簡易地震計

【課題】高価なセンサ−や信号処理器を必要としない簡便・安価・正確な特徴の地震計を提供する。
【解決手段】台座2の上部には、各震度に相当する丸穴径の丸穴3があけられている。台座2は、基板4と螺子により固定されている。丸穴3の上には、直径20mmの球1が乗せられている。地震発生時に、球1は震度6の地震があったとき、震度6の本震の前に、震度5の球1が台座2から落下する。震度6の本震時に、震度6の球1が台座2から落下する。震度7の球1は、落下しない。
このようにして、落下した球1のうちの最大震度のものが、発生した地震の震度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の横加速度の大きさを判定する簡易な地震計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前は、地震動によって人間や家屋などの体感や被害の大きさで震度を決めていた。近年は地面の揺れを電気信号に変換するフォースバランス・サーボ型の加速度計、「95型震度計」が一般的に使われている。
【0003】
このセンサーは、ケースの中に小さな振り子が組み込まれていて、地面の揺れと一緒に外側のケースが動いていて、中の振り子との相対位置がずれると、そのずれが無くなるように電磁石の反発力を利用して、振り子の位置を常に修正する。振り子の位置を調整するために必要な電磁石の電流が、地面の加速度の大きさに対応しているので、その電流量を得るための電圧から地面の震動の加速度を知ることができる。この震度計は、広範囲な加速度および周波数特性を持っているため、複雑な波形の震動データが排出されるのでフィルター処理等を行い、最大振幅を後述する河角の式に代入し且つ継続時間を考慮して震度を出している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の震度計は、広範囲な加速度および周波数特性を持っているため、複雑な波形の震動データが排出されるのでフィルター処理等を行い、最大振幅を後述する河角の式に代入し且つ継続時間を考慮して震度を出しているので、従来の地震計は複雑で極めて高価である。
従って、本発明は、高価なセンサーや信号処理器を必要としない簡便・安価・正確な地震計を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単に述べると、本発明は、台座の上部に丸穴をあけ、当該丸穴の上に乗せた球が、地震の横揺れ加速度により、球が丸穴から飛び出す構造の地震計であって、丸穴のあいた台座と球(例えばビー玉)から成り立っている。丸穴の直径を変えれば、各震度に対応できる地震計となる。
【0006】
すなわち本発明は、複数の丸穴を上部に設けた台座と、前記丸穴にそれぞれ載せた球とを含み、前記球の直径とそれを載せた丸穴の直径を、横揺れの震度(例えば震度I、加速度αとすると、河角の式I=2log(α)+0.7)に基づいて規格化した飛び飛びの加速度以上の値で前記球がそれぞれの丸穴から飛び出すように規定し、前記飛び出した球から地震の前記震度を検出する簡易地震計を提供する。
【0007】
ここに前記丸穴は例えば浅い円筒形であっても良いし、浅い皿状であてもよい。
本発明では、好ましくは、前記台座と前記球を何れも導電材料から構成し、さらに前記台座から落下した金属球を受けるため前記台座から電気的に絶縁された金属製受け皿を設け、前記台座から落下して金属球が金属製受け皿と金属製台座の間を導通するように相互配置し、それにより当該落下した金属球が電気接点として作用して地震の震度を検出する。
【0008】
好ましくは、前記台座と前記受け皿をそれぞれ有線または無線で震度表示器または警報装置に接続し、前記落下した金属球が前記電気接点を閉鎖したときに前記震度表示器又は警報装置を作動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、理論的に加工された台座と球からなる極めて簡単・安価・正確な地震計を提供することができる。また、当該簡易地震計は、球の質量により地震の主震動の他の微細震度については、反応しないため、高価なフィルターをも必要としないで地震の主震動を検出できる小型で携帯性に優れた地震計である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の原理及び実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。
