説明

管端自動シール溶接方法

【課題】管端シール溶接する際に、最適条件でシール溶接が行える管端自動シール溶接方法を提供する。
【解決手段】 鉛直に設けられた管板4の各管穴に伝熱管5を挿入し、その管穴41回りに溶接トーチ23を回転させてTIG溶接する管端自動シール溶接方法において、伝熱管回りの溶接ゾーンを複数に分割し、その分割ゾーン毎に溶接条件を設定してシール溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器、熱交換器等の製作に適用する自動管端シール溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力容器、熱交換器等は、管板に形成した多数の開先が施された管穴に伝熱管を挿入し、その伝熱管回りの開先を管端シール溶接して作製される。
【0003】
この管端シール溶接は、特許文献1,2等に提案されており、これを図11、図12により説明する。
【0004】
図11において、管板81には開先90が施された管穴91が形成され、その管穴91に伝熱管82が挿入され、図12(a)に示すように管板81を鉛直に、管82を水平にした状態で、管端シール溶接装置80にてシール溶接が行われる。
【0005】
管端シール溶接装置80は、伝熱管82に挿入される心金83と、その心金83の周りに旋回自在に設けられたトーチ84と、そのトーチ84に着脱自在に取り付けられたタングステン電極85とを備え、図12(b)に示すようにスタート位置にタングステン電極85を位置させ、トーチ84を伝熱管82の回りに回転させながら同時に溶加材(図示せず)を電極85の回転に追従して供給し、その溶加材をタングステン電極85からのアークにより溶融しながらシール溶接する。
【0006】
この管端シール溶接中、管板81と電極85間の距離は、作業者がマニュアル操作にてトーチ84の高さ調整を行うことで対応していた。すなわち、タングステン電極85の軸方向の位置調整は、スライダ86を軸方向に移動することにより調整し、また径方向の位置調整は、回転ツマミ88を回転させ、スライダ86に形成されたねじ穴861と螺合するねじ棒87を回すことで調整するようにしている。
【0007】
溶接条件の設定は、管端自動シール溶接の場合、タングステン電極85の距離を作業者が設定した後は、その設定値に基づいて管82の全周を自動溶接するようになっていた。
【0008】
【特許文献1】特開2001−150132号公報
【特許文献2】特開2003−88956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、管端溶接では、水平な伝熱管82の回りに沿ってトーチ84を旋回させて溶接するが、開先90の天側と地側では、溶融プールの垂れが発生するため、全周同じ条件で溶接したのでは、溶接ビードが適正に保てず、不整ビードが発生しやすい問題がある。
【0010】
また、マニュアル操作にてトーチの高さ調整を行っていたため、異常発生(電極先端にワイヤがタッチする、またこれにより電極先端に欠損が生じ、アークの集中性が乱れることで溶接品質が悪化する)を回避するための微調整操作は、異常を認識できず、また突然発生したり、過渡的に起こる場合でも乱れの兆候を察知するのが遅れるため、手遅れのケースが多く、補修に多大な労力を必要とする。 さらに、こうした異常がその兆候を事前に人が気付くことは、カンと経験といった人的要因に依存するため定量的なデータに基づかないため自ずと限界があった。
【0011】
本発明の目的は、管端シール溶接する際に、最適条件でシール溶接が行える管端自動シール溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、鉛直に設けられた管板の各管穴に伝熱管を挿入し、その管穴回りの溶接トーチを回転させてTIG溶接する管端自動シール溶接方法において、伝熱管回りの溶接ゾーンを複数に分割し、その分割ゾーン毎に溶接条件を設定することを特徴とする管端自動シール溶接方法である。
【0013】
請求項2の発明は、1周360度の溶接ゾーンを8分割し、その分割ゾーン毎に溶接条件を設定する請求項1記載の管端自動シール溶接方法である。
【0014】
