説明

管端防食継手、及びその製造方法

【課題】施工時にシール剤やシールテープを巻く手間を省くことができるとともに、管端防食機能を確実に保持し発揮することができる管端防食継手を提供する。
【解決手段】継手本体301の内ねじ部11に、少なくとも継手本体301にコア2を組み付けたときの該コア2の外ねじ部23が螺合する範囲L2は除いてフッ素系樹脂製のシール剤10を焼付塗装することで、継手本体301の内ねじ部11に、フッ素系樹脂製のシール剤10からなるシール層110と該シール層110が形成されていない非塗装部L2とを形成し、該非塗装部L2に接着剤9を塗布して継手本体301とコア2とを一体に接着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として給水用配管システムに用いられる管端防食継手、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示すように、ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手を継手本体101とし、該継手本体101の端部内周に形成され、鋼管141の端部外周に形成された外ねじ部(おねじ部:管用テーパねじ部)143が螺合されてねじ込まれる内ねじ部(めねじ部:管用テーパねじ部)111のねじ全長にわたり、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という。)等のフッ素系樹脂からなるシール剤を焼付塗装する(例えば特許文献1)ことで、該継手本体101の内ねじ部111の全面に、シール層110が形成されている継手(以下、「プレコート継手」という。)100がある。
【0003】
プレコート継手100の最大の特徴は、鋼管141を接続するときに、鋼管141のねじ部143への液状シール剤の塗布やシールテープ(PTFEテープ)の巻付という手間を省くことができる点にある。
【0004】
プレコート継手100の内ねじ部111にあらかじめ形成(塗布)されたシール層110(プレコート)では、接続された鋼管141の端面144まで被覆することができないため、プレコート継手100は、管端面からの錆や赤水(錆)の発生が問題となる、給水(上水、雑用水)用配管システム用(後述するライニング鋼管用)のものは存在しない。また仮に、プレコート継手100を給水用配管システムに用いたとしても、管端面には必ず液状シール剤を塗布しなければならず、プレコート継手100の最大の特徴は半減ないし失われてしまう。この点でもプレコート継手100は、給水用配管システム用のものは存在しない。プレコート継手100は、水(飲用水を除く)、空気等の配管システムに用いられる。なお、プレコート継手100の種類は、ソケット、エルボ、T、Y、クロス等の多くのものがあるが、図3には、そのうちエルボを示している。
【0005】
一方、給水(上水、雑用水)用配管システムでは、赤水対策として、図4に示すように、鋼管41の内面、及び外面のうち、少なくとも内面に樹脂(ポリエチレン樹脂や硬質塩化ビニル樹脂)ライニング層42が形成されたライニング鋼管(水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管、水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管)4が、同じく図4に示すように、従来の管端防食継手(例えば特許文献2)200とともに用いられている。
【0006】
従来の管端防食継手200は、ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手である継手本体201と、管端防食機能を果たす樹脂製のコア2とで構成されている。
【0007】
継手本体201は、該継手本体201の端部外周に、ライニング鋼管4の端部外周に形成された外ねじ部(おねじ部:管用テーパねじ部)143が螺合されてねじ込まれる内ねじ部(めねじ部:管用テーパねじ部)11が形成されているとともに、該内ねじ部11が形成されていない継手本体201の内面、及び外面のうち、少なくとも内ねじ部11が形成されていない継手本体201の内面のねじなし部分12には樹脂(エポキシ樹脂)ライニング層3が形成されている。
【0008】
