説明

粉末物品の殺菌法

【課題】 製造工程中及び保存中に生物素材又は生物素材の加工品の品質の劣化が見られず、しかも菌数が少なく、衛生面でも良好な、粉末物品の殺菌方法を提供することを課題とする。
【解決するための手段】 生物素材又は生物素材の加工品から液体溶媒により有効成分を抽出し、または生物素材又は生物素材の加工品に液体溶媒を混合し、乾燥して粉末物品を製造する方法において、液体溶媒の少なくとも一部にエタノールを用いることにより、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、生物素材又は生物素材の加工品から液体溶媒により有効成分を抽出し、または生物素材又は生物素材の加工品に液体溶媒を混合し、乾燥して粉末物品を製造する方法において、物品品質を劣化させない殺菌技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の粉末化は以前から行われている技術であるが、粉末の取り扱いの便宜性や良好な保存性などの利点を持つことから、現在も広く実施されている。特に最近では、難利用性の天然成分、例えば天然香料や天然調味料あるいは天然薬効成分などの利用を目的として、予め調製した目的成分の粉末を利用することが盛んになっており、それらの中で、例えば粉末食品の重要性もさらに増しつつある。現在、大量に生産消費されている緑茶飲料などはその代表的な利用例である。
【0003】
ところで、そのような粉末は、原料として天然物を天然素材に近い形で使用することもあるために、その殺菌には様々な困難が伴った。性状が複雑なことによる殺菌効率の不良、あるいは成分の不安定さによる変質などである。そのために様々な方法が工夫され提案、実施されてきた。
【0004】
粉末物品の殺菌方法としては加熱殺菌法が一般的に行われている。特許文献1には、加熱殺菌の効率を上げて品質劣化を防ぐ方法として、粉末食品の製造方法が提案されている。加熱水蒸気による殺菌方法において、目的とする粉末より大径の粒状補助剤を添加混合し、この混合物を加熱水蒸気の気流中に浮遊移送させながら加熱殺菌した後、粒状補助剤を除去することにより、粉末食品の香味、風味、有効成分等を損なうことなく一般生菌、芽胞菌等を容易に殺菌することができるという。
【0005】
また、香辛料類の殺菌方法として、香辛料又はその破砕乃至粉砕物に酢酸及び丁字油又は桂皮油をエタノール又は含水エタノールに溶解又は分散させた殺菌液を噴霧し、エクストルーダーで加熱する方法も提案されている(特許文献2)。
【0006】
一方、粉末化以前の原料を殺菌する方法として、大根粉末の製造方法が提案されている(特許文献3)。酸性溶液に浸漬して殺菌する工程と、それを凍結乾燥して粉砕する工程を含む製造方法により、製造工程中の菌による汚染防止が成されている。
【特許文献1】特開平8−242807号
【特許文献2】特許公報第2829895号
【特許文献3】特開2004−329006号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から行われてきた一般的な粉末物品の加熱殺菌法では、成分、色、香り、味等、有効成分の散逸変質などを伴い、物品本来の品質を低下させることがある。また、粉末物品には均一加熱が困難であるという根本的な問題がある。
【0008】
前述の、粒状補助剤を加熱媒体として利用する方法には、補助剤が残存し製品の品質を損なう可能性が生じる。
【0009】
また、前述の、香辛料又はその破砕乃至粉砕物に酢酸及び丁字油又は桂皮油をエタノール又は含水エタノールに溶解又は分散させた殺菌液を噴霧し、エクストルーダーで加熱する方法で十分に殺菌する為には、150〜250℃の高温加熱が必要になる為、品質の劣化が生じる可能性がある。また、丁字油又は桂皮油が最終製品に残存するという問題点がある。
【0010】
さらに、前述の、酸性溶液に浸漬して殺菌する工程と、それを凍結乾燥して粉砕する方法では、十分な殺菌効果を得る為に、酸性溶液のpHを2〜4に調整しており、最終製品に有機酸が残存し、品質変化が問題となる可能性がある。
【0011】
そこで、本発明者は、前記のような従来の粉末物品の殺菌方法における問題点を解決するために、製造工程中及び保存中に生物素材又は生物素材の加工品の品質の劣化が見られず、しかも菌数が少なく、衛生面でも良好な、粉末物品の殺菌法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、生物素材又は生物素材の加工品から液体溶媒により有効成分を抽出し、または生物素材又は生物素材の加工品に液体溶媒を混合し、乾燥して粉末物品を製造する方法において、製造工程中及び保存中に生物素材又は生物素材の加工品の品質の劣化が見られず、しかも菌数が少なく、衛生面でも良好な、物品の殺菌方法を提供することを目的とし鋭意検討を行い、課題を解決するための手段として次の各態様を提供した。
【0013】
