説明

粉末混合粉砕装置

【課題】被混合粉砕体を粉砕し混合することにより微細な粉末を生成する粉末混合粉砕装置に関し、粉砕処理と混合・攪拌処理を1台の装置で確実に行うことができるようにする。
【解決手段】 逆円錐形状の容器本体11と、この容器本体11の底部38に設けられており回転することにより容器本体11に装填される被混合粉砕体を主に粉砕する機能を奏するブレード14〜16と、容器本体11のブレード14〜16の配設位置よりも上部位置に設けられておりブレード14〜16と独立して回転することにより被混合粉砕体を主に攪拌し混合する機能を奏するスクレーパー13と、容器本体11を閉蓋する蓋体12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末混合粉砕装置に係り、特に被混合粉砕体を粉砕し混合することにより微細な粉末を生成する粉末混合粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ファンデーション,アイシャドー,ブラッシャー等の粉末化粧製品を試作する場合、また食品,色材及び樹脂の配合等を行う場合には、試作或は配合を行おうとする複数の原料(以下、被混合粉砕体という)を混合する処理、及び被混合粉砕体を粉砕して粉末化する処理を行う必要がある。
【0003】
従来、被混合粉砕体を混合・攪拌する装置としては、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この特許文献1に開示された混合(攪拌)装置は、逆円錐状の容器本体内に複数の径方向に複数延出する攪拌翼(ブレード)を有した回転軸が設けられている。また、各攪拌翼の先端には、容器本体の内壁と摺接する掻き取り板が設けられている。この混合装置で被混合粉砕体の攪拌・混合処理を行うには、回転軸を回転させて容器本体内に装填された被混合粉砕体を攪拌・混合する。
【0004】
また、被混合粉砕体を粉砕する装置としては、例えば特許文献2に開示された構造のものが知られている。この特許文献1に開示された粉砕装置は、上部に投入口が設けられると共に下部に排出口を設けた箱形のケーシングと、このケーシング内に水平に横架される可逆回転可能にして回転数可変のロータを有している。また、ロータの外周にロータ軸と平行なアームピンを介して基端部が蝶着されたハンマアーム及びハンマアームの先端部に嵌着されてロータの半径方向へ延在する略矩形板状の鋼製のハンマヘッドからなる多数のハンマと、ロータの両側方に配設されておりロータと対向する面を凹ませて曲成した磨砕板とを有した構成とされている。
【0005】
そして、被混合粉砕体は投入口から投入され、ロータの外周に蝶着した多数のハンマのハンマヘッドによる打撃と磨砕板表面での磨砕・剪断作用を繰り返し受けて効果的に粉砕され、粉砕物(製品)となって重力落下し排出口から排出される構成とされている。
【0006】
このように従来では、被混合粉砕体を混合し、また粉末化するのに攪拌(混合)装置と粉砕装置との2つの装置を必要としていた。
【特許文献1】特開2001−157832号公報
【特許文献2】特開2004−082045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来では被混合粉砕体に対する粉末化処理に、混合装置と粉砕装置の2つの装置を必要としていた。このため、被混合粉砕体を攪拌混合する処理の効率が悪く、処理に長居時間を要するという問題点があった。またこれと同時に、混合装置と粉砕装置との間で被混合粉砕体を移す作業が必要となり、多大な製品ロスが発生してしまうという問題点があった。
【0008】
また、この問題点を解決する方法として、従来の粉砕装置において混合処理を同時に行うこと、及び従来の混合機において粉砕処理を同時に行うことも考えられる。しかしながら、粉砕装置に設けられる攪拌翼は被混合粉砕体を粉砕するものであり、混合する機能は低い形状となっている。また、粉砕装置では攪拌軸の回転速度が速いため効率のよい混合処理は望めない。
【0009】
同様に、従来の混合装置において粉砕処理を同時に行おうとしても、混合装置に設けられる攪拌翼は攪拌処理を行うものであり、被混合粉砕体を確実に粉砕することができず、場合によっては攪拌翼が粉砕時の衝撃により変形してしまうことも考えられる。また、粉砕装置では回転軸の回転速度が遅いため、被処理物を確実に粉砕することは望めない。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、粉砕処理と混合・攪拌処理を1台の装置で確実に行うことを可能とした粉末混合粉砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項1記載の発明に係る粉末混合粉砕容器は、
