説明

粉末組成物及びその製造方法、並びにこれを含む食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物

【課題】乾燥工程における収量が高く生産効率に優れ、且つ良好な長期保存安定性を有し、再溶解したときには微細な粒径を維持して、分散液の透明性の高いエマルションを再現することができる粉末組成物を提供する。
【解決手段】アスタキサンチン等を含む、少なくとも1種の機能性油性成分と、(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類、(B)トレハロースを含む包括剤と、を含有するエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物。該粉末組成物は、食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末組成物及びその製造方法、並びにこれを含む食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物に関し、特に、機能性油性成分を含有する粉末組成物及びその製造方法、並びにこれを含む食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から飲料、食品、化粧品あるいは医薬品等に油性成分を添加することは行われてきた。しかし、油性成分は水に対して不溶性又は難溶性のため、何らかの乳化手段を用いることで、油性成分をいわゆるエマルションとして水性媒体中に混合することが一般的であった。エマルションは、その粒子径に依存して光を散乱するため、エマルション及びそれを添加した食品や化粧品に濁りが生じ、外観上好ましくない場合が有り、光散乱が非常に小さくなるまでエマルションの粒径を微細化することが望まれていた。また、エマルションは一般に準安定状態であり、保存中に粒子径が大きくなり、長期保存をすると水相と油相とが分離することも大きな問題であった。
【0003】
一方、近年ヘルスケア商品がブームに伴い、種々の栄養機能性素材を含有する食品・化粧品等の商品が多く存在している。このような食品・化粧品等の商品においても、水に不溶性又は難溶性の脂溶性の栄養機能性素材を含有する場合、素材そのものの劣化や、上述のような保存時における乳化状態の破壊など、さまざまな問題を有することがわかってきた。
【0004】
油性成分をより安定な状態で取り扱うことができる1つの方法として、エマルションを乾燥する工程を経て、粉末化組成物とする方法が提案されている(例えば、特許文献1)。粉末化は、水分が除去されることによる保存性の向上、輸送費が低減するなど、ハンドリング性の向上などの点で望ましい方法である。
汎用的に用いる粉末化組成物の用途としては、粉末油脂が知られており、応用例として、パン製品・冷凍食品・洋菓子・和菓子・フライ製品・麺製品などを挙げることができる。また、別の例としてフレーバー(香料)が知られており、応用例として、チューイングガム・粉末飲料・粉末デザート・各種トイレタリー製品・繊維などをあげることができる。
【0005】
また、特許文献2には、高分解デキストリンとショ糖脂肪酸エステルを組み合わせた被膜形成剤を用いて、可食性の油性材料を乳化後乾燥させる事で粉末化する方法が開示されている。特許文献3には、カロテノイドを含む油性溶剤と水に可分散のマトリックス、安定剤および天然の乳化剤を含む食品用カロテノイド組成物が開示されており、この中で、マトリックス素材として、スクロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ペントース、マルトース、マルトデキストリンが開示されている。
特許文献4には、粉末香料の香気の保留性や酸化安定性を改善するために、アラビアガム、加工澱粉、サイクロデキストリン等の賦形剤に加えてパラチノースやラフィノースを添加することが開示されている。
特許文献5には、粉末香料におけるフレーバーの安定性、保留性を改善するために乳化剤に加えてトレハロースを用いる方法が開示されている。
また、特許文献6には、トレハロースとカゼイン等のタンパク質を含む保護コロイドを用いてカロテノイドの懸濁液を作り、その懸濁液を乾燥し、乾燥粉末を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−55688号公報
【特許文献2】特開平4−262757号公報
【特許文献3】特許第3302999号公報
【特許文献4】特許第3510552号公報
【特許文献5】特開平9−107911号公報
【特許文献6】特表2007−521812号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の粉末組成物では、製造工程、特に噴霧乾燥を行う際に製造装置の装置内への付着が生じ、収量が低くなるという問題がある。また、保存安定性に劣り、水へ再分散したときにエマルション粒子の粒径が大きくなり、特に、長期保存すると水分散液が濁るという問題があった。
従って、本発明は、乾燥工程における収量が高く生産効率に優れ、且つ良好な長期保存安定性を有する粉末組成物と、これを用いた食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
[1] 少なくとも1種の機能性油性成分と、以下の(A)成分及び(B)成分:(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類、及び(B)トレハロース、を含む包括剤と、を含有するエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物。
[2] 前記粉末組成物を1質量%の水溶液にしたときに得られるエマルション粒子の体積平均粒子径が10nmから200nmである[1]に記載の粉末組成物。
[3] 前記粉末組成物中の全糖類の質量に対する上記(B)成分の割合が20〜70質量%の範囲にある[1]又は[2]記載の粉末組成物。
【0008】
[4] 前記(A)成分が、2〜60の糖単位を有する糖類である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の粉末組成物。
[5] 前記(A)成分が、イヌリン及びラフィノースから選択された少なくとも1つである[1]〜[4]のいずれか1項に記載の粉末組成物。
【0009】
[6] 前記粉末組成物が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選ばれた少なくとも1種の乳化剤を含有する[1]〜[5]のいずれか1項に記載の粉末組成物。
[7] 前記機能性油性成分がカロテノイド色素である[1]〜[6]のいずれか1項に記載の粉末組成物。
[8] 前記カロテノイド色素が、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然抽出物である[7]に記載の粉末組成物。
[9] 前記カロテノイド色素が、ヘマトコッカス藻色素抽出物である[7]記載の粉末組成物。
【0010】
[10] 少なくとも1種の機能性油性成分を、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選ばれた少なくとも1種の乳化剤の存在下、水性媒体に乳化して、エマルション組成物を得ること、前記水性媒体及び又はエマルション組成物に、以下の(A)成分及び(B)成分:(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも一種の多糖類、及び(B)トレハロース、を含む包括剤を添加すること、前記包括剤を含むエマルション組成物を乾燥すること、を含む粉末組成物の製造方法。
[11] [1]〜[9]のいずれか1項に記載の粉末組成物を含有することを特徴とする食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乾燥工程における収量が高く生産効率に優れ、且つ良好な長期保存安定性を有する粉末組成物と、これを用いた食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の粉末組成物は、少なくとも1種の機能性油性成分と、以下の(A)成分及び(B)成分:(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類、及び(B)トレハロース、を含む包括剤と、を含有するエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物である。
本発明の粉末組成物では、(A)成分としての特定の多糖類と、(B)成分としてのトレハロースとの組み合わせを含む包括剤を含むので、噴霧乾燥における乾燥性に優れ且つ粉末化過程や粉末保存時において油滴を保護することができる。また、経時保存後の粉末組成物を再溶解したときには長期保存後であっても再分散時の粒径を微細に維持して、分散液の透明性を良好に維持すると共に、且つ機能性油性成分の水分散性を良好なものにすることができる。この結果、製造工程における装置への付着損失が極めて少なく、且つ長期保存時に良好な保存安定性を示すことができる。
以下、本発明の粉末組成物について説明する。
【0013】
(a)機能性油性成分
本発明に用いられる機能性油性成分とは、食品、化粧品、医薬品に使用した際に有用な効果を示す油性成分を表す。化学構造面からは、油脂類、炭化水素、ロウ類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質などがある。また、それらの混合物である、各種の植物由来油、動物由来油も含まれるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0014】
