説明

粉体の定量供給装置

【課題】流動性の高い粉体でも安定して連続的に定量供給することができるようにした粉体の定量供給装置を提供することである。
【解決手段】ハウジング1の内部に擦り切り板14を組み込んでハウジング1の底壁2上にテーブル収容空間を設け、そのテーブル収容空間内に組み込まれて一方向に回転される回転テーブル19の外周部に小容積の多数のポケット20を等間隔に設け、そのポケット20のそれぞれを、内端が外端に対して周方向で位置がずれるように傾斜させ、それぞれのポケット20がハウジング1の底壁2に形成された排出口17の一方の内側面と斜交する状態で回転して、排出口17に対する連通位置がポケット20の長さ方向で変化するようにして、ポケット20内の粉体がポケット20の長さ方向に沿って排出口17内に順次排出されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機の現像用トナーや医薬品、農薬、金属、化学物質等の各種の粉体の定量供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体収容用の複数のポケットを外周部に有する回転テーブルを一方向に連続回転させて粉体を定量供給するようにした粉体の定量供給装置は従来から知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、粉体収容筒内に複数の隔壁を、その周縁の一部に形成された開口が反対位置に配置されるよう上下に複数段設け、粉体収容筒の底壁には、最下段の隔壁に形成された開口と反対の位置に排出口を設け、上記隣接する隔壁間および最下段の隔壁と粉体収容筒の底壁間に形成された環状空間内に粉体収容用のポケットが外周部に放射状に等間隔に形成された回転テーブルを組込み、上記隔壁の開口から回転テーブルのポケット内に収容される粉体を回転テーブルの回転により周方向に搬送して、その下方に配置された隔壁の開口から下段の回転テーブルのポケット内に順次送り込むとともに、最下段の回転テーブルのポケットから排出口に粉体を落下排出させるようにしている。
【0004】
上記の粉体の定量供給装置においては、回転テーブルの外周部に放射状に等間隔に形成されたポケットが貫通孔から形成されて隣接するポケットと完全に独立しており、しかも、隔壁と回転テーブルの外周上縁間はシール部材によりシールされて間隙が存在しないため、流動性の高い粉体でもフラッシングを生じさせることなく定量供給することができるという特徴を有している。
【0005】
ここで、フラッシングとは、回転テーブルの周囲に形成される隙間から粉体がリークすることをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭63−46427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載された粉体の定量供給装置において、回転テーブルの外周部に形成されたポケットが扇形であり、粉体収容筒の底壁に形成された排出口がそのポケットと同一の形状で同一の大きさとされていると、ポケットの一部が排出口に連通し始めてから回転テーブルがわずかに回転すると、ポケットと排出口の連通面積が大きく変化し、流動性の高い粉体の場合には、ポケット内の全ての粉体が排出口内に瞬時に流れ落ちて次工程に供給されることになり、粉体の供給がバッチ式になって、連続的に定量供給することができないという不都合がある。
【0008】
この発明の課題は、流動性の高い粉体でも安定して連続的に定量供給することができるようにした粉体の定量供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明においては、底付き筒状ハウジングの内部に、そのハウジングの底壁との間でテーブル収容空間を形成する擦り切り板を設け、その擦り切り板の外周部に流入口を形成し、その流入口に粉体を貯留するホッパの下部出口を連通し、前記テーブル収容空間内にはモータにより回転駆動される回転テーブルを組込み、その回転テーブルの外周部に粉体収容用のポケットを周方向に等間隔に形成し、前記ハウジングの底壁には前記流入口から周方向に180°ずれた位置に排出口を設け、前記流入口からポケット内に流入する粉体を回転テーブルの回転により周方向に搬送して、前記排出口から流出させるようにした粉体の定量供給装置において、前記ポケットが、回転テーブルの外周面から内方に向けて延びる小容積の細長孔とされて前記回転テーブルの外周部に多数形成され、その細長孔からなるポケットが回転テーブルの回転に伴って排出口の一方の内側面と斜交する関係をもって回転するようポケットを排出口の一方の内側面に対して傾斜させた構成を採用したのである。
