説明

簡易式小便浄化装置

【課題】組立式簡易小便器に簡単に組み込むことや、小便の脱臭、脱色、殺菌などができ、かつ、複数回使用可能な簡易式小便浄化装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、浄化器と、浄化器の下側に小便が自重で流下するように連通させた貯蔵槽とが配置されてなる簡易式小便浄化装置において、上記浄化器は、長さが3〜30cm、径が1〜30cmの中空筒状とされてなり、かつ、中空部分には、粒度が0.15〜5mmの活性炭が充填されたフィルター(A)と、径が10〜500μmの複数本の銅繊維が任意の方向に絡み合わされて形成されたフィルター(B)とが、移動防止手段を介して上下に配置されてなり、上記貯蔵槽は、容量が5〜50リットルの中空容器であることを特徴とする、簡易式小便浄化装置を要旨とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易式小便浄化装置に関する。さらに詳しくは、地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他の非常事態発生時における避難所や、キャンプ場、釣り場、スキー場、イベント会場などの多数の人が出入りする場所に設置して使用し、不要の際には保管するのに便利である組立式簡易小便器に設置される、簡易式小便浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の人が出入りする学校、体育館、公民館、公園などの公共施設、イベント会場などには、常設トイレが設置されているが、その設置数は上記の公共施設やイベント会場などが通常使用される場合に適合するような数にされているに過ぎない。地震、水害、雪害、津波、火災、暴動などの非常事態が発生した際に、多数の被災者に避難所用として主として上記公共施設が使用される場合や、イベント会場などで特に多数の人が集まる特別な催し物が開催される場合には、避難所やイベント会場などでのトイレの数が不足するのが常である。この不足を解消する目的で、避難所やイベント会場などの適所に、プレハブ式トイレを設置する場合がある。
【0003】
多数のプレハブ式トイレを設置する場合は、その製作または購入(借入)のコストが嵩む(コストの問題)、これを保管するための大容積の保管(備蓄)場所が必要である(保管場所の問題)、保管庫から避難所などへの運搬が必要である(運搬の問題)、使用場所に設置する場合には広い面積が必要である(面積の問題)、部材が多く組立作業が煩雑である(作業性の問題)などの多くの問題がある。これら多くの問題の一部を解決したものとして、組立式簡易トイレが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【0004】
しかしながら、これら提案されている組立式簡易トイレは全て座式の便器であり、男性向けの小便器専用のものではない。男性が小便する場合にも、座式の便器を使用することができるが、組立式簡易トイレが不足している場合には、男性小便だけの組立式簡易小便器を設置することにより、座式の便器を有効に活用することができるようになると予測されるが、これまで男性小便専用の組立式簡易小便器は提案されていなかった。そのため、本出願人は、鋭意検討して、先に、男性小便専用の組立式簡易小便器に係る発明を完成し、この発明を特許出願した(特願2006−24451)。
【0005】
しかし、その後、この男性小便専用の組立式簡易小便器につき実用試験を行なった結果、(1)多数の組立式簡易小便器が設置されている場所、特に設置場所が屋内の場合には、小便受け容器に溜められた小便に起因する臭気が屋内に籠もり、屋内にいる多数の人に不快感を与えること、さらに、(2)小便受け容器に溜まった小便を廃棄する場合に、これに含まれている細菌が廃棄作業者の健康を害するおそれがあること、(3)小便受け容器に溜まった小便を廃棄する場合、細菌の問題のほか、着色の問題などがあり、そのまま河川などに廃棄する際に法令、規則、条例などに抵触するおそれがあること、などがわかった。
【特許文献1】特開平9−220173号公報
【特許文献2】特開平10−192189号公報
【特許文献3】特開平11−89750号公報
