説明

管端子とその製造方法

【課題】 螺旋状の内面フィンを有する管を用いることで気密性と機械的電気的接続性に優れる管端子を提供する。
【解決手段】 螺旋状の内面フィンを有する管端子1は端子部4と導体接続部3を有する。前記管は銅または銅合金からなる。前記内面フィンが20以上、内面フィンの高さが0.1mm以上、内面フィンのねじれ角が0度を超え90度未満である。螺旋状の内面フィンを有する管を偏平状に加工して端子部を形成する管端子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線端子の接続構造に関し、さらに詳しくは、電線との接続に好適に用いられる管端子の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
管端子1は、管の一端を偏平状加工部2とし、他端の導線接続部3の中に、ケーブル終端部分の絶縁層を剥いで露出させた導体を挿入し、導線接続部3を縮径して導体を接続する端子である。偏平状加工部2はボルト穴にボルトを通して他の端子と接続される。
【0003】
しかし従来の管端子1は管をプレス加工で偏平状加工部2を形成するのが一般的であるが、プレス加工だけでは隙間ができることは避けられなかった。このため、偏平状加工部2の内部は気密性に劣り、水分が侵入してしまう恐れがあった。さらに導体と端子の材質が異なる場合、異種金属接触腐食(電食)が起こるという問題があった。このため半田を充填したり、シリコン系のシート等を挿入したり、中周波誘導加熱圧接法による接合を行い、気密性を向上させている。
【0004】
銅管の一端を偏平状に加工して端子部とし、中周波誘導加熱圧接法により接合した圧縮形銅管端子の例がある(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−92025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、半田充填や誘導加熱圧接等を行うのはコストや時間がかかってしまう。このため、単純な圧縮加工のみで気密性を満足する圧縮形銅管端子が求められていた。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は気密性に優れる管端子およびその製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、
(1)螺旋状の内面フィンを有することを特徴とする管端子
(2)端子部と導体接続部を有することを特徴とする(1)記載の管端子
(3)管が銅または銅合金からなることを特徴とする(1)または(2)記載の管端子
(4)螺旋状の内面フィンを有する管端子において、内面フィンが20以上、フィンの高さが0.1mm以上、管軸方向に対してフィンのねじれ角βが0度を超え90度未満であることを特徴とする(1)乃至(3)記載のいずれかの管端子。
(5)(1)乃至(4)記載のいずれかの管端子の製造方法であって、螺旋状の内面フィンを有する管を偏平状に加工して端子部を形成することを特徴とする管端子の製造方法
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は螺旋状の内面フィンを有する管を用いて管端子とするので、偏平状加工部において内面溝が密着して気密性が向上する。また、螺旋状の内面フィンがセレーションの役割を有しており、導線との接合性が向上する。依って、産業上顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を具体的に説明する。本発明の管端子1における実施態様の一例を図1に示す。管端子1は螺旋状の内面フィンを有する管10の一端を偏平状に加工し、この偏平状加工部2をプレス加工により接合して端子部4としたものである。前記端子部4は、螺旋状の内面フィン9の頂部が変形して完全な気密性が得られる。このため偏平状管内接部5は水分が侵入するようなことはない。なお図1で、6はボルト穴、3は導線接続部である。
【0010】
図2、図3は、本発明の管端子1における製造方法の実施形態の一例を示す工程説明図である。螺旋状の内面フィンを有する管10の一端を、図2に示すように偏平状に加工して、偏平状加工部2と導線接続部3を有する管端子1とする。次いで、図3に示すようにプレス8により加圧して偏平状管内接部5を接合して端子部4とし、管端子1が完成する。
【0011】
本発明の管端子1の実施形態の一例を図4に示す。図4は本発明の管端子1の上面図である。導線12との接続は、絶縁層13を剥いで導線12を露出させ、導線接続部3に導線12を挿入し、プレス加工(かしめ)することで導体を固定する。本発明の管端子1は導線接続部3の内面にある螺旋状のフィンがセレーションの役割を果たすことで、管端子1と導線12の接続強度が向上する。これにより、管端子1と導線12の間の接触抵抗も安定するため、機械的及び電気的な接続が安定する。なお、導線12の露出を防止するため、絶縁層13と圧縮加工部11との間を絶縁保護層で覆ってもかまわない。
【0012】
本発明の管端子1の実施形態の一例を図5に示す。図5は本発明の管端子1の図4におけるA−B断面図である。導線12を導線接続部3に挿入し、圧縮加工することで導体は固定される。この際、螺旋状の内面フィン9は変形し、導線12と管の内面との隙間を埋める。さらに導線12に螺旋状の内面フィン9が食い込んで導線12が変形する。これにより、管端子1と導線12が機械的接続及び電気的接続が強固となる。
【0013】
本発明の管端子1における螺旋状の内面フィンを有する管10の実施形態の一例を図6に示す。図6は本発明の管端子1に用いられる、螺旋状の内面フィンを有する管10の管内面を展開した図である。本発明の管端子1に用いられる管は螺旋状の内面フィン9を有する。前記螺旋状の内面フィン9は管軸方向Lに対してねじれ角βを有する。前記螺旋状の内面フィン9は偏平状加工部2のプレス加工時にフィンとフィンが変形してつぶれることで気密性を有する管端子1が得られる。
【0014】
前記螺旋状の内面フィン9の数は20以上が好ましい。20未満でも良いが、20以上の場合はフィンがつぶれる箇所が多くなるため気密性に優れる。好ましくは40以上である。また前記螺旋状の内面フィン9の高さは0.1mm以上が好ましい。0.1mm未満でも良いが、0.1mm以上の場合はフィンがつぶれる箇所が多くなるため気密性に優れる好ましくは0.2mm以上である。なお、フィンの高さとはフィンの根元からフィンの頂点までの長さをいう。
【0015】
管軸方向Lに対する螺旋状の内面フィン9のねじれ角βは0度を越え90度未満が好ましい。ねじれ角βが0度あるいは90度であっても良いが、0度を越え90度未満の場合は内面フィン9がつぶれて気密性に優れる。好ましくは10〜80度、より好ましくは20〜70度である。
【0016】
本発明の管端子1に用いられる、螺旋状の内面フィンを有する管10の製造方法としては、特開平4−158193号公報のように、金属条の片面に形態の異なる異種の複数の溝を形成し、溝が内側になるように前記金属条を管状に丸めて溶接する方法がある。また、特開昭55−103215号公報のように引き抜かれている平滑管内に溝付プラグを保持し、その管外周を転造工具により押圧して、溝を管内に転写させるように加工する、いわゆる転造加工方法がある。本発明の管端子1の材質は銅または銅合金が好ましいがそれらに限定されるものではなく、導電性を有するものであればかまわない。
【0017】
本発明の管端子1に電気的に接続される導線は導電性を有するものであればかまわない。好ましくはアルミニウム又はアルミニウム合金、銅または銅合金からなる。
【0018】
本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲に於いて、さまざまな態様で実施できる。前記実施例では締結部を有する管端子1を示したが、例えば導電同士の中継接続や分岐接続用の構成にしてもかまわない。また、実施例のアルミ導線は素線が複数束になったものを示したが、単線のものにも適用可能である。さらに、偏平状加工部2のプレス加工についても各種の方法が適用される。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。リン脱酸銅からなる外径16.0mm、底肉厚1.0mmの銅管の一端を偏平状に加工し、管端子1を作製した。本発明例は、螺旋状の内面フィンを有する管9を用いて管端子1を作製し、さらに導線接続部3に導線12を挿入し、プレス加工(かしめ)した。フィンの形状は表1の通りである。比較例は、内面が平滑な銅管か、あるいは従来品である圧着端子を用い、表1記載の方法で導線を接続した。比較例3は特開2003−92025号公報記載の方法を用いた。比較例4,5は特開2003−249284号公報記載の圧着端子を用いた。なお、導線はアルミ電線34SQであり、ロープ撚り構造は19/22/直径0.32の導線を用いた。なお、圧縮条件は、導体の圧縮残存率(圧縮後の導体断面積と圧縮前の導体断面積の比)が80%になるようにして、圧縮作業を実施した。
【0020】
前記製造した各端子について、気密性試験、破断荷重を評価した。気密性試験は、端子内部から0.2MPaの窒素ガスを入れて、水中で空気の漏れの有無を確認した。空気の漏れが無いものを○、漏れが有るものを×と判定した。破断荷重は、前記端子と電線を用いて引張試験を行い、破断した荷重を評価した。接触抵抗は、端子と導線の接触抵抗の増加量を測定した。測定は4探針法により電圧0.1V以下、電流0.01A以下の精度を有する電源装置と0.01mV以下の精度を有する電圧計を用いて、通電電流0.1mA以上にて行った。破断荷重と接触抵抗の良否判定は、現在のケーブルと端子の接続方法として採用されているバレル圧着方式でのレベルとし、34SQの場合、破断荷重は2kN以上、接触抵抗は20μΩ以下として判定を行った。
【0021】
【表1】