コア2は、ポリエチレン樹脂製であって、ライニング鋼管4の端部内に差し込み挿入される筒状の胴部21の端部に環状の鍔部22が一体連設され、該環状鍔部22の外周には継手本体201の内ねじ部11に螺合されてねじ込まれる外ねじ部(おねじ部:管用テーパねじ部)23が形成されているとともに、筒状胴部21の軸線方向の中間部には該胴部21の径方向外方へ突出して形成された環状リップ部24a、該リップ部24aの奥側に隣接して形成された環状溝部24b、及び該環状溝部24b内に嵌合されたOリング24cからなり、リップ部24がライニング鋼管4の内面の樹脂ライニング層42に弾性的に圧接することでコア2とライニング鋼管4との間をシールするシール部24が設けられている。
【0009】
コア2の鍔部22の環状端面22aは、該環状端面22aに向けて投射されるプラズマジェットにより、その表面の分子構造を易接着性に変換する改質加工が施されている。
【0010】
コア2は、鍔部22の外ねじ部23を継手本体201の端部の内ねじ部11に螺合させて、鍔部22の環状端面22aが継手本体201の樹脂ライニング層3の端部に当接するまでねじ込まれ、鍔部22の外ねじ部23が継手本体201の端部の内ねじ部11の奥側端部に噛み合った状態で、継手本体201の端部内に装着されている。このように継手本体201の端部内に装着されたコア2は、鍔部22の環状端面22aと継手本体201の樹脂ライニング層3との交差部に図4に示すように肉盛り塗布されたエポキシ系の接着剤9によって、継手本体201に接着固定されている。ここで、コア2は、ポリエチレン樹脂製でありながら、その接着面である環状端面22aの表面の分子構造が易接着性に変換されているために、コア2と継手本体1を接着剤9によって容易かつ強力に接着固定することができ、コア2と継手本体1との接続箇所のシール性を確保するとともに、両者2,1を一体化することができるようになっている。すなわち、管端防食継手200が組立てられる。
【0011】
管端防食継手200の端部にライニング鋼管4の端部を接続するには、先ず、ライニング鋼管4の外ねじ部、及び端面44に上水用の防食シール剤を塗布する、又はライニング鋼管4の外ねじ部4にシールテープを巻付けるとともに端面44には上水用の防食シール剤を塗布する。その後、継手本体201の端部の内ねじ部11にライニング鋼管4の端部の外ねじ部43を螺合させてねじ込むだけで行うことができる。
【0012】
接続状態では、コア2の筒状胴部21に設けられているシール部24のリップ部24aがライニング鋼管4の内面の樹脂ライニング層42に弾性的に圧接され、その圧接部分でライニング鋼管4とコア2との接続箇所のシール性(気密性、水密性)が確保されている。また、コア2と継手本体1とが接着剤9を介して強力に接着固定されているために、ライニング鋼管4の継手本体1に対するねじ込み接続時、コア2が共回りして接着剤9が剥落するおそれもなく、コア2と継手本体1との接続箇所のシール性はそのまま維持することができるようになっている。
【0013】
接続状態において、コア2と継手本体1との接続箇所及びライニング鋼管4とコア2との接続箇所のいずれからも、ライニング鋼管41の端面44へ水が侵入し錆を発生するというおそれがなく、所定の管端防食性能を確実に発揮させることができる。なお、管端防食継手200の種類についても、ソケット、エルボ、T、Y、クロス等の多くのものがあるが、図4には、そのうちエルボを示している。
【0014】
従来の管端防食継手200は、ライニング鋼管4の端面(鉄露出部)の錆や赤水(錆)の発生を防ぐことができ、給水(上水、雑用水)用配管システム(ライニング鋼管4)に好適に用いることができる。
【0015】
しかし、従来の管端防食継手200では、プレコート継手100とは異なり、ライニング鋼管41を接続するときに、ライニング鋼管41のねじ部43への液状シール剤の塗布やシールテープの巻付という手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−25605号公報
【特許文献2】特開2001−146987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
近年、給水(上水、雑用水)用配管システムにおいても、水(飲用水を除く)、空気等の配管システムと同様に施工時間の短縮化が求められている。従来の管端防食継手200においても、プレコート継手100と同様に、ライニング鋼管41のねじ部43への液状シール剤の塗布やシールテープの巻付という手間を省くことを目的として、継手本体201の端部内周に形成され、ライニング鋼管4の端部外周に形成された外ねじ部43が螺合されてねじ込まれる内ねじ部11のねじ長の全長にわたり、PTFE等のフッ素系樹脂からなるシール剤を焼付塗装し、該継手本体201の内ねじ部111の全面に、シール層110を形成することが考えられる。
