説明

粉末化粧料

【課題】 優れた使用感触と使用性を持ち、なおかつソフトフォーカス効果を経時で維持できる粉末化粧料を提供する。
【解決手段】 粉末成分と不揮発性油性成分とを、揮発性溶媒中で混合してスラリーとするスラリー調製工程と、前記スラリーを乾燥して揮発性溶媒を除去する乾燥工程とを備え、前記乾燥工程において、前記スラリーを機械的なせん断力により微細液滴化し、該微細液滴に乾燥ガスを送風することで前記スラリーの乾燥を行う製造方法によって製造された粉末を含有する化粧料であって、前記粉末成分として球状炭酸カルシウムを配合したことを特徴とする粉末化粧料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末化粧料に関する。さらに詳しくは、塗布した直後のソフトフォーカス効果を、経時で維持できる粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末化粧料において、肌の毛穴や凹凸を補正するソフトフォーカス効果やしわ隠し効果を付与するため、球状シリカ、球状ナイロン、球状PMMA、拡散反射率の高い球状粉体や板状粉体とコンポジット化した複合粉末等、種々の開発が行われ活用されている。球状粉体として使用される素材としては、PMMAやセルロース等の樹脂系、シリカやアルミナ等の無機系粉末を挙げることができる。
【0003】
透明感あるソフトフォーカス効果を得るために、球状粉末として、屈折率の高い表面処理剤を被覆した多孔質球状シリカを配合する化粧料の検討がなされている(例えば、特許文献1)。一方、板状粉末表面に水酸化アルミニウムを球状や網目状に被覆した新規複合粉体を用いることで、シワ、毛穴の開き、肌目の粗さ等を見え難くする肌の形態トラブル修正効果と、化粧膜に不自然な質感を与えることなく肌色を自然に演出し、より自然な色調及びつやとを付与する「はり」感と、透明感に優れる化粧料の検討がなされている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、従来技術では、基本的なソフトフォーカス効果に優れるが、時間が経つと効果が低下し、経時で十分な効果が維持されない場合があった。
【0004】
一方、パフへのとれといった使用性や肌へ塗付した際の使用感触への満足感だけではなく、生産性や作業環境の面において更なる向上といったニーズに対応するため、粉末成分と油性成分とを揮発性溶媒中で高分散した後、フラッシュドライヤーにて乾燥微細粒子化を行って得られる粉末化粧料の製造方法が提案されている(特許文献3)。この方法で得られた粉末から製造された粉末化粧料は使用感触及び使用性ともに優れたものになるとされている。
【0005】
さらに、特許文献4には、特許文献3に記載された製法において、系内にアミノ変性シリコーンを共存させることにより、粉末表面が疎水化されて、化粧持ちが向上し、しっとりした使用感が得られることが記載されている。
しかしながら、特許文献3又は4に記載された製法では、一般的な乾式製法を用いた場合より粉末が油分に馴染み易くなるため、例えば皮脂により拡散効果が劣化してソフトフォーカス効果が長時間維持できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4136906号公報
【特許文献2】特許第4145496号公報
【特許文献3】特開2007−55990号公報
【特許文献4】特開2009−55990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記背景技術の問題点を解決し、優れた使用感触や使用性を有し、なおかつソフトフォーカス効果を経時で維持できる粉末化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究をした結果、球状炭酸カルシウムを配合することにより、ソフトフォーカス効果を経時で維持できる粉末得化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、粉末成分と不揮発性油性成分とを、揮発性溶媒中で混合してスラリーとするスラリー調製工程と、前記スラリーを乾燥して揮発性溶媒を除去する乾燥工程とを備え、前記乾燥工程において、前記スラリーを機械的なせん断力により微細液滴化し、該微細液滴に乾燥ガスを送風することで前記スラリーの乾燥を行う製造方法によって製造された粉末を含有する化粧料であって、前記粉末成分として球状炭酸カルシウムを配合したことを特徴とする粉末化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた使用感触と使用性を持ち、なおかつソフトフォーカス効果を経時で維持できる粉末化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態で用いるのに適した装置の概略構成図である。
【図2】本発明で使用するのに好ましい媒体攪拌ミルの一例を示した図である。
【図3】本発明で使用するのに好ましい媒体攪拌ミルの他の例を示した図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細について述べる。
