説明

粉末固形化粧料

【課題】化粧料外観の彩度が高く、塗布時の伸び広がりが良好であり、均一で透明感に優れた化粧膜を形成し、立体感を付与する効果の高い粉末固形化粧料を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)〜(C):(A)屈折率が1.5を超え2.0未満の板状合成粉体、(B)板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色が異なる二色性を呈する顔料、(C)油剤、を配合することを特徴とする粉末固形化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の屈折率を有する板状合成粉体と二色性顔料とを含有する粉末固形化粧料に関し、更に詳細には、化粧料外観の彩度が高く、塗布時の伸び広がりが良好であり、均一で透明感に優れた化粧膜を形成することにより、鮮やかな二色性を発し、立体感を付与する効果の高い粉末固形化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉末固形化粧料には、化粧料自体の外観がきれいであることに加え、使用時の使いやすさ、美しい仕上がりなど、様々な品質が求められる。なかでも、使用後の仕上がり膜に鮮やかな発色とツヤ感を与える事が重要であり、均一に肌上で伸び広がり自然な陰影を作ることで、顔をより立体的に見せるといった演出を可能とするものである。さらに、ポイントメイクアップ商品等の場合には、その化粧料自体の外観の美しさも重要な品質の要素であり、外観彩度の高さは商品の魅力そのものでもある。
【0003】
従来から、化粧料塗布後の化粧膜に、発色の良さや彩度の高い仕上がりを演出する技術は、様々な提案がなされている。例えば、特定の屈折率を有する粉体と顔料と特定の屈折率を有する油剤とを組み合わせたメイクアップ化粧料の提案がある(特許文献1参照)。また、化粧料塗布時にくすみのない白さを奏し、発色を高めるために合成の板状粉体を配合する技術の提案がある(特許文献2、3参照)。さらに、合成金雲母と特定の真珠光沢顔料を組み合わせたメイクアップ化粧料の提案がある(特許文献4参照)。一方、雲母表面に二酸化チタンと低次化酸化チタンを被覆した顔料を配合して、真珠光沢に優れた化粧料の提案もある(特許文献5、6参照)。
【0004】
しかしながら、これらの提案は、化粧料塗布後の仕上がり膜の発色や彩度を高める技術であり、化粧料自体の外観彩度を高めるためのものではない。また、化粧料の外観彩度を高めるために、酸化鉄等で被覆された雲母チタンを用いる場合があるが、雲母チタン自体の白さがでてしまい、外観彩度を高めることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−269729号公報
【特許文献2】特開2000−247629号公報
【特許文献3】特開2000−247630号公報
【特許文献4】特開2001−335432号公報
【特許文献5】特開昭59−212422号公報
【特許文献6】特開昭60−169412号公報
【特許文献7】特開昭60−060163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、粉末固形化粧料としての化粧料外観の彩度が高く、塗布時の伸び広がりが良好であり、均一で透明感に優れた化粧膜を形成することにより、鮮やかな二色性を発し立体感を付与する効果の高い粉末固形化粧料の提供が求められており、本発明は、このような粉末固形化粧料の提供を、その課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、屈折率が1.5を超え2.0未満の板状合成粉体と、板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色が異なる二色性を呈する顔料と、油剤とを配合することにより、化粧料外観の明度を上げることなく外観彩度を高められ、使用性も良好であり、塗布部位に立体感を付与することができる粉末固形化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の成分(A)〜(C):
(A)屈折率が1.5を超え2.0未満の板状合成粉体
(B)板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色が異なる二色性を呈する顔料
(C)油剤
を含有することを特徴とする粉末固形化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉末固形化粧料は、化粧料外観の彩度が高く、塗布時の伸び広がりが良好であり、均一で透明感に優れた化粧膜を形成することにより、鮮やかな二色性を発し立体感を付与する効果が高い粉末固形化粧料である。従って、粉末固形化粧料としては、アイライナー、アイカラー、ファンデーション、ほほ紅、おしろい、コンシーラー等の化粧料として有利に使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で用いる二色性顔料において、低次酸化チタンの単層を設けることで外観色と干渉色の異なる二色性を得ることができる理由を模式的に示した図面である。
【図2】製造例1で用いた前駆体Aおよび得られた二色性顔料についての、XRD測定結果を示す図面である。
【図3】製造例7で用いた前駆体Bおよび得られた二色性顔料についての、XRD測定結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられる成分(A)の板状合成粉体は、適度な化粧効果を付与しながら、感触調整や賦形剤として用いられるものであり、屈折率が1.5を超え2.0未満の粉体である。なお、屈折率の測定方法としては、ヌジョール法を用いる。屈折率が1.5以下の粉体では化粧効果を充分に付与することができず、屈折率が2.0以上の粉体では、隠蔽力が強すぎて、着色顔料や光輝性粉体の発色を妨げるため、それぞれ好ましくない。
【0012】
本発明の成分(A)は、化粧膜の透明性という観点から、天然鉱物よりも合成粉体を用いるものであり、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、雲母等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0013】
ここでいう合成とは、天然鉱物を起源としない粉体を製造する方法であり、特に限定されるものではなく、通常公知の合成方法を用いることができる。例えば、酸化アルミニウムであれば、特開2003−192338号公報等に記載の方法や、水熱合成法等により得られるものが良い。硫酸バリウムであれば、特開平8−59232号公報等に記載の、水酸化バリウムと硫酸とを直接反応させることにより得られるもの等が良い。さらに、合成雲母であれば、特開平2−149415号公報等に記載のインターカレーション法、水熱法、固体間反応法、溶融法等の何れかの方法により得られるもので良い。具体的には、フッ素金雲母、合成金雲母、カリ四ケイ素雲母、テニオライト、Naテニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト等が挙げられ、これを一種又は二種以上用いることができる。
