説明

管継手

【課題】流体管への複数の穿孔の穿設を容易に行うことができる管継手を提供すること。
【解決手段】流体管1に穿設される穿孔Q1,Q2に連通する分岐口が形成された分岐部3と、分岐部3とともに流体管1の外周面1aを密着状に被覆するカバー体4と、を備え、分岐部3及びカバー体4に加熱部3b,4bが配設された筐体5を有し、分岐部3及びカバー体4と流体管1との当接箇所を加熱部3b,4bにより加熱することで、筐体5と流体管1とを熱融着させる管継手2であって、分岐口は、同一方向を向く第1分岐口3gと第2分岐口3hとから構成されており、流体管1内には、第1分岐口3gに連通する穿孔Q1を介して、流体の流路を制する制流体11が配置されるとともに、流体管1には、第2分岐口3hに連通する穿孔Q2を介して、流体の流路を分岐させる分岐管12が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に穿設される穿孔に連通する分岐口が形成された分岐部と、分岐部とともに流体管の外周面を密着状に被覆するカバー体と、を備え、分岐部及び記カバー体に加熱部が配設された筐体を有し、分岐部及びカバー体と流体管との当接箇所を加熱部により加熱することで、筐体と流体管とを熱融着させる管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管継手は、2つ割りに分割された管継手本体を、水道本管(流体管)に対して上下より接合するとともに、両管継手本体の接合面を溶接することで構成されており、この管継手の上部には、水道本管内に止水弁(整流体)を嵌挿するための弁筺が形成され、管継手の側面には、水道本管の側方から分岐管路を接続し、水道本管内の水路を変更するための分岐管路受部が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−3430号公報(第2頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の管継手にあっては、水道本管に止水弁(整流体)を嵌挿するための穿孔と分岐管路受部に連通するための穿孔を異なる方向から穿設しなければならないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流体管への複数の穿孔の穿設を容易に行うことができる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の管継手は、
流体管に穿設される穿孔に連通する分岐口が形成された分岐部と、該分岐部とともに前記流体管の外周面を密着状に被覆するカバー体と、を備え、前記分岐部及び前記カバー体に加熱部が配設された筐体を有し、前記分岐部及び前記カバー体と前記流体管との当接箇所を前記加熱部により加熱することで、前記筐体と前記流体管とを熱融着させる管継手であって、
前記分岐口は、同一方向を向く第1分岐口と第2分岐口とから構成されており、前記流体管内には、前記第1分岐口に連通する穿孔を介して、流体の流路を制する制流体が配置されるとともに、前記流体管には、前記第2分岐口に連通する穿孔を介して、流体の流路を分岐させる分岐管が接続されることを特徴としている。
この特徴によれば、第1分岐口と第2分岐口とが同一方向を向いているので、カバー体の構造が簡素に構成することができ、しかも、第1分岐口に連通する穿孔と第2分岐口に連通する穿孔を穿設するための穿孔装置等の挿入作業を楽に行うことができる。
【0007】
本発明の管継手は、
前記筐体には、前記分岐部と前記カバー体との当接外周部間を前記流体管における管軸方向の略全長に亘って密封状に被覆する第1シール体が取り付けられることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体と流体管との熱融着による密着性を、第1シール体による分岐部とカバー体との当接外周部間の被覆によって強化することができる。
【0008】
本発明の管継手は、
前記筐体の前記流体管における管軸方向側の両端部には、前記筐体と前記流体管との間を密封状に被覆する第2シール体が取り付けられることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体と流体管との熱融着による密着性を、第2シール体による筐体と流体管との被覆によって強化することができる。
【0009】
本発明の管継手は、
