説明

管継手の継手部材

【課題】継手部材内に設けられる環状の弁が、半径方向外側及び内側にある弁座部の両方に適正に密封係合するようにする。
【解決手段】環状の弁44を、外側環状シール部材44−1を支持する外側弁部材44−2と、内側環状シール部材44−3を支持する内側弁部材44−4から構成する。外側弁部材及び内側弁部材は、雄型部材受入部30に受け入れた雄型継手部材14により後方に変位され、また、雄型継手部材14が雄型部材受入部30から引き出されることにより、それぞれ外側バネ46−1及び内側バネ46−2により前方で変位され、且つ、前後方向で相対的に変位可能で、少なくとも当該弁が閉止位置にあるときは、相互に密封係合されるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手における継手部材に係り、特に、筒状の継手本体の半径方向中央部に内側弁座を設け、該内側弁座に対応する継手本体の内周面の位置に外側弁座を設けると共に、同継手本体内に筒状又は環状の弁を設け、該弁が内側及び外側弁座部に係合して当該継手本体の流路を閉じる閉止位置と、同弁座から離れて流路を開放する開放位置との間で前後方向に変位可能とした継手部材に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手の雄型及び雌型の継手部材は、通常、筒状の継手本体の内部に流路の開閉を行うための弁手段が設けられている。弁手段には、種々の形式があるが、筒状の弁を継手本体の内周面と摺動可能とするとともに、該筒状本体の半径方向中央位置に弁座を設定し、弁が、流路閉止位置にあるときには、該弁座に密封係合して流路を閉止するようにしたものがある。この形式の継手部材においては、Oリングなどのシール部材が、弁の外周面と筒状本体の内周面との間に設定され、雄型及び雌型部材の間の隙間から流体が漏れるのを防ぐようにする(例えば、特許文献1参照)。また、シール部材を用いる代わりに、弁自体をゴムなどで形成してシール部材を兼ねるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、そのようなシール部材は、弁の外周面に設定されたシール部材が継手本体の内周面と常に接触しているために、弁が閉止位置や開放位置に弁が閉止位置と開放位置との間で動くときに、弁の外周面に設定されたシール部材が継手本体の内周面と摺動するために磨耗しやすく、また、長期間にわたり閉止位置や開放位置に保持されるとシール部材が継手本体の内周面に固着してしまう場合も生じる。このようなシール部材の摩耗や固着を解消するため、筒状の継手本体の内周面に流体通路を囲むように突設された環状の外側弁座を形成し、弁が流路閉止位置にあるときは、該弁が外側及び内側弁座部に密封係合するようにし、弁が閉止位置と開放位置との間で動くときには、外側のシール部材が継手本体の内周面と摺動しないようにしたものが開発されている(例えば、特許文献3)。この継手部材では、上述したような外側シール部材の摩耗を無くすことはできるが、弁の外側と内側に設けたシール部材をそれぞれ外側弁座及び内側弁座に同時に密封係合させる必要があり、そのため、製作が困難となる。
【0004】
本出願人は、このような点を解消する弁手段を備えた継手部材に関する特許出願を行った(引用文献4)。すなわち、この継手部材では、筒状の継手本体に上述のような内側及び外側の環状の弁座を設けると共に、これら弁座に対する弁の半径方向外側面に環状のシール部材を設けると共に、半径方向内側面に第1の部分と該第1の部分から延びる第2の部分とからなる断面L字状のシール部材を、第1の部分を上記半径方向内側面に接着剤等により固着し、第2の部分を半径方向内側に延びるように設け、弁が閉止位置に戻るときに、内側のシール部材の第2の部分が内側弁座に密封係合し、その後で、外側のシール部材が外側弁座に係合するために弁がさらに進むときに該第2の部分が密封係合を維持しながら湾曲して弁の進行を妨げないようにし、外側のシール部材が外側弁座に適切に密封係合できるようにしている。この継手部材の弁は、その製作公差に余り左右されずに、内側及び外側弁座に対する密封係合が適正にできるという点で優れているが、内側シールを接着剤により固着しなければならないために、当該継手部材が扱う流体によっては接着剤が溶けてシール材が外れてシール不良を生じたり、流体に悪影響を与えてしまったりするという問題がある。