本発明の粉末化粧料の製法については、前記特許文献3等に詳細に記載されているが、簡潔に言えば、粉末成分と不揮発性油性成分とを、揮発性溶媒中で混合してスラリーとするスラリー調製工程と、前記スラリーを乾燥して揮発性溶媒を除去する乾燥工程とを備えた、粉末組成物の製造方法であって、前記乾燥工程において、前記スラリーを機械的なせん断力により微細液滴化し、該微細液滴に乾燥ガスを送風することで前記スラリーの乾燥を行う乾燥装置を用いることを特徴としている。
【0013】
本発明の粉末化粧料は、前記製法における粉末成分として、球状炭酸カルシウムを必須成分として含んでいる。
本発明で用いられる球状炭酸カルシウムは、平均粒子径が1〜50μmであることが好ましい。また、本発明で用いる球状炭酸カルシウムは市販品でもよく、例えば、「かるまる SCS−M5(堺化学工業株式会社)」等が挙げられる。
【0014】
本発明の粉末化粧料における球状炭酸カルシウムの配合量は、化粧料全量中に、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは0.8〜8質量%である。0.1質量%未満では、ソフトフォーカス効果が十分得られない場合があり、また当該効果を経時で維持できない。逆に、30質量%を超えて配合しても本発明の効果がさらに増強されるものではなく、かえって化粧料組成物としての安定性に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0015】
また、本発明で用いられる球状炭酸カルシウムは、以下に挙げるような疎水化処理剤を用いて表面処理したものであってもよい。
(1)メチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業社製シリコンKF99P)、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー(信越化学工業社製シリコンKF−9901)、ジメチルポリシロキサン、特開2001−72891記載の分岐シリコーン系(エトキシ官能)処理剤(信越化学工業株式会社製 商品名:KF9908,KF9909)、WO2004/091563記載のアクリルシリコーン処理剤(信越化学工業社製 商品名:KP574)等のシリコーン類を用いた処理。
(2)オクチルトリエトキシシラン(EVONIK DEGUSSA社製DYNASILAN OCTEO)、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン化合物を用いた処理。
(3)パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を用いた処理。
(4)デキストリンの水酸基の一部をアルキルエステル化したデキストリンパルミテート等のアルキル化糖類処理;脂肪酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等を用いた金属セッケン処理。
(5)N−ラウロイル−L−リジン、グルタミン酸或いはそのアルカリ塩、アシル化アミノ酸等のアミノ酸類処理。
(6)パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルリン酸、パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロアルキル鎖長がC4〜C6の官能基を含んだコポリマー等を用いたフッ素処理。
(7)ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩処理。
【0016】
本発明の粉末化粧料に含まれる粉末成分は、前記球状炭酸カルシウムに加えて、以下に列挙するものを含有しうるが、これらに限られるものではない。
具体的には、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、アルミナ、群青、紺青、水酸化クロム、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、雲母チタン、ベンガラ被覆雲母チタン、ベンガラ被覆ガラスパール、カーボンブラック、等が挙げられる。
【0017】
油性成分としては、次に挙げるものを含みうるが、これらに限定されるわけではない。
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0018】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
ロウとしては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0019】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、スクワレン、ワセリン等が挙げられる。
【0020】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0021】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0022】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
【0023】