前記第1シール体及び前記第2シール体は、熱融着によって密封状に被覆することを特徴としている。
この特徴によれば、管継手の流体管への取り付けと、第1シール体による分岐部とカバー体との当接外周部間の密封状の被覆及び第2シール体による筐体と流体管との間の密封状の被覆とを、熱融着により同一の機材を用いて行うことができるので、第1シール体及び第2シール体の取り付けにかかる煩雑さを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における管継手を流体管に配設した状態を示す断面図である。
【図2】分岐部のフランジとカバー体のフランジとを緊締した状態を示す断面図である。
【図3】第1分岐口及び第2分岐口から流体管に穿孔が穿設された状態を示す側断面図である。
【図4】第1分岐口への制流体を収納した弁蓋の取り付けを示す側断面図である。
【図5】第1分岐口に弁蓋が取り付けられた状態を示す断面図である。
【図6】第1分岐口に弁蓋が取り付けられた状態を示す側断面図である。
【図7】流体管に取り付けた2つの管継手を利用して両第2分岐口間に分岐管を取り付けた状態を示す側断面図である。
【図8】実施例2における第1シール体及び第2シール体が取り付けられた管継手を示す一部側断面図である。
【図9】第1シール体を示す断面図である。
【図10】図8における第1シール体及び第2シール体を示すA−A端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る管継手を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1に係る管継手につき、図1から図7を参照して説明する。図1に示すように、本実施例の流体管1は、断面視略円形状に形成された高密度ポリエチレン等の樹脂製管から成り、内部には流体としての上水が流れている。この流体管1は、例えば、所定箇所に分岐管等を取り付けるために、図7に示すように、該分岐管の施工箇所よりも上流側及び下流側に本発明の管継手2を取り付け、これら管継手2に取り付けられる制流体11によって流体管1の管路を遮断することで流体管1の前記分岐管を取り付ける箇所を断水し、前記分岐管の流体管1への取り付けを行い易くするようになっている。
【0013】
尚、流体管の材質は高密度ポリエチレンに限らずその他ポリオレフィン樹脂或いは所定の樹脂から成る熱融着可能なものでもよい。更に尚、本実施例では流体管1内の流体は上水であるが、流体管の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。
【0014】
流体管1の外周面1aに固定に取り付けられる管継手2は、いわゆる割T字管であって、図1及び図3に示すように、流体管1に対して上方から配設され、流体管1の外周の上側を被覆する分岐部3と、流体管1に対して下方から配設され、流体管1の外周の下側を被覆するカバー体4と、を備える筐体5により構成されている。これら分岐部3及びカバー体4は、高密度ポリエチレン等の熱融着可能な樹脂材により構成されている。
【0015】
このうち、分岐部3は、流体管1の上部における外周面1aに当接する当接部3aを備えている。流体管1の上部における外周面1aに当接する当接部3a内部には、電流が流れることで発熱する本発明における加熱部としての電熱線3bが、後述する流体管1に穿設される穿孔Q1,Q2の周囲を囲うように、当接部3a略全面に亘り連続して延設されている。電熱線3bの各端部は、外部電源と電気的に接続可能に分岐部3の外面に設けた接続部6に接続されている。
【0016】
また、分岐部3には、当接部3aに連続して流体管1の外径方向に向けてフランジ3c,3cが突出形成されている。これらフランジ3cの流体管1における管軸方向の幅寸法は、分岐部3の流体管1における管軸方向の幅寸法と略同一寸法に形成されている。これらフランジ3cの内部には、フランジ3c,3cの流体管1における管軸方向の略全長に亘って電熱線3dが延設されている。電熱線3dの各端部は、外部電源と電気的に接続可能にフランジ3c,3cの外面に設けた接続部7に接続されている。更に、フランジ3c,3cの下端部は、図1に示すように、流体管1の外径方向に向けて上方に傾斜をなすテーパー面3eに形成されている。
【0017】
当接部3aにおける両フランジ3c,3cの近傍部には、流体管1の内径方向に向けて係止爪3fが突出形成されている。これら係止爪3fは、特に図示しないが、当接部3aの流体管1における管軸方向の略全長に亘って連続して形成されている。