【特許文献1】米国特許第4,936,345号
【特許文献2】実用新案登録2559233号
【特許文献3】特許第2694299号
【特許文献4】特許3909339号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような点に鑑み、製作公差に左右されずに内側及び外側弁座との密封係合を確実に行うことができる弁手段を備えた継手部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、
前端から後方に延びる雄型部材受入部、及び、該雄型部材受入部よりも後方位置で、該雄型部材受入部に受け入れた雄型継手部材の流体通路に連通される流体通路部を備える筒状の継手本体と、
該継手本体内に設けられて、該流体通路部の開閉を行なう弁手段と
を有し、
該弁手段が、
該継手本体の内周面に該雄型部材受入部を囲むように半径方向内側に突設された環状の外側弁座部と、
該継手本体内部で、該外側弁座部との間に環状の弁開口を形成する環状の内側弁座部と、
該継手本体の内部に該継手本体の前後方向で変位可能に設けられ、該外側及び内側弁座部に係合して該弁開口を閉じる閉止位置と、該外側及び内側弁座部から離れて該弁開口を開放する開放位置との間で変位可能とされた環状の弁であって、閉止位置にあるときに、該外側弁座部に押圧されて該外側弁座部と当該弁との間を密封する外側環状シール部材と、該内側弁座部に押圧されて該内側弁座部と当該弁との間を密封する内側環状シール部材とを備える弁と、
該弁を該閉止位置に向けて付勢するバネ手段と、
を備え、
該弁が、該外側環状シール部材を支持する外側弁部材と、該内側環状シール部材を支持する内側弁部材とを備え、該外側弁部材及び内側弁部材は、該雄型部材受入部に受け入れた雄型継手部材により後方に変位され、また、該雄型継手部材が該雄型部材受入部から引き出されることにより該バネ手段により前方で変位されるようにされており、且つ、該前後方向で相対的に変位可能で、少なくとも当該弁が閉止位置にあるときは、相互に密封係合されるようになされており、
該バネ手段は、該外側弁部材を前方に付勢する外側バネと、前記内側弁部材を前方に付勢する内側バネとを備え、該弁が該閉止位置にあるときは、該外側及び内側バネが、それぞれ、該外側及び内側環状シール部材に押圧するようにした、
ことを特徴とする雌型継手部材を提供する。
【0007】
すなわち、この雌型継手部材においては、弁手段が該閉止位置になるときに、例えば、内側環状シール部材が外側環状シール部材よりも先に対応する弁座、すなわち内側弁座部と密封係合して内側弁部材が停止したとしても、外側環状シール部材を支持している外側弁部材は、内側弁部材が停止することとは関係なく前進して、外側弁部材が対応する弁座、すなわち外側弁座部に密封係合することができるようにしている。これは、外側環状シール部材が内側環状シール部材よりも先に対応する外側弁座部に密封係合した場合も同様である。この雌型継手部材においては、特許文献4に開示された如きものと異なり、環状シール部材を外側弁部材や内側弁部材に接着する必要が無く、従って、上述した問題点を解消することができる。
【0008】
具体的には、
該内側弁部材は、該継手本体の前後方向に延びる長手軸線に平行な環状外周面を有し、
該外側弁部材は、該内側弁部材の該環状外周面上で該前後方向に変位可能で、該前後方向で相互に離された外側前方弁部材及び外側後方弁部材を備え、外側前方弁部材が外側後方弁部材よりも前方位置とされ、該外側バネが該外側後方弁部材に係合されるようになされており、該外側環状シール部材が該外側前方弁部材及び外側後方弁部材の間に挟着され、該外側環状シール部材が該外側弁座部及び内側弁部材の該環状外周面と密封係合するように設定される。
