説明

米穀由来製品の生産システム、生産方法、生産計画システムおよび生産計画方法

【課題】米穀から発生する各成分を、総合的に活用することができる米穀由来製品の生産システム、生産方法、生産計画システムおよび生産計画方法を提供する。
【解決手段】稲ワラ1、もみ殻2、ヌカ3および白米4のうち、少なくとも一つからメタノール21、メタンガス22、直接燃料23または堆肥24を製造する。さらに、白米4からエタノール28、乳酸27または糖液26を製造する。さらに、ヌカ3から油脂25を製造する。製造されたメタノール21と油脂25とを合成して、BDFメチル29aを製造する。製造されたエタノール28と油脂25とを合成して、BDFエチル29bを製造する。製造されたメタノール21と乳酸27とを合成して、乳酸メチル30aを製造する。製造されたエタノール28と乳酸27とを合成して、乳酸エチル30bを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米穀由来製品の生産システム、生産方法、生産計画システムおよび生産計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米穀類は、日本において澱粉質のもっとも優秀な供給源でありながらも、毎年、生産調整のための減反や余剰米処理としての飼料化、これまでの備蓄米制度に基づく古米の処理など、その活用についての配慮がなされてきていない。例えば、生産余剰米や備蓄古米は、玄米の形で各農業組合あるいは自主流通米取扱い企業の倉庫に、定期的な薫蒸処理および低温管理の下で貯蔵されてきた食用米であるが、特に備蓄古米は、5年以上も経つと貯蔵中の薫蒸処理による臭素臭がひどくついており、乾燥度も高く粒が割れやすいため、食用に不適当である。このため、5年間の保存後にほぼ廃棄処分がなされており、その量は年間30万トンに及ぶとされている。減反や青田刈りが行なわれたとしても、近年の米食離れや豊作により、過剰な生産米が市場に出回ることとなり、生産余剰米や備蓄古米となった後、廃棄処分されている。
【0003】
また、米穀から発生する過剰な稲ワラやもみ殻は、近年では野焼きすることが法律で禁止されているため、堆肥にするか、田畑の泥土に練りこむことになるが、それだけで処理しきれる発生量ではない。米穀から発生するヌカは、健康的な食品副材料として見直しは進んできているものの、油脂類としての腐敗が早く、しかも稲ワラやもみ殻と同様に野焼きさえできないため、処理しにくい粉状の廃棄物となっている。
【0004】
そこで、従来、米穀類の活用を目指した方法として、単発的な乳酸や、エタノール、あるいは乳酸誘導体といったひとつの製造品のみを工場内において効率的に生産するものが提案されている(例えば、特許文献1または2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−143320号公報
【特許文献2】特開2005−154290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載のような従来の米穀類の活用方法では、米穀類の総合的な成分の活用までは充分考慮されていないという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、米穀から発生する各成分を、総合的に活用することができる米穀由来製品の生産システム、生産方法、生産計画システムおよび生産計画方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る米穀由来製品の生産システムは、米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米を使用した米穀由来製品の生産システムであって、前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つからメタノールを製造するメタノール製造手段と、前記白米からエタノールを製造するエタノール製造手段と、前記白米から乳酸を製造する乳酸製造手段と、前記ヌカから油脂を製造する油脂製造手段と、前記メタノール製造手段で製造されたメタノールと、前記油脂製造手段で製造された油脂とを合成して、バイオディーゼル燃料を製造するBDFメチル製造手段と、前記エタノール製造手段で製造されたエタノールと、前記油脂製造手段で製造された油脂とを合成して、バイオディーゼル燃料を製造するBDFエチル製造手段と、前記メタノール製造手段で製造されたメタノールと、前記乳酸製造手段で製造された乳酸とを合成して、乳酸メチルを製造する乳酸メチル製造手段と、前記エタノール製造手段で製造されたエタノールと、前記乳酸製造手段で製造された乳酸とを合成して、乳酸エチルを製造する乳酸エチル製造手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る米穀由来製品の生産方法は、米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米を使用した米穀由来製品の生産方法であって、前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つからメタノールを製造するメタノール製造工程と、前記白米からエタノールを製造するエタノール製造工程と、前記白米から乳酸を製造する乳酸製造工程と、前記ヌカから油脂を製造する油脂製造工程と、前記メタノール製造工程で製造されたメタノールと、前記油脂製造工程で製造された油脂とを合成して、バイオディーゼル燃料を製造するBDFメチル製造工程と、前記エタノール製造工程で製造されたエタノールと、前記油脂製造工程で製造された油脂とを合成して、バイオディーゼル燃料を製造するBDFエチル製造工程と、前記メタノール製造工程で製造されたメタノールと、前記乳酸製造工程で製造された乳酸とを合成して、乳酸メチルを製造する乳酸メチル製造工程と、前記エタノール製造工程で製造されたエタノールと、前記乳酸製造工程で製造された乳酸とを合成して、乳酸エチルを製造する乳酸エチル製造工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る米穀由来製品の生産システムおよび生産方法は、玄米を精米して得られたヌカを油脂またはメタノールに加工し、白米をエタノール、乳酸またはメタノールのいずれかに加工し、稲ワラやもみ殻もメタノールに加工することができる。さらに、製造されたメタノール、エタノール、乳酸および油脂を適宜合成することにより、バイオディーゼル燃料であるBDFエチルやBDFメチル、乳酸エチルおよび乳酸エチルを製造することができる。
【0011】
このように、本発明に係る米穀由来製品の生産システムおよび生産方法によれば、米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米の各成分を、無駄なくバイオマスとして総合的に活用することができる。また、原料の米穀の各成分から、メタノールやエタノール、バイオディーゼル燃料などを製造することができ、ガソリンや軽油、灯油などの代替燃料を提供することができる。これにより、近年の石油資源枯渇問題によるガソリンや軽油、灯油などの高騰に対応することができ、石油資源依存からの脱却を図ることもできる。
【0012】
本発明に係る米穀由来製品の生産システムは、単一工場内に設けられていることが好ましい。また、本発明に係る米穀由来製品の生産方法は、単一工場内で実施されることが好ましい。この場合、メタノールやエタノール、バイオディーゼル燃料などを効率的に製造することができる。また、原料調達の季節変動などに応じた生産調整を行うことにより、より効率的かつ経済的に製造することができる。