まず、生物素材又は生物素材の加工品から液体溶媒により有効成分を抽出し、または生物素材又は生物素材の加工品に液体溶媒を混合し、有効成分の抽出液又は液体溶媒を混合した液を濃縮乾燥し、又はそのまま乾燥して、粉末物品を製造する方法において、液体溶媒の少なくとも一部にエタノールを使用することによって、製造工程を利用して効果的に殺菌を行うことを本課題を解決するための手段の第1の態様とした。
【0014】
さらに又、上記第1の態様におけるエタノールの使用量が、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の混合物重量の0.1重量%以上90重量%以下、より好ましくは1重量%以上70重量%以下であることを本課題を解決するための手段の第2の態様とした。
【0015】
さらに又、上記第1または第2の態様において、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の1重量%以上、より好ましくは5重量%以上26重量%以下の食塩を加えたことを本課題を解決するための手段の第3の態様とした。
【0016】
さらに又、上記第1乃至第3の態様において、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の0.1重量%以上95重量%以下、より好ましくは1重量%以上50重量%以下の酢酸を加えたことを本課題を解決するための手段の第4の態様とした。
【0017】
さらに又、上記第1乃至第4の態様において、製造工程において、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の混合物が30℃以上120℃以下、より好ましくは40℃以上 100℃以下で加熱され、それらの温度で加熱される合計時間が0.5分以上120分以下、より好ましくは0.5分以上60分以下であることを本課題を解決するための手段の第5の態様とした。
【0018】
さらに又、上記第1乃至第5の態様において、製造工程が、抽出、混合、濃縮、乾燥よりなる工程の群の何れか1工程以上であることを本課題を解決するための手段の第6の態様とした。
【0019】
さらに又、上記第1乃至第6の態様において、生物素材又は生物素材の加工品が、食品素材又は食品素材の加工品であることを本課題を解決するための手段の第7の態様とした。
【0020】
さらに又、上記第7の態様において、食品素材又は食品素材の加工品が、植物の果実、植物の種子、微生物、菌類、植物体の一部、動物の一部、或いはそれらの加工品からなる群のうちの何れか1以上からなることを本課題を解決するための手段の第8の態様とした。
【0021】
さらに又、上記第1乃至第8の態様において、乾燥工程が噴霧乾燥、ドラム乾燥および熱風乾燥からなる群のうちの何れか1以上によってなされることを本課題を解決するための手段の第9の態様とした。
【0022】
さらに又、上記第1乃至第9の態様において、使用する液体溶媒に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルを含まないことを特徴とすることを本課題を解決するための手段の第10の態様とした。
【0023】
そして最後に、上記第1乃至第10の態様における手段に基づく方法によって製造された物品を本課題を解決するための手段の第11の態様とすることによって本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0024】
本発明者が、生物素材又は生物素材の加工品から液体溶媒により有効成分を抽出し、または生物素材又は生物素材の加工品に液体溶媒を混合し、乾燥して粉末物品を製造する方法において、製造工程中及び保存中に生物素材又は生物素材の加工品の品質の劣化が見られず、しかも菌数が少なく、衛生面でも良好な、粉末物品の殺菌法を提供することを目的とし鋭意検討を行い、課題を解決するために提供した手段の効果は次の通りである。
【0025】
本発明において、生物素材又は生物素材の加工品から液体溶媒により有効成分を抽出し、または生物素材又は生物素材の加工品に液体溶媒を混合し、乾燥して粉末物品を製造する方法において、液体溶媒の少なくとも一部にエタノールを用いることにより、製造工程中及び保存中に生物素材又は生物素材の加工品の品質の劣化をなくすこと、又、菌数が少なく、衛生面でも良好な、物品の殺菌効果の提供が達成された。
【0026】
或いは、本発明において、エタノールの使用量を生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の混合物重量の0.1重量%以上90重量%以下、より好ましくは1重量%以上70重量%以下であることとすることにより、物品の品質に悪影響を与えることなく、かつ確実に殺菌を行うという効果も達成された。
【0027】
