管継手
【課題】接続管に抜け方向の大きな力が加わっても、係止爪の食い込みによって接続管が破損するあるいはその後の漏水事故につながる傷を与えることがないワンタッチ式の管継手を提供する。
【解決手段】係止爪52が複合管9の外層91の中間層93に到達する手前の規定位置まで食い込んだときに、複合管9の外周面に当接して、係止爪52がそれ以上食い込まないようにする食い込み規制部53を、抜け止めリング5aの係止爪52の両側に設けるようにした。
【解決手段】係止爪52が複合管9の外層91の中間層93に到達する手前の規定位置まで食い込んだときに、複合管9の外周面に当接して、係止爪52がそれ以上食い込まないようにする食い込み規制部53を、抜け止めリング5aの係止爪52の両側に設けるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、差し込むだけで接続管を接続することができるワンタッチ式の管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
接続時に接続管内に入り込むノズル部(ニップル部ともいう)を備え、ノズル部の外周に形成した環状溝にノズル部より外径が大きいリング状シール材を嵌装し、接続管の接続によって、このリング状シール材が接続管の内周面に水密に密着するとともに、接続管に抜け方向の力が加わると、接続管の外周方向から放射状に設けられた係止爪が管壁に食い込んで接続管の抜け止めを図るようにした金属製の抜け止めリングを備えるワンタッチ式の管継手がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−177978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の管継手の場合、接続管に抜け方向に大きな力が加わると、係止爪が大きく食い込んで接続管の管壁を突き破り、接続管を破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、接続管に抜け方向の大きな力が加わっても、係止爪の食い込みによって接続管が破損するあるいはその後の漏水事故につながる傷を与えることがないワンタッチ式の管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる管継手は、接続時に接続管の内部に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、このノズル部との間に接続管の挿入空間を形成する外筒部と、前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材とを備え、接続された前記接続管に抜け方向の力が加わると、接続管の管壁に外周側から食い込んで接続管の抜けを防止する複数の係止爪が放射状にかつ前記ノズル部の後端側に向かって傾斜して設けられた抜け止めリングを、前記挿入空間の入口に設けられた管継手において、前記抜け止めリングは、前記係止爪が規定量まで管壁に食い込むと、接続管の外周面に当接して、それ以上の係止爪の食い込みを防止する食い込み規制部が係止爪に隣接して設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明において、抜け止めリングの材質としては、特に限定されないが、例えば、鉄鋼(ばね鋼)、ステンレス鋼、砲金などの銅合金が挙げられる。
【0008】
本発明において、接続される管としては、特に限定されないが、例えば、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製の中間層とを有する複合管が挙げられる。
複合管としては、特に限定されないが、例えば、外層が高密度ポリエチレン、内層が耐熱性ポリエチレン、中間層がアルミニウムで形成された、積水化学工業社製の商品名エスロンスーパーエスロメタックス等の市販のものを用いることができる。
【0009】
本発明において、上記規定量とは、接続管に抜け方向の力が加わっても接続管の抜けを防止でき、係止爪の食い込みによって接続管が破損するあるいはその後の漏水事故につながる傷を与えることがない係止爪の食い込み量であって、接続される管に応じて適宜決定される。
【0010】
なお、接続管が複合管である場合、抜け止めリングが複合管の中間層と異種の金属で形成されている場合、係止爪の食い込み長さを外層の厚み未満に規制することが好ましい。
すなわち、その理由は、係止爪の食い込み長さが外層の厚みを越えた場合、食い込みによって係止爪と中間層とが接触状態となり、異種金属間接触腐食によって、抜け止めリングあるいは中間層が腐食して漏水を招くおそれがあるからである。
【0011】
また、本発明にかかる管継手は、抜け止めリングが、接続管に抜け方向の力が加わると、係止爪及び食い込み規制部が接続管の管軸に直交するように立ち上がるとともに、前記食い込み規制部が接続管の管壁を管中心軸方向に押圧変形させるように構成されているとともに、ノズル部が、立ち上がった食い込み規制部に対応する位置に、接続管の押圧変形した管壁部分が入り込む環状溝を備えていることが好ましい。
すなわち、上記のようにすれば、係止爪の食い込みだけでなく、押圧変形して、環状溝に食い込む管壁によっても抜け方向の力を受けることができ、より大きな抜け方向の力に耐えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる管継手は、以上のように、接続時に接続管の内部に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、このノズル部との間に接続管の挿入空間を形成する外筒部と、
前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材とを備え、接続された前記接続管に抜け方向の力が加わると、接続管の管壁に外周側から食い込んで接続管の抜けを防止する複数の係止爪が放射状にかつ前記ノズル部の後端側に向かって傾斜して設けられた抜け止めリングを、前記挿入空間の入口に設けられた管継手において、前記抜け止めリングは、前記係止爪が規定量まで管壁に食い込むと、接続管の外周面に当接して、それ以上の係止爪の食い込みを防止する食い込み規制部が係止爪に隣接して設けられているので、接続管に抜け方向の大きな力が加わっても、係止爪の食い込みによって接続管が破損する、あるいはその後の漏水事故につながる傷を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわす断面図である。
