説明

箱体

【課題】内部に収納する保冷剤の脱落がなくなる紙箱(箱体)を提供する。
【解決手段】上端に係止片36を有する保冷剤収納板53を側壁3上縁に連設し、保冷剤収納板53を折って箱内部に保冷剤の収納空間を形成させる際に、係止片36を側壁3上縁の折り目20上に設けた切り目37から箱外部に引き出し起立させるように構成した紙箱(箱体)において、係止片36の下端側の幅方向両側には、切り目37の幅方向寸法よりも幅方向外側へ張り出した落下防止突部50,50が形成されているとともに、落下防止突部50,50の下側には、幅方向内側へ凹ませて切り目37の幅方向端縁に引っ掛かる引っ掛かり凹部51,51が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ,惣菜,和菓子,医薬,臨床試薬等を入れて運ぶことのできる箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、側壁に一体状に形成した保冷剤収納板を折り曲げて内部に保冷剤を収納させ、この保冷剤からの冷気により箱内に収納するケーキ等を保冷しながら持ち帰りできるように構成した紙箱が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3047579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている紙箱では、保冷剤収納板を折り曲げて形成された収納部内に収納される保冷剤の重さが重い場合には、係止片が側壁に形成された差込口から抜けやすく、そのため、輸送中に保冷剤が収納部から脱落して、箱内部に収納されているケーキ等に当たり、ケーキ等を潰してしまう虞があるという問題点があり、また、複数の紙箱を積み上げ状に重ねて持ち運ぶことはできないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、保冷剤が脱落することのない箱体の提供、および、2以上積み重ねできる箱体の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、上端に係止片を有する保冷剤収納板を側壁上縁に連設し、該保冷剤収納板を折って箱内部に保冷剤の収納空間を形成させる際に、前記係止片を前記側壁上縁の折り目上に設けた切り目から箱外部に引き出し起立させるように構成した箱体において、
前記係止片の下端側の幅方向両側には、前記切り目の幅方向寸法よりも幅方向外側へ張り出した落下防止突部が形成されているとともに、該落下防止突部の下側には、幅方向内側へ凹ませて前記切り目の幅方向端縁に引っ掛かる引っ掛かり凹部が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の箱体では、係止片の下端側に幅方向外側へ張り出して落下防止突部が形成され、更にその下側には、幅方向内側へ凹ませて引っ掛かり凹部が形成されているため、側壁上縁の折り目上に設けた切り目から係止片を引き出して起立させた時に、係止片が下方側へ抜脱することがない。
即ち、係止片が切り目から抜脱することが落下防止突部と引っ掛かり凹部により確実に防がれるため、収納空間内に重さの大なる保冷剤を収納する場合でも、収納空間が下方側へ垂れ下がって内部のケーキ等に当たることがなく、また、保冷剤が収納空間から脱落することもないため、箱体内に収納されるケーキ等に保冷剤が輸送中に当たることはなく、ケーキ等を良好な状態で持ち運ぶことができるものとなる。
【0007】
また、本発明は、上端に係止片を有する保冷剤収納板を側壁上縁に連設し、該保冷剤収納板を折って箱内部に保冷剤の収納空間を形成させる際に、前記係止片を前記側壁上縁の折り目上に設けた切り目から箱外部に引き出し起立させ、該係止片に形成した切り目内に取っ手端部の引っ掛け片を引っ掛けるように構成した箱体において、
前記係止片の切り目は扇状に形成されて、該扇状の切り目に沿って前記取っ手を起立状態から水平状態に倒すことができるように構成したことを要旨とする。
こうすれば、係止片の切り目内に取っ手の引っ掛け片を引っ掛けた状態で、扇状の切り目に沿って取っ手を水平状態に倒すことができるため、取っ手を水平状態に倒すことで複数の箱体の積み重ねが容易なものとなり、2以上の箱体を積み上げて手提げ袋内等に入れて持ち運ぶことができる。
