説明

粉末によってまたは混合粉末によってモールドを充填するためのデバイス

本発明は、少なくとも1つの粉末(3)によって少なくとも1つのモールド(2)を充填するための充填デバイス(1)に関するものであって、−デバイス内へと少なくとも1つの粉末(3)を供給するための供給手段(4)と、−供給された粉末を、層(7)という形態で放出するための少なくとも1つの放出手段(5)と、−層という形態でもって放出された粉末の少なくとも一部を供給に遮断しこれによりモールド(2)内における所定位置に向けて粉末を偏向させるための少なくとも1つの偏向器(9)と、を具備していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築材料や薬剤粉末や食品加工粉末や原子力用セラミック粉末やセメント粉末や焼結金属粉末といったような幅広い分野にわたる材料からなる粉末によってまたは混合粉末によって、特に圧縮モールドといったようなモールドを、充填するためのデバイスに関するものである。
【0002】
本発明の技術分野は、圧縮を容易に行い得るよう微粉化された材料によってパターンキャビティを充填するためのシステムに関するものである。この技術分野においては、制御された態様でかつ一様な態様でかつ迅速な態様で圧縮モールド内へと粉末を押し込んで詰め込む手法が、追求されている。特に、目標は、一軸圧縮や高温平衡圧縮や混合粉末による焼結を行うためのモールドに対して、制御しつつかつ調節しつつ充填を行うことである。
【背景技術】
【0003】
粉末冶金学においては、熱化学的手法や微粉化によって得られた金属粉末を圧縮することによって、様々な部材が形成される。粉末は、形成対象をなす部材の形状とされたダイのキャビティすなわちパターンキャビティ内に充填される。その後、粉末は、非常に大きな圧力によって圧縮される。その後、得られたペレットを、焼結する。つまり、非常に高温にまで加熱する。これにより、圧縮済み粉末どうしが互いに結合し、固体を形成し得るよう十分に良好な機械的特性を有した稠密な質量体を形成する。
【0004】
粉末によって圧縮パターンキャビティを充填するに際しては、多くの方法が存在する。
【0005】
最も頻繁に使用される方法のうちの1つは、重力によってパターンキャビティの容量を充填することである。この技術の欠点は、キャビティの充填を制御し得ないことである。したがって、キャビティ内における重量の変動が大きく、キャビティ内における粉末の分散が非一様である。
【0006】
他の方法においては、粉末を流動化させる。多数の流動化システムが、利用可能であって、市販されている。いくつかにおいては、粉末は、粉末貯蔵装置内において(参考文献[1][2][3]を参照)、あるいは、キャビティ内において直接的に(参考文献[4]を参照)、流動化させることができる。しかしながら、双方の場合において、システムは、重大な共通の欠点を有している。流動化は、充填システム内へとガスを圧入することによって得られる。したがって、ガス流は、非常に正確に管理されなければならず、このことは、システムの頑丈さという点において、問題点を提起する。さらに、粉末内のガスは、不安定性を引き起こし得る。したがって、ガスの使用は、粉末の充填に関しては利点を有しているものの、制御レベルが低いままである。
【0007】
粉末によるキャビティの充填に関する問題点を部分的に改良し得るような他のシステムが存在する。例えば、いくつかシステムにおいては、シュー内における圧力波によって、粉末を稠密化する(参考文献[5]を参照)。他方、他のシステムにおいては、クロス変位するシューを使用したり(参考文献[6]を参照)、あるいは、予備的にコンパクト化した粉末を出力するシューを使用したり(参考文献[7]を参照)、している。
【0008】
しかしながら、これら従来技術のいずれにおいても、キャビティ内を空間的に正確に充填することができない。さらに、キャビティを一様に充填することができない。この欠点は、結果的にかなりの程度で粉末が圧縮されるような複雑なモールドの場合には、顕著である。粉末流通の制御は、時間的な意味でもまた空間的な意味でも、お粗末なままである。
【特許文献1】2002年4月19日付けでもって公開された“Fluidized fillshoe system”と題する国際公開第0126846号パンフレット(参考文献[1])
【特許文献2】1997年3月28日付けで公開された“Method and apparatus for filling powder”と題する米国特許第5,881,357号明細書(参考文献[2])
【特許文献3】2001年8月9日付けで公開された“Powder filling method and arrangement therefor”と題する国際公開第0156726号パンフレット(参考文献[3])
