説明

管路位置測定システム

【課題】 推進工法やシールド工法等における見通しの効かない管路の施工時であっても、管路先端部の位置をリアルタイムで測定する。
【解決手段】 基点部8と管路4の先端部5との間に掛け渡され、節点9を有する線状体11と、節点9での基点部8側と先端部5側の線状体11の軸方向角度をそれぞれ検出する角度検出装置12と、基点部5での線状体11の軸方向角度を検出する角度検出装置14とを備え、各角度検出装置12,14で検出された線状体11の軸方向角度と、線状体11の長さとから、隣接する線状体11の節点9の座標を順次算出して、管路4先端部5の位置を測定するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に形成される管路先端部の位置を測定するシステムに係り、特に推進工法やシールド工法等における見通しの効かない管路の施工時に、管路先端部の位置を測定できる管路位置測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
管路先端部の見通しが効かない推進工法やシールド工法等の施工時に、管路先端部が計画位置にあるか否かを測定する手段として、ジャイロ等を用いた位置測定システムが従来よりあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このジャイロ方式の位置測定システムは、推進工法により敷設される推進管の位置測定装置であって、推進管先端の先導体に設けられヨー角方向の相対角度変化を検出する光ファイバジャイロと、前記先導体に設けられ先導体の絶対レベルを検出するレベルセンサと、元押しジャッキに設けられ推進管の推進距離を検出する推進距離測定手段とを備えている。そして、コンピュータによって、光ファイバジャイロにより計測された相対角度変化と、推進距離測定手段によって計測された推進距離との積分演算により先導体の平面座標変化およびこれの累積から推進管の平面線形を算出するとともに、レベルセンサによって計測された絶対レベルと、推進距離測定手段によって計測された推進距離との積分演算により先導体の高さ座標変化およびこれの累積から推進管の縦断線形を算出して、先導体の位置を測定するようになっている。
【特許文献1】特開2003−247826号公報(段落0019〜0020、0025)
【特許文献2】特開2002−250627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のジャイロ方式の位置測定システムでは、所定の位置(立坑)から光ファイバジャイロを管路内に挿入して、積分演算方式により位置を計測する方法を採っているため、測定をリアルタイムに行うことができず、推進管等の振動等の影響を受けやすいといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は前記の問題を解決すべく案出されたものであって、推進工法やシールド工法等における見通しの効かない管路の施工時であっても、管路先端部の位置をリアルタイムで測定することができる管路位置測定システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、推進工法やシールド工法等によって地中に形成される管路の先端部の位置を測定する管路位置測定システムにおいて、固定された基点部と推進していく管路先端部との間に掛け渡されるとともに、前記基点部より繰り出され、所定の位置に屈曲部または屈曲可能に連結される連結部である節点を有する線状体と、前記線状体の前記節点を挟むように設けられ、前記基点部側と前記先端部側の前記線状体の軸方向角度をそれぞれ検出する角度検出装置と、前記基点部を含むように設けられ、前記線状体の軸方向角度を検出する角度検出装置とを備え、前記各角度検出装置で検出された前記線状体の軸方向角度と、前記線状体の長さとから隣接する前記線状体の節点の座標を、前記基点部より順次算出して、前記管路先端部の位置を測定するように構成したことを特徴とする管路位置測定システムである。
【0007】
ここで、線状体は、基点部と管路先端部との間に掛け渡された全体をいい、一体に連続して形成され各節点で屈曲されるものと、節点間ごとに分割して形成され各節点で屈曲可能に連結されるものの両方を含む。線状体は、各節点間では直線状になる。
【0008】
