説明

管継手

【課題】シール性を低下させることなく回転バルブの摺動抵抗を低減した管継手を提供する。
【解決手段】回転バルブの貫通孔とバルブ収容室の開口部とが一致する場合に開となり、開口部が外周壁で塞がれる場合に閉となるようにバルブユニットを構成し、バルブ収容室の先端側の開口部にはシール弁座26を設け、バルブユニットと筒状体20との間に、スライドバルブホルダー42の前後移動に伴って回転バルブを回転させるピン413とカム孔とからなるカム機構を設け、回転バルブを回転可能に、かつシール弁座26に対して進退変位可能に支持する支持手段6を設け、支持手段6は、回転バルブを枢軸の周りで回転可能に支持する軸部61と、シール弁座26に対して直角方向に延びるように形成された長孔である軸孔62とを有し、回転バルブをシール弁座26に向けて付勢するバネ部材64を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱自在に接続されるプラグとソケットとからなる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手に用いられるバルブ構造として、流体通路を開閉する回転バルブを使用した管継手が、数多く提案されている。
【0003】
従来、この種の管継手として、ソケットを構成する筒状体内に、非接続時に前進位置にあり接続時に押されて後退するスライドバルブホルダーが軸方向に移動自在に、かつ筒状体との間がシールされるように設けられ、該スライドバルブホルダーの後端と前記筒状体の内周段部との間に、スライドバルブホルダーを前進方向に付勢するスプリングを介装したものがある。
【0004】
スライドバルブホルダーには、バルブ収容室が形成され、このバルブ収容室内に、貫通孔を有する回転バルブが収容され、回転バルブの外周壁がバルブ収容室の内壁に圧接状態で回転可能に支持されている。そして、回転バルブの回転により、回転バルブの貫通孔とスライドバルブホルダーのバルブ収容室の開口部とが一致することにより、回転バルブが開となり、バルブ収容室の先端側の開口部が回転バルブの外周壁で塞がれることにより、回転バルブが閉となるようになっている。
【0005】
バルブ収容室の開口部には、回転バルブの外周壁との間をシールするシール弁座が設けられ、スライドバルブホルダーの前進・後退移動に伴い回転バルブが回転するようになっているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、回転バルブを枢軸の周りに回転自在に軸支し、回転バルブに流体通路を密封する環状密封部よりも枢軸を中心として半径方向内側に位置した部分を設けて、ボールバルブの回転するときの摺動抵抗を低減するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−176755号公報
【特許文献2】特開2005−127377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、従来の回転バルブを備える管継手においては、回転バルブの回転軸とシール弁座の位置により、シール弁座に設けられたシール材のしめ代が決められている。このため、高圧の流体に対してシール性を上げるには、しめ代を上げる必要があり、流体の圧力に関係することなく回転バルブの摺動抵抗が高くなっていた。従って、従来の回転バルブを自動開閉バルブに適用するにはこのような問題があった。
【0009】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、シール性を低下させることなく回転バルブの摺動抵抗を低減した管継手を提供することを目的とする。言い換えると、回転バルブの操作抵抗を増加させることなく、流体の圧力に応じて必要なシール性を得ることができ、自動開閉バルブに適用可能なバルブ構造を備える管継手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ソケットとプラグの少なくとも一方の流体通路にバルブ機構を備えた管継手であって、ソケット又はプラグを構成する筒状体内に、軸方向に移動自在に設定されたバルブユニットであって、筒状体内でソケットとプラグとの非接続時に前進位置にあり接続時に押されて後退する筒状のスライドバルブホルダー、及びスライドバルブホルダーに形成されたバルブ収容室内に収容され、貫通孔を有する回転バルブを備え、前記回転バルブの回転により、該回転バルブに開設した貫通孔と前記スライドバルブホルダーのバルブ収容室の開口部とが一致する場合に、前記回転バルブが開となり、前記バルブ収容室の先端側の開口部が回転バルブの外周壁で塞がれる場合に、回転バルブが閉となるバルブユニットを設け、前記スライドバルブホルダーの後部と前記筒状体との間には、前記スライドバルブホルダーを前進方向に付勢する第1付勢手段を介装し、前記バルブ収容室の先端側の開口部には前記ボールバルブの外周壁との間をシールするシール弁座を設け、前記バルブユニットと前記筒状体との間に、前記スライドバルブホルダーの前後移動に伴って前記回転バルブを回転させるカム機構を設け、前記回転バルブを回転可能に、かつ、前記シール弁座に対して進退変位可能に支持する支持手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した構成に加えて、前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢する第2付勢手段を設けたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載した構成に加えて、前記支持手段は、前記回転バルブを枢軸の周りで回転可能に支持する軸部と、前記スライドバルブホルダーに設けられ、前記軸部が嵌合する軸孔とを有し、該軸孔は、前記シール弁座に対して直角方向に延びるように形成された長孔であるものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載した構成に加えて、前記第2付勢手段は、円弧の一部を切除したほぼリング状のバネ部材を有し、前記スライドバルブホルダーに、前記軸孔の後端側に連接され二つの受入溝を設け、該二つの受入溝に前記バネ部材の両端部をそれぞれ係止し、かつ、前記バネ部材のリング状の内側に前記支持手段の軸部が当接され前記バネ部材が押し広げられる状態で装着され、前記バネ部材が前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢するように構成するものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項2又は3に記載した構成に加えて、前記第2付勢手段は、前記スライドバルブホルダーを前進方向へ付勢する前記第1付勢手段が前記筒状体と前記支持手段の軸部の間に設定され、該第1付勢手段が前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢するように構成するものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項2又は3に記載した構成に加えて、前記第2付勢手段は、ほぼU字状のバネ部材を有し、前記スライドバルブホルダーに、前記支持手段の軸孔の後端側に連接された受入溝を設け、該受入溝にほぼU字状のバネ部材を装着し、ほぼU字状のバネ部材の直線状の両端部がそれぞれ前記スライドバルブホルダーと前記支持手段の軸部とに当接し、ほぼU字状のバネ部材の直線状の両端部がそれぞれU字状の内側に向けて押圧された状態であり、ほぼU字状のバネ部材が前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢するように構成するものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1ないし請求項4に係る発明によれば、回転バルブの摺動抵抗を低減することができるので、回転バルブの操作荷重を低減可能である。そして、回転バルブの操作荷重を低減した本バルブ構造は、管継手の自動開閉バルブとして適している。
また、請求項5及び請求項6に係る発明によれば、コストの削減が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ソケット及びプラグを構成する筒状体内に、非接続時に前進位置にあり接続時に押されて後退する筒状のスライドバルブホルダー、及びスライドバルブホルダーに形成されたバルブ収容室内に収容され、貫通孔を有する回転バルブを備え、前記回転バルブの回転により、該回転バルブに開設した貫通孔と前記スライドバルブホルダーのバルブ収容室の開口部とが一致する場合に、前記回転バルブが開となり、前記バルブ収容室の先端側の開口部が回転バルブの外周壁で塞がれる場合に、回転バルブが閉となるバルブユニットを設け、前記スライドバルブホルダーの