【0014】
本発明の成分(A)は、市販品として入手することが可能であり、例えば、酸化アルミニウとしては、SERATHシリーズ(キンセイマテック社製)、硫酸バリウムとしては、板状硫酸バリウムHシリーズ(堺化学社製)、合成金雲母としては、PDMシリーズ(トピー工業社製)、ミクロマイカシリーズ(コープケミカル社製)等を用いることができる。なお、これらは、通常公知の表面処理剤である、シリコーン化合物、フッ素化合物、金属石鹸、レシチン、界面活性剤、高級脂肪酸等で表面処理を施して用いても良い。
【0015】
成分(A)の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、塗布時の伸び広がりの観点より、1〜30μmが好ましい。なお、本発明において、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により得られた値とする。
【0016】
本発明の粉末固形化粧料における成分(A)の配合量は、10〜50質量%(以下、単位「%」と略す)が好ましい。この範囲で配合すると、伸び広がりと立体感付与効果が特に良好なメイクアップ化粧料を得ることが出来る。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)の顔料は、板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色が異なる二色性を呈する顔料(以下、「二色性顔料」という)であり、その鮮やかな二色性により化粧膜に立体感のある仕上がりを付与するものである。具体的には、板状粒子の基材に二酸化チタンが被覆されている顔料を還元処理して、二酸化チタン層を低次酸化チタン層にする方法や、低次酸化チタン組成物を板状粒子に被覆する方法により得られるが、板状粒子の基材に二酸化チタンが被覆されている顔料を還元処理して、二酸化チタン層を低次酸化チタン層にする方法で得られたものが好ましい。
【0018】
二色性顔料の基材となる板状粒子としては、天然又は合成の雲母、ガラス末、アルミフレークを挙げることができる。このうち雲母としては、特にこれらの物質に限定されるものではないが、白雲母、金雲母、黒雲母等の有色、無色の基材であってもよい。
【0019】
板状粒子基材に二酸化チタンが被覆されている顔料は、既に一般に市販されており、これを用いることができる。例えば、雲母に二酸化チタンを被覆したものの市販品としては、イリオジンシリーズ(メルク社製)やフラメンコシリーズ(エンゲルハード社製)を挙げることができる。また、例えば、ガラス末に二酸化チタンを被覆したものの市販品としては、メタシャインシリーズ(日本板硝子株式会社製)を挙げることができる。
【0020】
成分(B)の二色性顔料は、板状粒子の表面に、二酸化チタンから酸素を一部欠損させた状態の低次酸化チタンからなる単層が形成されていることが特徴である。
この低次酸化チタンは、TiOx(式中、xは1.0を超えて2.0未満の数を意味する)で表すことができる。すなわち、本発明の二色性顔料における低次酸化チタン単層とは、一酸化チタンTiOと二酸化チタンTiOとを含まない組成からなり、上記組成式で表記される低次酸化チタン化合物の1種類以上より構成されるものである。なお、この低次酸化チタン単層には、低次酸化チタンの酸素の一部が窒素と置き換わった、酸化窒化チタンが含まれていても良い。
【0021】
そして成分(B)の二色性顔料は、低次酸化チタン層の酸素欠損量が多くなり、上記組成式のxが1.0に近づくと、光の吸収が強くなり干渉色が弱くなる。一方、酸素欠損量が少なくなり、xが2.0に近づくと、光の吸収が弱くなり干渉色が強くなる。また外観色では、xが1.0に近づくと、光の吸収が強くなり外観色が強くなる。逆にxが2.0に近づくと、光の吸収が弱くなり外観色が弱くなる。
【0022】
本発明の二色性顔料における低次酸化チタンの組成は、上述したようにTiOx(1.0<x<2.0)であるから、板状粒子上の二酸化チタンを低次酸化チタンに代えるためには、二酸化チタンと比べた酸素の不足量(酸素欠損量)を適宜調整する必要がある。
【0023】
具体的に板状粒子上への低次酸化チタン層の形成は、板状粒子上に二酸化チタン層が被覆された材料を、窒素、水素、アンモニア、一酸化炭素、一酸化一窒素、一酸化二窒素、硫化水素又は二酸化硫黄等のガス又は混合ガス雰囲気下又は真空雰囲気において500〜1500℃で焼成することにより行うことができる。
【0024】
また、上記焼成時に板状粒子上に二酸化チタン層が被覆された材料に、還元助剤として水素化チタン、金属チタンのチタン化合物、又は水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムの水素化物を含む化合物を添加して、500〜1500℃で還元焼成することもできる。
【0025】
一方、板状粒子上への低次酸化チタン層の形成には、低次酸化チタン組成物を板状粒子に被覆することでも可能である。被覆方法としては、低次酸化チタン組成物を塗布又はメカノケミカルを用いることで可能である。その際に、不活性雰囲気または真空雰囲気にて500〜1500℃の熱処理をして低次酸化チタン粒子を焼結させて、被覆された低次酸化チタン層を強固にすることも出来る。
【0026】
前記低次酸化チタン単層の組成を決定する要素は還元度であるが、この制御は、焼成温度、添加する還元助剤およびその量等で行うことができる。
【0027】
このうち、焼成温度は500〜1500℃の範囲にすることで可能であるが、還元度を低くするには焼成温度を500℃付近まで下げ、還元度を高くするには焼成温度を1500℃付近まで上げれば良い。すなわち、焼成温度を調整することで、二酸化チタンからの酸素欠損反応を調整することが可能である。
【0028】
また、還元度の制御は、還元助剤の添加やその量を調整することでも可能である。還元助剤を添加する場合の焼成温度は、還元助剤の分解温度以上で、500〜1500℃の範囲にすることが好ましい。還元助剤の添加量は、還元助剤に含まれている還元成分ガスとなる物質が、二酸化チタン100gに対して0.001〜30.0molの範囲(好ましくは0.01〜10.0molの範囲)で含まれていることが必要である。ここで還元成分ガスとは、特に限定されるものではないが、水素、窒素、アンモニア、一酸化炭素、一酸化一窒素、一酸化二窒素、硫化水素、二酸化硫黄等である。二酸化チタンに対して還元助剤から生じる還元性物質の量を変化させることで、酸素欠損反応を制御することが可能となる。
【0029】
例えば、還元助剤の添加量が0.001mol以下であると還元度が低くなり、外観色が白色に近く、干渉色の発色も有意に認識できないことがあり、鮮やかな二色性が得られない。また、還元助剤の添加量が30.0mol以上であると還元度が高くなりすぎ、干渉色が弱くなり、外観色の色調のみとなることで、鮮やかな二色性が失われてしまい好ましくない。
【0030】
さらに還元度の制御は、金属チタンを用いることでも可能である。還元雰囲気にて板状粒子上に二酸化チタン層が被覆された材料と金属チタンとを混合し、500〜1500℃の範囲(好ましくは900〜1300℃)で焼成することで、二酸化チタンの酸素原子の一部が金属チタンによって還元され低次酸化チタンとなる。一方、金属チタンは二酸化チタンの酸素原子と結合して低次酸化チタンとなる。チタン化合物の添加量は、二酸化チタン100gに対してチタン成分で0.01〜2.0molを添加することが必要である。
【0031】
一方、低次酸化チタン層の膜厚の制御は、特許文献5に記載されている二酸化チタンの膜厚制御方法を利用できる。例えば、低次酸化チタン単層の膜厚が10nm以下では、低次酸化チタン層での光路差が少なくなることから鮮やかな干渉色を得ることが出来なくなる。また、低次酸化チタン層の膜厚が厚くなることに関しては、位相差により循環的に色調が変化するのみであるため特に制限がないが、光が減衰してしまい鮮やかな色調が得られなくなる。従って、低次酸化チタン層の膜厚は1000nm以下が好ましく、より好ましくは、低次酸化チタンの膜厚を10〜1000nm(特に好ましくは10〜600nm)の範囲に制御することにより、外観色と干渉色が異なる鮮やかな二色性を得ることが可能となる。
【0032】
なお、二色性顔料の低次酸化チタン層は、二酸化チタン層を還元することによって得ることができるが、その二酸化チタン層が、メタチタン酸、水酸化チタン、オキシチタン酸、硫酸チタンを含むチタン化合物層であっても、還元焼成による熱処理で低次酸化チタン組成へと変化するので利用可能である。また、還元処理に用いるガスとして窒素が含まれる化合物や、還元助剤として窒素が含まれる化合物が利用されることで、還元焼成において酸化窒化チタンも形成する。この酸化窒化チタンは、低次酸化チタンの酸素の一部が、窒素と置き換わり変性したものであるが、低次酸化チタン単層にこのものが含まれていても、光の吸収と反射の関係は変わらず、干渉色と外観色を調整することが可能である。
【0033】
以上のようにして得られる成分(B)の二色性顔料は、外観色と干渉色の異なる鮮やかな二色性を有する点で、従来の真珠光沢顔料とは異なる色調を有するものである。例えば、従来の二酸化チタン層を被覆した干渉顔料は、ハンターのLab表色系でL値が70〜80と明度が高く、白色の強い外観のものであった。また、低次酸化チタン層を被覆した黒色系真珠光沢顔料では、L値が25以下と明度が低く黒色に近い外観であった。
【0034】
しかし、本発明で用いる二色性顔料は、L値25以上の明度において干渉色と外観色の異なる二色性を呈するものである。また、ハンターのLab表色系のb値は、青〜黄色の表色値であり、絶対値が大きい程に彩度は高くなるが、本発明で用いる二色性顔料は、このb値を−3.0以下又は3.0以上の範囲に調整することが可能で、彩度の高い色調を得ることができる。
【0035】
次に、二色性顔料が二色性を呈する理由を模式的に示した図1を参照しながら、酸素欠損量を調整することで鮮やかな外観色と干渉色を呈することを説明する。
成分(B)である二色性顔料は、基材となる板状粒子(1)と、これを被覆する低次酸化チタン層(2)から形成されている。低次酸化チタンは、還元度を変えることで酸素欠損量を調整することができる。そして、可視光は電磁波であることから、酸素欠損によるホールに可視光の一部が吸収される。
【0036】
すなわち、図1の模式図に示すように、顔料表面での反射光(5)は、入射光(3)が低次酸化チタン層により特定の波長を吸収され、外観色としての色調を発色する。干渉色は、反射光(5)と、低次酸化チタン層で吸収され特定波長を失った透過光(4)が基材(1)で反射された反射光(6)が干渉することにより特有の色調を発する。これら(5)および(6)の反射光からなる干渉色と、低次酸化チタン層の吸収光による外観色により、鮮やかな二色性の色調を有する顔料を得ることができる。このように、酸素欠損量を調整することで、吸収する波長域や吸収量を変えることが可能となる。また、同様に反射光の波長も制御することが可能となる。
【0037】
また、上記のように(5)および(6)の反射光の干渉により干渉色が生じるため、低次酸化チタン層の膜厚を調整することで、低次酸化チタン層表面での反射光(5)と、低次酸化チタン層を通り基材(1)からの反射光(6)の光路差を変えることができる結果、波長の位相を変化させ、干渉色を変えることが可能となる。
【0038】
このように成分(B)の二色性顔料は、低次酸化チタン層の酸素欠損量、組成をコントロールすることで、反射光、吸収光の調整が可能となり、また低次酸化チタン層の膜厚を制御することでも波長の位相を変化させて干渉色を調整することが可能な、今までにない鮮やかな干渉色、外観色を有する多様な二色性を有する顔料である。また、この二色性により、外観色に深みやツヤを与えたり、くっきりとした点在きらめき感を有したりする顔料である。
【0039】
更にまた、本発明の成分(B)で使用される低次酸化チタンは、非常に安定で、耐酸性・耐アルカリ性にも優れており、しかも熱的にも非常に安定であり、大気中にて350℃の熱にも耐えうる物質である。従って、低次酸化チタン層を設けた二色性顔料は、耐酸性・アルカリ性且つ熱的にも安定な顔料として使用しうるものである。
【0040】
本発明の粉末固形化粧料における、成分(B)の配合量は、特に限定されるものではないが、全量中0.1〜50%が好ましく、更に、1〜30%が好ましい。成分(B)をこの範囲内で用いると、使用性、使用感、二色性による立体感演出効果の観点から良好なものが得られる。
【0041】
本発明に用いられる成分(C)の油剤は、粉末固形とする為のバインダー剤、及び肌塗布時の付着性を得る目的で配合されるものである。
本発明の成分(C)油剤は、通常化粧料に用いられるものであれば良く、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等のものであればよい。
【0042】
具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。これらの中でも、肌上での伸び広がりがよいという観点から、25℃で流動性を有する(30000mm/s未満)ものが好ましい。
【0043】
本発明の粉末固形化粧料における成分(C)油剤の配合量は特に限定されるものではないが、全量中1〜30%であればよく、好ましくは5〜20%であればよい。この範囲内で用いれば、固形状に成型することが容易となり、使用性に優れたものである。
【0044】
本発明の粉末固形化粧料には、上記の必須成分の他に、通常化粧料に配合される任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、感触調整や着色の目的で、成分(A)、成分(B)以外の粉体成分や、粉体分散、感触調整の為の界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料などを挙げることができ、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0045】