前記構成によれば、線状体の節点での軸方向角度の検出は、連続的且つ高速に行うことができるので、リアルタイムで管路先端部の位置を計測することができる。さらに、移動平均が適用できるので、振動やノイズの影響の軽減または除去が達成される。また、構造が非常にシンプルなものであり、取り扱いが容易である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記線状体が、ワイヤーにて構成され、このワイヤーには、前記基点部とこれに隣接する前記節点間、および互いに隣接する前記節点間、および前記管路先端部とこれに隣接する前記節点間の前記各ワイヤーの撓みがそれぞれ最小になるような張力を当該ワイヤーに加える張力発生器が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の管路位置測定システムである。
【0010】
前記構成によれば、ワイヤーは運搬等の取り扱いに便利であり、節点間の距離を長く設定することもできる。また、張力発生器によりワイヤーを節点間で直線状に保持することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、互いに隣接する前記節点間、および前記管路先端部とこれに隣接する前記節点間の前記ワイヤーには、前記張力発生器がそれぞれ設けられ、この張力発生器は、前記ワイヤーの同軸上に設けられ当該ワイヤーにその長さが縮退する方向にばね力を付勢するばね部材にて構成されることを特徴とする請求項2に記載の管路位置測定システムである。
【0012】
前記構成によれば、張力発生器を、管路先端部と隣接する節点間および互いに隣接する節点間に設けたことで、各節点間のワイヤーに張力を加えることができ、ワイヤーの直線状態が保たれるので、管路先端部の計測精度を高めることができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、前記線状体が、前記基点部から前記管路先端部まで連続的に形成された光ファイバにて構成され、該光ファイバには、その歪みを測定する光ファイバ歪み測定器が設けられ、この光ファイバ歪み測定器で歪みを測定することにより光ファイバの張力を算出して、前記節点間の光ファイバの懸垂曲線を求めて、前記角度検出装置による検出角度の補正を行うように構成したことを特徴とする請求項1に記載の管路位置測定システムである。
【0014】
前記構成によれば、光ファイバ歪み測定器で歪みを測定することにより光ファイバの張力を算出して、前記節点間の光ファイバの懸垂曲線を求めて、前記角度検出装置による検出角度の補正を行うように構成したことによって、管路先端部の計測精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、推進工法やシールド工法等における見通しの効かない管路の施工時であっても、管路先端部の位置をリアルタイムで測定することができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の第一の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態では、線状体をワイヤーで構成した管路位置測定システムを、推進工法に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る管路位置測定システムを実施するための最良の形態を示した断面図、図2は基点部の角度検出装置を示した概略構成図、図3は節点の角度検出装置を示した概略構成図、図4は角度検出装置での角度測定を説明するための説明図、図5は推進工法によるトンネル施工状態を示した断面図、図6は節点におけるワイヤーの支持状態を示し概略断面図である。
【0018】
推進工法は、計画ラインの両端に発進坑と到達坑を設け、発進坑に設けられた油圧ジャッキ等の推進設備によって掘削機を地中に押し出し、掘削機の後部に推進管を順次継ぎ足して管列を推進して、掘削機を到達坑に到達させて、トンネルや管きょを構築する工法である。
【0019】
この推進工法は、下水道、水道、ガス、電力、通信等のライフラインを地中に管きょとして埋設する場合や、図5に示すように、地中に一対の比較的小径の導坑51,52を形成した後に、一方の導坑(発進側)51から他方の導坑(到達側)52に向かって円弧状の小断面トンネル53を上下に並列形成して、この小断面トンネル53を上下の枠54とし、土留として利用し、その枠54の内側を掘削して内部に道路等の大断面トンネル55を構築する場合に用いられる。ここで、本実施の形態では、導坑51から導坑52に向かって小断面トンネル53を形成するときに採用される推進工法を例に挙げて、本発明に係る管路位置測定システムを説明する。
【0020】
図1に示すように、小断面トンネル53を形成するに際しては、導坑51内に設けられた図示しない推進設備によって、導坑51から掘削機1を地盤2内に押し出し、その掘削機1の後部に推進管3を順次継ぎ足して、後方から押し出しながら推進させていく。なお、本実施の形態では、小断面トンネル53の曲率半径は一定であり、推進管3の形状は同一のものとなっている。
【0021】