【0018】
また、分岐部3の上部には、流体管1の管軸と略直交するように、流体管1における管軸方向に沿って上方に向けて第1分岐口3g及び第2分岐口3hが形成されている。第1分岐口3g内は、上下方向に向けて貫通形成されており、第1分岐口3gの上端部には、上フランジ3iが形成されている。第2分岐口3hは、第1分岐口3gと同様に、上下方向に向けて貫通形成されており、第2分岐口3hの上端部には、上フランジ3jが形成されている。
【0019】
一方、カバー体4は、図1及び図3に示すように、分岐部3と略同一の流体管1における管軸方向の幅寸法を有し、流体管1の下部における外周面1aに当接する当接部4aを備えている。流体管1の下部における外周面1aに当接する当接部4a内部には、電流が流れることで発熱する本発明における加熱部としての電熱線4bが、当接部4a略全面に亘り連続して延設されている。電熱線4bの各端部は、外部電源と電気的に接続可能にカバー体4の外面に設けた接続部8に接続されている。
【0020】
また、カバー体4には、当接部4aに連続して流体管1の外径方向に向けてフランジ4c,4cが突出形成されている。これらフランジ4cの流体管1における管軸方向の幅寸法は、カバー体4の流体管1における管軸方向の幅寸法と略同一寸法に形成されている。更に、フランジ4c,4cの上端部は、図1に示すように、水平面4dに形成されている。
【0021】
これらフランジ4cは、カバー体4が流体管1に対して下方から配設されることで、分岐部3に形成されたフランジ3cに対して対向配置される。このため、分岐部3とカバー体4とが流体管1に対して上下方向から配設されることで、フランジ3c,4d間には、上下幅寸法が流体管1の外径方向にかけて漸次幅広となる間隙9が形成される。
【0022】
当接部4aにおける両フランジ4c,4cの近傍部には、流体管1の内径方向に向けて係止爪4eが突出形成されている。これら係止爪4eは、当接部4aの流体管1における管軸方向の略全長に亘って連続して形成されている。
【0023】
このように構成された管継手2を流体管1に対して取り付けるには、先ず、図1に示すように、分岐部3を流体管1に対して上方から配設するとともに、カバー体4を流体管1に対して下方から配設する。このとき、流体管1に後述する穿孔Q1,Q2を穿設し易いように、予め流体管1の穿孔Q1,Q2の穿設予定箇所(本実施例では流体管1の上部)に第1分岐口3g及び第2分岐口3hが連通するように分岐部3を配設する。
【0024】
次に、図2に示すように、両フランジ3c,4dをボルト・ナット10により緊締する。このとき、フランジ3cに形成されたテーパー面3eとフランジ4cに形成された水平面4dとが流体管1の内径方向から外径方向に向けて順次均一に密着していく。同時に、フランジ3c,4dをボルト・ナット10により緊締することで、分岐部3のフランジ3c近傍部及びカバー体4のフランジ4c近傍部の流体管1に向けての弾性変形がなされ、係止爪3f,4eが流体管1の外周面1aに食い込む。これら係止爪3f,4eが流体管1の外周面1aに食い込むことで、筐体5が流体管1に対して移動不能に仮固定される。
【0025】
次に、図3に示すように、図示しない外部電源に接続されている電源ケーブルを分岐部3に形成された各接続部6,7及びカバー体4に形成された接続部8に接続し、前記外部電源から所定時間電源を供給する。電源供給された電熱線3b,3d,4bが高温に発熱することで、樹脂からなる当接部3a、4a及び当接部3a、4aに接触している流体管1の外周面1aと、フランジ3c,4d間と、を加熱し次第に溶融する。
【0026】
溶融された当接部3a、4a及び流体管1の外周面1aと、フランジ3c,4d間とは、図3に示すように、互いに混ぜ合わされ、電熱線3b,3d,4bによる発熱を停止し常温に下がることで一体化して凝固した熱融着領域Wに変形する。このようにして、管継手2は、流体管1に対して水密に取り付けられる。尚、熱融着領域Wが形成される間、各係止爪3f,4eは、流体管1の外周面1aに対して継続して食い込み続けるため、穿設予定箇所と第1分岐口3g及び第2分岐口3hにズレが生じることが防止される。
【0027】
次に、このように流体管1に対して取り付けられた管継手2に対しての制流体11及び分岐管12の取り付けについて説明する。
【0028】