【0008】
また、本発明の箱体は、内側面には抗菌剤が付着され、外側面には永久帯電防止剤が付着されているものとすることもできる。
こうすれば、抗菌剤による抗菌,殺菌作用によりサルモネラ菌,黄色ブドウ球菌,主にグラム陰性菌の増殖抑制やノロカシスウイルスの箱体からの二次感染を防ぐことができ、また内部に収納される食品等の臭いをも防ぐことができるものとなる。
また、箱体の外側面には永久帯電防止剤が付着されているため、箱体への埃や汚れの付着を良好に防止できるものとなる。
【0009】
また、本発明の箱体は、前記保冷剤収納板や前記取っ手などの部分には、収納される保冷剤が食べられないことを表示する点字による表示部が設けられているものとすることもできる。
こうすれば、目が見えにくい老人等が、点字により、内部に収納されている保冷剤が食べられないものであることを確実に認識することができる。
【0010】
また、本発明の箱体には、該箱体の履歴情報等の管理ができるICタグ或いは二次元コードが付設されているものとすることもできる。
こうすれば、例えば箱体を個別のお客毎に専用のものとして何回も繰り返し使うことができ、そのお客の家に持ち帰るまでの時間や外気温等を記録することができ、内部に収納させる保冷剤の量をお客毎に調整する等の管理が良好に行えるものとなる。
【0011】
また、本発明の箱体は、プラスチック製であるものとすることもできる。
こうすれば、何回も繰り返し使うことができるものとなる。
【0012】
また、本発明の箱体のプラスチック内には抗菌剤や帯電防止剤が練り込まれているものとすることもできる。
こうすれば、抗菌剤による抗菌,殺菌作用により菌の増殖を防ぐことができ、また内部に収納される食品等の臭いを防ぐことができるものとなる。
また、帯電防止剤により、箱体への埃や汚れの付着を良好に防止できるものとなる。
【0013】
また、本発明の箱体のプラスチックは、二層あるいは三層構造であるものとすることもできる。
こうすれば、箱体の断熱効果や予冷効果を高めることができ、箱体内部に収納される食品等の温度上昇を防げるものとなる。
【0014】
また、本発明の箱体のプラスチックの二層あるいは三層構造の内部に、特定の温度で変色する示温塗料,示温インクの部分が設けられているものとすることもできる。
こうすれば、示温塗料,示温インキの変色により、箱体の温度が上昇していることが容易に視認でき、使用者に注意を促すことができる。
【0015】
また、本発明の箱体のプラスチックの二層あるいは三層構造の内部に、太陽光が当たると色がつく紫外線変色剤が設けられているものとすることもできる。
こうすれば、箱体に光が当たって温度が上昇してくる時に箱体に色がつき、遮光効果が得られて、箱体内部に収納されている食品等の温度上昇を防げるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】紙箱(箱体)の外側から視た展開図である。
【図2】図1の展開図の要部拡大図である。
【図3】紙箱を組み立てる過程における斜視構成図である。
【図4】紙箱の保冷剤収納板の折り曲げ工程の第1段階の要部斜視図である。
【図5】更に保冷剤収納板を折り曲げた第2段階の要部斜視構成図である。
【図6】図5の折り曲げ状態を別の方向から視た要部拡大斜視構成図である。
【図7】更に折り曲げて収納空間を形成させた状態の第3段階の保冷剤収納板の要部拡大構成図である。
【図8】完全に折り曲げて係止片を箱から上方へ突出させた保冷剤収納板の折り曲げ完了状態の要部斜視構成図である。
【図9】左右の保冷剤収納板をそれぞれ折り曲げて左右に保冷剤の収納部を形成させ、この収納部を内側へ水平状に移動させてゆく状態の断面概略構成図である。
【図10】左右に保冷剤の収納部を形成させて保冷剤を入れた状態で、その上面を蓋し、取っ手の引っ掛け片を係止片に係止させる状態の斜視構成図である。
【図11】取っ手の引っ掛け片を係止片に係止させた状態の要部拡大斜視構成図である。
【図12】2個の完成した箱体を積み上げた状態の斜視構成図である。
