説明

簡易断熱窓

【課題】高い断熱性を有し、かつ、着脱が容易で繰り返し使用可能な断熱部を有する簡易断熱窓を提供する。
【解決手段】窓ガラス部2と採光断熱材3とからなる簡易断熱窓であって、前記採光断熱材3は、複数の基材フィルムが厚さが100μm〜3mmのガス層を挟んで各々対向した構造を有するものであり、前記窓ガラス部2と採光断熱材3とは、エアタイト構造枠4により勘合されている簡易断熱窓。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い断熱性を有し、かつ、着脱が容易で繰り返し使用可能な断熱部を有する簡易断熱窓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建築物では、省エネルギーの観点から、外界との高い断熱効果を達成し冷暖房の効率を極限にまで高める試みがなされている。また、冷暖房の効率を高めるためには各部屋ごとに独立した冷暖房を行う必要がある。このような目的のために断熱性の高い壁材等が種々提案されている。
また、建築物の住環境等を考える場合に、採光は極めて重要である。現在の建築物においては、採光部にはガラス窓を設置するのが一般的であるが、壁材等に比べて高い断熱効果を発揮させるのは難しかった。「省エネルギー技術戦略報告書」(平成14年6月12日、経済産業省)によれば、全消費エネルギーの45%が窓等の開口部から損失しているといわれている。
【0003】
断熱性の高いガラスとしては、いわゆるペアガラスが提案されている(例えば、特許文献1等)。ペアガラスは、2枚のガラス間に隙間を設け、ガラス間を真空としたり、アルゴン等の不活性ガスを吹き込んだりしたものであり、ガラス間の空間の存在により、高い断熱効果を発揮しようとするものである。しかしながら、ペアガラスは数万〜十数万円/mと通常のガラスに比べて高価であるという問題がある。また、既に設置されている単板ガラスと交換するためには枠材の取替え工事が必要となり、集合住宅、賃貸住宅等では実現が困難であった。
【0004】
これに対して、いわゆる「断熱シート」、「結露防止シート」等が市販されている。これらのシートは、単板ガラスの表面に粘着剤等により貼り付けることにより、開口部の断熱性を手軽に高めるというものである。
しかしながら、従来の「断熱シート」、「結露防止シート」には、ペアガラス並みの熱貫流率3.5程度の断熱性を発揮できるものはなく、その効果は限定されたものに過ぎなかった。また、粘着剤等により貼り付けるという施工方法上、いったん剥がしたものを再利用することが困難であり、夏季に剥がして冬季にまた新しいものを貼付し直す必要が生じるという問題もあった。更に、長期間貼付したままで放置した場合には、剥離した際にガラス側に糊残りが発生することがあるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−026453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようなペアガラス、断熱シート、結露防止シート等に加え、採光性を保持しながら断熱性を高めるために、採光断熱材を用いることが考えられる。本発明者らは、複数の樹脂フィルムが厚さ100μm〜3mmの空気層を挟んで各々対向した構造を有する採光断熱材が、極めて軽量であるにもかかわらず、高い断熱性を発揮できることを既に見出している(特開2006−291608)。
このような採光断熱材の設置態様として、例えば、断熱シート等と同様に、面材一面に粘着剤が塗布された粘着シートを用いて採光断熱材を単板ガラスの表面に貼り付ける態様、両面テープ等のテープ又は粘着剤を用いて採光断熱材の端部のみを固定する態様、並びに、クギ、ビス、L字金具等の固定部材を用いて採光断熱材を物理的に単板ガラスの表面に固定する態様(図7に示す)に加えて、図8に示すように、クギ、ビス、L字金具等の固定部材を用いて採光断熱材を窓の額縁内(図8(a))又は額縁の外(図8(b))に固定する態様が挙げられる。