さらに、本発明の粉末化粧料は、前記粉末成分及び油性成分に加えて、粉末化粧料等に通常配合される他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよく、具体例として以下のものが挙げられる。
親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0024】
親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE−ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビタンモノオレエート、POE−ソルビタンモノステアレート、POE−ソルビタンモノオレート、POE−ソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビットペンタオレエート、POE−ソルビットモノステアレート等);POE−グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE−グリセリンモノステアレート、POE−グリセリンモノイソステアレート、POE−グリセリントリイソステアレート等のPOE−モノオレエート等);POE−脂肪酸エステル類(例えば、POE−ジステアレート、POE−モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE−アルキルエーテル類(例えば、POE−ラウリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル、POE−ベヘニルエーテル、POE−2−オクチルドデシルエーテル、POE−コレスタノールエーテル等);POE・POP−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−セチルエーテル、POE・POP−2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−水添ラノリン、POE・POP−グリセリンエーテル等);POE−ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE−ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油、POE−硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE−硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE−硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE−硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE−ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE−ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE−プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE−アルキルアミン;POE−脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0025】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物、トレハロース、エリスリトール、POE・POPランダム共重合体メチルエーテル等が挙げられる。
【0026】
増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0027】
紫外線吸収剤としては下記化合物が挙げられる。
(1)安息香酸系紫外線吸収剤
例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステルなど。
(2)アントラニル酸系紫外線吸収剤
例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレートなど。
(3)サリチル酸系紫外線吸収剤
例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレートなど。
(4)ケイ皮酸系紫外線吸収剤
例えば、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメートなど。
(5)トリアジン系紫外線吸収剤
例えば、ビスレゾルシニルトリアジン。さらに具体的には、ビス{〔4−(2−エチルヘキシロキシ)−2−ヒドロキシ〕フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス{4−(2−エチルヘキシロキシカルボニル)アニリノ}1,3,5−トリアジンなど。
(6)その他の紫外線吸収剤
例えば、3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン。ジモルホリノピリダジノンなどのピリダジン誘導体。
