説明

籾摺選機の摺米選別装置

【課題】 玄米域と混合米域の境界の検出精度を向上させるとともに、誤動作や故障の発生を無くすことができる籾摺機の摺米選別装置を提供する。
【解決手段】 籾摺機の摺米選別装置1は、籾摺機で摺り出された摺米を玄米、混合米および籾とに揺動選別する。揺動選別板12の傾斜上端側から供給した摺米を揺動にともなう流下過程で玄米域a、混合米域bおよび籾域cに分離させ、揺動選別板12の傾斜下端側から玄米、混合米および籾に分けて流出させる揺動選別構成を有する。揺動選別板12の傾斜下端側には玄米域aと混合米域bとを仕切る可動仕切板13を備えている。可動仕切板13には揺動選別板12上の玄米域aと混合米域bの境界d付近において適正仕切位置を検出するセンサ14を装備してある。センサ14からの信号により可動仕切板13を玄米域aと混合米域bの境界d付近における適正仕切位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾摺機で摺り出された摺米を玄米、混合米および籾とに揺動選別する籾摺機の摺米選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
籾摺機で摺り出された摺米は、玄米に摺り残りの籾とが混合した摺米となっているが、これを各種の選別手段により玄米、混合米および籾とに選別することが行われている。従来、そのための選別手段としては、揺動選別板による揺動選別装置があり、揺動選別板状に形成される玄米、混合米および籾の各域の流下端で玄米域と混合米域とを仕切る可動仕切板を設け、揺動選別板上の玄米域に混在する籾の有無を検出する往復移動センサを備えた構成は、特許第3582109号公報、特開2000−61403公報、特開平10−230224号公報、特開平10−15497号公報、特開平9−276803号公報、特開平8−131961号公報にそれぞれ記載されている。
【0003】
なお、特開平10−143268号公報には、対人センサの設置角度を調整して対人センサの発光部から赤外線を受光部に届かないようにしたセンサ角度調整手段が紹介されている。
【特許文献1】特許第3582109号公報
【特許文献2】特開2000−61403公報
【特許文献3】特開平10−230224号公報
【特許文献4】特開平10−15497号公報
【特許文献5】特開平9−276803号公報
【特許文献6】特開平8−131961号公報
【特許文献7】特開平10−143268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1〜6に記載されている籾摺機の摺米選別装置は、揺動選別板に設けたセンサの往復移動による走査により揺動選別板上の玄米域と混合米域の分布状態を検出し、その結果に基づいて可動仕切板の位置を制御するものであるから、揺動選別板にセンサを往復移動させる可動機構とその駆動機構を備えなければならず、またそれとは別に可動仕切板の駆動機構も必要であって、構成がはなはだ複雑となってしまい、特に激しい揺動を繰り返す揺動選別板にそのような複雑な機構を備えることが、誤動作や故障を多発する原因となっていた。また、センサは揺動選別板上の可動仕切板から離れた位置を検知するので、可動仕切板の位置における玄米域と混合米域の境界の検出精度が低く、このため、玄米に籾の混入を避けるうえから可動仕切板をより玄米域寄りに制御する必要が生じていて選別効率の低下原因となっているのが実情である。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消しようとするものであって、揺動選別板の傾斜下端側に設けて玄米域と混合米域とを仕切る可動仕切板自体に、揺動選別板上の混合米域における籾の混在量を検出するセンサを装備することにより、玄米域と混合米域の境界付近の籾の有無および混在量を玄米の流出位置に接近して検出できてその検出精度の向上を図るとともに、激しい揺動を繰り返す揺動選別板に複雑なセンサ駆動機構を備える必要がなく、誤動作や故障の発生を無くすことができる籾摺機の摺米選別装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は請求項1ないし6に係る籾摺機の摺米選別装置を提案する。