【特許文献4】1997年10月8日付けでもって公開された“Pulsed pressurized powder feed system and method for uniform particulate material delivery”と題する米国特許第5,897,826号明細書(参考文献[4])
【特許文献5】2000年9月6日付けにて公開された“Method and apparatus for packing material”と題する欧州特許出願公開第1 083 125号明細書(参考文献[5])
【特許文献6】1994年3月14日付けにて公開された“Powder molding machine and method for filling molding materials into a die cavity thereof”と題する米国特許第5,647,410号明細書(参考文献[6])
【特許文献7】1996年8月29日付けにて公開された“Pressurized feed shoe apparatus for precompacting powdered materials”と題する米国特許第5,885,625号明細書(参考文献[7])
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、上記の様々な欠点を有していないデバイスを提供することである。この目的は、少なくとも1つの粉末によって少なくとも1つのモールドを充填するための充填デバイスであって、
−少なくとも1つの粉末を供給するための供給手段と、
−供給された粉末を、層という形態で放出するための少なくとも1つの放出手段と、
−層という形態でもって放出された粉末の少なくとも一部を供給に遮断しこれによりモールド内における所定位置に向けて粉末を偏向させるための少なくとも1つの偏向器と、
を具備していることを特徴とする充填デバイスによって得られる。
【0010】
言い換えれば、本発明によるデバイスにおいては、放出手段によって、対象をなす粉末を層状でもって放出し、粉末の経路上に配置された偏向器によって、粉末層を遮断し、これにより、充填対象をなすモールドの正確な所定位置に、遮断した粉末を落下させる。
【0011】
有利には、デバイスは、デバイス内へと供給された粉末を層状でもって放出するための複数の放出手段を備えることができ、各放出手段は、様々な粉末を分配し得るよう(あるいは、分散させ得るよう)構成される。
【0012】
『粉末層』という用語は、表面がなす寸法に対して厚さが薄いものとされたような容積を占有するような一組をなす複数の粒子を意味している。このような一組は、平面を形成することができる、あるいは、凹面形状や、凸面形状や、他の任意の形状、を形成することができる。
【0013】
有利には、偏向器は、その向きを調節することができる。
【0014】
有利には、偏向器は、可動なものとすることができる。したがって、例えば、偏向器は、鉛直方向に移動させることができる。また、偏向器は、自身の回りに回転させることができる。
【0015】
例えば、偏向器は、平面の一部とすることができる、あるいは、凸状のものとすることができる、あるいは、螺旋部分を有することができる。
【0016】
ある特別の実施形態においては、層という形態でもって粉末を放出する放出手段は、回転部材とされる。
【0017】
第1の例においては、回転部材の形状は、有利には、ディスクと、円錐と、ボウルと、の中から選択される。有利には、回転部材は、デバイスの対称中心に配置された回転軸線回りに回転するものとされる。
【0018】
有利には、回転部材は、少なくとも1つのリブを備えている。この場合、リブは、有利には、ディスクまたは円錐またはボウルの径方向に沿って配置される。リブの形状が、偏向器の形状と同じであることに注意されたい。言い換えれば、リブは、平面や、凹面や、凸面や、螺旋形、等とすることができる。
【0019】
ディスクや円錐やボウル上に存在するリブの目的は、粉末の飛行を容易なものとすることであり、また、その制御を容易なものとすることである。リブに代えて、粗いコーティングや、マイクログルーブを有したコーティングを、使用することができる。これにより、粉末層を形成するのに必要なエネルギー量を伝達することができる。
【0020】
有利には、少なくとも1つのリブは、回転可能なものとされる。
【0021】
第2の例においては、回転部材は、所定距離の分だけ互いに離間して配置された下部材と上部材とを備え、上部材は、粉末を導入するための開口を有し、粉末は、上部材と下部材との間の離間スペースを通して移動し得るものとされている。
【0022】
第3の例においては、回転部材は、粉末導入口と粉末導出口とを備えた部材とされ、この部材は、部材の外部へと粉末を放出し得るような十分に大きな慣性でもって粉末導出口から粉末を放出し得るように、構成されている。有利には、この部材は、湾曲したチューブとされる。有利には、この回転部材の回転軸線は、チューブのうちの、粉末導入口が位置している部分と一致する。