【0018】
しかし、従来の管端防食継手200は、そもそも、コア2の外ねじ部23のねじ長が短く制限され、継手本体201の端部にライニング鋼管4の端部をねじ込んだ際に、コア2にかかるねじ込み方向の荷重を継手本体201の内ねじ部11で受止めにくい構造になっている。その上、従来の管端防食継手200に上記のような構成を採用すると、コア2を装着する継手本体201の内ねじ部11の表面がシール層110(プレコート)によって、潤滑剤としても用いられるフッ素系樹脂で構成され、継手本体201の内ねじ部11のねじ面とコア2の外ねじ部23のねじ面との間の摩擦が極端に小さくなることから、コア2にかかるねじ込み方向の荷重を継手本体201の内ねじ部11でさらに受止めにくくなり、その結果として、継手本体201の端部にライニング鋼管4の端部が適正にねじ込まれたとしても、鍔部22の環状端面22aと継手本体201の樹脂ライニング層3との交差部に塗布した接着剤9にかかる荷重が大きくなってしまう。
【0019】
従来の管端防食継手200は、ポリエチレン樹脂製のコア2の鍔部22の環状端面22aに向けてプラズマジェットを投射することで該環状端面22aの表面を改質加工し、その改質加工した鍔部22の環状端面22aと継手本体201の樹脂ライニング層3との交差部に接着剤9を塗布し、さらには該接着剤9の肉盛りもして、継手本体201とコア2とを一体に接着固定して、継手本体201とコア2との接着力を強化したにもかかわらず、その接着で得られる接着力では、継手本体201の端部にライニング鋼管4の端部をねじ込んだ際に、凝集破壊や接着破壊を起こし、コア2が継手本体201から外れて継手本体201の奥側に押込まれてしまい、コア2が担っている管端防食機能が失われるおそれがある。
【0020】
すなわち、上記のような問題を解決しない限り、ライニング鋼管の外ねじ部への液状シール剤の塗布やシールテープの巻付という手間を省くことができる管端防食継手を実現し、実用に供することができない。
【0021】
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、継手本体とコアとの接着力がさらに強化して得られるような新規な接着固定構造により継手本体とコアとを接着固定することで、施工時にシール剤やシールテープを巻く手間を省くことができるとともに、管端防食機能を確実に保持し発揮することができる管端防食継手、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成する本発明の第1の手段は、内面に樹脂ライニング層42が形成されているライニング鋼管4の端部に形成された外ねじ部43が螺合する内ねじ部11を有しているとともに、内面のねじなし部分12には樹脂ライニング層3が形成されている金属製の継手本体301と、上記ライニング鋼管4の端部内に挿入される筒状胴部21の端部に環状の鍔部22が連設されているとともに、上記鍔部22の外周には上記継手本体301の内ねじ部11に螺合される外ねじ部23が設けられ、かつ、上記筒状胴部21には上記ライニング鋼管4の上記樹脂ライニング層42に弾性的に圧接されるシール部24が設けられている樹脂製のコア2とを具備している管端防食継手300であって、上記継手本体301の上記内ねじ部11に、少なくとも上記継手本体301に上記コア2を組付けたときの該コア2の上記外ねじ部23が螺合する範囲L2は除いてフッ素系樹脂製のシール剤10を焼付塗装することで、上記継手本体301の上記内ねじ部11に、上記フッ素系樹脂製のシール剤10からなるシール層110と該シール層110が形成されていない非塗装部L2とが形成されており、該非塗装部L2に接着剤9を塗布して上記継手本体301と上記コア2とを一体に接着固定していることを特徴とする管端防食継手を提供する。
【0023】
本発明の第2の手段は、第1の手段で提供する管端防食継手の製造方法であって、上記樹脂ライニング層3が形成された後の継手本体301b又は上記樹脂ライニング層3が形成される前の継手本体301aの上記内ねじ部11に、少なくとも継手本体301に上記コア2を組付けたときに該コア2の上記外ねじ部23が螺合する範囲L2は除いて上記フッ素系樹脂製のシール剤10を焼付塗装することで、上記継手本体301の上記内ねじ部11に、上記フッ素系樹脂製のシール剤10からなる上記シール層110と該シール層110が形成されていない上記非塗装部L2とを形成する塗装工程(ウ)と、上記樹脂ライニング層3、上記シール層110、及び上記非塗装部L2が形成された後の完成品としての