請求項3の発明は、各分割ゾーン毎に基準アーク電圧を設定し、溶接トーチからの溶接中のアーク電圧を検出し、そのアーク電圧が基準アーク電圧となるよう溶接トーチの距離をAVC制御する請求項1又は2記載の管端自動シール溶接方法である。
【0015】
請求項4の発明は、溶接トーチのアーク電流・電圧、回転速度、距離が、溶接機制御装置で制御され、その溶接機制御装置には、溶接条件設定画面を有し、その画面上で、各分割ゾーンのアーク電流・電圧の設定値を各分割ゾーンごとに設定する請求項1〜3のいずれかに記載の管端自動シール溶接方法である。
【0016】
請求項5の発明は、 溶接機制御装置は、1周溶接中に各分割ゾーンの溶接条件と溶接中のアーク電圧現在値を自動溶接画面で表示する請求項1〜4のいずれかに記載の管端自動シール溶接方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、伝熱管の回りを1周溶接する際に複数のゾーンに分割し、その分割ゾーン毎に溶接条件を設定することで溶接の最適化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明の実施形態を添付図面により説明する。
【0019】
先ず、図1、図2により、管端自動溶接装置を説明する。
【0020】
図1に示すように、管端シール溶接装置1は、タングステン電極21を有する溶接ヘッド2と、その溶接ヘッド2に電力、シールドガスおよび冷却水などを供給すると共に管端シール溶接装置1を制御するための制御電源装置3とを備える。
【0021】
その制御電源装置3から溶接ヘッド2のタングステン電極21に電力を供給することで、そのタングステン電極21と母材間にアークを発生させて、母材を溶接する。
【0022】
より具体的には、図2に示すように、管端シール溶接装置1は、鉛直に設けられた管板4の各管穴41に水平に伝熱管5を挿入し、その管穴41周りの開先51をTIG溶接する。
【0023】
溶接ヘッド2は、鉛直に設けられた管板4に嵌め込まれた伝熱管5に挿入される心金22と、その心金22の回りに旋回自在に設けられた溶接トーチ23と、そのトーチ23に保持されたタングステン電極21と、その電極21およびトーチ23を鉛直面内で旋回させるための電極旋回装置24(図1参照)と、トーチ23の先端部にワイヤ(溶加材)251を供給するコイル搭載部25(図1参照)とを備える。
【0024】
電極旋回装置24には、後述するがタングステン電極21の旋回位置を検出するための姿勢分割検出センサS1〜S8(図10)が設けられ、その検出センサS1〜S8の方位検出信号が、制御電源装置3に入力される。
【0025】
溶接トーチ23は、電極21を保持する電極ホルダー231と、その電極ホルダー231を前後方向(心金22の軸方向、図2において左右方向)に移動するための電動駆動スライド機構232とを備える。
【0026】
電動駆動スライド機構232は、電極ホルダー231が固定され前後方向に移動可能なスライダ233と、そのスライダ233および電極21を前後方向に駆動するため駆動手段(図例ではモータ)234とを有する。
【0027】
制御電源装置3は、溶接ヘッド2に、信号を送受信すべく、かつ電力、冷却水およびシールドガスなどを供給すべく、複数のケーブルを介して接続される。
【0028】
より具体的には、図1に示すように、制御電源装置3は、電極21および母材への電力の供給するための一対のパワーケーブル31、32と、各パワーケーブル31、32にニップル311、321を介して各々接続され、電極21および母材4、5間のアーク電圧を検出する一対の検出用ケーブル33、34と、図示しない信号用ケーブル、冷却水用ケーブル、シールドガス用ケーブルなどを備える。
【0029】
制御電源装置3には、後述するが溶接条件を設定する入力装置および表示装置をなすタッチパネル36が設けられる。
【0030】
次に、管端自動溶接装置による、管端シール溶接を説明する。
【0031】
鉛直に設けられた管板4の各管穴41に水平に伝熱管5を挿入し、その管穴41回りの開先51に溶接ワイヤを添加してTIG溶接により継手を形成する。この溶接においては、予め開先51に対するタングステン電極21の距離を設定すると共に、その電極位置でのアーク電圧を基準アーク電圧として記憶し、その後、溶接時に、アーク電圧をモニタすると共に、そのモニタしたアーク電圧と上記基準アーク電圧とを比較しながらアーク電圧が基準アーク電圧となるようにタングステン電極21の距離を調整して、シール溶接を行う。
