説明

節電モーター

【課題】 モーターの軸にフライホイールを固定してエネルギーを蓄積し、非通電時に前記フライホイールに蓄積したエネルギーを放出してモーターの回転を維持することにより、モーターの消費電力を節減することを課題とする。
【解決手段】
モーターの軸にフライホイールを固定すると共に、前記モーターの入力回路に自動断接スイッチを介装したことを特徴とする節電モーターにより上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用電気量を可及的に低減させることを目的とした節電モーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モーターの使用電気量を低減させる技術については色々提案されており、それぞれ相当の成果を挙げている。例えば、モーターに用いている電磁石に代えて永久磁石を採用した発明があり、永久磁石と電磁石とを併用して使用電力量を2分の1以下にした発明もあるが、前記電磁石に送る電流を減少させて同一出力を得る節電モーターについては未だ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−195129号公報
【特許文献2】特開平10−89823号公報
【特許文献3】特開平9−308196号公報
【特許文献4】特開2005−245079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、モーターにおける通電は、回転開始から停止までほぼ定量(負荷一定として)の電流が流れており、電気が使用されているので、消費電力は負荷時の電流値と時間の積により算出される。然してモーターの回転中における負荷を一定とすれば、一定量の電気を継続して供給しなければならないことは明らかである。
【0005】
一方、回転体に重量があれば、当然慣性を生じるので、通電を停止しても慣性により生じたエネルギーの消費尽くされるまでは、回転が継続される。そこで、回転が継続する間は通電しなくても目的を達成できることになるから、回転継続可能の時間を予め測定しておけば、当該時間は通電を中止しても、回転に支障を生じるおそれがないことは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、通電しなくても回転を継続できる時間を計算し、当該時間の通電を中止すれば中止した時間の電気を節約することができるものである。
【0007】
そこで、通電しなくても自動回転するモーターを検討するに、回転物の性質中慣性を利用すれば、負荷中の短秒時無通電を可能にすることが判明した。ここで、慣性の大きい物(例えばフライホイール)を回転軸に固定すれば、フライホイールの質量に見合う回転エネルギーを蓄積し、これを放出により効率よく節電することができることに成功したのである。
【0008】
この発明は、モーターの軸にその出力に見合う慣性を生成するフライホイールを固定すると共に、モーターの入力回路に通電制御のスイッチを介装することによって前記問題点を解決したのである。
【0009】
従来、回転軸にフライホイールを固定したダイクッション装置の発明がある(特許文献1)。前記発明は、クッション台の押し上げ力による運動エネルギーの一部をフライホイールに蓄積し、これを発電機で回収する発明である。
【0010】
また、軽電力負荷時にフライホイールに蓄積したエネルギーを重電力負荷時に利用する発明も知られている(特許文献2)。
【0011】
さらに、フライホイールと発電機の組み合わせにより余剰力を有効利用した発明も提案されている(特許文献3)。
【0012】
また、従来周縁に所定角度傾斜した永久磁石群が埋設された非磁性体でなる回転部と前記永久磁石群に対向するように前記回転部に近接して配設された電磁石群と、前記永久磁石群の位置を検知する位置センサーと、前記一センサーの検知信号に基づいて前記電磁石にパルス電流を印加するコントローラーと、前記電磁石のコイルから電力を取り出す発電部とを具備し、回転モードと発電モードとの繰り返しによりモーター機能を保存しながら発電をする磁力回転式モーター発電機(特許文献4)が、この発明のモーター発電機には更なる節電について考慮されていなかった。
【0013】
前記特許文献1、2、3に記載された発明は、何れも余剰エネルギーを利用しようとするもので、この発明と趣旨は同一であるが、手段を異にしている。また、特許文献4は発電モーターであるが、節電については考慮されていない。即ち、前記発明は何れも余剰力を有効利用する技術思想又は発電モーターの技術思想であり、余剰力の取り出しに特性がある点がこの発明と異なる。
【0014】
即ち、モーターに通電することによってモーター軸が回転する。そこで、当該モーター軸の定回転(例えば1500rpm)に達した時に、前記通電を遮断しても、暫くの間モーター軸は定速回転を保持することができる。例えば30秒間(1500rpm)経過後回転数の低下が認められるならば、給電停止後30秒経過後再び前記フライホイールに蓄力するまで通電する。前記の場合、通電時間30秒、遮断時間30秒とすれば、2分の1節電したことになる。尤も、スイッチを入れた時に大電流が流れる傾向があるので、節電量は必ずしも2分の1にはならないが、大幅の節電が見込まれることは明らかである。