逆円錐形状の容器本体と、
該容器本体の底部に設けられており、回転することにより前記容器本体に装填される被混合粉砕体を主に粉砕する機能を奏するブレードと、
前記容器本体の前記ブレードよりも上部位置に設けられており、前記ブレードと独立して回転することにより前記被混合粉砕体を主に攪拌し混合する機能を奏する攪拌翼と、
前記容器本体を閉蓋する蓋体とを有することを特徴とするものである。
【0013】
上記発明によれば、混合粉砕体を主に粉砕する機能を奏するブレードと、混合粉砕体を主に攪拌し混合する機能を奏する攪拌翼とを同一の容器本体内に配設すると共に、このブレードと攪拌翼とが独立して回転する構成としたことにより、容器本体内において被混合粉砕体に対して粉砕処理と混合処理を同時に行うことが可能となり、粉砕・混合処理の効率化を図ることができる。またこの際、ブレードと攪拌翼が独立して回転する構成であるため、ブレード及び攪拌翼の構造及び回転数を互いに拘わり無く独自に設定することができる。即ち、ブレードを粉砕に適した構造及び回転数に設定することができると共に、攪拌翼を混合に適した構造及び回転数に設定することができ、これによっても効率の高い粉砕・混合処理を実現することができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1記載の粉末混合粉砕装置において、
前記ブレードの回転周速度を10m/sec以上150m/sec以下の範囲で可変しうる構成としたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明のように、粉砕効率を高めるにはブレードの回転周速度を10m/sec以上150m/sec以下の範囲で可変することが有効である。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、
請求項1または2記載の粉末混合粉砕装置において、
前記攪拌翼の回転方向を正逆回転可能な構成とすると共に、
前記攪拌翼の前記容器本体内における正回転方向に対する角度をθとした場合、当該角度θを90°<θ<180°に設定したことを特徴とするものである。
【0017】
上記発明によれば、攪拌翼に上記所定の角度θを持たせ、かつ攪拌翼の回転方向を正逆回転可能な構成としたことにより、攪拌翼を正回転させた場合には被混合粉砕体は容器本体の内壁に沿って上方に変位するため攪拌・混合効率を高めることができ、逆に攪拌翼を逆回転させた場合には被混合粉砕体を容器本体の底部に設けられたブレードに向け付勢するため粉砕効率を高めることができる。
【0018】
また、請求項4記載の発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粉末混合粉砕装置において、
前記蓋体の断面内壁の形状を楕円形状としたことを特徴とするものである。
【0019】
上記発明によれば、容器本体を覆う蓋体の断面内壁の形状が楕円形状であるため、被混合粉砕体が攪拌翼により上方に向け運ばれ蓋体に至った際に、楕円形状の蓋体の内壁に沿って落下する。これにより、上方に運ばれた被混合粉砕体が蓋体に付着することを防止でき、攪拌・混合効率を高めることができる。
【0020】
また、請求項5記載の発明は、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉末混合粉砕装置において、
前記容器本体の壁部には、冷却媒体が流れる冷却ジャケットが設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
上記発明によれば、容器本体の壁部に冷却媒体が流れる冷却ジャケットを設けたことにより、粉砕時及び攪拌・混合に被混合粉砕体が加熱することを防止でき、被混合粉砕体の熱による変質の発生を抑制できる。
【0022】
また、請求項6記載の発明は、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉末混合粉砕装置において、
前記ブレードの回転軸と、前記攪拌翼の回転軸を同軸的に配置したことを特徴とするものである。
【0023】
上記発明によれば、ブレードの回転軸と攪拌翼の回転軸を同軸的に配置したことにより、粉末混合粉砕装置を小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
上述の如く本発明によれば、容器本体内において被混合粉砕体に対して粉砕処理と混合処理を同時に行うことが可能となり粉砕・混合処理の効率化を図ることができ、またブレードを粉砕に適した構造及び回転数に設定することができると共に、攪拌翼を混合に適した構造及び回転数に設定することができ、これによっても効率の高い粉砕・混合処理を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0026】