【0032】
さて、本発明では、安定した溶接施工状態を確保するため、人やシステムが異常を判定し、システムを停止させるのではなく、適正条件を確保することで、異常を低減し、安定した状態を継続できる手段がないか検討した。
【0033】
その結果、GTAW(ガスタングステンアークウェルディング)自動溶接で広く採用されているAVC(アークボルテージコントロール)を管端自動シール溶接に採用し、AVC制御軸方向のモータによる電動スライド機構を管板と鉛直(直交)方向に採用した。
【0034】
この結果、溶接の進捗に伴う溶融池の湯流れや体積変化に追従し、溶接池表面と電極先端との距離をリアルタイムで略一定の距離に確保できるようになった。
【0035】
これにより、トーチ高さが低いため溶融池に接触し、損傷する事象や、アーク長が長くなり過ぎ、不整ビードを発生させることによる溶接士による溶接の途中停止、及び手直し作業を不要とし、溶接品質を安定化した。
【0036】
さらに、各溶接姿勢による姿勢変化に伴い設定電圧やワイヤ供給量などの最適溶接条件が異なることに対応するため、1回転を複数分割(例;8分割)し、溶接条件を1回転1律(1種類)だけでなく、各姿勢別に設定し、制御できるようにした。AVCとこの組合せにより、一層きめ細かく設定、制御できるようになり、高品質の溶接施工を安定して確保することができる。
【0037】
以下に本発明を図3〜図10に基づいて説明する。
【0038】
先ず、本発明の管端自動溶接機の制御全体ブロック図を図5に基づいて説明する。
【0039】
制御電源装置3は、溶接機制御装置37と溶接電源38とを備え、溶接機制御装置37は、溶接電源38に溶接条件指示、溶接電流/電圧制御の指令を行い、これに応じて溶接電源38は、溶接電流/電圧制御をして溶接トーチ23に溶接電流を供給する。
【0040】
溶接トーチ23からの溶接電圧は、溶接機制御装置37にフィードバックされ、溶接機制御装置37は、その溶接電圧が設定した基準アーク電圧となるように電動駆動スライド機構232にトーチ高さ制御指令を出力し、それに基づいて溶接トーチ23の高さ(距離)が調整される。
【0041】
また溶接機制御装置37は、ワイヤ送給モータ252にワイヤ速度制御を指令して、ワイヤ送給モータ252がワイヤ供給速度を制御する。
【0042】
また溶接中、姿勢分割検出センサSからの方位検出信号が溶接機制御装置37に入力され、それに基づいて溶接機制御装置37は、円周方向駆動モータ241の回転速度を制御して溶接速度を制御する。
【0043】
姿勢分割検出センサSは、図10に示すように回転軸に埋め込まれたマグネットMと、そのマグネットMの位置検出用に回転軸外側で溶接トーチ23と共に回転する側に固定された近接スイッチからなるセンサS1〜S8とからなり、図では、1周360度を8分割して検出できるようになっている。
【0044】
本発明においては、溶接中、1周360度を複数のゾーンに分割し、その分割ゾーン毎に溶接条件の最適化を図るようにしたものである。
【0045】
この溶接条件制御を姿勢分割で行うことの必要性を溶接速度の制御の観点から説明する。
【0046】
図9(a)、図9(b)に示す通り、伝熱管5の回りの開先51に沿って溶接する際に、上部を天側、下部を地側とし、スタート位置から溶接を開始し、丸1〜丸4((1)〜(4))まで1周360度溶接を行うとすると、管端シール溶接においては、方位(又は姿勢)ごとに、溶融池の状態は刻々と変化する。
【0047】
溶接条件のうち、例えば溶接速度のパラメータを取り上げると、(1) では盛り上げのためビードが垂れ気味となるため、ゆっくり溶融過程を得るためやや遅めの速度が良く、(2) に移ると下進気味に次第に移行し下進ではビードは垂れる傾向にあり垂れ落ちる速度と凝固する速度の競争となるため、速やかに移動するのが望ましく、適正な溶接速度は上昇傾向となる。(3) の位置から(4) にかけては、下進から水平横向そして上進に転じるため、それまでとは逆の過程を辿るので溶接速度は速い速度から遅めに適正な条件は変化する。(4)から(1)にかけては上進過程となり、同じ遅めの速度でもより遅くなり、(1) に移行するにつれ次第に適正な速度条件は上昇する。