後部と前記筒状体との間には、前記スライドバルブホルダーを前進方向に付勢するスプリングを介装し、前記バルブ収容室の先端側の開口部には前記回転バルブの外周壁との間をシールするシール弁座を設け、前記バルブユニットと前記筒状体との間に、前記スライドバルブホルダーの前後移動に伴って前記回転バルブを回転させるカム機構を設け、前記回転バルブを回転可能に、かつ前記シール弁座に対して進退変位可能に支持する支持手段を設け、該支持手段は、前記回転バルブを枢軸の周りで回転可能に支持する軸部と、前記スライドバルブホルダーに設けられて前記軸部が嵌合する軸孔とを有し、前記軸孔を前記シール弁座に対して直角方向に延びる長孔で形成し、前記スライドバルブホルダーに、前記軸孔の後端側に連接され、前記長孔である軸孔の長軸に対して対称に配置された二つの受入溝を設け、該二つの受入溝に、円弧の一部を切除したほぼリング状のバネ部材の両端部をそれぞれ係止し、かつ前記バネ部材のリング状の内側に前記支持手段の軸部が当接し前記バネ部材が押し広げられる状態で装着され、前記バネ部材が前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢する付勢手段を設けた。
【実施例】
【0018】
以下、本発明に係る管継手を図面に基づいて説明する。図1ないし図6は、本発明に係る管継手の一実施例を示したもので、図1はプラグとソケットとが非接続状態にある管継手の一部を欠截した正面図、図2は同上の縦断面図、図3は図2におけるA−A線断面図である。また、図4はプラグとソケットとが接続状態にある管継手の一部を欠截した正面図、図5は同上の縦断面図、図6は図5におけるB−B線断面図である。
【0019】
本発明に係る管継手1は、ソケット2と、プラグ3と、両者を接続するロック機構5と、ソケット2とプラグ3の少なくとも一方の流体通路に設けたバルブ機構4と、を備えている。
【0020】
先ず、ソケット2は、ケーシングとなる筒状体20と、この筒状体20に収納されて後述するバルブ機構4を構成する回転バルブ41及び筒状のスライドバルブホルダー42と、ロック機構5を構成する操作リング51等、を備えている。
【0021】
筒状体20は、筒状本体21、及び該筒状本体21の後端部に接続され当該管継手1に図示していないパイプを連結するための筒状のアダプター22とを有している。また、筒状体20は、軸方向に流体通路を形成する貫通孔211を有し、この貫通孔211には、軸方向に移動可能とされたバルブ機構4が収納されている。
【0022】
バルブ機構4は、筒状体20の軸方向に移動する筒状のスライドバルブホルダー42と、このスライドバルブホルダー42を筒状体20の前端方向に付勢する第1付勢手段としてのスプリング23と、筒状体20の軸線に対して直交する方向に延びる枢軸を中心にして回転可能にスライドバルブホルダー42に後述する支持手段6を介して支持された回転バルブ41と、から構成されている。なお、スプリング23は、筒状本体21に装着したアダプター22の内周段部221と、スライドバルブホルダー42の後端との間に介装してあるが、筒状本体21に内周段部を設けて介装するようにしてもよい。
【0023】
スライドバルブホルダー42は、軸方向に流体通路を形成する貫通孔425を有し、前方筒状部421と、後方筒状部422と、これらの前方筒状部421及び後方筒状部422の間に延び、それらを連結する一対の側壁部423からなり、このスライドバルブホルダー42には、後述する回転バルブ41を回転可能に収容するバルブ収容室が形成されている。
【0024】
一方、回転バルブ41は、支持手段6を介して回転可能に、かつ、シール弁座26に対して進退変位可能に支持されている。また、回転バルブ41は、枢軸に直交する方向に延びる貫通孔411を有している。
【0025】
筒状体20内でソケット2とプラグ3との非接続時に前進位置にあり接続時に押されて後退する筒状のスライドバルブホルダー42と、バルブ収容室内に回転可能に収容された回転バルブ41とで、バルブユニットを構成する。即ち、貫通孔411を有する回転バルブ41の回転により、この回転バルブ41に開設した貫通孔411とスライドバルブホルダー42のバルブ収容室の開口部424とが一致する場合に、回転バルブ41が開となり、バルブ収容室の先端側の開口部424が回転バルブ41の外周壁414で塞がれる場合に、回転バルブ41が閉となるバルブユニットを構成するのである。
【0026】