【0009】
また、上記の具体例とは逆に、
該外側弁部材が、該筒状弁体の前後方向に延びる長手軸線に平行な環状内周面を有し、
該内側弁部材が、該外側弁部材の該環状内周面に接して該前後方向に変位可能で、該前後方向で相互に離された内側前方弁部材及び内側後方弁部材を備え、内側前方弁部材が内側後方弁部材よりも前方位置とされ、内側バネが内側後方弁部材に係合されるようになされており、該内側環状シール部材が該内側前方弁部材及び該内側後方弁部材の間に挟着され、該内側環状シール部材が該内側弁座部及び該外側弁部材の該環状内周面に密封係合するように設定することもできる。
【0010】
これらの具体例では、2つの部材から構成される外側弁部材又は内側弁部材に支持される環状シール部材が、2つの部材の間に挟着されて設定されるので、その取り付けが容易になる。
【0011】
上記第1の具体例では、
該外側及び内側環状シール部材がOリングとされ、該内側弁部材は、半径方向内側に向けて開放された環状のOリング受け入れ溝を有するものとすることができる。
【0012】
上記第2の具体例では、該外側及び内側環状シール部材がOリングとされ、該外側弁部材が、半径方向外側に向けて開放された環状のOリング受け入れ溝を有するものとすることができる。
【0013】
これら具体例では、特許文献4に開示されたものとは異なり、シール部材にOリングという汎用の部品を用いることで、特許文献4の弁手段と同等の確実なシールを可能としながら低コストとすることができる。この低コストとすることの要因として、シール部材として汎用のOリングを使用できるため、シール部材製作のための特別な金型を必要としないことがあげられる。また、上述のように、外側及び内側弁部材が閉止位置に近づき、その一方が他方に対して相対的に動くときに、外側及び内側弁部材間の密封を行っているOリングは、その変形や転動により、それら外側弁部材や内側弁部材の動きを容易にし、このため、グリースなどの潤滑油を付与する必要が無い。
【0014】
更に上記第1の具体的には、
該外側前方弁部材は、外側弁座部に係止可能とされた外側係止部と、半径方向内側に延びて、該内側弁部材が該外側前方弁部材を前方に通過するのを阻止する内側係止部とを有するものとすることができる。要するに、外側弁部材及び内側弁部材が、筒状の継手本体から前方に抜け出るのを防ぐためである。
【0015】
この場合、該雄型継手部材が該雄型部材受入部内に受け入れられて該弁手段と係合したときに、該外側前方弁部材の該内側係止部と該内側弁部材との間に該前後方向で隙間が生じるようになされ、該雄型継手部材が該雄型部材受入部から引き抜かれたときに、該閉止位置に向けて動く該弁手段における該外側弁部材の該外側環状シール部材が該外側弁座部と密封係合して該外側弁部材の前方への動きが停止された後に、該停止された外側弁部材に対して該内側弁部材が相対的に前方へ動き、該内側環状シール部材が該内側弁座部と密封係合するのを許容するようにすることが好ましい。
【0016】
また、これとは逆に、
該雄型継手部材が該雄型部材受入部内に受け入れられて該弁手段と係合したときに、該外側前方弁部材の該内側係止部と該内側弁部材とが該前後方向で当接するようになされ、該雄型継手部材が該雄型部材受入部から引き抜かれたときに、該閉止位置に向けて動く該弁手段における該内側弁部材の該内側環状シール部材が該内側弁座部と密封係合して該内側弁部材の前方への動きが停止された後に、該停止された内側弁部材に対して該外側弁部材が相対的に前方へ動き、該外側環状シール部材が該外側弁座部と密封係合するのを許容するようにすることもできる。
【0017】
以下本発明を添付図面に示した実施形態に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る管継手であって、雌型及び雄型継手部材が相互に離されている状態を示す断面図である。