【0028】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
【0030】
アミノ酸としては、例えば、アラニン、セリン、グリシンアシルグルタミン酸塩、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0031】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0032】
高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸エチルエマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス等が挙げられる。
【0033】
pH調製剤としては、例えば、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、B1、B2、B6、C、Eおよびその誘導体、パントテン酸およびその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0034】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0035】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、チオタウリン、ヒポタウリン、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、ユキノシタ抽出物、アルブチン、トラネキサム酸、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、L−アスコルビン酸グルコシド、4−メトキシサリチル酸カリウム等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の粉末化粧料は、前記球状炭酸カルシウムを必須成分として含有する粉末成分と油性成分、及び任意に他の成分を用い、粉末成分と不揮発性油性成分とを、揮発性溶媒中で混合してスラリーとするスラリー調製工程と、前記スラリーを乾燥して揮発性溶媒を除去する乾燥工程とを備えた、粉末組成物の製造方法により製造した粉末を含有している。
本発明の粉末化粧料を製造する際の前記方法において、前記乾燥工程にて用いられる乾燥装置は、
中空状の筐体と、該筐体内に設けられたせん断部材によりスラリーをせん断して微小液滴化するせん断手段と、
前記筐体内の前記せん断部材へスラリーを供給する供給手段と、
前記筐体内に乾燥ガスを送風し、前記せん断手段により微小液滴とされたスラリーに乾燥ガスを供給してこれと接触させる送風手段と、
前記スラリーを乾燥することで生じた粉末組成物を捕集する捕集手段とを備えた乾燥装置であるのが好ましい。
【0037】
また、前記製造方法においては、前記スラリー調製工程において、媒体攪拌ミルを用いて、揮発性溶媒中で粉末成分と不揮発性油性成分とを混合し、該粉末成分を解砕及び/又は粉砕及び/又は分散してスラリーを得るのが好ましい。
【0038】
本発明の粉末化粧料を製造するのに好適な方法の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の粉末化粧料の製造に好ましく用いられる装置構成の一例を示した図である。
まず、スラリー調整工程では、図1に示した媒体攪拌ミル10を用いて、揮発性溶媒中で粉末成分と不揮発性油性成分を混合し、該粉末成分を、解砕、粉砕、分散することでスラリーを得る(スラリー調製工程)。得られたスラリーは、貯蔵タンク12に一旦貯められ、乾燥装置14(乾燥工程)へ所定の流量で供給される。
【0039】
本実施形態で使用する乾燥装置14は、スラリーを機械的なせん断力、つまり、せん断手段18に設けられたせん断部材(板状部材34a,34b,34c)の回転によるせん断力で微細液滴化し、該微細液滴に乾燥ガスを送風して前記スラリーの乾燥を行う。なお、せん断部材の形状は、その目的に合致している限り特に限定されるものではなく、例えば、上記のような板状の他、羽根状、円盤状等、どのような形状でもかまわない。
【0040】
このように、本実施形態ではスラリーを微細液滴にした状態で乾燥を行う乾燥装置14を用いて粉末組成物を製造しているため、乾燥時に粉末成分の凝集をほとんど生じることなく、粉末組成物を得ることができる。そのため、肌への塗付時における使用感触に優れた粉末化粧料を提供することが可能となる。また、乾燥後に再度解砕を行う必要がないため、生産性及び作業環境性にも極めて優れている。
【0041】
また、前記方法は、乾燥工程を経て得られた粉末組成物を容器に充填し、乾式プレス成型により固形化する工程をさらに備えることも好適である。得られた固形状の粉末化粧料は、使用感触のみならず、パフへのとれ具合といった使用性にも優れたものとなる。
【0042】
図1に示したように、スラリー調製工程においては、必須配合成分を揮発性溶媒中にて混合するために、媒体攪拌ミル10を用いることが好適である。媒体攪拌ミルを用いることで、粉末成分表面に化粧持ちに影響を与えない程度に適度に均一に不揮発性油性成分でコートされたスラリーを得ることができ、このようなスラリーを用いることでより、使用感触、使用性がさらに優れた粉末化粧料を得ることができる。