成分(A)、成分(B)以外の粉体成分としては、化粧料一般に使用される粉体であれば、板状、紡錘状、針状等の形状、粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン・酸化チタン焼結物、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、白雲母、紅雲母、黒雲母、ベントナイト、スメクタイト、珪ソウ土、ヒドロキシアパタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、酸化鉄・酸化チタン被覆合成金雲母、魚燐箔、二酸化チタン被覆ガラスフレーク、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体類、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、N−アシルリジン等の有機粉体類、澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。また、これら粉体は二種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石ケン、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、油脂、炭化水素、界面活性剤、アミノ酸系化合物、水溶性高分子等の一種又は二種以上を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。
【0046】
界面活性剤としては、化粧品一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸の無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン等が挙げられる。
【0047】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、1,2−ペンタンジオール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0048】
かくして得られる本発明の粉末固形化粧料としては、アイライナー、アイカラー、ファンデーション、ほほ紅、おしろい、コンシーラー等を挙げることができ、外観彩度の有用性という観点から、アイライナー、アイカラー、ほほ紅等を好ましいものとすることができる。また、本発明における外観彩度の高さとは、マンセル表色系における彩度(C)が8〜14程度の範囲のものを指すものである。
【実施例】
【0049】
次に、実施例および製造例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0050】
なお、以下の製造例で製造した二色性顔料の評価は、低次酸化チタン層の膜厚、低次酸化チタンの組成および顔料の色調で行った。このうち、膜厚測定には、断面SEM(日立:S−4500)を、低次酸化チタンの組成は、粉末X線回折装置(理学:RINT2400)を用いて行った。また、顔料の色調は、測色色差計(東京電色:TC−8600A)を用い、粉末セル法により行なった。すなわち、石英セル(直径35mm、深さ15mm、厚み2mm)に顔料1gを量り取り、サンプル上面に対して面圧25g/cmで顔料に均等に加圧して充填した後、ハンターのLab表色系で色調を測定した。
【0051】
また、各顔料の外観色と干渉色の評価は、下記手法により行った。すなわち、顔料と水を1:2の重量比で混ぜ込んで均一なスラリー状にし、透明ガラス基板(50mm×50mm、厚さ1mm)上に2g滴下する。その上に、ガラス板を合わせて、滴下したスラリーをガラス板間で引き延ばして、顔料を配向させる。顔料を配向させたガラス板サンプルを、目視観察を行う事で外観色と干渉色を評価する。その際の観察方法は、白色蛍光灯から垂直方向にサンプルを設置し、外観色を観察面から90度の角度より目視観察を行い、干渉色を観察面から45度の角度より目視観察を行う方法とした。
【0052】
製 造 例 1
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体A(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。前駆体Aは、XRD測定を行い二酸化チタンのアナターゼ構造であることを確認した(図2)。
【0053】
この前駆体A100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム3.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が緑色・干渉色が薄青色となり、二色性を有していた。得られた顔料のXRDの解析結果を図2に示す。この図から、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiが生成されていることが示された。
【0054】
製 造 例 2
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体A(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。
【0055】
この前駆体A100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム7.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料を回収して、XRD回折を測定したところ、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiが生成されていた(図2)。色調は、外観色が濃緑色、干渉色が青色であった。
【0056】
比較製造例 1
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体A(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。
【0057】
この前駆体A100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム10.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃で3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料を回収し、XRD回折を測定したところ、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiO・Tiが生成されていた(図2)。色調は、外観色の黒色が際立つ色調となった。
【0058】