しかしながら、このように窓の額縁に固定する場合も、採光断熱材を一旦固定してしまうと容易に取りはずすことができず、季節や目的に合わせた使用が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、高い断熱性を有し、かつ、着脱が容易で繰り返し使用可能な断熱部を有する簡易断熱窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、窓ガラス部と採光断熱材とからなる簡易断熱窓であって、前記採光断熱材は、複数の基材フィルムが厚さが100μm〜3mmのガス層を挟んで各々対向した構造を有するものであり、前記窓ガラス部と採光断熱材とは、エアタイト構造枠により勘合されている簡易断熱窓である。
以下に本発明を詳述する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い断熱性を有し、かつ、着脱が容易で繰り返し使用可能な断熱部を有する簡易断熱窓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の簡易断熱窓の窓ガラス部と採光断熱材との勘合部分の一例を示す模式図である。
【図2−1】本発明の簡易断熱窓の窓ガラス部と採光断熱材との勘合部分の一例を示す模式図である。
【図2−2】本発明の簡易断熱窓の窓ガラス部と採光断熱材との勘合部分の一例を示す模式図である。
【図2−3】本発明の簡易断熱窓の窓ガラス部と採光断熱材との勘合部分の一例を示す模式図である。
【図3】周辺部用エアタイト構造枠の一例を示す模式図である。
【図4】中央連結部用エアタイト構造枠の一例を示す模式図である。
【図5】コーナー部用キャップの一例を示す模式図である。
【図6】複数の採光断熱材を窓ガラス部に施工する手順を説明する模式図である。
【図7】従来の採光断熱材を単板ガラスに貼り付けた状態を示す模式図である。
【図8−1】従来の採光断熱材を額縁に固定した状態を示す模式図である。
【図8−2】従来の採光断熱材を額縁に固定した状態を示す模式図である。
【図9】エアタイト構造枠に軟質材を用いた場合の本発明の簡易断熱窓の窓ガラス部と採光断熱材との勘合部分の一例を示す模式図である。
【図10】エアタイト構造枠の固定に留め金具を用いた場合の本発明の簡易断熱窓の窓ガラス部と採光断熱材との勘合部分の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施の形態に即して説明する。
本発明の簡易断熱窓は、窓ガラス部と採光断熱材とからなる。
上記窓ガラス部としては特に限定されず、通常の建築物の開口部に用いられるものであればいずれも用いることができる。本発明の目的上、単板ガラスが適当ではあるが、特に高い断熱性が要求される場合にはペアガラス等であってもよい。
【0012】
上記採光断熱材は、複数の基材フィルムが、所定のガス層を挟んで各々対向した構造を有する。
上記採光断熱材は、2枚の基材フィルムの間にガス層が挟持された構成のものであってもよいが、後述する可視光線透過率を満たす限りにおいて、3以上の複数の基材フィルムの間にガス層が挟持された構成のものが好ましい。複数のガス層を有する採光断熱材は、高い断熱効果を発揮することができる。また、基材フィルム間の温度差が小さく、結露の発生が抑制されることから、従来開口部に使用するガラスや断熱材等の面材の端部処理で使用される枠材を取り付ける際に必要であった乾燥剤の量を減じることができ、使用しないですむ場合もある。
【0013】
本発明者らは、ガス層の厚さを特定の範囲としたときに、特に高い断熱効果を発揮できることを見出した。熱貫流率はガス層の厚さ、総厚み、層の数に関係する。ガス層の厚さが0で層の数が1のときには基材フィルム自身の熱貫流率に等しく、ガス層が充分に厚くなるとガス自身の熱貫通率(理論値)に近くなるので、総厚みの増加にともなって熱貫流率は小さく、即ち断熱性は高くなる。更に一定の総厚みの下では、対流を生じない程度のガス層間隔であれば、総厚み中に占めるガス層の総厚みが一定以上の場合には、層数が増すごとにステファン・ボルツマンの法則に基づいた輻射熱低減の効果により、熱貫流率は極小値を示すことが判った。即ち、本発明の採光断熱材において、個々のガス層の厚さの下限を100μm、上限を3mmで、かつ、層数を3〜20層とした場合に、特に高い断熱効果が得られることが判った。個々のガス層の厚さのより好ましい下限は200μm、より好ましい上限は2mm、かつ、より好ましい層数が4〜10層である。