【0043】
なお、パール顔料を含んだ粉末化粧料を製造する場合には、まず、スラリー調製工程にてパール顔料以外の粉末成分を用いてスラリーを調製し、乾燥工程ではこのスラリーを乾燥してパール顔料未含有の粉末組成物を得る。そして、パール顔料とパール顔料未含有の粉末組成物とを混合し、この混合粉末を用いて粉末化粧料を得るのが好ましい。このような製造方法を採用することで、なめらかさ、肌へのフィット感、均一な仕上がり、うるおい感、のびの良さ等の品質面や生産性及び作業環境性に優れると同時にパール感にも優れた粉末化粧料を得ることができる。
【0044】
以下、各工程についてさらに詳しい説明を行う。
<スラリー調製工程>
粉末成分と不揮発性油性成分を揮発性溶媒中で混合してスラリーとする方法としては、次のような方法が挙げられる。
(A)粉末成分と不揮発性油性成分を、あらかじめヘンシェルミキサー(登録商標)やパルペライザー等により乾式混合/解砕したものを、揮発性溶媒中に添加し、ディスパーミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、二軸混練機等により混合/分散する方法。
(B)粉末成分と不揮発性油性成分を揮発性溶媒中に添加し、必要に応じてディスパーミキサー等で予備混合した後に、媒体攪拌ミルにより、解砕、粉砕、分散処理を行う方法。
(C)高分子弾性粉末や微粒子粉末等の凝集性の強い一部特定の粉末成分を揮発性溶媒中に添加し、これを必要があればディスパーミキサー等で予備混合した後、媒体攪拌ミルを用いて解砕、粉砕、分散させることで分散液を得て、該分散液とそのほかの粉末成分や不揮発性油性成分を添加し、さらに湿式混合機や媒体攪拌ミルを用いて処理を行う方法。
【0045】
なお、スラリー調製工程においては、媒体攪拌ミルを使用することが好適である[例えば、上記(B)、(C)]。媒体攪拌ミルとは、粉末成分(および不揮発性油性成分)と溶媒からなる分散液をビーズ等の固体分散媒体(メディア)が充填された容器内に収容し、該容器内の液体を攪拌することでメディアによる衝撃力、摩擦力等により、粉末成分の解砕、粉砕、分散を行うものである。
【0046】
図2、3は、それぞれ、本発明の粉末化粧料の製造に好適に用いられる媒体攪拌ミルの例を示した概略構成図である。なお、使用し得る媒体攪拌ミルとしては、これらに制限されず、本発明の目的を達成し得る限りどのようなものでもよい。
【0047】
図2に示した例の媒体攪拌ミル110は、略円筒状の容器112と、容器112内に挿通された駆動軸114と、駆動軸114を回転駆動する駆動モータ116と、駆動軸に取り付けられた複数枚の攪拌ディスク118a〜fと、を備えている。容器112内は、粉末成分の解砕、粉砕、分散を行う分散室120と、処理後の分散液を抽出する抽出室122とに分かれている。容器112の分散室120側には、処理対象の分散液を供給する供給口124が設けられ、また、抽出室122側には処理後の分散液を取り出す抽出口126が設けられている。分散室120と抽出室122との間には開口部128を設けた隔壁130が備えられており、この隔壁130に近接して、駆動軸114に取り付けられた分離ディスク132が隔壁130の開口部128を覆うように配置されている。隔壁130と分離ディスク132との間には隙間が設けられており、この隙間を固体分散媒体と処理対象の分散液とを分離する分離スリット134として使用する。
【0048】
粉末成分と、不揮発性油性成分および揮発性溶媒(以下、単に溶媒とする)とを含む分散液は、容器112内の分散室120へ供給口124から順次供給され、分散室内120の分散液は順次抽出室122の方向へ移動する。このとき、駆動モータ116によって駆動軸114が回転駆動され、撹拌ディスク118a〜fが回転している。分散室120内には多数の固体分散媒体136が充填されており、撹拌ディスク118a〜fの回転によって分散液とともに固体分散媒体136が攪拌される。分散液中の凝集粉末成分は固体分散媒体136からの衝撃力やズリ応力等によって、解砕、粉砕、分散される。
上記の解砕、粉砕、分散処理された分散液は、分散室120と抽出室122との間にある隔壁130と分離ディスク132との間の分離スリット134を通過して抽出室122に流入し、抽出口126から外部に抽出される。分離スリット134は、固体分散媒体136が分散室120内から抽出室122へ流出しない程度の大きさに取られている。そのため、分散液が分離スリット134を通過する際に、分散液(粉末成分+溶媒)と固体分散媒体136との分離が行われ、抽出室には分散液のみが入ることになる。
【0049】
図3はアニュラー型の媒体攪拌ミルの概略構成図である。図3の媒体攪拌ミル210は、中心軸Aに関して対称な略W字型の断面を有する容器212と、容器212内に設けられ、中心軸Aを中心として回転可能な略逆U字型のロータ214と、ロータ214を回転駆動する駆動モータ216とを備えている。容器216内面とロータ214外面との間には、環状の空間218が形成されており、この環状空間218は中心軸Aの両側に略V字状の断面を有した形状をとっている。また、容器212には、環状空間218へ処理対象の分散液(粉末成分+溶媒)を送りこむ供給口220と、環状空間218から処理後の分散液を取り出すための抽出口222とが形成されている。環状空間218には固体分散媒体224が充填されており、環状空間218を、分散液中の粉末成分の解砕、粉砕、分散を行う分散室として使用する。