先ず、図3に示すように、第1分岐口3gの上フランジ3iに、内部に作業弁36及び穿孔装置50を配設した上部ケース35を水密に接続する。穿孔装置50は、図示しない駆動手段に接続され第1分岐口3g内を流体管1に向け軸方向に伸出する軸部材51と、軸部材51の先端に固設され流体管1を穿設する鋭利な穿孔刃52aを備えたカッタ部材52と、から主として構成されており、カッタ部材52を軸部材51の軸方向に伸出させることで流体管1の外周面1aを穿孔刃52aによる押圧により切削し、流体管1の管壁に穿孔Q1を穿設する。このカッタ部材52によって流体管1に穿孔Q1を穿設することで、穿孔Q1と第1分岐口3gが連通する。
【0029】
尚、本実施例における穿孔装置50は、カッタ部材52内を軸部材51の軸方向に移動可能な図示しない切片当接部材を備えている。この切片当接部材は、下端部が流体管1の外周面1aに当接する形状に形成されているとともに、カッタ部材52内でコイルバネ等により流体管1に向けて付勢されている。
【0030】
このため、カッタ部材52が流体管1を切削するとき、切片当接部材は、流体管1の外周面1aに当接した位置でとどまり、前記コイルバネが圧縮されてカッタ部材52のみが流体管1の管軸に向けて進行する。カッタ部材52が流体管1に穿孔Q1を穿設すると、流体管1から切り取られた切片は、カッタ部材52内にて切片当接部材に当接した状態で保持されるようになっている。
【0031】
同様に、第2分岐口3hの上フランジ3jに、内部に作業弁38及び穿孔装置53を配設した上部ケース37を水密に接続する。穿孔装置53は、図示しない駆動手段に接続され第2分岐口3h内を流体管1に向け軸方向に伸出する軸部材54と、軸部材54の先端に固設され流体管1を穿設する鋭利な穿孔刃55aを備えたカッタ部材55と、から主として構成されており、カッタ部材55を軸部材54の軸方向に伸出させることで流体管1の外周面1aを穿孔刃55aによる押圧により切削し、流体管1の管壁に穿孔Q2を穿設する。このカッタ部材55によって流体管1に穿孔Q2を穿設することで、穿孔Q2と第2分岐口3hが連通する。
【0032】
尚、穿孔Q2を穿設する穿孔装置53は、前述した穿孔Q1を穿設する穿孔装置50と略同一構成となっており、流体管1を穿設することで生じる切片をカッタ部材55内に保持するようになっている。
【0033】
穿孔装置50,53による穿孔Q1,Q2の穿設後は、図4に示すように、穿孔装置50を上方に引き上げて上部ケース35内に配置させた後、作業弁36を操作して第1分岐口3gの止水を行う。そして、穿孔装置50を上部ケース35の上端部から取り外すとともに、図4に示すように、上部ケース35の上端部に外カバー70を水密に接続する。この外カバー70は、側方に向けて一対の開口71,71を備えており、これら開口71,71は、蓋体72,72及びボルト・ナット73によって水密に閉塞されている。
【0034】
外カバー70の図示しない上端部からは、図示しないアームが上下動可能に取り付けられている。尚、該アームの下端部には、予め穿孔Q1を介して流体管1の管路を遮断若しくは開放するための制流体11が内部に配設された弁蓋60が中間部材75を介して接続されており、前記アームを外カバー70の前記上端部に取り付ける際に弁蓋60が外カバー70内に配置される。尚、前記アームと外カバー70の前記上端部との間は、図示しないゴム体によって水密に保持されている。更に尚、中間部材75は筒状に形成されており、内部に後述する回転操作部63aが挿通配置されている(図5参照)。
【0035】
外カバー70を上部ケース35の上端部に水密に接続した後は、第1分岐口3gと外カバー70とを開閉弁を有する図示しないホースやバイパス管等の連通部材によって接続する。そして、外カバー70の上端部に設けられた図示しない空気弁を開放するとともに、作業弁36を操作して第1分岐口3gを開放することで、外カバー70内及び第1分岐口3g内を流体管1内を流れていた上水で満たす。
【0036】
外カバー70内及び第1分岐口3g内が上水で満たされた後は、前記空気弁を閉塞し、前記開閉弁を開放して第1分岐口3gと外カバー70とを連通させることで、外カバー70内の水圧と第1分岐口3g内の水圧とを常時一定に保つとともに、弁蓋60を外カバー70に予め取り付けた押圧手段(図示略)により不断水状態で押圧することで、第1分岐口3gの上フランジ3iに弁蓋60を密封状に組付ける。
【0037】