上記の課題を解決するために、本発明の簡易地震計は、台座上部の直径dの丸穴に、直径Dの球を乗せた構造とする。球の質量をmとし、重力の加速度をgとすると、球はf=mgの力で下方向に引かれている。地震が発生して球が横揺れの加速度αを受けると、球は丸穴から飛び出そうとする力F=mαを受ける(図1参照)。
【0011】
横揺れの加速度を受けて球が丸穴の一部例えばp点から飛び出すには、p点における地震による横方向に受けるモーメントMFが重力によるモーメントMgより大きい時である。その臨界の横揺れの加速度は、MF=Mgと置いて求められる。
【0012】
p点と球の中心0とを結ぶ線と、重力方向との成す角をθとすると、
MF=F・coscosθ・r=mα・cosθ・r (1)
Mg=f・sinθ・r=mg・sinθ・r (2)
両モーメントが釣り合ったとき、球が丸穴から飛び出す限界である。両式から
α・cosθ=g・sinθ (3)
となる。よって、地震の横揺れの加速度αは、
α=g・sinθ/cosθ=g・tanθ (4)
p点の座標を(x、y)とすると、tanθ=x/yであるから
α=g・x/y (5)
ここで、x=d/2であり、y=0.5D・sinθであるので、地震の横揺れの加速度αは、丸穴の直径dと球の直径Dのみに関係し、球の質量mには関係しない。よって、球は、鋼球でもガラス玉でも良いので、安価なビー玉も使用できる。
【0013】
丸穴の直径を震度3用、震度4用および震度5用に加工すれば、地震が発生したとき、どの玉が落ちたかを見れば、対応する震度を即座に知ることができる。
【0014】
簡便で、小型・安価な当該地震計を各家庭に設置すれば、地震発生時の我が家の震度を即座に判定でき、気象庁発表の震度と比較すれば、我が家の地震に対する家の耐震性や地盤の性質を判定できる。
【0015】
震度は、人が感じる揺れや、建物が壊れるような度合いで、震度1から7まで決まっている。気象学者の河角氏の経験則で暫定的な気象庁の震度階級が決められている。その値を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
表1の値を、縦軸に震度をとり横軸に加速度の値をとって片対数グラフにすると、直線になる(図2参照)。震度をIとすると、I=2log(α)+0.7。これを河角の式という。
【0018】
各震度の境界の前後は同じ加速度値であるので、各震度の加速度の対数中心値をとって、簡易地震計の加速度とした。その値を表2に示す。震度7は、500galとした。
【0019】
【表2】

【0020】
簡易地震計に使用する球の直径を20mmとしたときの、各震度に対応する丸穴の径を表2の加速度と(5)式を使って計算すると、表2の丸穴径となる。台座に各震度に相当する当該丸穴をあけ、直径を20mmの球を乗せると震度計となる。
直径20mmの球を0.03mmの丸穴に乗せることは、丸穴が隠れて見えないため極めて難しい。丸穴の代わりに、球の直径より大きな球の凹面にすると、球を台座の中心に容易にセットすることができる。凹面の深さを変えて、各震度に設定する。
【0021】
凹面にセットされた球は、地震の加速度の大きさおよび震動の周期により台座の上を運動する。加速度の大きさにより、やがて球は台座から飛び出す。
凹面の曲率半径、深さおよび震動周期が判れば、球が台座から飛び出すときの加速度の大きさを計算することができる。
しかし、発生した地震の加速度および周期は計測後判るもので、刻々計算することはできない。
【0022】
従って、阪神大震災のデータを参考に、震度7の振動数を2.5Hzとし震度1の振動数を経験的に0.8Hzとし、その間を対数目盛で7分割した値を求め、振動数を規格化した。その値を表2の振動数に示す。加速度および振動数から、震動の振幅が求まる。
【0023】
簡易地震計用に規格化した振動数および振幅を使って阪神大震災の地震波形記録データを参考に、前震6秒、本震6秒および後震12秒、合計24秒の地震波形を模擬する加振機を製作した。当該模擬加振機を使って、各震度に相当する丸穴径の調整や凹面の曲率半径および深さを求めた。