【0050】
供給口220から供給された分散液は入口スリット226を通って環状空間218へ送りこまれる。送り込まれた分散液は環状空間218内を移動し、出口スリット228を通って抽出口222から取り出される。このとき、環状空間218内で中心軸Aを中心としてロータ214を回転させることによって、環状空間218内の分散液および固体分散媒体224を攪拌する。すると、分散液中の凝集粉末成分は固体分散媒体224からの衝撃力やズリ応力等によって、解砕、粉砕、分散される。その後、分散液は出口スリット228を通過して、抽出口222から取り出される。
出口スリット228は固体分散媒体224が環状空間218内から流出しない程度の大きさに取られており、分散液(粉末成分+溶媒)と固体分散媒体224と分離する分離手段として機能する。また、ロータ214には固体分散媒体224を入口側へ戻すための戻し孔230が設けられており、固体分散媒体224が出口付近に留まらないようにされている。
【0051】
媒体攪拌ミルを用いて揮発性溶媒中で粉末成分と不揮発性油性成分を解砕、粉砕、分散する理由としては、粉末成分と不揮発性油性成分との混合、分散状態を高めることができ、さらに粉末成分表面に化粧持ちに影響を与えない程度に適度に均一に不揮発性油性成分でコートさせることができるため、使用感触触のよい粉末化粧料を得ることができるからである。また、凝集性の強い粉末を容易に解砕し、揮発性溶媒中に均一に分散することもできる。
【0052】
また、媒体攪拌ミルの例としては、上で説明したものの他に、バスケットミル等のバッチ式ビーズミル、横型・縦型・アニュラー型の連続式のビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル、マイクロス(登録商標)等が好適なものとして挙げられるが、その目的に合致していれば特に制限無く使用することができる。つまり、凝集状態にある粉末成分を配合した場合、これら粉末成分の凝集を解いて一次粒子に近い状態まで攪拌、分散させ、不揮発性油性成分を粉末表面に化粧持ちに影響を与えない程度に適度に均一にコートさせ得るものであれば特に制限なく使用することができる。
【0053】
媒体攪拌ミルに用いるメディアとしては、ビーズが望ましく、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石等を原材料としたビーズが使用可能であり、特に、ジルコニア製が好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常直径0.5〜10mm程度のものが好ましく用いられるが、本発明では直径2mm〜5mm前後のものが好ましく用いられる。ビーズ径の大きさが小さすぎると、マイカ、タルク等の体質顔料の解砕が過度に進行し、使用感触触触に悪影響を及ぼしたり、成型後の硬度が硬くなるため取れが悪くなったり、ケーキング等を引きおこしやすくなる。一方、ビーズの大きさが大きすぎると粉末成分の凝集を十分に解くことができず、不揮発性油性成分による均一な被覆が困難となる。
【0054】
粉末化粧料の配合成分を混合する揮発性溶媒としては、特に制限は無いが、精製水、環状シリコーン、エタノール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。低級アルコールの代表的なものとしては、エタノールやイソプロパノールが挙げられえる。これらの溶媒を、用いる配合成分の特性に応じて、1種または2種以上を混合して、適宜使い分けて用いる。
【0055】
スラリー調製工程において用いる揮発性溶媒の量は、使用する揮発性溶媒の極性、比重等にもよるため、規定はできないが、媒体攪拌ミルを用いる場合は、処理が可能となる流動性を確保することが重要である。
【0056】
<乾燥工程>
次に、図1を参照して、本発明による実施形態の乾燥工程に用いる乾燥装置の一例について説明する。なお、本発明の製造方法で用いる乾燥装置は、図1のものに限定されず、スラリーを機械的に微細液滴化するせん断手段を備えているものであればよい。図1の乾燥装置14は、スラリーの乾燥を行う場となる中空状の筐体16と、前記筐体16内に設けられた回転するせん断部材(板状部材34a,34b,34c)によりスラリーを微小液滴化するせん断手段18と、筐体16内のせん断部材(板状部材34a,34b,34c)へスラリーを供給する供給手段20と、筐体16内に乾燥ガスを送風し、せん断手段18により微小液滴とされたスラリーに乾燥ガスを供給する送風手段22と、スラリーを乾燥することで生じた粉末組成物を捕集する捕集手段24とを備えている。
【0057】
筐体16は縦型で中空の略円柱形状をしており、その上部に粉末組成物および乾燥ガスを排出する排出口26、下部に送風手段22からの乾燥ガスを筐体16内に供給する送風口28が設けられている。また、スラリーを筐体16内へ供給する供給口30は、筐体16の上部に位置する排出口26と下部に位置する送風口28との間に位置している。