そこで、バルブユニットと筒状体20との間に、スライドバルブホルダー42の前後移動に伴って回転バルブ41を回転させるカム機構を設ける。このカム機構は、例えば、回転バルブ41の枢軸方向に貫通し、該枢軸に対して直交する断面において所要のカム曲線に沿うよう形成されたカム孔412と、該カム孔412内を枢軸方向に延びる直線状のピン413とから構成されている。
【0027】
ピン413の両端は、筒状本体21とアダプタ22との間に、筒状体20の軸方向、求遠心方向にある程度の変位が可能に支持されている。バルブ収容室に取り付けられ、スライドバルブホルダー42がソケット2の軸方向に移動するとき、当該スライドバルブホルダー42と共に前記軸方向に動かされる回転バルブ41は、そのカム孔412の壁面が前記ピン413に摺動しながら、枢軸の周りで回転する。
【0028】
次に、ソケット2とプラグ3とを接続するロック機構5について説明する。ソケット2の筒状本体21の先端部には、先端側にロックボール嵌合孔213が周方向に複数設けられている。各ロックボール嵌合孔213には、それぞれロックボール52が求遠心方向に移動自在に嵌合している。そして、ロックボール52が嵌合するロックボール嵌合孔213は、いずれもロックボール52の一部が筒状本体21の内面に突出した状態で保持されるよう求心方向に向かうにつれて小径となるように形成されている。
【0029】
筒状本体21の外周には、軸方向に沿って移動自在に操作リング51が遊嵌してある。この操作リング51の内周面には、先端側から、ロックボール開放凹状面511、ロックボール52を押し上げ可能なロックボール当接傾斜面512、ロックボール押圧凸状面513、が形成してある。
【0030】
筒状本体21には、操作リング51の前進位置を位置決めし、かつ筒状本体21からの抜け出しを阻止するストップリング53が設けられている。また、操作リング51と筒状本体21との間には、当該操作リング51を前進方向に付勢するスプリング54が介装されている。
【0031】
筒状体21の先端部に設けたロックボール嵌合孔213と、筒状本体21の外周に遊嵌した操作リング51の内周面に設けたロックボール開放凹状面511、ロックボール当接傾斜面512、ロックボール押圧凸状面513とが、対応するように適宜に配置されている。そして、操作リング51が前進位置にあるとき、ロックボール52がロックボール押圧凸状面513の下位に位置する。
【0032】
ソケット2に対応するプラグ3を構成する筒状本体21の外周には、前記ロックボール52と係合するロックボール係合溝55が形成されている。また、プラグ3の筒状本体21の内周面には、シールリング56が設けられており、該シールリング56は接続するソケット2の後述する受筒24の外周面と密封係合することにより、流体が外部へ漏洩するのを防止するようになっている。なお、プラグ3の構成は、ソケット2の構成とほぼ同様なので、同じ機能を備える部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
そして、前記したような構成のロック機構5により、ソケット2とプラグ3の非接続時には、操作リング51がスプリング54に付勢されて前進位置にあり、ロックボール52がロックボール押圧凸状面513の下位に位置した状態にある。
【0034】
一方、ソケット2とプラグ3との接続操作時には、ソケット2にプラグ3を挿入すると共に、操作リング51をスプリング54の弾発力に抗して後退させると、筒状本体21の内周に一部が突出しているロックボール52が、ロックボール開放凹状面511内に移動してプラグ3の挿入が可能となる。
【0035】
プラグ3の挿入を続け、プラグ3の外周に形成されているロックボール係合溝55がロックボール52の下位に達すると、ロックボール52が前進方向に付勢されている操作リング51のロックボール当接傾斜面512により求心方向に押圧されて筒状本体21内に嵌入してロックボール係合溝55に係合し、操作リング51がスプリング54に付勢されて前進し、ロックボール押圧凸状面513でロックボール52を求心方向に押さえ、ロックボール係合溝55からロックボール52の脱出を阻止するものとなり、これによりソケット2とプラグ3が接続される。
【0036】
接続したソケット2とプラグ3を分離する場合は、スプリング54の付勢力に抗して操作リング51を後退させることにより、ロックボール52の上位にロックボール開放凹状面511を位置させることにより、分離することができる。
【0037】
