説明

粉塵防止剤および粉塵防止方法

【課題】散布された粉塵防止剤が鉱石、石炭、土砂などの堆積物表面から内部まで充分に浸透するので粉塵防止効果が高い上、合成高分子のみではなく、汎用の合成高分子を使用しても、高分子物質が有する本来の微粉を結着させる効果を十分に発揮でき、コストダウンを図れ、適用可能な堆積物の範囲が広い粉塵防止剤およびそれを用いた粉塵防止方法の提供。
【解決手段】下記の水溶性あるいは水分散性高分子(A)(イ)〜(ニ)から選択される一種以上と、HLB(疎水性親水性バランス)が7〜15の界面活性剤から選択される少なくとも一種との混合物からなる粉塵防止剤により課題を解決できる。水溶性あるいは水分散性高分子(A):(イ)アクリルアミド構成単位を含有する(共)重合物、(ロ)酢酸ビニル構成単位を含有する(共)重合物、(ハ)ビニルアルコール構成単位を含有する(共)重合物、(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位を含有する(共)重合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉塵防止剤および粉塵防止方法に関し、さらに詳しくは、特定の構造単位を有する水溶性あるいは水分散性高分子(A)群から選択される少なくとも一種と、非イオン性界面活性剤群から選択される一種以上との混合物からなる粉塵防止剤に関し、また鉱石、石炭、土砂などの堆積物の粉塵飛散防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所や火力発電所における石炭、コ―クス、鉱石、石炭灰や、造成地や採石現場における土砂は、通常、野積み状態で貯蔵されているため、風などにより微細な粉塵が空気中に飛散して作業環境や周囲環境の悪化を発生させるという問題がある。
【0003】
従来、粉塵防止対策としては、大量の水散布を繰り返すことが行われているが、これらの野積堆積物の表面は通常疎水性であるため、粉塵の発生を効率的に防止することは困難である。
【0004】
また、移送設備においては、堆積物がホッパーを閉塞することがあり、また粉塵がベルトコンベアに付着するなどの問題も生じていた。
さらに、近年、安定したエネルギー供給の観点から、安価な燃料源として石炭が見直されており、とりわけ、今まで利用価値の低かった亜瀝青炭や褐炭などの低品位炭の需要が高まっている。
【0005】
しかし、これらの低品位炭は酸化されやすいため、サイロなどへの屋内貯蔵において長期間放置されると、石炭堆積物内部への空気の流入により、石炭が酸化反応を起こし、その反応熱が蓄積され、石炭の自然発火に至るといった問題が発生する場合があり、非常に危険である。
【0006】
上記粉塵飛散防止のため、界面活性剤によって水分を堆積物内部まで浸透しやすく方法が提案されている。
例えば、ポリオキシエチレン系EO活性剤とアルコールを適用したものがある(特許文献1参照)。しかしこの方法は、水分は堆積物内部まで浸透するが、堆積物表面を固着させる機能が低いため飛散防止には効果が弱い。
【0007】
そこで堆積物表面を固着させる目的とした例に、ポリビニルアルコールを使用したり(特許文献2参照)、高分子を主体した組成物を使用したり(特許文献3参照)、またこれらの改良方法としてアルコールと高分子からなる組成物を使用する例がある(特許文献4参照)が、堆積物には微細粒子が混入しており、これが水分をはじき、予想以上に撥水性表面となっているため、いずれも表面浸透性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−336396号公報
【特許文献2】特開2005−296729号公報
【特許文献3】特開2006−273489号公報
【特許文献4】特開平11−080727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献に記載された高分子物質を応用した粉塵防止剤は、鉱石、石炭、土砂などの堆積物への浸透性が十分ではなかった。
すなわち前記鉱物の堆積物は、微粉が混在していることが普通であり、高分子物質のエマルジョンあるいは水溶液が浸透し難い場合があった。このため堆積物表面から一定の厚さまでしか粉塵防止剤が浸透しないので、粉塵防止効果が低下してしまい、高分子物質本来の微粉を結着させる効果が十分に発揮されないという問題があった。
また高分子物質は、ポリ酢酸ビニル系などごく限られた合成高分子のみ応用されていた。
【0010】
本発明の第1の目的は、鉱石、石炭、土砂などの堆積物の粉塵飛散防止剤であって、粉塵防止剤が堆積物表面から内部まで充分に浸透するので粉塵防止効果が高い上、合成高分子のみではなく、汎用の合成高分子を使用しても、高分子物質が有する本来の微粉を結着させる効果を十分に発揮させることができるので、コストダウンを図ることができ、適用可能な堆積物の範囲が広い、粉塵防止剤を提供することである。
本発明の第2の目的は、そのような粉塵防止効果の高い粉塵防止剤を用いて容易に粉塵防止する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
題記課題を解決するための本発明の請求項1記載の粉塵防止剤は、下記の水溶性あるいは水分散性高分子(A)(イ)〜(ニ)から選択される一種以上と、HLB(疎水性親水性バランス)が7〜15の界面活性剤から選択される少なくとも一種との混合物からなることを特徴とする。
【0012】
水溶性あるいは水分散性高分子(A):
(イ)アクリルアミド構成単位を含有する(共)重合物
(ロ)酢酸ビニル構成単位を含有する(共)重合物
