説明

管理装置、プログラム及びトラフィック制御方法

【課題】ノード装置を帯域保証型のパスに接続するシステム構成において、当該パスの帯域を有効利用することができ、かつ、トラフィックの輻輳時においても優先度に応じたトラフィックの制限を行うことを可能にする管理装置を提供する。
【解決手段】管理装置は、ノード装置の各ポートの保証帯域及び優先度並びに前記各ポートに入力されるトラフィックの出力先であるパスの上限帯域を保持する保持手段と、前記ノード装置の各ポートに入力されているトラフィック量である流入帯域を、前記ノード装置から取得する取得手段と、前記上限帯域並びに前記ノード装置の各ポートの保証帯域、優先度及び流入帯域に基づき、前記ノード装置の各ポートに許容する最大のトラフィック量である制限帯域を決定する決定手段と、前記ノード装置の各ポートの制限帯域を、前記ノード装置に通知する通知手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークに送信されるトラフィックの制御技術に関し、より詳しくは、帯域保証型のパスに接続するレイヤ2スイッチ等のノード装置において、ユーザ端末からのトラフィックを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図6に示す様に、MPLS(Multi−Protocol Label Switching)パスを設定してトラフィックを伝送する帯域保証型ネットワーク(例えば、非特許文献1、参照。)にレイヤ2スイッチを接続して、複数のユーザ端末からのトラフィックをMPLSパスに送信する構成を考える。各ユーザ端末から送信されるトラフィックの合計帯域がMPLSパスの保証帯域を超える場合、ネットワークにおいてMPLSの保証帯域を超えた部分は廃棄される可能性があり、各ユーザ端末のトラフィックがそれぞれ影響を受けることになる。
【0003】
各ユーザ端末が送信するトラフィックには、通常、その優先度に差があり、トラフィックの混雑時においても、優先度の高いユーザ端末からのトラフィックを優先して疎通させるためには、レイヤ2スイッチにおいて、帯域制限を行う必要がある。レイヤ2スイッチには、その入力ポートに対して帯域の上限値(以後、制限帯域と呼ぶ。)を設定し、トラフィックがその制限帯域を超えた場合、超過分を廃棄する機能があるが、この機能を利用すると、MPLSパスの帯域の利用効率が劣化する。
【0004】
例えば、MPLSパスの保証帯域(以後、上限帯域と呼ぶ。)が1Gbpsであり、レイヤ2スイッチのポート#1及び#2には優先度“高”のユーザ端末が、ポート#3には優先度“中”のユーザ端末が、ポート#4には優先度“低”のユーザ端末が接続されているものとする。この状態において、ポート#1、#2、#3及び#4の制限帯域をそれぞれ、300Mbp、300Mbps、200Mbps、200Mbpsと、その合計がMPLSパスの上限帯域に等しくなる様に設定すると、ポート#1〜#3に流入するトラフィックが総て200Mbpsであり、MPLSの上限帯域に達するまでに400Mbpsの余裕があるにもかかわらず、ポート#4に流入するトラフィックは、200Mbpsに制限されてしまうことになる。
【0005】
一方、ポート#1、#2、#3及び#4の制限帯域をそれぞれ、400Mbp、400Mbps、300Mbps、300Mbpsと、その合計がMPLSパスの上限帯域より大きくなる様に設定すると、ポート#1〜#4に、その制限帯域と同じトラフィックが流入した場合、上限帯域の超過分は、ネットワークにおいて優先度に係らず廃棄されることになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F.Le Faucheur、“Protocol Extensions for Support of Diffserv−aware MPLS Traffic Engineering”、RFC4124、2005年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、レイヤ2スイッチ等のノード装置を帯域保証型のパスに接続するシステム構成において、当該パスの帯域を有効利用することができ、かつ、トラフィックの輻輳時においても優先度に応じたトラフィックの制限を行うことを可能にする管理装置、プログラム及びトラフィック制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における管理装置によれば、
ノード装置の各ポートの保証帯域及び優先度並びに前記各ポートに入力されるトラフィックの出力先であるパスの上限帯域を保持する保持手段と、前記ノード装置の各ポートに入力されているトラフィック量である流入帯域を、前記ノード装置から取得する取得手段と、前記上限帯域並びに前記ノード装置の各ポートの保証帯域、優先度及び流入帯域に基づき、前記ノード装置の各ポートに許容する最大のトラフィック量である制限帯域を決定する決定手段と、前記ノード装置の各ポートの制限帯域を、前記ノード装置に通知する通知手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
