説明

粉体の水洗処理方法および水洗処理装置

【課題】粉体を分散するための攪拌羽根を持たず、同一容器でろ過から乾燥まで行うことができる粉体の水洗処理方法および水洗処理装置を提供する。
【解決手段】水を入れた容器4に圧縮空気を入れて旋回流をつくり、導入した粉体を分散及び攪拌した後蓋をし、前記容器4の下部に設けられた排出口6を開けて粉体のろ過及びろ過液の排出を行った後、該粉体が乾燥するまで保持し、好ましくは、前記圧縮気体として蒸気を用いることにより、前記容器4内を加温して水洗処理を促進することを特徴とする粉体の水洗処理方法および水洗処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の水洗処理方法および水洗処理装置に関し、具体的には、例えばシリカやアルミナなどの酸化物からなる無機質粉体を水中に導入し分散および撹拌して水洗処理した後、同一系内で容易に乾燥粉体にできる水洗処理方法および水洗処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばシリカやアルミナなどの酸化物からなる無機質粉体は、半導体封止材用フィラーなどに使用されており、これらの粉体は、不純物除去を目的に水洗処理が行われている。
【0003】
粉体の水洗処理に関しては、従来から種々の提案がなされており、例えば
特開2002−239480号公報(下記特許文献1)には、下部に逆円錐形状部が形成され円筒形状をなし、粉体が収納され洗浄液が供給される洗浄槽と、この洗浄槽の円壁と接線をなすように設けられ逆円錐形状部近傍に設けられ、速度を有して供給される流体が流入する流体供給口とを有し、この流体供給口から供給される流体は逆円錐形状部内で旋回流をなし、流体により粉体を攪拌し、洗浄液により粉体を洗浄することによりコストが安く粉体を高純度に洗浄できる粉体の撹伴洗浄装置および洗浄方法が記載されている。
【0004】
また、実開昭56−159128号公報(下記特許文献2)には、液体及び液体を入れる槽の下部に、該槽の内周に沿って同一方向に圧縮流体を噴射させるノズルを少なくとも1箇所設け、上記液体及び粉体の混合効果を高める粉体混合装置が記載されている。
【0005】
しかし、従来の水洗処理はタンク内に水を入れ、羽根で攪拌しながら粉体を分散する方法が採用されており、沈降後、ろ過装置に移し変えて脱水処理し、更に乾燥機に移し変えて乾燥という煩雑な工程を必要としていたうえ、攪拌羽根の磨耗或いは工程間移動の際の異物混入なども問題になっていた。
【0006】
また、ろ過工程ではフィルターに目詰まりが生じて効率的な処理ができないうえ、複数の装置を使用するため切替作業も煩雑になるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−239480号公報
【特許文献2】実開昭56−159128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前述のような従来技術の問題点を解決し、粉体を分散するための攪拌羽根を必要とせず、同一容器でろ過から乾燥まで行うことができる粉体の水洗処理方法および水洗処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)水を入れた容器に粉体を導入し、該容器に圧縮気体を導入して前記粉体を分散および撹拌して蓋をし、前記容器の下部に設けられた排出口を開けて粉体のろ過及びろ過液の排出を行った後、該粉体が乾燥するまで保持することを特徴とする粉体の水洗処理方法。
(2)前記圧縮気体として蒸気を用いることにより、前記容器内を加温して水洗処理を促進することを特徴とする(1)に記載の粉体の水洗処理方法。
(3)前記圧縮気体を用いて前記容器を加圧することにより、ろ過から乾燥まで連続処理することを特徴とする(1)または(2)に記載の粉体の水洗処理方法。
(4)前記圧縮気体の圧力を変更することにより、前記粉体の堆積状態を変えて処理時間を短縮することを特徴とする(3)に記載の粉体の水洗処理方法。
(5)さらに、前記容器に熱エネルギーを与えることにより粉体の乾燥効率を向上させることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の粉体の水洗処理方法。
(6)(1)〜(5)のいずれか一項に記載の粉体の水洗処理方法に用いる装置であって、前記容器の外周に、該容器に圧縮気体を導入する複数のノズルを容器の外周面に対して傾斜させて配置したことを特徴とする粉体の水洗処理装置。