また、ソケット2を構成する筒状本体21の内周には、前進方向に付勢されたスライドバルブホルダー42の前進位置を規制するために、スライドバルブホルダー受部212が筒状本体21に突設されると共に、スライドバルブホルダー42を受け入れる受筒24が装着されている。この受筒24は、アダプター22側から筒状本体21に挿入され、前記スライドバルブホルダー受部212とアダプター22との間に、位置決めされて装着されている。なお、このスライドバルブホルダー受部212及び受筒24は、筒状本体21と別体に構成してもよいし一体に構成してもよい。例えば、筒状本体21内に、スライドバルブホルダー受部212を形成した筒体を、プラグ3側から挿入して螺着することにより構成することができる。また、前記筒体をプラグ3の挿入側の反対側、即ちアダプター22側から挿入するようにしてもよい。受筒24とアダプター22との間は、メタルシールによってシールされている。そして、前記受筒24とスライドバルブホルダー42との間をシールするシーリング25が、スライドバルブホルダー42に装着されている。
【0038】
スライドバルブホルダー42には、その中程に、前記したようにバルブ収容室が形成され、このバルブ収容室には回転バルブ41が支持手段6により回転自在、かつ、シール弁座26に対して進退変位可能に支持されている。この回転バルブ41は、バルブ収容室の軸方向に開口する開口部424に連通可能な貫通孔411を有している。そして、この回転バルブ41が回転することにより、回転バルブ41の貫通孔411とスライドバルブホルダー42のバルブ収容室の開口部424、言い換えるとスライドバルブホルダー42の貫通孔425とが一致することにより回転バルブ41が開となり、バルブ収容室の先端側の開口部424が回転バルブ41の外周壁414で塞がれることにより回転バルブ41が閉となるように、前記したバルブユニットを構成している。
【0039】
また、バルブ収容室の先端側の開口部424には、回転バルブ41の外周壁414との間をシールするシール弁座26が設けられている。
【0040】
そして、スライドバルブホルダー42の前進・後退移動に伴って、前記したカム機構が作動する。即ち、スライドバルブホルダー42及び回転バルブ41の移動により、ピン413によりカム孔412の壁が押されて、換言するとピン413とカム孔412とが互いに摺動して、回転バルブ41が回転し、スライドバルブホルダー42が前進位置にあるときバルブ収容室の先端側の開口部424が回転バルブ41の外周壁414で塞がれ回転バルブ41が閉となる。一方、スライドバルブホルダー42が後退位置にあるとき回転バルブ41の貫通孔411とスライドバルブホルダー42のバルブ収容室の開口部424とが一致することにより、回転バルブ41が開となる。
【0041】
そこで、ソッケトとプラグ3とが非接続時には、ソケット2を構成している筒状体20内に設けられているスライドバルブホルダー42が、スプリング23の付勢により前進位置にある。また、スライドバルブホルダー42と一体になって前進位置にある回転バルブ41は、スライドバルブホルダー42の前進移動に伴う前進移動により、ピン413がカム孔412の壁を押すために押されて回転し、スライドバルブホルダー42のバルブ収容室の先端側の開口部424をその外周壁414で塞ぎ、回転バルブ41が閉の状態となる。
【0042】
一方、ソケット2とプラグ3の接続時に押されてスライドバルブホルダー42が後退すると、このスライドバルブホルダー42の後退移動に伴って後退する回転バルブ41は、ピン413によりカム孔412の壁が押されて回転し、後退位置に達したとき、即ちソケット2とプラグ3の接続完了位置に達したとき、回転バルブ41の貫通孔411とスライドバルブホルダー42のバルブ収容室の開口部424とが一致し、回転バルブ41が開の状態となる。なお、スライドバルブホルダー42の前進・後退移動に伴って、回転バルブ41を回転させる機構として、ピン413とカム孔412とからなるカム機構を例示したが、他の機構を利用してもよい。
【0043】
ところで、従来の管継手においては、回転バルブを回転自在に支持する軸孔が円形に形成されていた。また、高圧の流体に対応するためには、バルブ収容室の先端側の開口部に設けたシール弁座と、回転バルブの外周壁との間を調整し、シール弁座に設けられた弾性のシールリングのしめ代を決めていた。言い換えると、必要なシール性を得ると、シール弁座と回転バルブの外周壁との間に生じる摺動抵抗が高くなってしまう。このため、摺動抵抗の高い回転バルブを備える管継手は、回転バルブの操作抵抗が大きいため、いわゆる自動開閉バルブに適用することには問題があった。