【図2】図1の管継手に接続管として複合管を接続した状態の断面図である。
【図3】図1の管継手のリング状シール材部分の拡大断面図である。
【図4】図1の管継手のガイド部材の断面図である。
【図5】図1の抜け止めリングの斜視図である。
【図6】図5の抜け止めリングの製造に用いる打ち抜き片をあらわし、同図(a)はその平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線断面の端面図である。
【図7】図5の打ち抜き片を用いた抜け止めリングの製造工程の途中段階をあらわし、同図(a)はその平面図、同図(b)は同図(a)のY−Y線断面の端面図である。
【図8】図5の抜け止めリングの断面の端面図である。
【図9】図1の管継手へ複合管を差し込む途中の状態をあらわす断面図である。
【図10】図2の複合管の接続状態におけるノズル部後端部の拡大断面図である。
【図11】図1の管継手に接続された複合管に引き抜き方向の力が加わったときの抜け止めリング係止爪の作用を説明する係止爪部分の拡大断面図である。
【図12】図1の管継手に接続された複合管に大きな引き抜き方向の力が加わったときの抜け止めリングの作用を説明する断面図である。
【図13】本発明にかかる管継手に用いられる抜け止めリングの変形例をあらわす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわしている。
【0015】
図1に示すように、この管継手Aは、継手本体1と、外筒部を構成する外筒部材2及びキャップ部材3と、リング状シール材4と、抜け止めリング5aと、ガイド部材6とを備え、図2に示すように、複合管9が接続されるようになっている。
複合管9は、高密度ポリエチレン製の外層91と、耐熱ポリエチレン製の内層92と、アルミニウム製の中間層93を備えている。
【0016】
継手本体1は、砲金やステンレス鋼等の金属材料で形成されていて、中央にスパナ等の締め付け工具(図示せず)の係合部が係合する六角ナット状のフランジ部1aを備え、フランジ部1aを挟んで一方に雄ネジ筒部1b、他方に、外筒受部1cとノズル部1dとが設けられている。
【0017】
ノズル部1dは、先端側から挿入ガイド部10、第1環状溝11、第2環状溝12、第3環状溝13、戻り止め突条14をその周面に備え、最大径部が接続される複合管9の内径より少し小径になっている。
挿入ガイド部10は、ノズル部1d先端に向かって先端の外径が、後述する接続管が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70〜75%)では、偏平した接続管の管端の最小径部より小径となるように、略30度の角度で徐々に縮径するテーパ面になっている。
【0018】
第1環状溝11は、後述する抜け止めリング5aを臨む位置に設けられている。
第2環状溝12は、図3に示すように、後述するガイド部材6の縮径筒部61bが嵌り込むように設けられていて、その底面がノズル部1dの先端側に向かって徐々に縮径するテーパ面になっていて、ノズル部1dの後端側が第3環状溝13に連設されている。
第3環状溝13は、その底面のノズル部1dの中心軸方向中央部より少しノズル部1dの差し込み端側にリング状シール材4の位置決め突条13aをノズル部1dの中心軸に対して環状に備えている。
【0019】
戻り止め突条14は、第3環状溝13のノズル部1d側の側壁に沿って設けられていて、その高さは、ガイド部材6の後端が係合して、ノズル部1dの差し込み端側への動きを抑えることができれば、低いことが好ましく、0.05mm程度である。
外筒受部1cは、ノズル部1dとフランジ部1aとの間に設けられ、ノズル部1dより少し大径になっているとともに、その周面に後述する外筒部材2の係合突条21が係合する係合溝15が穿設されている。
【0020】
リング状シール材4は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)等の合成ゴムで形成されていて、図3に示すように、本体部41と、第1シール部42と、第2シール部43とを備えている。
本体部41は、第3環状溝13のノズル部中心軸方向の長さより少し幅が狭く、その厚みが第3環状溝13の底からノズル部1dの外縁までの長さと略同じ厚みか少し薄い肉厚の筒状をしていて、筒の内周面に位置決め突条13aが嵌り込む係合溝41aが環状に設けられていて、外周から圧縮力が働いていないときには、第3環状溝13に嵌合状態で、第3環状溝13にノズル部後端側の壁との間、及び第2環状溝12側の壁との間に、圧縮時の逃げ空間となる隙間Sが形成されるようになっている。
【0021】
第1シール部42は、係合溝41aよりノズル部先端側に設けられていて、図3において破線で示すように、ノズル部1dの先端側から後端側に向かって徐々に拡径する断面略三角形をしていて、その最大径が複合管の内径より大きくなっている。
第2シール部43は、係合溝41aよりノズル部後端側に設けられていて、図3に示すように、断面略かまぼこ形をしていて、その最大径が複合管の内径より大きくなっている。
【0022】
ガイド部材6は、肉厚0.1mm程度の薄肉のステンレス鋼や銅合金からなるパイプをプレス加工、絞り加工及び曲げ加工などして形成され、図4に示すように、ガイド筒部61と、非接触状態保持構造としてのテーパ部62と、鍔部63とを備えている。
ガイド筒部61は、筒部本体61aと、縮径筒部61bとを備えている。
【0023】
筒部本体61aは、その外径が複合管9の内径と略同じか少し小径の円筒状をしている。
縮径筒部61bは、筒部本体61aのノズル部1dの先端側に連設され、ノズル部1dの先端側に向かって徐々に縮径して、ノズル部1dの先端側の外径が複合管9の内径より5%程度小径になっている。
【0024】