【0015】
前記モーターとして、特開2005−245079号公報記載の発明を用いれば、前記モーターは通常のモーターに比し、同一出力を得るための電気量が大幅に少ないので(例えば2分の1)、この発明によれば使用電気量はさらに少なくなる(例えば4分の1)。
【0016】
前記によれば、通常のモーターの電気量の4分の1で一定の回転力を継続して付与することができる。
【0017】
即ち、請求項1の発明は、モーターの軸にフライホイールを固定すると共に、前記モーターの入力回路に定格回転継続時間だけスイッチを自動的に切断できる自動断接スイッチを介装したことを特徴とする節電モーターである。
【0018】
請求項2の発明は、自動断接スイッチの切断時間は、モーターの入力回路切断後、モーターの定速回転維持時間としたことを特徴とする請求項1記載の節電モーターである。
【0019】
請求項3の発明は、自動断接スイッチの断接時間は可変としたことを特徴とする請求項1記載の節電モーターである。
【0020】
請求項4の発明は、フライホイールの重量は、モーターの入力回路切断後、定速回転維持時間を選定して、当該定速回転時間を維持時間より長く慣性エネルギーを保有できるように定めることを特徴とした請求項1記載の節電モーターである。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1記載のモーターは、発電機を備えた発電モーターであって、周縁に所定角度傾斜した永久磁石群が埋設された非磁性体で成る回転部と、前記永久磁石に対向するように前記回転部に近接して配設された電磁石群と、前記永久磁石群の位置を検知する位置センサと、前記位置センサの検知信号に基づいて、前記永久磁石に電流を印加するコントローラーと、前記電磁石のコイルから電力を取り出す発電部とを具備し、回転モードと発電モードとの繰り返しにより、モータ機能を行いながら発電を行い得ると共に、モーターの入力を断接することを特徴とした節電モーターである。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、モーターへの入力回路を一定時間宛遮断しても定速回転できるので、遮断時間の消費に相当する電気量を節約することができる効果がある。
【0023】
また、この発明を、永久磁石と電磁石使用のモーターに適用すれば、電磁石の電気量を節減できるので、全体としての使用電気量を著しく節減することができる効果がある。
【0024】
前記モーターの必要電気量が通常のモーターの必要電気量の2分の1とすれば、この発明を応用することによって使用電気量をさらに2分の1に節減することができる。従って、通常のモーターの4分の1の電気量で当該モーターの軸を回転させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)この発明の実施例の正面図、(b)同じくモーターの入力回路図。
【図2】(a)この発明の他の実施例の一部を省略した斜視図、(b)同じく永久磁石と電磁石による回転力発生の説明図、(c)同じく回転力発生の説明図。
【図3】この発明の実施例の駆動系を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明は、モーターの軸に、モーターへの入力電源を遮断しても一定時間定格回転継続できる大きさのフライホイールを固定すると共に、前記モーターの入力回路に前記入力電源を一定時間毎に断接できるスイッチを介装し、前記入力回路の電流の断接に拘わらず、モーター軸を定格回転させるようにしたものである。
【0027】
従って、モーターの出力を勘案しつつ、入力回路の断接時間を定め、これに要するフライホイールの重量を定める必要がある。
【実施例1】
【0028】
この発明の実施例を図1に基づいて説明する。モーター1の軸2にフライホイール3を固定すると共に、モーター1の入力回路4に所定間隔宛に通電を自動断接するスイッチ6を介装したものである。スイッチ6には、自動スイッチ5を並列設置する。図中7は電源との接続器である。
【0029】
前記実施例において、メインスイッチ8を閉にすると、モーター1の回路を完結するので、モーター1は始動する。そこで、モーター1が所定の回転数(例えば1500rpm)に達したならば、自動スイッチ5が開になり、入力回路4はスイッチ6によって保たれる。スイッチ6は所定間隔(例えば30秒)宛に断接するスイッチである。この断接は、モーター1の軸2の回転数が減少し始める前に通電すべく、自動スイッチ5の断接時間を制御してある。
【0030】
前記実施例において、メインスイッチ8を閉にすると、モーター1の回路を完結するので、短時間(例えば60秒以内)にモーター1の軸2は定格回転(例えば1500rpm)となる。この場合に、スイッチ6は閉としてあるが、一定時間経過後(例えば180秒後)自動的に開になるスイッチを用いる。
【0031】