せん断手段18は筐体16底部から垂直方向に設けられた回転軸32と、該回転軸32に直角に設けられたせん断部材(板状部材34a,34b,34c)と、回転軸32を回転するための駆動部36と、を備える。駆動部36は筐体16の外に配置され、回転軸32を介してせん断部材(板状部材34a,34b,34c)に回転力を伝達する。図1で示したせん断部材は、上下方向に間隔を置いて、回転軸32に直角に設けられた3つの板状部材34a,34b,34cによって構成されている。これらのせん断部材はスラリーの供給口30の下方かつ乾燥ガスの送風口28の上方に位置している。モータ等で構成される駆動部36により回転軸32を回転させることで、板状部材34a,34b,34cが筐体16内で回転軸32を中心に水平方向に回転し、この機械的なせん断力によりスラリーを微小液滴にする。
【0058】
供給手段20は貯蔵タンク12から送られるスラリーを筐体16内に供給する。筐体16内に供給されたスラリーは、板状部材34a,34b,34cへ向って落下し、回転する板状部材34a,34b,34cによって微細液滴とされる。また、送風手段22から送られた乾燥ガスは送風口28より筐体16内に送風される。乾燥ガスは筐体16の水平断面の接線方向に向って供給されており、さらに板状部材34a,34b,34cが回転運動を行っているため、筐体内16に送風された乾燥ガス流は旋回流となる。この乾燥ガス流に微細液滴状のスラリーが接触することにより、スラリーはさらに微細化され、乾燥し粉末組成物となる。この粉末組成物は乾燥ガス流とともに筐体16内上部へ吹き上げられ、排出口26から排出される。排出口26から筐体16外に排出された粉末組成物は捕集手段24によって捕集される。
また、筐体16内の排出口26の部分に分級手段38が設けられている。分級手段38は排出口26に設けられたオリフィスとして構成されており、大きな粒や塊、未乾燥品等が捕集手段24へと入ることを防止している。なお、分級手段の構成としてはこれに限られず、その他の構成でもかまわない。
【0059】
このように、せん断部材(板状部材34a,34b,34c)によりスラリーに機械的なせん断力を与え、スラリーを微細液滴の状態にして乾燥を行うことで、凝集の少ない粉末組成物を得ることができる。凝集が少ない粉末組成物となる理由としては、微細液滴としたことで液滴中に存在する粉末成分の量が少ないため乾燥時の凝集が起こりにくいこと、また乾燥過程で起こる粉末成分の凝集がせん断部材もしくは旋回流によるせん断力により解かれること、等が考えられる。
ここではせん断部材として水平方向に回転する板状部材で構成されるものを示したが、この他に垂直方向に回転(回転軸が水平方向)に回転する板状部材で構成されるものも設けてもよい。また、せん断部材の形状としては上記のものに限られず、例えば、羽根状(回転軸に垂直な棒状部材の先端に垂直にカッターを設けたもの等)、円盤状、等が挙げられる。また、せん断部材の個数等も特に限定されない。
【0060】
また、上記の乾燥装置はフラッシュドライヤーと呼ばれるタイプのもので、例えば、APV Nordic Anhyro社製のスピンフラッシュドライヤーや、ホソカワミクロン社製のドライマイスターや、月島機械社製のたて型攪拌乾燥機等が挙げられる。なお、本発明で好適に用いられる乾燥装置はこの限りではなく、システム中にせん断機構を有するものであれば良く、縦型/横型いずれでも良い。
また、乾燥の際に用いる乾燥ガスの温度は、用いる揮発性溶媒の沸点により変化させることが可能である。また、乾燥ガスの温度が高いほど乾燥効率は高くなるため、熱による粉末組成物構成成分の変性等の悪影響が及ばない範囲で高温に設定することが望ましい。
また、筐体16内へ窒素ガス、Arガス等の不活性ガスを封入することで対防爆性に優れたものになるため、作業環境性も良くなる。また、コンデンサー等の溶媒回収機構を取り入れることで、溶剤の回収も可能である。
【0061】
<固形化工程>
前記乾燥工程を経て得られた粉末組成物を用いて、固形状の粉末化粧料を製造する場合には、粉末組成物を容器に充填し、乾式成型により固形化する固形化工程をさらに備えることが好適である。固形化の方法としては従来公知の乾式プレス成型等を用いればよい。このようにして得られた粉末固形化粧料は湿式製法と同等あるいはそれ以上の優れた使用感触触を発揮しながら、乾式成型の利点である使用性の良さ(パフへのとれ具合)も兼ね備えている。また、射出充填により容器内にスラリーを充填する工程を含む従来の湿式成型の場合はスラリーの充填性を考慮する必要があるため、用いる原料に制限があったが、通常の乾式プレス成型を行う限りにおいては、用いる原料の制限も無いことも利点として挙げられる。
【0062】
なお、前記固形化工程に供する粉末配合量は、粉末化粧料全量に対し、80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、パール顔料を配合しない場合には、100%であってもよい。
【0063】
前記製法で得られた粉末は、結合剤としての不揮発性油性成分と粉末成分とが十分に混合・粉砕されており、乾燥時の凝集も少ないため、その後の粉砕工程を必要とせず、追加の結合剤としての不揮発性油性成分を添加せずに、そのまま乾式プレス成型して、容易に粉末固形化粧料を製造することができる。また、プレス成型しないで、ルースパウダーなどの粉末状化粧料とする場合には、そのまま容器に充填し最終製品とすることもできる。