(ハ)ビニルアルコール構成単位を含有する(共)重合物
(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位を含有する(共)重合物
【0013】
本発明の請求項2記載の粉塵防止剤は、請求項1に記載の粉塵防止剤において、前記界面活性剤が、下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤(B)から選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
【0014】
【化1】

【0015】
(一般式(1)において、PはCOOあるいはOを示し、Cは炭素数mが9〜24の脂肪族アルキル基を示し、nはエチレンオキサイド平均付加モル数を示し、5〜20である。)
【0016】
本発明の請求項3記載の粉塵防止剤は、請求項1あるいは請求項2に記載の粉塵防止剤において、前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C2037NaO7 S)およびグリセリンの混合物からなるものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4記載の粉塵防止剤は、請求項1に記載の粉塵防止剤において、前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)中の、(イ)アクリルアミド構成単位、(ロ)酢酸ビニル構成単位、(ハ)ビニルアルコール構成単位および(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位がそれぞれ50モル%以上、100モル%以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5記載の粉塵防止剤は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の粉塵防止剤において、前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)と前記界面活性剤(B)の混合割合(質量比)が(A):(B)=85:15〜99.9:0.1の範囲であることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項6記載の粉塵防止剤は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の粉塵防止剤において、前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)と前記界面活性剤(B)が水性混合液であることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項7は、請求項1〜6のいずれか1項に記載された粉塵防止剤の水溶液あるいは水希釈液を、炭素質物質、鉱物および無機物から選ばれる一種以上の堆積物に散布することを特徴とする粉塵防止方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1記載の粉塵防止剤は、前記の水溶性あるいは水分散性高分子(A)(イ)〜(ニ)から選択される一種以上と、HLB(疎水性親水性バランス)が7〜15の界面活性剤から選択される少なくとも一種との混合物からなることを特徴とするものであり、
堆積物は、微粉が混在していることが普通であり、従来の高分子物質のエマルジョンあるいは水溶液は堆積物表面から一定の厚さまでしか浸透しないので、粉塵防止効果が低いという問題があったが、本発明の粉塵防止剤は、従来の粉塵防止剤の問題を解決し、鉱石、石炭、土砂などの堆積物の表面からより内部まで充分に浸透するので粉塵防止効果が非常に高い上、合成高分子のみではなく、汎用の合成高分子を使用しても、高分子物質が有する本来の微粉を結着させる効果を十分に発揮させることができるので、コストダウンを図ることができ、適用可能な堆積物の範囲が広い、という顕著な効果を奏する。
【0022】
本発明の請求項2記載の粉塵防止剤は、請求項1に記載の粉塵防止剤において、前記界面活性剤が、前記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤(B)から選択される少なくとも一種であることを特徴とするものであり、
鉱石、石炭、土砂などの堆積物の表面から内部までより充分に浸透するので、高分子物質が有する本来の微粉を結着させる効果をより十分に発揮させることができ、粉塵防止効果がより高くなるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0023】
本発明の請求項3記載の粉塵防止剤は、請求項1あるいは請求項2に記載の粉塵防止剤において、前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C2037NaO7 S)およびグリセリンの混合物からなるものであることを特徴とするものであり、
堆積物の表面から内部までより充分に浸透する他、湿潤性も向上して乾きを防止するので、粉塵防止効果がさらにより高くなるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0024】
本発明の請求項4記載の粉塵防止剤は、請求項1に記載の粉塵防止剤において、前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)中の、(イ)アクリルアミド構成単位、(ロ)酢酸ビニル構成単位、(ハ)ビニルアルコール構成単位および(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位がそれぞれ50モル%以上、100モル%以下であることを特徴とするものであり、