すなわち、請求項1に係る籾摺機の摺米選別装置は、籾摺機で摺り出された摺米を玄米、混合米および籾とに揺動選別する籾摺機の摺米選別装置であって、一方へ傾斜する揺動選別板の傾斜上端側から供給した摺米を揺動にともなう流下過程で玄米域、混合米域および籾域に分離させ、揺動選別板の傾斜下端側から玄米、混合米および籾に分けて流出させる揺動選別構成を有し、揺動選別板の傾斜下端側には玄米域と混合米域とを仕切る可動仕切板を備え、可動仕切板には揺動選別板上の混合米域における籾の混在量を検出するセンサを装備してあるとともに、上記センサからの信号により可動仕切板を玄米域と混合米域の適正な仕切り位置に移動させる自動制御構成を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に係る籾摺機の摺米選別装置は、籾摺機で摺り出された摺米を玄米、混合米および籾とに揺動選別する籾摺機の摺米選別装置であって、一方へ傾斜する揺動選別板の傾斜上端側から供給した摺米を揺動にともなう流下過程で玄米域、混合米域および籾域に分離させ、揺動選別板の傾斜下端側から玄米、混合米および籾に分けて流出させる揺動選別構成を有し、揺動選別板の傾斜下端側には玄米域と混合米域とを仕切る可動仕切板を備え、可動仕切板には揺動選別板上の混合米域における籾の混在量を検出するセンサを装備してあり、上記センサが所定の量を超える籾(多数籾)を検出したときは可動仕切板を一定距離だけ玄米域側に移動させかつ玄米域から流出する玄米を混合米とともに揺動選別板上に再選別処理のため循環させ、また所定の量以下の籾(少数籾)を検出したときは可動仕切板を一定距離だけ玄米域側に移動させ、さらに籾が検出されないときは一定距離だけ混合米域に移動させる自動制御構成を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に係る籾摺機の摺米選別装置は、請求項1または2記載の構成において、可動仕切板に装備するセンサは発光素子と受光素子からなり、発光素子の揺動選別板面に対する光照射角を、揺動選別板面から直に反射する光線が受光素子に入射しない範囲の鋭角としたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に係る籾摺機の摺米選別装置は、請求項3記載の構成において、発光素子の揺動選別板面に対する光照射位置を、揺動選別板の傾斜下端よりやや上流位置に設定してあることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に係る籾摺機の摺米選別装置は、請求項1、2、3または4記載の構成において、可動仕切板に装備するセンサは、可動仕切板に対して着脱自在であり、かつ揺動選別板面に対する対向角度調節自在であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に係る籾摺機の摺米選別装置は、請求項1、2、3、4または5記載の構成において、発光素子の揺動選別板面に対する光照射角を45°、照射面積を20cm、照射位置を傾斜下端から100mm上流に設定してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る籾摺機の摺米選別装置によれば、揺動選別板の傾斜下端側に設けて玄米域と混合米域とを仕切る可動仕切板自体に、揺動選別板上の玄米域と混合米域の境界を検出するセンサを装備することにより、玄米域と混合米域の境界付近の籾の有無および混在量を玄米の流出位置に接近して検出できてその検出精度の向上を図るとともに、激しい揺動を繰り返す揺動選別板に複雑なセンサ駆動機構を備える必要がなく、誤動作や故障の発生を無くすことができる効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面は本発明の一実施の形態を示し、図1は本発明に係る籾摺機の摺米選別装置の要部を一部破断して示す斜視図、図2は図1の摺米選別装置を備えた籾摺機の構成図、図3は籾摺選別装置の揺動選別板とセンサとの関係を示す概略側面図、図4は可動仕切板の位置自動制御構成を示すブロック図、図5は本発明の作用説明図である。
【0014】
図1において、1は籾摺機の摺米選別装置であって、この摺米選別装置1は、図2に示すように、籾摺機2に装備されるものである。図2において、3は籾摺装置、4は風選部、5は揺動選別部であって摺米選別装置1を備えている。6は玄米昇降機、7は籾投入昇降機、8は混合米昇降機、9は籾タンク、10は混合米タンクであって、籾タンク9に投入された籾は、籾摺装置3で籾摺りされて風選部4で風選された摺米は混合米タンク10に貯留され、混合米タンク10から摺米選別装置1に供給されるようになっている。摺米選別装置1は、供給される摺米を玄米、混合米および籾に選別して玄米は取り出し、混合米は揺動選別部5に戻して再選別され、籾は籾摺装置3で籾摺り処理される。
【0015】