【特許文献4】特開2005−46339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、かかる状況に鑑み、従来技術の上記の諸問題を一挙に排除した改良技術を提供すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、以下のことを目的とする。
1.保管や組立作業が容易な組立式簡易小便器に、簡単に組み込むことができる簡易式小便浄化装置を提供する。
2.小便受け容器に溜まる小便の脱臭、脱色、殺菌などができる簡易式小便浄化装置を提供する。
3.複数回使用可能な簡易式小便浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、浄化器と、浄化器の下側に小便が自重で流下するように連通させた貯蔵槽とが配置されてなる簡易式小便浄化装置において、上記浄化器は、長さが3〜30cm、径が1〜30cmの中空筒状とされてなり、かつ、中空部分には、粒度が0.15〜5mmの活性炭が充填されたフィルター(A)と、径が10〜500μmの複数本の銅繊維が任意の方向に絡み合わされて形成されたフィルター(B)とが、移動防止手段を介して上下に配置されてなり、上記貯蔵槽は、容量が5〜50リットルの中空容器であることを特徴とする、簡易式小便浄化装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以下に詳細に説明するとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る簡易式小便浄化装置は、組立式簡易小便器に極めて容易に組み込むことができるので、避難所などでの緊急かつ一時的な使用において好適である。
2.本発明に係る簡易式小便浄化装置は、貯蔵槽に溜まる小便を確実に脱臭、脱色、殺菌できるので、避難所内の環境を悪化させることがない。
3.本発明に係る簡易式小便浄化装置は、小便を確実に脱臭、脱色、殺菌できるので、河川に廃棄する場合に法令、規則、条例などに抵触するおそれがない。
4.本発明に係る簡易式小便浄化装置は、浄化した小便を廃棄でき、2種類のフィルターとも再活性化可能であるので、複数回使用できる。
5.本発明に係る簡易式小便浄化装置は、複数回使用できるので、ランニングコストが低廉である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る簡易式小便浄化装置は、浄化器と貯蔵槽とよって構成される。これらは、小便が自重によって浄化器から貯蔵槽に流下するように連通させる。本発明に係る簡易式小便浄化装置を構成する浄化器および貯蔵槽は、板紙、木材製板、金属、合成樹脂、またはこれらを組み合わせたものによって調製することができる。板紙および木材製板の表面には、防水加工が施されたものが好ましい。金属および合成樹脂の種類は、小便に腐蝕されないものであれば特に制限はない。
【0010】
浄化器は、移動防止手段を介して配置された後記する2種類のフィルターによって、小便が後記する2種類のフィルターを通過して流下する際に、小便を脱臭、脱色し、小便に含まれている各種細菌を殺菌して無害化させるように機能する。浄化器の形状は中空筒状にされてなり、外観形状は、漏斗状、円柱状、角柱状、漏斗と円柱とを組み合わせた形状、漏斗と角柱とを組み合わせた形状などのいずれでもよいが、漏斗状のもの、および漏斗と円柱とを組み合わせたものが、貯蔵槽と連通させ易いので好ましい。中空筒状の浄化器は、素材により変わるが、厚さが0.1〜5mmとされ、長さが5〜30cm、径が3〜30cmの大きさとされてなる。厚さ、長さ、径がこの範囲であれば軽量であるので、取扱いが容易である。
【0011】
浄化器には、中空の筒内部に配置する後記の2種類のフィルターの移動を防止する移動防止手段が設けられている。移動防止手段は、小便浄化時に、後記する2種類のフィルターが浄化器中で下方に移動し、貯蔵槽に落下するのを防止し、小便が後記する2種類のフィルターを通過させるように機能する。移動防止手段としては、例えば、漏斗の傾斜面を活用する、中空筒の内壁に突起を設ける、フィルターを紐、針金によって中空筒の開口部に吊り下げる、中空筒内部の適所に網を設置する、などが挙げられる。
【0012】