【0014】
上記ガス層は、周辺部を封止してもよい。このような構造を有すれば、内部結露を防止可能である。上記ガス層は、他のガス層と上記基材フィルムを介して通じていてもよく、ガスがガス層間を移動することができる構造を有するものであってもよい。即ち、不織布や、5mmφ程度の穴あきフィルムでも基材として使用可能である。
【0015】
上記ガス層は、複数のセルに分割されていることが好ましい。ガス層が複数のセルに分割されることにより、本発明の採光断熱材全体の強度を高めることができる。本発明では樹脂スペーサが、このセル分割の役割を果たしている。ガス層の各セルの大きさの好ましい下限は4cm、好ましい上限は1800cmである。ガス層の各セルの大きさが4cm未満であると、得られる採光断熱材の可視光線透過率が劣ったり、断熱性が低下したりすることがある。ガス層の各セルの大きさが1800cmを超えると、得られる採光断熱材の強度が劣ることがある。ガス層の各セルの大きさのより好ましい下限は25cmであり、より好ましい上限は600cmである。
【0016】
上記ガス層を構成するガスとしては特に限定されず、例えば、空気、二酸化炭素等が挙げられる。
また、上記ガスとして、芳香効果のあるガス、煙等を用いて着色したガス等を充填することができる。このようなガスを充填することによって、本発明の採光断熱材に諸機能を付与することができる。
【0017】
上記ガス層には、意匠性を付与するための液体が挿入されてもよい。
上記液体としては特に限定されないが、例えば、色水等が好ましい。色水等を用いることによって、本発明の採光断熱材に意匠性を付与することができる。
なお、上記液体や空気以外のガスを上記ガス層に挿入する場合には、上記液体を挿入したガス層のシール封止を充分に行う必要がある。
【0018】
上記ガス層に上記液体を挿入する場合は、上記液体が上記ガス層の全空間を充填するように挿入してもよく、上記ガス層の一部、例えば、上記ガス層における上記セルの一部のみに挿入することもできる。
【0019】
上記ガス層には、意匠性を付与するための固体が挿入されてもよい。
上記固体としては特に限定されず、例えば、カラービーズ、人形、ぬいぐるみ、布・衣料類、紙製のモール、ドライフラワー、湿度調整剤を付与した生花等のデイスプレイに使用される材料、絵、書等の居住空間のインテリア性を向上させる材料、ライト、ランプ等の発光体等が挙げられる。
【0020】
上記ガス層に上記固体を挿入する場合は、上記固体が上記ガス層の全空間を充填するように挿入してもよく、上記ガス層の一部、例えば、上記ガス層における上記セルの一部のみに挿入することもできる。上記固体を上記ガス層に挿入する場合は、ワイヤー、ピアノ線、ガラスファイバー等を用いる方法又は貼付する方法によって上記固体の一部を固定してもよい。
【0021】
上記ガス層には、上記液体と固体とを組み合わせて挿入してもよく、上記ガス層において上記液体に上記固体を浮遊させたり、上記液体に上記固体を沈めたりしてもよい。
【0022】
上記ガス層に上記液体又は固体を挿入する場合、上記基材フィルムは、自重に耐えることができる強度を有するものであることが好ましい。
【0023】
上記採光断熱材を構成する基材フィルムとしては特に限定されないが、軽量であることから樹脂フィルムが好適である。
上記樹脂フィルムとしては、透明性に優れるものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル、塩化ビニル、フッ素含有樹脂、ポリビニルアルコール、トリ酢酸セルロース等からなるものが挙げられる。