【0013】
本発明に係る米穀由来製品の生産システムは、前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つからメタンガスを製造するメタンガス製造手段と、前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つから燃料を製造する燃料製造手段と、前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つから堆肥を製造する堆肥製造手段と、前記白米から糖液を製造する糖液製造手段と、を有することが好ましい。
【0014】
本発明に係る米穀由来製品の生産方法は、前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つからメタンガスを製造するメタンガス製造工程と、前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つから燃料を製造する燃料製造工程と、前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つから堆肥を製造する堆肥製造工程と、前記白米から糖液を製造する糖液製造工程と、を有することが好ましい。
【0015】
このメタンガス、燃料、堆肥および糖液を製造する場合、ヌカを油脂、メタノール、メタンガス、堆肥または燃料のいずれかに加工し、白米を糖液、エタノール、乳酸、メタノール、メタンガス、堆肥または燃料のいずれかに加工し、稲ワラやもみ殻をメタノール、メタンガス、堆肥または燃料のいずれかに加工することができる。これにより、米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米の各成分を、さらに無駄なく効率的にバイオマスとして総合的に活用することができる。
【0016】
本発明に係る米穀由来製品の生産計画システムは、米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米を原料として、前記原料から製造されるメタノール、メタンガス、燃料、堆肥、糖液、乳酸およびメタンガスの一次製品、および、前記一次製品から製造されるバイオディーゼル燃料、乳酸エチルおよび乳酸メチルの二次製品の、生産および販売計画を作成するための米穀由来製品の生産計画システムであって、製造する各一次製品の優先順位および各二次製品の優先順位を示す優先順位情報、各原料、各一次製品および各二次製品の在庫状況を示す在庫情報、各原料の調達量の季節変動を示す季節変動情報、各二次製品の市場価格を示す市場価格情報、各二次製品の製造コストを示す製造コスト情報、各二次製品の競合品の価格を示す競合品情報、ならびに、各原料、各一次製品および各二次製品の保管形態、保存可能期間、保管の容易性を含む保管指標情報を、あらかじめ記憶する記憶手段と、前記記憶手段で記憶された前記優先順位情報、前記在庫情報および前記季節変動情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを算出する生産量算出手段と、前記記憶手段で記憶された前記市場価格情報、前記製造コスト情報および前記競合品情報に基づいて、各二次製品を販売したときに利益が発生するか損失が発生するかを判定する利益判定手段と、前記利益判定手段で損失が発生すると判定された場合、前記記憶手段で記憶された前記保管指標情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量の変更、保管または販売を指示する調整指示手段と、前記調整指示手段で各一次製品および各二次製品の前記生産量の変更が指示された場合、前記記憶手段で記憶された保管指標情報に基づいて、保管が困難な一次製品または二次製品を、保管が容易な一次製品または二次製品に生産を変更し、各一次製品および各二次製品の生産量を再び算出する生産量調整手段と、前記生産量算出手段または前記生産量調整手段で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成する生産計画作成手段とを、有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る米穀由来製品の生産計画方法は、米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米を原料として、前記原料から製造されるメタノール、メタンガス、燃料、堆肥、糖液、乳酸およびメタンガスの一次製品、および、前記一次製品から製造されるバイオディーゼル燃料、乳酸エチルおよび乳酸メチルの二次製品の、生産および販売計画を作成するための米穀由来製品の生産計画方法であって、製造する各一次製品の優先順位および各二次製品の優先順位を示す優先順位情報、各原料、各一次製品および各二次製品の在庫状況を示す在庫情報、各原料の調達量の季節変動を示す季節変動情報、各二次製品の市場価格を示す市場価格情報、各二次製品の製造コストを示す製造コスト情報、各二次製品の競合品の価格を示す競合品情報、ならびに、各原料、各一次製品および各二次製品の保管形態、保存可能期間、保管の容易性を含む保管指標情報を、あらかじめ記憶する記憶ステップと、前記記憶ステップで記憶された前記優先順位情報、前記在庫情報および前記季節変動情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを算出する生産量算出ステップと、前記記憶ステップで記憶された前記市場価格情報、前記製造コスト情報および前記競合品情報に基づいて、各二次製品を販売したときに利益が発生するか損失が発生するかを判定する利益判定ステップと、前記利益判定ステップで損失が発生すると判定された場合、前記記憶ステップで記憶された前記保管指標情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量の変更、保管または販売を指示する調整指示ステップと、前記調整指示ステップで各一次製品および各二次製品の前記生産量の変更が指示された場合、前記記憶ステップで記憶された保管指標情報に基づいて、保管が困難な一次製品または二次製品を、保管が容易な一次製品または二次製品に生産を変更し、各一次製品および各二次製品の生産量を再び算出する生産量調整ステップと、前記生産量算出ステップまたは前記生産量調整ステップで算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成する生産計画作成ステップとを、有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る米穀由来製品の生産計画システムおよび生産計画方法は、季節変動情報を利用して、各原料の調達量の季節変動や気候変動に対応した各一次製品および各二次製品の生産計画を作成することができる。また、市場価格情報、製造コスト情報および競合品情報を利用して、損失の発生を防ぐことができ、経済性を高めることができる。このように、米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米の各成分を、無駄なくバイオマスとして総合的に活用可能で、効率的かつ経済的な生産計画を作成することができる。
【0019】
