説明

粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物

【課題】1)生成するスライムの粘度が低く、流動性に優れていること、2)スライムの硬化体が発現する早期強度に優れていること、3)建設汚泥として地上へ排出されるスライムの量が少なく、経済的に優れていること等を同時に充足することができる粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物を提供する。
【解決手段】粉状のセメント系固化材100質量部当たり、リグニンスルホン酸ナトリウムを2〜89.9質量%、炭酸アルカリ金属塩を10〜90質量%及び特定のポリエーテル消泡剤を0.1〜8質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る粉状の地盤改良用添加剤を0.5〜15質量部の割合で含有して成るものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物に関する。軟弱な地盤の強度の向上、透水性地盤の止水や遮水等を図るため、地盤改良工事が行なわれている。なかでも、セメントミルクを地中に高圧噴射し、土壌と混合するジェットグラウト工法が注目されている。この工法は、地中に多重管を挿入して回転させながら、その先端付近からセメントミルクを高圧噴射して、地中の土壌を切削すると同時に切削した土壌とセメントミルクとの混合物であるソイルセメントスラリー(以下、単にスライムという)の一部を地上に排出し、その一方で地中の該スライムを硬化させ、地盤を改良する工法である。かかるジェットグラウト工法をはじめとして、セメントミルクを地中に注入する地盤改良工事では、生成するスライムの粘度を低くして流動性を良くすると共に、該スライムが充分な強度を有する硬化体となり、しかもこれらが経済的に達成されることが要求される。生成するスライムの粘度が高くて流動性が悪いと、セメントミルクの注入不良やスライムの地上への排出不良等を引き起こして地盤改良工事それ自体に支障をきたし、かかる支障が生じるのを避けるためにセメントミルクの加水量や注入率等を高くすると、それだけ建設汚泥となる地上へ排出されるスライムの量が増加し、その処理費用が嵩むのである。本発明は、前記のような要求に応える粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生成するスライムの粘度を低下させ、流動性を高める手段として、各種の添加剤を用いることが知られている(例えば特許文献1〜9参照)。しかし、これら従来の手段では、前記した要求に充分に応えることができないという問題がある。
【特許文献1】特開平5−320642号公報
【特許文献2】特開平10−95976号公報
【特許文献3】特開平10−212482号公報
【特許文献4】特開平10−251641号公報
【特許文献5】特開平11−254425号公報
【特許文献6】特開2000−169209号公報
【特許文献7】特開2004−143041号公報
【特許文献8】特開2004−175989号公報
【特許文献9】特開2007−217255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、1)生成するスライムの粘度が低く、流動性に優れていること、2)スライムの硬化体が発現する早期強度に優れていること、3)建設汚泥として地上へ排出されるスライムの量が少なく、経済的に優れていること等を同時に充足することができる粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物としては、粉状のセメント系固化材に、リグニンスルホン酸ナトリウム、炭酸アルカリ金属塩及び特定のポリエーテル系消泡剤から成る粉状の地盤改良用添加剤を所定割合で含有させたものが正しく好適であることを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、粉状のセメント系固化材100質量部当たり、粉状の下記の地盤改良用添加剤を0.5〜15質量部の割合で含有して成ることを特徴とする粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物に係る。
【0006】
地盤改良用添加剤:下記のA成分、B成分及びC成分から成り、且つ該A成分を2〜89.9質量%、該B成分を10〜90質量%及び該C成分を0.1〜8質量%の割合で含有して成る地盤改良用添加剤
A成分:リグニンスルホン酸ナトリウム
B成分:炭酸アルカリ金属塩
C成分:下記のD成分及びE成分から成り、且つ該D成分を50〜70質量%及び該E成分を30〜50質量%の割合で含有して成るポリエーテル系消泡剤
【0007】
D成分:下記の化1で示されるブロック共重合体
E成分:多孔質シリカ微粉末
【0008】
【化1】