なかでも、自消性であって建築材として適合性がよいことから、ポリカーボネート、塩化ビニルが好適である。また、樹脂フィルムの耐傷性を向上させる目的で、ハードコートを施した樹脂フィルムを用いることが好ましい。このようなハードコートとしては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂からなるものが挙げられる。このようなハードコートを施した樹脂フィルムとしては、例えば、ポリカーボネートフィルム等の表面にアクリル樹脂層が形成された2層構造を有する樹脂フィルムを好適に使用することができる。更に、他の基材フィルムへ樹脂フィルムを積層する場合には、例えば、ポリブチレンテレフタレートを好適に使用することができる。
【0024】
上記基材フィルムとしては、その一部又は全部が、意匠性付与を目的とする意匠性フィルム、視認性調整を目的とする光学調整フィルム等、諸機能付与を目的とするフィルムであってもよい。また、目的に応じて、上記基材フィルムに、宣伝用のロゴや部分貼りのシール等を貼付して用いてもよい。
【0025】
上記基材フィルムの厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は10μm、好ましい上限は300μmである。上記基材フィルムの厚さが10μm未満であると、得られる採光断熱材の強度が劣ることがある。上記基材フィルムの厚さが300μmを超えると、同じ断熱効果を得るのに必要以上に採光断熱材が厚くなることがある。上記基材フィルムの厚さのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は250μmである。本発明の採光断熱材において、表面のみの強度が必要とされる場合は、表面層にのみ厚い基材フィルムを使用してもよい。
【0026】
上記採光断熱材は、基材フィルム間にスペーサを有することが好ましい。該スペーサは、上記ガス層の維持(基材フィルム間隔の維持)、ガス層の周辺部の封止、ガス層の分割等に用いられるものである。
【0027】
上記スペーサとしては特に限定されないが、採光断熱材の可視光線透過率を確保するために透明であることが好ましく、また、採光断熱材の断熱性能を阻害しないために断熱性が高いものであることが好ましい。このようなスペーサとしては特に限定されないが、例えば、中空体(発泡体を含む)、FRP、自己粘着性を有するアクリル樹脂等が好適である。
【0028】
上記スペーサの形状としては特に限定されず、粒子状、線状等であってもよい。また、上記スペーサの形状により、得られる採光断熱材に意匠性を付与してもよい。なお、上記ガス層が複数ある場合には、各々のガス層を規定するスペーサは同一の形状であってもよいし、異なった形状であってもよい。例えば、隣接するガス層を規定するスペーサが直交するようにして、全体としてスペーサが格子状となっていてもよい。
【0029】
上記採光断熱材は、全体の厚さの好ましい下限が3mm、好ましい上限が5mmである。上記採光断熱材の全体の厚さが3mm未満であると、充分な断熱性を発揮できないことがある。上記採光断熱材の全体の厚さが5mmを超えると、一般的な引違い窓に適用したときにレール内に収まらないことがある。
本発明の簡易断熱窓では、既存のガラス窓に対し、別にレールを設けたり、住宅の壁面を傷つけたりすることなく、採光断熱材が固定できる点が特徴である。
【0030】
上記採光断熱材は、可視光線透過率の好ましい下限が20%である。可視光線透過率が20%未満であると、充分な採光を得ることができないことがある。上記採光断熱材の可視光線透過率のより好ましい下限は30%、更に好ましい下限は40%である。
【0031】
本発明の簡易断熱窓においては、上記窓ガラス部と採光断熱材とは、エアタイト構造枠により勘合されている。
本明細書においてエアタイト構造枠とは、雄部と雌部の勘合部を有する枠材であり、特に勘合部が気密構造を有しているものを意味する。更に、上記エアタイト構造枠は、雄部と雌部の勘合部をひとつ有していてもよく、並行して複数個有してしてもよい。
【0032】