(7)前記容器に熱エネルギーを与える手段として、容器壁面を電気や蒸気による加熱手段、または、容器上部から粉体にマイクロ波の照射手段を有することを特徴とする(6)に記載の粉体の水洗処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉体を分散するための攪拌羽根を必要とせず、蒸気による旋回流で分散力を得ることができ、同一容器でろ過から乾燥まで行うことができるうえ、蒸気を使用することで分散中に加温ができ、反応の促進、乾燥のスピードアップが可能になる粉体の水洗方法および水洗装置を提供することができる。また、マイクロ波を併用することで更に乾燥のスピードアップが図れるなど産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の水洗処理装置の実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明を実施するための形態について、図1を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の水洗処理装置の実施形態を例示する図である。図1において、1は水・空気ノズル、2は圧縮気体ノズル、3は蒸気ノズル、4は容器、5はフィルター、6は排出口を示す。
【0013】
本発明の粉体の水洗処理方法は、水を入れた容器4に粉体を導入し、該容器4に圧縮気体を導入して前記粉体を分散および撹拌して蓋をし、前記容器4の下部に設けられた排出口6を開けて粉体のろ過及びろ過液の排出を行った後、該粉体が乾燥するまで保持することを特徴とする。
【0014】
本発明は、粉体の分散に圧縮気体を使用し、分散からろ過、乾燥まで同一容器で水洗処理することができる。圧縮気体としては、汎用性とコストの観点から空気、窒素、蒸気などが好ましい。
【0015】
また、本発明によれば、従来のように攪拌羽根を使わず、装置外周に設けられた複数の圧縮気体ノズル2により蒸気を導入して旋回流をつくることで粉体を分散し易くすることができるうえ、撹拌羽根の磨耗の問題がなく、該羽根への粉体の混入によるトラブルの心配もない。また、分散後その容器でろ過から乾燥まで行うため煩雑な作業が少なく異物の混入も少ない。
【0016】
好ましくは、前記圧縮気体として蒸気を用いることにより、前記容器内を加温して水洗処理を促進することができる。
【0017】
また、前記圧縮気体を用いて前記容器を加圧することにより、ろ過から乾燥まで連続処理することができる。
【0018】
また、前記圧縮気体の圧力を変更することにより、旋回流を変化させて粉体の堆積状態を変えて山なりにし効率的なろ過が可能になるため水洗処理時間を短縮することができる。
【0019】
さらに、前記容器に熱エネルギーを与えることにより粉体の乾燥効率を向上させることができる。
【0020】
また、前記容器4の外周に、該容器4に圧縮気体を導入する複数のノズルを容器の外周面に対して傾斜させて配置することにより、蒸気などの圧縮気体を導入して旋回流をつくることで粉体を分散し易くすることができる。
【0021】
また、前記容器に熱エネルギーを与える手段として、容器壁面を電気や蒸気による加熱手段、または、容器上部から粉体にマイクロ波の照射手段を設けることにより、容器内の温度を上昇させて乾燥効率を向上させることができる。
【0022】
なお、ろ布は加圧しないと水が透らない不織布フィルターを使用することが好ましい。
【0023】
本発明の粉体の水洗処理装置の操作手順を下記に示す。まず、水・空気ノズル1を用いて容器4に所定量の水を入れる。
次に、複数の圧縮気体ノズル2を用いて蒸気などの圧縮気体を容器4に導入して加温と攪拌を行う。
【0024】
そして、開放した容器4の上部からアルミナ粉などの粉体を容器内に導入し、上部の蓋をする
次に、圧縮気体ノズル2からの気体導入を止めて水・空気ノズル1から圧縮空気を入れる。
【0025】
そして、蒸気ノズル3を用いて容器4の外側に巻いた銅管に蒸気を導入して容器内を加温する。次に、排出口6を開け、粉体のろ過及びろ液の排出を行ない、乾燥まで保持する。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例について、表1に示す。
【表1】

【0027】
<発明例1>
図1に示す水洗処理装置に水・空気ノズル1から水を150リッター入れた後、圧縮気体ノズル2から圧縮空気を容器4に導入して攪拌旋回流をつくり、アルミナ粉末50kgを上部から投入した。5分間混合の後、空気を止めて蓋をし水・空気ノズル1から圧縮空気を入れ、更に排出口6を開きろ過を開始した。同時に蒸気ノズル3から蒸気を容器4の外側に巻いた銅管に導入して、容器内を加温することで、ろ過工程からそのまま乾燥工程に移行し、14時間後、乾燥されたアルミナ粉末が回収された。アルミナ粉末のNaイオンは処理前250ppmであったが水洗処理後は50ppmに低減しており、水洗処理効果が確認できた。