【図13】取っ手と係止片を水平に倒した状態の紙箱の斜視構成図である。
【図14】紙箱(箱体)の変形例の外側から視た展開図である。
【図15】プラスチック製の箱体の外側から視た展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、紙箱(箱体)の展開図であり、図2は、その要部拡大図である。
紙箱(箱体)1は、前後側壁2と左右側壁3と前後側壁4と左右側壁5が図示左側から右側に向かって横方向に連続して形成されており、それぞれの境い目には折り目8,9,10が形成されている。また、前後側壁2の左端には、折り目7を介在させて接着片6が横方向に連続して形成されている。
【0018】
この前後側壁2の下部には、折り目11を介在させて底板15が下方に形成され、左右側壁3の下方には、折り目12を介在させて底板16が形成され、前後側壁4の下方には、折り目13を介在させて底板17が形成され、左右側壁5の下方には、折り目14を介在させて底板18が形成されている。
【0019】
また、前後側壁2の上方には、折り目19を介在させて上蓋23が形成され、上蓋23の上方には、折り目27を介在させて取っ手30が形成されている。また、左右側壁3の上方には、折り目20を介在させて天板部24が形成され、天板部24の上方には、内側壁部33、更にその上方に底板部34、更にその上方に外側壁部35、更にその上方に係止片36が連続形成されている。
【0020】
また、前後側壁4の上方には、折り目21を介在させて上蓋25が形成され、この上蓋25の上方には、折り目27を介在させて取っ手30が形成されている。
更に左右側壁5の上方には、折り目22を介在させて天板部26が形成され、天板部26の上方には、内側壁部33と更にその上方に底板部34、更にその上方に外側壁部35、更にその上方に係止片36が連続形成されている。
【0021】
図2の要部拡大図で示すように、左右側壁3,5の上縁の折り目20,22には、折り目20,22に沿って横方向に、差込口となる切り目37が形成されており、切り目37の左右端幅方向両端は斜め上方へ上傾して切り込まれた傾斜切り目37a,37aとなっている。
天板部24,26の上縁には折り目38が形成され、折り目38の上方の内側壁部33の幅方向両端側には、三角形状の三角部33a,33aがミシン目44,45で仕切られて形成されている。ミシン目44は、折り目39と連続して横方向に形成されたものであり、ミシン目45は、外側へ向かって下傾状に形成されたものである。
【0022】
折り目39の上方には、底板部34が連続形成されており、この底板部34の幅方向両端側には、それぞれ折り目41,41を介在させて側蓋片42,42が連続形成されている。
この折り目41,41の上下方向中央部には、円形状の冷気放出口43,43がそれぞれ形成されており、また、底板部34の中央部から内側壁部33に至るまで楕円形状に開口された冷気放出口43が形成されて、合計3個の冷気放出口43,43,43が形成されている。
【0023】
底板部34の上縁の折り目40の上方には外側壁部35が形成され、外側壁部35の上縁の折り目52の上方に係止片36が連続形成されている。
この係止片36には、扇状に切り抜いて扇状切り目46が形成されており、この扇状切り目46内には、折り目47を介して揺動可能に揺動片48が設けられている。また、係止片36の幅方向両端側には、係止片36の下端側が外方向へ張り出した落下防止突部50,50が一体形成されており、両側の落下防止突部50,50のそれぞれの下方には、幅方向内側へ凹ませて略V字状の引っ掛かり凹部51,51が形成されている。
【0024】
なお、落下防止突部50,50のそれぞれの内側には罫線49,49が形成されており、この罫線49,49を介しそれぞれ落下防止突部50,50を直角に折り曲げることができるように構成されている。
また、上蓋23,25の上縁の折り目27の中央部には、上方へ向かってコの字状に切り目28が形成され、この切り目28に囲まれた部分は上蓋23,25から連続する突部29となっており、その上方に取っ手30が折り目27を介して折り曲げ可能に設けられ、切り目28内に手を入れることで取っ手30を手で握ることができるように構成されている。