【図2】同雌型及び雄型継手部材が連結された状態を示す断面図である。
【図3】連結されていた雄型継手部材が引き抜かれるときの雌型継手部材の断面図で、弁が閉止位置に近づいた状態を示している。
【図4】他の実施形態に係る雌型及び雄型継手部材が連結された状態を示す断面図であり、
【図5】図4の実施形態において、連結されていた雄型継手部材が引き抜かれるときの雌型継手部材の断面図で、弁が閉止位置に近づいた状態を示している。
【図6】図4の実施形態において、弁が閉止位置になったときの状態を示す断面図である。
【図7】第3の実施形態に係る管継手における、連結されていた雄型継手部材が引き抜かれるときの雌型継手部材の断面図で、弁が閉止位置に近づいた状態を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る雌型継手部材の実施形態につき説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る雌型継手部材12及び雄型継手部材14を備える管継手10を示している。
【0021】
雌型継手部材12は、筒状の継手本体34であって、その前端から後方に延びる雄型部材受入部30、及び、該雄型部材受入部30に受け入れた雄型継手部材12の流体通路16に連通される流体通路部32を備える筒状の継手本体34と、該継手本体内に設けられて、該流体通路部の開閉を行なう弁手段36とを有する。継手本体34は、具体的には、雄型部材受入部30を有する第1筒状部材34−1と、該第1筒状部材34−1に連結された第2筒状部材34−2とから構成されている。
【0022】
弁手段36は、図2乃至図3に明瞭に示すように、継手本体34の内周面に雄型部材受入部30を囲むように突設された環状の外側弁座部38と、継手本体34内部で、外側弁座部38との間に環状の弁開口40を形成する内側弁座部42と、継手本体34内部にその前後方向で変位可能に設けられ、外側及び内側弁座部38,42に係合して弁開口40を閉じる閉止位置(図1)と、外側及び内側弁座部38,42から離れて弁開口40を開放する開放位置(図2)との間で変位可能とされた弁44とを有する。図示の例では、内側弁座部42は、第2筒状部材34−2の前端に環状に形成されており、該第2筒状部材34−2には、内側弁座部より少し後方位置に貫通孔34−2aが斜めに設けられている。
【0023】
弁44は、外側環状シール部材としてのOリング44−1を支持する外側弁部材44−2と、内側環状シール部材としてのOリング44−3を支持する内側弁部材44−4とを備え、これら外側弁部材44−2及び内側弁部材44−4は、それぞれ、外側バネ46−1及び内側バネ46−2により外側弁座部38及び内側弁座部42に向けて前方へ付勢されている。
【0024】
外側弁部材44−2及び内側弁部材44−4は、雄型部材受入部30に受け入れた雄型継手部材14により後方に変位され、また、雄型継手部材14が雄型部材受入部30から引き出されることによりに外側及び内側バネ46−1、46−2より前方で変位されるようにされている。図示の実施形態においては、内側弁部材44−4は、継手本体34の前後方向に延びる長手方向軸線に平行な環状外周面44−4aと、環状内側環状シール部材としてのOリング44−3を受け入れるよう半径方向内側に開口した環状のOリング受け入れ溝44−4bとを有している。外側弁部材44−2は、内側弁部材44−4の環状外周面44−4a上で前後方向に変位可能で、且つ、前後方向で相互に離された外側前方弁部材44−2a及び外側後方弁部材44−2bを備え、外側環状シール部材としてのOリング44−1はそれら外側前方弁部材44−2a及び外側後方弁部材44−2bの間に挟着されている。外側環状シール部材としてのOリング44−1及び内側環状シール部材としてのOリング44−3は、弁44が閉止位置にあるときに、それぞれ、外側弁座部38及び内側弁座部42に密封係合されるように設定されている。