、アミニウム、イモニウム、スクオリウム、ポリメチン、アントラキノン、カーボンブラックおよびプラスチックス用塗料からなる群から選択される1種類以上である請求項1に記載の管状物の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/063469
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516584(P2005−516584)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019066
【国際出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】