このとき、第1分岐口3g内と外カバー70内とは、流体管1内を流れる上水で満たされて同一の水圧となるので、弁蓋60を上フランジ3iに組み付ける際に流体管1内を流れる上水から弁蓋60が受ける抗力を小さく抑えることができる。弁蓋60を上フランジ3iに組み付けた後は、蓋体72,72を取り外し、開口71,71を介して弁蓋60から中間部材75を分離する。
【0038】
図4及び図5に示すように、弁蓋60は、第1分岐口3gの内径より小径の外径を有しており、弁蓋60の下部の外周に沿って設けられたOリング61により、第1分岐口3gの内周面に沿って水密に嵌挿されている。また弁蓋60を定置させるように第1分岐口3gの外方から固定ボルト62を螺挿することで弁蓋60の位置固定を行う。固定ボルト62は、弁蓋60に対して螺挿されることで、弁蓋60を上下方向に規制している。
【0039】
図5に示すように、回転ネジ63は、弁蓋60の頂部に穿設された挿通孔64に回転自在に貫通して、上端部を弁蓋60の外部に突出して取り付けられている。押え板65は、弁蓋60の上端面にボルト66で固定され、回転ネジ63の抜出しを阻止する。上記構成により、回転ネジ63は弁蓋60に対し正逆両方向に回転自在であるが上下動はしない。63bは、回転ネジ63の上端部を除いて略全長に亘ってその周面が螺設されたネジ部である。
【0040】
図4及び図5に示すように、ネジこま67は、制流体11の上端部に形成されたガイド溝69に嵌合するとともに、ネジ部63bに螺合しており、回転ネジ63の上端部に形成された回転操作部63aの回転に応じネジ部63bが回転することで、ネジ部63bに沿って螺挿するネジこま67に追随して制流体11が上下動可能となる。
【0041】
図5及び図6に示すように、制流体11には、回転ネジ63のネジ部63bを挿入する挿入孔68が形成されている。また、制流体11における上下流側の外面に、上下方向に沿った張出部11a,11aが、弁蓋60若しくは第1分岐口3gの内面に設けられた溝部60aに沿って摺接可能に上下方向に延設されている。このように構成された張出部11a,11aが溝部60aに当接することで、回転ネジ63の回転に伴う制流体11の回転を規制できるようになっている。
【0042】
このように制流体11が取り付けられた弁蓋60を、作業弁36が開放された後に前記外カバーに予め取り付けた前記押圧手段により第1分岐口3gに向けて不断水状態で押圧することで、流体管1内を流れる上水から弁蓋60が受ける抗力を小さく抑えながら弁蓋60を第1分岐口3gの上フランジ3iに密封状に組付け、固定ボルト62を弁蓋60に螺挿する。更に、前記連通部材の開閉弁を閉塞するとともに、上フランジ3i上から上部ケース35及び外カバー70を取り外す。最後に、リング状のフランジ56を弁蓋60に挿入し、ボルト・ナット57でフランジ56と第1分岐口3gとを締結する。
【0043】
以後、制流体11は、図5及び図6に示すように、図示しないハンドルによる回転操作部63aの回転によって下方に移動することで流体管1の内周面に弾性変形しながら水密に当接して流体管1の管路を遮断するとともに、前記ハンドルによる回転操作部63aの回転によって上方に移動することで流体管1の管路を開放可能となる。
【0044】
尚、第2分岐口3hにおける穿孔装置53を上方に引き上げて上部ケース37内に配置させた後は、作業弁38を操作して第2分岐口3hを止水し、穿孔装置53を上部ケース37の上端部から取り外す。
【0045】
流体管1に制流体11が取り付けられた管継手2は、図7に示すように、流体管1の上流側及び下流側に、制流体11が取り付けられた側を対向させるようにして取り付けられる。次いで、両管継手2,2の第2分岐口3hを分岐管12を介して接続する。
【0046】
このようにすることで、流体管1における両管継手2間の所定箇所に分岐管の取付工事等の施工を行う場合には、制流体11,11により両管継手2,2間の流路を閉止することが可能となる。そして、流体管1内を流れる上水は、作業弁38,38を開放することで両管継手2,2間を分岐管12を介して迂回することができるので、流体管1の接続させきである一般家庭等では、断水すること無く上水を使用することができる。
【実施例2】
【0047】
次に、実施例2に係る管継手につき、図8から図10を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0048】