本発明に係る米穀由来製品の生産計画システムは、前記生産量算出手段または前記生産量調整手段で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各原料の必要量を計算する原料計算手段と、前記記憶手段で記憶された前記季節変動情報および前記保管指標情報に基づいて、各原料の手配可能量を計算する手配原料計算手段と、前記原料計算手段で計算された各原料の必要量が、前記手配原料計算手段で計算された各原料の手配可能量を超えるとき、前記記憶手段で記憶された保管指標情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを再び算出する生産量再調整手段とを有し、前記生産計画作成手段は、前記生産量算出手段、前記生産量調整手段または前記生産量再調整手段で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成することが好ましい。
【0020】
本発明に係る米穀由来製品の生産計画方法は、前記生産量算出ステップまたは前記生産量調整ステップで算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各原料の必要量を計算する原料計算ステップと、前記記憶ステップで記憶された前記季節変動情報および前記保管指標情報に基づいて、各原料の手配可能量を計算する手配原料計算ステップと、前記原料計算ステップで計算された各原料の必要量が、前記手配原料計算ステップで計算された各原料の手配可能量を超えるとき、前記記憶ステップで記憶された保管指標情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを再び算出する生産量再調整ステップとを有し、前記生産計画作成ステップは、前記生産量算出ステップ、前記生産量調整ステップまたは前記生産量再調整ステップで算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成することが好ましい。
【0021】
この各原料の必要量および手配可能量を計算する場合、各原料が不足するのを防ぐことができ、さらに適切な生産計画を作成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、米穀から発生する各成分を、総合的に活用することができる米穀由来製品の生産システム、生産方法、生産計画システムおよび生産計画方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図6は、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産システム、生産方法、生産計画システムおよび生産計画方法を示している。なお、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産方法は、その生産システムにより実行される方法である。また、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産計画方法は、その生産計画システムにより実行される方法である。
【0024】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産システムは、単一工場内に設けられており、メタノール製造手段11とメタンガス製造手段12と燃料製造手段13と堆肥製造手段14と油脂製造手段15と糖液製造手段16と乳酸製造手段17とエタノール製造手段18とバイオディーゼル製造手段19と乳酸エステル製造手段20とを有している。
【0025】
メタノール製造手段11は、米穀から発生する原料の稲ワラ1、もみ殻2、ヌカ3および白米4のうち、少なくとも一つからメタノール21を製造するようになっている。メタンガス製造手段12は、稲ワラ1、もみ殻2、ヌカ3および白米4のうち、少なくとも一つからメタンガス22を製造するようになっている。燃料製造手段13は、稲ワラ1、もみ殻2、ヌカ3および白米4のうち、少なくとも一つからペレット形状等の直接燃料23を製造するようになっている。堆肥製造手段14は、稲ワラ1、もみ殻2、ヌカ3および白米4のうち、少なくとも一つから堆肥24を製造するようになっている。油脂製造手段15は、ヌカ3から食物油などの油脂25を製造するようになっている。糖液製造手段16は、白米4から糖液26を製造するようになっている。乳酸製造手段17は、白米4から乳酸27を製造するようになっている。エタノール製造手段18は、白米4からエタノール28を製造するようになっている。
【0026】
バイオディーゼル製造手段19は、メタノール製造手段11で製造されたメタノール21と、油脂製造手段15で製造された油脂25とを合成して、メチル型のバイオディーゼル燃料(BDFメチル29a)を製造するBDFメチル製造手段と、エタノール製造手段18で製造されたエタノール28と、油脂製造手段15で製造された油脂25とを合成して、エチル型のバイオディーゼル燃料(BDFエチル29b)を製造するBDFエチル製造手段とを有している。
【0027】
乳酸エステル製造手段20は、メタノール製造手段11で製造されたメタノール21と、乳酸製造手段17で製造された乳酸27とを合成して、乳酸メチル30aを製造する乳酸メチル製造手段と、エタノール製造手段18で製造されたエタノール28と、乳酸製造手段17で製造された乳酸27とを合成して、乳酸エチル30bを製造する乳酸エチル製造手段とを有している。
【0028】
これにより、稲ワラ1およびもみ殻2からは、一次製品として、メタノール21、メタンガス22、直接燃料23、堆肥24を製造することができる。メタノール製造手段11では、稲ワラ1やもみ殻2を粉末状にして高温のスチームと酸素ガスとを吹き込み、1000℃付近でガス化を行なう。ガス化後、室温にて水洗によって炭酸ガス、硫化水素、塩酸ガスなどを除き、灰分も流去する。残留したメタンガス、一酸化炭素、水素に、銅−亜鉛系触媒の存在下で再び200℃付近にて加熱蒸気を吹き込むことによってメタノール21を製造することができる。また、メタンガス製造手段12により、稲ワラ1やもみ殻2をチップ状にしてから水分を添加し、嫌気性発酵を行なうことによってメタンガス22を製造することができる。メタンガス製造方法としては、重量の30〜50%程度の水分を加えて密閉容器内に静置し、嫌気性状態でガス発生させる乾式法、および、チップと同量以上の水分を加えて、底部での緩やかな撹拌を加えつつ密閉したタンクから発生するメタンガス22を得る湿式法の、2通りの方式がある。メタノール21やメタンガス22に活用しきれない部分は、直接燃料23や堆肥24の原料にする。
【0029】
ヌカ3からは、一次製品として、食用油などの油脂25、メタノール21、メタンガス22、直接燃料23、堆肥24を製造することができる。油脂製造手段15で製造された食用油は、リノール酸、オレイン酸やビタミンEを含み、リノレン酸が少ないために健康にもよく、他の食用油に比較して劣化しにくいため、揚げ油としての寿命が長いという利点を持つ。しかし、製油前のヌカ3の品質管理が重要であり、腐敗しやすいため、ヌカ3の油を直接に食用でなくBDF原料向けの油脂25にする。また、回収された廃油25aも、BDF原料向けにする。ヌカ3は、メタノール21、メタンガス22、直接燃料23、堆肥24の原料としても活用する。
【0030】