【0044】
そこで、本発明に係る管継手1においては、回転バルブ41を、回転自在に、かつ、シール弁座26に対して進退変位可能に支持する支持手段6を設けている。また、図示の実施例では、回転バルブ41をシール弁座26に向けて付勢する付勢手段(第2付勢手段)を設けている。
【0045】
具体的には、図1ないし図6に示す実施例においては、支持手段6を、回転バルブ41の両側部に設けられ、回転バルブ41を枢軸の周りで回転可能に支持する軸部61と、スライドバルブホルダー42の一対の側壁部423にそれぞれ設けられ、軸部61が嵌合する軸孔62とで構成し、前記軸孔62を、シール弁座26に対して直角方向、即ち、スライドバルブホルダー42の軸方向に延びるように形成した長孔としている。
【0046】
また、回転バルブ41をシール弁座26方向に付勢する付勢手段(第2付勢手段)は、図1ないし図6に示す実施例においては、円弧の一部を切除したほぼリング状(C型)のバネ部材64を主要部材として構成している。スライドバルブホルダー42には、支持手段6を構成する軸孔62の後端側に連接され、長孔である軸孔62の長手方向の軸に対して対称に配置された二つの受入溝63が設けられる。この二つの受入溝63は、円弧状で、長孔である軸孔62の前方側まで延びている。この二つの受入溝63にバネ部材64の両端部がそれぞれ係止され、かつ、バネ部材64のリング状の内側に支持手段6の軸部61の後端部分が当接して、バネ部材64が押し広げられる状態で装着されることにより、バネ部材64が軸部61を介して回転バルブ41をシール弁座26に向けて付勢する付勢手段(第2付勢手段)を構成している。なお、この付勢方向は、流体の圧力の方向と一致している。
【0047】
そして、回転バルブ41に圧力が加わっていない状態における、回転バルブ41とシール弁座26との摺動抵抗を、付勢手段(第2付勢手段)を形成するバネ部材64によって設定する。従って、回転バルブ41が加圧されていない状態においては、摺動抵抗がバネ部材64による付勢力に基づくため一定となり、回転バルブ41を回転させるための操作抵抗が低減される。
【0048】
一方、通過する流体により加圧された状態においては、回転バルブ41が流体により更にシール弁座26方向に押圧されて移動するので、流体の圧力に対して必要なシール性を得ることができる。
【0049】
従って、本発明に係る管継手1を構成するバルブ機構4は、回転バルブ41の操作抵抗が軽いので、自動開閉バルブに適用可能である。
【0050】
ところで、図示の実施例においては、ソケット2だけではなく、プラグ3の流体通路にも、バルブ機構4を設けている。このバルブ機構4は、前記したように、ソケット2に設けたバルブ機構4と同じ構造となっているので、同じ機能を備える部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
図7ないし図9は、本発明の第2の実施例を示している。即ち、図7はソケット2とプラグ3とが非接続状態にある管継手1の一部を欠截した正面図、図8は同上の縦断面図、図9は図8におけるC−C線断面図である。この実施例においては、回転バルブ41をシール弁座26の方向へ付勢する付勢手段(第2付勢手段)を、スライドバルブホルダー42を前進方向へ付勢するスプリング23(第1付勢手段)により構成している。即ち、スプリング23は、筒状体20と支持手段6の軸部61の間に設定され、該スプリング23が回転バルブ41をシール弁座26に向けて付勢する。従って、スプリング23を、スライドバルブホルダー42の付勢と、回転バルブ41の付勢と、で共用することができる。
【0052】
具体的には、アダプター22の内周段部221と、支持手段6の軸部61との間に、スプリング23を設定し、スライドバルブホルダー42の後方筒状部422を巻装するように前記スプリング23を介装するのである。また、支持手段6を、回転バルブ41の両側部に設けられ、回転バルブ41を枢軸の周りで回転可能に支持する軸部61と、スライドバルブホルダー42の一対の側壁部423にそれぞれ設けられ、軸部61が嵌合する軸孔62とで構成し、この軸孔62をシール弁座26に対して直角方向、即ち、スライドバルブホルダー42の軸方向に延びるように形成した長孔としている。