図1及び図2は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置1を説明するための図である。図1は粉末混合粉砕装置1の外観を示す正面図、左側面図、平面図であり、図2は主に混合粉砕容器10を示す断面図である。
【0027】
この粉末混合粉砕装置1は、例えばファンデーション,アイシャドー,ブラッシャー等の粉末化粧製品を試作或は製造する場合に用いるものであり、具体的には各種の被混合粉砕体からタルク,マイカ,酸化チタン,酸化鉄顔料等を生産する時に用いられるものである。この粉末混合粉砕装置1は、大略すると混合粉砕容器10、蓋体12、スクレーパー13(請求項記載の攪拌翼に相当する)、ブレード14〜16、支持台17、ブレード用モータ25、及び攪拌翼用モータ30等により構成されている。
【0028】
混合粉砕容器10は、例えばステンレス製であり、容器本体11と蓋体12とにより構成されている。容器本体11は、図1及び図2に加えて図3に示すように、円錐台部35と支持部36を有している。円錐台部35は、内部に逆円錐形状のすり鉢状内壁37が設けられており、また上部開口にはフランジ部42が形成されている。このフランジ部42には、後述する蓋体12を固定するクランプネジ31が装着されるU字スリット43が形成されている。また、円錐台部35の底部38には、後述するブレード軸27が回転自在な構成で装着される軸孔39が形成されている。
【0029】
また、円錐台部35の外壁40とすり鉢状内壁37との間には水冷ジャケット41が形成されている。この水冷ジャケット41は、冷却水注入部44から冷却水が注入され、冷却水排水部45から排出される構成とされている。このように、容器本体11に水冷ジャケット41を設けることにより、後述する粉砕処理時や攪拌・混合時において被混合粉砕体が加熱することを防止でき、被混合粉砕体の熱による変質の発生を抑制することができる。
【0030】
また、底部38の側部には、取り出し口32,33が設けられている。この取り出し口32には開閉ハンドル49が装着され(図2参照)、この開閉ハンドル49は容器本体11を開閉しうる構成とされている。よって、粉砕・混合処理が終了した時点で開閉ハンドル49を操作して容器本体11の下部を開放することにより、粉砕・混合処理された被混合粉砕体を取り出し口33から取り出すことができる。
【0031】
尚、本実施例においては、開閉ハンドル49を操作することにより手動で容器本体11を開閉する構成としたが、容器本体11を開閉は手動に限定されるものではなく、自動開閉する構成としても、またダンパー式の開閉機構を設けた構成としてもよい。
【0032】
支持部36は、上記構成とされた円錐台部35を支持するものであり、円筒部47とベース部46とにより構成されている。円錐台部35は円筒部47の上部に固定され、これにより円錐台部35は支持部36に支持される。また、ベース部46は後述する支持台17に固定され、これにより混合粉砕容器10は支持台17に固定される。
【0033】
蓋体12は、図1及び図2に加えて図4に示すように、天板部50、フランジ部51、円筒部53等により構成されている。天板部50は、断面内壁の形状が楕円形状に設定されている(図4(B)参照)。
【0034】
この天板部50には、補助開口部57,58が設けられている。この補助開口部57,58には、粉砕・混合処理時において、各種補助治具が装着される。例えば、補助開口部57には、粉砕・混合処理時においてフィルタ48が装着される場合がある(図2参照)。尚、補助開口部57,58は、粉砕・混合処理時において補助治具を用いない場合は閉塞ネジにより閉塞される。
【0035】
また、天板部50の中央位置には、スクレーパー軸受56が設けられている。このスクレーパー軸受56には、後述するスクレーパー13の軸部60が回転可能に装着される。円筒部53は、このスクレーパー軸受56を囲繞するよう天板部50に固定されている。この円筒部53の上端部にはモータ固定フランジ52が設けられている。このモータ固定フランジ52には、スクレーパー13を回転させるための攪拌翼用モータ30が装着される(図1及び図2参照)。
【0036】
また、天板部50の下端部には、フランジ部51が設けられている。このフランジ部51は容器本体11に設けられたフランジ部42と対応するものであり、フランジ部51に形成されたU字スリット43と対応する位置にはU字スリット59が形成されている。よって、フランジ部51とフランジ部42とを位置合わせし、一致したU字スリット43とU字スリット59との間にクランプネジ31を配設して締結することにより、容器本体11と蓋体12は一体化する。