【0023】
他の特別の実施形態においては、少なくとも1つの粉末を供給するための供給手段は、少なくとも1つのレセプタクルとされ、このレセプタクルは、粉末導入口と粉末導出口とを備え、層という形態でもって粉末を放出する放出手段は、少なくとも1つのレセプタクルを速く移動させ得るとともにレセプタクルを急停止させ得る手段とされ、その急停止により、レセプタクル内に収容された粉末を、慣性によってレセプタクルの外部へと放出させ得るものとされている。粉末導入口と、粉末導出口とを、同じものとし得ることに注意されたい。
【0024】
粉末を放出する手段が回転部材である場合、少なくとも1つの偏向器は、有利には、層という形態でもって粉末を放出する放出手段の回転軸線に対して平行に配置される。
【0025】
有利には、少なくとも1つの偏向器は、粉末層がなす中央放出平面に対して垂直に配置することができ、粉末放出手段は、回転部材とも非回転部材ともすることができる。
【0026】
有利には、少なくとも1つの偏向器は、部材の慣性壁の一部とされる。
【0027】
有利には、少なくとも1つの偏向器は、充填対象をなすモールドの所定位置の形状に適合したものとされる。言い換えれば、少なくとも1つの偏向器は、有利には、充填対象をなすキャビティの上方に配置され、偏向器の形状は、キャビティの形状と比較して、同じものあるいは同様のものとされる。
【0028】
本発明によるデバイスは、多数の利点を有している。
【0029】
第一に、本発明によるデバイスを使用することにより、モールドを速く充填することができる。
【0030】
同様に、本発明によるデバイスの内部において複数の粉末を混合することができる。
【0031】
粉末の充填は、粉末を移動させる目的でシステム内へと相当量のガスを導入する必要なく、行うことができる。
【0032】
本発明によるデバイスは、粉末の流通を制御しつつ、パターンキャビティの様々なゾーンに対して粉末を供給することができる。
【0033】
したがって、モールドまたはキャビティの選択された各ゾーンに対して供給される粉末流を、時間的な意味においてもまた空間的な意味においても、制御し得るようなデバイスが提供される。
【0034】
よって、本発明によるデバイスを使用すれば、密度が互いに大きく相違しているような複数の構成成分を含有した混合粉末の場合であっても、不安定化を引き起こすことなく、モールド内において混合粉末を形成したりモールド内へと混合粉末を供給したりすることができる。
【0035】
様々な構成成分や粉末の流通を空間的に制御し得るのと同じ態様で、混合粉末の組成や粉末の見かけの密度を、形成すべき稠密部材の高さの関数として、調節することができる。特に、供給した粉末に関し、水平性と平坦性とを制御することができる。
【0036】
さらに、本発明によるデバイスは、良好な流動性を有した粉末の使用を必要としない。細い直径のパイプを通して流通させることは、行わない。したがって、粉末の選択肢を広げることができる。
【0037】
本発明においては、粒状化した粉末をシステム内へと供給する際に、粉末を衝撃することによって、研磨効果をもたらすことができる。これは、カーバイド材料や原子力材料に関して、非常に有効である。
【0038】
本発明によるデバイスにおいては、キャビティの選択された1つまたは複数のゾーン内へと、添加物を添加することができる。例えば、添加物は、その後の稠密化プロセスを改良し得るものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の他の格別の特徴点や利点は、添付図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0040】
下記の実施形態は、例示として、粉末によってまたは混合粉末によってモールドを充填することに関するものである。
【0041】
使用される充填材料は、例えば焼結によってあるいは圧縮によってあるいは圧縮焼結によってあるいは高温平衡圧縮によって成形することを意図した粉末である。例えば、粉末は、金属粉末や、セラミック粉末や、これらの混合物、とされる。
【0042】
これら粉末は、焼結対象物に関する製造条件を満たさなければならない。特に、サイズ等級や、純度や、圧縮性、に関する要求を満たさなければならない。したがって、使用される粉末の直径は、3mm未満とされ、好ましくは、1mm未満とされる。
【0043】
本発明による充填デバイスにおいては、デバイス内において予め容積または重量を測定した量の粉末を供給する、あるいは、チューブ接続を介したホッパー(四角形ピラミッドの上下を反転させて尖端を除去したような形状をした貯蔵器)の使用により粉末を投入する。例えば、サイズ的な理由のために、ホッパーは、傾斜させることができる、あるいは、ディスクの周囲に配置することができる。ホッパーに代えて、ウォームスクリューや、チューブ、等を使用することができる。デバイスのホッパーボディ接続は、通常、クローザによって制御される。クローザは、また、トレー上に供給される粉末の量を調節するための手段と、供給時間を制御するための手段と、を構成する。