上記エアタイト構造枠は、例えば、両面テープ等の固定剤や留め金具等の固定部材により、どちらかの勘合部が予め上記採光断熱材の周辺に固定される。エアタイト構造枠が予め採光断熱材に固定されることで、作業性が向上し、同時に、窓の開閉等の繰り返し衝撃等に対しても採光断熱材の面材がずれ落ちにくくなる。ただし、清掃や季節変化に応じて頻繁に採光断熱材の取り外しを行う場合には、エアタイト構造枠と採光断熱材を固定しない方が、容易に取り外し作業を行うことができる。このとき、雄部が上記採光断熱材に固定されてもよく、雌部が上記採光断熱材に固定されてもよい。
一方、上記エアタイト構造枠は、例えば、両面テープ等の固定剤や留め金具等の固定部材により、対になる勘合部が上記窓ガラス部に固定される。このとき、上記窓ガラス部における勘合部の設置部位は特に限定されず、断熱性や上記窓ガラス部の機能性によって適宜選択することができるが、例えば、ガラス窓の開口ガラス面の端部ぎりぎり、サッシ枠、額縁等が挙げられる。
次いで、上記採光断熱材に固定された勘合部を、上記窓ガラス部に固定された対になる勘合部材にはめこむようにして、上記採光断熱材の施工を行う。
【0033】
上記エアタイト構造枠をガラス窓の開口ガラス面の端部ぎりぎりに設置する場合は、引き違い窓であっても、上記採光断熱材を施工した状態で窓を開閉することができる。また、後述するように、例えば、エアタイト構造枠に片側を挿入することができ、かつ、他方側をグレージングチャンネル部に挿入固定することのできる留め金具又はクリップ(図10(a)、(b)に示す)や、片側を、勘合した後の状態のエアタイト構造枠の外側からかぶせ固定することができ、かつ、他方側をグレージングチャンネル部に挿入固定することのできる留め金具又はクリップ(図10(c)に示す)等を用いることにより、採光断熱材をより簡便に施工することができる。
なお、グレージングチャンネル部とは、ガラス面周囲のゴム材からなる部分であり、ガラスをサッシ枠に固定するための材料からなる部分である。
【0034】
上記エアタイト構造枠をサッシ枠又は額縁に設置する場合は、引き違い窓であると、上記採光断熱材を施工した状態のままで窓を開閉することはできない。そのため、このような設置方法は、開閉機能のない、明かり取り用のFIX窓の場合に適している。ただし、上記エアタイト構造枠を用いて勘合されることから、換気や必要に応じて上記採光断熱材を容易に着脱することができる。
更に、上記エアタイト構造枠をサッシ枠又は額縁に設置する場合は、サッシ枠や、サッシ枠と額縁との間の空気層も断熱されるため、サッシ枠の結露防止はもとより、より高い断熱性を発揮することができる。
【0035】
上記エアタイト構造枠の材質は特に限定されず、例えば、アルミ、ステンレス等の金属、木材、竹、プラスチック、架橋系又は未架橋系ゴム、FRP等が挙げられる。なかでも、断熱性及び耐久性に優れることから、プラスチックが好適である。
【0036】
上記プラスチックは特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン、ポリスチレン樹脂、ASA樹脂、AES樹脂等が挙げられる。
また、上記プラスチックは、透明であってもよく、半透明又は不透明であってもよい。上記プラスチックが透明である場合には、例えば、上記採光断熱材の透明性を活かして意匠性を向上させることができる。
【0037】
上記プラスチックは、硬質材であってもよく、半硬質材であってもよく、また、軟質材であってもよい。なお、上記プラスチックが硬質材又は半硬質材である場合、上記プラスチックは、所謂エラストマーである。
上記プラスチックが硬質材である場合には、例えば、カッター等で片側に傷をつけて上記エアタイト構造枠を折り、加工することもできる。また、上記エアタイト構造枠を勘合した状態のままで上記採光断熱材を取り外す場合、上記プラスチックが硬質材であることにより、上記採光断熱材の面材としての剛性が向上し、取扱性が向上する。
【0038】
上記プラスチックが半硬質材又は軟質材である場合には、例えば、裁ちばさみ等でも上記エアタイト構造枠を容易に裁断することができ、取扱性が向上する。また、角部にRのついた部分や円形窓等の曲線部や、曲面部分等に上記採光断熱材を施工することもでき、勘合のオン/オフも行いやすい。