水分散性高分子(A)中の各構成単位をそれぞれ50モル%以上、100モル%以下の範囲とすることにより、高分子物質が有する本来の微粉を結着させる効果をより十分に発揮させることができるので、粉塵防止効果がさらにより高くなるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0025】
本発明の請求項5記載の粉塵防止剤は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の粉塵防止剤において、前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)と前記界面活性剤(B)の混合割合(質量比)が(A):(B)=85:15〜99.9:0.1の範囲であることを特徴とするものであり、
(A):(B)の混合割合(質量比)をこの範囲とすることにより、堆積物の表面から内部までよく浸透する上、高分子物質が有する本来の微粉を結着させる効果も高く、浸透性と結着性とのバランスがよく、しかも安価であるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0026】
本発明の請求項6記載の粉塵防止剤は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の粉塵防止剤において、前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)と前記界面活性剤(B)が水性混合液であることを特徴とするものであり、
粉塵防止効果が高い上、環境や人に優しく、取り扱い性がよく、しかも安価であるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0027】
本発明の請求項7は、請求項1〜6のいずれか1項に記載された粉塵防止剤の水溶液あるいは水希釈液を、炭素質物質、鉱物および無機物から選ばれる一種以上の堆積物に散布することを特徴とする粉塵防止方法であり、
粉塵防止効果の高い上、環境や人に優しく、取り扱い性がよく、しかも安価である粉塵防止剤を用いて容易に粉塵防止することができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明の内容を詳細に説明する。
本発明で使用する水溶性あるいは水分散性高分子(A)は、下記の(イ)〜(ニ)から選択される一種以上である。
【0029】
(イ)アクリルアミド構成単位を含有する(共)重合物
(ロ)酢酸ビニル構成単位を含有する(共)重合物
(ハ)ビニルアルコール構成単位を含有する(共)重合物
(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位を含有する(共)重合物
【0030】
前記(イ)アクリルアミド構成単位を含有する(共)重合物は、以下に例示する単量体を使用し、重合した、非イオン性、カチオン性、アニオン性あるいは両性水溶性あるいは水分散性高分子ある。
前記非イオン性の水溶性あるいは水分散性高分子は、アクリルアミドを主体として重合する。アクリルアミド以外の非イオン性単量体は、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリンなどがあげられる。
【0031】
前記カチオン性の水溶性あるいは水分散性高分子は、以下に例示するカチオン性単量体の重合体あるいは共重合体である。
カチオン性単量体の例として、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸エステルあるいはN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸アミド、およびハロゲン化低級アルキルやハロゲン化ベンジルによる四級化物である。
すなわち(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルあるいはジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどである。
四級化物としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキル4級アンモニウム塩、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートなどである。
【0032】
前記アニオン性の水溶性あるいは水分散性高分子は、アクリルアミドを主体とし、以下に例示するアニオン性単量体との共重合体である。
アニオン性単量体の例は、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどである。
【0033】
前記両性の水溶性あるいは水分散性高分子は、アクリルアミドを主体とし、上記のカチオン性単量体およびアニオン性単量体を共重合して製造することができる。
【0034】
これら水溶性高分子あるいは水分散性高分子におけるアクリルアミドの共重合比は、好ましくは50モル%以上、100モル%以下であり、カチオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下である。