【0024】
丸穴および凹面の代わりに、縁をつけた皿穴の台座を用意した。縁の高さを変え、模擬加振機で各震度に相当する簡易地震計を完成させた。
【0025】
金属製台座の上部に丸穴をあけ、当該丸穴に乗せた金属球が、地震の横揺れ加速度により、金属球が穴から飛び出す地震計において、金属製台座から落下した金属球を金属製台座から電気的に絶縁された金属製受け皿で受け、金属製受け皿と金属製台座と金属球により接点を構成し、当該落下した金属球を電気接点で検出する接点付き簡易地震計を完成させた。
【0026】
当該電気接点付き簡易地震計により検出された震度を、当該接点で作動する震度表示器および警報装置を使って、集会者に知らしめたり地震発生時刻を記録する装置も完成させた。
【0027】
当該電気接点付き簡易地震計により検出された震度を、当該接点で作動する震度表示器および警報装置へ伝達させる手段として、既知の無線送受信機または商用電源線電送装置を介して、遠隔地の集会者に知らしめたり地震発生時刻を記録する装置も完成させた。
【0028】
このようにして、高価なセンサーや信号処理器を必要としない簡便・安価・正確な地震計を提供することができた。
【実施例】
【0029】
図1は、本発明に係わる原理を図示したものである。図において、直径dの丸穴の上に直径Dの球を乗せ地震が発生して球が横揺れの加速度αを受けると、球は丸穴から飛び出そうとする地震力F=mαを受ける。
【0030】
横揺れの地震力Fを受けて球が丸穴の一部のp点から飛び出すには、p点における地震による横方向に受けるモーメントMFが重力によるモーメントMgより大きいときである。その臨界の横揺れの加速度αは、MF=Mgと置いて前述の(5)式によって求められる。
【0031】
その結果、地震の横揺れの加速度αは、丸穴の直径dと球の直径Dのみに関係し、球の質量mには関係しない。よって、球は、鋼球でもガラス玉でも良いので、安価なビー玉も使用できる。
【0032】
図2は、地震の震度と加速度の範囲を示した図である。気象庁震度階と呼ばれていて、各震度の加速度を表1に示した。各震度の上限の加速度は次の高震度の下限と同じ値であるので、各震度の中央値をもって当該簡易地震計の加速度とした。各震度に対応する当該加速度を、表2に示した。
【0033】
球の直径を20mmとしたとき、各加速度に対応する丸穴の直径は、(5)式で計算される。その結果を、表2の丸穴径に示した。
【0034】
図3は、本発明に係わる簡易地震計の一実施例を示している。同図は、震度5、震度6および震度7に対応する簡易地震計である。同図において、台座2の上部には、各震度に相当する表2の丸穴径の丸穴3があけられている。当該台座2は、基板4と図示していない螺子により固定されている。丸穴3の上には、直径20mmの球1が乗せられている。地震発生時に、球1は震度6の地震があったとき、震度6の本震の前に、震度5の球1が台座2から落下する。震度6の本震時に、震度6の球1が台座2から落下する。震度7の球1は、落下しない。
このようにして、落下した球1のうちの最大震度のものが、発生した地震の震度である。
【0035】
図4は、本発明に係わる簡易地震計の一実施例を示している。同図は、震度5、震度6および震度7に対応する簡易地震計である。同図において、台座2の上部には、球1の半径10mmより大きな半径25mmで穴加工された球凹面5があけられている。球1を、球凹面5の上に乗せる。球1は、球凹面5の最下部に静止している。
地震発生時、球凹面5の上の球1は、左右に揺れる。地震の加速度が増すと、やがて球1は、球凹面5から飛び出す。球凹面5の深さを変えて、各震度に対応させた。
【0036】
図5は、本発明に係わる簡易地震計の他の一実施例を示している。同図は、震度5、震度6および震度7に対応する簡易地震計である。同図において、台座2の上部には、縁6で囲まれた皿穴7があけられている。球1を、皿穴7の上に乗せる。
地震発生時、皿穴7の上の球1は、左右に揺れる。地震の加速度が増すと、やがて球1は、縁6から飛び出す。皿穴7の縁6の高さを変えて、各震度に対応させた。
【0037】