また、前記機能性油性成分の機能面からは、紫外線吸収剤、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、毛髪保護剤、分散剤、溶剤、美白剤、抗シミ剤、細胞賦活剤、エモリエント剤、角質溶解剤、帯電防止剤、ビタミン類、メタボリックシンドローム改善剤、降圧剤、鎮静剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明に用いられる好ましい機能性油性成分の例としては、カロテノイド類、ビタミンE類(トコフェロール、トコトリエノール等)、ユビキノン類、ω−3油脂類(EPA、DHA、リノレン酸等を含む油脂)などを挙げることができる。
【0016】
本発明において、これらの機能性油性成分として、特に油溶性機能色素であるカロテノイド(カロチノイドとも言う)色素を用いることによって、水に分散した際に透明性が高く且つ保存安定性に優れるという顕著な効果を有する粉末組成物を得ることができる。
【0017】
本発明におけるカロテノイド類としては、天然色素を含むカロテノイド類を好ましく挙げることができ、これには、黄色から赤色のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリアのものが含まれる。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロテノイドに含まれる。例えば、後述のカロチノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造している。
【0018】
カロテノイド類としては、炭化水素類(カロテン類)及びこれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
これらの例として、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、”カロテン”(α−及びβ−カロテン類の混合物)、γ−カロテン、β−クリプトキサンチン、エキネノン、ルテイン、リコピン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0019】
カロテノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばシス・トランス混合物である。
カロテノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロテノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮膚及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0020】
本発明において用いられるカロテノイド類は乳化粒径の微細化の観点から、好ましくは常温で油状のものである。特に好ましい例としては、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の着色料として知られているアスタキサンチン及びアスタキサンキチンのエステル等の誘導体(以下、「アスタキサンチン類」と総称する。)から選択された少なくとも1種を含むことができる。
これらのアスタキサンチン類は、超臨界炭酸ガスを用いて天然素材から抽出したものが、粉末としたときの臭気の点でより好ましい。
【0021】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., 38-165, Academic Press, NY, 1976.)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione(C4052、分子量596.82)である。
【0022】
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により、3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種の異性体が存在する。また、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0023】
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi,K., Miki,W., Toriu, N., Kondo,Y., Murakami,M., Konosu,S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411-1415.)、H.pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen-Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625-627.)。
【0024】
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3’R)-Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009-1011.)であり、通常天然に見出される3S,3S’−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffia rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003-1007.)。
【0025】
アスタキサンチン及び同エステル体はR.Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465-466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571-587.)。
【0026】
前記アスタキサンチン及びそのエステル(アスタキサンチン類)は、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとして、本発明の粉末組成物に含まれていてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとして、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、ナンキョクオキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとはエステルの種類及びその含有量の点で異なることが知られている。
【0027】
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物(抽出エキス)、またさらにこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であっても良い。前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(以下、ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0028】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
【0029】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
前記ヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含み、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むものである。
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5O、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstinSCE7、ヤマハ発動機製のアスタキサンチンPURESTA等が挙げられる。
本発明において、ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、抽出コストの観点から好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
【0030】
本発明における機能性油性成分は機能性の異なる成分同志を組み合わせることで相乗効果をもたらす場合がある。例えば、複数種のカロテノイド類、カロテノイド類とビタミンE類(トコフェロール類)を組み合わせて含有するエマルション組成物は特に抗酸化力において好ましいものである。
【0031】
トコフェロール類とはトコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群から選ばれるものである。トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のトコフェロール及びその誘導体、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が挙げられる。これらは、混合物の状態で使用する場合が多く、抽出トコフェロール、ミックストコフェロールなどと呼ばれる状態で使用できる。本発明のエマルション組成物におけるカロテノイドに対するトコフェロールの含有量は、特に限定されないが、カロテノイド量に対して0.1〜5の比率であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3、更に好ましくは0.5〜2の比率である。
【0032】