また更に好ましくはアクリルアミドの共重合比は、70モル%以上、100モル%以下であり、カチオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜70モル%以下である。
【0035】
アクリルアミドの共重合比が50モル%未満では、結着性が低下する恐れがある。
また分子量は重量平均分子量で100万〜2000万であり、好ましくは200万〜1500万であり、最も好ましくは200万〜1000万である。
重量平均分子量が100万未満では結着性が低下する恐れがあり、2000万を超えると水溶液の粘性が高くなりすぎ取り扱いが悪くなる。
【0036】
前記(ロ)酢酸ビニル構成単位を含有する(共)重合物は、酢酸ビニル重合物、あるいは酢酸ビニルと共重合し得る他の単量体との共重合物である。
すなわち上記に述べたカチオン性単量体、アニオン性単量体、非イオン性単量体と共重合することによって製造することができる。
これら水溶性高分子あるいは水分散性高分子における酢酸ビニルの共重合比は、好ましくは50モル%以上、100モル%以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体、あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下である。
また更に好ましくは酢酸ビニルの共重合比は、70モル%以上、100モル%以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜70モル%以下である。
【0037】
酢酸ビニルの共重合比が50モル%未満では結着性が低下する恐れがある。
分子量は重量平均分子量で1万〜500万であり、好ましくは10万〜500万であり、最も好ましくは50万〜500万である。
重量平均分子量が1万未満では結着性が低下し、500万を超えると分散液の粘性が高くなり取り扱いが悪くなる。
【0038】
前記(ハ)ビニルアルコール構成単位を含有する(共)重合物は、カルボン酸ビニルエステルの重合物、あるいは共重合し得る他の単量体との共重合物をアルカリ性下で加水分解して製造することができる。
カルボン酸ビニルエスとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどが例示され、入手の容易さの観点から、酢酸ビニルが好ましい。
また共重合し得る他の単量体は、上記に述べたカチオン性単量体、アニオン性単量体、非イオン性単量体と共重合し、アルカリ性下で加水分解して製造することができる。
これら水溶性高分子あるいは水分散性高分子におけるビニルアルコール構造単位の共重合比は、好ましくは50モル%以上、100モル%以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体、あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下である。
また更に好ましくはビニルアルコール構造単位の共重合比は、70モル%以上、100以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜70モル%以下である。
【0039】
ビニルアルコールの共重合比が50モル%未満では結着性が低下する恐れがある。
分子量は重量平均分子量で1万〜500万であり、好ましくは10万〜500万であり、最も好ましくは50万〜500万である。
重量平均分子量が1万未満では結着性が低下し、500万を超えると水溶液の粘性が高くなり取り扱いが悪くなる。
【0040】
前記(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位を含有する(共)重合物は、N−ビニルホルムアミド重合物、あるいはN−ビニルホルムアミドと共重合し得る他の単量体との共重合物である。
すなわち上記に述べたカチオン性単量体、アニオン性単量体、非イオン性単量体と共重合することによって製造することができる。
これら水溶性高分子あるいは水分散性高分子におけるN−ビニルホルムアミドの共重合比は、好ましくは50モル%以上、100モル%以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体、あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜50モル%以下である。
また更に好ましくはN−ビニルホルムアミドの共重合比は、70モル%以上、100モル%以下であり、カチオン性単量体、非イオン性単量体あるいはアニオン性単量体の共重合比は0〜70モル%以下である。
【0041】
N−ビニルホルムアミドの共重合比が50モル%未満では結着性が低下する恐れがある。
分子量は重量平均分子量で100万〜1500万であり、好ましくは200万〜1000万であり、最も好ましくは300万〜1000万である。
重量平均分子量が100万未満では結着性が低下し、1500万を超えると水溶液の粘性が高くなり取り扱いが悪くなる。
【0042】
本発明で使用する界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤あるいは両性界面活性剤が使用可能である。
非イオン性界面活性剤の例としては、ラウリルアルコールポリオキシエチレンエーテルなどの高級アルコールエチレンオキシド付加物;ステアリン酸ソルビタンジエステル、オレイン酸ソルビタンモノエステルなどの高級脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;N,N−ジヒドロキシエチルラウリルアミドなどの長鎖アルキルアルカノールアミド;オレイン酸ソルビタンエステルエチレンオキシド付加物などの脂肪酸ソルビタンエステルエチレンオキシド付加物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは高級アルコールエチレンオキシド付加物、高級脂肪酸エステルおよび長鎖アルキルアルカノールアミドである。