【0048】
このように、1周360度方位において適正な条件設定は方位により変化させることが望ましい。
【0049】
そこで、制御電源装置3(溶接機制御装置37)は、図7に示した姿勢別分割制御を構成する。
【0050】
図7において、姿勢分割検出用センサーSの方位検出信号がCPU371に入力されると共にメモリ372に格納され、その方位検出信号に基づいて、出力回路373を介して、円周方向駆動モータ241に溶接速度制御を出力し、ワイヤー送給モータ252にワイヤ速度制御を出力し、さらに溶接電源38に溶接電流制御を出力して、溶接トーチ23が設定の溶接電流となるように制御する。
【0051】
この制御は、事前にプリセットした各分割ゾーン(姿勢)ごとに最適な溶接条件設定が行えるようになっている。
【0052】
これにより、個々の姿勢に応じて各姿勢に最適な溶接条件の設定を可能とし、各姿勢ごとにきめ細かな溶接制御及び次項に述べるAVC制御の採用による電極−母材間距離の安定化を実現することにより管端シール溶接の高品質化を実現している。
【0053】
AVC制御導入の必要性:
AVC導入の目的及びメリットは大きく分けると次の2点である。
【0054】
(a)マクロ的には図9で説明した(1)から(4)の各区間ごとの湯流れの状態に応じて電極高さを最適な位置にセットすることで適切な溶融池の形成及び電極−溶融池間の距離の安定化によるアーク、溶け込みの安定、電極損傷のリスク低減及び電極の安定化を図る。
【0055】
(b)ミクロ的には突発的な溶融池の湯流れ変化(溶融池の表面の凹凸変化やワイヤ突入等の外乱による溶融池の乱れ)に追従し、電極先端位置を溶融池に遠ざける又は近づけることにより、電極先端の磨耗、損傷を回避する。
【0056】
このメリット(a)の内容を説明すると、(1) のステージは盛り上げ(上進)姿勢から横移動の横向姿勢へ移行する段階である。ここでは、盛り上げにより溶融池が垂れ溶融池表面の高さが高い状況からやや高さが低くなりつつある。これに伴い適正なトーチ高さ(電極−溶融池表面間の距離)は溶融池表面の高さの低下に伴いやや低下傾向になる。(2) のステージでは横向から下進姿勢への移行となるため、溶融池は進行方向に垂れ下がる傾向になる。従って溶融池は定性的に進行方向に湯が流れ、これに伴い溶融池高さは低下傾向となるため、適正なトーチ高さはより低下傾向となる。(3) のステージはこの低下傾向が鈍化するとともに、横方向への移動に伴い、溶融池がこれまで進行方向に引き伸ばされていたのが横向き姿勢となるため、ビード断面で進行方向左側(地側)が凸になる傾向になるため、これに伴い適正なトーチ高さはやや上昇する。(4) のステージでは横向姿勢から立向上進姿勢への移行となるため、溶融池は進行方向逆側地側に垂れる傾向となり適正なトーチ高さはやや上昇となる。このように、1周360度方位において適正なトーチ高さは方位により変化させることが望ましい。
【0057】
メリット(b)の内容の説明すると、溶接中、溶融池は外部からのワイヤ添加状況、表面清浄状態、形状変化、姿勢変化などの要因により、突発的に形状が崩れ、その結果、電極先端との接触やそれによる電極先端の損傷が起き易い。通常、管端シール溶接における電極と溶融池表面間の距離は1−2mm程度であるため、短時間での溶融池高さ変化が起きると、直ちにアークの不安定や電極先端への接触を招く。従来の管端シール溶接においては、人が手動で操作し電極位置を調整していたため、このような突発的変化事象に対しトーチ高さを瞬時に変化させるのはほぼ不可能であった。加えて電極位置の高さを一定に保つための制御機能はついていない。従ってこのような事象が発生すると電極の損傷及び不整ビードの発生は不可避であったが、AVC制御をすることで電極先端の磨耗、損傷を回避することが可能となる。
【0058】
この溶接機制御装置37におけるAVC制御の制御ブロック図を図6により説明する。
溶接電圧検出センサS23の検出値は、入力回路375を介してCPU371に入力され、また姿勢分割検出センサSの方位検出信号もCPU371に入力され、メモリ372に格納される。この溶接電圧と方位に基づき、溶接機制御装置37は、出力回路373を介して、溶接トーチ23の距離を各駆動装置(トーチ位置、上下モータ、駆動装置)235にて制御する。