そして、スライドバルブホルダー42を付勢するスプリング23により、軸部61をシール弁座26方向へ付勢するのである。これにより、回転バルブ41がシール弁座26の方向に付勢されることになる。該長孔の後端部分は、スライドバルブホルダー42の段部426より後方側に突出している。ソケット2の内部圧力が高くなり、回転バルブ41がシール弁座26に向かって、さらに、前進した場合、支持手段6の軸部61に当接していたスプリング23の端部は、スライドバルブホルダー42の段部426に当接するようになる。なお、回転バルブ41にスプリング23を受ける部分を設け、スプリング23を筒状体20と、直接回転バルブ41との間に設定し、回転バルブ41をシール弁座26に向けて付勢するようにしてもよい。
【0053】
この第2の実施例によっても、回転バルブ41とシール弁座26との摺動抵抗を低減させることができ、回転バルブ41を回転させるための操作抵抗が小さいので、自動開閉バルブに容易に適用することができる。しかも、部品点数が減るので、コストの削減も可能である。
【0054】
図10ないし図12は、本発明の第3の実施例を示している。即ち、図10はソケット2とプラグ3とが非接続状態にある管継手1の一部を欠截した正面図、図11は同上の縦断面図、図12は図11におけるD−D線断面図である。この実施例においては、回転バルブ41を付勢する付勢手段(第2付勢手段)を、ほぼU字状のバネ部材65を主要部材として構成している。即ち、スライドバルブホルダー42に、支持手段6の軸孔62の後端側に連接された受入溝66を設け、該受入溝66にほぼU字状のバネ部材65を装着している。
【0055】
具体的には、支持手段6を、回転バルブ41の両側部に設けられ、回転バルブ41を枢軸の周りで回転可能に支持する軸部61と、スライドバルブホルダー42の一対の側壁部423にそれぞれ設けられ、軸部61が嵌合する軸孔62とで構成し、この軸孔62をシール弁座26に対して直角方向、即ち、スライドバルブホルダー42の軸方向に延びるように形成した長孔としている。そして、ほぼU字状のバネ部材65の直線状の両端部が、それぞれスライドバルブホルダー42と支持手段6の軸部61とに当接し、ほぼU字状のバネ部材65の直線状の両端部がそれぞれU字状の内側に向けて押圧された状態であり、ほぼU字状のバネ部材65が軸部61を介して回転バルブ41をシール弁座26に向けて付勢している。なお、バネ部材65の挿入方向は、ほぼU字状の開放端を内向きにしても、開放端を外向きにしてもよい。
【0056】
この第3の実施例によっても、回転バルブ41とシール弁座26との摺動抵抗を低減させることができ、回転バルブ41を回転させるための操作抵抗が小さいので、自動開閉バルブに容易に適用することができる。また、コストの削減も可能である。
【0057】
以上本発明を図面の実施例について説明したが、本発明は前記した各実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限り適宜に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】プラグとソケットとが非接続状態にある管継手の一部を欠截した正面図である。
【図2】プラグとソケットとが非接続状態にある管継手の縦断面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】プラグとソケットとが接続状態にある管継手の一部を欠截した正面図である。
【図5】プラグとソケットとが接続状態にある管継手の縦断面図である。
【図6】図5におけるB−B線断面図である。
【図7】他の実施例によるソケットとプラグが非接続状態にある管継手の一部を欠截した正面図である。
【図8】他の実施例によるソケットとプラグが非接続状態にある管継手の縦断面図である。
【図9】図8におけるC−C線断面図である。
【図10】更に他の実施例によるソケットとプラグが非接続状態にある管継手の一部を欠截した正面図である。
【図11】更に他の実施例によるソケットとプラグが非接続状態にある管継手の縦断面図である。
【図12】図11におけるD−D線断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 管継手
2 ソケット
3 プラグ
4 バルブ機構
5 ロック機構
6 支持手段
20 筒状体
21 筒状本体
22 アダプター
23 スプリング(第1付勢手段)
24 受筒
25 シーリング
26 シール弁座
41 回転バルブ