取っ手30の幅方向両端側には、下方側へ凹ませて係止凹部32,32が形成され、係止凹部32の外側には、立ち上げ状に引っ掛け片31,31がそれぞれ一体形成されている。
【0025】
この図1および図2に展開図で示す紙箱1の外側面には、永久帯電防止剤がコーティングまたは塗布されており、紙箱1の内側面には抗菌剤がコーティングまたは塗布されている。
永久帯電防止剤は埃や汚れを防止するためのものであり、例えば、ポリエーテルエステルアミドが0.5〜20%練り込まれたポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアミド等のフイルムを紙箱1にラミネートまたは熱コートしても良い。その他、永久帯電防止剤として、ポリアミドエラストマー,四級アンモニウム塩基体含有共重合体,ベンゼンスルホン酸金属塩誘導体を有するポリウレタンコート等の素材をコーティングしたものであっても良い。
なお、帯電防止剤としては、例えば特開平11−140243号公報に開示されているようなもの、或いは特開2002−12722号公報に開示されているようなもの、その他、特開2010−132927号公報に開示されているようなものを用いることができる。
【0026】
また、内側の抗菌剤は、ナノ粒子化された銀,酸化チタン,亜鉛,フッ化アパタイトの何れかを組み合わせて紙に漉き込み、または熱可塑性樹脂に練り込んで、ラミネートし、紙箱1に貼り付けて設けることができ、サルモネラ菌,黄色ブドウ球菌,主にグラム陰性菌の増殖抑制やノロカシスウイルスの箱体からの二次汚染を防ぎ、また、臭いも防ぐことができるものである。
【0027】
図1および図2に展開図で示した紙箱1は、接着片6に接着剤を塗布して、左右側壁5に貼り合わせた状態で、折り畳まれて、ケーキ店や惣菜店或いは和菓子店或いは医薬や臨床試薬を扱う医療関係機関或いはふぐ刺し等を扱う料理店等に納入されて、これらの店等に保存され、適宜組み立てて、内部にケーキ或いは惣菜,ふぐ刺し,和菓子,医薬,臨床試薬等を入れて、保冷剤により冷却しながら持ち運ぶことができるものである。
【0028】
店等において紙箱1を組み立てる際に、図3の斜視図で示すように、左側保冷剤収納板53,右側保冷剤収納板54を折り曲げて、それぞれ箱内の前後の位置に保冷剤を収納する収納空間Sを形成させることができ、この前後のそれぞれの収納空間S内に保冷剤を収納させた状態で、上蓋23,25を上方から蓋して、それぞれの取っ手30の引っ掛け片31を係止片36の扇状切り目46内に係止させて組み立てることができるものである。
【0029】
先ず、保冷剤収納板53,54の折り曲げ工程を順次図示する。
図4では、左側保冷剤収納板53を示しており、天板部24を外側へ水平状態にした状態で、内側壁部33および底板部34および外側壁部35を起立させ、係止片36を折り目52を介して水平に折り曲げる。
この状態で天板部24上に保冷剤60を載せて、ミシン目44,45を介して三角部33aを内側壁部33に重ね合わせ状として、左右の側蓋片42,42をそれぞれ折り曲げ、係止片36を切り目37に上方から差し込んで、係止片36を側壁3,5の外側へ図5のように配置する。なお、係止片36を切り目37に差し込む際に、係止片36の外方向へ張り出した落下防止突部50,50は傾斜切り目37a,37a内を通して差し込まれる。
【0030】
この図5の状態では、天板部26と底板部34と外側壁部35と内側壁部33と側蓋片42,42により内部に収納空間が形成され、この収納空間内には保冷剤60が収納された状態となる。
なお、ミシン目44,45が形成されているため、側蓋片42,42の折り曲げはスムーズに行うことができるものである。
なお、図6は、図5の折り曲げ状態を違う方向から視た斜視構成図である。
【0031】
次に、この状態で図7のように、天板部24,26を起立状態にさせ、更に図8のように、天板部24,26を内側へ回転させて水平状態とすると、外側壁部35が側壁2,5に当接した状態となり、天板部26は水平に維持される。