なお、エアタイト構造枠に軟質材を用いた場合の勘合部分の一例を、図9に模式的に示す。
【0039】
ガラス面へのエアタイト構造枠の固定方法に関しては特に限定はないが、乾式で簡易であることから、例えば、両面テープを使用する方法が挙げられる。
ただし、両面テープを使用する場合は、接着剤や糊に配合されている可塑剤等の化学成分がカビ等の発生を誘発し、耐久性が低下する可能性がある。更に、両面テープを使用する場合、エアタイト構造枠を着脱することはできるが、取り外し後に糊残りを溶剤ぶきする必要があったり、糊部が室外側から見えることによって意匠性が低下したり、エアタイト構造枠の固定自体が、接着力や着色に関して、接着剤や糊の耐久性に依存しているため、簡易断熱窓としての耐久性が低下する可能性もある。
【0040】
ガラス面へのエアタイト構造枠の固定方法として、上述の両面テープを使用する方法に加えて、例えば、留め金具又はクリップを使用する方法が挙げられる。
上記留め金具又はクリップとして、例えば、エアタイト構造枠に片側を挿入することができ、かつ、他方側をグレージングチャンネル部に挿入固定することのできる留め金具又はクリップ(図10(a)、(b)に示す)や、片側を、勘合した後の状態のエアタイト構造枠の外側からかぶせ固定することができ、かつ、他方側をグレージングチャンネル部に挿入固定することのできる留め金具又はクリップ(図10(c)に示す)等が挙げられる。これらの留め金具又はクリップを用いることにより、採光断熱材を簡便に施工することができ、また、留め金具又はクリップを先にグレージングチャンネル部から取り外すことができることから、採光断熱材をより容易に取り外すことができる。また、採光断熱材に先に留め金具又はクリップを固定しておいて、採光断熱材の使用時にグレージングチャンネル部に留め金具又はクリップを挿入することより、採光断熱材を更に簡便に施工することができる。
【0041】
上記留め金具又はクリップは特に限定されず、例えば、採光断熱材に固定されたエアタイト構造枠への挿入部と、グレージングチャンネル部への挿入部とを備える留め金具又はクリップが挙げられる。
このような留め金具又はクリップとして、例えば、エアタイト構造枠への挿入方向とグレージングチャンネル部への挿入方向とが同一であり、かつ、断面がコの字型又は変形コの字型である留め金具又はクリップ(図10(a)に示す)や、エアタイト構造枠への挿入方向とグレージングチャンネル部への挿入方向とが反対であり、かつ、断面がS字、変形S字型又は変形L字型の留め金具又はクリップや、エアタイト構造枠への挿入方向とグレージングチャンネル部への挿入方向とが垂直であり、かつ、断面がL字型の留め金具又はクリップ等が挙げられる。また、エアタイト構造枠に対して留め金具又はクリップをしっかりと固定するために、エアタイト構造枠内部に金具の片方の端を挿入可能なスリット状の切れ込み等がある留め金具又はクリップ(図10(b)に示す)を用いることもできる。
【0042】
上記留め金具又はクリップとして、更に、エアタイト構造枠の外側からかぶせ固定する枠固定部と、グレージングチャンネル部への挿入部とを備える留め金具又はクリップも挙げられる。
このような留め金具又はクリップとして、例えば、断面形状がL字型の枠固定部と、断面形状が直線型の挿入部とを備える留め金具又はクリップ(図10(c)に示す)が挙げられる。なお、L字型の枠固定部は、採光断熱材枠を固定できれば充分であり、L字が丸みを帯びていてもよい。
【0043】
上記留め金具又はクリップの形状は特に限定されず、例えば、上述したように、図10(a)に示したような断面がコの字型又は変形コの字型である形状や、図10(b)に示したような断面がS字型又は変形S字型である形状や、図10(c)に示したような断面がL字型又は変形L字型である形状等が挙げられる。
【0044】
また、エアタイト構造枠やグレージングチャンネル部に挿入する部分の厚さは特に限定されないが、よりスムーズに差し込みを行うことができることから、1mm以下であることが好ましい。上記厚さは、0.6mm以下であることがより好ましい。また、上記エアタイト構造枠やグレージングチャンネル部に挿入する部分は、先端部がより薄くなるようにテーパー状になっていることが好ましい。