貯蔵槽は、浄化器の中空部分を通過して浄化された小便を一時的に溜める機能を果たすものであり、容量が5〜50リットルの中空容器とする。容量がこの範囲であれば、組立式簡易小便器に設置し易く、これに溜まった小便の廃棄作業が容易だからである。貯蔵槽は、上記したとおり、浄化器の下側に小便が自重で流下するように連通させて配置される。浄化器と貯蔵槽とを連通させる際の両者の配置例としては、(1)漏斗状または筒状にした浄化器の下部を、貯蔵槽の上面に設けた穴に差し込む、(2)浄化器の最下部と貯蔵槽の上面に設けた穴とを直接または、短管などを介して連接させる、(3)浄化器の下部を貯蔵槽の内側壁にねじなどを介して連接させる、などが挙げられる。貯蔵槽に溜まった小便の廃棄作業や保管時の収納効率を勘案すると、浄化器と貯蔵槽とは、簡単に着脱可能な構造とするのが好ましい。
【0013】
貯蔵槽の形状は、中空容器であれば特に限定されないが、貯蔵槽の上面を一部開口させたものが好ましく、貯蔵槽の上側壁面には、浄化器から流下する小便の受け口と、この貯蔵槽に溜めた小便を廃棄するための穴と、場合によっては、小便を手際よく廃棄するための空気流入用の穴を設けるのが好ましい。さらに、貯蔵槽の上側壁面または側壁面に、把手を設けておくと、貯蔵槽の設置、移動、溜まった小便の廃棄作業などに便利である。小便受け口と小便排出口とは、兼ねさせることができる。貯蔵槽に溜められた浄化済で、実質無害とされた小便は、河川に廃棄したり、公共の屎尿処理設備の処理工程末端部分で、処理水に合流させることができる。
【0014】
浄化器の中空部分には、2種類のフィルターを配置する。小便は、2種類のフィルターを通過させることによって、脱臭、脱色、殺菌され、河川に廃棄可能な程度にまで浄化される。本発明において配置される2種類のフィルターとは、活性炭を充填したフィルター(A)と、銅繊維を充填したフィルター(B)とを意味する。
【0015】
本発明においてフィルター(A)は、小便を脱臭、脱色させるために機能する。フィルター(A)は、活性炭をフィルター状に加工したものをいう。活性炭は、表面に形成された多孔性構造部分に、小便に含まれる尿素が分解されて発生するアンモニアなどの臭気成分を吸着して臭気を少なくし、かつ、ウロクロムなどの色素成分を吸着して脱色させる。活性炭は、ヤシ殻、石炭、木片、おがくずなどを原料として、ガス賦活法、薬品賦活法などによって製造される。ガス賦活法は、ヤシ殻や石炭などを、水蒸気・炭酸ガスを含む燃焼ガスによって反応させる方法であり、薬品賦活法は、木片やおがくずなどを、リン酸・塩化亜鉛などの薬品に含浸させて高温で処理する方法である。また、上記方法で製造された活性炭に、ヨウ素酸などの無機酸を添着させてもよい。活性炭は、1種類でも、製法、径や表面積の異なる2種類以上のものを、任意の割合で組み合わせたものであってもよい。
【0016】
活性炭の粒度は、0.15〜5mmの範囲とする。粒度が0.15mm未満であると、フィルター状に加工した際に隣接する活性炭同士の間隔が狭くなるので、小便が通過し難くなり、5mmを超えると、活性炭の表面積が小さくなるので、小便を充分に脱臭、脱色することができなくなり好ましくない。使用する活性炭は、全数量の90%以上が0.15〜5mmの径のものが好ましい。
【0017】
活性炭をフィルター状に加工するには、例えば、活性炭の粒度より小さく、かつ、小便が通過できるような微細な孔を有する袋に活性炭を充填し、開口部を縫製・溶着した構造のもの、微細な連続孔を有する合成樹脂製発泡シートを袋状に溶着加工した構造のもの、微細な孔を有するカートリッジの中に活性炭を充填した構造のもの、などが挙げられる。袋は、織物、編物、不織布などのシートを縫製・熱溶着させたものなどでよく、シートの素材は、天然繊維、合成繊維、無機繊維、金属繊維などのいずれでもよい。中でも、合成樹脂製の繊維からなる不織布シートからなる袋が好ましい。活性炭が充填された袋の形状は、シート状、円板状、円柱状など中に充填する活性炭の量に応じて適宜変えることができるし、これを配置する浄化器の形状に応じて選択し、使用できる。カートリッジとは、浄化器から着脱可能で、かつ、カートリッジ自体、または、これに充填されている活性炭が交換可能にされたものである。カートリッジの素材には、合成樹脂、パンチングメタル、ステンレススチール製不織布などが挙げられ、カートリッジの形状は、配置する浄化器の中空部分の形状に応じて、平板状、円柱筒状などのいずれでもよい。
【0018】