この状態では、係止片36は切り目37から上方へ起立した状態で突出し、係止片36の下端側の引っ掛かり凹部51が切り目37の幅方向端部に引っ掛かった状態となり、更にその上方の落下防止突部50,50は切り目37の幅方向寸法よりも外側へ張り出して配置されるため、収納空間S内に重さの大なる保冷剤60が収納された場合でも、係止片36は下方側へ抜け落ちることはなく、天板部26は良好に水平状態を維持して、内部に収納されている保冷剤60が収納空間Sから脱落することはない。
【0032】
なお、図9は、箱内にケーキを入れた状態を示しており、このケーキの上方に前後の収納空間S,Sが水平に配置されて、内部に収納されている保冷剤60から良好に冷気が上方よりケーキに流れ込むものであり、本例では、中央部に楕円状をなし、更に左右側に円形状をなす冷気放出口43,43,43が3個形成されているため、冷気は中央部および左右幅方向両端側からそれぞれ箱内に流れ込んで、前後の収納空間S,S内部に収納されている保冷剤60からの冷気の対流が箱内中央にでき、箱内を冷気により均一に保冷することができるものである。
【0033】
次に、図10に示すように、収納空間S,Sを形成する前後の天板部24,26の上面に上蓋23,25を被せて、折り目27を介して左右の取っ手30,30を起立させ、各取っ手30,30の前後端側に形成されている引っ掛け片31,31を、それぞれ係止片36に形成されている扇状切り目46内に差し込み、扇状切り目46の上端に係合凹部32を係合させる。この状態の要部を図11に拡大して示す。
【0034】
組み立て完了状態では、図12のような状態となり、上面側で取っ手30,30が重ね合わされて、切り目28内に手を入れることで取っ手30,30を持ち上げることができ、手で紙箱1を持ち運びできるものである。
【0035】
なお、本例では、各係止片36,36には扇状の扇状切り目46が形成されているため、この扇状切り目46内の揺動片48を折り目47を介して内側に折り曲げておけば、扇状切り目46に沿って引っ掛け片31を起立状態から水平状態に倒すことができるものである。即ち、取っ手30,30を起立状態から水平状態に折り畳むことができ、更に、係止片36,36も折り目52により折り畳むことができる。この折り畳んだ状態は図13に示す。
【0036】
この図13の状態では、その上方に別の組み立てた紙箱1を重ね合わせることができ、図12のように、2以上の組み立てた紙箱を重ね合わせて、この重ね合わせた複数の紙箱1,1を手提げ袋などに入れて、手提げ袋内に複数の紙箱を入れて持ち運ぶことができ、ケーキ等を一度に大量に持ち運ぶことができる。
なお、各係止片36に形成されている罫線49,49を介して落下防止突部50,50を外側へ90°折り曲げておけば、係止片36の下方側への抜け落ちは更に強固に防止されるものであり、持ち運び中に保冷剤60が収納空間S,Sから箱内に脱落してケーキ等を潰すようなことは全く無くなり、良好な状態でケーキ等を持ち運べるものとなる。
【0037】
なお、ケーキ等は、例えば耐熱素材で形成された底の広いガゼット袋に入れて、そのガゼット袋を組み立てた紙箱1内に入れるようにすれば、紙箱1には食品が直接触れないため、紙箱1は水洗いや乾燥が楽なものとなり、アルコール消毒等をして何回でも繰り返し使うことができるものとなり、不特定のユーザーに紙箱が使用されても、常に衛生的に保持できるものである。
なお、例えば惣菜などは、このようにカゼット袋に入れた状態で紙箱1内に収納させることで、紙箱1からガゼット袋を取り出して直接電子レンジ等に入れることもでき、ガゼット袋ごと電子レンジに入れて温め、惣菜などを直ぐ食べることができるものとなる。
【0038】
なお、図13に示すように、紙箱1の外面或いは内面にICタグCを貼り付け等で付設しておけば、紙箱1の行方の追跡,管理や、紙箱1の履歴情報を良好に管理できるものとなる。
例えば、個別のお客に紙箱1を使用させる際に、お客の、店から自宅へ帰るまでの時間などをICタグCに記録し、また、ICタグC内に温度計を設けておけば、外気温が37℃以上ある時などを記憶して、紙箱1の内側の温度との比較で、内部に収納する保冷剤の量を調整することも可能となる。
このように、紙箱を、個別のお客毎に専用のものとして何回も繰り返し使うことができ、そのお客の家に持ち帰るまでの時間や外気温等を記録することで、内部に収納させる保冷剤の量をお客毎に調整する等の管理が良好に行えるものとなる。