テーパ部62は、筒部本体61aのノズル部1dの後端側からノズル部1dの後端方向に向かって徐々に拡径するように設けられ、そのテーパ角は、15〜45度であれば特に限定されないが、管端面の面仕上げまたは面取りの角度に近いことが好ましく、本実施の形態では30度である。
【0025】
鍔部63は、パイプの端部を折り曲げて重合させて形成され、その外径が複合管9の外径より少し小径になっている。
【0026】
そして、ガイド部材6aの初期位置は、図1〜図3に示すように、ガイド筒部61が第1シール部42に外嵌されるとともに、縮径筒部61bのノズル部1dの先端側の端部が第2環状溝12内に嵌り込むように装着され、鍔部63は第2シール部43に被る手前に配置される。この配置により、衝撃や振動に対して動かなくなっている。
なお、このガイド部材6aが装着された状態でリング状シール材4は、第1シール部42が、ガイド筒部61によって圧縮された状態になっている。
【0027】
外筒部材2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成された筒状体であって、一端部の内周面に係合突条21を備え、他端部側が一旦外側に膨らみ厚肉になったのち、外周面が切り欠かれた状態となり、この切欠き部に2条の係合溝22,22が形成されている。
また、外筒部材2は、内径が概ね複合管9の外径と略同じか少し大径になっていて、外周面他端に内周面が他の部分より段状に拡径している拡径部23を備えている。
外筒部材2のノズル部1dの先端側の端面は、後述する抜け止めリング5の本体51の形状に沿うように、抜け止めリング位置決め凹部24がリング状に設けられている。
【0028】
そして、外筒部材2は、その一端に設けられた係合突条21が外筒受部1cの係合溝15に係合されるように、一端部が外筒受部1cに外嵌されている。
すなわち、外筒部材2は、係合突条21が、弾性変形しながら、継手本体1方向に押し込まれ、係合突条21が係合溝15に係合することによって、継手本体1から離脱せず、継手本体1に対して回転自在に取着されている。
【0029】
抜け止めリング5aは、図5に示すように、リング状の本体51と、この本体51の内周側に複数の係止爪52と、食い込み規制部53とを交互に備えている。
そして、この抜け止めリング5aは、まず、ステンレス鋼の薄板を打ち抜き、図6に示すように、本体51の内側に、係止爪52と、この係止爪52の両側に食い込み規制部53となる舌片50を備えた打ち抜き片5を得たのち、図7に示すように、打ち抜き片5の舌片50を係止爪52の食い込み規制部53からの突出長さが複合管9の外層91の厚み未満となる位置で180°折り曲げ、さらに、図8に示すように、この折り曲げ部及び係止爪52を本体51に対して40〜45°の交差角となるように立ち上げることによって得られる。
【0030】
そして、抜け止めリング5aは、本体51が抜け止めリング位置決め凹部24に嵌り込むとともに、係合爪52及び食い込み規制部53が拡径部23に収容された状態に保持されている(図11参照)。
【0031】
キャップ部材3は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成されたキャップ本体31と、嵌合筒部32とを備えている。
キャップ本体31は、管挿入端側の内径が複合管9の外径と略同じか少し大径をしていて、中間部から先端(嵌合筒部32と反対側の端)にかけてガイド部31aを備えている。
ガイド部31aは、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、後述する複合管9が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70〜75%)では、偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっている。
【0032】
嵌合筒部32は、キャップ本体31の厚み方向の一方に延出するように設けられ、内周面に2条の係合突条32a,32aが設けられている。
そして、キャップ部材3は、係合突条32a,32aが外筒部材2の係合溝22,22に嵌り込むように、嵌合筒部32が外筒部材2に外嵌されることによって、抜け止めリング5aの離脱を防止している。
【0033】
この管継手Aは、上記のようになっており、以下のようにして、複合管9がワンタッチ挿入で接続される。
まず、継手本体1の雄ネジ筒部1bを図示していない配管材(例えば、ヘッダー)に螺合させて、他の配管材と接続した後、複合管9をキャップ部材3の開口から継手本体1側に差し込んでいくと、複合管9の先端が、抜け止めリング5の係止爪52及び食い込み規制部53をまず差し込む方向に弾性変形させるので、図9に示すように、係止爪52及び食い込み規制部53が複合管9の外壁に沿う。
【0034】
そして、複合管9をさらに押し込んでいくと、図9に示すように、縮径筒部61bの先端外径が、複合管9の内径より小さくなっているので、この縮径筒部61bのテーパ面にガイドされながら、複合管9の先端内に筒部本体61aがスムーズに入り込み、ガイド筒部61全体が複合管9内に入り込むとともに、複合管9の内層92先端でテーパ部62に受けられる。
そして、複合管9をさらに押し込んでいくと、テーパ部62が複合管9の内層92に押され、ガイド部材6が複合管9とともに、ノズル部後端側に差し込まれていき、図2及び図10に示すように、鍔部63が外筒受部1cの端面に当接するとともに、ガイド筒部61が戻り止め突条14よりノズル部後端側に入り込む。また、リング状シール材4の第1シール部42及び第2シール部43が複合管9の内周面に水密に密着する。
【0035】
この管継手Aは、上記のようになっており、以下のような優れた効果を備えている。
(1)抜け止めリング5aを備えているので、複合管9の抜けを確実に防止することができる。すなわち、複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に動こうとすると、まず、係止爪52が図11に示すように、複合管9の外層91に食い込み、加わった力が大きくないときは、この食い込みのみによって抜け方向の動きを抑える。しかも、抜け止めリング5aが、係止爪52の両側に食い込み規制部53を備えているので、係止爪52が所定位置まで食い込むと、食い込み規制部53が複合管9に外周面に当接し、それ以上の係止爪52の外層91への食い込みを防止する。したがって、係止爪52の食い込みすぎによる複合管9の破損を防止することができる。