前記180秒の間にモーター1は定格回転数となる。そこで、自動スイッチ5が自動的に開になると、自動スイッチ5が一定時間(例えば180秒)の間隔で開閉する。例えば、180秒通電して定格回転し、次の180秒は通電せずに定格回転を継続し、次の180秒は通電してモーター1の軸2を定格回転させる。
【0032】
前記のようにして、入力回路4は一定時間毎に断接されるが、回転数は一定に保たれる。何故ならば、非通電時の回転力は、フライホイール3の蓄積エネルギーにより一定に保たれるので、モーター1の軸2は入力回路4に通電するか否かにかかわらず、定格回転を保持することができる。従って、連続通電のモーター(普通のモーター)に比し、非通電時間の電力が節減される。
【実施例2】
【0033】
この発明の他の実施を図2に基づいて説明する。フレーム11に回転軸12が軸受けを介して回転自在に架設されている(実施例は縦軸)。回転軸12には、回転力を発生する磁石回転体13及び14が円盤15、16を介して固定されると共に、フライホイール20が固定されている。
【0034】
磁石回転体13、14に対向して電磁石17、18がヨーク19に固定され、電磁石17、18に通電することにより、その磁力線が磁石回転体13、14に作用して円盤15、16を介して回転軸12を回転させることができる。
【0035】
次に、図2(b)、(c)について説明する。図2(b)、(c)は回転力発生の説明図であって、永久磁石32、33、34、35と電磁石25、26、27、28とがそれぞれ対向できるようになっており、電磁石25、26、27、28にパルス電流が流れることによって、回転盤30は矢示31の方向へ回転し、図2(b)の状態から図2(c)の状態となる。さらに矢示32の方向へ回転すると、図2(c)の状態から図2(b)の状態となり、回転力が継続する。
【0036】
前記実施例において、電磁石の入力回路には、図3に示すように、回転位置を検知する検知器36、直流電源37及びリレー38が接続されており、かつ省エネルギーの観点からソーラセル等の充電器39が接続されており、太陽エネルギー等で直流電源37が充電可能となっている。図中17、18は電磁石であって、図2中の電磁石に相当する。即ち、図3は、図2の電磁石の電源回路40を構成している。
【0037】
前記実施例においては、永久磁石32、33、34、35と電磁石25、26、27、28とが近接するごとにパルスを発生し、回転軸12に回転力を付与することになっている。
【0038】
従って、この発明においては、パルスの発生時間とパルスの間隔とを等しくしてある場合に、パルスの間隔をパルスの発生時間の2倍の長さにすれば2分の1の節電となる。
【0039】
前記実施例のモーターは、パルス電流によって電磁石を作用させるので、通常のモーターに比し、消費電気量を著しく少なくできるが、この発明により消費電気量はさらに減少し、著しく少ない電気量(2分の1以下)でモーターを定格回転させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 モーター
2 軸
3 フライホイール
4 入力回路
12 回転軸
13、14 磁石回転体
32、33、34、35 永久磁石
25、26、27、28 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの軸にフライホイールを固定すると共に、前記モーターの入力回路に定格回転継続時間だけスイッチを自動的に切断できる自動断接スイッチを介装したことを特徴とする節電モーター。
【請求項2】
自動断接スイッチの切断時間は、モーターの入力回路切断後、モーターの定格回転維持時間としたことを特徴とする請求項1記載の節電モーター。
【請求項3】
自動断接スイッチの断接時間は可変としたことを特徴とする請求項1記載の節電モーター。
【請求項4】
フライホイールの重量は、モーターの入力回路切断後、定速回転維持時間を選定して、当該定速回転時間を維持できるエネルギーの蓄積ができるように定めることを特徴とした請求項1記載の節電モーター。
【請求項5】
請求項1記載のモーターは、周縁に所定角度傾斜した永久磁石群が埋設された非磁性体で成る回転部と、前記永久磁石に対向するように前記回転部に近接して配設された電磁石群と、前記永久磁石群の位置を検知する位置センサと、前記位置センサの検知信号に基づいて、前記永久磁石に電流を印加するコントローラーと、前記電磁石のコイルから電力を取り出す発電部とを具備し、回転モードと発電モードとの繰り返しにより、モータ機能を行いながら発電を行い得ると共に、モーターの入力を断接することを特徴とした節電モーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−42581(P2013−42581A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176715(P2011−176715)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(503308221)
【Fターム(参考)】