【0045】
採光断熱材をエアタイト構造枠に固定する方法としては特に限定されず、両面テープやブチルゴムテープによる方法、シリコーンコーキング剤等のコーキング剤による方法、予めエアタイト構造枠の内側に塗布した接着剤による方法、予めエアタイト構造枠の内部に設置したピンやクリップ、突起状物を使用する方法、ビス、クギ等で貫通固定させる方法等が挙げられる。
エアタイト構造枠に採光断熱材を固定した方が施工が容易になるという利点があるが、必ずしも固定する必要はない。固定しない場合には、採光断熱材を容易に交換できたり、熱線反射フィルムを基材として1枚使用した場合、夏と冬との季節毎に、日射光を取り入れたり、反射したりと断熱性を有効に発揮できるよう、表と裏を入れ替えて設置することが可能であるという利点もある。
【0046】
エアタイト構造枠を用いて、窓ガラス部と採光断熱材とを勘合することにより、容易に窓ガラス部より採光断熱材を損傷することなく取り外すことができ、取り外した採光断熱材は必要に応じて再び窓ガラス部に取り付けることもできる。
エアタイト構造枠の周辺部材としては特に限定されず、設置状態や施工性を向上させるために加工が加えられてもよい。具体的には例えば、ガラス開口部とエアタイト構造枠との間の隙間を完全に埋めるよう、予めエアタイト構造枠の外側部分にモール状の部材や発泡体テープを取り付けたものを用いてもよい。モール状の部材や発泡体テープを取り付けることにより、開口ガラスの結露を完全に抑制することができる。また、角部分のシール性や施工精度を増すため、直線部材以外にL字型の角部シール用キャップを準備して、エアタイト構造枠の施工前後に装着させてもよい。また、角部分の接合性を向上する目的で、直線状にカットしたエアタイト構造枠同士を固定するために、エアタイト構造枠内側に設置するL型金具等を装着してもよい。
【0047】
エアタイト構造枠による勘合方法について、図を用いて詳しく説明する。
図1は、本発明の簡易断熱窓の窓ガラス部と採光断熱材との勘合部分の一例を示す模式図である。
図1において簡易断熱窓1では、窓ガラス部2と採光断熱材3とはエアタイト構造枠4により勘合されている。
エアタイト構造枠4は、着脱可能な枠部材41と押え部材42とからなる。枠部材41は、窓ガラス部2の周辺部に、粘着剤411によりシール枠状に配置されている。採光断熱材3は、この枠部材41からなるシール枠の内側に、シール枠に接するようにして配置される。この状態で押え部材42を枠部材41に取り付ける。押え部材42には、突起状の採光断熱材押え部421があることから、採光断熱材3は確実に固定される。採光断熱材3を取り外す際には、押え部材42を枠部材41から取り外すだけでよい。
【0048】
図2は、エアタイト構造枠の勘合部の形状が図1とは異なる例であるが、図2のように、採光断熱材表面とガラスとの間に隙間が介在してもかまわない。
また、枠部材41は、図1及び図2(a)のように、窓ガラス部2の周辺部に配置されていてもよく、図2(b)のように、サッシ枠9に配置されていてもよく、図2(c)及び図2(d)のように、額縁13に配置されていてもよい。枠部材41が、サッシ枠9又は額縁13に配置されることにより、サッシ枠や、サッシ枠と額縁との間の空気層を含めて断熱することができ、断熱性をより高めることができる。
更に、枠部材41は、図1、図2(a)、図2(b)及び図2(c)のように、枠部材41の雄部が窓ガラス部2に対して垂直方向を向くように配置されていてもよく、図2(d)のように、枠部材41の雄部が窓ガラス部2に対して水平方向を向くように配置されていてもよい。
【0049】
図10は、エアタイト構造枠の固定方法が図1及び図2とは異なる例である。
