粉末焼結造形装置及び粉末焼結造形方法
【課題】薄層間の内部応力を低く維持しつつ、造形及びブレークアウトに要する時間を短縮することができる粉末焼結造形方法を提供するものである。
【解決手段】粉末材料の薄層8aを焼結し、積層して3次元造形物を作製する粉末焼結造形方法であって、一つの前記薄層8aごとに選択的に加熱して焼結し、該焼結した一層の薄層8bごとに、或いは該焼結した複数の薄層8bごとに、該焼結した薄層8bの上に新たな粉末材料の薄層8aを形成する前に、冷却する。
【解決手段】粉末材料の薄層8aを焼結し、積層して3次元造形物を作製する粉末焼結造形方法であって、一つの前記薄層8aごとに選択的に加熱して焼結し、該焼結した一層の薄層8bごとに、或いは該焼結した複数の薄層8bごとに、該焼結した薄層8bの上に新たな粉末材料の薄層8aを形成する前に、冷却する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末焼結造形装置及び粉末焼結造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末焼結造形装置は、3次元造形物の断面形状に合わせて粉末材料を逐次溶融焼結して3次元造形物を自動的に作成する装置である。この装置を用いた粉末焼結造形法(SLS法)によれば、予め作製すべき3次元造形物のスライスデータを作成しておき、粉末材料の薄層を形成し、その薄層に対してスライスデータに基づきレーザで描画加熱を行い、粉末の粒子を相互に融着させて焼結した薄層を形成し、更にこれら工程を繰り返すことにより、複数の焼結した薄層を積層して3次元造形物を作製している。造形物は未硬化の粉末材料の固まり(ケーキ)の中に埋まった状態で得られるので、最後にその中から造形物を
掘り出す。この作業を「ブレークアウト」と呼んでいる。
【0003】
上記の粉末焼結造形方法においては、薄層間の内部応力を低く維持しつつ造形に要する時間を短縮するため、粉末材料を予熱するのが一般的である。予熱温度が高い場合、ブレークアウトはケーキの温度の低下を待ってから行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、造形物の大型化が望まれるようになってきている。この場合、造形物が大型化されると、その放熱に要する時間が著しく長くなり(おそらく、寸法の2乗に比例する)、その結果としてシステム運用上の非効率を招くという恐れがある。
【0005】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、薄層間の内部応力を低く維持しつつ、造形に要する時間及び完成した造形物を取り出すまでに要する時間を短縮することができる粉末焼結造形装置及び粉末焼結造形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の発明は粉末焼結造形方法に係り、粉末材料の薄層を焼結し、積層して3次元造形物を作製する粉末焼結造形方法であって、一つの前記薄層ごとに選択的に加熱して焼結し、該焼結した一層の薄層ごとに、或いは該焼結した複数の薄層ごとに、該焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、冷却することを特徴とし、
第2の発明は、粉末焼結造形方法に係り(i)作業台上に粉末材料を供給し、該粉末材料を延べ広げて粉末材料の薄層を形成する工程と、(ii)前記粉末材料の薄層を描画パターンに基づき選択的に加熱して焼結する工程と、(iii)前記加熱して焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、前記加熱して焼結した薄層の表面にガス状又は液状の冷媒を流して、前記加熱して焼結した薄層を冷却する工程とを有し、前記(i)乃至(iii)の工程を繰り返し行い、前記焼結した薄層を積み重ねて3次元造形物を作製することを特徴とし、
第3の発明は、第2の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記(i)乃至(ii)の工程を繰り返して、前記(iii)の工程の前に加熱して焼結した複数の薄層を形成することを特徴とし、
第4の発明は、第2の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を、前記冷媒の流れが層流となるような範囲に維持することを特徴とし、
第5の発明は、第2の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を、前記冷媒の流れが乱流となるような範囲に維持し、かつ造形途中の前記薄層又は積み重ねられた薄層が舞い上がらないように調節することを特徴とし、
第6の発明は、第5の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を前記冷媒の流れが乱流となるような範囲に維持し、前記薄層の表面に前記冷媒を流して前記薄層を冷却した後、前記薄層周辺の粉末材料を均して表面を平滑にすることを特徴とし、
第7の発明は、第2の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記冷媒は液状を有し、前記薄層の表面に前記冷媒を散布して前記冷媒が蒸発するときに該冷媒によって前記薄層から熱を奪わせることにより該薄層を冷却することを特徴とし、
第8の発明は、第1又は第2の何れか1項の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記粉末材料は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリルにトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とし、
第9の発明は、粉末焼結造形装置に係り、作業台と、前記作業台の降下手段と、前記作業台上に粉末材料の薄層を形成する薄層形成手段と、一層の前記粉末材料の薄層ごとに選択的に加熱して焼結する加熱焼結手段と、ガス状又は液状の冷媒を流して前記加熱して焼結した薄層を冷却する冷却手段と、前記作業台を下げて該作業台上に前記粉末材料の薄層を形成させ、一層の該粉末材料の薄層ごとに描画パターンに基づき選択的に加熱して焼結させ、該焼結した一層の薄層ごとに、或いは該焼結した複数の薄層ごとに、前記焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、前記焼結した薄層の表面に前記冷却手段からガス状又は液状の冷媒を流して、冷却させる制御手段とを有することを特徴としている。
【0007】
以下に、上記本発明の構成に基づく作用について説明する。
【0008】
本発明においては、加熱して焼結した薄層を、一層或いは複数層、積み重ねたものを冷却手段によって冷却させる制御手段を有している。即ち、一層又は適当な複数層の薄層を加熱焼結するたび毎に、それらを冷却している。
【0009】
この場合、冷却対象物の熱容量は小さいので、冷却対象物の温度を短時間で降下させることができる。しかも、この様な方法を続けることで、3次元造形物の完成時でも3次元造形物の温度は低いままである。これにより、冷却のための待ち時間なしで、完成した造形物をすぐに取り出すことができる。以上、造形途中の冷却時間を含めて、完成した造形物を取り出すまでに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0010】
また、内部応力に関しては、それまでに既に造形された途中物を予熱しなくても、一層又は適当な複数層の薄層毎に冷却しているため、ケーキ内部と外部との間の温度勾配による応力が発生するのを防止することができる。
【0011】
冷却手段として、薄層の表面にガス状及び液状の冷媒を流す手段を有している。
【0012】
特に、ガス状の冷媒を用いた場合、作業台の上方に少なくとも作業台に対向する平面が上下移動可能なように設置された冷媒ガイドを有し、作業台と冷媒ガイドの平面との間に冷媒を流すようにしている。この構成において、作業台と冷媒ガイドの平面との間の間隔を調整することで、冷媒の流れが層流となるように調節することができる。これにより、乱流を防止して、未硬化の粉末材料や造形途中の薄層又は積み重ねられた薄層が舞い上がるのを抑制することができる。また、場合により冷媒の流速を乱流が生じる流速に維持してもよい。これにより、冷却効果が一層増す。この場合、造形途中の薄層又は積み重ねられた薄層が舞い上がらないように、流速を調節し、弱める必要がある。
【0013】