(2)係止爪52の食い込み長さが、複合管9の外層91の厚み未満に規制されるので、係止爪52が、外層91をつき破って中間層93に達することがない。すなわち、中間層93と抜け止めリング5aとの直接接触による異種金属間接触腐食を防止することができる。
(3)そして、加わった力が大きい場合、複合管9の抜け方向への移動に伴って、図12に示すように、外層91に食い込んだ係止爪52が本体51と平行になるように起き上がるが、食い込み規制部53によって、複合管9の管壁がノズル部1d方向に縮径し、ノズル部1dの第1環状溝11内に入り込むので、入り込んだ複合管9の管壁によっても抜け方向の動きが規制され、それ以上の抜けが防止される。
(4)ガイド部材6aを備えているので、複合管9の管端がリング状シール材4にあたることがない。したがって、先端が斜め切りの状態や管端面の仕上げが不足した状態で複合管9を管継手Aに差し込んでも、リング状シール材4が傷ついたり、脱リングしたりすることがない。
(5)非接触状態保持手段としてテーパ部62が設けられていて、図10に示すように、複合管9の内層92の端面がテーパ部62に受けられ、中間層93がガイド部材6に接触することがない。したがって、異種金属間接触腐食による中間層93の劣化が防止される。
(6)ガイド部材6が縮径筒部61bを備えているので、ガイド筒部61がスムーズに複合管9の管端に入り込む。
(7)ノズル部1dが戻り止め突条14を備えているので、上記のように複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に移動して、ガイド部材6aが共ズレしようとしても、ガイド部材6aの縮径筒部61bの先端が戻り止め突条14に係止される。したがって、ガイド部材6aがそれ以上抜け方向に共ズレすることがなく、縮径筒部61bの先端によってリング状シール材4を傷つけたり、脱リングさせることがない。
(8)挿入ガイド部10が、ノズル部1d先端に向かってその外径が略30度の角度で徐々に縮径するテーパ面となっているとともに、先端の外径が、切断したままの偏平した複合管9の管端の最小径部より小径となっており、かつ、ガイド部31aが、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、切断したままの偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっているので、切断の際に複合管9が偏平し、その状態で複合管9を接続した場合においても、挿入ガイド部10がスムーズに複合管9の先端部内に入り込むとともに、複合管9がガイド31aの先端からキャップ本体31内に入り込む。そして、挿入ガイド部10及びガイド部31aによって、偏平した複合管9が円筒状体に矯正され、ガイド部材6aのガイド筒部61にスムーズに外嵌される。
(9)リング状シール材4が、ガイド部材6aのガイド筒部61によって押さえられているので、複合管9のリング状シール材4を通過する際の抵抗が小さくなり、複合管の挿入力を低減できる。したがって、施工性が向上する。
【0036】
図13は、本発明にかかる管継手の抜け止めリングの変形例をあらわしている。
図13に示すように、この抜け止めリング5bは、係止爪52に対し、直角方向に折れ曲がるように設けられた食い込み規制部54を備えている以外は、上記抜け止めリング5aと同様になっている。
【0037】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、リング状シール材が1つであったが、シール材用環状溝を複数、軸方向に平行に設け、それぞれにリング状シール材を嵌合させるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、ガイド部材を備えていたが、ガイド部材はなくても構わない。
【符号の説明】
【0038】
A 管継手
1 継手本体
1d ノズル部
11 第1環状溝
2 外筒部材(外筒部)
3 キャップ部材(外筒部)
4 リング状シール材
5a,5b 抜け止めリング
51 本体
52 係止爪
53,54 食い込み規制部
9 複合管(接続管)
91 外層
92 内層
93 中間層
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、差し込むだけで接続管を接続することができるワンタッチ式の管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
接続時に接続管内に入り込むノズル部(ニップル部ともいう)を備え、ノズル部の外周に形成した環状溝にノズル部より外径が大きいリング状シール材を嵌装し、接続管の接続によって、このリング状シール材が接続管の内周面に水密に密着するとともに、接続管に抜け方向の力が加わると、接続管の外周方向から放射状に設けられた係止爪が管壁に食い込んで接続管の抜け止めを図るようにした金属製の抜け止めリングを備えるワンタッチ式の管継手がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−177978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の管継手の場合、接続管に抜け方向に大きな力が加わると、係止爪が大きく食い込んで接続管の管壁を突き破り、接続管を破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、接続管に抜け方向の大きな力が加わっても、係止爪の食い込みによって接続管が破損するあるいはその後の漏水事故につながる傷を与えることがないワンタッチ式の管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる管継手は、接続時に接続管の内部に