【0009】
化1において、
:炭素数12〜20の脂肪族炭化水素基
:オキシエチレン単位の繰り返し数4〜10のポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
:オキシプロピレン単位の繰り返し数20〜50のポリプロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【0010】
本発明に係る粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物に用いる地盤改良用添加剤は、A成分、B成分及びC成分から成るものである。A成分は、リグニンスルホン酸ナトリウムであるが、粉状のリグニンスルホン酸ナトリウムが好ましい。一般に、リグニンスルホン酸は、木材の主要成分であるリグニンをスルホン化したものに含まれる水溶性の天然高分子であり、アルカリで脱糖処理したものがコンクリート用セメント分散剤として使用されている。コンクリート用セメント分散剤に使用されるリグニンスルホン酸塩としては、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸マグネシウム等がよく知られているが、本発明においては、リグニンスルホン酸ナトリウムを使用することが重要である。カルシウム塩やマグネシウム塩は、スライムの流動性を低下させると共に、凝結遅延性を示し、スライムから得られる硬化体の初期強度の低下を招くので好ましくない。またアルカリによる脱糖処理後の還元糖類の残存量は10%未満の範囲内であってより少ないものが好ましい。更に粉状のリグニンスルホン酸ナトリウムとしては、粒子径が1〜2000μmの範囲内のものが好ましい。
【0011】
B成分は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸アルカリ金属塩であるが、なかでも炭酸ナトリウムが好ましい。B成分は一般に、粉状又は顆粒状で供給されるが、粉状のものが好ましく、なかでも粒子径が1〜2000μmの範囲内のものが好ましい。
【0012】
C成分は、前記のD成分及びE成分から成り、且つ該D成分を50〜70質量%及び該E成分を30〜50質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るポリエーテル系消泡剤であるが、D成分を55〜65質量%及びE成分を35〜45質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るポリエーテル系消泡剤が好ましい。
【0013】
D成分は、化1で示されるブロック共重合体である。化1中のRは、1)ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の炭素数12〜20の飽和脂肪族炭化水素基、2)8−ヘキサデセニル基、9−オクタデセニル基、10−エイコセニル基等の炭素数12〜20の不飽和脂肪族炭化水素基である。なかでもRとしては、不飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、9−オクタデセニル基がより好ましい。また化1中のAはオキシエチレン単位の繰り返し数4〜10のポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であるが、オキシエチレン単位の繰り返し数5〜9のポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が好ましい。更に化1中のAはオキシプロピレン単位の繰り返し数20〜50のポリプロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であるが、オキシプロピレン単位の繰り返し数35〜45のポリプロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が好ましい。
【0014】
E成分は、多孔質シリカ微粉末である。かかる多孔質シリカ微粉末は、一般に水ガラスを塩酸等の酸で中和し、析出した沈殿物を水洗した後、乾燥して粉末状としたもので、SiO・nHOの組成で示される非晶質の珪酸であり、それ自体としては公知のものを使用できるが、なかでも比表面積が50〜450m/gであって、且つ平均粒子径が0.1〜500μmの範囲のものが好ましく、更に吸油量(JIS−K5101−13による吸油量)が100ml/100gを超えるものがより好ましい。
【0015】
C成分として用いるポリエーテル系消泡剤は、公知の方法(例えば、特開2004−0491288号公報に記載の方法)で製造できる。かかるポリエーテル系消泡剤としては、粉状のものが好ましく、なかでも粒子径が1〜2000μmの範囲内のものが好ましい。
【0016】
本発明に係る粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物に用いる地盤改良用添加剤は、以上説明したA成分、B成分及びC成分から成り、且つA成分を2〜89.9質量%、B成分を10〜90質量%及びC成分を0.1〜8質量%(合計100質量%)含有して成るものであるが、A成分を15〜79.7質量%、B成分を20〜80質量%及びC成分を0.3〜5質量%(合計100質量%)含有して成るものが好ましい。
【0017】
以上説明した地盤改良用添加剤は、公知の方法で製造できる。A成分、B成分及びC成分がいずれも粉状である場合、攪拌羽根を備えたミキサーを用いて、A成分、B成分及びC成分を室温で混合するだけで、乾燥や粉砕をすることなく、ブロッキングのない、粉状の地盤改良用添加剤を得ることができる。かかる粉状の地盤改良用添加剤のなかでも、粒子径が1〜2000μmの範囲内のものが好ましい。
【0018】