さらに、冷媒ガイドを設けずに加熱して焼結させた薄層に冷媒を直接吹きかけて冷却してもよい。この場合、周辺の未硬化の粉末材料が舞い上がっても、例えば粉末材料供給用のローラなどで薄層周辺の粉末材料を均して表面を平滑にすることで、薄層及びその周辺の粉末材料を迅速に冷却し、かつその後直ちに次の薄層の形成を行うことができる。
【0014】
また、液状の冷媒を用いた場合、薄層の表面に冷媒を散布して冷媒が蒸発するときに冷媒によって薄層から熱を奪わせることにより薄層を冷却することができる。
【0015】
また、他の冷却手段として、焼結させた薄層への接触面を有する冷却板を用い、冷却板を冷却して、或いは粉末材料供給用のローラを冷却して薄層にその接触面を接触させ、薄層を冷却してもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、一層又は適当な複数層の薄層を加熱焼結するたび毎に、それらを冷却しているが、冷却対象物の熱容量は小さいので、短時間に冷却することができる。しかも、この様な方法を続けることで、3次元造形物の完成時でも3次元造形物の温度は低いままであるため、ブレークアウトに取り掛かるまでの時間を大幅に短縮することができる。このように、造形途中の冷却時間を含めて、完成した3次元造形物を取り出すまでに要する時間を大幅に短縮することができ、これにより、システム運用上の効率化を図ることができる。
【0017】
また、3次元造形物には急冷による大きな内部応力は発生しないので、精度の良いモデルを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(粉末焼結造形装置の説明)
図1は、本発明の実施の形態に係る粉末焼結造形装置の構成を示す斜視図である。
【0020】
この粉末焼結造形装置101は、レーザ光出射部101Aと、造形部101Bと、制御装置101Cとから構成されている。
【0021】
レーザ光出射部101Aにおいては、レーザ光の光源1とレーザ光の照射方向を制御するミラー2とが設けられている。光源1から出射したレーザ光はコンピュータによるミラー制御により、造形部101Bのパートシリンダ6上の粉末材料8の薄層に選択的に照射されるようになっている。例えば、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、コンピュータによるミラー制御が行われる。レーザ光の光源1とミラー2とが加熱焼結手段を構成する。
【0022】
造形部101Bにおいては、その上でレーザ光の照射により造形が行われ、3次元造形物が作製される昇降可能なパートシリンダ(作業台)6が中央部容器4内に設置され、その両側に粉末材料を貯めておく容器3a、3b内に粉末材料8を載せて昇降可能なフィードシリンダ5a、5bがそれぞれ設置されている。更に、それらの全領域に渡って回転しつつ移動するリコータローラ(薄層形成手段)7が設けられている。リコータローラ7 は、回転しつつ移動することにより、フィードシリンダ5b上に貯められた粉末材料8をパートシリンダ6上に供給し、かつ粉末材料8の表面を均してパートシリンダ6上に粉末材料8の薄層8aを形成する機能を有する。従って、粉末材料8の供給量はフィードシリンダ5bの上昇量で決まり、粉末材料の薄層8aの厚さはパートシリンダ6の降下量で決まる。粉末材料8として、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリルにトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0023】
また、パートシリンダ8上方には、パートシリンダ8に対向する平面を有する冷媒ガイド11が配置されており、パートシリンダ6上の薄層8b及びその周囲に残留する粉末材料8の表面と冷媒ガイド11の対向平面との間に冷媒の流路が形成される。冷媒としてガス状の冷媒、例えば、冷却空気や冷却窒素などを用いる。配管13の先に図示しない冷媒の供給源が接続され、冷媒が冷媒の流路に導入できるようになっている。冷媒ガイド11は上下移動及び平面内での移動が可能になっている。冷媒ガイド11を上下移動させることによって、パートシリンダ6上の薄層8b及びその周囲に残留する粉末材料8の表面と冷媒ガイド11の対向平面との間の間隔を調節し得るようになっている。また、平面内で移動させることによって粉末材料の薄層8aへのレーザ光の照射を妨げないようになっている。
【0024】
次に、冷媒ガイド11の構成及び冷媒ガイド11による冷媒の流速の制御方法について図2(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0025】
冷媒ガイド11は、上から見た形状が図1に示すように四角い形状を有し、横から見た断面形状が図2(a)、(b)に示すように底の浅いバスタブの断面のような形状を有している。この形状は、造形部101Bの左側のフィードシリンダ5a、中央部のパートシリンダ6、右側のフィードシリンダ5bの配置に対応するものである。即ち、冷媒ガイド11は、パートシリンダ6に対応する部分がバスタブの底面に相当して平坦な面を有し、その平坦な面は少なくともパートシリンダ6の上面と同じ大きさを有する。フィードシリンダ5a、5bに対応する部分がバスタブの周辺に相当して底面から曲線を描くように持ち上がっている。この場合、左側のフィードシリンダ5aに対応する部分は、横から見て冷媒が逃げないようにお椀を伏せたような断面形状を有し、そのほぼ頂部に冷媒の導入口12が設けられている。一方、右側のフィードシリンダ5bに対応する部分は冷媒が放散するように開放されて、冷媒の流出口14となっている。
【0026】
冷媒ガイド11は平坦な面がパートシリンダ6に対向するようにおかれる。冷媒ガイド11の平坦な面とパートシリンダ6上に置かれる薄層8b及び粉末材料8aの表面との間に流路が形成される。冷媒の流速を調整するため、その流路の高さが調整される。冷媒は、図2(a)の左側の冷媒の導入口12から導入され、冷媒ガイド11の平坦な面の下の流路を通って右側の冷媒の流出口14に流れていく。
【0027】
本願発明者の風洞実験によれば、レイノルズナンバ(Re)が凡そ1700以下になるようにすると、層流が得られ、レイノルズナンバ(Re)が凡そ1700以上になると、乱流が生じた。この実験で明らかになったことは、層流で粉末の表面を冷却可能であること、乱流によって粉末が舞い上がることである。
【0028】
本願発明では、冷媒ガイド11を用いて冷媒を流す場合、粉末材料8aが舞い上がらないように冷媒の流れが層流となるように、冷媒ガイド11の平坦面下の冷媒の流路の高さを調整する。
【0029】
制御装置101Cは、パートシリンダ6を薄層一層分降下させて、リコータローラ7によってパートシリンダ6上に粉末材料8を供給させ、かつパートシリンダ6上で粉末材料の薄層8aを形成させ、次いで、レーザ光及び制御ミラー2(加熱焼結手段)によって作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき粉末材料の薄層8aを選択的に加熱して焼結させ、次いで、加熱して焼結した薄層8bを一層或いは複数層積み重ねたものを冷却手段によって冷却させる。
【0030】
(他の冷却手段)
次に、造形部101Bにおける他の第1乃至第8の冷却手段について、図8乃至図10を参照しながら説明する。
【0031】
図8(a)は他の第1の冷却手段の構成と、レーザ光の照射を妨げないような装置構成の工夫について示す側面図である。
【0032】
他の第1の冷却手段は、冷媒の供給手段と冷媒ガイド11aとで構成される。
【0033】
冷媒ガイド11aは、図8(a)に示すように、パートシリンダ6に対向する平面部分22aが伸縮自在のベローズ23aによって本体21aに取り付けられている。冷媒の流路を形成する場合、押し下げ軸24aによって平面部分22aが下方に移動するようになっている。粉末材料8の供給時、レーザ光の照射時に、平面部分22aが上昇するようになっている。
【0034】
また、レーザ光の照射時に、平面部分22aを上昇させたときに、レーザ光が通過するように、本体21aと平面部分22aにレーザウインドウ25a、25bが設けられている。
【0035】
なお、他の符号は、図1と同じ符号は図1と同じものを示す。
【0036】
図8(b)は他の第2の冷却手段の構成と、冷媒の供給における別の装置構成について示す側面図である。
【0037】
他の第2の冷却手段でも、冷媒の供給手段と冷媒ガイド11bとで構成される。
【0038】
冷媒ガイド11bは、パートシリンダ6に対向する平面部分22bが伸縮自在のベローズ23bによって本体21bに取り付けられている。冷媒の流路を形成する場合、押し下げ軸24bによって平面部分22bが下方に移動するようになっている。粉末材料8の供給時、レーザ光の照射時に、平面部分22bが上昇するようになっている。