製造例1〜2および比較製造例1では、低次酸化チタン層の膜厚を一定(140nm)とし、低次酸化チタンの組成を変化させた。還元条件を変えることで低次酸化チタンの組成が変化することをXRDの解析結果として図2に示す。このXRD測定は、前駆体および顔料(還元処理品)をそれぞれメノウ乳鉢で粉砕し、粉末エックス線回折装置にて行った。還元条件を変えることで、二酸化チタンのピークは完全に消失し、低次酸化チタンのみのピークとなった。
【0059】
下記の表1は、還元度を変化させた際の色調の変化を示す。前駆体では干渉色の淡い発色のみであるが、酸化チタン層を低次酸化チタンにすることで外観色・干渉色を変化させ、鮮やかな二色性を有する色調を得ることかできた。更に、低次酸化チタンの組成を制御することで、干渉色・外観色のそれぞれの色調を変えることができた。これに対し、TiOが含まれた低次酸化チタン層の場合は、TiOによる光の反射が強くなり、外観色が白色に近くなるため、本発明が示すところの鮮やかな二色性を得ることができない。鮮やかな二色性を有するためには、TiOを含まない低次酸化チタンからなる組成の単層を形成する必要がある。
【0060】
【表1】

【0061】
比較製造例1では、主組成物が還元度の高い低次酸化チタンTiO(x=1)になり、入射光の低次酸化チタンへの吸収が強く、干渉色が認識出来なくなり、外観色の黒色が際立つ色調になった。TiOが含まれる低次酸化チタン層の場合は、光の吸収が強いため、反射光が弱くなり、本発明の示すところの干渉色が得られず、外観色が際立つものとなる。鮮やかな二色性を有するためには、TiOを含まない低次酸化チタン組成からなる単層を形成する必要がある。この板状粒子上の単層を、TiOとTiOを含まない[TiOx(1.0<x<2.0)]からなる低次酸化チタンの組成を制御することで、入射する光の吸収を調整することが可能となり、様々な外観色と干渉色を得ることができる。
【0062】
特許文献7においては、最内層である雲母と最外層である二酸化チタンとの間に、中間層として低次酸化チタン層又は低次酸化チタンを含むチタン化合物層を存在させることで有色雲母を得ている。そして、中間層が全て低次酸化チタン又は低次酸化チタンと窒化チタンの混合物である場合には、外観色・干渉色が黒色のものになると記載されている。しかし、本発明者らの検討の結果、低次酸化チタン単層で、且つ低次酸化チタンの組成をTiOx(1.0<x<2.0)で制御することで、入射する光の反射と吸収をコントロールして、干渉色と外観色の異なる二色性を発色させることが可能であることが見出された。
【0063】
製 造 例 3
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が銀色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:30nm)を作製した。
【0064】
この前駆体100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム1.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が銀色、干渉色が薄黄色であった。
【0065】
製 造 例 4
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が黄色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:70nm)を作製した。
【0066】
この前駆体100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム1.7gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が黄色、干渉色が深緑色であった。
【0067】
製 造 例 5
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が赤色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:100nm)を作製した。
【0068】
この前駆体100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料品の色調は、外観色が薄赤(ピンク)色、干渉色が濃黄色であった。
【0069】
製 造 例 6
雲母にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、雲母が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が青色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:130nm)を作製した。
【0070】
この前駆体100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0071】
上記製造例3〜6では、低次酸化チタン層の組成を一定にして、低次酸化チタン層の膜厚を変化させた。下記表2は、低次酸化チタン層の組成をTiにして、膜厚を30〜140nmにした際の色調の変化を示す。膜厚を変化させることで、干渉色と外観色を大幅に変化させることが出来た。
【0072】
【表2】

【0073】
これら製造例1〜6に示すように、低次酸化チタン層の組成と膜厚を制御することで、今までにない種類の鮮やかな外観色と干渉色の異なる二色性を有する顔料を合成することが可能となった。
【0074】
製 造 例 7
ガラス末にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、ガラス末が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体B(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。この前駆体Bは、XRD測定により二酸化チタンのアナターゼ構造であることを確認した(図3)。
【0075】
この前駆体B100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム3.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分として600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。得られた還元処理品を顔料として回収したが、このものの色調は、外観色が緑色、干渉色が薄青色であった。この顔料のXRDの解析結果を図3に示すが、この結果から明らかなように、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiが生成されていた。
【0076】
製 造 例 8
ガラス末にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、ガラス末が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体B(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。