継手本体301dの上記非塗装部L2に上記接着剤9を塗布して継手本体301dと上記コア2とを一体に接着固定するコア装着工程(エ)とを含んでいることを特徴とする管端防食継手の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、継手本体の内ねじ部にフッ素系樹脂製のシール剤からなるシール層を形成することができるとともに、継手本体の内ねじ部のシール層が形成されていない非塗装部とコアのおねじ部とを接着剤で接着固定する継手本体とコアとの接着固定構造により、従来の管端防食継手の継手本体とコアとの接着固定構造に比べ、継手本体とコアとの接着力がさらに強化して得ることができるので、施工時にシール剤やシールテープを巻く手間を省くことができるとともに、管端防食機能を確実に保持し発揮することができる管端防食継手、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかる管端防食継手の構造を示す断面図
【図2】本発明の実施形態にかかる管端防食継手の製造方法を示す説明図
【図3】プレコート継手の構造を示す断面図
【図4】従来の管端防食継手の構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態にかかる管端防食継手の構造を示す断面図、図2は本発明の実施形態にかかる管端防食継手の製造方法を示す説明図である。本実施形態の管端防食継手300の種類についても、ソケット、エルボ、T、Y、クロス等の多くのものがあるが、図1、2には、そのうちエルボを示している。
【0027】
図1,図4から明らかなように、図1に示す本実施形態の管端防食継手300の基本的構造は、図4に示した従来の管端防食継手200と同じであり、同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の管端防食継手300は、内面に樹脂ライニング層42が形成されているライニング鋼管4の端部に形成された外ねじ部43が螺合する内ねじ部11を有しているとともに、内面のねじなし部分12には樹脂ライニング層3が形成されている金属製の継手本体301と、ライニング鋼管4の端部内に挿入される筒状胴部21の端部に環状の鍔部22が連設されているとともに、鍔部22の外周には継手本体301の内ねじ部11に螺合される外ねじ部23が設けられ、かつ、筒状胴部21にはライニング鋼管4の樹脂ライニング層42に弾性的に圧接されるシール部24が設けられている樹脂製のコア2とを具備している。
【0029】
また、継手本体301の内ねじ部11に、少なくとも継手本体301にコア2を組付けたときの該コア2の外ねじ部23が螺合する範囲L2(特に図2の(ウ)(エ)参照)は除いてフッ素系樹脂製のシール剤10を焼付塗装することで、継手本体301の内ねじ部11に、フッ素系樹脂製のシール剤10からなるシール層110と該シール層110が形成されていない非塗装部L2とが形成されており、該非塗装部L2に接着剤9を塗布して継手本体301とコア2とを一体に接着固定している。
【0030】
コア2は、その鍔部22の外ねじ部23を継手本体201の端部の内ねじ部11に螺合させて、鍔部22の環状端面22aが継手本体201の樹脂ライニング層3の端部に当接するまでねじ込まれ、鍔部22の外ねじ部23が継手本体201の端部の内ねじ部11の奥側端部に噛み合った状態で、継手本体201の端部内に装着されている。ここで、管端防食継手300でも、呼びの範囲が規定されているが、この呼びの範囲、及び各呼びに対する継手の端部の形状,寸法によると、コア2の鍔部22の外ねじ部23のねじ長は、サイズによるが、2.5mm以上4.00mm以下の範囲内に収まり、山数に換算すると1.4山以上1.73山以下の範囲内に収まり、非塗装部L2は、塗装のバラツキを考慮して、1.5山以上4山以下の範囲内とする。これは、コア2の鍔部22の外ねじ部23で、継手本体301の内ねじ部11に形成されたシール層110を剥離しないため、非塗装部L2は長めにするとともに、それにより、剥離したシール層110がコア2の接着に悪影響を及ぼすことがなく、望ましいためである。ここで、例えば、コア2の鍔部22の外ねじ部23のねじ山の山数が1.5山で、継手本体201の端部の内ねじ部11の非塗装部L2が2.5山とすると、継手本体201の端部の内ねじ部11に略1山(2.5山−1.5山=1山)分に相当する金属露出部分が形成されることになるが、接着剤9はそこにも塗布されるので、そこから発錆することはない。
【0031】