枠部材41は、図1及び図2においては粘着剤411によって固定されているが、図10においては、グレージングチャンネル8に留め金具412を挿入して固定することによって、窓ガラス部2の周辺部に、シール枠状に配置されている。図10のような固定方法の場合、採光断熱材3を取り外す際には、図1及び図2と同様に押え部材42を枠部材41から取り外してもよいが、留め金具412ごと取り外すこともできる。図10のような固定方法を用いることにより、採光断熱材をより簡便に施工することができ、取り外しも容易となる。
【0050】
窓ガラス部が大面積である場合には、ただ1枚の採光断熱材を用いるのではなく、大面積の窓ガラス部の全面を分割して複数枚の採光断熱材を配置してもよい。このような場合の採光断熱材の固定方法は特に限定されないが、次のような方法が考えられる。
例えば、エアタイト構造枠として、例えば、図3に記載したような周辺部用エアタイト構造枠5と、図4に記載したような中央連結部用エアタイト構造枠6とを用いる方法が挙げられる。また、周辺部用エアタイト構造枠5同士の接合部の意匠性を高めるために、図5に記載したようなコーナー部用キャップ7を用いる方法も挙げられる。更に、周辺部用エアタイト構造枠5同士の接合部をコーキング材で埋める方法も挙げられる。このようなコーキング材を用いる方法においては、透明なコーキング材を選択することで接合部を目立ちにくくすることができる。
【0051】
図6に、周辺部用エアタイト構造枠5、中央連結部用エアタイト構造枠6、及び、コーナー部用キャップ7を用いて、複数の採光断熱材3を窓ガラス部2に施工する手順について説明する。
本施工方法では、まず、窓ガラス部2の外周に周辺部用エアタイト構造枠5の枠部材51を接着する(図6(a))。次いで、窓ガラス部2の中央に中央連結部用エアタイト構造枠6の枠部材61を接着する(図6(b))。次いで、周辺部用エアタイト構造枠5の枠部材51と中央連結部用エアタイト構造枠6の枠部材61とによって囲まれた2つの領域に、2枚の採光断熱材3を設置する(図6(c))。次いで、周辺部用エアタイト構造枠5の押え部材52と、中央連結部用エアタイト構造枠6の押え部材62とを嵌め込む(図6(d))。最後に、コーナー部にコーナー部用キャップ7を嵌め込んで、施工を完了する(図6(e))。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、高い断熱性を有し、かつ、着脱が容易で繰り返し使用可能な断熱部を有する簡易断熱窓を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 簡易断熱窓
2 窓ガラス部
3 採光断熱材
4 エアタイト構造枠
41 枠部材
411 粘着剤
412 留め金具
42 押え部材
421 採光断熱材押え部
5 周辺部用エアタイト構造枠
51 枠部材
52 押え部材
522 採光断熱材押え部
6 中央連結部用エアタイト構造枠
61 枠部材
62 押え部材
622 採光断熱材押え部
7 コーナー部用キャップ
8 グレージングチャンネル
9 サッシ枠
10 採光断熱材
11 単板ガラス
12 サッシ
13 額縁
14 サッシレール
15 ビス
16 L型金具
17 クギ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラス部と採光断熱材とからなる簡易断熱窓であって、
前記採光断熱材は、複数の基材フィルムが厚さが100μm〜3mmのガス層を挟んで各々対向した構造を有するものであり、
前記窓ガラス部と採光断熱材とは、エアタイト構造枠により勘合されている
ことを特徴とする簡易断熱窓。
【請求項2】
エアタイト構造枠は、ガラス面周囲のグレージングチャンネル部に挿入された留め金具によって固定されていることを特徴とする請求項1記載の簡易断熱窓。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−101152(P2010−101152A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75956(P2009−75956)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】