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、このノズル部との間に接続管の挿入空間を形成する外筒部と、前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材とを備え、接続された前記接続管に抜け方向の力が加わると、接続管の管壁に外周側から食い込んで接続管の抜けを防止する複数の係止爪が放射状にかつ前記ノズル部の後端側に向かって傾斜して設けられた抜け止めリングを、前記挿入空間の入口に設けられた管継手において、前記抜け止めリングは、前記係止爪が規定量まで管壁に食い込むと、接続管の外周面に当接して、それ以上の係止爪の食い込みを防止する食い込み規制部が係止爪に隣接して設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明において、抜け止めリングの材質としては、特に限定されないが、例えば、鉄鋼(ばね鋼)、ステンレス鋼、砲金などの銅合金が挙げられる。
【0008】
本発明において、接続される管としては、特に限定されないが、例えば、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、熱可塑性樹脂製の内層及び外層と、金属製の中間層とを有する複合管が挙げられる。
複合管としては、特に限定されないが、例えば、外層が高密度ポリエチレン、内層が耐熱性ポリエチレン、中間層がアルミニウムで形成された、積水化学工業社製の商品名エスロンスーパーエスロメタックス等の市販のものを用いることができる。
【0009】
本発明において、上記規定量とは、接続管に抜け方向の力が加わっても接続管の抜けを防止でき、係止爪の食い込みによって接続管が破損するあるいはその後の漏水事故につながる傷を与えることがない係止爪の食い込み量であって、接続される管に応じて適宜決定される。
【0010】
なお、接続管が複合管である場合、抜け止めリングが複合管の中間層と異種の金属で形成されている場合、係止爪の食い込み長さを外層の厚み未満に規制することが好ましい。
すなわち、その理由は、係止爪の食い込み長さが外層の厚みを越えた場合、食い込みによって係止爪と中間層とが接触状態となり、異種金属間接触腐食によって、抜け止めリングあるいは中間層が腐食して漏水を招くおそれがあるからである。
【0011】
また、本発明にかかる管継手は、抜け止めリングが、接続管に抜け方向の力が加わると、係止爪及び食い込み規制部が接続管の管軸に直交するように立ち上がるとともに、前記食い込み規制部が接続管の管壁を管中心軸方向に押圧変形させるように構成されているとともに、ノズル部が、立ち上がった食い込み規制部に対応する位置に、接続管の押圧変形した管壁部分が入り込む環状溝を備えていることが好ましい。
すなわち、上記のようにすれば、係止爪の食い込みだけでなく、押圧変形して、環状溝に食い込む管壁によっても抜け方向の力を受けることができ、より大きな抜け方向の力に耐えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる管継手は、以上のように、接続時に接続管の内部に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、このノズル部との間に接続管の挿入空間を形成する外筒部と、
前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材とを備え、接続された前記接続管に抜け方向の力が加わると、接続管の管壁に外周側から食い込んで接続管の抜けを防止する複数の係止爪が放射状にかつ前記ノズル部の後端側に向かって傾斜して設けられた抜け止めリングを、前記挿入空間の入口に設けられた管継手において、前記抜け止めリングは、前記係止爪が規定量まで管壁に食い込むと、接続管の外周面に当接して、それ以上の係止爪の食い込みを防止する食い込み規制部が係止爪に隣接して設けられているので、接続管に抜け方向の大きな力が加わっても、係止爪の食い込みによって接続管が破損する、あるいはその後の漏水事故につながる傷を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわす断面図である。
【図2】図1の管継手に接続管として複合管を接続した状態の断面図である。
【図3】図1の管継手のリング状シール材部分の拡大断面図である。
【図4】図1の管継手のガイド部材の断面図である。
【図5】図1の抜け止めリングの斜視図である。
【図6】図5の抜け止めリングの製造に用いる打ち抜き片をあらわし、同図(a)はその平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線断面の端面図である。
【図7】図5の打ち抜き片を用いた抜け止めリングの製造工程の途中段階をあらわし、同図(a)はその平面図、同図(b)は同図(a)のY−Y線断面の端面図である。
【図8】図5の抜け止めリングの断面の端面図である。
【図9】図1の管継手へ複合管を差し込む途中の状態をあらわす断面図である。
【図10】図2の複合管の接続状態におけるノズル部後端部の拡大断面図である。
【図11】図1の管継手に接続された複合管に引き抜き方向の力が加わったときの抜け止めリング係止爪の作用を説明する係止爪部分の拡大断面図である。
【図12】図1の管継手に接続された複合管に大きな引き抜き方向の力が加わったときの抜け止めリングの作用を説明する断面図である。
【図13】本発明にかかる管継手に用いられる抜け止めリングの変形例をあらわす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる管継手の1つの実施の形態をあらわしている。
【0015】
図1に示すように、この管継手Aは、継手本体1と、外筒部を構成する外筒部材2及びキャップ部材3と、リング状シール材4と、抜け止めリング5aと、ガイド部材6とを備え、図2に示すように、複合管9が接続されるようになっている。
複合管9は、高密度ポリエチレン製の外層91と、耐熱ポリエチレン製の内層92と、アルミニウム製の中間層93を備えている。
【0016】