【0077】
この前駆体B100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム7.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、700℃、3時間の条件で還元焼成を行った。得られた還元処理品を顔料として回収し、XRD回折を測定したところ、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTiが生成されていた(図3)。色調は、外観色が濃緑色、干渉色が青色であった。
【0078】
比較製造例 2
ガラス末にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し、余分なチタン化合物を除去し、ガラス末が二酸化チタンで被覆された外観色が白色で干渉色が薄緑色の前駆体B(酸化チタン層の膜厚:140nm)を作製した。
【0079】
この前駆体B100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム10.0gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、800℃、3時間の条件で還元焼成を行った。得られた還元処理品を顔料として回収し、XRD回折を測定したところ、二酸化チタンのピークは消失し、低次酸化チタンTi・TiO・Tiが生成されていた(図3)。色調は、外観色の黒色が際立つ色調であった。
【0080】
製造例7〜8のガラス末に二酸化チタンを被覆した顔料においても、製造例1〜2と同様に還元処理を行うことで同じ色調が得られた。また、図3に示すように低次酸化チタンの組成も、製造例1〜2と同様の傾向を示した。
【0081】
【表3】

【0082】
製 造 例 9
市販の、二酸化チタンで被覆されており、外観色が白色・干渉色が青色であるガラス末(日本板硝子社製:メタシャインMC1080RB)を用い、還元処理を行なった。上記ガラス末100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gを加え、混合原料を作製した。この混合材料を、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0083】
製 造 例 10
市販の、外観色が白色・干渉色が青色の雲母チタン(メルク社製:Iridion225)を原料として用い、還元焼成を行った。上記雲母チタン100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gを加え、混合原料を作製した。この混合原料を、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0084】
製 造 例 11
アルミフレークにチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、アルミフレークが二酸化チタンで被覆された外観色が白色で、干渉色が青色の前駆体(酸化チタン層の膜厚:130nm)を作製した。
【0085】
この前駆体100gに還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gを加え、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0086】
製造例9〜10から、市販の材料を用い、これを還元処理とすることでも鮮やかな二色性顔料が得られることがわかった。また、製造例11では、原料基材がアルミフレークにおいても同様に鮮やかな二色性を有する顔料が得られることが分かった。
【0087】
【表4】

【0088】
製 造 例 12
市販の、二酸化チタンで被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャインMC1080RB)を用いて還元処理を行なった。まず、水素化チタン粉末をメノウ乳鉢にて粉砕し、目開き25μmの篩を通過した粉末を回収して還元助剤とした。上記ガラス末100gに、還元助剤である水素化チタンを4.3g加え、ミキサーで均一に混合した。混合した原料を、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。得られた還元処理物は、水で撹拌した後、目開き25μmの湿式篩を行い、還元助剤である水素化チタンから形成された低次酸化チタンを除去した。回収物として得られた顔料は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0089】
製 造 例 13
市販の、ガラス末に二酸化チタンで被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャインMC1080RB)を用いて還元処理を行なった。まず、チタン粉末をメノウ乳鉢にて粉砕し、目開き25μmの篩を通過した粉末を回収して還元助剤とした。上記ガラス末100gに、還元助剤であるチタンを3.8g加え、ミキサーで均一に混合した。混合した原料を、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:2)の流量を100ml/分とし、700℃、3時間の条件で還元焼成を行った。得られた還元処理物は、水で撹拌した後、目開き25μmの湿式篩を行い、還元助剤である水素化チタンから形成された低次酸化チタンを除去した。回収物として得られた顔料は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0090】
製 造 例 14
市販の、二酸化チタンで被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャインMC1080RB)を用い、還元助剤として水素化アルミニウムリチウムを用いて還元処理を行った。まず、上記ガラス粉末100gに、還元助剤として水素化アルミニウムリチウム2.7gを加え、混合原料を作製する。この混合原料を窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が青色、干渉色が紫色であった。
【0091】
製 造 例 15
市販のガラス末に二酸化チタンが被覆されている(日本板硝子社製:メタシャインMC1080RB)を用い、水素と窒素の混合ガスで還元焼成を行う。上記ガラス末20gを雰囲気炉内に入れ、窒素と水素の混合ガス(窒素:水素=1:3)の流量を100ml/分とし、1000℃、8時間の条件で還元焼成を行った。得られた還元焼成品の色調は、外観色が青色・干渉色が紫色となった。
【0092】
製造例12〜13は、還元助剤に水素化チタンと金属チタンをそれぞれ用いることでも、鮮やかな二色性顔料を得ることができることを示すものである。また、製造例14は、還元助剤に水素化アルミニウムリチウムを用いたものでも、鮮やかな二色性顔料を得ることができることを示すものであり、製造例15は、窒素と水素の混合ガスの混合比を代えてで還元処理を行うことでも、鮮やかな二色性顔料を得ることができることを示すものである。