【0043】
アニオン性界面活性剤の例としては、オレイン酸石けんなどのカルボン酸塩型;高級アルコール硫酸エステル塩などの硫酸エステル塩型;スルホコハク酸ジエステルなどのスルホン酸塩型;高級アルコールリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩型が挙げられる。
【0044】
カチオン性界面活性剤の例としては、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物または、高級脂肪族アミンの塩などのアミン塩型;高級アルキルアミンアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩型が挙げられる。
本発明で使用する両性界面活性剤の例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ココアシドプロピルベタイン、ジメチルラウリルベタイン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ココアンホ酢酸ナトリウム、シクロヘキシルラウリルアミンオキシド、ジメチルラウリルアミンオキシド、ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミンオキシド、オレイルベタイン、ステアリルベタイン、ミリスチルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、2-アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエテルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
【0045】
本発明で使用する界面活性剤は、水溶性あるいは水分散性高分子と混合するため親水性であることが好ましい。
アルキル基の炭素数は9〜24の脂肪族が好ましく、またエチレンオキサイド平均付加モル数は、5〜20の数であることが好ましい。またHLB(疎水性親水性バランス)で表わすと、その値は好ましくは7〜15、更に好ましくは10〜15である親水性界面活性剤である。
【0046】
HLB(疎水性親水性バランス)が7未満では疎水性が高くなり堆積物への浸透性が低下し、15を超えると、界面活性が低下し、やはり堆積物への浸透性が低下する。
アルキル基の炭素数が9未満、あるいは24を超えると本発明で使用する界面活性剤のHLBが得られない場合があり、使用しないほうが好ましい。
エチレンオキサイド平均付加モル数が5未満、あるいは20を超えると本発明で使用する界面活性剤のHLBが得られない場合があり、使用しないほうが好ましい。
【0047】
そのような界面活性剤としては、ここでポリオキシエチレン鎖をPOEで表わせば、例えばPOEソルビタンモノステアレートなどのPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノオレエートなどのPOEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリンモノイソステアレートなどのPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEステアリルエーテル、POEコレスタノールエーテルなどのPOEアルキルエーテル、POEノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル、プルロニックなどのプルアロニック型類、またポリオキシプロピレン鎖をPOPで表せば、POE・POPセチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル、テトロニックなどのテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合体、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油などのPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEミツロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられるが、上記の界面活性剤に限定されるものではない。
またこれらの界面活性剤の一種または二種以上を組み合わせて適宜に配合することができる。
【0048】
特に好ましい界面活性剤は、下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤(B)である。
【0049】
【化2】

【0050】
(一般式(1)において、PはCOOあるいはOを示し、Cは炭素数mが9〜24の脂肪族アルキル基を示し、nはエチレンオキサイド平均付加モル数を示し、5〜20である。)
【0051】
すなわち上記非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエステルあるいはポリオキシエチレンアルキルエーテルであるが、最も好ましい非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