【0037】
更に、円筒部53の背面側には、アーム固定部54が設けられている(図1(B),(C)及び図4参照)。このアーム固定部54は、支持台17に設けられたアーム23に固定される。
【0038】
支持台17は、図1に示されるように、テーブル20、脚部21、柱部22、アーム23等により構成されている。テーブル20は複数の脚部21により支持された構成とされている。この脚部21の下部には、ローラ28及び固定パッド29が配設されている。このローラ28と固定パッド29は選択的に床に当接する構成とされており、粉末混合粉砕装置1の不使用時で粉末混合粉砕装置1を移動させる場合にはローラ28が床に当接し、粉末混合粉砕装置1が粉砕・混合処理を行う場合には固定パッド29が床に当接する。固定パッド29が床に当接することにより、混合粉砕容器10で発生する振動を抑制することができる。
【0039】
テーブル20には、混合粉砕容器10、柱部22、及びブレード用モータ25等が固定される。前記したように、混合粉砕容器10の一部を構成する支持部36は、テーブル20に固定されている。これにより混合粉砕容器10は、支持部36を介して支持台17にこいてされた構成とされている。
【0040】
また、柱部22は、テーブル20上における混合粉砕容器10の背部位置に立設されている。この柱部22は、下端がテーブル20に固定されており、また上端部には略直角方向に延出する(混合粉砕容器10に向け延出する)アーム23が設けられている。
【0041】
前記したように、このアーム23には蓋体12のアーム固定部54が固定されている。また、アーム23はハンドル24(図1(B)参照)を操作することにより、テーブル20に対して昇降動作する構成とされている。また、混合粉砕容器10は前記のようにテーブル20に固定された構成とされている。
【0042】
よって、クランプネジ31を取り外した状態においてハンドル24を操作することにより、蓋体12は容器本体11に対して昇降動作する。この際、攪拌翼用モータ30も蓋体12と一体的に昇降動作する。粉砕・混合前の被混合粉砕体は、容器本体11に対して蓋体12が上昇した状態(開蓋状態)において容器本体11内に装填される。尚、本実施例では上記のように蓋体12の開閉にハンドル24を手動操作する構造を示したが、蓋体12の開閉はこれに限定されるものではなく、油圧,空圧,或いは電動により自動開閉する構成としてもよい。
【0043】
ブレード用モータ25は、テーブル20の背面側に固定されている。このブレード用モータ25と、後述する混合粉砕容器10に設けられるブレード軸27との間には、ベルト26が配設されている。よって、ブレード用モータ25が駆動することにより、ベルト26を介してブレード軸27が回転する構成とされている。
【0044】
続いて、混合粉砕容器10の内部構造について、主に図2を用いて説明する。前記したように、混合粉砕容器10は容器本体11と蓋体12とにより構成されている。そして、混合粉砕容器10の内部には、すり鉢状内壁37と楕円状内壁55により構成される空間部が形成される。このすり鉢状内壁37と楕円状内壁55により構成される空間部は、装填される被混合粉砕体に対して粉砕処理及び攪拌・混合処理を行う処理室となる。
【0045】
この混合粉砕容器10の内部には、スクレーパー13、各種ブレード14〜16、及びブレード軸27等が配設される。スクレーパー13は、図2に加え図5に示すように、軸部60、フレーム61、環状部62、及び第1乃至第3の攪拌羽根63〜65等により構成されている。
【0046】
軸部60は、蓋体12に形成されたスクレーパー軸受56に回転自在に軸承される。これにより、スクレーパー13は蓋体12に回転自在に装着された構成となる。この軸部60にはモータ軸連結部66が形成されており、攪拌翼用モータ30の回転駆動軸は、このモータ軸連結部66に接続されている。
【0047】
従って、攪拌翼用モータ30が回転駆動することにより、スクレーパー13はこれに伴い回転する。この際、本実施例では、このスクレーパー13の回転速度は、200r.p.m〜1400r.p.mの範囲で可変可能な構成とされている。このように、スクレーパー13の回転速度を可変できる構成としたことにより、被混合粉砕体の特性(重さ,大きさ、粒径等)に最適な攪拌・混合条件を設定することが可能となる。
【0048】
尚、軸部60とスクレーパー軸受56との間には、図示しないシール機構が設けられており、粉末化した被混合粉砕体がスクレーパー軸受56から粉末混合粉砕装置1の外部に漏洩しないよう構成されている。
【0049】