本発明においてフィルター(B)は、小便に含まれる細菌を殺菌するように機能する。フィルター(B)は、銅製の長繊維および/または短繊維をフィルター状に加工したものをいう。銅繊維は、小便に含まれる細菌、例えば、サルモレラ菌、黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌O−157、レジオネラ菌などを殺菌する。銅繊維を構成する銅の純度は、高いほど優れた殺菌効果を発揮し、中でも純度が99.9%以上のものが好ましい。銅繊維は、金属を繊維化する方法、例えば、線引加工法、溶融紡糸法、切削法などによって製造できる。銅繊維の断面形状は限定されず、円状、楕円状、多辺形状などのいずれでもよい。
【0019】
銅繊維の径は、10〜500μmとする。径が10μm未満であると、フィルター状に加工した際に隣接する銅繊維同士の間隔が狭くなるので、小便が通過し難くなり、径が500μmを超えると、小便と接触する面積が小さくなるので、小便を充分殺菌することができなくなり好ましくない。銅繊維の長さは、0.5〜50mmのものを使用する。銅繊維は、長さが5〜50mmの長繊維単独、または、長さが0.5〜5mmの短繊維単独で使用してもよいが、複数本の長繊維と複数本の短繊維とを任意の割合で組み合わせて使用するのが好ましい。
【0020】
フィルター(B)は、複数本の銅繊維が絡み合わされてフィルター状に加工したものをいう。ここで、「絡み合わされ」とは、不織布のように複数本の銅繊維が任意の方向で配置され、任意の銅繊維同士が一部交差している状態をいう。複数本の銅繊維が絡み合わされることによって、フィルター(B)の表面積が増加し、小便が銅繊維に接触する面積が増加するので、フィルター(B)による小便の殺菌効果を向上させることができる。
【0021】
銅繊維をフィルター状に加工するには、例えば、銅繊維の径より小さく、かつ、小便が通過できるような微細な孔を有するカートリッジなどの容器に銅繊維を充填した構造のものなどが挙げられる。カートリッジは、前記フィルター(A)におけると同様の場合と同様の素材でよく、その形状も同様に選択することができる。
【0022】
フィルター(A)とフィルター(B)とは、浄化器の中空部分に配置されるが、小便がフィルター(A)およびフィルター(B)の双方を通過するように配置すればよく、いずれを上にし、いずれを下にするかの位置関係に制限はない。また、小便をより確実に脱臭、殺菌させたい場合には、貯蔵槽の中の底面にフィルター(B)を配置することが好ましい。なお、フィルター(A)は、使用後に水で洗浄し乾燥し、場合によっては高温に加熱することによって、活性化して複数回使用できる。また、フィルター(B)は、長期間使用することができる。
【0023】
本発明に係る簡易式小便浄化装置を用いて、簡易式小便器として使用する場合には、浄化器の開口部に小便を排泄すればよく、排泄された小便は、前記のとおり、2種類のフィルターを通過させることによって、河川に廃棄できる程度に浄化される。浄化器の大きさによっては、これを小便受け器として活用することができるが、比較的小さくされているので、浄化器の開口部に連通する小便受け体を設けるのが好ましい。小便受け体を設けることにより、直接、浄化器の中空部分に排泄する必要がなく、男性がより楽な姿勢で小便をすることができる。小便受け体として好ましいのは、素材が防水加工を施した板紙で、形状は排泄する小便を受け止め、かつ、浄化器の中空部分に流下させやすい形状、例えば、使用時の断面形状がV字形、U字形のものである。簡易式小便器として使用する場合に好ましいのは、本出願人が先に出願した組立式簡易小便器に係る発明(特願2006−24451)の小便受け容器に変えて、本発明に係る簡易式小便浄化装置を使用することである。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
<実施例(簡易式小便浄化装置の調製)>
図1は、本発明に係る簡易式小便浄化装置の一例の縦断側面図である。浄化器2は、開口部の形状が円状である漏斗と円柱とを組み合わせた中空筒状のものであり、厚さが1mm、長さが21.5cm、最上部の径が12.5cm、漏斗部分の長さが10cm、円柱部分の長さが11.5cm、円柱の径が5.0cmであり、ポリエチレンを射出成形して得られたものである。また、円柱部の下端にフィルター移動防止手段として、径6mmの穴を7個穿設した蓋21を装着している。
【0026】
浄化器2の中空部分の漏斗部分には、フィルター(A)22、円柱部分にはフィルター(B)23が配置されている。フィルター(A)、フィルター(B)の配置順序は、この例に限定されるものではなく、前記のとおり、両者を入れ替えて配置してもよい。フィルター(A)22は、2種類の活性炭、具体的には、(1)石炭を原料とした活性炭{ダイネン社製、銘柄名:PLC1SR(8/32mesh)、径が0.8〜3.2mm}90gと、(2)石炭を原料とした活性炭にヨウ素を添着させた活性炭(丸福油脂工業社製、銘柄名:ヨウ素活性炭、径が0.5mm)40gとを混合させたものを、ポリプロピレン繊維フィラメント糸を原料とした不織布シート(金星製紙社製、銘柄名:ポリプロピレン24J)からなる袋に充填し、その後熱溶着法によって、開口部を接着させたものである。また、フィルター(B)23は、本発明の要件を満たす銅繊維が充填された市販の銅繊維フィルター(コデラカプロン社製、銘柄名:無酸化銅)を、直径が4.9cm、長さが11.5cmのステンレス製パンチングメタル製容器に充填したものである。
【0027】
貯蔵槽3は、容量20リットルのほぼ直方体状のポリエチレン製中空容器であり、上面には、径が5.2cmの円形の穴31が設けられている。浄化器2の下部(円柱状部分)を、貯蔵槽3に設けられた円形の穴31に緩装させることによって、浄化器2と貯蔵槽3とを連通させている。図1に示した貯蔵槽3には、空気流入用の穴と把手を設けない例を示したが、これらを設けてもよいことは前記のとおりである。
【0028】
<評価試験>
本発明に係る簡易式小便浄化装置について、次のような3種の評価試験を行なった。
(1)脱臭試験:後記する試験例1、試験例2、および比較試験例1において調製した試料を、予め滅菌した容量300ミリリットルの共栓付き三角フラスコに、各100ミリリットルを採取し、栓を閉めて、40℃、80%RHの下で12時間静置させた。その後、三角フラスコの栓を開け、三角フラスコの中から放される臭気を、パネラー12人によって確認してもらい、臭気の評価試験を行った。評価試験結果は、パネラーに以下の評価基準に基づいて採点してもらい、最大値および最小値を除いた10人の評価値の平均値を算出した。平均値が小さいほど、試料が脱臭されていると判定できる。
[臭気の評価基準]
0・・・悪臭を感じない
1・・・わずかに感じる
2・・・悪臭を感じる
3・・・悪臭を強く感じる
【0029】
(2)色度判定:後記する試験例1、試験例2、および比較試験例1において調製した試料を、共栓付き平底無色試験管に各100ミリリットルを採取し、色度標準列と比色して、色度を判定した(単位:度)。色度が小さいほど試料が脱色されていると判定できる。なお、色度標準列とは、色度標準液を0ミリリットルから、1ミリリットルずつ段階的に増やして20ミリリットルまで、各共栓付き平底無色試験管に採り、精製水を加えて100ミリリットルとしたものであり、色度標準液の添加量に比例して、色度が0、1、・・・、20度と相当する。色度標準液は、塩化白金酸カリウム(IV)2.49gおよび塩化コバルト(6水塩)2.02gを塩酸200ミリリットルに溶かし、精製水を加えて1リットルにしたものに、精製水で10倍に希釈することで得られ、色度標準液の色度は100度に相当する。
【0030】
(3)細菌数測定:後記する試験例1および試験例2においては、浄化する前の試料、浄化直後の試料、および浄化器2を取り外し、貯蔵槽3を密閉した状態で、30℃、80%RHの暗所で静置して、浄化してから24時間経過後の試料を、比較試験例1においては浄化前試料と、浄化前試料を30℃、80%RHの暗所で静置してから24時間経過後の試料を、予め滅菌したガラス製のペトリ皿に各1ミリリットルを採取し、寒天平板培養法によって、一般細菌の数を測定した(単位:個/ミリリットル)。一般細菌の数が少ないほど、試料が殺菌されていると判定できる。なお、一般細菌とは、標準寒天培地によって集落に発現する好気性細菌、および通気嫌気性の従属栄養細菌の総称である。
【0031】
<試験例1>