図8、図9及び図10に示すように、本実施例における管継手2にあっては、分岐部3のフランジ3cとカバー体4のフランジ4cとの間に、筐体5の流体管1における管軸方向の略全長に亘って密封状に被覆する一対の第1シール体80,80が取り付けられており、筐体5の流体管1における管軸方向の両端部には、筐体5を構成する分岐部3及びカバー体4と流体管1との間を密封状に被覆する一対の第2シール体81,81が取り付けられている。これら第1シール体80及び第2シール体81は、分岐部3及びカバー体4と同様に、高密度ポリエチレン等の熱融着可能な樹脂材により構成されている。
【0049】
このうち第1シール体80は、管継手2の流体管1における管軸方向の幅寸法と略同一寸法の長辺部80aと、この長辺部80aの流体管1における管軸方向の両端部から流体管1の内径方向を向く短辺部80b,80bとから構成されている。
【0050】
この第1シール体80内には、電流が流れることで発熱する電熱線80cが第1シール体80の全長に亘って連続して延設されており、電熱線80cの各端部は、外部電源と電気的に接続可能に第1シール体80の外面に設けた接続部82に接続されている。
【0051】
また、第2シール体81は、流体管1の外周面1aに沿う円弧状に形成されており、流体管1における管軸方向にて筐体5に対向する側の側面には、分岐部3及びカバー体4の流体管1における管軸方向の両端部に形成されている係止穴84に係止可能な突起部81aが複数形成されている。
【0052】
更に、第2シール体81内には、第1シール体80と同様に、電流が流れることで発熱する電熱線eが第2シール体81の全長に亘って連続して延設されており、電熱線81bの各端部は、外部電源と電気的に接続可能に第2シール体81の外面に設けた接続部83に接続されている。
【0053】
このように構成された第1シール体80及び第2シール体81を筐体5に取り付けるには、先ず、各第2シール体81の突起部81aを係止穴84に係止させることで、筐体5の上部をなす分岐部3の流体管1における管軸方向の両端部に第2シール体81を当接させ、筐体5の下部をなすカバー体4の流体管1における管軸方向の両端部にも第2シール体81を当接させる。尚、各第2シール体81は、分岐部3またはカバー体4に当接すると同時に、流体管1の外周面1aにも当接する。各端部における上下の第2シール体81,81間には、第1シール体80の短辺部80bが挿入可能な間隙85が形成される。
【0054】
次に、筐体5の流体管1における管軸方向の両端部に形成された間隙85,85に両短辺部80bを挿入することで、第1シール体80を筐体5に取り付ける。このとき、第1シール体80の長辺部80aは、フランジ3c,4dの流体管1における外径方向側端部に、流体管1の管軸方向の略全長に亘って当接する。
【0055】
このように第1シール体80及び第2シール体81が筐体5に取り付けられた後、図示しない外部電源に接続されている電源ケーブルを各接続部82,83に接続して電熱線80c,81bを加熱することで、第1シール体80とフランジ3c,4d間を溶融するとともに、第2シール体81と分岐部3間及び流体管1の外周面1a間、第2シール体81とカバー体4間及び流体管1の外周面1a間を溶融する。
【0056】
そして、電熱線80c,81bによる発熱を停止することで第1シール体80とフランジ3c,4d間、第2シール体81と分岐部3間及び流体管1の外周面1a間、第2シール体81とカバー体4間及び流体管1の外周面1a間を凝固した図示しない熱融着領域に形成する。このため、管継手2と流体管1との間は、第1シール体80及び第2シール体81による熱融着によって完全に密封状に被覆される。
【0057】
以上、本発明における管継手2にあっては、分岐口は、同一方向を向く第1分岐口3gと第2分岐口3hとから構成されており、流体管1内には、第1分岐口3gに連通する穿孔Q1を介して、流体の流路を制する制流体11が配置されるとともに、流体管1には、第2分岐口3hに連通する穿孔Q2を介して、流体の流路を分岐させる分岐管12が接続されるので、第1分岐口3gと第2分岐口3hとが同一方向を向いているので、カバー体4の構造が簡素に構成することができ、しかも、第1分岐口3gに連通する穿孔Q1と第2分岐口3hに連通する穿孔Q2を穿設するための穿孔装置50,53等の挿入作業を楽に行うことができる。
【0058】
また、筐体5には、分岐部3とカバー体4とのフランジ3c,4dを流体管1における管軸方向の略全長に亘って密封状に被覆する第1シール体80が取り付けられるので、筐体5と流体管1との熱融着による密着性を、第1シール体80による分岐部3とカバー体4とのフランジ3c,4d間の被覆によって強化することができる。