【0010】
上記のように、細長孔からなるポケットを排出口の一方の内側面に対して傾斜させることにより、回転テーブルの回転に伴い、ポケットは排出口の一方の内側面に対して斜交する関係をもって回転し、排出口に対するポケットの連通位置がポケットの長さ方向に変化する。
【0011】
このため、ポケット内の粉体は排出口に直ちに流れ落ちるというようなことがなく、ポケットの長さ方向に沿って排出口に順次排出されることになり、流動性の高い粉体の場合であっても、粉体は連続して定量供給されることになる。
【0012】
ここで、排出口を、その周方向で対向する一対の内側面が排出口の中心と回転テーブルの回転中心を結ぶ直線に平行する角形とし、ポケットを回転テーブルの回転中心を通る半径方向の直線に対して傾斜させ、そのポケットの内端をこれに隣接するポケットの外端に対して周方向に一致またはオーバラップさせることにより、ポケット内の粉体が全て排出口に排出されると略同時に回転方向後行側のポケット内の粉体が排出口に排出され始めることになり、粉体をより安定して連続的に定量供給することができる。
【0013】
また、ハウジングの底壁の上面に回転テーブルの回転軸心上に中心を有する環状のシール溝を形成し、そのシール溝内に組み込まれたシールリングを回転テーブルの下面に弾性接触させて回転テーブルと底壁の対向面間をシールすることにより、回転テーブルと底壁の対向面間に粉体がフラッシングするのを防止することができ、粉体を精度よく定量供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明においては、上記のように、回転テーブルの回転に伴って、その回転テーブルの外周部に形成された多数の小容積のポケットが排出口に順次連通し、その排出口に対するポケットの連通位置がポケットの長さ方向に変化するため、そのポケット内の粉体は排出口に直ちに流れ落ちるようなことがなくなってポケットの長さ方向に沿って順に排出口に排出されることになり、粉体を連続して定量供給することができる。また、特に、流動性の高い粉体であっても、ポケットの容積を小さくして排出口に順次連通させることにより粉体供給の定量性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係る粉体の定量供給装置の実施の形態を示す縦断面図
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図
【図5】ポケットの他の例を示し、(イ)乃至(ハ)は粉体の供給動作を段階的に示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この発明に係る粉体の定量供給装置は、ハウジング1を有している。ハウジング1は、底壁2の外周に円筒状の周壁3を設け、その周壁3の上端に外向きのフランジ4を設けた構成とされている。
【0017】
図1および図3に示すように、ハウジング1上には粉体を貯蔵する円筒状のホッパ5が設けられ、そのホッパ5の下端部外周に設けられたフランジ6がハウジング1のフランジ4上に重ね合わされ、両フランジ4、6の周囲に巻き付くヘルールクランプ7の締付けによってハウジング1にホッパ5が連結されている。
【0018】
ハウジング1の下方には、モータ8および減速機9が設けられ、その減速機9に駆動軸10が接続されている。駆動軸10は縦方向に延び、その上部はハウジング1の底壁2に形成された軸挿入孔11に挿通され、ハウジング1の内部に臨む上端部に棒状の撹拌羽根12が取り付けられている。
【0019】
図2に示すように、ハウジング1における周壁3の内周には段部13が形成され、その段部13によって円形の擦り切り板14の外周部が支持され、ホッパ5のフランジ6下面に設けられた押えリング16により段部13に押し付けられて固定の配置とされている。
【0020】
図4に示すように、擦り切り板14の外周部には、矩形の流入口15が形成され、一方、ハウジング1の底壁2には、上記流入口15から周方向に180°ずれた位置に排出口17が設けられている。