健康体である3人の男性の小便を同時に各500ミリリットル採取した直後に、予め滅菌した容量が2リットルの共栓付きの三角フラスコに、3人の小便を注ぎ、混合、撹拌した(以下、撹拌した後の小便を浄化前試料と略記する。)。この浄化前試料500ミリリットルを、上記した簡易式小便浄化装置に配置されているフィルター(A)22の上面部全体に偏りがないように、10秒間で流し込み、浄化前試料をフィルター(A)22およびフィルター(B)23を通過して、貯蔵槽に試料を流下させた。貯蔵槽に溜まった試料について、上記3種の評価試験を行ない、評価結果を表1に示した。
【0032】
<試験例2>
予め、浄化器2に配置したフィルター(B)23と同種のフィルター(B)23を、貯蔵槽3に設けられた円形の穴31から入れ、貯蔵槽3の中の底面部に載置させたほかは、試験例1で調製した浄化前試料を、試験例1と同じ手順で流下させた。貯蔵槽に溜まった試料について、上記3種の評価試験を行ない、結果を表1に示した。
【0033】
<比較試験例1>
ブランクとして、試験例1で調製した浄化前試料を、何ら処理しないものについて、上記3種の評価試験を行ない、結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1より、次のことが明らかとなる。
(1)本発明に係る簡易式小便浄化装置によって一度浄化した試料(試験例1および試験例2参照)は、時間が経過しても殆ど臭気を感じない程度にまで脱臭されている。これに対し、浄化しない試料は(比較試験例1参照)、時間が経過すると悪臭が感じられる。
(2)本発明に係る簡易式小便浄化装置によって浄化された試料は、浄化前試料に比べ、色度が低くなっている。
(3)本発明に係る簡易式小便浄化装置によって浄化された試料は、浄化前試料に比べ、細菌の数が大幅に減少し、実質無害なものにされている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る簡易式小便浄化装置は、地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他の非常事態発生時における避難所や、キャンプ場、釣り場、スキー場、イベント会場などの多数の人が出入りする場所に設置し、使用する組立式簡易小便器の浄化装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る簡易式小便浄化装置の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:簡易式小便浄化装置
2:浄化器
3:貯蔵槽
21:蓋
22:フィルター(A)
23:フィルター(B)
31:円形の穴
32:空気流入用の穴
33:把手


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化器と、浄化器の下側に小便が自重で流下するように連通させた貯蔵槽とが配置されてなる簡易式小便浄化装置において、上記浄化器は、長さが3〜30cm、径が1〜30cmの中空筒状とされてなり、かつ、中空部分には、粒度が0.15〜5mmの活性炭が充填されたフィルター(A)と、径が10〜500μmの複数本の銅繊維が任意の方向に絡み合わされて形成されたフィルター(B)とが、移動防止手段を介して上下に配置されてなり、上記貯蔵槽は、容量が5〜50リットルの中空容器であることを特徴とする、簡易式小便浄化装置。
【請求項2】
貯蔵槽の中の底面にフィルター(B)が配置されている、請求項1に記載の簡易式小便浄化装置。
【請求項3】
フィルター(A)は、2種類以上の活性炭が充填されてなる、請求項1または請求項2に記載の簡易式小便浄化装置。
【請求項4】
フィルター(B)は、銅長繊維および/または銅短繊維を絡み合わせたものである、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の簡易式小便浄化装置。


【図1】
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【公開番号】特開2008−67728(P2008−67728A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246218(P2006−246218)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(500251331)新潟紙器工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】