【0093】
【表5】

【0094】
製 造 例 16
市販の、二酸化チタンで被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャインMC1080RB)を用い、還元処理を行なった。まず、上記ガラス末100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gおよびグアニジン0.2gを加え、混合原料を作製した。この混合原料を、窒素と水素の混合ガス(アンモニア:水素=1:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が赤紫色、干渉色が青色であった。
【0095】
製 造 例 17
市販の、二酸化チタンが被覆されているガラス末(日本板硝子社製:メタシャインMC1080RB)を用い、還元処理を行なった。上記ガラス末100gに、還元助剤として水素化ホウ素ナトリウム2.7gを加え、混合原料を作製した。アンモニアと水素の混合ガス(アンモニア:水素=2:1)の流量を100ml/分とし、600℃、3時間の条件で還元焼成を行った。この還元処理により得られた顔料の色調は、外観色が茶色、干渉色が紫色であった。
【0096】
製造例16は、還元助剤中に窒素を含む化合物を用いた例である。また、製造例17は、還元処理にアンモニアと水素の混合ガスを用いた例である。これらの例では、それぞれの低次酸化チタン層の一部が、窒素と置き換わり変性するが、その場合においても、鮮やかな二色性顔料を得ることができた。
【0097】
【表6】

【0098】
製 造 例 18
低次酸化チタンの組成がTi、粒子径が10〜30nmである粒子で、雲母を被覆する。この被覆は、低次酸化チタン粒子を水溶媒に均一に分散させ、雲母を加えて懸濁させ、その後、低次酸化チタン粒子が被覆された雲母粒子を回収し、105℃で乾燥し、水分を除去することにより行った。
【0099】
この低次酸化チタンが被覆された雲母を、真空雰囲気下、800℃で3時間の熱処理を行った。得られた還元処理品の色調は、外観色が緑色、干渉色が薄青色となり二色性を有していた。
【0100】
【表7】

【0101】
比較製造例 3
ガラス末にチタニアゾルを塗布し、空気雰囲気にて600℃の熱処理を行った。熱処理後、水洗し余分なチタン化合物を除去し、二酸化チタンで被覆されたガラス末を得た、このものは外観色が白色で干渉色が緑色(二酸化チタン層の膜厚:140nm)であった。
【0102】
比較製造例 4
特開昭60−060163号公報(特許文献7)の実施例1に基づき、雲母50部に対してイオン交換水500部を加え、十分撹拌することで得られたスラリーに、硫酸チタニル水溶液(40wt%)を208.5部加え、加熱撹拌を6時間行った。放冷後、濾過水洗を行い、900℃で焼成し、二酸化チタンで被覆された雲母を得た。この二酸化チタンで被覆された雲母を、アンモニアガス3L/分の流量で、800℃、4時間の還元処理を行った。得られた生成物のXRD解析を行ったところ、TiOとTiOの混合物であり、その外観色と干渉色が青色のものであった。
【0103】
以下の表8に、比較製造例1ないし4で得られたものの外観に関するデータを示す。前記比較製造例1〜2では、還元度の高い低次酸化チタンTiO(x=1)になると、入射光の低次酸化チタンへの吸収が強くなり、干渉色が見られなって外観色の黒色のみのものとなった。これに対し比較製造例3では、組成がTiO(x=2)となり、外観色が白色のため、干渉色の発色が有意に認識できないものとなった。
【0104】
また、上記比較製造例4で得られたものは、被覆組成物がTiOとTiOの混合物であるが、このような被覆組成物である低次酸化チタンがTiOとTiOの混合物であると、TiOが光を強く吸収し、反射光は微弱となる。よって、反射される光はTiOから発せられる青色のみとなり、TiOはそれを際立たせる効果(下地色としての効果)のみを与え単調な色調となってしまう。
【0105】
本発明では、実施例で示したように、光を反射させることができる還元度合TiOx(1.0<x<2.0)の低次酸化チタンの単層を設けることで、図1に見られる光の反射・吸収が生じさせ、外観色と干渉色の異なる二色性を得ることができるのである。
【0106】
【表8】

【0107】
実施例1〜5及び比較例1〜3:粉末固形状アイカラー
表9に示す組成の粉末固形状アイカラーを以下に示す製法にて調整し、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、「(ハ)仕上がりの立体感」について、以下に示す評価方法及び判断基準にて評価し、結果を併せて表2に示した。
【0108】
【表9】

【0109】
(製造方法)
A:成分1〜12を混合する。
B:成分13〜15を加温溶解する(70℃)。
C:〔A〕に〔B〕を添加し、均一に分散する。
D:〔C〕に水添ポリイソブテン(沸点166〜202℃)を加えて、スラリー状とし
金皿に流し込み、60℃48時間、乾燥固化させ、粉末固形状アイカラーを得た。
【0110】
<評価方法>
実施例1〜5及び比較例1〜3の粉末固形状アイカラーを化粧品専門パネル20名に使用してもらい、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、「(ハ)仕上がりの立体感」の各々の項目について、以下に示す評価基準にしたがって、アイカラー毎に評点を付し、全パネルの評点の平均点により以下に示す判定基準にしたがって判定した。(イ)については、粉の白さがなく化粧料の外観色が鮮やかに見えるかどうか、また(ハ)については、化粧膜の二色性による陰影が感じられる(見る角度によって色の変化が感じられる)かどうか、を評価の重要ポイントとした。
【0111】
(評価基準)
評価結果 : 評点
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
【0112】
(判定基準)
評点の平均点 : 判定
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5点未満 : ○
2.0以上〜3.5点未満 : △
2.0点未満 : ×
【0113】
表9に示すように、実施例1〜5の粉末固形状アイカラーは、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、「(ハ)仕上がりの立体感」の全ての項目に優れた化粧料であった。一方、成分(B)を全く含有しない比較例1、2は、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、及び「(ハ)仕上がりの立体感」に劣り、また、成分(A)を全く含有しない比較例3は、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、及び「(ハ)仕上がりの立体感」のいずれも劣るものであった。