また、アルキル基は炭素数9〜24の脂肪族が好ましいが、最も好ましいアルキル基は炭素数12〜20の脂肪族である。
【0052】
更に本発明の粉塵防止剤は、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C2037NaO7 S)およびグリセリンを含有していることが好ましい。
これら物質の含有量としては、上記非イオン性界面活性剤に対しスルホコハク酸ジオクチルナトリウムは、1〜20質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
【0053】
スルホコハク酸ジオクチルナトリウムが1質量%未満では粉塵飛散防止剤の浸透性が低下し、20質量%を超えると水溶性あるいは水分散性高分子の含有量が減少し、その結果、石炭微粉塵への結着性が低下する。
またグリセリンは、上記非イオン性界面活性剤に対し1〜20質量%が好ましく、特に3〜10質量%であることが好ましい。
グリセリンは浸透性向上とともに湿潤剤として働き、乾きを防止する機能を有し、粉塵防止剤としての機能を高める。
グリセリンが1質量%未満では湿潤剤としての機能が低下し、20質量%を超えると水溶性あるいは水分散性高分子の含有量が減少し、その結果、石炭微粉塵への結着性が低下する。
【0054】
非イオン性界面活性剤の混合比は、粉塵防止剤に対し0.1〜10質量%が好ましく、特に1〜6質量%が好ましい。
非イオン性界面活性剤が0.1質量%未満では浸透性が十分ではない。非イオン性界面活性剤が10質量%を超えるとコスト的に高くなり適当ではない。
【0055】
散布における粉塵防止剤希釈液濃度は0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜2.5質量%であることが更に好ましい。
粉塵防止剤溶液の濃度が0.01質量%未満であると、高分子物質の微細粒子固着作用が弱く、乾燥時に期待する粉塵防止機能が得られない。逆に5質量%を超えると、溶液粘度が高くなり、散布効率が低下し、またその結果多量に散布することになり、コスト的に不利である。また同時に期待する粉塵防止機能も得られない。
【0056】
更に本発明で使用する高分子物質、すなわち(イ)アクリルアミド構成単位を含有する(共)重合物、(ロ)酢酸ビニル構成単位を含有する(共)重合物、(ハ)ビニルアルコール構成単位を含有する(共)重合物あるいは(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位を含有する(共)重合物を任意に混合し、用いることもできる。
これらは堆積物の種類により、あるいは粉塵防止剤の価格などにより適宜決めていけばよい。
【0057】
本発明の粉塵防止剤は、界面活性剤が粉末状である場合は、水溶性あるいは水分散性高分子(A)の粉末と混合した粉末タイプでも良いが、配合する界面活性剤が液体である場合が多いので、水溶性あるいは水分散性高分子(A)の水溶液と混合した液状品タイプが好ましい。
【0058】
堆積物への散布は、野積みヤードやサイロなどの貯蔵施設、リクレーマーやベルトコンベヤーなどの移送設備のシュート部やホッパー部において、散水車やスプリンクラーなどにより行うことができる。
本発明で使用する粉塵防止剤の溶解は、ラインブレンダーや希釈タンクでのミキシングにより行うことができる。
通常、溶解は水が使用されるが、水に混和性の有機溶剤を混合して使用することは特に問題はない。
【0059】
本発明の粉塵防止剤を適用しうる堆積物としては、例えば、石炭、コークス、おがくず、肥料などの炭素質物質、鉄鉱石、鉄鋼スラグなどの鉱物、フライアッシュ、石綿、セメント、土砂などの無機物などが挙げられるが、そのうち、炭素質物質、特に石炭、コークスなど微粒子が可燃性あるいは爆発性のあるものに適用することは、事故防止の点からも好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて、更に具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1〜6)
(粉塵防止剤の調製)
表1に記載した水溶性あるいは水分散性高分子(試料名:高分子−1〜高分子−6、試料番号:No.1〜No.6)と、表1に記載した界面活性剤(試料名:活性剤−1〜活性剤−2、試料番号:No.7〜No.8)およびグリセリンを、それぞれ表2に示した配合割合で配合し、本発明の粉塵防止剤:試作−1〜試作−4を調製し、そしてグリセリンは配合しないで、本発明の粉塵防止剤:試作−5〜試作−6を調製した。
【0062】
(比較例1〜5)
(粉塵防止剤の調製)
界面活性剤およびグリセリンを配合せずに、表1に記載した水溶性あるいは水分散性高分子(試料名:高分子−1〜高分子−6、試料番号:No.1〜No.6)のみからなる、比較のための粉塵防止剤:試作−7〜試作−12を調製した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1中の、VAcは酢酸ビニル構造単位、AAMはアクリルアミド構造単位、DMCはメタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド構造単位、AACはアクリル酸構造単位、NVFはN−ビニルホルムアミド構造単位、VAはビニルアルコール構造単位、EOはオキシエチレン構造単位、nはオキシエチレン構造単位平均付加モル数をそれぞれ示す。
【0065】
【表2】

【0066】
(粉塵飛散防止試験)
表2に示した本発明の粉塵防止剤:試作−1〜試作−6(実施例1〜6)および比較のための粉塵防止剤:試作−7〜試作−12(比較例1〜6)を各々0.1質量%水に溶解し粉塵飛散防止試験に用いた。