摺米選別部1は、図1に示すように、揺動枠体11に複数枚の揺動選別板12を多段状に装着して構成されており、揺動枠体11は一方へ傾斜していて揺動され、各段の揺動選別板12には、その傾斜上端側の摺米供給部から摺米が供給される。そして、供給された摺米は各揺動選別板12の揺動にともなう流下過程で玄米域a、混合米域bおよび籾域cに分離され、各揺動選別板12の傾斜下端側から玄米、混合米および籾に分けて流出するようになっている。多段状に設けた揺動選別板12は、第2段以下の揺動選別板12がそれぞれ最上段の揺動選別板12と同じ作用をする並列構成をなしているものである。
【0016】
揺動選別板12の傾斜下端側には、玄米域aと混合米域bとを仕切る可動仕切板(玄米仕切板)13を備えており、この可動仕切板13には揺動選別板12上の玄米域aと混合米域bの境界dを検出するセンサ14を装備してある。上記センサ14からの信号により可動仕切板13を玄米域aと混合米域bの境界d付近において適正仕切位置に位置させる自動制御構成を備えている。15はその駆動モータである。
【0017】
上記可動仕切板13の自動制御構成は、上記センサ14からの信号により可動仕切板13を玄米域aと混合米域bの適正な仕切り位置に位置させる自動制御構成を備えており、上記センサ14が所定の量を超える籾(多数籾)を検出したときは可動仕切板13を一定距離だけ玄米域a側に移動させかつ玄米域aから流出する玄米を混合米とともに混合米タンク(図示せず)を経て再度揺動選別部5の揺動選別板12上に循環させて再選別し、センサ14が所定の量以下の籾(少数籾)を検出したときは可動仕切板13を一定距離(10mm)だけ玄米域側に移動させ、かつ籾が検出されないときは一定距離(10mm)だけ混合米域に移動させる制御作動をするものである。なお、上記一定距離は10mmないしはその前後の値とするのが好適である。
【0018】
可動仕切板13に装備するセンサ14は、赤外線を発光する発光素子と受光素子からなり(図示省略)、発光素子の揺動選別板面に対する光照射角αを、揺動選別板12面から直に反射する光線が受光素子に入射しない範囲の鋭角としてある(図3参照)。この照射角度αは45°ないしはその前後の値が好適である。また、発光素子の照射面積は20cm、その光線の照射位置は揺動選別板12の傾斜下端から100mmないしはその前後の上流位置に設定するのが好ましい。
【0019】
図示した実施の態様においては、可動仕切板13が揺動選別板12より上方に延びていているとともに、揺動選別板12の下端側上面にやや被さるように屈曲形状をなっている。そして、センサ14は可動仕切板13の屈曲部16に斜め下向きに取り付けられ、可動仕切板13に対して着脱自在であるとともに揺動選別板12面に対する対向角度が調節自在である。
【0020】
可動仕切板13に装備されたセンサ14は、揺動選別板12面に対して鋭角に対向させてあるので、揺動選別板12上に玄米や籾が無い状態では、センサ14の発光素子から揺動選別板12面に照射して反射する光線は受光素子には入射しないが、揺動選別板12上に玄米や籾があると反射光線の多くが受光素子に入射して検出される(図3および図5参照)。
【0021】
そして、センサ14が籾を感知したときと玄米のみを感知したときの受光素子に入射する光量が相違するので、感知した光量に応じて可動仕切板13が位置する玄米域aおよび混合米域bの境界付近において籾が混在しているか否かを感知し、予め設定した所定の量を超える籾(多数籾)を検出したときは可動仕切板13を一定距離だけ玄米域a側に移動させかつ玄米域aから流出する玄米を混合米とともに混合米タンクに循環させる。また所定の量以下の籾(少数籾)を検出したときは可動仕切板13を一定距離だけ玄米域a側に移動させ、かつ籾が検出されないときは一定距離だけ混合米b域に移動させるように自動制御する。
【0022】
図4にはその自動制御構成が例示してある。図4において17は多数籾閾(しきい)値設定器、18は少数籾閾値設定器、19は多数籾比較器、20は少数籾比較器であって、センサ14の検出信号は多数籾比較器19および少数籾比較器20でそれぞれの閾値と比較され、前記のように少数籾検出時制御または多数籾検出時制御が行われる。
【0023】
少数籾閾値設定器18はセンサ14から得た瞬時信号の移動平均値に「所定の係数1」をかけて瞬時に閾値を算定するものであり、移動平均値の変化に対応して閾値も追従して自動的に変化するようにしてある。
多数籾閾値設定器17は制御開始時の籾センサ14から得た瞬時信号の移動平均値に「所定の係数2」をかけて閾値を算定し保持するようにしてある。また、センサ14の信号は、多数籾比較器19および少数籾比較器20において多数籾閾値設定器17および少数籾設定器18の閾値と比較され、可動仕切板13の位置を決める少数籾検出時制御または多数籾検出時制御が行われるようになっている。ただし、「所定の係数2」は「所定の係数1」より大きな値としてある。
【0024】