また、外側環状シール部材としてのOリング44−1は、内側弁部材44−4の環状外周面44−4aと密封係合され、内側弁部材44−4と外側弁部材44−2との間を密封している。外側前方弁部材44−2aは、弁44が閉止位置にあるときに、その略全体が環状の弁開口40内に挿入された状態となるサイズとされているが、その後端部分には半径方向外側に延びる環状の外側係止部44−2cが設けられており、当該外側前方弁部材44−2aが前方に飛び出さないようにしている。また、この外側前方弁部材44−2aは、その前端に半径方向内側に延びる環状の内側係止部44−2dが設けられており、内側弁部材44−4が前方に飛び出さないようにしている。
【0025】
図示の雌型継手部材12は、継手本体34の内周面の外側弁座部38及び内側弁座部42よりも入口側にOリング68が設けられており、雄型継手部材14が雌型継手部材12に挿入連結されて、外側及び内側環状シール部材としてのOリング44−1,44−3と外側及び内側弁座部38,42との密封係合が解除されたときに、雄型継手部材14の外周面に密封係合することにより、流体が雌型継手部材12の内周面と雄型継手部材14の外周面との間の隙間を通り、外部へ漏れ出すのを防ぐようにしている。また、継手本体34には半径方向に変位可能にされた施錠子70が設けられ、雌型継手部材12に挿入された雄型継手部材14の外周面に形成されている施錠子溝72に係合して、雄型継手部材14が雌型継手部材12に固定されるようになっている。図中、74は、該施錠子70を施錠溝72に押圧・押圧解除するためのスリーブである。
【0026】
図3は、図2に示す連結状態にあった雄型継手部材14を雌型継手部材12から引き抜くときの、弁44を構成する外側弁部材44−2及び内側弁部材44−4の動きを示している。
【0027】
すなわち、雄型継手部材14の引き抜きに伴い、弁44が閉止位置に近づくと、外側弁部材44−2が支持するOリング44−1と内側弁部材44−4が支持するOリング44−3は、それぞれ、外側弁座部38及び内側弁座部42に近接する。このとき図3に示すように、内側環状シール部材としてのOリング44−3が内側弁座部42に係合する前に、外側環状シール部材としてのOリング44−1が外側弁座部38に密封係合状態となり、外側弁部材44−2の動きが停止した場合でも、内側弁部材44−4は外側弁部材44−2の動きの停止にかかわらず更に前進して内側シール部材としてのOリング44−3が内側弁座部42に確実に密封係合された状態となる。これは外側弁部材44−2と内側弁部材44−4との相対的動きを可能としているためであるが、図示の実施形態では、前述の通り、外側前方弁部材44−2aが内側係止部44−2dを備えているので、上記のような外側弁部材44−2に対する内側弁部材44−4の前方への動きを可能とするためには、弁が雄型継手部材14によって開放位置とされたときに、図2に示すように、外側前方弁部材44−2の内側係止部44−2dと内側弁部材44−4の前端との間に隙間dが生じるようにする必要がある。上記相対的動きは、外側弁部材及び内側弁部材の間の密封をはかっている外側環状シール部材がOリング44−1とされているために、当該Oリングの変形または内側弁部材の環状面上での転動により容易に生じ、このためにこれら外側及び内側弁部材の間にグリースなどの潤滑油を設ける必要は無い。
【0028】
図4乃至図6は、弁44が閉止位置に近づいたときに、上述の例とは逆に、内側環状シール部材としてのOリング44−3が外側環状シール部材としてのOリング44−1よりも先に密封係合を生じる例を示している。この場合は、弁44が開放位置にあるときに、前述のような隙間を設ける必要は無い。
【0029】