【0044】
図1および図2に示す第1の例においては、目的は、本発明によるデバイス1を使用して、モールド2を充填することである。粉末3は、デバイスのボディ20の上部に形成されたホッパー4内に収容されている。粉末は、まず最初に、トレー5上へと落下する。トレー5は、中心軸線6まわりに回転するものであり、ホッパー4の直下に配置されている。この例においては、トレー5は、ディスク形状とされている。トレー5は、高速回転するものであり、これにより、粉末3を、一様なほぼ水平方向をなす層7という態様で、放出する。平均方向は、水平方向からプラスマイナス90°という角度範囲内である。図1に示すように、トレー5から放出された粉末層7は、デバイスのボディの壁21をに対して衝突する。この壁21は、偏向器として機能する。壁22は、壁21よりも下方に配置されたものであって、同様に偏向器として機能することことができる。
【0045】
粉末層7は、壁21との衝突によって向きを変え、その後、偏向板9に対して衝突する。偏向板9は、回転トレー5とは異なり、径方向におよび鉛直方向に固定されている。この例において、偏向板9は、シリンダ形状をなす中央部材8に対して固定されている。よって、粉末3は、モールド2内において分散される、すなわち、偏向板9の下部のキャビティ内へと分散される。ここで、中央部材8と偏向板9とが固定されており、トレー5だけが回転することに、注意されたい。
【0046】
ボディに対しての第1回目の衝突の後に、粉末層は、他の壁(ボディの壁や中央部材のようなもの)に向けて偏向され、その後、偏向板9へと向かう。これらすべての壁は、粒子の流れを制御するための一連の偏向器を構成している。
【0047】
回転トレーの回転数は、粉末に依存して、また、粉末に対して供給されるべきエネルギーに依存して、毎分100〜10000回転とされる。有利には、この回転速度は、毎分100〜5000回転とされる。
【0048】
図2において、偏向板が固定されており、かつ、トレーがこの例においては時計回りに回転することにより、粉末は、偏向板の一方の側面に対して接触することとなる。
【0049】
他の例においては、モールドの位置に応じた様々な深さ位置のキャビティに様々な混合粉末を充填することが要求される。図3は、本発明によるデバイスを示しており、このデバイスは、一組をなす複数の粉末偏向器を備えている。これら粉末偏向器は、ほぼ水平方向をなす様々な粉末層を、制御された態様かつ調節可能な態様でもって(水平方向に対して、+90°〜−90°という平均方向)、モールド内の様々な位置に分配することができる。この例におけるモールド10は、2つのキャビティを備えている。すなわち、深くかつ狭いキャビティ11と、浅くかつ幅広いキャビティ12と、を備えている。この場合、キャビティ12の底部は、キャビティ11の上部へと開口している。
【0050】
この例においては、2つのディスク13,14が、共通の中心軸線15のまわりに回転するとともに、各々が、ここでは粉末A,Bと称される相異なる粉末を受領する。粉末A,Bは、所定厚さを有した霧化粉末層という態様で放出される。両粉末は、2つの出口を有したホッパーを使用することによって、あるいは、複数のホッパーを使用することによって、両ディスク内へと供給することができる。両ディスクを、互いに異なる軸線によって回転駆動し得ることは、明らかである。
【0051】
様々な幅を有した4つの長尺の偏向板が、粉末層A,Bの経路上において、2つの回転ディスク(13および14)の回転平面に対して垂直に、設置されている。実際、同じ形状の3つの偏向板(16,17,18)と、粉末Aに接触する部分に凹所を有した1つの偏向板19と、が設けられている。これら偏向板は、パターンキャビティの正確な位置に対して粉末を充填し得るようにして、配置されている。これらの4つの偏向板の形状がフラットであることにより、これら偏向板は、モールドのうちの、充填対象をなす対応キャビティの直上に配置される。よって、これら4つの偏向板は、充填対象をなす与えられたパターンキャビティのキャビティに対応した所定位置において、各粉末層に干渉する。したがって、各偏向板は、それぞれの幾何形状および位置(充填操作時に変更可能)に基づいて、モールド内への各粉末の分配に寄与する。
【0052】
各偏向板の形状を変更し得ることに注意されたい(凹面形状や、平面形状や、凸面形状や、螺旋形状、等へと変更することができる)。また、各偏向板を、トレーがなす平面に対して、任意の方向へと傾斜させ得ることに注意されたい。
【0053】