白米4からは、一次製品として、糖液26、乳酸27、エタノール28、メタノール21、メタンガス22、直接燃料23、堆肥24を製造することができる。糖液製造手段16により、白米4を液化・糖化酵素アミラーゼにより液糖化し、15〜20%程度の糖液26を容易に製造することができる。この糖液26は、食品副素材、発酵原料、栄養飲料などに使用できるが、主食用の白米4を糖液26にしたのでは、サトウキビや甜菜原料の蔗糖に対して、経済的に見合うものではない。このため、エタノール製造手段18により、糖液26を原料にして、エタノール発酵を経てエタノール28を製造する。これにより、飲用になるばかりか、ガソリンへの添加剤や乳酸エステル製造原料にすることができる。また、乳酸製造手段17により、糖液26を原料にして乳酸発酵を行なうことにより、有機酸である乳酸27を製造することができ、食品添加物になるばかりか、近年注目されている生分解性素材のひとつであるポリ乳酸の原料にもなる。さらに、メタノール製造手段11により、澱粉質の変換によって、メタノール21を製造することができる。このエタノール28、メタノール21ともにエステルの原料になるため、バイオディーゼル製造手段19でのBDFの副原料として使用することができる。また、乳酸エステル製造手段20により、製造される乳酸27とエタノール28またはメタノール21との反応により、乳酸エステルを製造することができる。なお、白米4は腐敗しやすいため、メタンガス22、直接燃料23、堆肥24の原料としても活用する。
【0031】
また、二次製品として、メタノール21と油脂25とを合成して、BDFメチル29aを製造することができる。BDFメチル29aを製造する場合、製造工程の調整は主に、稲ワラ1およびもみ殻2からのメタノール21の製造、ヌカ3からの油脂25の製造、あるいは廃油25aの回収から始まる。メタノール21は、油脂25の約3倍量を準備し、未反応物は回収して再利用する。メタノール21と苛性ソーダあるいは苛性カリウムとを混ぜた後、油脂25とエステル化反応させる。この油脂25は、水分、夾雑物を取り除いた、遊離脂肪酸の少ない原料が好ましい。反応後に、残ったメタノール21を回収し、底部のグリセリンを除去して粗BDFメチル29aを得ることができる。その後、水洗による脱アルカリと、脱水処理とを行い製品としてのBDFメチル29aとなる。
【0032】
さらに、二次製品として、エタノール28と油脂25とを合成して、BDFエチル29bを製造することができる。BDFエチル29bを製造する場合は、メタノール21の代わりに、白米4から製造したエタノール28を用いる。製造工程は、メタノール21の場合と同様である。
【0033】
二次製品として、エタノール28と乳酸27とを合成して、乳酸エチル30bを製造することができる。乳酸エチル30bを製造する場合、製造は白米4の糖化処理から始め、これを2分割して乳酸発酵工程と、エタノール発酵工程とで処理を行なう。それぞれを精製後、エタノール28を乳酸27の約2倍量にてエステル反応させ、未反応物は回収して再利用する。乳酸エステルは、蒸留分離して製品化する。
【0034】
二次製品として、メタノール21と乳酸27とを合成して、乳酸メチル30aを製造することができる。乳酸メチル30aを製造する場合は、エタノール28の代わりに、主に稲ワラ1およびもみ殻2から製造したメタノール21を用いる。製造工程は、エタノール28の場合と同様である。
【0035】
このように、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産システムおよび生産方法によれば、米穀から発生する稲ワラ1、もみ殻2、ヌカ3および白米4の各成分を、無駄なくバイオマスとして総合的に活用することができる。また、原料の米穀の各成分から、メタノール21やエタノール28、バイオディーゼル燃料、ペレット燃料などを製造することができ、ガソリンや軽油、灯油などの代替燃料を提供することができる。これにより、近年の石油資源枯渇問題によるガソリンや軽油、灯油などの高騰に対応することができ、石油資源依存からの脱却を図ることもできる。
【0036】
本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産システムおよび生産方法を実施するにあたって、メタノール21やエタノール28、バイオディーゼル燃料などのエネルギーの需給バランスや、製品価格の調整が重要なポイントである。このため、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産計画システムおよび生産計画方法により、原料と生産物生産量とのバランスをとりつつ、市場価格と需要とに基づいたコンピューター解析による生産調整を行う。
【0037】
なお、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産計画システムおよび生産計画方法では、以下の点を考慮している。
BDFを製造するのに必要な材料は、油脂25とアルコールとが主体である。油脂25は、ヌカ3から直接製油したもの、あるいは使用済みの廃油25aを集めてきたものから得る。アルコールは、メタノール21であれば、稲ワラ1、もみ殻2の加工から得る。またエタノール28であれば、白米4のエタノール発酵から得るが、主にメタノール21を活用するように調整する。反応時には蒸発の多いメタノール21を20%程度多く加えることを考慮する。季節的な入手原料量の変動も配慮して、貯蔵までも配慮した調整機能を有するようにする。
【0038】
こうした製造工程の調整のみならず、市場での販売価格によっても、製造すべきものの調整をおこなう。例えば、BDFの場合は、市場において競合する軽油の価格が100円/Liter以上とすると、BDF製造価格が80円/Liter未満であれば、製造するだけの利益を生み出せるが、軽油が90円/Literとなった場合には、生産を見合わせる、あるいは製造したBDFを貯蔵するといった判断が必要になる。そうすると、ヌカ3の製油や、稲ワラ1、もみ殻2のメタノール21が生産過剰になるといった製造上バランスの不都合が発生することになる。そこで、こうした事態を避けるために、製造と販売、貯蔵、製造品の変更までを自動的に制御・判断させる機能を持たせるようにする。
【0039】
生産過剰のヌカ3の製油は、品質がよければ食用販売をするのがベストであるが、BDF用とする廃油25aであれば、貯蔵あるいは直接燃料23を考慮する。生産過剰のメタノール21は、例えば製造コストが35円/Literほどのとき、市場販売価格が45円/Liter以上であれば販売することにする。また、生産過剰のエタノール28も、例えば製造コストが50円/Literほどのとき、市場販売価格が60円/Liter以上であれば販売することを判断する、といった機能を持つようにする。
【0040】
ここで難しい問題は、需給バランスと収益とのすり合わせである。例えば、BDFの市場価格が95円/Literで、メタノール21の市場価格が60円/Literであった場合、利益効率からすると、メタノール21を販売するだけのほうが有利である。ところが、メタノール21を販売したために、BDF向けのヌカ3の油脂25が生産過剰のままで貯蔵されていては、原料の有効な活用方法とはいえない。このため、製造における優先順位を設けておき、貯蔵量の多いものを使用して、しかも利益を上げるものを選択して生産する、という機能をも考慮する。
【0041】
市場価格に対する利益の確保における判断基準として、まず総合的な原料の利用における量的なバランスをとる点では、BDFメチル29aの生産を重点的に実施することによって利益を確保することを考慮する。次に、BDFエチル29b、乳酸エチル30b、乳酸メチル30aなどの二次製品の利益を重視する。しかしながら、市場の価格次第で、一次製品である乳酸27、エタノール28、メタノール21単品での市場価格における利益率が極めて高いと判断されるケースでの特例を設けることも考慮する。
【0042】
米のような農産物の生産は、主に気候により生産量が変動する。その結果として、こうした農産物バイオマスを活用した製品の生産および販売は、市場価格の変動による大きなリスクがともない、製造業としての魅力が低いものとなっている。このような原料の生産量が市場価格に連動するケースを回避する手段として、それぞれの原料において生産物の多角化が考案されている。この多角化を利用して製造工程の操業状況を判断・調整することにより、市場価格の変動に対する危険性を回避する仕組みを考慮する。