カロテノイド色素以外の好ましい機能性油性成分として、ユビキノン類、特にコエンザイムQ10が挙げられる。コエンザイムQ10は、日本において1974年に代謝性強心剤の医療用医薬品として承認・販売された。以後、OTCも含めて医薬品として扱われてきた。一方、海外(主に欧米)ではここ10年あまり、有効性・安全性の高い健康食品素材として需要が伸びてきた。そして日本においても、2001年厚生労働省医薬局長通知「医薬品の範囲に関する基準の改正について」(医薬発第243号)にて、コエンザイムQ10が「医薬品的効果効能を標ぼうしない限り食品と認められる成分本質(原材料)」リストに収載され、食品として扱ってもよいという規制緩和がなされた。国内でもこの食品素材が持つ、多様な機能性に注目が集まり、コエンザイムQ10を含有した一般食品(いわゆる健康食品)が数多く商品化されつつある。
【0033】
コエンザイムQ10がもつ機能を活かすために、脂溶性物質であるこの素材の水溶化が重要である。本発明の粉末組成物では、本機能性油状成分が良好な状態で保護されるので、粉末を水中に再分散したときの粒径を小さく維持することができると共に、液の透明度を良好にすることができ、また生体内での吸収も充分なものにすることができる。この結果、本発明を適用することで、エマルション製剤並以上の良好な性能を発現できる。
【0034】
本発明に好ましい更に他の機能性油性成分の例としては、ω−3位に二重結合を有する不飽和脂肪酸のω(オメガ)−3油脂類を挙げることができ、これにはリノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)並びにこれらを含有する魚油などを挙げることができる。
このうちDHAは、ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid)の略称であり、6つの二重結合を含む22個の炭素鎖をもつカルボン酸(22:6)の総称であるが、通常は生体にとって重要な4、7、10、13、16、19位に全てシス型の二重結合をもつ。
通常、DHAは魚油に多く含まれ、摂取することで「健康になる」または「頭がよくなる」としてサプリメントや菓子などに添加されている。DHAは精液や脳、網膜のリン脂質に含まれる脂肪酸の主要な成分である。DHAの摂取は血中の中性脂肪量を減少させ、心臓病の危険を低減する。また、DHAが不足すると脳内セロトニンの量が減少し、多動性障害を引き起こすという報告がある。アルツハイマー型痴呆やうつ病などの疾病に対してもDHAの摂取は有効であるといわれている。
【0035】
魚やその他の生物に含まれるDHAの多くは、微細藻類の1種Schizochytrium 属によって生産されたものが食物連鎖の過程で濃縮されたものであるため、天然由来のDHAを用いることは本発明において好ましいが、これに限定されない。
DHAもやはり油脂であるため、生体内での吸収を高めるために予め乳化して微細な油滴にしておくことが好ましい。また、DHAは保存中に経時劣化し易く、経時劣化により風味が非常に悪くなることが知られている。本発明の粉末組成物に含めることによって、良好な状態で保護されて油脂の劣化や風味の低下を抑えることができると共に、容易に水に溶けるため、清涼飲料や牛乳などの水性組成物中の成分として幅広い活用が可能となる。また、本発明の粉末組成物では、DHA含量を容易に高濃度化することができると共に、水中に再分散した際の粒径も充分に小さいものとすることができるため、液の透明度を良好にすることができる。
【0036】
上記以外にも機能性油性成分として使用可能な化合物には、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0037】
また他の機能性油性成分として、例えば、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリンなどのロウ類、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル類、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、アラキドン酸などの脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノールなどの高級アルコール類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン油、その他、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質などを挙げることができる。また、それらの混合物である各種の植物由来油、動物由来油も含まれる。
【0038】
上記機能性油性成分は、水への分散性をより高めるために、2種以上を併用することが好ましく、この目的で併用可能な油性成分としては、DHA、スクワレン、スクワランが好ましく、スクワレンが特に好ましい。特に、コエンザイムQ10のように常温で固体の油性成分の場合には、DHA、スクワレン、スクワランなどと併用することが特に好ましい。
【0039】
本発明の粉末組成物中の機能性油性成分の含有量は、0.01質量%〜50質量%とすることができ、成分を有効に働かせる観点と粉末のハンドリング性の観点から、0.1質量%〜30質量%が好ましく、0.3質量%〜10質量%が更に好ましい。
本発明にかかるエマルション組成物における機能性油性成分の含有量は、乳化粒径の微細化と生産効率の観点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.2〜2質量%である。
【0040】
(b)包括剤
本発明の粉末組成物は、(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類と、(B)トレハロースと、を含む包括剤を含有する。
本発明における包括剤は、上記(A)成分及び(B)成分を組み合わせて含むため、良好な非吸湿性を示し、エマルション組成物の乾燥を適切に行うことができる。この結果、乾燥工程において製造装置などの壁面への付着量を抑えることができる。また、乾燥時の粉末化過程や粉末保存時に油滴を保護することができる。これにより、油滴粒径を長期間の保存期間にわたって微細な状態に保ち、優れた長期安定性を示すことができる。
【0041】
本発明における(A)成分は、フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類(以下、単に「ガラクトース/フルクトース含有多糖類」という。)である。ガラクトース(脳糖)および又はフルクトース(果糖)を繰り返し単位として含むと共に、複数の糖単位が脱水縮合で結合したポリマー又はオリゴマーを指す。このガラクトース/フルクトース含有多糖類は1種の多糖類であっても複数種を組み合わせたものであってもよい。一般には、糖の繰り返し単位(本明細書では単に「糖単位」ということがある。)が20個未満のものをオリゴ糖(オリゴマー)という場合があるが、本発明では繰り返し単位が2個以上20個未満のものも多糖類として総称する。
【0042】
本発明におけるガラクトース/フルクトース含有多糖類では、構成単位として含まれ得るフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である。例えば、ガラクトース/フルクトース含有多糖類を構成する糖単位の繰り返し個数が2個の場合、上記ガラクトース単位2個、フルクトース単位2個又は各々の単位が1つずつとなる。このようなガラクトース/フルクトース含有多糖類としては、ガラクトスクロース、ラクツロース等が該当する。このような糖単位の繰り返し個数は、乾燥適性と再溶解時の油滴微細化の観点から好ましくは2〜60個であり、より好ましくは3〜15個である。繰り返し個数(糖の重合度)が2個以上であれば吸湿性が強すぎることがなく、乾燥過程で乾燥容器に付着して回収率が低下するといったことを効果的に防止することができ、一方、60個以下であれば水再溶解時における油滴粒径の粗大化を効果的に防止することができる。
【0043】
繰り返し個数が3個以上では、フルクトース、ガラクトース以外の糖単位を含むことができる。ここで含むことのできる他の単糖単位としては、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、イドース、アルトロース、グロース、タロース、アロース、キシロース、アラビノース、リキソース、リボース、トレオース、エリトロース、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、ソルボース、タガトース等があるが、これに限定されることはない。これらの単糖のうちグルコースが入手の容易性の観点から好ましい。また、結合位置はガラクトースやフルクトースの間に挟まれてもよいし末端に存在してもよいが、フルクトースの末端または、ガラクトースとフルクトースの間に挟まれる方が乾燥工程の収率上好ましい。
ガラクトース、フルクトース以外の糖類を含む場合、その含有比率は乾燥適性と再溶解性時の油滴微細化の観点からガラクトース単位とフルクトース単位を合わせた数に対して重合度で50%以下であり、好ましくは30%以下である。
【0044】
(A)成分としてのガラクトース/フルクトース含有多糖類には、乾燥時の収率及び再溶解時の透明性の観点から、好ましくは、イヌリン、ラフィノース、スタキオース、ベルパスコースを挙げることができ、特に、水分散時の透明性及び入手の容易性等の観点からイヌリン、ラフィノースが更に好ましく、乾燥時の収率の観点からイヌリンが更に好ましい。