以下、掘削形成される管路4の先端部(以下、「管路先端部」という)5、すなわち掘削機1の前面中心部(例えば前面隔壁の中心部)6を計測する管路位置測定システム7について説明する。管路位置測定システム7は、導坑51内に固定された基点部8と、推進していく管路先端部5との間に掛け渡されるとともに、基点部8より管路先端部5の推進速度と同じ速度で送り出され、所定の位置に屈曲部または屈曲可能に連結される連結部である節点9を有する線状体11と、この線状体11の節点9を挟むように設けられ、基点部8側と管路先端部5側の線状体11の軸方向角度をそれぞれ検出する角度検出装置12と、基点部8を含むように設けられ、線状体11の軸方向角度を検出する角度検出装置14とを備えている。
【0022】
本実施の形態では、線状体11は、ワイヤー15にて構成されている。ワイヤー15は、所定の引っ張り強度を有し、撓みが最小になる程度に張力を加えたときに切断することがない材料及び長さのものが利用されている。また、本実施の形態では、ワイヤー15(線状体11)は、節点9ごとで分割されており、節点9を中心に、基点部8側のワイヤー15と管路先端部5側のワイヤー15とが互いに屈曲可能となるように連結されている。具体的には、図6に示すように、ワイヤー15の分割部17にボールジョイント18を設けて、ワイヤー15が屈曲可能に支持されている。
【0023】
図1に示すように、互いに隣接する節点9間、および管路先端部5とこれに隣接する節点9間のワイヤー15には、張力発生器16がそれぞれ設けられている。この張力発生器16は、隣接する節点9間、および管路先端部5とこれに隣接する節点9間のワイヤー15の撓みがそれぞれ最小になるような張力をワイヤー15に加える。張力発生器16は、当該ワイヤー15を所定の位置に設置した際にその長さが縮退する方向にばね力を付勢するばね部材19にて構成されている。ばね部材19は、ワイヤー15の同軸上に設けられている。このばね部材19によって、隣接する節点9間、および管路先端部5とこれに隣接する節点9間のワイヤー15は、撓みが最小になり、略直線状の直線部21となる。
【0024】
一方、基点部8には、基点部8とこれに隣接する節点9間のワイヤー15に、その撓みがそれぞれ最小になるような張力を加える張力発生器16が設けられている。ここでの張力発生器16は、基点部8に送られるワイヤー15が巻き掛けられる滑車22と、ワイヤー15の端部に取り付けられたウェイト23とで構成されている。ウェイト23でワイヤー15を引っ張ることで、ワイヤー15に張力を与えている。これによって、基点部8とこれに隣接する節点9間のワイヤー15も、撓みが最小になり、略直線状の直線部21となる。滑車22にはエンコーダ(図示せず)が設けられ、基点部8からのワイヤー15の送出し距離を検出するようになっている。
【0025】
なお、基点部8の張力発生器16は、前記構成に限られるものではなく、例えば、滑車22に代えてトルクモータを適用するようにしてもよい。この構成によれば、ウェイト23を省略することができる。この場合、トルクモータにエンコーダが設けられる。
【0026】
基点部8には、基点部8から送り出されるワイヤー15の軸方向角度を検出する角度検出装置(以下、「基点部角度検出装置」という)14が設けられている。図2に示すように、基点部角度検出装置14は、基点部8を含むように設けられている。基点部角度検出装置14は、一端に基準面24となる壁面を有する筒状ボックス体25を有している。基準面24には、ワイヤー15が通過する通し穴26が形成されており、この通し穴26が基点部8となる。通し穴26は、その軸線が、基準面24に対して垂直になるように構成されている。基点部8を含む筒状ボックス体25は、導坑51内でブラケット(図示せず)等を介して所定の位置に固定されている。
【0027】
筒状ボックス体25には、基点部8から所定距離L離れた位置において、直交する二軸方向でワイヤー15の位置計測を行う光学変位測定装置(図示せず)が設けられている。この光学変位測定装置は、例えば、レーザ変位計等の高速で計測ができる機器が用いられている。光学変位測定装置は、基準面24と平行な面(後述する測定面20)内において、筒状ボックス体25の底面と平行方向に延びるレーザ光28の発光部(図示せず)および受光部(図示せず)と、筒状ボックス体25の底面と直交方向に延びるレーザ光29の発光部(図示せず)および受光部(図示せず)とを備えている。光学変位測定装置は、基点部8から所定距離L離れた面(測定面20)でのワイヤー15が通過する部分のレーザ光28,29がそれぞれ遮断されるので、その遮断位置を検知することで、ワイヤー15の通過位置を検知できる。そして、この通過位置と距離Lと基点部8の位置とに基づいて、基準面24に対するワイヤー15の軸方向角度(送り出し角度)を算出する。
【0028】