図7は第3の実施形態を示しており、上述の実施形態とは異なり、内側弁部材44−4を2つの部材、即ち内側前方弁部材44−4c及び内側後方弁部材44−4dから構成し、その間に内側環状シール部材としてのOリング44−3を挟着し、このOリング44−3に内側弁座部42との密封係合の他に、単一部材として形成した外側弁部材44−2と内側弁部材44−4との間の密封をも行う機能を持たせている。外側弁部材44−2の内周には前述の実施形態における内側弁部材44−4の環状外周面44−4aに相当する環状内周面44−2eを設け、内側環状シール部材としてのOリング44−3を該環状内周面44−2eに密封係合させている。この実施形態では、弁44が雄型継手部材14によって閉止位置から開放位置の方へ変位された状態では、内側前方弁部材44−4cと外側弁部材44−2の内側係止部44−2dとの間には前後方向での隙間はなく、従って、弁44が開放位置から閉止位置に近づいたときに、先ず、内側環状シール部材としてのOリング44−3が内側弁座部42に密封係合し、それによって内側弁部材44−4の動きが停止された状態で、外側弁部材44−2が更に前方に進み外側環状シール部材としてのOリング44−1が外側弁座部38に密封係合して、外側弁部材44−2の動きが停止するようになっている。
【0030】
以上、本発明に係る雌型継手部材の実施形態につき述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の基本的特徴は、弁を外側及び内側弁部材から構成し、それらを前後方向で相対的に変位可能とした点にあり、外側弁部材や内側弁部材を上述のように、2部材から構成する必要は必ずしも必要は無く、例えば上述した第1及び第2の実施形態の場合、外側弁部材をワンピース(単一部材)のものとし、環状シール部材がその外周面側及び内周面側にそれぞれ設けられるようなものとすることもできる。
【符号の説明】
【0031】
管継手10;雌型継手部材12;雄型継手部材14;流体通路16;雄型部材受入部30;流体通路部32;第1筒状部材34−1;第2筒状部材34−2;貫通孔34−2a;継手本体34;弁手段36;外側弁座部38;弁開口40;内側弁座部42;弁44;外側環状シール部材としてのOリング44−1;外側弁部材44−2;外側前方弁部材44−2a;外側後方弁部材44−2b;外側係止部44−2c;内側係止部44−2d;環状内周面44−2e;内周面44−2e内側環状シール部材としてのOリング44−3;内側弁部材44−4;環状外周面44−4a;溝44−4b;内側前方弁部材44−4c;内側後方弁部材44−4d;外側バネ46−1;内側バネ46−2;Oリング68;施錠子70;施錠子溝72;スリーブ74

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端から後方に延びる雄型部材受入部、及び、該雄型部材受入部よりも後方位置で、該雄型部材受入部に受け入れた雄型継手部材の流体通路に連通される流体通路部を備える筒状の継手本体と、
該継手本体内に設けられて、該流体通路部の開閉を行なう弁手段と
を有し、
該弁手段が、
該継手本体の内周面に該雄型部材受入部を囲むように半径方向内側に突設された環状の外側弁座部と、
該継手本体内部で、該外側弁座部との間に環状の弁開口を形成する環状の内側弁座部と、
該継手本体の内部に該継手本体の前後方向で変位可能に設けられ、該外側及び内側弁座部に係合して該弁開口を閉じる閉止位置と、該外側及び内側弁座部から離れて該弁開口を開放する開放位置との間で変位可能とされた環状の弁であって、閉止位置にあるときに、該外側弁座部に押圧されて該外側弁座部と当該弁との間を密封する外側環状シール部材と、該内側弁座部に押圧されて該内側弁座部と当該弁との間を密封する内側環状シール部材とを備える弁と、
該弁を該閉止位置に向けて付勢するバネ手段と、
を備え、
該弁が、該外側環状シール部材を支持する外側弁部材と、該内側環状シール部材を支持する内側弁部材とを備え、該外側弁部材及び内側弁部材は、該雄型部材受入部に受け入れた雄型継手部材により後方に変位され、また、該雄型継手部材が該雄型部材受入部から引き出されることにより該バネ手段により前方に変位されるようにされており、且つ、該前後方向で相対的に変位可能で、少なくとも当該弁が閉止位置にあるときは、相互に密封係合されるようになされており、