図6は、本発明に係わる電気接点付き簡易地震計の一実施例を示している。同図において、金属製台座2Aの上部には、各震度に相当する表2の丸穴径の丸穴3があけられている。当該金属製台座2Aは、絶縁スリーブ8により電気的に金属製基板4Aと絶縁されて、螺子9により金属製基板4Aに固定されている。
【0038】
金属製台座2Aを囲むように、わん状の金属製受け皿10が金属製スタッド11により、金属製台座2Aと接触しないで金属製基板4Aに固定されている。
金属製台座2Aの上部の丸穴3の上に、直径20mmの金属製球1Aを乗せる。地震発生時に、金属球1Aは震度相当の地震があったとき、台座2Aから落下する。
【0039】
図7は、図6に示した本発明に係わる簡易地震計の動作例を示している。
金属製台座2Aから落下した金属球1Aは、金属製受け皿10で受け止められる。このとき、金属球1Aは、金属製受け皿10と金属製台座2Aとが接触し、電気接点を構成する。これにより電気接点を通る回路から形成され、螺子9からのリード線12および金属製基板4Aからのリード線13により、導通したことを示す電気信号が取り出される。この信号は有線又は無線により震度表示器(図示せず)又は警報装置(図示せず)を作動させることができる。
【0040】
丸穴3の丸穴径を変え複数の金属製台座2Aを用意すれば、複数の震度を測れる電気接点付き簡易地震計となる。なお、複数の丸穴を有する金属製台座、金属製受け皿、及び金属球(又は金属薄膜で被覆したガラス球等)を使用して、電気接点を介する電気回路を形成する場合には、信号間の干渉を防ぐように互いに電気絶縁する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係わる原理図である。
【図2】気象庁震度階と簡易地震計の設定震度を示したものである。
【図3】本発明に係わる使用実施例である。
【図4】本発明に係わる別の使用実施例である。
【図5】本発明に係わる別の使用実施例である。
【図6】本発明に係わる電気接点付き簡易地震計の一実施例である。
【図7】本発明に係わる電気接点付き簡易地震計の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 球
1A 金属球
2 台座
2A 金属製台座
3 丸穴
4 基板
4A 金属製基板
5 球凹面
6 縁
7 皿穴
8 絶縁スリーブ
9 螺子
10 金属製受け皿
11 金属製スタッド
12 リード線
13 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の丸穴を上部に設けた台座と、前記丸穴にそれぞれ載せた球とを含み、前記球の直径とそれを載せた丸穴の直径を、横揺れの震度と加速度の関係に基づいて規格化した飛び飛びの加速度以上の値で前記球がそれぞれの丸穴から飛び出すように規定し、前記飛び出した球から地震の前記震度を検出する地震計。
【請求項2】
前記丸穴が円筒形である請求項1に記載の地震計。
【請求項3】
前記丸穴が皿状である請求項1に記載の地震計。
【請求項4】
前記台座と前記球を何れも導電材料から構成し、さらに前記台座から落下した金属球を受けるため前記台座から電気的に絶縁された金属製受け皿を設け、前記台座から落下して金属球が金属製受け皿と金属製台座の間を導通するように相互配置し、それにより当該落下した金属球が電気接点として作用して地震の震度を検出するようにした請求項1〜3のいずれか一項に記載の地震計。
【請求項5】
前記台座と前記受け皿を有線または無線で震度表示器または警報装置に接続し、前記落下した金属球が前記電気接点を閉鎖したときに前記震度表示器又は警報装置を作動させるようにした請求項4に記載の地震計。
【請求項6】
前記の関係は震度I、加速度αとするとI=2log(α)+0.7である請求項1〜5のいずれか一項に記載の地震計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−208231(P2006−208231A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21565(P2005−21565)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(595002993)株式会社アテック (1)
【出願人】(595135132)
【Fターム(参考)】