42 スライドバルブホルダー
51 操作リング
52 ロックボール
53 ストップリング
54 スプリング
55 ロックボール係合溝
56 シールリング
61 軸部
62 軸孔
63 受入溝
64 バネ部材
65 バネ部材
66 受入溝
211 貫通孔
212 スライドバルブホルダー受部
213 ロックボール嵌合孔
221 内周段部
411 貫通孔
412 カム孔
413 ピン
414 外周壁
421 前方筒状部
422 後方筒状部
423 側壁部
424 開口部
425 貫通孔
426 段部
511 ロックボール開放凹状面
512 ロックボール当接傾斜面
513 ロックボール押圧凸状面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケットとプラグの少なくとも一方の流体通路にバルブ機構を備えた管継手であって、
ソケット又はプラグを構成する筒状体内に、軸方向に移動自在に設定されたバルブユニットであって、筒状体内でソケットとプラグとの非接続時に前進位置にあり接続時に押されて後退する筒状のスライドバルブホルダー、及びスライドバルブホルダーに形成されたバルブ収容室内に収容され、貫通孔を有する回転バルブを備え、前記回転バルブの回転により、該回転バルブに開設した貫通孔と前記スライドバルブホルダーのバルブ収容室の開口部とが一致する場合に、前記回転バルブが開となり、前記バルブ収容室の先端側の開口部が回転バルブの外周壁で塞がれる場合に、回転バルブが閉となるバルブユニットを設け、
前記スライドバルブホルダーの後部と前記筒状体との間には、前記スライドバルブホルダーを前進方向に付勢する第1付勢手段を介装し、
前記バルブ収容室の先端側の開口部には前記ボールバルブの外周壁との間をシールするシール弁座を設け、
前記バルブユニットと前記筒状体との間に、前記スライドバルブホルダーの前後移動に伴って前記回転バルブを回転させるカム機構を設け、
前記回転バルブを回転可能に、かつ、前記シール弁座に対して進退変位可能に支持する支持手段を設けたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢する第2付勢手段を設けた請求項1に記載した管継手。
【請求項3】
前記支持手段は、前記回転バルブを枢軸の周りで回転可能に支持する軸部と、前記スライドバルブホルダーに設けられ、前記軸部が嵌合する軸孔とを有し、該軸孔は、前記シール弁座に対して直角方向に延びるように形成された長孔である請求項1又は2に記載した管継手。
【請求項4】
前記第2付勢手段は、円弧の一部を切除したほぼリング状のバネ部材を有し、前記スライドバルブホルダーに、前記軸孔の後端側に連接され二つの受入溝を設け、該二つの受入溝に前記バネ部材の両端部をそれぞれ係止し、かつ、前記バネ部材のリング状の内側に前記支持手段の軸部が当接され前記バネ部材が押し広げられる状態で装着され、前記バネ部材が前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢するように構成した請求項2又は3に記載した管継手。
【請求項5】
前記第2付勢手段は、前記スライドバルブホルダーを前進方向へ付勢する前記第1付勢手段が前記筒状体と前記支持手段の軸部の間に設定され、該第1付勢手段が前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢するように構成する請求項2又は3に記載した管継手。
【請求項6】
前記第2付勢手段は、ほぼU字状のバネ部材を有し、前記スライドバルブホルダーに、前記支持手段の軸孔の後端側に連接された受入溝を設け、該受入溝にほぼU字状のバネ部材を装着し、ほぼU字状のバネ部材の直線状の両端部がそれぞれ前記スライドバルブホルダーと前記支持手段の軸部とに当接し、ほぼU字状のバネ部材の直線状の両端部がそれぞれU字状の内側に向けて押圧された状態であり、ほぼU字状のバネ部材が前記回転バルブを前記シール弁座に向けて付勢するように構成する請求項2又は3に記載した管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−315465(P2007−315465A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144332(P2006−144332)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】