【0043】
実際に運用する場合には、各原料における製品生産の優先順位付け、製品組み合わせの優先順位付け、市場価格に対する利益の確保における判断基準、原料の保存期間、保管料および保管量、製品の保存期間、保管料および保管量などの、総合的な判断基準とその判断基準間における決定順位付けが必要であることを考慮する。
【0044】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産計画システムおよび生産計画方法について説明する。
図3に示すように、この生産計画システムを実行するコンピュータは、キーボードやマウスなどから成る入力手段51と、各種情報を記憶する記憶手段52と、演算機能および制御機能を有する主制御部53と、モニタなどから成る出力手段54とを有している。
【0045】
入力手段51は、記憶手段52に記憶される情報や、主制御部53に対する指示などを入力するよう構成されている。
記憶手段52は、メモリから成り、優先順位情報55と在庫情報56と季節変動情報57と市場価格情報58と製造コスト情報59と利益判定情報60と競合品情報61と保管指標情報62と構成情報63とを、あらかじめ記憶している。記憶手段52は、入力手段51によりあらかじめ入力された各種情報を記憶しておき、入力手段51により各種情報が随時更新されるたびに、更新された各種情報を記憶するようになっている。
【0046】
表1および表2に示すように、優先順位情報55は、製造する各一次製品の優先順位および各二次製品の優先順位を示している。一次製品の優先順位付けは、付加価値の高くなるものから考え、表2に示す順位とした。ただし、メタンガス22、直接燃料23、堆肥24は、収益や付加価値を度外視した窮余の策としての場合に特定して製造するものとする。二次製品の優先順位付けも、付加価値の高くなるものから考え、表1に示す順位とした。このほかにも、さらに合成・加工を進めていけば、乳酸27からは生分解性プラスチック、ヌカ3からは生分解性ゴム、生分解性セラミックス、油脂25からは生分解性潤滑油、溶剤などが製造できるが、本発明の実施の形態では、2通りの物質の組み合わせの範囲内に製造をとどめている。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
在庫情報56は、各原料、各一次製品および各二次製品の在庫状況を示している。表3に示すように、季節変動情報57は、各原料の調達量の季節変動を示している。市場価格情報58は、各二次製品の市場価格を示している。製造コスト情報59は、各二次製品の製造コストを示している。表4に示すように、利益判定情報60は、各二次製品の販売により要求される最低利益を示している。表5に示すように、競合品情報61は、各二次製品の競合品の価格を示している。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
表6および表7に示すように、保管指標情報62は、各原料、各一次製品および各二次製品の保管形態、保存可能期間、保管の容易性を含む情報を示している。表6に示すように、原料の保管形態に関しては、稲ワラ1およびもみ殻2は、サイロでの常温乾燥状態の保管とする。粉末では自然発火、また湿った状態ではメタン発酵の発生の危険性があるために通気の良い状態を維持する。ヌカ3は、黴やすいために冷蔵保存とする。白米4は、使用直前までは玄米として低温保管することを原則とするが、ヌカ3の使用との兼ね合いがあり、油脂25の製造を先行するケースでは白米4にした後の保存もありうる。原料の保存可能期間に関しては、稲ワラ1およびもみ殻2は、米の収穫時期を配慮するべきであり、9箇月の期間を設定する。ヌカ3は冷蔵として6箇月、玄米は低温保管として2年、白米4は冷蔵として6箇月と設定する。この期間を超える前に製造工程に供することを前提とし、仮にそれが不可能な場合には、メタンガス22、直接燃料23、堆肥24の順に製造して処理するように設定する。冷蔵保存を考慮すべきヌカ3、白米4に関しては、そのための保管料が高くつくことを考慮して、早期に製造および後処理に供することを前提に設定する。表7に示すように、一次製品および二次製品については、それぞれの最長保管期間を設定しておき、その期間以降は、市場価格の指標に左右されずに販売処置をとるように設定する。夏期には、油脂25は低温保存、糖液26は冷蔵保存が必要になるために保管料が高くつくこと、またメタンガス22および堆肥24は基本的に自家消費を前提として、早期に販売を考慮するように設定する。
【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
表8に示すように、構成情報63は、各二次製品の原料、および所定量の各二次製品を製造するための原料の使用量を示している。例えば、稲ワラ1、もみ殻2、ヌカ3をメタノール21に変換する場合は重量比で40%、玄米からヌカ3をとる場合は10%、白米4を糖液26にする場合は90%、糖液26をエタノール28にする場合は35%、糖液26を乳酸27にする場合は60%、ヌカ3から油脂25を製油する場合は10%、油脂25とメタノール21あるいはエタノール28とからBDFを製造する場合は60%(油脂比)、乳酸27とメタノール21あるいはエタノール28とから乳酸27エステルを製造する場合は80%(乳酸比)を、製造することができる。
【0057】
【表8】

【0058】
図3に示すように、主制御部53は、CPUから成り、入力手段51や記憶手段52からデータを受け取り、演算・加工して出力手段54や記憶手段52に送るよう構成されている。主制御部53は、需要予測手段64と生産量算出手段65と利益判定手段66と調整指示手段67と生産量調整手段68と原料計算手段69と手配原料計算手段70と生産量再調整手段71と所要能力計算手段72と可能能力計算手段73と生産量最終調整手段74と生産計画作成手段75とを、機能として有している。
【0059】
需要予測手段64は、過去の需要パターンや市場動向に基づいて、各二次製品の需要予測を行うようになっている。生産量算出手段65は、記憶手段52で記憶された優先順位情報55、在庫情報56および季節変動情報57に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを算出するようになっている。利益判定手段66は、記憶手段52で記憶された市場価格情報58、製造コスト情報59、競合品情報61および利益判定情報60に基づいて、各二次製品を販売したときに利益が発生するか損失が発生するかを判定するようになっている。調整指示手段67は、利益判定手段66で損失が発生すると判定された場合、記憶手段52で記憶された保管指標情報62に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量の変更、保管または販売を指示するようになっている。生産量調整手段68は、調整指示手段67で各一次製品および各二次製品の生産量の変更が指示された場合、記憶手段52で記憶された保管指標情報62に基づいて、保管が困難な一次製品または二次製品を、保管が容易な一次製品または二次製品に生産を変更し、各一次製品および各二次製品の生産量を再び算出するようになっている。
【0060】