【0039】
図8(a)と異なるところは、冷却対象物のあるところ以外に冷媒が流出しないように、深さのある四角いケース26bを逆さまにして必要な領域を覆うようになっていることである。冷媒の導入口12bや流出口14bはベローズ23bを介してケース26bに設けられている。
【0040】
なお、他の符号は、図1と同じ符号は図1と同じものを示す。
【0041】
図9(a)は他の第3の冷却手段における冷媒ガイド11cの設置方法の一例について示す斜視図である。
【0042】
他の第3の冷却手段でも、冷媒の供給手段と冷媒ガイド11cとで構成される。
【0043】
図8(b)と異なるところは、冷媒ガイド11dには、本体と押し下げ軸がなく、深さのある四角いケース26cだけが設けられていることである。そして、四角いケース26cの一辺が固定されている。粉末材料8の供給時、レーザ光の照射時には、固定された一辺の対辺側からケース26cを持ち上げ得るようになっている。
【0044】
図9(a)中、他の符号12cは冷媒の導入口、14cは冷媒の流出口、13cは冷媒の流通するベローズである。他の符号は、図1と同じ符号は図1と同じものを示す。
【0045】
図9(b)は他の第4の冷却手段の構成と、冷媒の供給方法について示す斜視図である。
【0046】
図9(a)と異なるところは、冷却手段全体がリコータローラ7a、7bとともに移動するように作られていることである。なお、図では冷却手段をリコータローラ7a、7bに固定する手段は省略されているが、例えば、リコータローラ7a、7bの中心に挿入される支持軸に冷却手段を固定することなどができる。
【0047】
図9(b)中、他の符号26dは深さのある四角いケース、22dはパートシリンダ6に対向するケース26dの平面部分、13dは冷媒の流通するベローズ、27は冷媒をケース26dに導く、板で囲まれた流通路である。
【0048】
図10(a)は他の第5の冷却手段の構成と、冷却方法について説明する側面図である。
【0049】
他の第1乃至第4の冷却手段では、ガス状の冷媒の供給手段、及び冷媒の流速調整のための冷媒ガイド11a乃至11dを用いているが、図10(a)に示すようなガス状の冷媒の供給手段27aのみでもよい。この場合、冷媒の吐出により粉末材料8aは舞い上がるが、舞い上がったために凹凸した粉末材料8aの表面をリコータローラ7を用いて均す。その後、次の粉末材料の薄層を形成するため、パートシリンダ6を降下させて新たな粉末材料を供給する。図10(a)中、他の符号12eは冷媒の導入口である。
【0050】
図10(b)は第5の冷却手段の変形例の構成を示す側面図である。図10(b)の冷却手段は、リコータローラ7c、7dを2つ備えている。それらの回転軸としてその中を冷媒が流通するパイプが用いられ、それらのパイプに冷媒の供給配管27bの冷媒の導入口12f、12gが接続されている。リコータローラ7c、7dは適当な間隔を保持して粉末材料8a上を自転しつつ移動可能なようになっている。2つのリコータローラ7c、7dで粉末材料の供給と粉末材料表面の平坦化を行う。
【0051】
図10(a)、図10(b)に示す冷却手段は、他の冷却手段と異なり、粉末材料を意図的に舞い上がらせることで効率的な冷却が期待できるが、冷却しようとする薄層又はこれまでに積み重ねてきた複数の薄層の積層物が小さいときには、冷媒の吐出により薄層又は薄層の積層物が舞い上がる恐れがあるので、その場合に限り、冷媒の流速を調節し、流速を弱めるなどの配慮が必要である。
【0052】
上記図面で説明した冷却手段以外にも以下のような他の第6乃至第8の冷却手段を用いることができる。
【0053】
他の第6の冷却手段として、液状の冷媒の供給手段を用いてもよい。液状の冷媒として代替フロン、アルコール、水、液体空気などを用いることができる。この場合、加熱し焼結させた薄層の表面に冷媒を散布して冷媒が蒸発するときにその薄層から熱が奪われることにより薄層を冷却することができる。
【0054】
また、他の第7の冷却手段として、リコータローラを冷却することにより、リコータローラ自身に冷却手段の機能を兼ねさせることもできる。
【0055】
また、他の第8の冷却手段として、加熱して焼結した薄層への接触面を有する冷却板を新たに設けることもできる。この場合、冷却板を冷却してその接触面を薄層に接触させて薄層を冷却する。また、例えば、図8(a)のような冷媒ガイドにその機能を兼ねさせてもよい。
【0056】
以上の図1、及び他の第1乃至第8の冷却手段で実現される冷却方法は、図4のP4−1、P4−2、P4−3、P4−4に示す4種類の冷却方法のうち何れか一に該当する。まとめると以下のようになる。
【0057】
図1、及び他の第1乃至第4の冷却手段で実現される冷却方法はP4−1に該当し、他の第5の冷却手段で実現される冷却方法はP4−2に該当し、他の第6の冷却手段で実現される冷却方法はP4−3に該当し、他の第7、8の冷却手段で実現される冷却方法はP4−4に該当する。
【0058】
以上のような粉末焼結造形装置101によれば、加熱して焼結した薄層を一層或いは複数層積み重ねたものを冷却手段によって冷却させる制御手段を有している。即ち、一層又は適当な複数層の薄層を加熱して焼結するたび毎に、それらを冷却している。
【0059】
この場合、冷却対象物の熱容量は小さいので、冷却対象物の温度を短時間で降下させることができる。しかも、この様な方法を続けることで、3次元造形物の完成時でも3次元造形物の温度は低いままである。これにより、ブレークアウトに要する時間を短縮することができる。以上、造形途中の冷却時間を含めて、完成した造形物を取り出すまでに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0060】
また、内部応力に関しては、それまでに既に造形された途中物を予熱しなくても、一層又は適当な複数層の薄層毎に冷却しているため、ケーキ内部と外部との間の温度勾配による応力が発生するのを防止することができる。
【0061】
(粉末焼結造形方法の説明)
次に、図3、図5乃至図7を参照してこの発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について説明する。図3は粉末焼結造形方法を示すフローチャート、図5乃至図7は、粉末焼結造形方法を示す工程断面図である。この場合、図1の粉末焼結造形装置を用い、冷媒としてガス状の冷媒を用いるものとする。
【0062】
まず、図5(a)に示すように、造形部101Bにおいて、左右のフィードシリンダ5a、5bを降下させ、フィードシリンダ5a、5b上に粉末材料8を供給し、十分な量の粉末材料8を貯めておく。
【0063】
次いで、図5(b)に示すように、パートシリンダ6を薄層一層分に相当する量だけ降下させる(図3のP1工程)。次いで、右側のフィードシリンダ5bを上昇させて粉末材料8が平坦面から上に出てくるようにする。
【0064】
次いで、図5(c)に示すように、リコータローラ7を回転移動させて右側のフィードシリンダ3b上、平坦面から上に出ている粉末材料8を均しつつパートシリンダ6上に移動させる。これにより、図6(a)に示すように、パートシリンダ6上に一層分の粉末材料の薄層8aが形成される(図3のP2工程)。
【0065】
次に、図6(b)に示すように、レーザ光出射部101Aの光源1からレーザ光を出射させるとともに、作製すべき3次元造形物のスライスデータに基づき、コンピュータによりミラー2を制御して、粉末材料の薄層8aに選択的にレーザ光を照射する。これにより、粉末材料の薄層8bが加熱されて焼結する(図3のP3工程)。
【0066】
次に、図6(c)に示すように、冷媒ガイド11をパートシリンダ6上に移動させ、さらに降下させて、冷媒ガイド11の平坦な面とパートシリンダ6上に置かれている焼結した薄層8b及びその周囲に残留する粉末材料8aの表面との間に形成される流路の高さを調整する。この場合、流路を流れる冷媒に層流が生じるように流路の高さを調整する。例えば、その高さを10mm程度にする。
【0067】
次に、冷媒の導入口12から流路に冷媒を流し、パートシリンダ6上の焼結した薄層8b及びその周囲に残留する粉末材料8aを冷却する(図3のP4工程)。この場合、冷媒の流れは層流となるので、薄層8b周辺の粉末材料8aは舞い上がらずにそのままの状態を維持できる。特に、小さい造形物を作製する場合、粉末材料を舞い上がらせてパートシリンダ6上で再分布させたくない場合などに有効である。
【0068】