本実施例では、スクレーパー13は平面視した状態(図5(A)に示す状態)において、反時計方向(同図に矢印A1方向)及び時計方向(同図に矢印A2方向)のいずれにも回転可能な構成とされている。以下の説明においては、スクレーパー13が反時計方向(A1方向)に回転する場合を正回転とし、スクレーパー13が時計方向(A2方向)に回転する場合を逆回転とするものとする。
【0050】
軸部60には4本のフレーム61が設けられている。この4本のフレーム61は、上端部が前記の軸部60に固定され、下端部が環状部62に固定された構成とされている。この環状部62は、図5(A)に示すように、円形状とされている。このフレーム61には、第1乃至第3の攪拌羽根63〜65が取り付けられている。
【0051】
この第1乃至第3の攪拌羽根63〜65は、主に混合粉砕容器10に装填された被混合粉砕体を攪拌し混合する機能を奏するものである。また、容器本体11のすり鉢状内壁37或は蓋体12の楕円状内壁55と摺接し、この各内壁37,55に付着した被混合粉砕体を掻き落とす機能も奏する。
【0052】
第1の攪拌羽根63は、本実施例では2枚設けられており、180°離間したフレーム61に夫々取り付けられている。この第1の攪拌羽根63は、スクレーパー13の回転方向に対して傾けて配設されている。
【0053】
具体的には、図5(C)に示される一番手前に位置する第1の攪拌羽根63(特に、符号63Aを付す)を例に挙げると、第1の攪拌羽根63Aは、スクレーパー13の回転方向A1に対し、90°を越えると共に180°未満の範囲の傾斜角度θ1を有している(90°<θ1<180°)。
【0054】
第2の攪拌羽根64は、本実施例では2枚設けられており、第1の攪拌羽根63が設けられたフレーム61と直交するフレーム61に夫々取り付けられている。この第2の攪拌羽根64もスクレーパー13の回転方向に対して傾けて配設されている。
【0055】
具体的には、図5(B)に示される一番手前に位置する第2の攪拌羽根64(特に、符号64Aを付す)を例に挙げると、第2の攪拌羽根64Aは、スクレーパー13の回転方向A1に対し、90°を越えると共に180°未満の範囲の傾斜角度θ2を有している(90°<θ2<180°)。この第1の攪拌羽根63及び第2の攪拌羽根64は、容器本体11のすり鉢状内壁37に摺接するよう構成されている。
【0056】
更に、第3の攪拌羽根65は、第1の攪拌羽根63が配設されたフレーム61の肩部(上部)に設けられている。この第3の攪拌羽根65の形状は、蓋体12に形成された楕円状内壁55の楕円形状と対応する形状とされている。よって、この第3の攪拌羽根65は蓋体12の楕円状内壁55に摺接し、主にこの楕円状内壁55に付着した被混合粉砕体を掻き落とす機能を奏する。
【0057】
次に、各種ブレード14〜16及びブレード軸27について説明する。ブレード14〜16は、前記したスクレーパー13の下部位置に配置され、主に混合粉砕容器10内に装填された被混合粉砕体を粉砕する機能を奏するものである。
【0058】
この各種ブレード14〜16は例えばステンレス製であり、前記したブレード軸27に固定されている。前記のようにブレード軸27はベルト26を介してブレード用モータ25に接続されており、また軸孔39を挿通してその一部が混合粉砕容器10の内部に突出した構成となっている。ブレード14〜16は、この混合粉砕容器10の内部に突出したブレード軸27に固定されている。
【0059】
よって、ブレード用モータ25が回転駆動することにより、ブレード14〜16はこれに伴い回転する。この際、本実施例では、ブレード14〜16は高速回転され、その回転周速度は10m/sec以上150m/sec以下の範囲で可変可能な構成とされている。このように、ブレード14〜16の回転周速度を可変できる構成としたことにより、被混合粉砕体の特性(硬さ,大きさ等)や、生成しようとする粉末体の粒径等に最適な粉砕条件を設定することが可能となる。
【0060】
尚、ブレード軸27と軸孔39との間には、図示しないシール機構が設けられており、粉末化した被混合粉砕体が軸孔39から粉末混合粉砕装置1の外部に漏洩しないよう構成されている。
【0061】
ここで、ブレード軸27及び軸部60に注目すると、ブレード軸27と軸部60は互いに分離独立した構成とされている。従って、ブレード軸27はブレード用モータ25により、また軸部60は攪拌翼用モータ30により、互いに拘わり合うことなく独立して回転可能な構成とされている。即ち、ブレード軸27(ブレード14〜16)の回転速度と、攪拌翼用モータ30(スクレーパー13)の回転速度を異なる速度また異なる回転方向に設定することができる。
【0062】