原料計算手段69は、記憶手段52で記憶された構成情報63、ならびに、生産量算出手段65または生産量調整手段68で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各原料の必要量を計算するようになっている。手配原料計算手段70は、記憶手段52で記憶された季節変動情報57、保管指標情報62および構成情報63に基づいて、各原料の手配可能量を計算するようになっている。生産量再調整手段71は、原料計算手段69で計算された各原料の必要量が、手配原料計算手段70で計算された各原料の手配可能量を超えるとき、記憶手段52で記憶された保管指標情報62に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを再び算出するようになっている。
【0061】
所要能力計算手段72は、生産量算出手段65、生産量調整手段68または生産量再調整手段71で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各一次製品および各二次製品を生産するのに必要な所要能力を計算するようになっている。可能能力計算手段73は、工場の設備、人員、稼働状況などから、各一次製品および各二次製品を生産するのに利用可能な能力を計算するようになっている。生産量最終調整手段74は、所要能力計算手段72で計算された所要能力が、可能能力計算手段73で計算された利用可能な能力を超えるとき、製造工程の負荷調整を行い、負荷調整で対応できない場合には、記憶手段52で記憶された保管指標情報62に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを再び算出するようになっている。生産計画作成手段75は、生産量算出手段65、生産量調整手段68、生産量再調整手段71または生産量最終調整手段74で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成するようになっている。
【0062】
出力手段54は、文字や画像などを画面に表示したり、書面や図面などを印刷したりするよう構成されている。出力手段54は、記憶手段52で記憶された各種情報や、生産計画作成手段75で作成された生産計画を表示可能である。
【0063】
次に、図4乃至図6を参照して米穀由来製品の生産計画システムの処理手順について説明する。
まず、あらかじめ、優先順位情報55と在庫情報56と季節変動情報57と市場価格情報58と製造コスト情報59と利益判定情報60と競合品情報61と保管指標情報62と構成情報63とを、記憶手段52に記憶しておく。次に、需要予測手段64により、過去の需要パターンや市場動向に基づいて二次製品の需要予測を行う(ステップ81)。需要予測は、主に自動車用軽油の消費量や生分解性溶剤の消費量が指標になる。生産量算出手段65により、需要予測の生産量による順序が、表1に示す二次製品の優先順位と異なる場合、優先順位に合致するよう一次製品の生産量を調整する(ステップ82)。
【0064】
生産量算出手段65により、在庫情報56をチェックし、即時に使用すべき原料在庫および一次製品在庫があれば、その原料を使用した二次製品を生産するように生産調整する(ステップ83)。その際、表1に示す二次製品の優先順位に合致するよう品目と生産量とを決定するが、原料または一次製品によっては合致しない場合が生じる。その場合、原料または一次製品の消費を優先させ、二次製品の優先順位に基づく調整は行わない。原料から二次製品に使用されない一次製品が生産される場合は、表2に示す一次製品の優先順位に基づいて品目および生産量を決定する。また、生産量算出手段65により、在庫情報56をチェックし、二次製品の在庫で有効期限を過ぎている、または対象期間中に有効期限を過ぎる在庫があれば、販売指示データを作成し(ステップ84)、出力手段54により出力する。さらに、生産量算出手段65により、季節変動情報57に基づいて、季節的に入手困難な原料が必要な場合は検証し、実行不可能と判断された場合に納期、生産量を調整する(ステップ85)。季節的に入手困難な可能性が懸念される原料とは、稲ワラ1およびもみ殻2であり、国内では7月から10月の収穫の時期に収集し、保管することが必要である。また、この時期には、ヌカ3および白米4の原料ともいえる玄米も大量に市場に出てくる時期といえるが、食用用途でない飼料用や加工用の安価な玄米を確保することが望ましい。こうして、生産量算出手段65により、二次製品および一次製品の製品別の生産量と納期とを算出する(ステップ86)。
【0065】
利益判定手段66により、市場価格情報58の市場価格から製造コスト情報59の製造コストを除いた値を予測利益とし(ステップ87)、利益判定情報60と比較する。予測利益が利益判定情報60よりも大きく、十分な利益が発生すると判定された場合は、予定販売価格を競合品情報61の対応する競合品価格と比較する。予定販売価格が競合品価格より低い場合は、原料計算手段69により、構成情報63、ならびに、生産量算出手段65で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各原料の必要量を計算する(ステップ88)。
【0066】
予測利益が利益判定情報60よりも小さく、予測利益が不十分で損失が発生すると判定された場合、および、予定販売価格が競合品価格より高い場合は、調整指示手段67により、保管指標情報62に基づいて、在庫として保管するべきかどうか検討し、保管する場合には保管指示データを作成し出力手段54により出力する(ステップ89)。保管しない場合には、二次製品については、販売指示データを作成し出力手段54により出力し(ステップ90)、一次製品については、他の製品への生産量の変更を指示する。例えば、保管が容易である乳酸27、メタノール21やエタノール28などの製品は在庫として保管し、保管が容易でない糖液26や油脂25のような一次製品については他の製品に生産変更し、保管が容易でない二次製品に対しては販売とし、販売指示データを作成する。
【0067】
調整指示手段67で生産量の変更が指示された場合、生産量調整手段68により、保管指標情報62に基づいて、保管が困難な一次製品または二次製品を、保管が容易な一次製品または二次製品に生産を変更し、各一次製品および各二次製品の生産量を再び算出する(ステップ91)。原料計算手段69により、構成情報63、ならびに、生産量調整手段68で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各原料の必要量を計算する(ステップ88)。手配原料計算手段70により、季節変動情報57、保管指標情報62および構成情報63に基づいて、各原料の手配可能量を計算する。各原料の必要量が手配可能量を超えるとき、生産量再調整手段71により、保管指標情報62に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを調整し、再び算出する(ステップ92)。
【0068】
所要能力計算手段72により、これまでに算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各一次製品および各二次製品を生産するのに必要な所要能力を計算する。また、可能能力計算手段73により、工場の設備、人員、稼働状況などから、各一次製品および各二次製品を生産するのに利用可能な能力を計算する(ステップ93)。所要能力が利用可能な能力を超えるとき、生産量最終調整手段74により、製造工程の負荷調整を行い、負荷調整で対応できない場合には、保管指標情報62に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを調整し、再び算出する(ステップ94)。生産計画作成手段75により、これまでに算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成し(ステップ95)、出力手段54により出力する。さらに、生産計画の情報から、製造工程をスケジューリングし(ステップ96)、販売計画を立てて(ステップ97)、出力手段54により出力することもできる。