また、一層の薄層からなる冷却対象物の熱容量は小さいので、冷却対象物の温度を短時間で降下させることができる。内部応力に関しては、それまでに既に造形された途中物を予熱しなくても、一層の薄層毎に冷却しているため、ケーキ内部と外部との間の温度勾配による応力が発生するのを防止することができる。
【0069】
次に、図7(a)に示すように、パートシリンダ6を薄層一層分降下させるとともに、フィードシリンダ5bを上昇させる。以下、上記説明した方法と同様にして、新たな粉末材料8をパートシリンダ6上に供給し、図7(b)に示すように、焼結した薄層8b上に新たな粉末材料の薄層8aを形成する。次いで、図6(b)、(c)、図7(a)、(b)に示すような方法と同じようにして、加熱焼結→冷却→粉末材料の薄層8aの形成→加熱焼結→・・を繰り返す。
【0070】
このようにして、3次元造形物が完成する。このとき、3次元造形物の完成直後においても3次元造形物の温度は低いままである。従って、3次元造形物の完成後、時間をおかずに3次元造形物を取り出すことができる。
【0071】
以上のように、本発明の実施形態に係る粉末焼結造形方法においては、加熱して焼結した薄層を一層積み重ねるごとに冷却している。この場合、冷却対象物の熱容量は小さいので、冷却対象物の温度を短時間で降下させることができる。しかも、この様な方法を続けることで、3次元造形物の完成直後においても3次元造形物の温度は低いままである。これにより、ブレークアウトに取り掛かるまでの時間を短縮することができる。以上、造形途中の冷却時間を含めて、完成した造形物を取り出すまでに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0072】
また、内部応力に関しては、薄層の状態で急冷することにより造形物の内部と外部との間での温度勾配による大きな内部応力が発生するのを防止することができるため、精度の良いモデルを作製することができる。
【0073】
以上、実施の形態によりこの発明を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0074】
例えば、この実施の形態の粉末焼結造形方法においては、図6(b)、(c)、図7(a)、(b)に示すように、一層の薄層8aを加熱し焼結するごとに冷却しているが、冷却前に、薄層形成及び加熱焼結を複数回繰り返して熱容量があまり大きくならない範囲で適当な複数層の薄層を形成し、その後その複数層の薄層をまとめて冷却してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置の冷却手段の構成と冷却手段の冷媒ガイドの設置の仕方とについて示す断面図である。(b)は、冷却手段の冷媒ガイドを用いて層流及び乱流を作る方法とについて説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法における冷却方法について示す図である。
【図5】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について示す断面図(その1)である。
【図6】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について示す断面図(その2)である。
【図7】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について示す断面図(その3)である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置における他の第1、第2の冷却手段の構成について示す側面図である。
【図9】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置における他の第3、第4の冷却手段の構成について示す斜視図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置における他の第5の冷却手段及びその変形例の構成について示す側面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 レーザ光の光源(レーザ光出射手段)
2 ミラー(レーザ光出射手段)
3a、3b、4 容器
5a、5b フィードシリンダ
6 パートシリンダ(作業台)
7、7a、7b、7c、7d リコータローラ(薄層形成手段)
8 粉末材料
8a 粉末材料の薄層
8b 焼結した薄層
11、11a、11b、11c、11d 冷媒ガイド
12、12a、12b、12c、12e、12f、12g 冷媒の導入口
14、14a、14b、14c 冷媒の流出口
101A レーザ光出射部
101B 造形部
101C 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末焼結造形装置及び粉末焼結造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末焼結造形装置は、3次元造形物の断面形状に合わせて粉末材料を逐次溶融焼結して3次元造形物を自動的に作成する装置である。この装置を用いた粉末焼結造形法(SLS法)によれば、予め作製すべき3次元造形物のスライスデータを作成しておき、粉末材料の薄層を形成し、その薄層に対してスライスデータに基づきレーザで描画加熱を行い、粉末の粒子を相互に融着させて焼結した薄層を形成し、更にこれら工程を繰り返すことにより、複数の焼結した薄層を積層して3次元造形物を作製している。造形物は未硬化の粉末材料の固まり(ケーキ)の中に埋まった状態で得られるので、最後にその中から造形物を
掘り出す。この作業を「ブレークアウト」と呼んでいる。
【0003】
上記の粉末焼結造形方法においては、薄層間の内部応力を低く維持しつつ造形に要する時間を短縮するため、粉末材料を予熱するのが一般的である。予熱温度が高い場合、ブレークアウトはケーキの温度の低下を待ってから行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、造形物の大型化が望まれるようになってきている。この場合、造形物が大型化されると、その放熱に要する時間が著しく長くなり(おそらく、寸法の2乗に比例する)、その結果としてシステム運用上の非効率を招くという恐れがある。
【0005】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、薄層間の内部応力を低く維持しつつ、造形に要する時間及び完成した造形物を取り出すまでに要する時間を短縮することができる粉末焼結造形装置及び粉末焼結造形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の発明は粉末焼結造形方法に係り、粉末材料の薄層を焼結し、積層して3次元造形物を作製する粉末焼結造形方法であって、一つの前記薄層ごとに選択的に加熱して焼結し、該焼結した一層の薄層ごとに、或いは該焼結した複数の薄層ごとに、該焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、冷却することを特徴とし、
第2の発明は、粉末焼結造形方法に係り(i)作業台上に粉末材料を供給し、該粉末材料を延べ広げて粉末材料の薄層を形成する工程と、(ii)前記粉末材料の薄層を描画パターンに基づき選択的に加熱して焼結する工程と、(iii)前記加熱して焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、前記加熱して焼結した薄層の表面にガス状又は液状の冷媒を流して、前記加熱して焼結した薄層を冷却する工程とを有し、前記(i)乃至(iii)の工程を繰り返し行い、前記焼結した薄層を積み重ねて3次元造形物を作製することを特徴とし、
第3の発明は、第2の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記(i)乃至(ii)の工程を繰り返して、前記(iii)の工程の前に加熱して焼結した複数の薄層を形成することを特徴とし、
第4の発明は、第2の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を、前記冷媒の流れが層流となるような範囲に維持することを特徴とし、
第5の発明は、第2の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を、前記冷媒の流れが乱流となるような範囲に維持し、かつ造形途中の前記薄層又は積み重ねられた薄層が舞い上がらないように調節することを特徴とし、