各偏向板の形状は、パターンキャビティに向けて偏向させる粉末量に影響がある。図3においては、偏向板19は、粉末Bと干渉する領域においては、偏向板16,17,18よりも幅が広い。したがって、偏向板19は、他の偏向板よりも多くの粉末Bを収集する。そして、偏向板19が収集を行っている位置においては、キャビティ(すなわち、キャビティ11)内へと粉末が、他のキャビティよりも早く充填される。幅が異なる偏向板の使用は、様々な深さを有したパターンキャビティの所定位置を充填することが要望された場合には、有効なものとすることができる。
【0054】
さらに、偏向板19には、粉末Aを収集している場所に、凹所が形成されている。なおかつ、この凹所は、粉末Bを収集している場所には、存在していない。したがって、偏向板19が、粉末Bと比較して、より多くの粉末Aを遮る。したがって、キャビティ10のキャビティ11は、粉末Aをより多く含有し、トレース量の粉末Bを含有している。しかしながら、偏向板16,17,18は、互いに同量の粉末Aと粉末Bとを遮る。
【0055】
充填の最中に、各偏向板を、変位させたり、回転させたり、することができる。これにより、例えば、より多くの粉末を偏向させたり、あるいは、放出される粉末の速度に影響するような様々なディスクの回転速度に偏向板を適応させたり、することができる。
【0056】
本発明によるこのデバイスと一緒に使用し得るキャビティを、200mmというものとし得ることに注意されたい。
【0057】
図3は、単一の組をなす複数の偏向板と、単一のモールドと、だけしか示していない。自明なように、図示されていないものの、他の組をなす複数の偏向板と、それに対応した他のモールドと、が存在する。モールドと偏向板とは、回転トレーの周縁回りにおける正確な位置に配置される。
【0058】
偏向板によって偏向されない粉末は、重力によって落下する。図3においては、偏向を受けなかった粉末は、周辺に落下し、回収される。図2においては、すべての粉末が使用される。
【0059】
キャビティを充填するために使用される粉末層は、様々な方法で得ることができる。
【0060】
例えば、回転部材上における粉末の加速によって、得ることができる(図1および図3の場合)。この回転部材は、ディスク形状や、ボウル形状や、円錐形状、等とすることができる。
【0061】
回転部材の性状は、金属や、セラミックや、ポリマーや、他のもの、とすることができる。回転部材の表面状態は、粉末粒子に関する所望の軌跡に依存して、研磨状態から非常に粗い状態まで多岐にわたるものとすることができる。
【0062】
回転部材の幾何形状は、必ずしも平面である必要はない。回転部材は、例えば、円錐形状のもの(すなわち、三角形横断面形状30を有したもの)(図4を参照)や、ボウル形状のもの(円形横断面形状あるいは準円形横断面形状31のもの)(図5を参照)や、あるいは、粉末層7を案内するために使用し得る他の任意の形状のもの、とすることができる。
【0063】
粉末層の放出に加えて、粉末層の厚さをチェックすることが要望された場合には、ボウルまたはディスクに対して、他の部材を加えることができる。図6においては、短い距離(最大でも数mm)の分だけ互いに離間して配置された2つの部材が、粉末を移動させ得るスペースを規定している。すなわち、下部材32は、ボウルのような形状とされており、上部材33も、また、ボウルのような形状とされている。なおかつ、上部材33は、中央のところにダクト34を有しており、このダクト34を通して粉末7を導入し得るものとされている。
【0064】
ディスクまたはボウルまたは円錐は、表面上に、ディスクから粉末へのエネルギー伝達を可能とする特殊形状を有することができる。そのような形状は、シリンダ(例えば、追加のピンによって形成されたシリンダ)や、半球体(ディスクの局所的な貫通によって形成された半球体)や、あるいは、ディスクまたはボウル上における粉末の移動に影響を及ぼし得るような他の任意の形状、とすることができる。ディスクまたはボウルは、表面上にわたって、リブを有することができる。例えば、図7は、三角形横断面形状を有してなるディスクに対して、ディスクの頂点を起点として延在する螺旋状リブ35が付加された例を示している。
【0065】
粉末層は、また、ジェットの高周波走査によっても、得ることができる。その場合、層は、粉末粒子がなす様々な軌跡の包絡線によって形成される。粉末層は、高周波数でもって与えられたゾーンを走査する粉末ジェットによって形成することができる。走査ゾーンの全体が、『層』と称される。この原理の一例が、図8に示されている。この場合、粉末は、例えば、クランク形状チューブ36を回転させることによって、クランク形状チューブ36内において加速することができる。このチューブの形状が、放出された粉末の経路を決定することとなる。この例においては、チューブの開口は、円形とされている。この場合には、粉末層は、ディスクまたはボウルの回転の場合と同じく、チューブの回転軸線回りにおいて対称なものとなる。
【0066】