【0059】
また、筐体5の流体管1における管軸方向側の両端部には、筐体5と流体管1との間を密封状に被覆する第2シール体81が取り付けられるので、筐体5と流体管1との熱融着による密着性を、第2シール体81による筐体5と流体管1との被覆によって強化することができる。
【0060】
また、第1シール体80及び第2シール体81は、熱融着によって密封状に被覆するので、管継手2の流体管1への取り付けと、第1シール体80による分岐部3とカバー体4とのフランジ3c,4d間の密封状の被覆及び第2シール体81による筐体5と流体管1との間の密封状の被覆とを、熱融着により同一の機材を用いて行うことができるので、第1シール体80及び第2シール体81の取り付けにかかる煩雑さを低減することができる。
【0061】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0062】
例えば、前記実施例では、第1分岐口3g及び第2分岐口3hを同一方向として上方に向けて形成したが、制流体11の取り付けと分岐管12の取り付けを支障無く行うことが可能であれば、第1分岐口3g及び第2分岐口3hが向く方向は、同一方向である限り特に制限されない。
【0063】
また、前記実施例では、フランジ3cの下端部を流体管1の外径方向に向けて上方に傾斜をなすテーパー面3eに形成し、フランジ4cの上端部を水平面4dに形成することで、フランジ3c,4c間に上下幅寸法が流体管1の外径方向にかけて漸次幅広となる間隙9を形成したが、フランジ3c,4c間に上下幅寸法が流体管1の外径方向にかけて漸次幅広となる間隙9が形成されれば、例えば、フランジ3cの下端部を水平面に形成し、フランジ4cの上端部を流体管1の外径方向に向けて下方に傾斜をなすテーパー面に形成してもよく、また、例えば、フランジ3cの下端部を流体管1の外径方向に向けて上方に傾斜をなすテーパー面に形成し、フランジ4cの上端部を流体管1の外径方向に向けて下方に傾斜をなすテーパー面に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 流体管
1a 外周面
2 管継手
3 分岐部
3a 当接部
3b 電熱線(加熱部)
3c フランジ
3d 電熱線
3f 係止爪
3g 第1分岐口
3h 第2分岐口
4 カバー体
4a 当接部
4b 電熱線(加熱部)
4c フランジ
4e 係止爪
5 筐体
9 間隙
11 制流体
12 分岐管
50 穿孔装置
53 穿孔装置
80 第1シール体
80c 電熱線
81 第2シール体
81b 電熱線
Q1,Q2 穿孔
W 熱融着領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に穿設される穿孔に連通する分岐口が形成された分岐部と、該分岐部とともに前記流体管の外周面を密着状に被覆するカバー体と、を備え、前記分岐部及び前記カバー体に加熱部が配設された筐体を有し、前記分岐部及び前記カバー体と前記流体管との当接箇所を前記加熱部により加熱することで、前記筐体と前記流体管とを熱融着させる管継手であって、
前記分岐口は、同一方向を向く第1分岐口と第2分岐口とから構成されており、前記流体管内には、前記第1分岐口に連通する穿孔を介して、流体の流路を制する制流体が配置されるとともに、前記流体管には、前記第2分岐口に連通する穿孔を介して、流体の流路を分岐させる分岐管が接続されることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記筐体には、前記分岐部と前記カバー体との当接外周部間を前記流体管における管軸方向の略全長に亘って密封状に被覆する第1シール体が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記筐体の前記流体管における管軸方向側の両端部には、前記筐体と前記流体管との間を密封状に被覆する第2シール体が取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記第1シール体及び前記第2シール体は、熱融着によって密封状に被覆することを特徴とする請求項3に記載の管継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate