説明

粉体供給器

【課題】粉体特性測定装置に試料粉体を供給するに際し、粉体を圧縮して締め固めたり、凝集させたり、あるいは粉体粒子を壊したりすることなく、所定量の粉体の供給が行なえる粉体供給器を提供する。
【解決手段】上部が円筒形で、下部に下方に向けて内径が小さくなるテーパー状の傾斜面2aを有する排出口部を有する容器1内において、前記容器1内の中心を上下に貫通するロッド5に取り付けられた円錐体4と攪拌棒11a、及び前記ロッド5の上方先端に取り付けられたハンドル10とにより、円錐体4の上下移動により粉体の流出と停止を行なわせるとともに、攪拌棒11aを回転させて粉体を攪拌し、粉体の凝集や偏析を防ぎつつ粉体特性測定装置への試料粉体の円滑な供給を行なわせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の物理的特性(流動性、噴流性)の評価の際に用いられる粉体特性測定装置に試料粉体を供給するための粉体供給器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記粉体特性測定装置への試料である粉体の供給は人手により行なっていた。これは、測定に際して供給する粉体が少量であったこと、加えて測定すべき粉体に機械的な力が加わると粉体は凝集されたり、圧密されたり、更には粒子そのものが破壊されたりするなどの恐れがあったことから、機械的な供給機による粉体供給は行なわれていなかった。しかし、人手による場合、試料粉体によっては、発生する粉塵の測定者への曝露が問題になる材料もあることから、その改善が求められてきた。
【0003】
特許文献1に示す測定装置は、粉体特性を測定する装置として知られており、この測定装置の改良が本発明の対象となる。次に、粉体の供給機や供給装置としては、特許文献2〜4に示された粉体供給機や粉体供給設備がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−107171
【特許文献2】特開平5−330666
【特許文献3】特開平6−127501
【特許文献4】特開2004−18013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、粉体特性測定装置用の粉体供給器としては、試料粉体の供給に当たって粉体を圧縮して締め固めたり、凝集させたり、あるいは試料粉体の粒子そのものを壊したりすることなく、円滑に所定量の試料粉体の供給が行なえること。また、任意に供給を行なったり、供給を停止したりすることも求められる。こうした要件に対し、特許文献2の粉体供給機では振動発生装置を用いて粉体に微振動を加えるため、粉体の凝集や偏析を起こしたりする恐れがあり、特許文献3のトナー充填方法では送り出しにスクリューが用いられることで粉体は圧縮されたり、締め固められたり、あるいは粉体が比較的粒子径の大きいものでは粉体粒子自体が壊されるおそれもある。
【0006】
また、特許文献4の粉体供給設備はコンテナと定量供給機とを組み合わせて貯槽と計量供給とを行なえるようにしている。コンテナは、槽内に設けたコーン状の弁体を取り付けたロッドを上方に持ち上げることで粉体の排出を行なわせ、弁体を下げることで排出口への流路を塞いで排出を止めるようになっており、粉体に機械的な力を付与することなく排出を行なえる。定量供給機は、コンテナから排出された粉体を受けて機内底部に設けられた攪拌翼を比較的遅い速度で回転させ、該攪拌翼によって粉体を機内底部に設けた排出口に誘導させて排出させるものである。
【0007】
ここで、貯槽としてのコンテナは、粉体の貯留に当たって、ある程度の粉体量と貯留時間とを充足させる必要があること。また、このコンテナには粉体に機械的な力を加えて排出を促す機構などは備えられておらず、貯留対象となる粉体は流動性の良いものに限られること、貯留粉体の流出は自然落下に伴う粉体の流動性にのみにより行なわせるものである。したがって、コンテナだけでは粉体の流出を適宜調整しつつ、安定した供給量を維持させることは困難である。そこで、定量供給機と組み合わせることで、粉体供給の安定維持を図っている。但し、コンテナと定量供給機を含めたこれら粉体供給設備は大きなもので、このまま当該粉体特性測定装置に適用することはできない。
【0008】
こうした点に鑑み、本発明は、測定に十分な量の試料粉体を貯留するとともに、供給時には粉体を圧縮したり、締め固めたり、凝集させたり、偏析させたり、あるいは粒子を壊したりすることなく、適時必要な量の粉体を円滑に供給することができる粉体供給器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の特徴構成は、上部が円筒形で、円錐部に下方に向けて内径が小さくなるテーパー状の傾斜面を配し、下部に円筒状の排出管を有する容器と、前記容器内に設け前記傾斜面と接する側面が前記傾斜面と同じ傾斜角度を有する円錐体と、前記円錐体を取り付け垂下保持するロッドと、前記ロッドを保持する上部ホルダと、前記ロッドの上方他端に取り付けられるハンドルと、前記円錐体の上方位置で前記ロッドに取り付けられた攪拌棒とにより構成されたことにある。
【0010】
これらの構成によって、前記容器内においてロッドを介して円錐体は容器内の傾斜面と密着した状態となり、容器内の粉体は円錐体によって流出する通路が塞がれることになり、またハンドルを持ち上げると、ロッドを介して円錐体が上方に持ち上げられて粉体の流出する通路ができ、粉体の排出が行なわれる。加えて、ハンドルを回すと、ロッドに取り付けられた攪拌棒が回転して容器内の粉体を攪拌し、凝集や偏析を防ぎ円滑な排出を可能とすることができる。
【0011】
本発明の第二の特徴構成は、前記円錐体の少なくとも傾斜面を樹脂またはゴム材料で構成されていることにある。
前記容器の傾斜面と密着する前記円錐体の傾斜面を樹脂またはゴム材料で構成することで、前記傾斜面において前記円錐体による粉体の圧縮によって粉体の過度な圧縮や粉体が破壊されるのを抑制できる。
【0012】
本発明の第三の特徴構成は、前記排出管の下方に下部ホルダを設け、前記下部ホルダの下方からコイルバネを組み込んだロッドピンを、前記円錐体に対して取り付けることにある。
このように前記ロッドとは別のロッドピンを排出口の下方から下部ホルダを介して前記円錐体に取り付けることで、前記円錐体および前記ロッドの支持状態を安定させることができる。さらに、コイルバネを付設することによって前記ロッドは常に下方側に押し下げられることになり、前記ロッドの先端部に取り付けられた円錐体と前記容器の傾斜面との密着状態が保たれる。
【0013】
本発明の第四の特徴構成は、前記容器に密封可能な蓋を設け、前記蓋の中心には貫通孔を設けて前記ロッドの上端側を保持する上部ホルダを兼ねさせとともに、脱気用の開口を設けてフィルタと容器内と貫通した脱気孔を有するフィルタ保持用の栓とが設けられていることにある。
前記ロッドの上部ホルダが容器の蓋であり、容器内の密閉性が保たれた上で脱気用のフィルタが組み込まれることで、容器からの粉体の漏れが抑えられるので、当該粉体供給器内に粉体を貯留させたまま離れた所からも持ち運ぶことができるようになる。
【0014】
本発明の第五の特徴構成は、前記攪拌棒を前記ロッドに対し異なる高さ位置に複数本設けると共に、上方側の攪拌棒をロッドに対し左右水平に設け、下方側の攪拌棒を左右水平に伸ばした後、先端部を下方に折り曲げた形状にすることにある。
攪拌棒を複数本設けることで、容器内の粉体の攪拌を高めることができるが、さらに一方の攪拌棒の先端側を容器の下方向き縦方向に伸ばすことで、より広範囲の粉体に対して攪拌作用を及ぼすことができ、粉体の攪拌を効果的にかつ均一に行うことができる。
【0015】
本発明の第六の特徴構成は、前記上部ホルダと前記ハンドルとの間において、前記上部ホルダの上部に前記ハンドルを持ち上げる隙間調整用部材を取り付けることにある。
つまり、隙間調整用部材を操作することで、直接ハンドルを持ち上げることなく、前記ロッドは持ち上げられたままの状態に保持される。
こうして、ロッドと共に円錐体も持ち上げられて前記容器の傾斜面との間に流出通路となる隙間を保持した状態が維持されることになる。これだけでも流動性の良い粉体の場合には十分な排出が行なえる。
【0016】
本発明の第七の特徴構成は、前記ロッドの一部にらせん溝を形成し、前記らせん溝に対応するガイド部材を前記上部ホルダに取り付けることにある。
これによって、前記ロッドの昇降に際して前記らせん溝に前記ガイド部材が当接することによってロッドが回転し、ロッドに取り付けられた攪拌棒を回転させることができる。
【0017】
本発明の第八の特徴構成は、前記ロッドの一部に平板を捻ったねじれ板を取り付け、前記ねじれ板の断面形状に合わせた開口を有するガイド板を前記上部ホルダに取り付けることにある。
これによって、前記ロッドが上下方向に移動する際には前記ねじれ板とガイド板とが擦れ合ってねじれ方向への力が働くため、前記ロッドの昇降に伴い前記ロッド自身が回転することになる。
【0018】
本発明の第九の特徴構成は、前記容器の外側壁面の対称位置にL字型のブラケットを設けるとともに、前記ブラケットが入り込む大きさの切り掻き溝を有し、全周囲にわたってコの字状の窪みが形成されたアダプタを前記ブラケットに着脱可能に取り付けることにある。
前記ブラケットを前記アダプタの溝に嵌め込んだ後、容器を左右何れかの方向に回すことで、ブラケットがアダプタのコの字状の窪みに入り込んで保持するため、容器全体をアダプタに固定させることができる。よって、前記アダプタを別に取り付けた装置に対しても、当該粉体供給器を容易に着脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の粉体供給器の実施形態を示す断面図
【図2】図1のアダプタの平面図
【図3】本発明の粉体供給器の別実施形態を示す断面図
【図4】本発明の粉体供給器の別実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を以下に図1および図2をもって説明する。容器1は、上部が円筒形で、下方に向けて径が縮小するテーパー状の傾斜面2aを有する円錐部2を挟んで下部に縮小された円筒状の排出管3aが形成されている。容器1の上方および下方は開口しており、上部からは試料粉体の供給を、下方は排出口3であり、容器1内をロッド5が上下に貫通した状態で設けられている。ロッド5の下方先端部には円錐体4が下方に向けて径が拡大する向きに取り付けられている。円錐体4の下端部には容器1の円錐部2の傾斜面2aと同じ傾斜角を有する側面4aが設けられ、円錐部2において円錐体4の側面4aと傾斜面2aとが密着して内部の試料粉体の排出を停止させることになる。
【0021】
このように、円錐体4は容器1の弁として機能するものであり、円錐体4全体をゴムやプラスチック等の弾力性のある材料で構成してもよいし、あるいは円錐体4の側面4aのみをゴムやプラスチック性のシール材を張り付ける構造としてもよい。但し、円錐体4を過度に重いものにすると、円錐体4と円錐部2の傾斜面2aとの間で粉体を圧縮して固めたり、粉体粒子そのものを破砕してしまうなどの恐れがあるので、試料粉体の種類とも併せて考慮する必要がある。
【0022】
前記ロッド5と円錐体4との取り付けは、ロッド5の先端に螺子部5aを形成させ、円錐体5の中心を貫通して形成された螺子孔4bとで固定される。また、円錐体4の下部には前記ロッド5および円錐体4の前後左右の横揺れを抑えるため、下部ホルダ7とロッドピン6とが取り付けられている。下部ホルダ7は排出口3を跨いで2方向、あるいは3方向または4方向に脚を有するもので、脚の先端側は排出管3aの外周面に沿って折り曲げた形状とすることで、左右の振れを抑える構造となっている。なお、下部ホルダ7の保持については、下部ホルダ7側にネジ孔を設け、ビス等により下部ホルダ7を排出管3aの下部に一時的に固定させるようにしてもよい。
こうして、ロッド5と円錐体4の安定保持をより確実に行わせることができる。
【0023】
ロッドピン6の先端には螺子部6aを形成させ、他端にはボルト様の頭が形成されスパナを掛けて回せるようになっている。ロッドピン6にはコイルバネ9が嵌め込まれており、容器1の排出口3を跨いで配置された下部ホルダ7を貫通させて円錐体4に取り付けられる。そのため下部ホルダ7には貫通部に軸受けを兼ねたブッシュ19が取り付けられている。このコイルバネ9は、下部ホルダ7の押し上げとロッドピン6を押し下げる作用とを有する。すなわち、コイルバネ9によりロッドピン6が押し下げられると、ロッドピン6を介して円錐体4が下方に押し下げられることになり、円錐体4は容器1の円錐部2において、その傾斜面2aと密着して排出口3を塞いで容器1内の粉体の流出を停止させる。粉体の排出を再開させるときは、ロッド5を持ち上げてこの円錐体4を上方に浮かせればよい。
【0024】
このようにロッドピン6を設けるとともに、ロッドピン6にコイルバネ9を取り付けることで、下部ホルダ7との間で円錐体4を保持するロッド5の支持を確実に行わせるとともに、これら部材は着脱可能であるため、掃除または洗浄等の際には簡単に取り外すことができ、排出口3を開放させ分解洗浄を行い易くすることができる。
【0025】
次に、ロッド5の上方に位置する容器1の上部には、蓋8が設けられている。この蓋8は前記下部ホルダ7と対になる上部ホルダ8の役割を担うものであり、その中心にはロッド5を貫通させる軸孔が設けられ、ロッド5を保持する役割を有する。また、蓋8の内側には容器1との気密を保つため、リング状のパッキン18が容器1の上端面に対応して取り付けられているほか、容器1内の空気を逃すための排気口12が設けられている。この排気口12の上部には粉体の飛び出しを防ぐため、フィルタ13が嵌め込まれ、中心に脱気孔15を有するゴム製またはプラスチック製の栓14を上方から嵌め込むことでフィルタ13を保持させている。なお、前記フィルタ13としてはステンレスや他の金属製の金網のほか、プラスチック、その他の材質からなる網のほか、別のフィルタ材であってもよい。
【0026】
ロッド5の上端部にはノブ状のハンドル10が取り付けられている。ロッド5へのハンドル10の取り付け方はロッド5側にネジを設けて直接ハンドル10にねじ込み、あるいはロッド5の先端をハンドル10側の孔に嵌め込んだ後にハンドル10側に設けたビス等で留めるなど、公知の方法で固定させることができる。ここで、ハンドル10は金属製のほか、木製、硬質ゴム製、プラスチック製のいずれであってもよい。また、ハンドル10は持ち上げ可能であるとともに、片手で軽く回すことができ、また持ち上げた状態で回すことで後述の攪拌棒11a、11bを回転させて容器1内の粉体を掻き混ぜたり凝集塊を解したりすることができる。
なお、容器1内に試料粉体を供給するときには、先ず後述の隙間調整用レバー25を外し、ハンドル10をロッド5から外して蓋8を取って供給する。その後は、その逆の順番で蓋8、ハンドル10、隙間調整用レバー25の順に取り付ける。
【0027】
蓋8の上面にはフック24を設け、このフック24にはハンドル10を上方に持ち上げる隙間調整用レバー25を引っ掛けることができるようになっており、隙間調整用レバー25はフック24を支点として先端はハンドル10の下面に押し当てるように取り付けられる。一方、隙間調整用レバー25の他端はスプーンあるいはヘラ状など、指で抑えるに適した形状にされており、ハンドル10を指で軽く持ち上げることができるよう、隙間調整用レバー25の長さとフック24の取り付け位置は考えられている。
こうして、隙間調整用レバー25によってハンドル10を持ち上げたり下げたりすることで、円錐体4と容器1の傾斜面2aとの隙間を任意に調節することができる。また、ハンドル10を上げ下げするだけでも、容器1内の粉体に対してはある程度の流動性付与効果をもたらすもので、粉体の偏析を防ぎつつ流出を促進させることができる。なお、粉体の流出を止めるには、隙間調整用レバー25から指を離せばよい。
【0028】
このロッド5には、前記容器1内に位置する円錐体4の上方位置で、ロッド5の中心から放射方向に左右水平に伸びた攪拌棒11aと、これと同様に左右水平に伸びた後に先端部を下方に折り曲げた攪拌棒11bとが上下に適度な間隔を保持して設けられている。ハンドル10を回してロッド5に取り付けられた攪拌棒11a、11bを回転させることで、容器1内の粉体をかき混ぜることになり、容器1内における粉体の凝集や偏析を防止することができる。
【0029】
容器1の外側壁面にはL字型のブラケット17が対称位置に2個取り付けられている。その取り付け位置は、粉体を供給する別の装置や設置する位置との関係で決定される。ブラケット17には、ブラケット17が入り込む大きさの切り掻き溝21を有し、全周囲にわたるコの字状の窪み22が形成されたアダプタ20が組み合わされ、ブラケット17に対してアダプタ20を着脱可能に取り付けられるようにしてある。図1および図2に示すように、アダプタ20は中央に容器1が入り込む程度の大きさの開口23を有するドーナツ状の部材で、粉体の供給対象である測定機、その他の機械の機台30への取り付け用ネジ(図示せず)が具備されている。こうして、容器1はブラケット17によってアダプタ20に簡単に取り付けることができ、アダプタ20を取り付けた粉体特性測定装置、その他の粉体供給を行なう装置への着脱を極めて簡単に行うことができる。しかも、容器1自体は貯留ビンとして試料粉体等を入れた状態で移動させたり、持ち運んだり、比較的短い時間であればそのまま保存ビンとして使用することもできる。
【0030】
また、前記ハンドル10を持ち上げて円錐体4と容器1の傾斜面2aとの隙間を保持させる別のスペーサ機構を有するものとしては、図3に示すようなものがある。
ロッド5の上端部には螺子部5bが形成されており、水平棒状のハンドル10を蝶ナット16により取り付けている。このハンドル10は金属製のほか、木製、硬質ゴム製、プラスチック製のいずれであってもよい。また、このハンドル10は持ち上げ可能であるとともに、人の指で容易に回すことができ、また持ち上げた状態で回すことで後述の攪拌棒11a、11bを回転させて容器1内の粉体を掻き混ぜたり、粉体層面をならしたりすることができる。なお、容器1内に試料粉体を供給するときには、前記蝶ナット16を緩めてハンドル10をロッド5から外し、さらに後述のピン26を外して蓋8を取ってから試料粉体を供給する。粉体の供給が終わったら、その逆の順番で蓋8、ピン26、ハンドル10を取り付け、蝶ナット16で固定させる。
【0031】
前記蓋8の上面とハンドル10との間において、円筒状のスリーブ27をロッド5に嵌め込む形で蓋8の上面に取り付ける。このスリーブ27は、蓋8に取り付けられた内筒28と、この内筒28の外側に嵌め込まれ内筒28覆うとともに上端面に段差部29aを有する外筒29とで構成され、外筒29は内筒28を中心に内筒28の周りを回転することができるようになっている。
【0032】
次に、このスリーブ27の外筒29の段差29aに対応させて一本のピン26をロッド5に取り付け、ハンドル10を持ち上げた際に前記段差29a上にピン26が引っ掛かるようにする。つまり、ハンドル10を持ち上げた状態で前記ピン26を外筒29の段差29a上に引っ掛ける。この状態ではハンドル10は片手で軽く回転させることができ、円錐体4とともに攪拌棒11a、11bを回転させて容器1内の粉体を掻き混ぜたり、粉体層面をならしたりすることができる。このピン26のロッド5への取り付けについては、ピン26の先端に螺子を設けてロッド側の螺子孔に取り付けるほか、ピン26をテーパー状に形成してロッド側の穿孔に差し込むようにしてもよい。
【0033】
一方、内筒28および外筒29にはハンドル10を下ろした際には前記ピン26が前記段差29aに引っ掛からない位置が設けられている。この位置はハンドル10が一番下に下がった状態であり、この位置では円錐体4と容器1の傾斜面2aとの隙間が無くなり、円錐体4と容器1の傾斜面2aとが密着して粉体の流出が止められる。
【0034】
こうして、ハンドル10を持ち上げた状態で、円錐体4と容器1の傾斜面2aとの間に形成される隙間(流出路)を維持することができ、粉体の流出を一定状態に保持することができる。粉体の流出を止める場合は、ハンドル10を少し持ち上げてから前記外筒29の段差29aから前記ピン26を外してハンドル10を下げればよい。なお、外筒29に高さの異なる複数の段差29aを設けることで、その都度段差29aを選択することで円錐体4と容器1の傾斜面2aとの間の隙間を任意に調整することができる。
【0035】
さらに、別の実施形態として、図4に示すような構成を採用することもできる。
前記ロッド5が蓋8と接触する位置において、ロッド5の一部にロッド5の昇降に伴いロッド5自身を回転する機構を設けることもできる。具体的には、ロッド5の一部に平板を捻ったねじれ板31を取り付け、このねじれ板の断面形状に合わせた四角形の開口を有するガイド板32をねじれ板31に嵌めた状態で蓋8の上面に取り付ける。なお、ねじれ板31の上端部は断面が同じ四角形であり、ハンドル10の取り付けに当たってはハンドル10側の取り付け孔をこれに合わせた形状にし、ねじれ板31を嵌め込んだ後にビス等で固定保持させる。
【0036】
こうして、ハンドル10の昇降に伴いロッド5は上下方向に移動する際に前記ねじれ板31のねじれ方向に沿って回転させられることとなり、ハンドル10が上方に持ち上げられると、ロッド5は回転しつつ持ち上げられ、ハンドル10を下ろす際にも回転する。これによって、ロッド5に取り付けられた攪拌棒11a、11bもハンドル10の上げ下げによって容器1内で上下動しつつ回転することとなり、粉体の排出と容器1内の攪拌を片手で容易に行なうことができる。
【0037】
なお、ロッド5の昇降に伴うロッド5自身を回転させる機構については、ロッド側にらせん溝を設けるとともに、このらせん溝に嵌り込むピンを蓋8側に取り付ける。あるいは、逆にロッド5側にピンを設け、このロッド5が嵌り込む筒状部材(図示省略)を蓋8側に取り付け、この筒状部材に前記と同様のらせん溝を設けてロッド5側のピンとらせん溝とが嵌り込むように構成することも可能である。また、ロッド5を回転させる他の手段としては、リンクやバネを使った機構のほか、モータやアクチュエータを使ってロッド5の昇降とは切り離してロッド5を直接回転させる構成としてもよい。
【実施例】
【0038】
本発明の実施例を以下に記す。各部材には図1、2と同様の番号を付すこととする。
容器1はステンレス製の円筒状の容器で、円筒部の下部をテーパー状に絞って小径の排出口3を設けた上で、容器1の中心を上下方向に貫通するロッド5およびロッドピン6を容器1上部の蓋8と、下部排出口3に設けた下部ホルダ7とで保持するようにしている。
容器1の寸法は、円筒部の直径70mm、高さ180mm、排出口の直径40mm、円錐部2の傾斜面2aの傾斜角度は80度で、約300mlの容積を有する。
【0039】
ロッド5およびロッドピン6の材質はステンレスであり、ロッド5の下端およびロッドピン6の上端には上方に縮小する円錐体4に接続されている。円錐体4は硬質ゴム製で、その寸法は直径50mm、高さ40mmで、下端部をテーパー状にした側面4aの傾斜角度は80度である。ロッドピン6にはステンレス製のコイルバネ9を嵌め込んで下部ホルダ7を排出管3aに嵌合させて保持させる。また、ロッド5の上端にはステンレス製のハンドル10を取り付けている。
【0040】
前記蓋8に設けた脱気用の排気口12には、フィルタとして直径15mm、目開き5μmのポアメット製の金網13をセットし、上からシリコンゴム製の栓14を嵌め込んで保持する。この栓14には約10mmの脱気孔15を設けている。
【0041】
本発明の粉体供給器を使用し、粉体の物性特性の評価を行なうための測定装置(粉体特性測定装置「パウダテスタ」:ホソカワミクロン社製)に取り付けて粉体の物性特性を測定する際の試料粉体の供給を行なった。本粉体供給器により試料供給して行なった測定は、安息角測定、スパチュラ角測定、崩潰角測定、かさ密度測定(ゆるめかさ密度測定、固めかさ密度測定)、タップ密度測定(カサ減り度測定)、などである。
【0042】
これらの測定において供給した試料粉体は、JIS試験用粉体4種のタルク(平均粒子径13.6μm)、同11種の関東ローム(平均粒子径2.951μm)、同白色溶融アルミナNo.6(平均粒子径74.35μm)、同ガラスビーズGBL−60(平均粒子径59μm±1μm)であり、平均粒子径の値はすべてマイクロトラックでの実測定値である。
これら試料粉体の供給に際して、粉体が容器内で偏析を起こしたり、架橋や詰まりを起こしたり、あるいは予想に反して試料粉体が一度に流出してしまうフラッシングの発生などの問題もなく、試料粉体の円滑な供給が行なえた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の粉体供給器は、粉体の特性評価を行なう当該測定装置やその他の測定機への試料粉体の供給のほか、実験室で行なう程度の比較的少量の粉体を対象とする粉砕、混合、分級、篩い分け、複合化などを行う各種粉体処理装置への原料粉体の供給にも使用できる。また、持ち運びができるので、一時的であれば、貯留ビンとしても利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 容器