【0069】
なお、総合的な原料の活用という面から、製品の製造における優先順位付けに変化はない。ただし、その製品ごとの製造量に関するバランスを調整することで、工場運営を行なう。市場価格情報58、競合品情報61、原料や製品の保管量を示す在庫情報56は、原料の入手状況や市場の変動を人為的に判断して適時入力・変更する。
【0070】
本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産計画システムおよび生産計画方法は、季節変動情報57を利用して、各原料の調達量の季節変動や気候変動に対応した各一次製品および各二次製品の生産計画を作成することができる。また、市場価格情報58、製造コスト情報59および競合品情報61を利用して、損失の発生を防ぐことができ、経済性を高めることができる。各原料の必要量および手配可能量を計算するため、各原料が不足するのを防ぐことができる。このように、米穀から発生する稲ワラ1、もみ殻2、ヌカ3および白米4の各成分を、無駄なくバイオマスとして総合的に活用可能で、効率的かつ経済的な生産計画を作成することができる。
【0071】
本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産システムおよび生産方法によれば、米穀類の成分のすべてが無駄なく有効に資源化することができ、これまで石油資源に依存してきた製造品の多くを、バイオマス成分利用製造品として生産することができる。また、本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産計画システムおよび生産計画方法によれば、これまでの単発的な製造プロセスの流れを複合的に保有し、それらをバイオマス資源化製造プロセスとして有機的に連携付けることにより、単一工場における総合的なバイオマス活用システムとして活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産システムおよび生産方法の、原料と製品との関連をしめすフローチャートである。
【図2】図1に示す米穀由来製品の生産システムおよび生産方法の製造工程を示す工程図である。
【図3】本発明の実施の形態の米穀由来製品の生産計画システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す米穀由来製品の生産計画システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図3に示す米穀由来製品の生産計画システムの、図4に続く処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図3に示す米穀由来製品の生産計画システムの、図5に続く処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
1 稲ワラ
2 もみ殻
3 ヌカ
4 白米
11 メタノール製造手段
12 メタンガス製造手段
13 燃料製造手段
14 堆肥製造手段
15 油脂製造手段
16 糖液製造手段
17 乳酸製造手段
18 エタノール製造手段
19 バイオディーゼル製造手段
20 乳酸エステル製造手段
21 メタノール
22 メタンガス
23 直接燃料
24 堆肥
25 油脂
26 糖液
27 乳酸
28 エタノール
29a BDFメチル
29b BDFエチル
30a 乳酸メチル
30b 乳酸エチル
51 入力手段
52 記憶手段
53 主制御部
54 出力手段
55 優先順位情報
56 在庫情報
57 季節変動情報
58 市場価格情報
59 製造コスト情報
60 利益判定情報
61 競合品情報
62 保管指標情報
63 構成情報
64 需要予測手段
65 生産量算出手段
66 利益判定手段
67 調整指示手段
68 生産量調整手段
69 原料計算手段
70 手配原料計算手段
71 生産量再調整手段
72 所要能力計算手段
73 可能能力計算手段
74 生産量最終調整手段
75 生産計画作成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米を使用した米穀由来製品の生産システムであって、
前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つからメタノールを製造するメタノール製造手段と、
前記白米からエタノールを製造するエタノール製造手段と、
前記白米から乳酸を製造する乳酸製造手段と、
前記ヌカから油脂を製造する油脂製造手段と、
前記メタノール製造手段で製造されたメタノールと、前記油脂製造手段で製造された油脂とを合成して、バイオディーゼル燃料を製造するBDFメチル製造手段と、
前記エタノール製造手段で製造されたエタノールと、前記油脂製造手段で製造された油脂とを合成して、バイオディーゼル燃料を製造するBDFエチル製造手段と、
前記メタノール製造手段で製造されたメタノールと、前記乳酸製造手段で製造された乳酸とを合成して、乳酸メチルを製造する乳酸メチル製造手段と、
前記エタノール製造手段で製造されたエタノールと、前記乳酸製造手段で製造された乳酸とを合成して、乳酸エチルを製造する乳酸エチル製造手段と、
を有することを特徴とする米穀由来製品の生産システム。
【請求項2】
前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つからメタンガスを製造するメタンガス製造手段と、
前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つから燃料を製造する燃料製造手段と、
前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つから堆肥を製造する堆肥製造手段と、
前記白米から糖液を製造する糖液製造手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載の米穀由来製品の生産システム。
【請求項3】
米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米を使用した米穀由来製品の生産方法であって、
前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つからメタノールを製造するメタノール製造工程と、
前記白米からエタノールを製造するエタノール製造工程と、
前記白米から乳酸を製造する乳酸製造工程と、
前記ヌカから油脂を製造する油脂製造工程と、
前記メタノール製造工程で製造されたメタノールと、前記油脂製造工程で製造された油脂とを合成して、バイオディーゼル燃料を製造するBDFメチル製造工程と、
前記エタノール製造工程で製造されたエタノールと、前記油脂製造工程で製造された油脂とを合成して、バイオディーゼル燃料を製造するBDFエチル製造工程と、
前記メタノール製造工程で製造されたメタノールと、前記乳酸製造工程で製造された乳酸とを合成して、乳酸メチルを製造する乳酸メチル製造工程と、
前記エタノール製造工程で製造されたエタノールと、前記乳酸製造工程で製造された乳酸とを合成して、乳酸エチルを製造する乳酸エチル製造工程と、
を有することを特徴とする米穀由来製品の生産方法。
【請求項4】