或いは又本発明において、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の1重量%以上、より好ましくは5重量%以上26重量%以下の食塩を加えることによって、溶媒に加えられたエタノールと食塩の相乗効果により、より強い殺菌効果が得られること、あるいは有効成分の一部である蛋白質、ペプチドあるいはアミノ酸やその他の成分の安定性が高められ、抽出効率の向上、高品質の維持が図られるという効果も達成された。
【0028】
或いは又本発明において、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の0.1重量%以上95重量%以下、より好ましくは1重量%以上50重量%以下の酢酸を加えることによって、酢酸自体の殺菌効果に加えて、エタノールとの殺菌の相乗効果或いは、食塩が加えられた場合は食塩も含めた殺菌の相乗効果も本発明の効果として達成された。
【0029】
或いは又本発明において、抽出、混合、濃縮、乾燥よりなる工程の群の少なくとも1工程において、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の混合物が30℃以上120℃以下、より好ましくは40℃以上 100℃以下で加熱され、それらの温度で加熱される合計時間が0.5分以上120分以下、より好ましくは0.5分以上60分以下とすることによって、加えられたエタノールや食塩あるいは酢酸などの殺菌効果を助長するとともに、耐熱性の微生物、例えば、好熱性菌、真菌芽胞、細菌芽胞などの殺菌も効果的に行われるという効果も達成された。
【0030】
或いは又、本発明において、生物素材又は生物素材の加工品が、食品素材又は食品素材の加工品であるとすることにより、製造工程中及び保存中に食品素材又は食品素材の加工品の品質の劣化をなくすこと、又、菌数が少なく、衛生面でも良好な食品を製造するという効果も達成された。
【0031】
或いは又、本発明において、食品素材又は食品素材の加工品が、植物の果実、植物の種子、微生物、菌類、植物体の一部、動物の一部、或いはそれらの加工品からなる群のうちの何れか1以上からなることとすることによって、殺菌に課題のある食品素材又は食品素材の加工品の殺菌を効果的に行うことができるという効果も達成された。
【0032】
或いは又、本発明において、乾燥工程が噴霧乾燥、ドラム乾燥および熱風乾燥からなる群のうちの何れか1以上によってなされることとすることによっても、その加熱効果も作用し、製造工程中及び保存中に生物素材又は生物素材の加工品の品質の劣化が見られず、しかも菌数が少なく、衛生面でも良好な粉末物品が得られる殺菌方法を提供するという効果が達成された。
【0033】
或いは又、本発明において、使用する液体溶媒に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルを含まないこととすることによって、余分な添加物を物品に付加することなく製造工程中及び保存中に生物素材又は生物素材の加工品の品質の劣化が見られず、しかも菌数が少なく、衛生面でも良好な粉末物品が得られる殺菌方法を提供するという効果も達成された。
【0034】
そして最後に、本発明により、本発明に基づく方法によって製造された、製造工程中及び保存中に生物素材又は生物素材の加工品の品質の劣化が見られず、しかも菌数が少なく、衛生面でも良好な粉末物品を提供するという効果も達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本説明は本発明を具体的に説明し、発明の内容の的確な理解に資するという趣旨に基づいて行うものであり、本説明の記述内容が本発明の典型を示すものではなく、かつ本説明により本発明の範囲を限定する趣旨でもない。
【0036】
まず、本発明で用いられる生物素材又は生物素材の加工品とは、真正細菌界、古細菌界、原生生物界、菌界、植物界、動物界の全ての生物素材の全体及びその一部、或いはそれらの加工品からなる群から選ばれる少なくとも一種である。それらを原料として、有効成分を含んだ粉末物品を製造できるものであればどのようなものにも適用できる。従ってその形態は原形、カット品、粉砕品、ペースト品、抽出品など、特に限定されるものではなく、凡そ、現在知られている加工技術によって処理可能であればいずれの形状でもかまわない。又、本発明を適用して生成される具体的な粉末物品の一例を示すと、調味料、嗜好飲料の原料、香料、着色料、栄養剤、品質改良剤、薬品、天然保存料、防菌剤、防虫剤、忌避剤などである。
【0037】
又、本発明における抽出、混合、濃縮工程は特に特定の方法に限定する必要はなく、エタノールや食塩あるいは酢酸などが利用でき、或るいは加熱処理が可能なものであればいずれの方法でもよく、公知の方法から素材と生成される物品の性質に最適の方法を適宜選択することができる。
【0038】