【0059】
すなわち、電極の高さはAVC制御において、電極−母材間の距離とその間の溶接電圧値がリニアな関係にあるため、溶接電圧値により置き換えることができるため、溶接電圧を溶接電圧検出センサS23で常時モニターし、これを電極−母材間距離を保つトーチ位置上下モータ駆動装置235のモータ負荷電圧にフィードバックすることで、分割ゾーン毎に電極高さ位置の制御が可能となる。
【0060】
上記(a)の大局的な制御観点に立てば、各ステージにおける溶融池の湯流れ特性を反映した最適な電極−母材間距離に応じた溶接電圧設定値を各ステージごとにプリセットすることで、各区間に最適な電極―母材間距離を確保でき、安定した溶接施工を実現することができる。
【0061】
上記(b)の突発的な事象への追従性については、電極先端・溶融池母材間の距離を一定に維持している状況下において、万一突発的な事象により溶融池表面が電極先端に接近した場合はモニターする溶接電圧変化により急激な距離の近接を直ちにセンシングすることで、直ちに電極位置を変位させ、電極先端・溶融池母材間の距離を適正な距離に離間、復旧、維持することで、異常事象の継続による溶接品質の悪化、電極の損傷やこれらに伴う溶接の停止などの問題を解決できる。
【0062】
センサーによる姿勢変化検出方法とソフト処理:
姿勢変化を検出する手段の一例としては、図10で説明したように近接センサーによる位置検出で行い、検出は図8で示したブロック図で行う。
【0063】
この際、回転軸の外側の容器に、固定で近接スイッチS1〜S8を姿勢分割したい方位の各境界箇所に埋め込む。回転軸となるヘッド上にマグネットMを1方位に内蔵する。溶接中溶接ヘツドの回転と同時に同期して回転軸上表面に設置されたマグネットMが周方向に回転することで、図8に示すように、各方位外側に設置した近接スイッチS1〜S8上を通過するたびにマグネットMの磁場により近接スイッチS1〜S8が引き寄せられ、回路が閉じる。
【0064】
回路が閉じることで電気信号が流れ、溶接機制御装置37側に位置信号が伝送される。
【0065】
溶接機制御装置37側に信号が入力されると、プログラム上でソフトの処理により、メモリ372にプリセットされた次のブロックの溶接条件を読み出し、出力回路373を介して溶接電源、付属機器へ次のブロック用の溶接条件に対応する指示信号240を出すようなソフト処理をし、プログラムが動作する。
【0066】
この動作を繰り返すことで、分割した姿勢ごとの条件制御を実現している。
【0067】
また、溶接機制御装置37は、制御表示パネル(タッチパネル)36を有し、各分割ゾーン毎に溶接作業者が溶接現場の状況に応じて溶接条件を最適に調整できるようになっている。
【0068】
この溶接機制御装置37の制御表示パネル36を図3、図4により詳しく説明する。
【0069】
図3は、1周360度を8分割したときの溶接条件設定画面60を示したものである。ただし、姿勢分割数は、一例として8分割とするが、管の寸法や開先形状等に応じ分割数を変えてもよい。
【0070】
先ず、溶接機制御装置37は、溶接の際に溶接条件設定画面60に、各分割ゾーン(1)〜(8)ごとに、予め設定されたピーク電流、ベース電流、ヘッド回転速度、ワイヤ送給速度、アーク電圧が表示される。
【0071】
この場合、伝熱管の管径や溶接条件により個々に溶接条件が違うため、溶接条件No.が予め用意され、その溶接条件のもとで、ピーク電流、ベース電流、ヘッド回転速度、ワイヤ送給速度、アーク電圧が表示される。
【0072】
ピーク電流、ベース電流、ヘッド回転速度、ワイヤ送給速度、アーク電圧を設定する数値部61がタッチスイッチになっており、タッチした項目がテンキー62により設定可能となっており、数値部61をタッチすることでその箇所が点灯する。
【0073】
数値を設定するには、先ずクリアキーCLRを押し、数値が0になったならば、テンキー62にて数値を入力し、確定キーENTを押して数値を確定する。
【0074】
また方向キー63によりカーソルを左右へ1分割ごとに移動することで、順次数値部61に数値を変更或いは入力することができる。
【0075】
またAVC選択キー64は、溶接時にAVC制御をするか(有)、しないか(無)をタッチ選択できるようになっている。