前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つからメタンガスを製造するメタンガス製造工程と、
前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つから燃料を製造する燃料製造工程と、
前記稲ワラ、前記もみ殻、前記ヌカおよび前記白米のうち、少なくとも一つから堆肥を製造する堆肥製造工程と、
前記白米から糖液を製造する糖液製造工程と、
を有することを特徴とする請求項3記載の米穀由来製品の生産方法。
【請求項5】
米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米を原料として、前記原料から製造されるメタノール、メタンガス、燃料、堆肥、糖液、乳酸およびメタンガスの一次製品、および、前記一次製品から製造されるバイオディーゼル燃料、乳酸エチルおよび乳酸メチルの二次製品の、生産および販売計画を作成するための米穀由来製品の生産計画システムであって、
製造する各一次製品の優先順位および各二次製品の優先順位を示す優先順位情報、各原料、各一次製品および各二次製品の在庫状況を示す在庫情報、各原料の調達量の季節変動を示す季節変動情報、各二次製品の市場価格を示す市場価格情報、各二次製品の製造コストを示す製造コスト情報、各二次製品の競合品の価格を示す競合品情報、ならびに、各原料、各一次製品および各二次製品の保管形態、保存可能期間、保管の容易性を含む保管指標情報を、あらかじめ記憶する記憶手段と、
前記記憶手段で記憶された前記優先順位情報、前記在庫情報および前記季節変動情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを算出する生産量算出手段と、
前記記憶手段で記憶された前記市場価格情報、前記製造コスト情報および前記競合品情報に基づいて、各二次製品を販売したときに利益が発生するか損失が発生するかを判定する利益判定手段と、
前記利益判定手段で損失が発生すると判定された場合、前記記憶手段で記憶された前記保管指標情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量の変更、保管または販売を指示する調整指示手段と、
前記調整指示手段で各一次製品および各二次製品の前記生産量の変更が指示された場合、前記記憶手段で記憶された保管指標情報に基づいて、保管が困難な一次製品または二次製品を、保管が容易な一次製品または二次製品に生産を変更し、各一次製品および各二次製品の生産量を再び算出する生産量調整手段と、
前記生産量算出手段または前記生産量調整手段で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成する生産計画作成手段とを、
有することを特徴とする米穀由来製品の生産計画システム。
【請求項6】
前記生産量算出手段または前記生産量調整手段で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各原料の必要量を計算する原料計算手段と、
前記記憶手段で記憶された前記季節変動情報および前記保管指標情報に基づいて、各原料の手配可能量を計算する手配原料計算手段と、
前記原料計算手段で計算された各原料の必要量が、前記手配原料計算手段で計算された各原料の手配可能量を超えるとき、前記記憶手段で記憶された保管指標情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを再び算出する生産量再調整手段とを有し、
前記生産計画作成手段は、前記生産量算出手段、前記生産量調整手段または前記生産量再調整手段で算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成することを、
特徴とする請求項5記載の米穀由来製品の生産計画システム。
【請求項7】
米穀から発生する稲ワラ、もみ殻、ヌカおよび白米を原料として、前記原料から製造されるメタノール、メタンガス、燃料、堆肥、糖液、乳酸およびメタンガスの一次製品、および、前記一次製品から製造されるバイオディーゼル燃料、乳酸エチルおよび乳酸メチルの二次製品の、生産および販売計画を作成するための米穀由来製品の生産計画方法であって、
製造する各一次製品の優先順位および各二次製品の優先順位を示す優先順位情報、各原料、各一次製品および各二次製品の在庫状況を示す在庫情報、各原料の調達量の季節変動を示す季節変動情報、各二次製品の市場価格を示す市場価格情報、各二次製品の製造コストを示す製造コスト情報、各二次製品の競合品の価格を示す競合品情報、ならびに、各原料、各一次製品および各二次製品の保管形態、保存可能期間、保管の容易性を含む保管指標情報を、あらかじめ記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された前記優先順位情報、前記在庫情報および前記季節変動情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを算出する生産量算出ステップと、
前記記憶ステップで記憶された前記市場価格情報、前記製造コスト情報および前記競合品情報に基づいて、各二次製品を販売したときに利益が発生するか損失が発生するかを判定する利益判定ステップと、
前記利益判定ステップで損失が発生すると判定された場合、前記記憶ステップで記憶された前記保管指標情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量の変更、保管または販売を指示する調整指示ステップと、
前記調整指示ステップで各一次製品および各二次製品の前記生産量の変更が指示された場合、前記記憶ステップで記憶された保管指標情報に基づいて、保管が困難な一次製品または二次製品を、保管が容易な一次製品または二次製品に生産を変更し、各一次製品および各二次製品の生産量を再び算出する生産量調整ステップと、
前記生産量算出ステップまたは前記生産量調整ステップで算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成する生産計画作成ステップとを、
有することを特徴とする米穀由来製品の生産計画方法。
【請求項8】
前記生産量算出ステップまたは前記生産量調整ステップで算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、各原料の必要量を計算する原料計算ステップと、
前記記憶ステップで記憶された前記季節変動情報および前記保管指標情報に基づいて、各原料の手配可能量を計算する手配原料計算ステップと、
前記原料計算ステップで計算された各原料の必要量が、前記手配原料計算ステップで計算された各原料の手配可能量を超えるとき、前記記憶ステップで記憶された保管指標情報に基づいて、各一次製品および各二次製品の生産量と納期とを再び算出する生産量再調整ステップとを有し、
前記生産計画作成ステップは、前記生産量算出ステップ、前記生産量調整ステップまたは前記生産量再調整ステップで算出された各一次製品および各二次製品の生産量と納期とに基づいて、生産計画を作成することを、
特徴とする請求項7記載の米穀由来製品の生産計画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−156388(P2008−156388A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343573(P2006−343573)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(506422803)株式会社コルクラーベ (1)
【Fターム(参考)】