継手本体1は、砲金やステンレス鋼等の金属材料で形成されていて、中央にスパナ等の締め付け工具(図示せず)の係合部が係合する六角ナット状のフランジ部1aを備え、フランジ部1aを挟んで一方に雄ネジ筒部1b、他方に、外筒受部1cとノズル部1dとが設けられている。
【0017】
ノズル部1dは、先端側から挿入ガイド部10、第1環状溝11、第2環状溝12、第3環状溝13、戻り止め突条14をその周面に備え、最大径部が接続される複合管9の内径より少し小径になっている。
挿入ガイド部10は、ノズル部1d先端に向かって先端の外径が、後述する接続管が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70〜75%)では、偏平した接続管の管端の最小径部より小径となるように、略30度の角度で徐々に縮径するテーパ面になっている。
【0018】
第1環状溝11は、後述する抜け止めリング5aを臨む位置に設けられている。
第2環状溝12は、図3に示すように、後述するガイド部材6の縮径筒部61bが嵌り込むように設けられていて、その底面がノズル部1dの先端側に向かって徐々に縮径するテーパ面になっていて、ノズル部1dの後端側が第3環状溝13に連設されている。
第3環状溝13は、その底面のノズル部1dの中心軸方向中央部より少しノズル部1dの差し込み端側にリング状シール材4の位置決め突条13aをノズル部1dの中心軸に対して環状に備えている。
【0019】
戻り止め突条14は、第3環状溝13のノズル部1d側の側壁に沿って設けられていて、その高さは、ガイド部材6の後端が係合して、ノズル部1dの差し込み端側への動きを抑えることができれば、低いことが好ましく、0.05mm程度である。
外筒受部1cは、ノズル部1dとフランジ部1aとの間に設けられ、ノズル部1dより少し大径になっているとともに、その周面に後述する外筒部材2の係合突条21が係合する係合溝15が穿設されている。
【0020】
リング状シール材4は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)等の合成ゴムで形成されていて、図3に示すように、本体部41と、第1シール部42と、第2シール部43とを備えている。
本体部41は、第3環状溝13のノズル部中心軸方向の長さより少し幅が狭く、その厚みが第3環状溝13の底からノズル部1dの外縁までの長さと略同じ厚みか少し薄い肉厚の筒状をしていて、筒の内周面に位置決め突条13aが嵌り込む係合溝41aが環状に設けられていて、外周から圧縮力が働いていないときには、第3環状溝13に嵌合状態で、第3環状溝13にノズル部後端側の壁との間、及び第2環状溝12側の壁との間に、圧縮時の逃げ空間となる隙間Sが形成されるようになっている。
【0021】
第1シール部42は、係合溝41aよりノズル部先端側に設けられていて、図3において破線で示すように、ノズル部1dの先端側から後端側に向かって徐々に拡径する断面略三角形をしていて、その最大径が複合管の内径より大きくなっている。
第2シール部43は、係合溝41aよりノズル部後端側に設けられていて、図3に示すように、断面略かまぼこ形をしていて、その最大径が複合管の内径より大きくなっている。
【0022】
ガイド部材6は、肉厚0.1mm程度の薄肉のステンレス鋼や銅合金からなるパイプをプレス加工、絞り加工及び曲げ加工などして形成され、図4に示すように、ガイド筒部61と、非接触状態保持構造としてのテーパ部62と、鍔部63とを備えている。
ガイド筒部61は、筒部本体61aと、縮径筒部61bとを備えている。
【0023】
筒部本体61aは、その外径が複合管9の内径と略同じか少し小径の円筒状をしている。
縮径筒部61bは、筒部本体61aのノズル部1dの先端側に連設され、ノズル部1dの先端側に向かって徐々に縮径して、ノズル部1dの先端側の外径が複合管9の内径より5%程度小径になっている。
【0024】
テーパ部62は、筒部本体61aのノズル部1dの後端側からノズル部1dの後端方向に向かって徐々に拡径するように設けられ、そのテーパ角は、15〜45度であれば特に限定されないが、管端面の面仕上げまたは面取りの角度に近いことが好ましく、本実施の形態では30度である。
【0025】
鍔部63は、パイプの端部を折り曲げて重合させて形成され、その外径が複合管9の外径より少し小径になっている。
【0026】
そして、ガイド部材6aの初期位置は、図1〜図3に示すように、ガイド筒部61が第1シール部42に外嵌されるとともに、縮径筒部61bのノズル部1dの先端側の端部が第2環状溝12内に嵌り込むように装着され、鍔部63は第2シール部43に被る手前に配置される。この配置により、衝撃や振動に対して動かなくなっている。
なお、このガイド部材6aが装着された状態でリング状シール材4は、第1シール部42が、ガイド筒部61によって圧縮された状態になっている。
【0027】
外筒部材2は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成された筒状体であって、一端部の内周面に係合突条21を備え、他端部側が一旦外側に膨らみ厚肉になったのち、外周面が切り欠かれた状態となり、この切欠き部に2条の係合溝22,22が形成されている。
また、外筒部材2は、内径が概ね複合管9の外径と略同じか少し大径になっていて、外周面他端に内周面が他の部分より段状に拡径している拡径部23を備えている。
外筒部材2のノズル部1dの先端側の端面は、後述する抜け止めリング5の本体51の形状に沿うように、抜け止めリング位置決め凹部24がリング状に設けられている。
【0028】
そして、外筒部材2は、その一端に設けられた係合突条21が外筒受部1cの係合溝15に係合されるように、一端部が外筒受部1cに外嵌されている。
すなわち、外筒部材2は、係合突条21が、弾性変形しながら、継手本体1方向に押し込まれ、係合突条21が係合溝15に係合することによって、継手本体1から離脱せず、継手本体1に対して回転自在に取着されている。
【0029】
抜け止めリング5aは、図5に示すように、リング状の本体51と、この本体51の内周側に複数の係止爪52と、食い込み規制部53とを交互に備えている。