【0022】
表1から明らかなように、本発明例は気密性、接触抵抗とも優れていることがわかる。これに対し、比較例1、2は管内面が平滑であるので気密性および接触抵抗が劣った。比較例3は加工に特別な装置が必要でありコストが高くなるという問題が生じ、さらに接触抵抗も高かった。比較例4、5は従来品である圧着端子を用いたので気密性に劣った。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の管端子1における実施形態の一例を示す図である。
【図2】本発明の管端子1における製造方法の実施形態の一例を示す工程説明図である。
【図3】本発明の管端子1における製造方法の実施形態の一例を示す工程説明図である。
【図4】本発明の管端子1における実施形態の一例を示す上面図である。
【図5】本発明の管端子1における実施形態の一例を示すA−B断面図である。
【図6】本発明の管端子1における螺旋状の内面フィンを有する管10の実施形態の一例を示す展開図である。
【符号の説明】
【0024】
1 管端子
2 偏平状加工部
3 導線接続部
4 端子部
5 偏平状管内接部
6 ボルト穴
7 電極
8 プレス
9 螺旋状の内面フィン
10 螺旋状の内面フィンを有する管
11 圧縮加工部
12 導線
13 絶縁層
L 管軸方向
β ねじれ角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の内面フィンを有することを特徴とする管端子。
【請求項2】
端子部と導体接続部を有することを特徴とする請求項1記載の管端子。
【請求項3】
管が銅または銅合金からなることを特徴とする請求項1または2記載の管端子。
【請求項4】
螺旋状の内面フィンを有する管端子において、内面フィンが20以上、内面フィンの高さが0.1mm以上、管軸方向に対して内面フィンのねじれ角βが0度を超え90度未満であることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかの管端子。
【請求項5】
請求項1乃至4記載のいずれかの管端子の製造方法であって、螺旋状の内面フィンを有する管を偏平状に加工して端子部を形成することを特徴とする管端子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−120384(P2006−120384A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305264(P2004−305264)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】