また、本実施例では、ブレード軸27と軸部60を同軸的に配置した構成としている。この構成することにより、ブレード軸27と軸部60とを非同軸的に配設した構成に比べ、混合粉砕容器10の小型化を図ることができ、延いては粉末混合粉砕装置1の小型化を図ることができる。
【0063】
一方、複数のブレード14〜16の内、最下部に配設される下ブレード14は、図6に拡大して示すように、軸受部71と湾曲羽根70とにより構成されている。軸受部71はブレード軸27に固定される部位である。また、湾曲羽根70は、容器本体11の底部38の形状に対応した形状とされている。
【0064】
即ち、下ブレード14の両端部である湾曲羽根70は、底部38の形状に沿って跳ね上がったような形状とされている(図2及び図6(B)参照)。よって、下ブレード14は、その略全面において底部38と摺接する。この下ブレード14は、主に底部38に付着した被混合粉砕体を掻き落とす機能を奏する。
【0065】
この下ブレード14の上部には、スペーサ80を介して平ブレード15及びナイフブレード16が適宜配設されている。平ブレード15は、図7に示すように平板形状を有し、その中心位置にはブレード軸27に固定するための軸孔73が形成されている。また、この軸孔73の両側には平板羽根72が延出しており、この平板羽根72は略均一な厚さとされている。
【0066】
ナイフブレード16は、図8に示すように、軸受部76と羽根部75とを有した構成とされている。軸受部76はブレード軸27に固定される部位であり、その両側には羽根部75が延出形成されている。この羽根部75は、長辺側縁部にナイフエッジ部74が形成されている。このように、羽根部75にナイフエッジ部74を形成することにより、ナイフブレード16が回転に伴い被混合粉砕体に衝突した場合、高い粉砕効果(特に、切断硬化)を実現することができる。
【0067】
尚、本実施例では、下ブレード14の上部にナイフブレード16、平ブレード15、ナイフブレード16の順でブレード14,15を3枚積層した構成としているが、各ブレード14,15の積層枚数及び積層順序は本実施例の構成に限定されるものではなく、被混合粉砕体の特性等に応じて適宜変更しうるものである。
【0068】
続いて、上記構成とされた粉末混合粉砕装置1において、被混合粉砕体を粉砕・混合するときの動作について説明する。
【0069】
粉末混合粉砕装置1により被混合粉砕体を粉砕・混合するには、開閉ハンドル49により取り出し口33を閉じ、またクランプネジ31を全て外した状態とした上で、ハンドル24を操作して蓋体12を容器本体11に対して開蓋する。そして、容器本体11が開蓋された容器本体11に対し、粉砕・混合処理前の被混合粉砕体を装填する。
【0070】
被混合粉砕体が装填されると、再びハンドル24を操作して蓋体12を閉蓋する。また、クランプネジ31を全て締結すると共に、必要がある場合には補助開口部57,58にフィルタ48等の補助治具を装着する。
【0071】
以上の前準備が終了すると、ブレード用モータ25及び攪拌翼用モータ30を起動する。また、これに伴い図示しない冷却水循環装置を起動し、水冷ジャケット41に対し冷却水の供給及び排水処理を開始する。
【0072】
前記したように、ブレード用モータ25を回転駆動することにより各ブレード14〜16が回転を開始し、攪拌翼用モータ30を回転駆動することによりスクレーパー13が回転を開始する。この際、ブレード14〜16は10m/sec以上150m/sec以下の回転周速度の範囲で高速回転され、スクレーパー13はブレード14〜16に対して低速である200r.p.m以上1400r.p.m以下の範囲の回転速度で回転する。このように、本実施例では、スクレーパー13の回転速度と、ブレード14〜16の回転速度を異なる速度とすることができる。
【0073】
被混合粉砕体を粉砕する処理においては、ブレード14〜16を高速回転させたほうが粉砕効率は高い。これに対し、攪拌・混合処理においてはスクレーパー13を高速回転させると、被混合粉砕体は飛散するだけであり攪拌・混合効率が低下すると共に、被混合粉砕体はブレード14〜16が配設された混合粉砕容器10の下部に落下せず、粉砕効率も低下してしまう。従って、本実施例のようにスクレーパー13を攪拌・混合効率の良好な200r.p.m以上1400r.p.m以下の低速回転速度に設定し、ブレード14〜16の回転周速度を粉砕効率の良好な10m/sec以上150m/sec以下の高速に設定することにより、粉砕効率及び攪拌・混合効率の双方の効率を高めることができる。
【0074】
粉末混合粉砕装置1の始動時においては、被混合粉砕体は混合粉砕容器10の底部に位置している。よって、ブレード14〜16が高速回転することにより被混合粉砕体は粉砕処理が行われる。この粉砕が行われた被混合粉砕体は、ブレード14〜16の回転に伴う遠心力により容器本体11のすり鉢状内壁37に向け付勢される。