本発明におけるイヌリンは、末端にグルコースを1個有するフルクトースポリマーまたはフルクトースオリゴマーである。イヌリンは広く自然界に存在することが知られており、チコリ、キクイモ、ダリア、ニンニク、ニラ、タマネギ、アガベなどに多く含まれる。イヌリンの詳細に関してはHandbook of Hydrocolloids, G.O.Phillips,P.A.Williams Ed.,397-403,(2000) CRC Pressに記載されている。一般に、ブドウ糖単位をG、果糖単位をFとして鎖長を表現する。本発明のイヌリンには、GFで表記されるスクロースは含まれない。通常天然から抽出されるイヌリンは、GF2(ケストース)、GF3(ニストース)、GF4(フラクトシルニストース)からGF60程度までのポリマーかオリゴマー、またはそれらの混合物である。
【0045】
本発明では、イヌリンはチコリ、キクイモ、ダリアなどの根から分離熱水抽出され、この水溶液を濃縮、スプレードライにより粉末化販売されているものを含むことができる。この例としては、チコリ根から抽出されたFrutafit(SENSUS社製)、同じくチコリ根から抽出されたベネオ(オラフティ社)、ダリア根由来試薬((株)和光純薬、シグマ社)、チコリ根抽出試薬(シグマ社)等を挙げることができる。
また、本発明における果糖オリゴマー及びポリマーには、β−フルクトフラノシダーゼのフラクタン転移活性を利用して、ショ糖(スクロース)から調製するものも含むことができる。この例としては、フジFF(フジ日本精糖(株)製)、GF2(明治製菓(株))を挙げることができる。
【0046】
本発明におけるラフィノースは、D−ガラクトース、D−グルコース及びD−フラクトースを一単位ずつ含む三糖類である。ラフィノースは、広く自然界に存在することが知られており、ビート、ユーカリ樹液、大豆、キャベツ、ブロッコリー、アスパラガス等に比較的多く含まれる。本発明では、ラフィノースはビートなどから分離熱水抽出され、この水溶液を濃縮、スプレードライにより粉末化販売されているものを含むことができる。この例としては、ラフィノース(日本甜菜精糖(株)製)を挙げることができる。
スタキオースは、D−フルクトース、D−ガラクトース、D−ガラクトース、D−グルコースが連なった4糖であり、自然界には大豆等の豆類やウリ科植物に比較的多く含まれる。スタキオースの販売例としては、SFSオリゴ糖(我流本舗)等が挙げられる。
また、ベルパスコースは、D−ガラクトース、D−ガラクトース、D−ガラクトース、D−グルコース、D−フルクトースの順に並んだ5糖であり、ソラマメ等の豆類に含まれる。スタキオースもベルバスコースもラフィノースと同様、植物より熱水抽出され、この水溶液は濃縮され、スプレードライにより粉末化される。
【0047】
また、本発明における包括剤の(B)成分はトレハロースである。包括剤として用いられるトレハロースは、例えばブドウ糖溶液中で酵母を培養して、酵母菌体中にトレハロースを作らせ、このトレハロースを菌体から分離する方法、又はブドウ糖溶液中でバクテリアを培養し、培養液中にトレハロースを作らせ、このトレハロースを培養液から分離するホフ法などで製造する事が出来る。市販のトレハロースとしては、「とれはのいのち」(H+Bライフサイエンス(株))等を用いることが出来る。
【0048】
本発明でのトレハロースの粉末全体の糖類中における比率は、再溶解時の透明性と長期保存時の安定性の観点から粉末組成物に含まれる全糖類(トレハロースを含む)の合計質量に対して20〜70質量%であることが好ましく、更に30〜60質量%が特に好ましい。トレハロースの量を70質量%以下とすることにより、包括剤同士の凝集を適切に抑制することができ、一方、20質量%以上とすることにより、長期保存安定性を良好に示すことができる。
【0049】
また、(A)成分のガラクトース/フルクトース含有多糖類と(B)成分のトレハロースとの配合比は、粉末の経時保存性の観点から、質量比で8:2〜3:7であることが好ましく、7:3〜4:6であることがより好ましい。
本発明において、包括剤は、乳化時に添加されていることが好ましいが、その一部または全部を乳化後に添加することもできる。また、ガラクトース/フルクトース含有多糖類とトレハロースとは同時に配合してもよく、別個に配合してもよい。
【0050】
本発明における包括剤の含有量は、粉末組成物の製造効率及び透明性の観点から、エマルション組成物の場合には、機能性油性成分を含む油相の全質量に対して質量で1倍〜20倍が好ましく、特に得られた粉末のハンドリング性と生産効率から、2倍〜10倍が好ましく、更に3倍〜7倍が特に好ましい。また同様に粉末組成物の場合には、粉末組成物の全質量に対して30質量%〜95質量%が好ましく、50質量%〜80質量%であることが更に好ましい。なお、この含有量の範囲において、包括剤の含有量を高めに設定すると乾燥工程での収量をより高めることができ、一方、包括剤の含有量を低めに設定すると機能性油性成分を高濃度に含んだ粉末を製造することができる。
【0051】
(c)乳化剤
本発明の粉末組成物は、粉末化する前に機能性油性成分を含むエマルション組成物中の油相を水性媒体中に乳化するため、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選択された少なくとも1種の乳化剤を含有することが好ましい。
【0052】
本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステルは、界面活性の観点から脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。炭素数12以上とすることにより、平均粒子径のより小さいエマルジョン粒子にすることができる場合がある。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステルS−1170、S−1170S、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、OWA−1570、L−1695、LWA−1570、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルF140、DKエステルF160、DKエステルSS等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が4以上、好ましくは6〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−15D、理研ビタミン(株)社製ポエムJ−0381V、ポエムJ−0021Vなどが挙げられる。
【0054】
本発明に用いられるリン脂質は、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したもので、レシチン類とも称されるものである。
本発明で使用可能なリン脂質としては、レシチン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスファジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができ、これらの成分を含む大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物由来のものや、卵黄、牛等の動物由来のもの及び大腸菌等の微生物等由来の各種レシチンも挙げることができる。またこれらリン脂質の由来は特に限定されず、例えばダイズ油等の植物油、卵黄等の動物由来のもの等が用いられ、特に精製したものが好適である。
【0055】
リン脂質は、分子内に親水基と疎水基を有しているため、従来から、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。産業的にはリン脂質の純度60%以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できるが、微細な油滴粒径の形成及び機能性油性成分の安定性の観点から、好ましくは一般に高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80質量%以上、より好ましくは90質量%以上のものである。
レシチンとしては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。
【0056】
また、本発明においては、上記の高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を使用することができる。このような水素添加、ヒドロキシル化されたレシチンは、化粧品用途への応用に特に好ましい。前記水素添加は、例えば、レシチンを触媒の存在下に水素と反応させることにより行われ、脂肪酸部分の不飽和結合が水素添加される。水素添加により、レシチンの酸化安定性が向上する。
また、前記ヒドロキシル化は、レシチンを高濃度の過酸化水素と酢酸、酒石酸、酪酸などの有機酸と共に加熱することにより、脂肪酸部分の不飽和結合が、ヒドロキシル化される。ヒドロキシル化により、レシチンの親水性が改良される。
本発明で用いることができるこれらのリン脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0057】
これらの乳化剤は単独で用いてもよいが、2種または3種以上併用することが好ましい。同じ系統の中で組み合わせることも好ましいが、例えば、ショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルを併用すること、あるいは、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびレシチンの3者を併用するのは更に好ましい。
【0058】