【0021】
排出口17は矩形状をなし、対向一対の内側面17a、17bは底壁2の中心と排出口17の中心を結ぶ直線に平行している。
【0022】
ハウジング1内に対する上記擦り切り板14の組込みによって、その擦り切り板14とハウジング1の底壁2間に円形のテーブル収容空間18が設けられている。テーブル収容空間18内には円形の回転テーブル19が組み込まれている。この回転テーブル19は駆動軸10に取り付けられて、駆動軸10と一体に回転するようになっている。
【0023】
回転テーブル19の外周部には粉体収容用の多数のポケット20が周方向に等間隔に形成されている。ポケット20は回転テーブル19の外周面から内方に向けて長く延びる小容積の細長孔からなっている。この細長孔からなるポケット20は、回転テーブル19の回転方向(図4の矢印で示す方向)に傾斜して、その内端が外端に対してテーブル回転方向の後行側に位置がずれている。
【0024】
なお、ポケット20の傾斜方向は図示例に限定されず、図4とは反対に、その内端が外端よりテーブル回転方向の先行側に位置ずれする方向に傾斜させるようにしてもよい。
【0025】
図2に示すように、ハウジング1の底壁2の上面には駆動軸10の軸心上に中心を有する環状のシール溝21が形成され、そのシール溝21に組み込まれたシールリング22が回転テーブル19の下面に弾性接触して、回転テーブル19と底壁2の対向面間をシールしている。
【0026】
実施の形態で示す粉体の定量供給装置は上記の構造からなり、モータ8の駆動により回転テーブル19を図4の矢印で示す方向に回転させると、その回転テーブル19の外周部に形成されたポケット20が擦り切り板14に形成された流入口15の下方を順次通過し、その流入口15と上下で対向する状態で、ホッパ5内に貯留された粉体が流入口15からポケット20内に流入する。
【0027】
ポケット20内に流入した粉体は回転テーブル19の回転により周方向に搬送され、排出口17と対向する位置まで搬送されると、その排出口17内に落下して排出シュートから次工程に搬送される。
【0028】
ここで、ハウジング1の底壁2に形成された排出口17および回転テーブル19の外周部に形成されたポケット20のそれぞれが従来例のように大容積の扇形とされて同一の大きさとされていると、ポケット20の一部が排出口17と連通し始めて回転テーブル19がわずかに回転すると、ポケット20と排出口17の連通面積が大きく変化する。このため、流動性の高い粉体の場合、ポケット20内の全ての粉体が排出口17内に瞬時に流れ落ちて次工程に供給されることになり、粉体の供給がバッチ式になって、連続的に定量供給することができない。
【0029】
しかし、実施の形態においては、ポケット20が小容積の細長孔とされ、その細長孔からなるポケット20が回転テーブル19の回転方向に傾斜しているため、回転テーブル19の回転に伴い、多数の小容積のポケット20は排出口17に順次連通し、しかも、それぞれのポケット20は排出口17の一方の内側面17aに対して斜交する関係をもって回転することになり、排出口17に対するポケット20の連通位置がポケット20の長さ方向に変化する。
【0030】
このため、ポケット20内の粉体は排出口17に直ちに流れ落ちるようなことがなくなってポケット20の長さ方向に沿って順に排出口17に排出されることになり、粉体は連続して定量供給されることになる。
【0031】
特に、流動性の高い粉体であっても、ポケット20の容積を小さくして排出口17に順次連通させることにより粉体供給の定量性が確保されることになる。
【0032】
また、回転テーブル19とハウジング1の底壁2の対向面間はシールリング22によりシールされているため、上記対向面間に粉体がフラッシングするというようなこともない。
【0033】
ここで、粉体が付着性の高い場合、ポケット20内に流入した粉体は全てが排出口17内に落下排出されることなくポケット20の内周面に付着して残る可能性がある。
【0034】
そのような不都合の発生を防止するため、ここでは、図2および図4に示すように、ハウジング1における周壁3の排出口17の上側部位にノズル23を設け、付着性の高い粉体の定量供給の際にのみ、そのノズル23から排出口17に連通するポケット20内に向けて圧縮エアを吹き込み、その圧縮エアとの衝突によりポケット20の内面に付着する粉体を取り除くようにしている。24は、ノズル23に接続されたエア供給管を示す。
【0035】
図5の(イ)乃至(ハ)は、ポケット20の他の例を示す。この例においては、回転テーブル19の外周部に等間隔に形成された複数の細長孔からなるポケット20を回転テーブル19の回転中心を通る半径方向の直線に対して傾斜させ、そのポケット20の内端をこれに隣接するポケット20の外端に対して周方向にオーバラップさせるようにしている。図5の(イ)に示すδはラップ量を示している。
【0036】
上記のように、ポケット20の内端をこれに隣接するポケット20の外端に対して周方向にオーバラップさせることにより、図5(イ)に示すように、ポケット20a内の粉体が全て排出口17に排出される手前の状態で回転方向後行側のポケット20b内の粉体が排出口17に排出され始めることになり、粉体をより安定して連続的に定量供給することができる。
【0037】
なお、図5では、ポケット20の内端をこれに隣接するポケット20の外端に対して周方向にオーバラップさせるようしたが、一致させるようにしてもよい。
【0038】
なお、図4および図5では、回転テーブル19の外周部に形成されたポケット20を、その内端と外端が周方向で位置がずれるように傾斜させ、一方、矩形の流入口15および排出口17のそれぞれを回転テーブル19の回転中心に向けて形成したが、ポケット20を回転テーブル19の回転中心に向けて形成して放射状の配置とし、矩形の流入口15および排出口17のそれぞれを、その対向内側面が各口の中心と底壁2の中心を結ぶ直線に対して傾きをもつよう傾斜させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ハウジング
2 底壁
5 ホッパ
8 モータ
14 擦り切り板
15 流入口
17 排出口
17a 一方の内側面
18 テーブル収容空間
19 回転テーブル
20 ポケット
21 シール溝
22 シールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底付き筒状ハウジングの内部に、そのハウジングの底壁との間でテーブル収容空間を形成する擦り切り板を設け、その擦り切り板の外周部に流入口を形成し、その流入口に粉体を貯留するホッパの下部出口を連通し、前記テーブル収容空間内にはモータにより回転駆動される回転テーブルを組込み、その回転テーブルの外周部に粉体収容用のポケットを周方向に等間隔に形成し、前記ハウジングの底壁には前記流入口から周方向に180°ずれた位置に排出口を設け、前記流入口からポケット内に流入する粉体を回転テーブルの回転により周方向に搬送して、前記排出口から流出させるようにした粉体の定量供給装置において、
前記ポケットが、回転テーブルの外周面から内方に向けて延びる小容積の細長孔とされて前記回転テーブルの外周部に多数形成され、その細長孔からなるポケットが回転テーブルの回転に伴って排出口の一方の内側面と斜交する関係をもって回転するようポケットを排出口の一方の内側面に対して傾斜させたことを特徴とする粉体の定量供給装置。
【請求項2】
前記排出口を、その周方向で対向する一対の内側面が排出口の中心と回転テーブルの回転中心を結ぶ直線に平行する角形とし、前記細長孔からなるポケットを、回転テーブルの回転中心を通る半径方向の直線に対して傾斜させ、そのポケットの内端をこれに隣接するポケットの外端に対して周方向に一致またはオーバラップさせた請求項1に記載の粉体の定量供給装置。
【請求項3】
前記ハウジングの底壁の上面に回転テーブルの回転軸心上に中心を有する環状のシール溝を形成し、そのシール溝内に組み込まれたシールリングを回転テーブルの下面に弾性接触させて回転テーブルと底壁の対向面間をシールした請求項1又は2に記載の粉体の定量供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131584(P2012−131584A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282920(P2010−282920)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000229450)日本ニューマチック工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】