本発明に係る地盤改良用プレミックスセメント組成物に用いる粉状のセメント系固化材としては、1)普通セメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメント等の各種ポルトランドセメント、2)高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の各種混合セメント等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜使用できる。なかでも、粉状のセメント系固化材としては、各種ポルトランドセメントと、その70質量%以下の範囲内で高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム微粉末、石灰石微粉末、石膏等の微粉末混和材料とを混合したものが好ましく、普通ポルトランドセメント及び高炉セメントB種から成り、且つ普通ポルトランドセメントを10〜40質量%及び高炉セメントB種を60〜90質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものがより好ましい。
【0019】
本発明に係る粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物は、粉状のセメント系固化材100質量部当たり、粉状の前記した地盤改良用添加剤を0.5〜15質量部の割合で含有するものとするが、2〜10質量部の割合で含有するものとするのが好ましい。粉状のセメント系固化材100質量部当たり、粉状の前記した地盤改良用添加剤の含有割合が0.5質量部未満であると、生成するスライムの流動性が不充分となり、逆に15質量部超であると、スライムの凝結遅延性が大きくなって得られる硬化体の初期強度の発現が不充分となる。
【0020】
本発明に係る粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物は、スライムを生成させて硬化させる各種の地盤改良工事、なかでもジェットグラウト工法に有用である。通常、本発明に係る粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物を、ミキサーを用いて、その質量の100〜300%、好ましくは125〜275%の混練水と混合してセメントミルクを調製し、該セメントミルクを改良すべき地盤中に注入し、混合して、硬化させる。ジェットグラウト工法では通常、改良すべき対象土壌容積の0.3〜1.5倍の容積、好ましくは0.5〜1.2倍の容積のセメントミルクを高圧ポンプを用いて地盤中に注入し、混合する。
【0021】
本発明に係る粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物は、各種の土壌で構成された地盤の改良に有用である。なかでも、粒子径75μm以下のシルト分を50質量%以上含有する土壌、又は粒子径5μm以下の粘土分を20質量%以上含有する土壌の地盤改良に用いる場合に効果の発現が高い。かかる高粘性の土壌に対しても、地中へのセメントミルクの注入率を上げることなく、したがって建設汚泥となる地上へ排出されるスライムの発生量を抑えつつ、生成するスライムに充分な流動性を付与することができ、また該スライムから得られる硬化体に充分な初期強度を発現させることができる。
【0022】
本発明に係る粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物の使用に際しては、合目的的に他の剤を併用することができる。かかる他の剤としては、防腐剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、防水剤等が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した本発明に係る粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物によると、地盤を構成する各種の土壌に対して生成するスライムに充分な流動性を付与することができ、また該スライムから得られる硬化体に充分な初期強度を発現させることができ、しかもこれらを経済的に行なうことができるという効果がある。
【0024】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0025】
試験区分1(ブロック共重合体の合成)
・D成分としてのブロック共重合体(D−1)の合成
オレイルアルコール269g(1モル)をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム0.7gを加えた後、オートクレーブ内を窒素置換した。撹拌しながら、反応温度を115〜125℃に保ち、エチレンオキサイド264g(6モル)を圧入して付加反応を行なった。圧入終了後、同温度で1時間熟成した後、反応温度を125〜135℃に保ち、プロピレンオキサイド2320g(40モル)を圧入して付加反応を行なった。圧入終了後、同温度で2時間熟成して反応を終了し、生成物を得た。この生成物を、吸着材を用いて濾別精製し、分析したところ、化1中のRが9−オクタデセニル基、Aがオキシエチレン単位の繰り返し数6のポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基、Aがオキシプロピレン単位の繰り返し数40のポリプロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合の化1で示されるブロック共重合体(D−1)であった。
【0026】
・ブロック共重合体(D−2)〜(D−4)及び(DR−1)〜(DR−4)の合成
ブロック共重合体(D−1)の合成と同様にして、ブロック共重合体(D−2)〜(D−4)及び(DR−1)〜(DR−4)を合成した。以上で合成したブロック共重合体(D−1)〜(D−4)及び(DR−1)〜(DR−4)の内容を表1にまとめて示した。
【0027】
【表1】