フッ素系樹脂製のシール剤10としては、例えば、太平化成株式会社製のプレコートシール剤「エイトシール(登録商標)」を使用することができる。
【0032】
次に、図2の(ア)〜(エ)を参照し、本実施形態の管端防食継手300の製造方法について説明する。
【0033】
(ア)鋳造工程
この工程において、継手本体301の金属部分301a(内ねじ部11を除く)を製造した後、得られた継手本体301の金属部分301の端部の内面に内ねじ部11を形成する。
(イ)内面樹脂ライニング工程
この工程において、(ア)で得られた継手本体301の金属部分301aの内面のねじなし部分12にエポキシ樹脂の粉体焼付塗装により、樹脂ライニング層3を形成する。焼付塗装では、金属部分301aの内面のねじなし部分12に、塗装装置のノズルから噴射されるエポキシ樹脂の粉体を塗布し(但し、金属部分301aの内面の内ねじ部11にエポキシ樹脂の粉体を塗布しないようにする。)、完全に乾燥した後、所定温度で、所定時間、焼付処理を行う。例えば、200℃で40分間焼付処理を行う。また、塗装の際、必要箇所以外に塗装しないとともに、塗装の寸法精度を出すためにマスキングテープを用いてもよい。この点は、次工程でも同じである。
(ウ)塗装工程
この工程において、(イ)で得られた継手本体301の金属部分301b(樹脂ライニング層3が形成された後の金属部分301b)の内ねじ部11に、少なくとも継手本体301にコア2を組付けたときに該コア2の外ねじ部23が螺合する範囲L2は除いてフッ素系樹脂製のシール剤10を焼付塗装することで、フッ素系樹脂製のシール剤10からなるシール層110を形成するとともに該シール層110が形成されていない非塗装部L2を形成する。すなわち、ねじ部11のねじ全長をL、継手本体301にコア2を組付けたときに該コア2の外ねじ部23が螺合する範囲L2としたとき、塗装部L1は、L−L2の範囲となり、その塗装部L1の範囲にシール層110が形成される。焼付塗装では、金属部分301bの内ねじ部11に、塗装装置のノズル5から噴射されるシール剤10を塗布し(但し、継手本体301にコア2を組付けたときに該コア2の外ねじ部23が螺合する範囲L2にはシール剤10を塗布しないようにする。)、完全に乾燥した後、所定温度で、所定時間、焼付処理を行う。例えば、200℃で40分間焼付処理を行う。
(エ)コア装着工程(継手組立工程)
この工程において、(ウ)で得られた継手本体301の完成品301d、すなわち、樹脂ライニング層3、シール層110、及び非塗装部L2が形成された継手本体301の金属部分301dの非塗装部L2に接着剤9を塗布して継手本体301dとコア2とを一体に接着固定する。コア2は、上記のとおり、鍔部22の外ねじ部23を継手本体201の端部の内ねじ部11に螺合させて、鍔部22の環状端面22aが継手本体201の樹脂ライニング層3の端部に当接するまでねじ込まれ、鍔部22の外ねじ部23が継手本体201の端部の内ねじ部11の奥側端部に噛み合った状態で、継手本体201の端部内に装着される。このコア2は、継手本体301とは別にポリチレン樹脂の射出成形により製造される。
【0034】
本実施形態の管端防食継手300の製造方法では、上記の(ア)〜(エ)の工程をその順に行い、図1に示した管端防食継手300を製造する。また、(ウ)塗装工程よりも先に(イ)内面樹脂ライニング工程を行ったが、両工程での焼付処理の温度は略同じであるため、逆に、(イ)内面樹脂ライニング工程よりも先に(ウ)塗装工程を行うことも可能であるが、次の点で、(ウ)塗装工程よりも先に(イ)内面樹脂ライニング工程を行うことが望ましい。すなわち、(イ)内面樹脂ライニング工程よりも先に(ウ)塗装工程を行うと、エポキシ樹脂の樹脂ライニング層3よりもフッ素系樹脂のシール剤10からなるシール層110の方が軟らかいので、(イ)内面樹脂ライニング工程を行うときに、ハンドリングに気を使う。(ウ)塗装工程よりも先に(イ)内面樹脂ライニング工程を行っても、エポキシ樹脂の樹脂ライニング層3は硬いので、フッ素系樹脂のシール剤10を塗装するときに、特に手で持っても問題がない。
【0035】
本実施形態の管端防食継手300の製造方法は、上記のとおり、樹脂ライニング層3が形成された後の継手本体301b又は樹脂ライニング層3が形成される前の継手本体301aの内ねじ部11に、少なくとも継手本体301にコア2を組付けたときに該コア2の外ねじ部23が螺合する範囲L2は除いてフッ素系樹脂製のシール剤10を焼付塗装することで、フッ素系樹脂製のシール剤10からなるシール層110を形成するとともに該シール層110が形成されていない非塗装部L2を形成する塗装工程(ウ)と、樹脂ライニング層3、シール層110、及び上記非塗装部L2が形成された後の完成品としての継手本体301dの非塗装部L2に接着剤9を塗布して継手本体301dとコア2とを一体に接着固定するコア装着工程(エ)とを含んで、図1に示した管端防食継手300を製造する。