【0114】
実施例6:粉末固形状頬紅
(成分) (%)
1.タルク 残量
2.セリサイト 5
3.フッ素金雲母*3 10
4.酸化チタン 2
5.製造例2の二色性顔料 20
6.酸化チタン被覆雲母 10
7.ポリメタクリル酸メチルポリマー 10
8.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー*8

9.ナイロン末(球状) 2
10.ベンガラ 0.3
11.黄酸化鉄 1
12.黒酸化鉄 0.2
13.トリオクタノイン 5
14.メチルフェニルポリシロキサン 3
15.パラメトキシケイ皮酸オクチル 3
16.コハク酸ジオクチル 2
*8 KSP−100(信越化学工業株式会社製)
【0115】
(製造方法)
A:成分1〜12を混合分散する。
B:〔A〕に、成分13〜16を添加し、混合分散する。
C:〔B〕を金皿にプレス成型し粉末固形状頬紅を得た。
【0116】
本発明の実施品である実施例6の粉末固形状頬紅は、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、「(ハ)仕上がりの立体感」の全ての項目に優れた化粧料であった。
【0117】
実施例7:粉末固形状白粉
(成分) (%)
1.タルク 残量
2.製造例4の二色性顔料 10
3.フッ素金雲母*3 40
4.フッ素金雲母鉄 10
5.(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー*9

6.無水ケイ酸(球状) 2
7.赤色226号 0.3
8.群青 0.2
9.ジメチルポリシロキサン 5
10.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
11.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー・ジメチコン混合物*10
20
*9 KSP−300(信越化学工業株式会社製)
*10 KSG−16(信越化学工業株式会社製)
【0118】
(製造方法)
A:成分1〜8を混合分散する。
B:〔A〕に、均一混合した成分9〜11を添加し、混合分散する。
C:〔B〕に、水添ポリイソブテン(沸点166〜202℃)を加えて、スラリー状とし金皿に流し込み、60℃で48時間、乾燥固化させ、粉末固形状白粉を得た。
【0119】
本発明の実施品である実施例7の粉末固形状白粉は、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、「(ハ)仕上がりの立体感」の全ての項目に優れた化粧料であった。
【0120】
実施例8:粉末固形状アイカラー
(成分) (%)
1.製造例5の二色性顔料 25
2.アルミナ*4 20
3.酸化チタン被覆雲母 15
4.ナイロン末(球状) 2
5.カオリン 1.5
6.群青 0.5
7.黄色酸化鉄 1.5
8.セリサイト 残量
9.流動パラフィン 4
10.ワセリン 4
11.ジメチルポリシロキサン 3
【0121】
(製造方法)
A:成分1〜8を混合する。
B:〔A〕に、成分9〜11を添加し、均一分散する。
C:〔B〕に精製水を加えて、スラリー状とし金皿に流し込み、30℃で48時間、乾燥固化させ、粉末固形状アイカラーを得た。
【0122】
本発明の実施品である実施例8の粉末固形状アイカラーは、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、「(ハ)仕上がりの立体感」の全ての項目に優れた化粧料であった。
【0123】
実施例9:粉末固形状ファンデーション
(成分) (%)
1.製造例7の二色性顔料 10
2.板状硫酸バリウム*5 20
3.酸化チタン 10
4.タルク 15
5.ナイロン末(球状) 2
6.酸化鉄 0.5
7.黄色酸化鉄 1.0
8.黒色酸化鉄 0.1
9.セリサイト 残量
10.流動パラフィン 4
11.イソオクタン酸セチル 4
12.メトキシケイ皮酸オクチル 3
【0124】
(製造方法)
A:成分1〜9を混合する。
B:〔A〕に、成分10〜12を添加し、均一分散する。
C:〔B〕に精製水を加えて、スラリー状とし金皿に流し込み、30℃で48時間、乾燥固化させ、粉末固形状ファンデーションを得た。
【0125】
本発明の実施品である実施例9の粉末固形状ファンデーションは、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、「(ハ)仕上がりの立体感」の全ての項目に優れた化粧料であった。
【0126】
実施例10:粉末固形状コンシーラー
(成分) (%)
1.製造例8の二色性顔料 10
2.合成金雲母*3 5
3.酸化チタン 30
4.タルク 5
5.ポリメタクリル酸メチル 5
6.酸化鉄 1.5
7.黄色酸化鉄 3.0
8.黒色酸化鉄 1.1
9.セリサイト 残量
10.ワセリン 7
11.ポリイソブテン 5
12.セレシンワックス 3
【0127】
(製造方法)
A:成分1〜9を混合する。
B:〔A〕に、成分10〜12(70℃溶解)を添加し、均一分散する。
C:〔B〕を金皿に充填し、粉末固形状コンシーラーを得た。
【0128】
本発明の実施品である実施例10の粉末固形状コンシーラーは、「(イ)化粧料外観の彩度の高さ」、「(ロ)塗布時の伸び広がりの良さ」、「(ハ)仕上がりの立体感」の全ての項目に優れた化粧料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C):
(A)屈折率が1.5を超え2.0未満の板状合成粉体
(B)板状粒子上に低次酸化チタンの単層を形成させることで外観色と干渉色が異なる二色性を呈する顔料
(C)油剤
を配合することを特徴とする粉末固形化粧料。
【請求項2】
板状粒子上に形成される低次酸化チタンの単層が、組成式 TiOx(ここで、xは1.0を超えて2.0未満の数を意味する)で示される低次酸化チタンであることを特徴とする請求項1記載の粉末固形化粧料。
【請求項3】
低次酸化チタン単層が、酸化窒化チタンを含むことを特徴とする請求項1または2記載の粉末固形化粧料。
【請求項4】
板状粒子が、天然または合成の金雲母、アルミフレークまたはガラス粉末である請求項1〜3の何れかに記載の粉末固形化粧料。
【請求項5】
成分(B)の二色性顔料が、ハンターのL、a、b表色系において、L値が25以上である請求項1〜4の何れかに記載の粉末固形化粧料。
【請求項6】
成分(B)の二色性顔料が、ハンターのL、a、b表色系において、b値が−3.0以下または3.0以上である請求項1〜5の何れかに記載の粉末固形化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−235485(P2010−235485A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83953(P2009−83953)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】