該バネ手段は、該外側弁部材を前方に付勢する外側バネと、前記内側弁部材を前方に付勢する内側バネとを備え、該弁が該閉止位置にあるときは、該外側及び内側バネが、それぞれ、該外側及び内側環状シール部材を押圧するようにした、
ことを特徴とする雌型継手部材。
【請求項2】
該内側弁部材は、該筒状弁体の前後方向に延びる長手軸線に平行な環状外周面を有し、
該外側弁部材は、該内側弁部材の該環状外周面上で該前後方向に変位可能で、該前後方向で相互に離された外側前方弁部材及び外側後方弁部材を備え、外側前方弁部材が外側後方弁部材よりも前方位置とされ、該外側バネが該外側後方弁部材に係合されるようになされており、該外側環状シール部材が該外側前方弁部材及び外側後方弁部材の間に挟着され、該外側環状シール部材が該外側弁座部及び内側弁部材の該環状外周面と密封係合するように設定されている請求項1に記載の雌型継手部材。
【請求項3】
該外側弁部材は、該筒状弁体の前後方向に延びる長手軸線に平行な環状内周面を有し、
該内側弁部材は、該外側弁部材の該環状内周面に接して該前後方向に変位可能で、該前後方向で相互に離された内側前方弁部材及び内側後方弁部材を備え、内側前方弁部材が内側後方弁部材よりも前方位置とされ、該内側バネが該内側後方弁部材に係合されるようになされており、該内側環状シール部材が該内側前方弁部材及び内側後方弁部材の間に挟着され、該内側環状シール部材が該内側弁座部及び外側弁部材の該環状内周面に密封係合するように設定されている請求項1に記載の雌型継手部材。
【請求項4】
該外側及び内側環状シール部材はOリングとされ、該内側弁部材は、半径方向内側に向けて開放された環状のOリング受け入れ溝を有している請求項2に記載の雌型継手部材。
【請求項5】
該外側及び内側環状シール部材はOリングとされ、該外側弁部材は、半径方向外側に向けて開放された環状のOリング受け入れ溝を有している請求項3に記載の雌型継手部材。
【請求項6】
該外側前方弁部材は、該外側弁座部に係止可能とされた外側係止部と、半径方向内側に延びて、該内側弁部材が該外側前方弁部材を前方に通過するのを阻止する内側係止部とを有する請求項2に記載の雌型継手部材。
【請求項7】
該雄型継手部材が該雄型部材受入部内に受け入れられて該弁手段と係合したときに、該外側前方弁部材の該内側係止部と該内側弁部材との間に該前後方向で隙間が生じるようになされ、該雄型継手部材が該雄型部材受入部から引き抜かれたときに、該閉止位置に向けて動く該弁手段における該外側弁部材の該外側環状シール部材が該外側弁座部と密封係合して該外側弁部材の前方への動きが停止された後に、該停止された外側弁部材に対して該内側弁部材が相対的に前方へ動き、該内側環状シール部材が該内側弁座部と密封係合するのを許容するようにした請求項6に記載の雌型継手部材。
【請求項8】
該雄型継手部材が該雄型部材受入部内に受け入れられて該弁手段と係合したときに、該外側前方弁部材の該内側係止部と該内側弁部材とが該前後方向で当接するようになされ、該雄型継手部材が該雄型部材受入部から引き抜かれたときに、該閉止位置に向けて動く該弁手段における該内側弁部材の該内側環状シール部材が該内側弁座部と密封係合して該内側弁部材の前方への動きが停止された後に、該停止された内側弁部材に対して該外側弁部材が相対的に前方へ動き、該外側環状シール部材が該外側弁座部と密封係合するのを許容するようにした請求項3に記載の雌型継手部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76451(P2013−76451A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218113(P2011−218113)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】