本発明に使用される上記乳化剤の総量は、機能性油性成分を含む油相の10質量%から1000質量%の範囲で用いることができるが、乳化の微細化と発泡の点から、50質量%〜800質量%が好ましく、80質量%〜500質量%が特に好ましい。この範囲内であれば、エマルション組成物の乳化安定性を良好なものにすることができる。
【0059】
また本発明では、上記乳化剤に加えて他の乳化剤を含んでいてもよい。このような他の乳化剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の界面活性剤が用いられ、中でも乳化安定性の観点から非イオン性界面活性剤が好ましい。
本発明における界面活性剤としては、乳化安定性の観点から、HLB10〜HLB19のものが好ましく、HLB12〜HLB17のものがより好ましい。
【0060】
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0061】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
【0062】
前記アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウムやパルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸セッケン;アルキルエーテルカルボン酸及びその塩;アミノ酸と脂肪酸の縮合等のカルボン酸塩;アルキルスルホン酸、アルケンスルホン酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩とそのホルマリン縮合物のスルホン酸塩等のスルホン酸塩;アルキル硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル及びアリルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩;アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アミドリン酸塩等のリン酸塩;N−アシルアミノ酸系活性剤等が挙げられる。
【0063】
前記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアミノアルコール脂肪酸誘導体等のアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩、ピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0064】
前記非イオン性界面活性剤としては、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン結合リシノレイン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン、アルカノールアミド、糖エーテル、糖アミド等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0065】
上記界面活性剤は一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、脂肪酸として、花王(株)製ルナック シリーズ、新日本理化(株)製の各種脂肪酸、日本精化(株)製の各種脂肪酸などを挙げることができる。アルキル硫酸塩・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩として花王(株) エマール シリーズなどを挙げることができる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩として花王(株) カオーアキポ シリーズなどを挙げることができる。
また、グリセリン脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL MGO、NIKKOL DGO、NIKKOL MGS、NIKKOL Fの各シリーズ、花王(株)製エキセル シリーズなどを挙げることができる。有機酸モノグリセリドとして、理研ビタミン(株)製ポエムG−002などを挙げることができる。ソルビタン脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL SSシリーズ、SOシリーズなど、花王(株)製エマゾール シリーズなどを挙げることができる。プロピレングリコール脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL PMS−SEなどを挙げることができる。
【0066】
このような他の乳化剤としての界面活性剤の量は、微細な粒子径の乳化物が容易に得るために、油性成分の量に対して質量比で0.5倍量以下であることが好ましく、2倍量以下がより好ましく、1.5倍量以下が更に好ましく、1倍量以下が特に好ましい。前記界面活性剤量が2倍量以下とすることにより、泡立ちがひどくなる等の問題がなくなる傾向となる点で好ましい。
【0067】
これらの他の乳化剤としての界面活性剤の添加量は、粉末組成物全体に対して、0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、1〜15質量%が更に好ましい。
前記界面活性剤量を0.01質量%以上とすることにより、エマルション組成物としたときの油相/水相間の界面張力を下げ易く、また、30質量%以下とすることにより、過剰量とすることがなくエマルション組成物の泡立ちがひどくなる等の問題を生じ難い点で好ましい。
【0068】
乳化剤は、エマルション組成物作成の際の乳化時に存在していればよく、乳化前の段階で、油相、水相のいずれに添加されてもよい。複数の乳化剤を油相と水相に分けて添加するのも微細化や乳化安定性の観点から好ましい方法である。また、乳化安定性の観点から一部の乳化剤は乳化後に添加されてもよい。
【0069】
本発明にかかる水中油滴エマルション組成物における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、一般的には、油相/水相比率(質量%)は0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70が好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。0.1/99.9以上であれば、油性成分中の有効成分の効果を充分に期待でき、一方、50/50以下であれば、透明性を損なわれない程度の粒子径のエマルションを容易に得ることができるため、それぞれ好ましい。前記製造方法における油相、水相に含有される成分は、前述の本発明の粉末組成物の構成成分と同様であり、好ましい例及び好ましい量も同様であり、好ましい組み合せがより好ましい。
【0070】
本発明の粉末組成物は、上記の配合成分の他、通常用いられる他の成分を含有してもよい。このような成分としては、例えばラジカル捕捉剤、賦形剤等を挙げることができる。
【0071】
(d) ラジカル捕捉剤
ラジカル捕捉剤は、ラジカルの発生を抑えるとともに、生成したラジカルをできる限り速やかに捕捉し、連鎖反応を断つ役割を担う添加剤である(出典:「油化学便覧 第4版」、日本油化学会編 2001)。
前記ラジカル捕捉剤としての機能を確認する直接的な方法としては、試薬と混合して、ラジカルを捕捉する様子を分光光度計やESR(電子スピン共鳴装置)によって測定する方法が知られている。これらの方法では、試薬として、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)や、ガルビノキシルラジカルが使用される。
本発明においては、以下の実験条件下で、油脂の自動酸化反応を利用して、油脂の過酸化物価(POV値)を60meq/kgに引き上げるまでに要する時間が、ブランクに対し2倍以上である化合物を「ラジカル捕捉剤」と定義する。油脂の過酸化物価(POV値)は常法により測定する。
<条件>
油脂:オリーブ油
検体添加量:油脂に対し0.1質量%
試験方法:試料を190℃にて加熱し、時間を追ってPOV値を常法により測定し、60meq/kgとなる時間を算出した。
【0072】
本発明におけるラジカル捕捉剤は、エマルションの酸化に対する安定性の観点から、前記POV値60meq/kgになるまでに要する時間がブランクに対し5倍以上であるラジカル捕捉剤が好ましい。
本発明のラジカル捕捉剤として使用できる化合物は、「抗酸化剤の理論と実際」(梶本著、三書房 1984)や、「酸化防止剤ハンドブック」(猿渡、西野、田端著、大成社 1976)に記載の各種酸化防止剤のうち、ラジカル捕捉剤として機能するものであればよく、具体的には、フェノール性OHを有する化合物、フェニレンジアミン等のアミン系化合物、また、アスコルビン酸及びエリソルビン酸の油溶化誘導体等を挙げることができる。
【0073】
以下に好ましいラジカル捕捉剤(酸化防止剤)としては、例えば、(I)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩、あるいはアスコルビン酸誘導体またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群、(II)ポリフェノール類からなる化合物群より選ばれる少なくとも2種の化合物を挙げることができる。
エマルション組成物におけるラジカル捕捉剤の含有量は一般的には組成物全質量に対して0.001〜5.0質量%であり、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。
【0074】
(I)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルが特に好ましい。