第6の発明は、第5の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を前記冷媒の流れが乱流となるような範囲に維持し、前記薄層の表面に前記冷媒を流して前記薄層を冷却した後、前記薄層周辺の粉末材料を均して表面を平滑にすることを特徴とし、
第7の発明は、第2の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記冷媒は液状を有し、前記薄層の表面に前記冷媒を散布して前記冷媒が蒸発するときに該冷媒によって前記薄層から熱を奪わせることにより該薄層を冷却することを特徴とし、
第8の発明は、第1又は第2の何れか1項の発明の粉末焼結造形方法に係り、前記粉末材料は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリルにトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とし、
第9の発明は、粉末焼結造形装置に係り、作業台と、前記作業台の降下手段と、前記作業台上に粉末材料の薄層を形成する薄層形成手段と、一層の前記粉末材料の薄層ごとに選択的に加熱して焼結する加熱焼結手段と、ガス状又は液状の冷媒を流して前記加熱して焼結した薄層を冷却する冷却手段と、前記作業台を下げて該作業台上に前記粉末材料の薄層を形成させ、一層の該粉末材料の薄層ごとに描画パターンに基づき選択的に加熱して焼結させ、該焼結した一層の薄層ごとに、或いは該焼結した複数の薄層ごとに、前記焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、前記焼結した薄層の表面に前記冷却手段からガス状又は液状の冷媒を流して、冷却させる制御手段とを有することを特徴としている。
【0007】
以下に、上記本発明の構成に基づく作用について説明する。
【0008】
本発明においては、加熱して焼結した薄層を、一層或いは複数層、積み重ねたものを冷却手段によって冷却させる制御手段を有している。即ち、一層又は適当な複数層の薄層を加熱焼結するたび毎に、それらを冷却している。
【0009】
この場合、冷却対象物の熱容量は小さいので、冷却対象物の温度を短時間で降下させることができる。しかも、この様な方法を続けることで、3次元造形物の完成時でも3次元造形物の温度は低いままである。これにより、冷却のための待ち時間なしで、完成した造形物をすぐに取り出すことができる。以上、造形途中の冷却時間を含めて、完成した造形物を取り出すまでに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0010】
また、内部応力に関しては、それまでに既に造形された途中物を予熱しなくても、一層又は適当な複数層の薄層毎に冷却しているため、ケーキ内部と外部との間の温度勾配による応力が発生するのを防止することができる。
【0011】
冷却手段として、薄層の表面にガス状及び液状の冷媒を流す手段を有している。
【0012】
特に、ガス状の冷媒を用いた場合、作業台の上方に少なくとも作業台に対向する平面が上下移動可能なように設置された冷媒ガイドを有し、作業台と冷媒ガイドの平面との間に冷媒を流すようにしている。この構成において、作業台と冷媒ガイドの平面との間の間隔を調整することで、冷媒の流れが層流となるように調節することができる。これにより、乱流を防止して、未硬化の粉末材料や造形途中の薄層又は積み重ねられた薄層が舞い上がるのを抑制することができる。また、場合により冷媒の流速を乱流が生じる流速に維持してもよい。これにより、冷却効果が一層増す。この場合、造形途中の薄層又は積み重ねられた薄層が舞い上がらないように、流速を調節し、弱める必要がある。
【0013】
さらに、冷媒ガイドを設けずに加熱して焼結させた薄層に冷媒を直接吹きかけて冷却してもよい。この場合、周辺の未硬化の粉末材料が舞い上がっても、例えば粉末材料供給用のローラなどで薄層周辺の粉末材料を均して表面を平滑にすることで、薄層及びその周辺の粉末材料を迅速に冷却し、かつその後直ちに次の薄層の形成を行うことができる。
【0014】
また、液状の冷媒を用いた場合、薄層の表面に冷媒を散布して冷媒が蒸発するときに冷媒によって薄層から熱を奪わせることにより薄層を冷却することができる。
【0015】
また、他の冷却手段として、焼結させた薄層への接触面を有する冷却板を用い、冷却板を冷却して、或いは粉末材料供給用のローラを冷却して薄層にその接触面を接触させ、薄層を冷却してもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、一層又は適当な複数層の薄層を加熱焼結するたび毎に、それらを冷却しているが、冷却対象物の熱容量は小さいので、短時間に冷却することができる。しかも、この様な方法を続けることで、3次元造形物の完成時でも3次元造形物の温度は低いままであるため、ブレークアウトに取り掛かるまでの時間を大幅に短縮することができる。このように、造形途中の冷却時間を含めて、完成した3次元造形物を取り出すまでに要する時間を大幅に短縮することができ、これにより、システム運用上の効率化を図ることができる。
【0017】
また、3次元造形物には急冷による大きな内部応力は発生しないので、精度の良いモデルを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
(粉末焼結造形装置の説明)
図1は、本発明の実施の形態に係る粉末焼結造形装置の構成を示す斜視図である。
【0020】
この粉末焼結造形装置101は、レーザ光出射部101Aと、造形部101Bと、制御装置101Cとから構成されている。
【0021】
レーザ光出射部101Aにおいては、レーザ光の光源1とレーザ光の照射方向を制御するミラー2とが設けられている。光源1から出射したレーザ光はコンピュータによるミラー制御により、造形部101Bのパートシリンダ6上の粉末材料8の薄層に選択的に照射されるようになっている。例えば、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、コンピュータによるミラー制御が行われる。レーザ光の光源1とミラー2とが加熱焼結手段を構成する。
【0022】
造形部101Bにおいては、その上でレーザ光の照射により造形が行われ、3次元造形物が作製される昇降可能なパートシリンダ(作業台)6が中央部容器4内に設置され、その両側に粉末材料を貯めておく容器3a、3b内に粉末材料8を載せて昇降可能なフィードシリンダ5a、5bがそれぞれ設置されている。更に、それらの全領域に渡って回転しつつ移動するリコータローラ(薄層形成手段)7が設けられている。リコータローラ7 は、回転しつつ移動することにより、フィードシリンダ5b上に貯められた粉末材料8をパートシリンダ6上に供給し、かつ粉末材料8の表面を均してパートシリンダ6上に粉末材料8の薄層8aを形成する機能を有する。従って、粉末材料8の供給量はフィードシリンダ5bの上昇量で決まり、粉末材料の薄層8aの厚さはパートシリンダ6の降下量で決まる。粉末材料8として、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリルにトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0023】
また、パートシリンダ8上方には、パートシリンダ8に対向する平面を有する冷媒ガイド11が配置されており、パートシリンダ6上の薄層8b及びその周囲に残留する粉末材料8の表面と冷媒ガイド11の対向平面との間に冷媒の流路が形成される。冷媒としてガス状の冷媒、例えば、冷却空気や冷却窒素などを用いる。配管13の先に図示しない冷媒の供給源が接続され、冷媒が冷媒の流路に導入できるようになっている。冷媒ガイド11は上下移動及び平面内での移動が可能になっている。冷媒ガイド11を上下移動させることによって、パートシリンダ6上の薄層8b及びその周囲に残留する粉末材料8の表面と冷媒ガイド11の対向平面との間の間隔を調節し得るようになっている。また、平面内で移動させることによって粉末材料の薄層8aへのレーザ光の照射を妨げないようになっている。
【0024】
次に、冷媒ガイド11の構成及び冷媒ガイド11による冷媒の流速の制御方法について図2(a)、(b)を参照しながら説明する。
【0025】