一方、線状体11の節点9には、基点部8側のワイヤー15の軸方向角度と、管路先端部5側のワイヤー15の軸方向角度をそれぞれ検出する角度検出装置(以下、「節点部角度検出装置」という)12が設けられている。図3に示すように、節点部角度検出装置12は、節点9を挟むように設けられており、節点9を中心に、基点部8側および管路先端部5側両側に延びる筒状ボックス体31を有している。筒状ボックス体31の長手方向中央部には、筒状ボックス体31の長手方向に対して直交する方向に、壁体32が形成されており、この壁体32の基点部8側および管路先端部5側の両面には、ボールジョイント18(図6参照)がそれぞれ設けられ、節点9が構成されている。
【0029】
この節点9から基点部8側および管路先端部5側の所定距離L離れた位置には、直交する二軸方向でワイヤー15の位置計測を行う光学変位測定装置がそれぞれ設けられている。この光学変位測定装置は、基点部角度検出装置14に設けられたものと同様の構成である。基点部8側の光学変位測定装置は、節点9より基点部8側にあるワイヤー15の壁体32の壁面33に対する軸方向角度(基点部側角度)を算出する。管路先端部5側の光学変位測定装置は、節点9より管路先端部5側にあるワイヤー15の壁面33に対する軸方向角度(先端部側角度)を算出する。
【0030】
なお、図示はしないが、基点部角度検出装置14、各節点部角度検出装置12および基点部8の滑車22に設けられたエンコーダの計測データは、コンピュータに取り込まれる。コンピュータは、予め求めた節点9間の直線部21の距離と、各角度検出装置14,12で検出されたワイヤー15の軸方向角度と、ワイヤー15の各直線部21の長さとに基づいて、隣接する節点9の座標を、基点部8より順次算出して、管路先端部5の位置を算定するようになっている。
【0031】
詳しくは、まず、基準面24を測量等の手段で測定し、基点部8の位置を正確に検出しておく。
【0032】
そして、基点部角度検出装置14で、基点部8から送り出されるワイヤー15の軸方向角度を検出する。この軸方向角度と、エンコーダで検出されたワイヤー15の送出し量とで、隣接する節点9の座標を算出する。
【0033】
計算上では、基点部8を通過して基準面24に直交する線をX軸として、ワイヤー15のX軸に対する軸方向角度を算出する。具体的には、図4に示すように、基点部8から送り出されるワイヤー15の直線部21を、XY平面に投影した投影線(図中、一点鎖線にて示す)36とX軸とで構成される水平角Hintを測定するとともに、前記直線部21を、XZ平面に投影した投影線(図中、一点鎖線にて示す)37とX軸とで構成される鉛直角Vintを測定する。
【0034】
ここで、ワイヤー15の送出し量をLiとすると、ワイヤー15の直線部21の水平面投影長L(Hint)は、下記の(1)式で表される。一方、ワイヤー15の直線部21の鉛直面投影長L(Vint)は、下記の(2)式で表される。
【0035】
【数1】

【0036】
これら各投影長L(Hint),L(Vint)を基に、基点部8に隣接する第一の節点9の座標X1,Y1,Z1は、下記の(3)式〜(5)式でそれぞれ表される。
【0037】
【数2】

【0038】
このように、基点部8に隣接する第一の節点9の座標が求められたら、次は、この第一の節点9の座標と、第一の節点9の管路先端部5側にあるワイヤー15の軸方向角度と、第一の節点9に隣接する第二の節点9間とのワイヤー15の直線部21の距離とを基に、第二の節点9の座標を求める。
【0039】
このとき、第一の節点9より管路先端部5側にあるワイヤー15の、X軸(基点部8を通過して基準面24に直交する線)に対する角度の水平角(XY平面に投影した投影線とX軸とで構成される水平角)は、基点部8のワイヤー15のX軸に対する角度の水平角と、第一の節点9の基点部8側にあるワイヤー15の節点部角度検出装置27の壁面33の直交軸に対する角度の水平角と、節点9の管路先端部5側にあるワイヤー15の前記壁面33の直交軸に対する角度の水平角とから求める。
【0040】
一方、第一の節点9より管路先端部5側にあるワイヤー15の、X軸に対する角度の鉛直角(XZ平面に投影した投影線とX軸とで構成される鉛直角)は、基点部8のワイヤー15のX軸に対する角度の鉛直角と、第一の節点9の基点部8側にあるワイヤー15の前記壁面33の直交軸に対する角度の鉛直角と、節点9の管路先端部5側にあるワイヤー15の前記壁面33の直交軸に対する角度の鉛直角とから求める。
【0041】
これによって、第一の節点9の管路先端部5側にあるワイヤー15の、X軸に対する角度が算出できる。一方、第一の節点9と第二の節点9間の距離は一定に設定されている。ここで、先に求めた第一の節点9の座標と、直線部21の長さと、第一の節点9の管路先端部5側にあるワイヤー15のX軸に対する角度とから、前記(1)式〜(5)式の要領に基づいて、第二の節点9の座標を算出する。