【0075】
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル、エリソルビン酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸エリソルビル、等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
【0076】
本発明に用いる化合物群(I)に属するラジカル捕捉剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、L−アスコルビン酸(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、L−アスコルビン酸Na(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、アスコルビン酸2−グルコシド(商品名 AA−2G:林原生物化学研究所)、L−アスコルビン酸燐酸Mg(商品名 アスコルビン酸PM「SDK」(昭和電工)、商品名 NIKKOL VC−PMG(日光ケミカルズ)、商品名 シーメート(武田薬品工業))、パルミチン酸アスコルビル(DSM ニュートリション ジャパン、金剛薬品、メルク、ほか)等が挙げられる。
【0077】
(II)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
【0078】
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。これらのポリフェノール類のうち、特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0079】
本発明に用いる化合物群(II)に属するラジカル捕捉剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、エラグ酸(和光純薬ほか)、ローズマリー抽出物(商品名 RM−21A、RM−21E:三菱化学フーズほか)、カテキン(商品名 サンカトールW−5、No.1:太陽化学、ほか)、没食子酸Na(商品名 サンカトール:太陽化学、ほか)、ルチン・グルコシルルチン・酵素分解ルチン(商品名 ルチンK−2、P−10:キリヤ化学、商品名 αGルチン:林原生物化学研究所、ほか)等が挙げられる。
【0080】
(e) 賦形剤
また、本発明の粉末組成物は、粉末の流動特性及びその後の打錠適性や顆粒化適性を持たせる場合に、必要に応じて賦形剤を更に含んでいてもよい。
賦形剤は一般的に用いられている水溶性物質であればよく、グルコース、果糖、麦芽糖、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、マルトースなどの単糖及び多糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトールなどの糖アルコール;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;アラビアガム、グアーガム、アガロース、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、ガラクトマンナン、トラガントガム、キシログルカン、β−グルカン、カードラン、キトサン、ペクチン、プルラン、アルギン酸ナトリウムなどの増粘多糖類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;デンプン、デンプンにエステル化、エーテル化処理、末端還元処理を施したデンプン誘導体;その他に水溶性大豆繊維、加工澱粉、カゼイン、ゼラチン、ゼラチン分解物、寒天、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。この中でも、溶解性の面から単糖、多糖類、糖アルコール、無機塩が好ましく、吸湿性、粒子形成性の観点から、アラビアガム、デキストリン、糖アルコール、無機塩が更に好ましく、アラビアガム、デキストリンが特に好ましい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの賦形剤は、形状維持と溶解性の観点から本発明における包括剤の質量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下で用いられる。
【0081】
本発明の粉末組成物は、上述した各成分を含むエマルション組成物を製造し、これを乾燥することによって得ることができる。
即ち、本発明の機能性油性成分を含有する粉末組成物の製造方法は、
少なくとも1種の機能性油性成分を、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選ばれた少なくとも1種の乳化剤の存在下、水性媒体に乳化して、エマルション組成物を得ること(乳化工程)、前記水性媒体及び/又はエマルション組成物に、上記(A)成分及び(B)成分、即ちガラクトース/フルクトース含有多糖類とトレハロースとを含有する包括剤を添加すること(添加工程)、前記包括剤を含むエマルション組成物を乾燥すること(乾燥工程)を含む。
【0082】
本製造方法における乳化工程では、上述した各種成分のうち、機能性油性成分を含む油滴が水中に微細分散された水中油滴型エマルション組成物が得られる。
包括剤の添加工程は、乳化の前後のいずれであってもよく、乳化工程の前に水相、即ち、水などの水性媒体に添加されていてもよいし、乳化後に得られたエマルション組成物に添加されてもよく、乳化の前後の双方において一部ずつ添加してもよい。包括剤の添加工程は、油滴を効果的に包み込むためには乳化前に添加される方が好ましい。ここで使用可能な乳化手段は、自然乳化法、界面化学的乳化法、電気乳化法、毛管乳化法、機械的乳化法、超音波乳化法等一般に知られている乳化法のいずれも使うことができる。
【0083】
エマルションを微細化するための有用な方法として、PIT乳化法、ゲル乳化法等の界面化学的乳化法が知られている。この方法は消費するエネルギーが小さいという利点があり、熱で劣化しやすい素材を微細に乳化する場合に適している。
【0084】
また、汎用的に用いられる乳化法として、機械力を用いた方法、すなわち外部から強い剪断力を与えることで油滴を分裂させる方法が適用されている。機械力として最も一般的なものは、高速、高剪断攪拌機である。このような攪拌機としては、ホモミキサー、ディスパーミキサーおよびウルトラミキサーと呼ばれるものが市販されている。
【0085】
また、微細化に有用な別な機械的な乳化装置として高圧ホモジナイザーがあり、種々の装置が市販されている。高圧ホモジナイザーは、攪拌方式と比べて大きな剪断力を与えることが出来るために、乳化剤の量を比較的少なくても微細化が可能である。
高圧ホモジナイザーには大きく分けて、固定した絞り部を有するチャンバー型高圧ホモジナイザーと、絞りの開度を制御するタイプの均質バルブ型高圧ホモジナイザーがある。
チャンバー型高圧ホモジナイザーの例としては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0086】
比較的エネルギー効率のよい分散装置で、簡単な構造を有する乳化装置として超音波ホモジナイザーがある。製造も可能な高出力超音波ホモジナイザーの例としては、超音波ホモジナイザーUS−600、同US−1200T,同RUS−1200T、同MUS−1200T(以上、(株)日本精機製作所製)、超音波プロセッサーUIP2000,同UIP−4000、同UIP−8000,同UIP−16000(以上、ヒールッシャー社製)等が挙げられる。これらの高出力超音波照射装置は25kHz以下、好ましくは15〜20kHzの周波数で使用される。
【0087】
また、他の公知の乳化手段として、外部からの攪拌部を持たず、低エネルギーしか必要としない、スタチックミキサー、マイクロチャネル、マイクロミキサー、膜乳化装置等を使う方法も有用な方法である。
【0088】
本発明における乳化分散する際の温度条件は、特に限定されるものでないが、機能性油性成分の安定性の観点から10〜100℃であることが好ましく、取り扱う機能性油性成分の融点などにより、適宜好ましい範囲を選択することができる。
また、本発明において高圧ホモジナイザーを用いる場合には、その圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50〜300MPa、更に好ましくは100〜250MPaで処理することが好ましい。
また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
【0089】
乳化により得られた水中油滴型エマルション組成物は、次いで粉末化工程において、乾燥して粉末化される。
本水中油滴型エマルション組成物では、上記(A)成分及び(B)成分を含む包括剤を含むので、乾燥工程においてエマルション組成物を良好な乾燥状態に調整することができ、乾燥装置や周辺の壁面等への付着を抑制することができる。この結果、乾燥工程におけるロスを低減させて収量効率を向上させることができる。
また、このような包括剤によって機能性油性成分が包括されているので、エマルション組成物を乾燥することにより、長期間保存しても保存安定性が良好な乾燥粉末を得ることができる。さらにまた、本発明の機能性粉末の製造方法により得られた粉末組成物は、エマルション組成物における水分の大半を除かれるので、長期経時中の油滴の合一による粗大化を防止し、再溶解後も微細な粒子を得ることができ、透明性を良好なものにすることができる。この結果、機能性油性成分の微細油滴状態が保持された長期安定の機能性粉末とすることができる。
【0090】