決定手段は、前記ノード装置の選択したポートの流入帯域が該選択したポートの保証帯域以下である場合、該選択したポートの制限帯域の値を、該選択したポートの保証帯域の値とし、該選択したポートの流入帯域が該選択したポートの保証帯域より大きく第1の値以下である場合には、該選択したポートの制限帯域の値を、該選択したポートの流入帯域の値とし、該選択したポートの流入帯域が前記第1の値より大きい場合には、該選択したポートの制限帯域の値を、前記第1の値とし、前記第1の値は、前記上限帯域から、前記ノード装置の全ポートの保証帯域と、優先度が前記選択したポート以上である各ポートの制限帯域を減じた値であることも好ましい。
【0010】
本発明におけるプログラムによれば、
前記管理装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0011】
本発明におけるトラフィック制御方法によれば、
帯域保証型パスに接続し、複数のユーザ端末からのトラフィックを該帯域保証型パスに送信するノード装置におけるトラフィック制御方法であって、各ユーザ端末が前記ノード装置に入力しているトラフィック量である流入帯域を、管理装置が、前記ノード装置から取得するステップと、前記管理装置が、前記帯域保証型パスの上限帯域と、各ユーザ端末に対する保証帯域及び優先度と、各ユーザ端末からの前記流入帯域に基づき、各ユーザ端末に許容する最大のトラフィック量である制限帯域を決定するステップと、前記管理装置が、各ユーザ端末の前記制限帯域を、前記ノード装置に通知するステップと、前記ノード装置が、ユーザ端末から入力されているトラフィック量のうち、該ユーザ端末の前記制限帯域を超えている部分を廃棄するステップとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
各ポートに対して保証帯域までのトラフィック伝送を保証しつつ、流入帯域及び優先度に基づき、各ポートの制限帯域を動的に変更するため、パスの帯域を有効利用することができ、大量のトラフィックが発生した場合においても、優先度の高いトラフィックの疎通を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるシステム構成図である。
【図2】レイヤ2スイッチの簡略化した構成図である。
【図3】本発明による管理装置の簡略化した構成図である。
【図4】制限帯域の算出を説明する図である。
【図5】制限帯域決定部における処理を示すフロー図である。
【図6】従来技術におけるシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明によるシステム構成を示す図であり、本発明によるシステムは、管理装置100と、レイヤ2スイッチ1とを備えている。図1に示す様に、レイヤ2スイッチ1は、複数のポート#1〜#nを有しており、図示しないユーザ端末と接続している。なお、各ポートに実際に入力されるトラフィック量を、以後、流入帯域と呼ぶものとする。また、レイヤ2スイッチ1は、上限帯域Pgの帯域保証型のパスに接続している。
【0015】
図2は、レイヤ2スイッチ1の機能をより詳しく説明する図である。図2に示す様に、各ポートには、速度監視部と、制限値保持部と、帯域制限部が設けられている。速度監視部は対応するポートの流入帯域を測定するものであり、当該測定値は、管理装置100が収集する。また、制限値保持部には、管理装置100から通知される制限帯域の値が設定されており、帯域制限部は、対応するポートに入力されたトラフィックのうち、制限帯域を超える部分を廃棄する。
【0016】
図3は本発明による管理装置100の概略的な構成図である。図3に示す様に、管理装置100は、保証速度保持部11と、流入速度取得部12と、制限帯域決定部13と、制限帯域通知部14とを備えている。
【0017】
保証速度保持部11は、レイヤ2スイッチ1の各ポートの保証帯域及び優先度と、帯域保証型のパスの上限帯域Pgを保持している。なお、これらの値は、あらかじめオペレータが設定したものである。流入速度取得部12は、レイヤ2スイッチ1の各ポートの流入帯域をレイヤ2スイッチ1から反復して取得する。制限帯域決定部13は、レイヤ2スイッチ1の各ポートの保証帯域、優先度及び流入帯域と、帯域保証型パスの上限帯域に基づきレイヤ2スイッチ1の各ポートの制限帯域を決定することを繰り返し、制限帯域通知部14は、レイヤ2スイッチ1に各ポートの制限帯域を通知して、制限値保持部に設定させる。
【0018】
図5は、制限帯域決定部13における制限帯域決定のフロー図である。なお、制限帯域決定部13は、優先度の高いポートから順に処理対象のポートを選択して、図5の処理により、選択したポートの制限帯域を決定し、総てのポートの処理が終了した時点で、各ポートの制限帯域を制限帯域通知部14に出力し、レイヤ2スイッチ1に通知させる。制限帯域決定部13は、この一連の処理を繰り返し行うことで、レイヤ2スイッチに設定する制限帯域を変更してゆくが、制限帯域の変更を行うために、新たに優先度の高いポートを選択して図5の処理を開始する場合には、各ポートの制限帯域を0に初期化し、あるポートについて、図5の処理により制限帯域を決定した場合、それ以降のそのポートの制限帯域については、決定した値を使用して他のポートの処理を行う。なお、同一優先度の複数のポートに対する図5の処理の順番は、あらかじめ定めた順番にて行う形態であっても、ランダムに選択する形態であっても良い。
【0019】