【0036】
以上、本実施形態の管端防食継手300、及びその製造方法によれば、給水(上水、雑用水)用配管システムにおいても、水(飲用水を除く)、空気等の配管システムと同様に施工時間の短縮化を図るべく、プレコート継手100と同様に、ライニング鋼管41のねじ部43への液状シール剤の塗布やシールテープの巻付という手間を省くことを目的として、継手本体301の内ねじ部11に、フッ素系樹脂製のシール剤10からなるシール層110を形成するのであるが、該シール層110は、プレコート継手100のように、内ねじ部111の全面に形成するのではなく、少なくとも継手本体301にコア2を組付けたときの該コア2の外ねじ部23が螺合する範囲L2は除いて形成するので、シール層110が、継手本体301の内ねじ部11のねじ面とコア2の外ねじ部23のねじ面との間の摩擦を極端に小さくしてしまうようなことはなく、継手本体301の端部にライニング鋼管4の端部をねじ込んだ際にも、内ねじ部11にシール層110を形成していない従来の管端防食継手200と同じように、コア2にかかるねじ込み方向の荷重を継手本体201の内ねじ部11で受止めることができるようになる。
【0037】
その上で、本実施形態の管端防食継手300、及びその製造方法によれば、継手本体301にコア2を組付けたときに互いに噛み合うコア2の外ねじ部23と継手本体301の内ねじ部11とを接着剤9により接着固定するので、接着しようとする2つの被着面がねじ面で構成され、コア2の鍔部22の環状端面22aと継手本体201の樹脂ライニング層3との交差部とを接着剤9により接着固定する、従来の管端防食継手200の継手本体201とコア2との接着固定構造に比べて、遥かに大きい接着面積を確保することができ、強力な接着力を確保することができるようになる。
【0038】
また、本実施形態の管端防食継手300、及びその製造方法によれば、コア2側の被着面の材質は、従来の管端防食継手200の継手本体201とコア2との接着固定構造と同じポリエチレン樹脂であるものの、継手本体301側は金属となり、それがエポキシ樹脂である従来の管端防食継手200の継手本体201とコア2との接着固定構造に比べ、さらに強力な接着力を確保することができるようになる。
【0039】
してみると、本実施形態の管端防食継手300、及びその製造方法によれば、コア2がポリエチレン樹脂製であったとしても、しかもコア2側の被着面を易接着性に変換するための表面処理を行わずして、従来の管端防食継手200の継手本体201とコア2との接着固定構造に比べ、強力で十分な接着力を確保することができるので、継手本体301の端部にライニング鋼管4の端部が、適正にねじ込まれた際に、又は過剰にねじ込まれた際に、凝集破壊や接着破壊を起こし、コア2が継手本体301から外れて継手本体301の奥側に押込まれてしまい、コア2が担っている管端防食機能が失われるおそれがあるといった問題を解決することができる。
【0040】
したがって、本実施形態の管端防食継手300、及びその製造方法によれば、継手本体301の内ねじ部11にフッ素系樹脂製のシール剤10からなるシール層110を形成することができるとともに、継手本体301の内ねじ部11のシール層110が形成されていない非塗装部L2とコア2のおねじ部43とを接着剤9で接着固定する継手本体301とコア2との接着固定構造により、従来の管端防食継手200の継手本体201とコア2との接着固定構造に比べ、継手本体301とコア2との接着力がさらに強化して得ることができるので、施工時にシール剤やシールテープを巻く手間を省くことができるとともに、管端防食機能を確実に保持し発揮することができる管端防食継手、及びその製造方法を提供することができる。
【0041】
また、本実施形態の管端防食継手300、及びその製造方法によれば、継手本体301の内ねじ部11のシール層110が形成されていない非塗装部L2とコア2のおねじ部43とを接着剤9で接着固定する継手本体301とコア2との接着固定構造により、継手本体301とコア2との接続箇所の隙間全体を接着剤9で塞ぐので、継手本体201とコア2との接続箇所の隙間の入口だけを塞ぐ、従来の管端防食継手200の継手本体201とコア2との接着固定構造に比べ、接続箇所に高いシール性を確保し、維持することができるようになる。