そして、この抜け止めリング5aは、まず、ステンレス鋼の薄板を打ち抜き、図6に示すように、本体51の内側に、係止爪52と、この係止爪52の両側に食い込み規制部53となる舌片50を備えた打ち抜き片5を得たのち、図7に示すように、打ち抜き片5の舌片50を係止爪52の食い込み規制部53からの突出長さが複合管9の外層91の厚み未満となる位置で180°折り曲げ、さらに、図8に示すように、この折り曲げ部及び係止爪52を本体51に対して40〜45°の交差角となるように立ち上げることによって得られる。
【0030】
そして、抜け止めリング5aは、本体51が抜け止めリング位置決め凹部24に嵌り込むとともに、係合爪52及び食い込み規制部53が拡径部23に収容された状態に保持されている(図11参照)。
【0031】
キャップ部材3は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、PC(ポリカーボネート)などの透明なエンジニアリングプラスチックで形成されたキャップ本体31と、嵌合筒部32とを備えている。
キャップ本体31は、管挿入端側の内径が複合管9の外径と略同じか少し大径をしていて、中間部から先端(嵌合筒部32と反対側の端)にかけてガイド部31aを備えている。
ガイド部31aは、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、後述する複合管9が切断の際に偏平となっても、通常予想される偏平率の範囲(70〜75%)では、偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっている。
【0032】
嵌合筒部32は、キャップ本体31の厚み方向の一方に延出するように設けられ、内周面に2条の係合突条32a,32aが設けられている。
そして、キャップ部材3は、係合突条32a,32aが外筒部材2の係合溝22,22に嵌り込むように、嵌合筒部32が外筒部材2に外嵌されることによって、抜け止めリング5aの離脱を防止している。
【0033】
この管継手Aは、上記のようになっており、以下のようにして、複合管9がワンタッチ挿入で接続される。
まず、継手本体1の雄ネジ筒部1bを図示していない配管材(例えば、ヘッダー)に螺合させて、他の配管材と接続した後、複合管9をキャップ部材3の開口から継手本体1側に差し込んでいくと、複合管9の先端が、抜け止めリング5の係止爪52及び食い込み規制部53をまず差し込む方向に弾性変形させるので、図9に示すように、係止爪52及び食い込み規制部53が複合管9の外壁に沿う。
【0034】
そして、複合管9をさらに押し込んでいくと、図9に示すように、縮径筒部61bの先端外径が、複合管9の内径より小さくなっているので、この縮径筒部61bのテーパ面にガイドされながら、複合管9の先端内に筒部本体61aがスムーズに入り込み、ガイド筒部61全体が複合管9内に入り込むとともに、複合管9の内層92先端でテーパ部62に受けられる。
そして、複合管9をさらに押し込んでいくと、テーパ部62が複合管9の内層92に押され、ガイド部材6が複合管9とともに、ノズル部後端側に差し込まれていき、図2及び図10に示すように、鍔部63が外筒受部1cの端面に当接するとともに、ガイド筒部61が戻り止め突条14よりノズル部後端側に入り込む。また、リング状シール材4の第1シール部42及び第2シール部43が複合管9の内周面に水密に密着する。
【0035】
この管継手Aは、上記のようになっており、以下のような優れた効果を備えている。
(1)抜け止めリング5aを備えているので、複合管9の抜けを確実に防止することができる。すなわち、複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に動こうとすると、まず、係止爪52が図11に示すように、複合管9の外層91に食い込み、加わった力が大きくないときは、この食い込みのみによって抜け方向の動きを抑える。しかも、抜け止めリング5aが、係止爪52の両側に食い込み規制部53を備えているので、係止爪52が所定位置まで食い込むと、食い込み規制部53が複合管9に外周面に当接し、それ以上の係止爪52の外層91への食い込みを防止する。したがって、係止爪52の食い込みすぎによる複合管9の破損を防止することができる。
(2)係止爪52の食い込み長さが、複合管9の外層91の厚み未満に規制されるので、係止爪52が、外層91をつき破って中間層93に達することがない。すなわち、中間層93と抜け止めリング5aとの直接接触による異種金属間接触腐食を防止することができる。
(3)そして、加わった力が大きい場合、複合管9の抜け方向への移動に伴って、図12に示すように、外層91に食い込んだ係止爪52が本体51と平行になるように起き上がるが、食い込み規制部53によって、複合管9の管壁がノズル部1d方向に縮径し、ノズル部1dの第1環状溝11内に入り込むので、入り込んだ複合管9の管壁によっても抜け方向の動きが規制され、それ以上の抜けが防止される。
(4)ガイド部材6aを備えているので、複合管9の管端がリング状シール材4にあたることがない。したがって、先端が斜め切りの状態や管端面の仕上げが不足した状態で複合管9を管継手Aに差し込んでも、リング状シール材4が傷ついたり、脱リングしたりすることがない。
(5)非接触状態保持手段としてテーパ部62が設けられていて、図10に示すように、複合管9の内層92の端面がテーパ部62に受けられ、中間層93がガイド部材6に接触することがない。したがって、異種金属間接触腐食による中間層93の劣化が防止される。
(6)ガイド部材6が縮径筒部61bを備えているので、ガイド筒部61がスムーズに複合管9の管端に入り込む。
(7)ノズル部1dが戻り止め突条14を備えているので、上記のように複合管9に抜け方向の力が加わり、複合管9が抜け方向に移動して、ガイド部材6aが共ズレしようとしても、ガイド部材6aの縮径筒部61bの先端が戻り止め突条14に係止される。したがって、ガイド部材6aがそれ以上抜け方向に共ズレすることがなく、縮径筒部61bの先端によってリング状シール材4を傷つけたり、脱リングさせることがない。