【0042】
なお、図6に示すように、節点9では、ワイヤー15の屈曲点38間に若干の間隔があいているが、この距離L1は、予め決まっている一定の値であるので、計算データに入力して補正することができる。
【0043】
以上の計算を、節点9ごとに、管路4の先端部5まで繰り返し行うことで、管路先端部5の座標が算出できる。
【0044】
次に、本発明の作用を説明する。
【0045】
本発明によれば、ワイヤー15の各直線部21の距離と、基点部8および各節点9のワイヤー15の軸方向角度に基づいて、管路先端部5の座標を算出している。このとき、各節点9間の直線部21の距離は一定であり、基点部8から第一の節点9までの直線部21の距離はエンコーダで容易に計測できるとともに、ワイヤー15の角度は連続的に計測することができる。したがって、連続的に行われるワイヤー15の角度検出と各直線部21の距離とに基づいて、座標を算出することで、リアルタイムで迅速に管路4の先端部5の計測を行うことができる。
【0046】
また、角度の計測には、レーザ変位計等の高速で計測ができる機器が用いられているので、掘削機1に振動が起きたり、角度検出装置12,14にノイズが発生したりした場合でも、座標の移動平均を適用することによって、振動やノイズの影響を軽減または除去することができる。
【0047】
さらに、本実施の形態では、角度検出装置12,14とワイヤー15といった入手が容易で比較的簡単な構造のものを用いているので、装置の取り扱いが容易であり、メンテナンスフリーへの対応も可能である。
【0048】
また、ワイヤー15は運搬等の取り扱いに便利であり、節点9間の距離を長く設定することもできる。そして、各節点9間に張力発生器16をそれぞれ設けているので、ワイヤー15を節点9間で直線状に保持することができ、管路4の先端部5の計測精度を高めることができる。
【0049】
本実施の形態では、曲率半径が一定の推進管3を用いた推進後方を例に挙げて説明したが、本発明は、曲率が変化する管路への適用も可能である。特に、直線部と曲線部が組み合わされた形状では、直線部でワイヤーの距離を長く設定することで、角度検出装置の数を低減させることができ、施工コストの低減を達成できる。
【0050】
さらに、本発明は、垂直部分の管路にも適応できるため、立坑の位置計測や傾斜測定にも応用可能である。
【0051】
図7は本発明に係る管路位置測定システムを実施するための他の形態を示した節点の拡大断面図である。
【0052】
かかる実施の形態は、ワイヤー15が基点部から管路先端部まで、通して一体で形成された場合を示したものである。この場合、節点9では、壁体32にワイヤー15の通し穴39が形成されている。ワイヤー15は、通し穴39に嵌合されて固定されている。この場合、ワイヤー15の屈曲点38は、壁体32の厚さ分の距離離間することになるが、この距離L1は、予め決まっている一定の値であるので、計算データに入力して補正することとなる。
【0053】
図8は本発明に係る管路位置測定システムを実施するための最良の他の形態を示した節点の拡大断面図である。
【0054】
かかる実施の形態は、壁体32に設けられた通し穴41の両端にテーパ43を形成したことを特徴とする。ところで、図7の実施の形態では、ワイヤー15自身の剛性により、屈曲点38から直ぐには屈曲せずに、少し離反した場所で折れ曲がり、角度検出装置12での角度検出値に若干の誤差が発生していたが、本実施の形態によれば、テーパ43を形成したことで、ワイヤー15がテーパ43の表面に沿って屈曲できるので、図7のような屈曲点38の誤差を低減させることができる。また、通し穴41でのワイヤー15の嵌合長さ(支持区間)L3を短くすることができるので、屈曲点38間の距離を短縮することができ、計測精度を向上させることができる。さらに、ワイヤー15を通し穴41に嵌挿させる場合には、嵌合長さが短いことで、通し穴41の径を最小限にすることができ、ワイヤー15のがたつきをなくすことができる。
【0055】
図9は本発明に係る管路位置測定システムを実施するための最良のさらに他の形態を示した構成図である。
【0056】
かかる本実施の形態は、線状体11に光ファイバ44を用いたことを特徴とする。光ファイバ44は、基点部8から管路4の先端部5まで通して連続的に形成されている。光ファイバ44の基端部8には、光ファイバ44に張力を与えるウェイト23が取り付けられている。光ファイバ44には、その歪みを測定する光ファイバ歪み測定器45が設けられている。
【0057】