【0042】
図1に示すように、本実施形態の管端防食継手300では、従来の管端防食継手200の継手本体201とコア2との接着固定構造、すなわち、鍔部22の環状端面22aと継手本体201の樹脂ライニング層3との交差部に肉盛りして塗布した接着剤9は、そのまま採用しているが、これはあくまで、継手本体301とコア2との接着力を高める補助的な意味で採用しており、取り除いても、継手本体301の内ねじ部11のシール層110が形成されていない非塗装部L2とコア2のおねじ部43とを接着剤9で接着固定する継手本体301とコア2との接着固定構造だけで、継手本体301とコア2の接着力は必要十分に得ることができる。また、ポリエチレン樹脂製のコア2の鍔部22の環状端面22aに向けてプラズマジェットを投射することで該環状端面22aの表面を改質加工することについても、同様であるが、継手本体301の内ねじ部11のシール層110が形成されていない非塗装部L2とコア2のおねじ部43とを接着剤9で接着固定する継手本体301とコア2との接着固定構造による継手本体301とコア2の接着力のさらなる強化手段として、コア2のおねじ部43の表面に対して実施してもよい。
【0043】
以上、本実施形態は、本発明の好ましい実施形態を内面樹脂ライニング鋼管用の管端防食継手で説明したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができる。例えば、内面、及び外面樹脂ライニング鋼管用の管端防食継手にも実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
2 コア
3 樹脂ライニング層
4 ライニング鋼管
9 接着剤
10 フッ素系樹脂製のシール剤
11 内ねじ部
12 ねじなし部分
21 筒状胴部
22 鍔部
23 外ねじ部
24 シール部
42 樹脂ライニング層
43 外ねじ部
110 シール層
300 管端防食継手
301 継手本体
301a 金属部分
301b 金属部分
301d 金属部分
L 内ねじ部のねじ全長
L1 塗装範囲(塗装部:シール層)
L2 非塗装範囲(非塗装部:接着層)
(ウ) 塗装工程
(エ) コア装着工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に樹脂ライニング層が形成されているライニング鋼管の端部に形成された外ねじ部が螺合する内ねじ部を有しているとともに、内面のねじなし部分には樹脂ライニング層が形成されている金属製の継手本体と、上記ライニング鋼管の端部内に挿入される筒状胴部の端部に環状の鍔部が連設されているとともに、上記鍔部の外周には上記継手本体の内ねじ部に螺合される外ねじ部が設けられ、かつ、上記筒状胴部には上記ライニング鋼管の上記樹脂ライニング層に弾性的に圧接されるシール部が設けられている樹脂製のコアとを具備している管端防食継手であって、上記継手本体の上記内ねじ部に、少なくとも上記継手本体に上記コアを組み付けたときの該コアの上記外ねじ部が螺合する範囲は除いてフッ素系樹脂製のシール剤を焼付塗装することで、上記継手本体の上記内ねじ部に、上記フッ素系樹脂製のシール剤からなるシール層と該シール層が形成されていない非塗装部とが形成されており、該非塗装部に接着剤を塗布して上記継手本体と上記コアとを一体に接着固定していることを特徴とする管端防食継手。
【請求項2】
請求項1に記載の管端防食継手の製造方法であって、上記樹脂ライニング層が形成された後の継手本体又は上記樹脂ライニング層が形成される前の継手本体の上記内ねじ部に、少なくとも継手本体に上記コアを組み付けたときに該コアの上記外ねじ部が螺合する範囲は除いて上記フッ素系樹脂製のシール剤を焼付塗装することで、上記フッ素系樹脂製のシール剤からなる上記シール層を形成するとともに該シール層が形成されていない上記非塗装部を形成する塗装工程と、上記樹脂ライニング層、上記シール層、及び上記非塗装部が形成された後の完成品としての継手本体の上記非塗装部に上記接着剤を塗布して継手本体と上記コアとを一体に接着固定するコア装着工程とを含んでいることを特徴とする管端防食継手の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36585(P2013−36585A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175117(P2011−175117)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】