【0039】
また、紙箱1の外側に二次元コードである例えばQRコードを付設させておき、これにより管理を行うこともできる。例えば、お客が家に着いた時点で、携帯電話でQRコードを写真で撮り、メールで店へ発信することで、帰るまでの時間などの管理ができるものである。
【0040】
なお、内部に収納される保冷剤60は、どのようなタイプのものでも良いが、例えば不織布の布で包んだ構造のものであれば、水滴が落ちることが防がれるものとなる。即ち、結露水が、ケーキ等に落下することを良好に防ぐことができるものとなる。
また、水分活性値が、内部に収納される食品等よりも高い通気性を有する保冷剤60を用いることで、保冷剤60内の水が外に出て、ケーキ等の水分の蒸発を防ぐことができ、ケーキ等の食品の水分を減らすことなく甘み成分の保持ができ、食品等の風味を失うことなく持ち運べるものとなる。
【0041】
なお、目が見えにくい老人等が保冷剤60を食べないようにするために表記する点字表示は、発泡インクによるもの、或いは、テープの凹凸刻印による貼り付け等が考えられる。
【0042】
なお、本例の紙箱1は、バイキング料理店や回転寿司店等において、食べ残しを家に持ち帰る際にも使用することができ、食べ残しをこの紙箱1内に入れて、鮮度保持しながら家に持ち帰ることができるものとなる。
【0043】
図14は、紙箱1の変形例を示すものである。
この図14では、冷気放出口43を、縦長小判状の2個の冷気放出口43,43としたものであり、また、底板15,16,17,18を変更したものである。
底板16には、底板15に貼着される接着部16aを折り曲げ可能に設け、また、底板18にも、底板17に貼着される接着部18aを折り曲げ可能に形成したものである。また、底板17は、底面のほぼ全域を占めるような面積に形成したものである。
予め接着部16aを底板15に貼り付けておき、また、接着部18aを底板17に予め貼り付けておいて、箱形状に組み立てることができるように構成したものであり、底板15,16,18で底面を形成させた状態で、その上面に二重構造となるように更に底板17を重ね合わせて、底板17で底面のほぼ全域を覆い、組立状態で上方から箱内を覗いた時に、底板17が底面全域に亘り敷設されて見えるように構成したものである。
その他の部分は、図1のものと同様であり、同一符号を付してその説明は省略する。
【0044】
次に、図15において、展開図で示すものは更なる変更例であり、この図15に展開図で示す箱体は、プラスチック製のものであり、熱可塑性樹脂である例えばポリエチレン,ポリプロピレン等で全体が形成されており、或いはポリエチレン,ポリプロピレン内に発泡剤を入れた板状の素材で形成されている。
【0045】
この図15に展開図で示すプラスチック製のものでは、プラスチックの内部に予め銀イオン等の抗菌剤および高分子型帯電防止剤が練り込まれて、0.5mm〜0.6mmの厚みの板状に形成されたものである。
プラスチック製であるため、図1或いは図14に示す紙箱1のように、接着片に接着剤を塗布して接合させることができないため、接着することなく組み立てできるように構成されている。
【0046】
即ち、図15の展開図のように、中央部に底板15が配置され、この中央部の底板15から左右側に対称状に延びて左右側壁3,5が折れ目12,14を介しそれぞれ折り曲げできるように形成されており、更に左右側壁3,5の先端に、連続して天板部24,26がそれぞれ形成され、更に天板部24,26の先端に、左側保冷剤収納板53,右側保冷剤収納板54がそれぞれ折り曲げ可能に連続形成されたものである。
また、底板15の上下方向には、折れ目11,13を介してそれぞれ前後側壁2,4が折り曲げ可能に連続形成されており、前後側壁2,4の先端には、それぞれ上蓋23,25が連続し、更にその先端に取っ手30,30が連続形成されたものである。
なお、左側保冷剤収納板53および右側保冷剤収納板54は、図1および図14のものと同様な形状に形成されている。
【0047】
更に図15では、左右側壁3,5に、それぞれ上下方向に連続して内側前後側壁3a,3a,5a,5aが一体形成されている。