本発明に係る籾摺機の摺米選別装置1によれば、揺動選別板12の傾斜下端側に設けて玄米域aと混合米域bとを仕切る可動仕切板13自体に、揺動選別板12上の玄米域aと混合米域bの境界d付近を検出するセンサ14を装備してあるので、玄米域aと混合米域bの境界d付近を玄米の流出位置に接近して検出できて、その検出精度の向上を図ることができるとともに、激しい揺動を繰り返す揺動選別板12に複雑なセンサ駆動機構を備える必要がなく、誤動作や故障の発生を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る籾摺機の摺米選別装置の要部を一部破断して示す斜視図である。
【図2】図1の摺米選別装置を備えた籾摺機の構成図である。
【図3】籾摺選別装置の揺動選別板とセンサとの関係を示す概略側面図である。
【図4】可動仕切板の位置自動制御構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の作用説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 摺米選別装置
2 籾摺機
3 籾摺装置
4 風選部
5 揺動選別部
6 玄米昇降機
7 籾投入昇降機
8 混合米昇降機
9 籾タンク
10 摺米タンク
11 揺動枠体
12 揺動選別板
13 可動仕切板(玄米仕切板)
14 センサ
15 駆動モータ
16 屈曲部
17 多数籾閾(しきい)値設定器、
18 少数籾閾(しきい)値設定器
19 多数籾比較器
20 少数籾比較器
a 玄米域
b 混合米域
c 籾域
d 玄米域と混合米域の境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾摺機で摺り出された摺米を玄米、混合米および籾とに揺動選別する籾摺機の摺米選別装置であって、
一方へ傾斜する揺動選別板の傾斜上端側から供給した摺米を揺動にともなう流下過程で玄米域、混合米域および籾域に分離させ、揺動選別板の傾斜下端側から玄米、混合米および籾に分けて流出させる揺動選別構成を有し、
揺動選別板の傾斜下端側には玄米域と混合米域とを仕切る可動仕切板を備え、 可動仕切板には揺動選別板上の混合米域における籾の混在量を検出するセンサを装備してあるとともに、
上記センサからの信号により可動仕切板を玄米域と混合米域の適正な仕切り位置に移動させる自動制御構成を備えていること
を特徴とする籾摺機の摺米選別装置。
【請求項2】
籾摺機で摺り出された摺米を玄米、混合米および籾とに揺動選別する籾摺機の摺米選別装置であって、
一方へ傾斜する揺動選別板の傾斜上端側から供給した摺米を揺動にともなう流下過程で玄米域、混合米域および籾域に分離させ、揺動選別板の傾斜下端側から玄米、混合米および籾に分けて流出させる揺動選別構成を有し、
揺動選別板の傾斜下端側には玄米域と混合米域とを仕切る可動仕切板を備え、
可動仕切板には揺動選別板上の混合米域における籾の混在量を検出するセンサを装備してあり、
上記センサが所定の量を超える籾を検出したときは可動仕切板を一定距離だけ玄米域側に移動させかつ玄米域から流出する玄米を混合米とともに揺動選別板上に再選別処理のため循環させ、また所定の量以下の籾を検出したときは可動仕切板を一定距離だけ玄米域側に移動させ、さらに籾が検出されないときは一定距離だけ混合米域に移動させる自動制御構成を備えていること
を特徴とする籾摺機の摺米選別装置。
【請求項3】
可動仕切板に装備するセンサは発光素子と受光素子からなり、発光素子の揺動選別板面に対する光照射角を、揺動選別板面から直に反射する光線が受光素子に入射しない範囲の鋭角としたことを特徴とする請求項1または2記載の籾摺機の摺米選別装置。
【請求項4】
発光素子の揺動選別板面に対する光照射位置を、揺動選別板の傾斜下端よりやや上流位置に設定してあることを特徴とする請求項3記載の籾摺機の摺米選別装置。
【請求項5】
可動仕切板に装備するセンサは、可動仕切板に対して着脱自在であり、かつ揺動選別板面に対する対向角度調節自在であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の籾摺機の摺米選別装置。
【請求項6】
発光素子の揺動選別板面に対する光照射角を45°、照射面積を20cm、照射位置を傾斜下端から100mm上流に設定してあることを特徴とする請求項2、3、4または5記載の籾摺機の摺米選別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−117925(P2007−117925A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315248(P2005−315248)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】