【0075】
この各ブレード14〜16と対向する位置にはスクレーパー13の第1の攪拌羽根63が設けられており、この第1の攪拌羽根63はスクレーパー13の回転と共に回転している。この際、始動を開始した後所定時間は、スクレーパー13は正方向(図5における矢印A1方向)に回転するよう構成されている。また、第1の攪拌羽根63はスクレーパー13の回転方向A1に対し、所定の角度θ1(90°<θ1<180°)を有している。このため、鉢状内壁37に向け付勢され移動してきた被混合粉砕体は、第1の攪拌羽根63により上方に向け搬送される。
【0076】
また、このように第1の攪拌羽根63により上方に搬送された被混合粉砕体、及びブレード14〜16の回転によりすり鉢状内壁37の中央位置まで直接飛散した被混合粉砕体は、第2の攪拌羽根64により攪拌・混合される。
【0077】
この第2の攪拌羽根64もスクレーパー13の回転方向A1に対し、所定の角度θ2(90°<θ2<180°)を有している。このため、第2の攪拌羽根64の配設位置まで移動してきた被混合粉砕体は、この第2の攪拌羽根64により更に上方に向け搬送される。
【0078】
そして、第2の攪拌羽根64の上端部にまで被混合粉砕体が搬送された状態において、被混合粉砕体は第2の攪拌羽根64から離脱し、再びブレード14〜16に落下して粉砕処理が行われる。また、すり鉢状内壁37,底部38,及び楕円状内壁55に付着した被混合粉砕体は、第1乃至第3の攪拌羽根63〜65が混合粉砕容器10の内壁37,38,55と摺接することにより掻き落とされる。よって、被混合粉砕体が混合粉砕容器10の内壁37,38,55にこびり付くようなこともない。更に、上記のように粉砕・混合処理中は、容器本体11に設けられた水冷ジャケット41に冷却水が流れるため、被混合粉砕体が加熱し変質することを抑制できる。
【0079】
また、被混合粉砕体の特性等により特に粉砕効率を高めたい場合には、攪拌翼用モータ30を制御することによりスクレーパー13の回転を逆回転(図5(A)におけるA2方向の回転)とする。
【0080】
前記のように第1の攪拌羽根63はスクレーパー13の回転方向A1に対して90°を越えると共に180°未満の範囲の傾斜角度θ1(90°<θ1<180°)を有しており、同様に第2の攪拌羽根64もスクレーパー13の回転方向A1に対して90°を越えると共に180°未満の範囲の傾斜角度θ2(90°<θ2<180°)を有している。
【0081】
このため、スクレーパー13を正回転(A1方向回転)させた場合には、被混合粉砕体は容器本体11の内壁に沿って上方に変位し、よって攪拌・混合効率を高めることができる。逆に、スクレーパー13を逆回転(A2方向回転)させた場合には、被混合粉砕体は容器本体11の底部38に設けられたブレード14〜16に向け付勢するため粉砕効率を高めることができる。このように、本実施例に係る粉末混合粉砕装置1では、単にスクレーパー13の回転方向を正逆で変更するだけの処理で、被混合粉砕体に対する粉砕効率を調整することができる。
【0082】
上記したように本実施例に係る粉末混合粉砕装置1によれば、容器本体11内において被混合粉砕体に対して粉砕処理と混合処理を同時に行うことが可能となり、粉砕・混合処理の効率化を図ることができる。
【0083】
尚、本発明は上記した実施例の態様に限定されるものではなく、本発明を具現化できる種々の粉末混合粉砕装置に適用できるものである。具体的には、本実施例では容器本体11が、逆円錐形状のすり鉢状内壁37が設けられた円錐台部35と、支持部36とを有した構成とした。しかしながら容器本体11の内面形状はこれに限定されるものではなく、例えば逆円錐形状のすり鉢状内壁37に代えて、内面が円弧状の円弧形状内壁を有するよう容器本体11を構成することもできる。この構成とした場合でも、上記した本実施例と同様の効果を実現することができる。
【0084】