又、本発明における乾燥工程はいかなる方法でも行えるが、本発明の効果を最大に発揮するためには噴霧乾燥、ドラム乾燥、熱風乾燥などの方法が品質劣化が少なく、殺菌効果を十分発揮させるために適している。また、必要に応じて、乾燥工程中にエタノールあるいは酢酸を揮発させ、粉末中のエタノールあるいは酢酸濃度を調整してもよい。また、乾燥にあたっては、デキストリン、澱粉等の公知の粉末化基材を添加してもよい。
【0039】
又、本発明におけるエタノールを添加する工程は、抽出、混合、濃縮、乾燥からなる処理工程の少なくとも1工程以上であればよい。例えば、抽出もしくは混合工程で添加し、その後濃縮又は乾燥途中にエタノールが散失しても殺菌効果は発揮される。
【0040】
又、本発明におけるエタノールの使用量は、特に限定される必要はないが、好ましくは生物素材又は生物素材加工品と液体溶媒の混合重量の0.1重量%以上90重量%以下、より好ましくは1重量%以上70重量%以下である。これは、添加率が0.1重量%未満では、殺菌効果が弱い場合があり、90重量%を超えると品質が損なわれることがあり、また経済性に問題が生じる可能性があるためである。
【0041】
又、本発明における食塩の使用量は、特に限定される必要はないが、好ましくは生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の1重量%以上26重量%以下、より好ましくは5重量%以上26重量%未満である。1重量%未満では、殺菌効果が弱い場合があり、26重量%以上では、工程や生成品で食塩が析出する可能性があるためである。食塩は、液体溶媒に添加しても、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の混合物に添加しても効果に差はない。
【0042】
又、本発明における酢酸の使用量は、特に限定されるものではないが、好ましくは生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の0.1重量%以上95重量%以下、より好ましくは1重量%以上50重量%未満である。0.1重量%未満では、殺菌効果が弱く、95重量%以上では、品質に影響を及ぼすことがある。
【0043】
又、本発明における加熱工程は、特に限定されるものではないが、抽出、濃縮、乾燥よりなる工程群の少なくとも1工程において、加熱することにより、より効率よく殺菌することができる。加熱温度は、特に限定されるものではないが、殺菌効果は30℃以上120℃以下で高くなり、40℃以上100℃以下にすると一層効果的である。30℃以下では素材の種類等により殺菌効果が不十分な場合があり、120℃以上では品質が劣化する可能性が高くなるからである。それらの温度で加熱される合計時間は、加熱温度によって決めるのが望ましいが、前述の温度条件で、0.5分以上120分以下、好ましくは0.5分以上60分以下で十分殺菌効果がある。0.5分以下では殺菌効果が弱い場合があり、120分以上では品質が劣化する可能性がある。
【実施例】
【0044】
以下、実施例をもって夲発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
59%(W/W)濃度のエタノール水溶液450gに、洗浄後粉砕したニラ300gを加え、40℃にて20分間抽出し、不溶性成分を分離して抽出液680gを得た。得られた抽出液に水300gを添加後、デキストリン(マックス1000:松谷化学工業社製)1000g及び並塩70gを添加溶解し、熱風温度130℃、チャンバー温度80℃の条件で噴霧乾燥し、アルコール分10%(W/W)のニラエキス粉末1220gを得た。
【0046】
[実施例2]
92%(W/W)濃度のエタノール水溶液450gに、洗浄後粉砕したニラ300gを加え、40℃にて20分間抽出し、不溶性成分を分離して抽出液680gを得た。得られた抽出液に水600gを添加後、デキストリン(マックス1000:松谷化学工業社製)1000g及び並塩70gを添加溶解し、熱風温度130℃、チャンバー温度80℃の条件で噴霧乾燥し、アルコール分15%(W/W)のニラエキス粉末1300gを得た。
【0047】
[比較例1]
水450gに、洗浄後粉砕したニラ300gを加え、40℃にて20分間抽出し、不溶性成分を分離して抽出液680gを得た。得られた抽出液にデキストリン(マックス1000:松谷化学工業社製)1000g及び並塩70gを添加溶解し、熱風温度130℃、チャンバー温度80℃の条件で噴霧乾燥し、ニラエキス粉末1100gを得た。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように本発明の実施例1及び2は、エタノールを使用しない比較例1と比べて一般生菌数が抑制または殺菌されていることが分かった。実施例1及び2においては、抽出液の時点でも、一般菌数が少なく製造工程中での一般菌の増殖も抑制されることが確認できた。また、実施例1及び2で得られたニラエキス粉末はアルコール分を含有しているが、ニラ本来の風味を損なうものではなく、良好な風味であった。
【0050】
[実施例3]