粉末層は、また、レセプタクル内に収容された粉末の加速によっても、得ることができる。図9においては、粉末は、レセプタクル37内に配置されており、レセプタクル37は、他の寸法と比較して高さが小さいものとされた1つまたは複数の隔室を備えたものとされている。レセプタクルの複数の鉛直方向面のうちの1つの面は、壁を有していないものとされる、あるいは、隔室に対するアクセスを可能とし得るよう着脱可能な壁を有したものとされる。この壁は、レセプタクルの外部へと粉末を放出することが要望された時点で、取り外される。この場合、レセプタクルは、層を形成することが要望された領域に向けて加速される。レセプタクルは、この領域38から短い距離のところにおいて急停止される。急停止時点での慣性効果のために、粉末が、この目的のために設けられた開口39を通して、『層状』をなすようにして放出される(図10を参照)。このため、この層は、レセプタクルの出口開口の形状を調節することによって、制御することができるあるいは校正することができる。レセプタクルが複数の隔室を備えている場合には、層は、各隔室によって規定された様々な粉末射出によって構成される。有利には、互いに積層された複数の隔室に対して、互いに異なる粉末が収容される(図10を参照)。この場合には、互いに平行とされた複数の層を、作成することができる。
【0067】
また、複数のレセプタクルを使用することによって、粉末のより良好な分散を得ることができ、また、優先的な方向性を有することを回避することができる。自明なように、この構成は、粉末の混合に際しても、興味深い。例えば、図9の場合には、4つのレセプタクルが、同一平面上に配置されているとともに、充填対象をなすダイの中央に位置した軸線から互いに等距離のところに配置されている。図9においては、粉末の放出が、矢印によって図示されている。
【0068】
図9においては、複数の偏向器と、充填対象をなすモールドとが、図示されていないことに注意されたい。
【0069】
粉末層の形成に際しては、他の機械的システムを想定することができる。例えば、加速ガスがモールド内を通過したりモールド内に集積したりすることを確実に防止できる限りにおいては、また、偏向器が配置されている領域内を通過したり集積したりすることを確実に防止できる限りにおいては、ガスを使用して加速を行うことができる。
【0070】
それら技術の1つのよって得られた層によってモールドを充填した後には、モールド内に保持された粉末は、例えば、一軸性の圧縮を使用して圧縮することができ、これにより、粉末を稠密化することができる。あるいは、モールド内に収容された混合粉末に対して、大きな圧力(1〜8kbar)を印加することができる。
【0071】
その後、得られたペレットを焼結処理することにより、機械的強度を増強することができる。これは、ペレットの主要構成成分の融点以下の温度でのペレットの熱処理に相当する。これにより、顕著に機械的強度を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による充填デバイスの格別の一例を示す断面図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿った矢視断面図である。
【図3】本発明による充填デバイスの他の例を示す図である。
【図4】回転部材に関する円錐形状とされた一例を示す断面図である。
【図5】回転部材に関するボウル形状とされた一例を示す断面図である。
【図6】回転部材に関する他の例を示す断面図である。
【図7】円錐形状とされかつリブを有している回転部材を示す断面図である。
【図8】回転部材に関する他の例を示す断面図である。
【図9】本発明による充填デバイスの他の例を示す図である。
【図10】図9におけるB−B線に沿って部材37を示す矢視断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 充填デバイス
2 モールド
3 粉末
4 ホッパー(供給手段)
5 トレー、回転トレー、回転部材(放出手段)
7 粉末層
9 偏向板(偏向器)
16 偏向板(偏向器)
17 偏向板(偏向器)
18 偏向板(偏向器)
19 偏向板(偏向器)
21 壁(偏向器)
22 壁(偏向器)
37 レセプタクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの粉末(3)によって少なくとも1つのモールド(2)を充填するための充填デバイス(1)であって、
−少なくとも1つの粉末(3)を供給するための供給手段(4)と、
−供給された前記粉末を、層(7)という形態で放出するための少なくとも1つの放出手段(5)と、
−層という形態でもって放出された前記粉末の少なくとも一部を供給に遮断しこれにより前記モールド(2)内における所定位置に向けて前記粉末を偏向させるための少なくとも1つの偏向器(9)と、
を具備していることを特徴とする充填デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の充填デバイスにおいて、