なお、複数の色の製品を調整する場合などにおいては、それぞれ異なる組成の粉末組成物を調整し、それらを混合して色などを調整して用いてもよい。
【0064】
本発明の製造方法で得られた粉末組成物は、ファンデーション、アイシャドウ、チークカラー、ボディーパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、プレスドパウダー、デオドラントパウダー、白粉等の粉末化粧料又は粉末固形化粧料に好適に適用される。
特に、粉末固形化粧料において、使用感触や化粧持ち向上効果が発揮され、ソフトフォーカス効果が長時間維持される。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0066】
(実施例1及び比較例1〜8)
下記表1及び2の処方に基づき、図1に示した装置を用いた前記の製造方法(特許文献3に記載の製法)を用いて試料(ファンデーション)を調製した。各試料について、以下の評価方法及び評価基準に従って評価した。それらの結果も表1及び2に併せて示す。
【0067】
(1)使用性(なめらかさ及びきめ細かさ)
化粧品の専門パネル(10名)により、使用性(なめらかさ及びきめ細かさ)について官能評価を行い、次の基準で評価した。
<評価基準>
◎:10人中8名以上が、なめらかさ又はきめ細かさが感じられると判断した。
○:10人中5〜7名が、なめらかさ又はきめ細かさが感じられると判断した。
△:10人中2〜4名が、なめらかさ又はきめ細かさが感じられると判断した。
×:10人中1名以下が、なめらかさ又はきめ細かさが感じられると判断した。
【0068】
(2)使用直後のソフトフォーカス効果(毛穴・凹凸補正効果)
化粧品の専門パネル(10名)により、使用直後のソフトフォーカス効果(毛穴・凹凸補正効果)について官能評価を行い、次の基準で評価した。
<評価基準>
◎:10人中8名以上が、ソフトフォーカス効果があると判断した。
○:10人中5〜7名が、ソフトフォーカス効果があると判断した。
△:10人中2〜4名が、ソフトフォーカス効果があると判断した。
×:10人中1名以下が、ソフトフォーカス効果があると判断した。
【0069】
(3)経時(4時間後)ソフトフォーカス効果
化粧品の専門パネル(10名)により、経時(4時間後)のソフトフォーカス効果について官能評価を行い、次の基準で評価した。
<評価基準>
◎:10人中8名以上が、ソフトフォーカス効果があると判断した。
○:10人中5〜7名が、ソフトフォーカス効果があると判断した。
△:10人中2〜4名が、ソフトフォーカス効果があると判断した。
×:10人中1名以下が、ソフトフォーカス効果があると判断した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1及び2の結果から明らかなように、球状炭酸カルシウムを配合した実施例1は、きめ細かな使用感があり、使用直後及び経時的にソフトフォーカス効果が持続していた。それに対して、球状炭酸カルシウムを含まない比較例1〜8では、使用直後にソフトフォーカス効果が見られても、その効果が長続きせず、きめ細かい使用感においても実施例1より劣っていた。
【0073】
(実施例2〜5及び比較例9)
下記表3の処方に基づき、実施例1と同様の製法を用いて試料(ファンデーション)を調製した。各試料について、実施例1と同様の評価方法及び評価基準に従って評価した。それらの結果も表3に併せて示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3の結果から明らかなように、球状炭酸カルシウムを3〜15質量%配合した実施例2〜5は、使用直後の良好なソフトフォーカス効果が経時的に持続していたのに対し、球状炭酸カルシウムを含まない比較例9では、使用直後に或る程度のソフトフォーカス効果が見られても、その効果が長続きしなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末成分と不揮発性油性成分とを、揮発性溶媒中で混合してスラリーとするスラリー調製工程と、前記スラリーを乾燥して揮発性溶媒を除去する乾燥工程とを備え、前記乾燥工程において、前記スラリーを機械的なせん断力により微細液滴化し、該微細液滴に乾燥ガスを送風することで前記スラリーの乾燥を行う製造方法によって製造された粉末を含有する化粧料であって、前記粉末成分として球状炭酸カルシウムを配合したことを特徴とする粉末化粧料。
【請求項2】
前記球状炭酸カルシウムの平均粒子径が1〜50μmである、請求項1記載の粉末化粧料。
【請求項3】
前記球状炭酸カルシウムが疎水化処理を施したものである、請求項1又は2に記載の粉末化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201828(P2011−201828A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72150(P2010−72150)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】