冷媒ガイド11は、上から見た形状が図1に示すように四角い形状を有し、横から見た断面形状が図2(a)、(b)に示すように底の浅いバスタブの断面のような形状を有している。この形状は、造形部101Bの左側のフィードシリンダ5a、中央部のパートシリンダ6、右側のフィードシリンダ5bの配置に対応するものである。即ち、冷媒ガイド11は、パートシリンダ6に対応する部分がバスタブの底面に相当して平坦な面を有し、その平坦な面は少なくともパートシリンダ6の上面と同じ大きさを有する。フィードシリンダ5a、5bに対応する部分がバスタブの周辺に相当して底面から曲線を描くように持ち上がっている。この場合、左側のフィードシリンダ5aに対応する部分は、横から見て冷媒が逃げないようにお椀を伏せたような断面形状を有し、そのほぼ頂部に冷媒の導入口12が設けられている。一方、右側のフィードシリンダ5bに対応する部分は冷媒が放散するように開放されて、冷媒の流出口14となっている。
【0026】
冷媒ガイド11は平坦な面がパートシリンダ6に対向するようにおかれる。冷媒ガイド11の平坦な面とパートシリンダ6上に置かれる薄層8b及び粉末材料8aの表面との間に流路が形成される。冷媒の流速を調整するため、その流路の高さが調整される。冷媒は、図2(a)の左側の冷媒の導入口12から導入され、冷媒ガイド11の平坦な面の下の流路を通って右側の冷媒の流出口14に流れていく。
【0027】
本願発明者の風洞実験によれば、レイノルズナンバ(Re)が凡そ1700以下になるようにすると、層流が得られ、レイノルズナンバ(Re)が凡そ1700以上になると、乱流が生じた。この実験で明らかになったことは、層流で粉末の表面を冷却可能であること、乱流によって粉末が舞い上がることである。
【0028】
本願発明では、冷媒ガイド11を用いて冷媒を流す場合、粉末材料8aが舞い上がらないように冷媒の流れが層流となるように、冷媒ガイド11の平坦面下の冷媒の流路の高さを調整する。
【0029】
制御装置101Cは、パートシリンダ6を薄層一層分降下させて、リコータローラ7によってパートシリンダ6上に粉末材料8を供給させ、かつパートシリンダ6上で粉末材料の薄層8aを形成させ、次いで、レーザ光及び制御ミラー2(加熱焼結手段)によって作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき粉末材料の薄層8aを選択的に加熱して焼結させ、次いで、加熱して焼結した薄層8bを一層或いは複数層積み重ねたものを冷却手段によって冷却させる。
【0030】
(他の冷却手段)
次に、造形部101Bにおける他の第1乃至第8の冷却手段について、図8乃至図10を参照しながら説明する。
【0031】
図8(a)は他の第1の冷却手段の構成と、レーザ光の照射を妨げないような装置構成の工夫について示す側面図である。
【0032】
他の第1の冷却手段は、冷媒の供給手段と冷媒ガイド11aとで構成される。
【0033】
冷媒ガイド11aは、図8(a)に示すように、パートシリンダ6に対向する平面部分22aが伸縮自在のベローズ23aによって本体21aに取り付けられている。冷媒の流路を形成する場合、押し下げ軸24aによって平面部分22aが下方に移動するようになっている。粉末材料8の供給時、レーザ光の照射時に、平面部分22aが上昇するようになっている。
【0034】
また、レーザ光の照射時に、平面部分22aを上昇させたときに、レーザ光が通過するように、本体21aと平面部分22aにレーザウインドウ25a、25bが設けられている。
【0035】
なお、他の符号は、図1と同じ符号は図1と同じものを示す。
【0036】
図8(b)は他の第2の冷却手段の構成と、冷媒の供給における別の装置構成について示す側面図である。
【0037】
他の第2の冷却手段でも、冷媒の供給手段と冷媒ガイド11bとで構成される。
【0038】
冷媒ガイド11bは、パートシリンダ6に対向する平面部分22bが伸縮自在のベローズ23bによって本体21bに取り付けられている。冷媒の流路を形成する場合、押し下げ軸24bによって平面部分22bが下方に移動するようになっている。粉末材料8の供給時、レーザ光の照射時に、平面部分22bが上昇するようになっている。
【0039】
図8(a)と異なるところは、冷却対象物のあるところ以外に冷媒が流出しないように、深さのある四角いケース26bを逆さまにして必要な領域を覆うようになっていることである。冷媒の導入口12bや流出口14bはベローズ23bを介してケース26bに設けられている。
【0040】
なお、他の符号は、図1と同じ符号は図1と同じものを示す。
【0041】
図9(a)は他の第3の冷却手段における冷媒ガイド11cの設置方法の一例について示す斜視図である。
【0042】
他の第3の冷却手段でも、冷媒の供給手段と冷媒ガイド11cとで構成される。
【0043】
図8(b)と異なるところは、冷媒ガイド11dには、本体と押し下げ軸がなく、深さのある四角いケース26cだけが設けられていることである。そして、四角いケース26cの一辺が固定されている。粉末材料8の供給時、レーザ光の照射時には、固定された一辺の対辺側からケース26cを持ち上げ得るようになっている。
【0044】
図9(a)中、他の符号12cは冷媒の導入口、14cは冷媒の流出口、13cは冷媒の流通するベローズである。他の符号は、図1と同じ符号は図1と同じものを示す。
【0045】
図9(b)は他の第4の冷却手段の構成と、冷媒の供給方法について示す斜視図である。
【0046】
図9(a)と異なるところは、冷却手段全体がリコータローラ7a、7bとともに移動するように作られていることである。なお、図では冷却手段をリコータローラ7a、7bに固定する手段は省略されているが、例えば、リコータローラ7a、7bの中心に挿入される支持軸に冷却手段を固定することなどができる。
【0047】
図9(b)中、他の符号26dは深さのある四角いケース、22dはパートシリンダ6に対向するケース26dの平面部分、13dは冷媒の流通するベローズ、27は冷媒をケース26dに導く、板で囲まれた流通路である。
【0048】
図10(a)は他の第5の冷却手段の構成と、冷却方法について説明する側面図である。
【0049】
他の第1乃至第4の冷却手段では、ガス状の冷媒の供給手段、及び冷媒の流速調整のための冷媒ガイド11a乃至11dを用いているが、図10(a)に示すようなガス状の冷媒の供給手段27aのみでもよい。この場合、冷媒の吐出により粉末材料8aは舞い上がるが、舞い上がったために凹凸した粉末材料8aの表面をリコータローラ7を用いて均す。その後、次の粉末材料の薄層を形成するため、パートシリンダ6を降下させて新たな粉末材料を供給する。図10(a)中、他の符号12eは冷媒の導入口である。
【0050】
図10(b)は第5の冷却手段の変形例の構成を示す側面図である。図10(b)の冷却手段は、リコータローラ7c、7dを2つ備えている。それらの回転軸としてその中を冷媒が流通するパイプが用いられ、それらのパイプに冷媒の供給配管27bの冷媒の導入口12f、12gが接続されている。リコータローラ7c、7dは適当な間隔を保持して粉末材料8a上を自転しつつ移動可能なようになっている。2つのリコータローラ7c、7dで粉末材料の供給と粉末材料表面の平坦化を行う。
【0051】
図10(a)、図10(b)に示す冷却手段は、他の冷却手段と異なり、粉末材料を意図的に舞い上がらせることで効率的な冷却が期待できるが、冷却しようとする薄層又はこれまでに積み重ねてきた複数の薄層の積層物が小さいときには、冷媒の吐出により薄層又は薄層の積層物が舞い上がる恐れがあるので、その場合に限り、冷媒の流速を調節し、流速を弱めるなどの配慮が必要である。
【0052】
上記図面で説明した冷却手段以外にも以下のような他の第6乃至第8の冷却手段を用いることができる。
【0053】
他の第6の冷却手段として、液状の冷媒の供給手段を用いてもよい。液状の冷媒として代替フロン、アルコール、水、液体空気などを用いることができる。この場合、加熱し焼結させた薄層の表面に冷媒を散布して冷媒が蒸発するときにその薄層から熱が奪われることにより薄層を冷却することができる。
【0054】
また、他の第7の冷却手段として、リコータローラを冷却することにより、リコータローラ自身に冷却手段の機能を兼ねさせることもできる。
【0055】
また、他の第8の冷却手段として、加熱して焼結した薄層への接触面を有する冷却板を新たに設けることもできる。この場合、冷却板を冷却してその接触面を薄層に接触させて薄層を冷却する。また、例えば、図8(a)のような冷媒ガイドにその機能を兼ねさせてもよい。
【0056】
以上の図1、及び他の第1乃至第8の冷却手段で実現される冷却方法は、図4のP4−1、P4−2、P4−3、P4−4に示す4種類の冷却方法のうち何れか一に該当する。まとめると以下のようになる。
【0057】
図1、及び他の第1乃至第4の冷却手段で実現される冷却方法はP4−1に該当し、他の第5の冷却手段で実現される冷却方法はP4−2に該当し、他の第6の冷却手段で実現される冷却方法はP4−3に該当し、他の第7、8の冷却手段で実現される冷却方法はP4−4に該当する。