まず、制御帯域決定部13は、帯域保証型パスの上限帯域から、全ポートの保証帯域の合計を減じ、その値をGとする(S51)。つまり、各ポートに自由に配分できる帯域を求める。続いて、処理対象のポートを選択し(S52)、選択したポートと同じ優先度及び選択したポートより優先度の高い総てのポートの既に決定した制限帯域の合計Lを算出し、S51で求めたGの値からLを減じ、処理時点において、選択しているポートに許容可能な最大帯域Mを算出する(S53)。
【0020】
その後、制限帯域決定部13は、選択している処理対象のポートの流入帯域と、当該ポートの保証帯域を比較し(S54)、流入帯域が保証帯域以下であれば、当該ポートの制限帯域の値として、当該ポートの保証帯域の値を設定する(S55)。流入帯域が保証帯域より大きければ、当該ポートの流入帯域と、許容可能な最大帯域Mを比較し(S56)、流入帯域が許容可能な最大帯域M以下であれば、当該ポートの制限帯域の値として、当該ポートの流入帯域の値を設定し(S57)、流入帯域が許容可能な最大帯域Mより大きければ、当該ポートの制限帯域の値として、最大帯域Mを設定する。
【0021】
図4は、帯域保証型のパスの上限帯域Pgが1Gbpsである場合において、5つのポート#1〜5に対して設定されている優先度及び保証帯域と、ある時点において取得した流入帯域と、前記取得した流入帯域に応じて決定した各ポートに設定する制限帯域を示している。
【0022】
以上、本発明においては、各ポートに接続しているユーザ端末に対して保証帯域までのトラフィック伝送を保証しつつ、ユーザ端末からの流入帯域及びユーザ端末の優先度に基づき、各ユーザ端末に対する制限帯域を動的に変更するため、接続しているパスの帯域を有効利用することができ、大量のトラフィックが発生した場合においても、優先度の高いユーザ端末からのトラフィックの疎通を確保することが可能になる。
【0023】
なお、本発明による監視装置は、コンピュータを図3に示す各部として機能させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。更に、本発明は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 レイヤ2スイッチ
11 保証速度保持部
12 流入速度取得部
13 制限帯域決定部
14 制限帯域通知部
100 管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノード装置の各ポートの保証帯域及び優先度並びに前記各ポートに入力されるトラフィックの出力先であるパスの上限帯域を保持する保持手段と、
前記ノード装置の各ポートに入力されているトラフィック量である流入帯域を、前記ノード装置から取得する取得手段と、
前記上限帯域並びに前記ノード装置の各ポートの保証帯域、優先度及び流入帯域に基づき、前記ノード装置の各ポートに許容する最大のトラフィック量である制限帯域を決定する決定手段と、
前記ノード装置の各ポートの制限帯域を、前記ノード装置に通知する通知手段と、
を備えている、
管理装置。
【請求項2】
決定手段は、前記ノード装置の選択したポートの流入帯域が該選択したポートの保証帯域以下である場合、該選択したポートの制限帯域の値を、該選択したポートの保証帯域の値とし、該選択したポートの流入帯域が該選択したポートの保証帯域より大きく第1の値以下である場合には、該選択したポートの制限帯域の値を、該選択したポートの流入帯域の値とし、該選択したポートの流入帯域が前記第1の値より大きい場合には、該選択したポートの制限帯域の値を、前記第1の値とし、
前記第1の値は、前記上限帯域から、前記ノード装置の全ポートの保証帯域と、優先度が前記選択したポート以上である各ポートの制限帯域を減じた値である、
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管理装置としてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項4】
帯域保証型パスに接続し、複数のユーザ端末からのトラフィックを該帯域保証型パスに送信するノード装置におけるトラフィック制御方法であって、
各ユーザ端末が前記ノード装置に入力しているトラフィック量である流入帯域を、管理装置が、前記ノード装置から取得するステップと、
前記管理装置が、前記帯域保証型パスの上限帯域と、各ユーザ端末に対する保証帯域及び優先度と、各ユーザ端末からの前記流入帯域に基づき、各ユーザ端末に許容する最大のトラフィック量である制限帯域を決定するステップと、
前記管理装置が、各ユーザ端末の前記制限帯域を、前記ノード装置に通知するステップと、
前記ノード装置が、ユーザ端末から入力されているトラフィック量のうち、該ユーザ端末の前記制限帯域を超えている部分を廃棄するステップと、
を備えているトラフィック制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−182294(P2011−182294A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46336(P2010−46336)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】