本発明の粉末組成物では、上記のようにエマルション組成物を良好な乾燥状態にすることができるので、乾燥工程後の粉末組成物の収率を高いものにすることができる。このような高い収率としては、乾燥手段やエマルション組成物の組成によって異なるが、例えば、乾燥前のエマルション組成物中の固形成分に対する乾燥後の粉末組成物質量比で、75質量%以上にすることができ、好ましくは80質量%以上にすることができる。
【0091】
乾燥手段としては、公知の乾燥手段を用いることができ、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、高周波乾燥、超音波乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。これらの手段は単独で用いてもよいが、2種以上の手段を組み合わせて用いることもできる。
本発明では熱に比較的弱い機能性素材を含むことが多いため、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥が好ましい。また、真空乾燥の一つであるが、0℃以下氷結温度以上の温度を保ちながら真空(減圧)乾燥する方法も好ましい。
真空乾燥又は減圧乾燥する場合、突沸によるエマルションの飛散を回避するため、徐々に減圧度を上げながら濃縮を繰り返しつつ、乾燥させることが好ましい。
【0092】
本発明のエマルションの乾燥手段としては、凍結状態にある材料から氷を昇華させて水分を除去する凍結乾燥が好ましい。この凍結乾燥方法では、通常、乾燥過程が0℃以下、通常は−20℃〜−50℃程度で進行するため、素材の熱変性が起こらず、復水過程で味、色、栄養価、形状、テクスチャーなどが乾燥以前の状態に復元し易い事が大きなメリットとして挙げられる。
市販の凍結乾燥機の例としては、凍結乾燥機VD−800F(タイテック(株))、フレキシドライMP(FTSシステムズ社)、デュラトップ・デュラストップ(FTSシステムズ社)、宝真空凍結乾燥機A型((株)宝エーテーエム)、卓上凍結乾燥機FD−1000(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機FD−550(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機((株)宝製作所)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0093】
また、本発明では、乾燥手段として、生産効率と品質を両立する観点から噴霧乾燥法が特に好ましい。噴霧乾燥は対流熱風乾燥の一種である。液状のエマルションが熱風中に数100μm以下の微小な粒子として噴霧され、乾燥されながら塔内を落下して行くことで固体粉末として回収される。素材は一時的に熱風に曝されるが、曝されている時間が非常に短いことと水の蒸発潜熱のため余り温度が上がらないことから、凍結乾燥同様に素材の熱変性が起きにくく、復水による変化も小さいものである。非常に熱に弱い素材の場合、熱風の代わりに冷風を供給することも可能である。その場合、乾燥能力は落ちるが、よりマイルドな乾燥を実現できる点で好ましい。
【0094】
市販の噴霧乾燥機の例としては、噴霧乾燥機スプレードライヤSD−1000(東京理化器械(株))、スプレードライヤL−8i(大川原化工機(株))、クローズドスプレードライヤCL−12(大川原化工機(株))、スプレードライヤADL310(ヤマト科学(株))、ミニスプレードライヤB−290(ビュッヒ社)、PJ−MiniMax(パウダリングジャパン(株))、PHARMASD(ニロ社)等が挙げられるがこれに限定されることはない。
また、例えば流動層造粒乾燥機MP−01((株)パウレック)、流動層内蔵型スプレードライヤFSD(ニロ社)等のように。乾燥と造粒とを同時に行える装置で、乾燥と同時に取り扱い性の優れた顆粒状にすることも好ましい。
【0095】
本発明の粉末組成物は、復水性、すなわち再び水の中に再溶解させたとき、乾燥前のエマルションの状態を復元する性質を有する。
この機能性粉末を用いることにより、飲料、機能性食品、化粧品等を製造する場合、容易に飲料、機能性食品、化粧品等を製造することができる。
また、この粉末組成物を用いることにより、機能性成分の機能を損なうことなく、機能を発揮させることができ、また、再分散した製品の透明性など外観や保存時の安定性も良好である。
本発明の粉末組成物における再溶解時の透明性は、再溶解時の油滴粒径によって評価することができる。この評価では、1質量%の水溶液としたときに(復水時)の油滴粒径を、透明性の観点及び吸収性の観点から10nm〜200nmにすることが好ましく、更に良好な透明性及び分散安定性並びに上記各種保存安定性の観点から10nm〜150nmとすることが特に好ましい。
【0096】
本発明の水中油滴型エマルションの粒径(体積平均粒径)は市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明のエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
また、エマルション組成物の粒子径は、エマルション組成物の成分以外に、製造方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、油相と水相比率、などの要因によって調整することができる。
【0097】
本発明において、O/W型エマルションの体積平均粒径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)製)を用いて25℃で測定した値を採用する。
前記体積平均粒径の測定方法は、油相成分の濃度が0.1〜1質量%の範囲内になるように純水で希釈を行い、測定用ガラス管を用いて測定を行う。体積平均粒径は、分散媒屈折率として1.3313(純水)、分散媒の粘度として0.8846mPa・S(純水)に設定して測定した時の累積(50%)値として求めることができる。
【0098】
本発明の粉末組成物は、このように製造時における損失が小さく、透明性、分散安定性のみならず、含有成分の保存安定性、粒子径の保存安定性、エマルションとしての保存安定性が良好なものであるため、食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物に適用することが好ましい。
即ち、本発明の食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物は、それぞれ本発明の上記粉末組成物を含むものである。
【0099】
ここで、食品としては、飲料、冷菓など、化粧品としてはスキン化粧料(化粧水、美容液、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料など、医薬品としては、栄養ドリンク、滋養強壮剤などを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
また、前記本発明の食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物は、本発明の粉末組成物と、所望の目的を達成するための添加可能な任意の成分とを、常法により混合等して、得ることができる。
ここで本粉末組成物は、目的とする各種製品組成物の形態に応じて、粉末化の状態で、又は水性媒体に再溶解して、他の成分と混合すればよい。
【0100】
食品、化粧品、医薬品などに対して用いられる本発明の粉末組成物の添加量は、製品の種類や目的などによって異なり一概には規定できないが、製品に対して、0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜5質量%の範囲となるように添加して用いることができる。
添加量が0.01質量%以上であれば目的の効果の発揮が期待でき、10質量%以下であれば、適切な効果を効率よく発揮できることが多い。
【0101】
本発明の粉末組成物は、粉末として長期保存が可能であり、特に再溶解して水溶性製品、例えば飲料(食品の場合)や化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等(化粧品の場合)などに使用した場合には、透明感のある製品が得られ、且つ、長期保存又は滅菌処理などの苛酷条件下での不溶物の析出、沈殿又はネックリングなどの不都合な現象の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0102】
以下に実施例で本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の記載で「部」と「%」表示してあるものは、特に断らない限り質量基準である。
【0103】
<実施例1>
[粉末試料Aの作製]
(エマルションの調製)
下記の成分を、70℃にて1時間溶解後、日本精機製超音波ホモジナイザーU600型を用い1分間均質化を行い、水相組成物Aを得た。
・ショ糖ラウリン酸エステル 5.2g
・モノラウリン酸デカグリセリル 5.2g
・レシチン(大豆由来) 1.9g
・イヌリン(砂糖由来) 17.2g
・トレハロース 17.2g
・純水 246.8g
【0104】
また、下記成分を、70℃にて1時間溶解して、油相組成物Aを得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%)
5.2g
・ミックストコフェロール 1.4g
【0105】