【0058】
以上のような粉末焼結造形装置101によれば、加熱して焼結した薄層を一層或いは複数層積み重ねたものを冷却手段によって冷却させる制御手段を有している。即ち、一層又は適当な複数層の薄層を加熱して焼結するたび毎に、それらを冷却している。
【0059】
この場合、冷却対象物の熱容量は小さいので、冷却対象物の温度を短時間で降下させることができる。しかも、この様な方法を続けることで、3次元造形物の完成時でも3次元造形物の温度は低いままである。これにより、ブレークアウトに要する時間を短縮することができる。以上、造形途中の冷却時間を含めて、完成した造形物を取り出すまでに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0060】
また、内部応力に関しては、それまでに既に造形された途中物を予熱しなくても、一層又は適当な複数層の薄層毎に冷却しているため、ケーキ内部と外部との間の温度勾配による応力が発生するのを防止することができる。
【0061】
(粉末焼結造形方法の説明)
次に、図3、図5乃至図7を参照してこの発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について説明する。図3は粉末焼結造形方法を示すフローチャート、図5乃至図7は、粉末焼結造形方法を示す工程断面図である。この場合、図1の粉末焼結造形装置を用い、冷媒としてガス状の冷媒を用いるものとする。
【0062】
まず、図5(a)に示すように、造形部101Bにおいて、左右のフィードシリンダ5a、5bを降下させ、フィードシリンダ5a、5b上に粉末材料8を供給し、十分な量の粉末材料8を貯めておく。
【0063】
次いで、図5(b)に示すように、パートシリンダ6を薄層一層分に相当する量だけ降下させる(図3のP1工程)。次いで、右側のフィードシリンダ5bを上昇させて粉末材料8が平坦面から上に出てくるようにする。
【0064】
次いで、図5(c)に示すように、リコータローラ7を回転移動させて右側のフィードシリンダ3b上、平坦面から上に出ている粉末材料8を均しつつパートシリンダ6上に移動させる。これにより、図6(a)に示すように、パートシリンダ6上に一層分の粉末材料の薄層8aが形成される(図3のP2工程)。
【0065】
次に、図6(b)に示すように、レーザ光出射部101Aの光源1からレーザ光を出射させるとともに、作製すべき3次元造形物のスライスデータに基づき、コンピュータによりミラー2を制御して、粉末材料の薄層8aに選択的にレーザ光を照射する。これにより、粉末材料の薄層8bが加熱されて焼結する(図3のP3工程)。
【0066】
次に、図6(c)に示すように、冷媒ガイド11をパートシリンダ6上に移動させ、さらに降下させて、冷媒ガイド11の平坦な面とパートシリンダ6上に置かれている焼結した薄層8b及びその周囲に残留する粉末材料8aの表面との間に形成される流路の高さを調整する。この場合、流路を流れる冷媒に層流が生じるように流路の高さを調整する。例えば、その高さを10mm程度にする。
【0067】
次に、冷媒の導入口12から流路に冷媒を流し、パートシリンダ6上の焼結した薄層8b及びその周囲に残留する粉末材料8aを冷却する(図3のP4工程)。この場合、冷媒の流れは層流となるので、薄層8b周辺の粉末材料8aは舞い上がらずにそのままの状態を維持できる。特に、小さい造形物を作製する場合、粉末材料を舞い上がらせてパートシリンダ6上で再分布させたくない場合などに有効である。
【0068】
また、一層の薄層からなる冷却対象物の熱容量は小さいので、冷却対象物の温度を短時間で降下させることができる。内部応力に関しては、それまでに既に造形された途中物を予熱しなくても、一層の薄層毎に冷却しているため、ケーキ内部と外部との間の温度勾配による応力が発生するのを防止することができる。
【0069】
次に、図7(a)に示すように、パートシリンダ6を薄層一層分降下させるとともに、フィードシリンダ5bを上昇させる。以下、上記説明した方法と同様にして、新たな粉末材料8をパートシリンダ6上に供給し、図7(b)に示すように、焼結した薄層8b上に新たな粉末材料の薄層8aを形成する。次いで、図6(b)、(c)、図7(a)、(b)に示すような方法と同じようにして、加熱焼結→冷却→粉末材料の薄層8aの形成→加熱焼結→・・を繰り返す。
【0070】
このようにして、3次元造形物が完成する。このとき、3次元造形物の完成直後においても3次元造形物の温度は低いままである。従って、3次元造形物の完成後、時間をおかずに3次元造形物を取り出すことができる。
【0071】
以上のように、本発明の実施形態に係る粉末焼結造形方法においては、加熱して焼結した薄層を一層積み重ねるごとに冷却している。この場合、冷却対象物の熱容量は小さいので、冷却対象物の温度を短時間で降下させることができる。しかも、この様な方法を続けることで、3次元造形物の完成直後においても3次元造形物の温度は低いままである。これにより、ブレークアウトに取り掛かるまでの時間を短縮することができる。以上、造形途中の冷却時間を含めて、完成した造形物を取り出すまでに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0072】
また、内部応力に関しては、薄層の状態で急冷することにより造形物の内部と外部との間での温度勾配による大きな内部応力が発生するのを防止することができるため、精度の良いモデルを作製することができる。
【0073】
以上、実施の形態によりこの発明を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0074】
例えば、この実施の形態の粉末焼結造形方法においては、図6(b)、(c)、図7(a)、(b)に示すように、一層の薄層8aを加熱し焼結するごとに冷却しているが、冷却前に、薄層形成及び加熱焼結を複数回繰り返して熱容量があまり大きくならない範囲で適当な複数層の薄層を形成し、その後その複数層の薄層をまとめて冷却してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置の冷却手段の構成と冷却手段の冷媒ガイドの設置の仕方とについて示す断面図である。(b)は、冷却手段の冷媒ガイドを用いて層流及び乱流を作る方法とについて説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法における冷却方法について示す図である。
【図5】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について示す断面図(その1)である。
【図6】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について示す断面図(その2)である。
【図7】本発明の実施の形態である粉末焼結造形方法について示す断面図(その3)である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置における他の第1、第2の冷却手段の構成について示す側面図である。
【図9】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置における他の第3、第4の冷却手段の構成について示す斜視図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結造形装置における他の第5の冷却手段及びその変形例の構成について示す側面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 レーザ光の光源(レーザ光出射手段)
2 ミラー(レーザ光出射手段)
3a、3b、4 容器
5a、5b フィードシリンダ
6 パートシリンダ(作業台)
7、7a、7b、7c、7d リコータローラ(薄層形成手段)
8 粉末材料
8a 粉末材料の薄層
8b 焼結した薄層
11、11a、11b、11c、11d 冷媒ガイド
12、12a、12b、12c、12e、12f、12g 冷媒の導入口
14、14a、14b、14c 冷媒の流出口
101A レーザ光出射部
101B 造形部
101C 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料の薄層を焼結し、積層して3次元造形物を作製する粉末焼結造形方法であって、
一つの前記薄層ごとに選択的に加熱して焼結し、該焼結した一層の薄層ごとに、或いは該焼結した複数の薄層ごとに、該焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、冷却することを特徴とする粉末焼結造形方法。