【0076】
各項目の設定乃至変更を終えたならNEXTキーをタッチすることで、基本画面(図示ぜず)に切り替えることができる。
【0077】
図4は、自動溶接中に表示される自動溶接中表示画面70を示したもので、溶接条件No.は選択されている条件を表示する。
【0078】
自動溶接中の各分割ゾーン(1)〜(8)の数値部71は1周溶接に応じて各ゾーン(1)〜(8)が順次自動点滅し、設定されたピーク電流、ベース電流、ヘッド回転速度、ワイヤ送給速度、アーク電圧の数値を表示できるようになっている。
【0079】
また、数値部71の点滅では、溶接位置が把握しにくいため、溶接ゾーン表示73でそのゾーン(1)〜(8)を点滅させることで、視覚的に認識させることができるようになっている。
【0080】
また、自動溶接中表示画面70にはアーク電圧現在値75が表示され、作業者は、このアーク電圧現在値75と自動溶接中表示画面70の各ゾーンの数値部71で設定されたアーク電圧とを比較することで、溶接が適正に行われているかどうかのチェックが行えると共に実際の溶接状況を見ることで、設置した溶接条件が適正かどうかの確認をとることができ、より適正な溶接条件を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に用いる管端シール溶接装置を示す図である。
【図2】図1のII部の拡大図である。
【図3】本発明において、各分割ゾーンごとに溶接条件を設定する溶接条件設定画面の一例を示す図である。
【図4】本発明において、自動溶接中の各分割ゾーンの状態を表示する自動溶接中表示画面の一例を示す図である。
【図5】本発明の自動管端溶接方法を実施するための全体制御ブロックを示す図である。
【図6】本発明において、溶接機制御装置のAVC制御の制御ブロックを示す図である。
【図7】本発明において、溶接機制御装置の姿勢分割制御の制御ブロックを示す図である。
【図8】本発明において、姿勢分割検出用センサによる溶接機制御装置の姿勢制御の制御ブロックを示す図である。
【図9】本発明において管端溶接位置における溶接状態を説明するための図である。
【図10】本発明において、姿勢分割検出用センサの詳細を示す図である。
【図11】従来の管端シール溶接装置を示す図である。
【図12】従来の管端シール溶接装置において、溶接状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
3 制御電源装置
4 管板
5 伝熱管
41 管穴
23 溶接トーチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直に設けられた管板の各管穴に伝熱管を挿入し、その管穴回りに溶接トーチを回転させてTIG溶接する管端自動シール溶接方法において、伝熱管回りの溶接ゾーンを複数に分割し、その分割ゾーン毎に溶接条件を設定することを特徴とする管端自動シール溶接方法。
【請求項2】
1周360度の溶接ゾーンを8分割し、その分割ゾーン毎に溶接条件を設定する請求項1記載の管端自動シール溶接方法。
【請求項3】
各分割ゾーン毎に基準アーク電圧を設定し、溶接トーチからの溶接中のアーク電圧を検出し、そのアーク電圧が基準アーク電圧となるよう溶接トーチの距離をAVC制御する請求項1又は2記載の管端自動シール溶接方法。
【請求項4】
溶接トーチのアーク電流・電圧、回転速度、距離が、溶接機制御装置で制御され、その溶接機制御装置は、溶接条件設定画面を有し、その画面上で、各分割ゾーンのアーク電流・電圧の設定値を各分割ゾーンごとに設定する請求項1〜3のいずれかに記載の管端自動シール溶接方法。
【請求項5】
溶接機制御装置は、1周溶接中に各分割ゾーンの溶接条件と溶接中のアーク電圧現在値を自動溶接画面で表示する請求項1〜4のいずれかに記載の管端自動シール溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−296552(P2007−296552A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126128(P2006−126128)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】