(8)挿入ガイド部10が、ノズル部1d先端に向かってその外径が略30度の角度で徐々に縮径するテーパ面となっているとともに、先端の外径が、切断したままの偏平した複合管9の管端の最小径部より小径となっており、かつ、ガイド部31aが、キャップ本体31先端に向かってその内径が略30度の角度で徐々に拡径するテーパ面となっているとともに、先端の内径が、切断したままの偏平した複合管9の管端の最大外径より大径となっているので、切断の際に複合管9が偏平し、その状態で複合管9を接続した場合においても、挿入ガイド部10がスムーズに複合管9の先端部内に入り込むとともに、複合管9がガイド31aの先端からキャップ本体31内に入り込む。そして、挿入ガイド部10及びガイド部31aによって、偏平した複合管9が円筒状体に矯正され、ガイド部材6aのガイド筒部61にスムーズに外嵌される。
(9)リング状シール材4が、ガイド部材6aのガイド筒部61によって押さえられているので、複合管9のリング状シール材4を通過する際の抵抗が小さくなり、複合管の挿入力を低減できる。したがって、施工性が向上する。
【0036】
図13は、本発明にかかる管継手の抜け止めリングの変形例をあらわしている。
図13に示すように、この抜け止めリング5bは、係止爪52に対し、直角方向に折れ曲がるように設けられた食い込み規制部54を備えている以外は、上記抜け止めリング5aと同様になっている。
【0037】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、リング状シール材が1つであったが、シール材用環状溝を複数、軸方向に平行に設け、それぞれにリング状シール材を嵌合させるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、ガイド部材を備えていたが、ガイド部材はなくても構わない。
【符号の説明】
【0038】
A 管継手
1 継手本体
1d ノズル部
11 第1環状溝
2 外筒部材(外筒部)
3 キャップ部材(外筒部)
4 リング状シール材
5a,5b 抜け止めリング
51 本体
52 係止爪
53,54 食い込み規制部
9 複合管(接続管)
91 外層
92 内層
93 中間層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続時に接続管の内部に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、
このノズル部との間に接続管の挿入空間を形成する外筒部と、
前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材とを備え、
接続された前記接続管に抜け方向の力が加わると、接続管の管壁に外周側から食い込んで接続管の抜けを防止する複数の係止爪が放射状にかつ前記ノズル部の後端側に向かって傾斜して設けられた抜け止めリングを、前記挿入空間の入口に設けられた管継手において、
前記抜け止めリングは、前記係止爪が規定量まで管壁に食い込むと、接続管の外周面に当接して、それ以上の係止爪の食い込みを防止する食い込み規制部が係止爪に隣接して設けられていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
接続管が熱可塑性樹脂製の内外層と、金属製中間層とを備える複合管であって、係止爪の食い込み長さが外層の厚み未満に規制されている請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
抜け止めリングが、接続管に抜け方向の力が加わると、係止爪及び食い込み規制部が接続管の管軸に直交するように立ち上がるとともに、前記食い込み規制部が接続管の管壁を管中心軸方向に押圧変形させるように構成されているとともに、ノズル部が、立ち上がった食い込み規制部に対応する位置に、接続管の押圧変形した管壁部分が入り込む環状溝を備えている請求項1または請求項2に記載の管継手。
【請求項1】
接続時に接続管の内部に挿入状態となるノズル部を有する継手本体と、
このノズル部との間に接続管の挿入空間を形成する外筒部と、
前記ノズル部に設けられた環状溝に嵌装されたリング状シール材とを備え、
接続された前記接続管に抜け方向の力が加わると、接続管の管壁に外周側から食い込んで接続管の抜けを防止する複数の係止爪が放射状にかつ前記ノズル部の後端側に向かって傾斜して設けられた抜け止めリングを、前記挿入空間の入口に設けられた管継手において、
前記抜け止めリングは、前記係止爪が規定量まで管壁に食い込むと、接続管の外周面に当接して、それ以上の係止爪の食い込みを防止する食い込み規制部が係止爪に隣接して設けられていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
接続管が熱可塑性樹脂製の内外層と、金属製中間層とを備える複合管であって、係止爪の食い込み長さが外層の厚み未満に規制されている請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
抜け止めリングが、接続管に抜け方向の力が加わると、係止爪及び食い込み規制部が接続管の管軸に直交するように立ち上がるとともに、前記食い込み規制部が接続管の管壁を管中心軸方向に押圧変形させるように構成されているとともに、ノズル部が、立ち上がった食い込み規制部に対応する位置に、接続管の押圧変形した管壁部分が入り込む環状溝を備えている請求項1または請求項2に記載の管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−77804(P2012−77804A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221862(P2010−221862)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000221638)東尾メック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000221638)東尾メック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】
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