2 円錐部
2a 傾斜面
3 排出口
3a 排出管
4 円錐体
4a 側面
4b 螺子孔
5 ロッド
5a 螺子部
5b 螺子部
6 ロッドピン
6a 螺子部
7 下部ホルダ
8 蓋(上部ホルダ)
9 コイルバネ
10 ハンドル
11a 攪拌棒
11b 攪拌棒
12 排気口
13 フィルタ
14 栓
15 脱気孔
16 蝶ナット
17 ブラケット
18 パッキン
19 ブッシュ
20 アダプタ
21 切り掻き溝
22 窪み
23 開口
24 フック
25 隙間調整用レバー(隙間調整用部材)
26 ピン
27 スリーブ(隙間調整用部材)
28 内筒
29 外筒
29a 段差
30 機台
31 ねじれ板
32 ガイド板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が円筒形で、円錐部に下方に向けて内径が小さくなるテーパー状の傾斜面を配し、下部に円筒状の排出管を有する容器と、
前記容器内に設けられ前記傾斜面と接する側面が前記傾斜面と同じ傾斜角度を有する円錐体と、
前記円錐体を取り付け垂下保持するロッドと、
前記ロッドを保持する上部ホルダと、
前記円錐体の上方位置で前記ロッドに取り付けられた攪拌棒と、
前記ロッドの上方他端に取り付けられるハンドルとにより構成されたことを特徴とする粉体供給器。
【請求項2】
前記円錐体の少なくとも傾斜面を樹脂またはゴム材料で構成する請求項1に記載の粉体供給器。
【請求項3】
前記排出管の下方に下部ホルダを設け、前記下部ホルダの下方からコイルバネを組み込んだロッドピンを、前記円錐体に対して取り付ける請求項1又は2に記載の粉体供給器。
【請求項4】
前記容器に密封可能な蓋を設け、前記蓋の中心には貫通孔を設けて前記ロッドの上端側を保持する上部ホルダを兼ねさせとともに、脱気用の開口を設けてフィルタと脱気孔を有するフィルタ保持用の栓とが設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粉体供給器。
【請求項5】
前記攪拌棒を前記ロッドに対し異なる高さ位置に複数本設けると共に、上方側の攪拌棒をロッドに対し左右水平に設け、下方側の攪拌棒を左右水平に伸ばした後、先端部を下方に折り曲げた形状にする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉体供給器。
【請求項6】
前記上部ホルダと前記ハンドルとの間において、前記上部ホルダの上部に前記ハンドルを持ち上げる隙間調整用部材を取り付ける請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉体供給器。
【請求項7】
前記ロッドの一部にらせん溝を形成し、前記らせん溝に対応するガイド部材を前記上部ホルダに取り付ける請求項1乃至6のいずれか1項に記載の粉体供給器。
【請求項8】
前記ロッドの一部に平板を捻ったねじれ板を取り付け、前記ねじれ板の断面形状に合わせた開口を有するガイド板を前記上部ホルダに取り付ける請求項7に記載の粉体供給器。
【請求項9】
前記容器の外側壁面の対称位置にL字型のブラケットを設けるとともに、前記ブラケットが入り込む大きさの切り掻き溝を有し、全周囲にわたってコの字状の窪みが形成されたアダプタを前記ブラケットに着脱可能に取り付ける請求項1乃至8のいずれか1項に記載の粉体供給器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−218818(P2012−218818A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82365(P2011−82365)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000113355)ホソカワミクロン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】