ここで、ショ糖ラウリン酸エステルは三菱化学フーズ(株)製リョートーシュガーエステルL−1695、モノラウリン酸デカグリセリルは日光ケミカルズ(株)製NIKKOL Decaglyn 1−Lを使用した。ヘマトコッカス藻抽出物は、武田紙器(株)製ASTOTS−Sを使用した。ミックストコフェロールは理研ビタミン(株)製の理研Eオイル800を使用した。レシチン(大豆由来)は理研ビタミン(株)製のレシオンPを使用した。また、イヌリンはフジ日本製糖(株)製、トレハロースはH+Bライフサイエンス(株)製を用いた。
【0106】
上記、水相組成物Aと油相組成物Aを混合し、ただちに上記超音波ホモジナイザーを用いて、20分間乳化を行った。なお、液の均質化を図るためにマグネチックスターラーによる攪拌を併用し、液温を60℃に保つべく冷却操作を行いながら超音波照射を実施した。出来上がったエマルションを採取し直ちに室温まで冷却し、アスタキサンチン含有水中油滴型エマルションAとした。
【0107】
(噴霧乾燥)
ヤマト科学製スプレードライヤADL310型を用い、噴霧圧力0.15MPa、出口温度80℃、処理量7ml/分の条件で、上記エマルションAの噴霧乾燥を行い、乾燥粉末試料Aを得た。エマルション100gを乾燥して捕集出来た乾燥粉の質量を秤り、理論量に対する収量を計算した。
【0108】
(粉末試料Bの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、ラフィノース(日本甜菜糖製糖(株)製)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Cの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、マルトトリオース(三菱化学フーズ(株)製オリゴトース)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Dの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、スクロース(和光純薬(株)製)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Eの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、パラチノース(三井製糖(株)製)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
【0109】
(粉末試料Fの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、ラクトース(和光純薬製試薬特級)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Gの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、アラビアガム(コロイドナチュレ社製インスタントガムAB)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Hの作製)
試料Aにおけるイヌリンに替えて、加工澱粉(松谷化学工業(株)製パインデックス#1)を用いた以外は試料Aと同様に作製した。
【0110】
(粉末試料Iの作製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量を8.6g、トレハロースの添加量を8.6gとし、乳化時の水相における水の量を263.9gとした以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Jの調製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量を25.8g、トレハロースの添加量を8.6gとした以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Kの調製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量を8.6g、トレハロースの添加量を25.8gとした以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Lの調製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量を34.4g、トレハロースの添加量をゼロとした以外は試料Aと同様に作製した。
(粉末試料Mの調製)
試料Aにおいて、イヌリンの添加量をゼロ、トレハロースの添加量を34.4gとした以外は試料Aと同様に作製した。
【0111】
[評価]
(再溶解粒径測定)
得られたアスタキサンチン含有粉末(A〜M)各1.00gに99.0gの純水を添加して、マグネチックスターラーにて5分間攪拌を行った。得られた水性エマルションについて、動的光散乱粒径分散測定装置FPAR−1000(大塚電子(株)製)を使用して、25℃にて粒径測定を行った。平均粒径の値は体積平均粒径で示した。
【0112】
粉末A〜Mをそれぞれ25℃50%RHの環境で10.0g秤りとり、50mlの密閉容器に入れたサンプルを、50℃の4週間保存した後の経時粉末A〜Mについて、上記と同様の手順で水に再溶解したときの平均粒径について、上記粒径測定法に従い25℃にて測定を行った。
これらの結果をまとめて、表1に示した。
【0113】
上記の結果より、本発明に相当する粉末組成物は噴霧乾燥時の収量が高く、再分散粒子は微細な粒子であった。また本発明に相当する粉末試料は、特に50℃4週間経時後に、水に再溶解時の平均粒径が小さく液は透明であり良好であり、長期保存後であっても特性が安定していることが分かった。
【0114】
従って、本発明によれば、乾燥工程における収量が高く生産効率に優れ、且つ良好な長期保存安定性を有する粉末組成物を得ることができる。また、このような粉末組成物を用いることによって、生産効率に優れ、且つ長期保存安定性を有する食品組成物、化粧品組成物及び医薬品組成物を得ることができる。
【0115】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の機能性油性成分と、
以下の(A)成分及び(B)成分:
(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも1種の多糖類、及び
(B)トレハロース、
を含む包括剤と、
を含有するエマルション組成物を乾燥して得られた粉末組成物。
【請求項2】
前記粉末組成物を1質量%の水溶液にしたときに得られるエマルション粒子の体積平均粒子径が10nmから200nmである請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
前記粉末組成物中の全糖類の質量に対する上記(B)成分の割合が20〜70質量%の範囲にある請求項1又は請求項2に記載の粉末組成物。
【請求項4】
前記(A)成分が、2〜60の糖単位を有する糖類である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の粉末組成物。
【請求項5】
前記(A)成分が、イヌリン及びラフィノースから選択された少なくとも1つである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粉末組成物。
【請求項6】
前記粉末組成物が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選ばれた少なくとも1種の乳化剤を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の粉末組成物。
【請求項7】
前記機能性油性成分がカロテノイド色素である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の粉末組成物。
【請求項8】
前記カロテノイド色素が、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然抽出物である請求項7に記載の粉末組成物。
【請求項9】
前記カロテノイド色素が、ヘマトコッカス藻色素抽出物である請求項7記載の粉末組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の機能性油性成分を、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質から選ばれた少なくとも1種の乳化剤の存在下、水性媒体に乳化して、エマルション組成物を得ること、
前記水性媒体及び又はエマルション組成物に、以下の(A)成分及び(B)成分:(A)フルクトース単位及びガラクトース単位の少なくとも一方の糖単位を含むと共にフルクトース単位とガラクトース単位との合計単位数が2個以上である少なくとも一種の多糖類、及び(B)トレハロース、を含む包括剤を添加すること、
前記包括剤を含むエマルション組成物を乾燥すること、
を含む粉末組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の粉末組成物を含有することを特徴とする食品組成物。
【請求項12】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の粉末組成物を含有することを特徴とする化粧品組成物。
【請求項13】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の粉末組成物を含有することを特徴とする医薬品組成物。

【公開番号】特開2009−185023(P2009−185023A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334174(P2008−334174)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】