即ち、左右側壁3の図示上側および下側にそれぞれ対称状に折り曲げ可能に連続して内側前後側壁3a,3aが一体形成されており、各内側前後側壁3a,3aの先端側には、係合切り目3b,3bが形成されて、係合片3c,3cが形成されている。
左右側壁5にも同様に上下に対称状に折り曲げ可能な内側前後側壁5a,5aが形成され、各内側前後側壁5aの先端には係合切り目5bを有する係合片5c,5cが形成されている。
なお、その他の部位、特に左側保冷剤収納板53および右側保冷剤収納板54の部分の形状は、図1および図14のものと同様であり、同一部位には同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
この図15のプラスチック製のものでは、底板15に対し折り目12,14を介して左右側の左右側壁3,5を起立させ、この状態で、内側前後側壁3a,3a,5a,5aを底板15の折り目11,13側に折り曲げて、内側前後側壁3aの係合切り目3bと内側前後側壁5aの係合切り目5bを上下にスライドさせて互いに噛み込ませて、内側前後側壁3aと内側前後側壁5aを連結することができ、内側前後側壁3aと内側前後側壁5aを連結した後に、その外側に前後側壁2,4を起立させて組み立てることができるものであり、接着剤を用いることなく組み立てが可能なものとなっている。
【0049】
なお、図15に展開図で示すようなプラスチック製のものでは、図15のような展開状態で、キャンプ地等でまな板としても使用することができ、プラスチック内部には抗菌剤が練り込まれているため衛生的に使用することができるものとなり、まな板として使用して野菜等を切った後に、組み立てて箱体として、切った野菜等を内部に収納して良好な保冷状態で持ち運ぶこともできるものである。
【0050】
なお、医薬や臨床試薬等を箱体に入れて保冷しながら運ぶような場合には、特定の者しか箱体を開くことができないように、取っ手30,30の部分に錠前等を取り付けておくこともでき、この錠前を開くための暗証番号あるいはダイヤル番号等は、箱体に付設した二次元コードである例えばQRコードを読み込むことにより知ることができるように構成しておくこともできる。
【0051】
なお、プラスチック製の箱体は、熱可塑性樹脂の板を二層構造にして、内側に空気層が形成された0.5mm〜0.6mm位の厚みの中空構造のもので構成することもできる。
プラスチック製の中空構造のものでは、内部の空気層により断熱効果を高めることができ、箱体内部に収納される食品等の温度上昇を防げるものであり、更には、プラスチック製の箱体を冷蔵庫内に入れて予冷しておくことにより、空気層内に冷気が入り、箱体の予冷効果が向上するものとなる。
【0052】
更に、プラスチック製の箱体は、プラスチック板の三層構造であっても良く、この場合、内側と外側のプラスチック板には抗菌剤,帯電防止剤を練り込んでおき、中間層のプラスチック板には、示温塗料あるいは示温インキで変色部分を形成させておくことができる。
例えば25℃以上に温度が上昇した時に、「要冷蔵」とか、「早く冷やして」などの示温塗料あるいは示温インキの文字が浮かんでくるように構成しておくこともでき、示温塗料,示温インキの変色により、箱体の温度が上昇していることが容易に視認でき、使用者に注意を促すことができる。
なお、示温塗料,示温インキには、冷却しても元の色に戻らない不可逆性のものがあり、医薬等を入れる箱体の場合には、この不可逆性の示温塗料,示温インキで変色部分を形成させておくと良い。
【0053】
更には、太陽光が当たると紫外線を吸収して色がつく紫外線変色剤を、三層構造の中間層のプラスチック板の全体に練り込ませるか塗布等して構成しても良い。
このようなものでは、箱体に光が当たって温度が上昇してくる時に箱体に色がつき、遮光効果が得られて、箱体内部に収納されている食品等の温度上昇を防げるものとなる。
なお、プラスチックの二層構造あるいは三層構造の場合に、端面の開口部分は閉じるような構成とすることが望ましい。
【符号の説明】
【0054】
1 紙箱(箱体)
2,4 前後側壁
3,5 左右側壁
3a,5a 内側前後側壁
3b,5b 係合切り目