【請求項2】
(i)作業台上に粉末材料を供給し、該粉末材料を延べ広げて粉末材料の薄層を形成する工程と、
(ii)前記粉末材料の薄層を描画パターンに基づき選択的に加熱して焼結する工程と、
(iii)前記加熱して焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、前記加熱して焼結した薄層の表面にガス状又は液状の冷媒を流して、前記加熱して焼結した薄層を冷却する工程とを有し、
前記(i)乃至(iii)の工程を繰り返し行い、前記焼結した薄層を積み重ねて3次元造形物を作製することを特徴とする粉末焼結造形方法。
【請求項3】
前記(i)乃至(ii)の工程を繰り返して、前記(iii)の工程の前に加熱して焼結した複数の薄層を形成することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結造形方法。
【請求項4】
前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を前記冷媒の流れが層流となるような範囲に維持することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結造形方法。
【請求項5】
前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を、前記冷媒の流れが乱流となるような範囲に維持し、かつ造形途中の前記薄層又は積み重ねられた薄層が舞い上がらないように調節することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結造形方法。
【請求項6】
前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を前記冷媒の流れが乱流となるような範囲に維持し、前記薄層の表面に前記冷媒を流して前記薄層を冷却した後、前記薄層周辺の粉末材料を均して表面を平滑にすることを特徴とする請求項5記載の粉末焼結造形方法。
【請求項7】
前記冷媒は液状を有し、前記薄層の表面に前記冷媒を散布して前記冷媒が蒸発するときに該冷媒によって前記薄層から熱を奪わせることにより該薄層を冷却することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結造形方法。
【請求項8】
前記粉末材料は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリルにトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の粉末焼結造形方法。
【請求項9】
作業台と、
前記作業台の降下手段と、
前記作業台上に粉末材料の薄層を形成する薄層形成手段と、
一層の前記粉末材料の薄層ごとに選択的に加熱して焼結する加熱焼結手段と、
ガス状又は液状の冷媒を流して前記加熱して焼結した薄層を冷却する冷却手段と、
前記作業台を下げて該作業台上に前記粉末材料の薄層を形成させ、一層の該粉末材料の薄層ごとに描画パターンに基づき選択的に加熱して焼結させ、該焼結した一層の薄層ごとに、或いは該焼結した複数の薄層ごとに、前記焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、前記焼結した薄層の表面に前記冷却手段からガス状又は液状の冷媒を流して、冷却させる制御手段と
を有することを特徴とする粉末焼結造形装置。
【請求項1】
粉末材料の薄層を焼結し、積層して3次元造形物を作製する粉末焼結造形方法であって、
一つの前記薄層ごとに選択的に加熱して焼結し、該焼結した一層の薄層ごとに、或いは該焼結した複数の薄層ごとに、該焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、冷却することを特徴とする粉末焼結造形方法。
【請求項2】
(i)作業台上に粉末材料を供給し、該粉末材料を延べ広げて粉末材料の薄層を形成する工程と、
(ii)前記粉末材料の薄層を描画パターンに基づき選択的に加熱して焼結する工程と、
(iii)前記加熱して焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、前記加熱して焼結した薄層の表面にガス状又は液状の冷媒を流して、前記加熱して焼結した薄層を冷却する工程とを有し、
前記(i)乃至(iii)の工程を繰り返し行い、前記焼結した薄層を積み重ねて3次元造形物を作製することを特徴とする粉末焼結造形方法。
【請求項3】
前記(i)乃至(ii)の工程を繰り返して、前記(iii)の工程の前に加熱して焼結した複数の薄層を形成することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結造形方法。
【請求項4】
前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を前記冷媒の流れが層流となるような範囲に維持することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結造形方法。
【請求項5】
前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を、前記冷媒の流れが乱流となるような範囲に維持し、かつ造形途中の前記薄層又は積み重ねられた薄層が舞い上がらないように調節することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結造形方法。
【請求項6】
前記冷媒はガス状を有し、前記薄層の表面に流す冷媒の流速を前記冷媒の流れが乱流となるような範囲に維持し、前記薄層の表面に前記冷媒を流して前記薄層を冷却した後、前記薄層周辺の粉末材料を均して表面を平滑にすることを特徴とする請求項5記載の粉末焼結造形方法。
【請求項7】
前記冷媒は液状を有し、前記薄層の表面に前記冷媒を散布して前記冷媒が蒸発するときに該冷媒によって前記薄層から熱を奪わせることにより該薄層を冷却することを特徴とする請求項2記載の粉末焼結造形方法。
【請求項8】
前記粉末材料は、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリルにトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の粉末焼結造形方法。
【請求項9】
作業台と、
前記作業台の降下手段と、
前記作業台上に粉末材料の薄層を形成する薄層形成手段と、
一層の前記粉末材料の薄層ごとに選択的に加熱して焼結する加熱焼結手段と、
ガス状又は液状の冷媒を流して前記加熱して焼結した薄層を冷却する冷却手段と、
前記作業台を下げて該作業台上に前記粉末材料の薄層を形成させ、一層の該粉末材料の薄層ごとに描画パターンに基づき選択的に加熱して焼結させ、該焼結した一層の薄層ごとに、或いは該焼結した複数の薄層ごとに、前記焼結した薄層の上に新たな粉末材料の薄層を形成する前に、前記焼結した薄層の表面に前記冷却手段からガス状又は液状の冷媒を流して、冷却させる制御手段と
を有することを特徴とする粉末焼結造形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−240713(P2011−240713A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192828(P2011−192828)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【分割の表示】特願2005−202779(P2005−202779)の分割
【原出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(504367553)株式会社イマジオム (7)
【出願人】(398018962)株式会社アスペクト (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【分割の表示】特願2005−202779(P2005−202779)の分割
【原出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(504367553)株式会社イマジオム (7)
【出願人】(398018962)株式会社アスペクト (12)
【Fターム(参考)】
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