59%(W/W)濃度のエタノール水溶液750gに鰹節385gを加え、40℃にて60分間抽出し、不溶性成分を分離して抽出液590gを得た。得られた抽出液にデキストリン(サンデック#100:三和澱粉工業株式会社製)300g及び並塩65gを添加溶解し、熱風温度130℃、チャンバー温度80℃の条件で噴霧乾燥し、アルコール分26.3%(W/W)の鰹節エキス粉末560gを得た。
【0051】
[比較例2]
水750gに鰹節385gを加え、40℃にて60分間抽出し、不溶性成分を分離して抽出液590gを得た。得られた抽出液にデキストリン(サンデック#100:三和澱粉工業株式会社製)300g及び並塩65gを添加溶解し、熱風温度130℃、チャンバー温度80℃の条件で噴霧乾燥し、鰹節エキス粉末410gを得た。
【0052】
【表2】

【0053】
表2に示すように本発明の実施例3は、エタノールを使用しない比較例2と比べて抽出及び乾燥工程にて、一般生菌数が抑制または殺菌されていることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物素材又は生物素材の加工品から液体溶媒により有効成分を抽出し、または生物素材又は生物素材の加工品に液体溶媒を混合し、有効成分の抽出液又は液体溶媒を混合した液を濃縮乾燥し、又はそのまま乾燥して、粉末物品を製造する方法において、液体溶媒の少なくとも一部にエタノールを使用することによって、製造工程中において効果的に殺菌を行うことを特徴とする粉末物品の殺菌法
【請求項2】
エタノールの使用量が、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の0.1重量%以上90重量%以下、より好ましくは1重量%以上70重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の粉末物品の殺菌法
【請求項3】
生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の1重量%以上、より好ましくは5重量%以上26重量%以下の食塩を加えたことを特徴とする請求項1又は2記載の粉末物品の殺菌法
【請求項4】
生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の総重量の0.1重量%以上95重量%以下、より好ましくは1重量%以上50重量%以下の酢酸を加えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粉末物品の殺菌法
【請求項5】
製造工程において、生物素材又は生物素材の加工品と液体溶媒の混合物が30℃以上120℃以下、より好ましくは40℃以上100℃以下で加熱され、それらの温度で加熱される合計時間が0.5分以上120分以下、より好ましくは0.5分以上60分以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の粉末物品の殺菌法
【請求項6】
製造工程が、抽出、混合、濃縮、乾燥よりなる工程の群の何れか1工程以上からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の物品の粉末殺菌方法
【請求項7】
生物素材又は生物素材の加工品が、食品素材又は食品素材の加工品であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の粉末物品の殺菌法
【請求項8】
食品素材又は食品素材の加工品が、植物の果実、植物の種子、植物体の一部、動物の一部、或いはそれらの加工品からなる群のうちの何れか1以上からなることを特徴とする請求項7記載の粉末物品の殺菌法
【請求項9】
乾燥工程が噴霧乾燥、ドラム乾燥および熱風乾燥からなる群のうちの何れか1以上によってなされることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の粉末物品の殺菌法
【請求項10】
使用する液体溶媒に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルを含まないことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の粉末物品の殺菌法
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の方法によって製造された粉末物品

【公開番号】特開2009−165457(P2009−165457A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33766(P2008−33766)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(596076698)佐藤食品工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】