3c,5c 係合片
6 接着片
7,8,9,10,11,12,13,14,19,20,21,22,27,38,39,40,52 折り目
15,16,17,18 底板
23,25 上蓋
24,26 天板部
28 切り目
29 突部
30 取っ手
31 引っ掛け片
32 係合凹部
33 内側壁部
34 底板部
35 外側壁部
36 係止片
37 切り目(差込口)
37a 傾斜切り目
42 側蓋片
43 冷気放出口
44,45 ミシン目
46 扇状切り目
48 揺動片
49 罫線
50 落下防止突部
51 引っ掛かり凹部
53 左側保冷剤収納板
54 右側保冷剤収納板
60 保冷剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に係止片を有する保冷剤収納板を側壁上縁に連設し、該保冷剤収納板を折って箱内部に保冷剤の収納空間を形成させる際に、前記係止片を前記側壁上縁の折り目上に設けた切り目から箱外部に引き出し起立させるように構成した箱体において、
前記係止片の下端側の幅方向両側には、
前記切り目の幅方向寸法よりも幅方向外側へ張り出した落下防止突部が形成されているとともに、該落下防止突部の下側には、幅方向内側へ凹ませて前記切り目の幅方向端縁に引っ掛かる引っ掛かり凹部が形成されている
ことを特徴とする箱体。
【請求項2】
上端に係止片を有する保冷剤収納板を側壁上縁に連設し、該保冷剤収納板を折って箱内部に保冷剤の収納空間を形成させる際に、前記係止片を前記側壁上縁の折り目上に設けた切り目から箱外部に引き出し起立させ、該係止片に形成した切り目内に取っ手端部の引っ掛け片を引っ掛けるように構成した箱体において、
前記係止片の切り目は扇状に形成されて、該扇状の切り目に沿って前記取っ手を起立状態から水平状態に倒すことができるように構成した
ことを特徴とする箱体。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の箱体の内側面には抗菌剤が付着され、箱体の外側面には永久帯電防止剤が付着されていることを特徴とする箱体。
【請求項4】
前記保冷剤収納板や前記取っ手などの部分には、収納される保冷剤が食べられないことを表示する点字による表示部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の箱体。
【請求項5】
前記箱体には、該箱体の履歴情報等の管理ができるICタグ或いは二次元コードが付設されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4に記載の箱体。
【請求項6】
前記箱体は、プラスチック製であることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項4または請求項5に記載の箱体。
【請求項7】
前記プラスチック内には抗菌剤や帯電防止剤が練り込まれていることを特徴とする請求項6に記載の箱体。
【請求項8】
前記プラスチックは、二層あるいは三層構造であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の箱体。
【請求項9】
前記プラスチックの二層あるいは三層構造の内部に、特定の温度で変色する示温塗料,示温インクの部分が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の箱体。
【請求項10】
前記プラスチックの二層あるいは三層構造の内部に、太陽光が当たると色がつく紫外線変色剤が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の箱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−184102(P2011−184102A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156262(P2010−156262)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000132862)株式会社タイヘイ産商 (3)
【Fターム(参考)】