亜瀝青炭の45μmアンダー微粉10gをガラス瓶に入れ、本発明の粉塵防止剤:試作−1〜試作−6(実施例1〜6)および比較のための粉塵防止剤:試作−7〜試作−12(比較例1〜6)の0.1質量%水溶液を、石炭に対し2.0質量%噴霧して15分間静置した後、塊を崩さないように持ち上げ、高さ50cmから落下させたときに飛散した粉塵を両面テープで捕捉して、付着した粉塵数を計測した。
【0067】
水だけを使用して前記と同様にして粉塵飛散防止試験を行った場合(比較例7)の粉塵数を100として、本発明の粉塵防止剤:試作−1〜試作−6(実施例1〜6)および比較のための粉塵防止剤:試作−7〜試作−12(比較例1〜6)の相対的捕捉粉塵数を求め、結果をまとめて表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3から、本発明の粉塵防止剤:試作−1〜試作−6(実施例1〜6)は優れた粉塵防止効果を示すのに対して、比較のための粉塵防止剤:試作−7〜試作−12(比較例1〜6)は、水だけを使用した場合(比較例7)よりは優れた粉塵防止効果を示すが、粉塵防止効果が劣ることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0070】
石炭、コークス、おがくず、肥料などの炭素質物質、鉄鉱石、鉄鋼スラグなどの鉱物、フライアッシュ、石綿、セメント、土砂などの堆積物は、微粉が混在していることが普通であり、従来の高分子物質のエマルジョンあるいは水溶液は堆積物表面から一定の厚さまでしか浸透しないので、粉塵防止効果が低いという問題があったが、本発明の粉塵防止剤は、従来の粉塵防止剤の問題を解決し、鉱石、石炭、土砂などの堆積物の表面からより内部まで充分に浸透し粉塵防止効果が非常に高い上、合成高分子のみではなく、汎用の合成高分子を使用しても、高分子物質が有する本来の微粉を結着させる効果を十分に発揮させることができるので、コストダウンを図ることができ、適用可能な堆積物の範囲が広がる、という顕著な効果を奏するので産業上の利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の水溶性あるいは水分散性高分子(A)(イ)〜(ニ)から選択される一種以上と、HLB(疎水性親水性バランス)が7〜15の界面活性剤から選択される少なくとも一種との混合物からなることを特徴とする粉塵防止剤。
水溶性あるいは水分散性高分子(A):
(イ)アクリルアミド構成単位を含有する(共)重合物
(ロ)酢酸ビニル構成単位を含有する(共)重合物
(ハ)ビニルアルコール構成単位を含有する(共)重合物
(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位を含有する(共)重合物
【請求項2】
前記界面活性剤が、下記一般式(1)で表される非イオン性界面活性剤(B)から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の粉塵防止剤。
【化1】

(一般式(1)において、PはCOOあるいはOを示し、Cは炭素数mが9〜24の脂肪族アルキル基を示し、nはエチレンオキサイド平均付加モル数を示し、5〜20である。)
【請求項3】
前記界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(C2037NaO7 S)およびグリセリンの混合物からなるものであることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の粉塵防止剤。
【請求項4】
前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)中の、(イ)アクリルアミド構成単位、(ロ)酢酸ビニル構成単位、(ハ)ビニルアルコール構成単位および(ニ)N−ビニルホルムアミド構成単位がそれぞれ50モル%以上、100モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の粉塵防止剤。
【請求項5】
前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)と前記界面活性剤(B)の混合割合(質量比)が(A):(B)=85:15〜99.9:0.1の範囲であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の粉塵防止剤。
【請求項6】
前記水溶性あるいは水分散性高分子(A)と前記界面活性剤(B)が水性混合液であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の粉塵防止剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された粉塵防止剤の水溶液あるいは水希釈液を、炭素質物質、鉱物および無機物から選ばれる一種以上の堆積物に散布することを特徴とする粉塵防止方法。

【公開番号】特開2011−42741(P2011−42741A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191667(P2009−191667)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(506111402)株式会社エコボンド (6)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】