前記偏向器(9)が、その向きを調節し得るものとされていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項3】
請求項1記載の充填デバイスにおいて、
前記偏向器(9)が、可動なものとされていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項4】
請求項1記載の充填デバイスにおいて、
層(7)という形態でもって粉末を放出する前記放出手段(5)が、回転部材とされていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項5】
請求項4記載の充填デバイスにおいて、
前記回転部材の形状が、ディスクと、円錐と、ボウルと、の中から選択されていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項6】
請求項5記載の充填デバイスにおいて、
前記回転部材が、少なくとも1つのリブを備えていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項7】
請求項6記載の充填デバイスにおいて、
前記少なくとも1つのリブが、その向きを調節し得るものとされていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項8】
請求項4記載の充填デバイスにおいて、
前記回転部材が、所定距離の分だけ互いに離間して配置された下部材と上部材とを備え、
前記上部材が、前記粉末を導入するための開口を有し、
前記粉末が、前記上部材と前記下部材との間の離間スペースを通して移動し得るものとされていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項9】
請求項4記載の充填デバイスにおいて、
前記回転部材が、粉末導入口と粉末導出口とを備えた部材とされ、
この部材が、前記部材の外部へと前記粉末を放出し得るような十分に大きな慣性でもって前記粉末導出口から前記粉末を放出し得るように、構成されていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項10】
請求項9記載の充填デバイスにおいて、
前記部材が、湾曲したチューブとされていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項11】
請求項1記載の充填デバイスにおいて、
少なくとも1つの粉末を供給するための前記供給手段が、少なくとも1つのレセプタクル(37)とされ、
このレセプタクルが、粉末導入口と粉末導出口とを備え、
層(7)という形態でもって粉末を放出する前記放出手段が、前記少なくとも1つのレセプタクル(37)を速く移動させ得るとともに前記レセプタクルを急停止させ得る手段とされ、
その急停止により、前記レセプタクル内に収容された粉末を、慣性によって前記レセプタクルの外部へと放出させ得るものとされていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の充填デバイスにおいて、
前記少なくとも1つの偏向器(9)が、層(7)という形態でもって粉末を放出する前記放出手段の回転軸線に対して平行に配置されていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の充填デバイスにおいて、
前記少なくとも1つの偏向器(9)が、前記粉末層(7)がなす中央放出平面に対して垂直に配置されていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項14】
請求項1記載の充填デバイスにおいて、
前記少なくとも1つの偏向器(9)が、前記部材(21,22)の慣性壁の一部とされていることを特徴とする充填デバイス。
【請求項15】
請求項1記載の充填デバイスにおいて、
前記少なくとも1つの偏向器(9)が、充填対象をなす前記モールドの前記所定位置の形状に適合したものとされていることを特徴とする充填デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−533486(P2007−533486A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540563(P2006−540563)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050618
【国際公開番号】WO2005/051576
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【出願人】(506170812)フェデラル・モグル・オペレーション・フランス・エスエーエス (1)
【Fターム(参考)】