また、本実施例では、スクレーパー13を攪拌翼用モータ30により直接回転駆動し、ブレード14〜16はベルト26を介して伝達されるブレード用モータ25の駆動力により回転駆動する構成とした。しかしながら、スクレーパー13及びブレード14〜16の駆動はこれに限定されるものではなく、ベルトを介してスクレーパー13を攪拌翼用モータ30により駆動される構成とし、またブレード14〜16をブレード用モータ25により直接駆動する構成としてもよい。このように、各モータ25,30とスクレーパー13及びブレード14〜16との駆動伝達は、特に限定されるものではなく、周知の各種の駆動力伝達手段を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を示しており、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は平面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を構成する混合粉砕容器の断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を構成する容器本体を示す図であり、(A)は上部半分を示す平面図、(B)は断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を構成する蓋体を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を構成するスクレーパーを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を構成する下ブレードを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を構成する平ブレードを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を構成するナイフブレードを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図9】図9は、本発明の一実施例である粉末混合粉砕装置を構成するスペーサを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 粉末混合粉砕装置
10 混合粉砕容器
11 容器本体
12 蓋体
13 スクレーパー
14 下ブレード
15 平ブレード
16 ナイフブレード
25 ブレード用モータ
30 攪拌翼用モータ
31 クランプネジ
35 円錐台部
36 支持部
37 すり鉢状内壁
40 外壁
41 水冷ジャケット
44 冷却水注入部
45 冷却水排水部
46 ベース部
47 円筒部
50 天板部
51 フランジ部
52 モータ固定フランジ
55 楕円状内壁
56 スクレーパー軸受
60 軸部
61 フレーム
62 環状部
63 第1の攪拌羽根
64 第2の攪拌羽根
65 第3の攪拌羽根
66 モータ軸連結部
70 湾曲羽根
71 軸受部
72 平板羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆円錐形状の容器本体と、
該容器本体の底部に設けられており、回転することにより前記容器本体に装填される被混合粉砕体を主に粉砕する機能を奏するブレードと、
前記容器本体の前記ブレードよりも上部位置に設けられており、前記ブレードと独立して回転することにより前記被混合粉砕体を主に攪拌し混合する機能を奏する攪拌翼と、
前記容器本体を閉蓋する蓋体とを有することを特徴とする粉末混合粉砕装置。
【請求項2】
請求項1記載の粉末混合粉砕装置において、
前記ブレードの回転周速度を10m/sec以上150m/sec以下の範囲で可変しうる構成としたことを特徴とする粉末混合粉砕装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の粉末混合粉砕装置において、
前記攪拌翼の回転方向を正逆回転可能な構成とすると共に、
前記攪拌翼の前記容器本体内における正回転方向に対す
る角度をθとした場合、当該角度θを90°<θ<180°に設定したことを特徴とする粉末混合粉砕装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粉末混合粉砕装置において、
前記蓋体の断面内壁の形状を楕円形状としたことを特徴とする粉末混合粉砕装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉末混合粉砕装置において、
前記容器本体の壁部には、冷却媒体が流れる冷却ジャケットが設けられていることを特徴とする粉末混合粉砕装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粉末混合粉砕装置において、
前記ブレードの回転軸と、前記攪拌翼の回転軸を同軸的に配置したことを特徴とする粉末混合粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−142134(P2006−142134A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331986(P2004−331986)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】