【0028】
<発明例2>
図1に示す水洗処理装置に水・空気ノズル1から水を150リッター入れた後、圧縮気体ノズル2から蒸気を容器4に導入して攪拌旋回流をつくり、アルミナ粉末50kgを上部から投入した。5分間混合により水温が80℃になった。蒸気を止めて蓋をした後、再度圧縮気体ノズル2から蒸気を容器4に導入して攪拌旋回流をつくり攪拌しながら加温、加圧した。容器4内部が1kg/cm2になったのち、蒸気を止めて水・空気ノズル1から圧縮空気を入れ、更に排出口6を開きろ過を開始した。蒸気ノズル3から蒸気を容器4の外側に巻いた銅管に導入して、容器内を加温することで、ろ過工程からそのまま乾燥工程に移行し、6時間後、乾燥されたアルミナ粉末が回収された。アルミナ粉末のNaイオンは処理前250ppmであったが水洗処理後は20ppmに低減しており、水洗処理効果が確認できた。
また、ろ過排水が終わった後、再度水を150リッター入れて上記操作を繰り返すことで回収されたアルミナ粉末のNaイオンは10ppmになった。
【0029】
<発明例3>
発明例2において、圧縮気体ノズル2の蒸気圧を上げることで旋回流を早くした。その結果、旋回停止後のアルミナ粉末の堆積が山なりとなりろ過及び乾燥時間を短縮することができた。
【0030】
<発明例4>
発明例3において、乾燥段階で使用する水・空気ノズル1からの圧縮空気を止めて、上部からマイクロ波を照射することで乾燥時間を大幅に短縮することができることが確認できた。
【0031】
<比較例1>
本発明の水洗処理を行わなかったためNaイオンは250ppmであった。
【0032】
<比較例2>
発明例3において、圧縮気体ノズル2を1本にしたところ、ろ過時間及び乾燥時間が長くなり、ろ過、乾燥、品質に影響があった。以上の実施例により、本発明の効果が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
各種粉末の分散液また、反応液を固液分離し、乾燥粉にする工程は晶析反応をはじめ、湿式の表面改質で必要であり、本発明を適用することによってこの固液分離ならびに乾燥までの工程を効率よく実施できる。
【符号の説明】
【0034】
1 水・空気ノズル
2 圧縮気体ノズル
3 蒸気ノズル
4 容器
5 フィルター
6 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を入れた容器に粉体を導入し、該容器に圧縮気体を導入して前記粉体を分散および撹拌して蓋をし、前記容器の下部に設けられた排出口を開けて粉体のろ過及びろ過液の排出を行った後、該粉体が乾燥するまで保持することを特徴とする粉体の水洗処理方法。
【請求項2】
前記圧縮気体として蒸気を用いることにより、前記容器内を加温して水洗処理を促進することを特徴とする請求項1に記載の粉体の水洗処理方法。
【請求項3】
前記圧縮気体を用いて前記容器を加圧することにより、ろ過から乾燥まで連続処理することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉体の水洗処理方法。
【請求項4】
前記圧縮気体の圧力を変更することにより、前記粉体の堆積状態を変えて処理時間を短縮することを特徴とする請求項3に記載の粉体の水洗処理方法。
【請求項5】
さらに、前記容器に熱エネルギーを与えることにより粉体の乾燥効率を向上させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の粉体の水洗処理方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の粉体の水洗処理方法に用いる装置であって、前記容器の外周に、該容器に圧縮気体を導入する複数のノズルを容器の外周面に対して傾斜させて配置したことを特徴とする粉体の水洗処理装置。
【請求項7】
前記容器に熱エネルギーを与える手段として、容器壁面を電気や蒸気による加熱手段、または、容器上部から粉体にマイクロ波の照射手段を有することを特徴とする請求項6に記載の粉体の水洗処理装置。


【図1】
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【公開番号】特開2012−21710(P2012−21710A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160156(P2010−160156)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】