この構成によれば、光ファイバ歪み測定器45で、光ファイバ44の歪みを測定することにより、光ファイバ44の張力を算出して、節点9間の光ファイバ44の懸垂曲線を求めることができる。これによって、実際の光ファイバ44の位置と、節点9間を直線状に結ぶライン(図中、破線にて示す)との誤差角度αを算出できる。したがって、この誤差角度αをコンピュータに取り込むことで、角度検出装置12,14による角度検出の補正を行うことができるので、角度測定の精度をさらに向上させることができる。
【0058】
以上、本発明を実施するための複数の形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、線状体は、可撓性を有するワイヤーや光ファイバに限られることはなく、ロッド等であってもよい。この場合、ロッドは常に直線状であるので、張力発生器を省略することができる。
【0059】
また、本発明は、推進工法以外の工法であっても、シールド工法による施工等において見通しの効かない管路の施工時に適用できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る管路位置測定システムを実施するための最良の形態を示した断面図である。
【図2】基点部の角度検出装置を示した概略構成図である。
【図3】節点の角度検出装置を示した概略構成図である。
【図4】角度検出装置での角度測定を説明するための説明図である。
【図5】推進工法によるトンネル施工状態を示した断面図である。
【図6】節点におけるワイヤーの支持状態を示し概略断面図である。
【図7】本発明に係る管路位置測定システムを実施するための他の形態を示した節点の拡大断面図である。
【図8】本発明に係る管路位置測定システムを実施するための最良の他の形態を示した節点の拡大断面図である。
【図9】本発明に係る管路位置測定システムを実施するための最良のさらに他の形態を示した構成図である。
【符号の説明】
【0061】
3 推進管
4 管路
5 (管路)先端部
7 管路位置測定システム
8 基点部
9 節点
11 線状体
12 角度検出装置
14 角度検出装置
15 ワイヤー
16 張力発生器
19 ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法やシールド工法等によって地中に形成される管路の先端部の位置を測定する管路位置測定システムにおいて、
固定された基点部と推進していく管路先端部との間に掛け渡されるとともに、前記基点部より繰り出され、所定の位置に屈曲部または屈曲可能に連結される連結部である節点を有する線状体と、
前記線状体の前記節点を挟むように設けられ、前記基点部側と前記先端部側の前記線状体の軸方向角度をそれぞれ検出する角度検出装置と、
前記基点部を含むように設けられ、前記線状体の軸方向角度を検出する角度検出装置とを備え、
前記各角度検出装置で検出された前記線状体の軸方向角度と、前記線状体の長さとから隣接する前記線状体の節点の座標を、前記基点部より順次算出して、前記管路先端部の位置を測定するように構成したことを特徴とする管路位置測定システム。
【請求項2】
前記線状体が、ワイヤーにて構成され、
該ワイヤーには、前記基点部とこれに隣接する前記節点間、および互いに隣接する前記節点間、および前記管路先端部とこれに隣接する前記節点間の前記各ワイヤーの撓みがそれぞれ最小になるような張力を当該ワイヤーに加える張力発生器が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の管路位置測定システム。
【請求項3】
互いに隣接する前記節点間、および前記管路先端部とこれに隣接する前記節点間の前記ワイヤーには、前記張力発生器がそれぞれ設けられ、
この張力発生器は、前記ワイヤーの同軸上に設けられ当該ワイヤーにその長さが縮退する方向にばね力を付勢するばね部材にて構成されることを特徴とする請求項2に記載の管路位置測定システム。
【請求項4】
前記線状体が、前記基点部から前記管路先端部まで連続的に形成された光ファイバにて構成され、
該光ファイバには、その歪みを測定する光ファイバ歪み測定器が設けられ、
該光ファイバ歪み測定器で歪みを測定することにより光ファイバの張力を算出して、前記節点間の光ファイバの懸垂曲線を求めて、前記角度検出装置による検出角度の補正を行うように構成したことを特徴とする請求項1に記載の管路位置測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−284359(P2006−284359A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104556(P2005−104556)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(599130874)コマツ地下建機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】