【0028】
試験区分2(C成分の調製)
・C成分としてのポリエーテル系消泡剤(C−1)の調製
E成分として多孔質シリカ微粉末(E−1)(株式会社トクヤマ社製の商品名トクシールNR、比表面積180m/g、平均粒子径85μm)8kgをリボンミキサーに仕込み、次いでブロック共重合体(D−1)12kgをリボンミキサーに撹拌しながら少しずつ分割添加して充分に混合した後、篩を用いて分級し、粒子径が1〜500μmの範囲内の粉状のポリエーテル系消泡剤(C−1)20kgを得た。
【0029】
・ポリエーテル系消泡剤(C−2)〜(C−6)及び(CR−1)〜(CR−6)の調製
ポリエーテル系消泡剤(C−1)の調製と同様にして、ポリエーテル系消泡剤(C−2)〜(C−6)及び(CR−1)〜(CR−6)の調製をした。以上で調製したポリエーテル系消泡剤(C−1)〜(C−6)及び(CR−1)〜(CR−6)の内容を表2にまとめて示した。

















【0030】
【表2】

【0031】
試験区分3(粉状の地盤改良用添加剤の調製)
・粉状の地盤改良用添加剤(M−1)の調製
A成分として、粉状のリグニンスルホン酸ナトリウム(ノルウェーのボレガード社製の商品名ボレスパースNA)7.4kgをリボンミキサーに仕込み、次いでB成分として炭酸ナトリウム12kg及びC成分として試験区分2で調製したポリエーテル系消泡剤(C−1)0.6kgをリボンミキサーに撹拌しながら少しずつ分割添加して充分に混合した後、篩を用いて分級し、粒子径が1〜500μmの範囲内の粉状の地盤改良用添加剤20kgを得た。
【0032】
・地盤改良用添加剤(M−2)〜(M−13)及び(R−1)〜(R−16)の製造
地盤改良用添加剤(M−1)の製造と同様にして、地盤改良用添加剤(M−2)〜(M−13)及び(R−1)〜(R−16)を調製した。以上で調製した地盤改良用添加剤(M−1)〜(M−13)及び(R−1)〜(R−16)の内容を表3にまとめて示した。

















【0033】
【表3】

【0034】
表3において、
A−1:粉状のリグニンスルホン酸ナトリウム
AR−1:粉状のリグニンスルホン酸カルシウム
AR−2:粉状のリグニンスルホン酸マグネシウム
B−1:粉状の炭酸ナトリウム
B−2:粉状の炭酸カリウム
B−3:粉状の炭酸リチウム
BR−1:粉状の炭酸カルシウム
C−1〜C−6及びCR−1〜CR−6:試験区分2で調製したポリエーテル系消泡剤
【0035】
試験区分4(粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物の調製)
2Lのホバートミキサーに粉状のセメント系固化材1000部を投入し、次に試験区分3で調製した粉状の地盤改良用添加剤を所定部添加して混合し、表4及び表5に記載した粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物を製造した。内容を表4及び表5にまとめて示した。
【0036】
【表4】

【0037】
表4において、
粉状の地盤改良用添加剤の割合:粉状のセメント系固化材100部に対する部数
N−1:普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm)30質量%及び高炉セメントB種(密度=3.04g/cm)70質量%の混合物
N−2:普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm
これらは以下同じ
















【0038】
【表5】

【0039】
試験区分5(セメントミルク及びスライムの調製並びに評価)
・試験例1〜10及び比較試験例1〜16
表4又は表5に記載した粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物及び水を、表6に記載した配合No.1の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク1mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表8にまとめて示した。
【0040】
・試験例11〜14及び比較試験例17〜21
表4又は表5に記載した粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物及び水を、表6に記載した配合No.2の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク0.7mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9にまとめて示した。
【0041】
・試験例15〜18及び比較試験例22〜25
表4又は表5に記載した粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物及び水を、表6に記載した配合No.3の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク1mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9にまとめて示した。
【0042】
・試験例19〜22及び比較試験例26〜29
表4又は表5に記載した粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物及び水を、表6に記載した配合No.4の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク0.7mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9にまとめて示した。
【0043】
・参考試験例1
普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm)30質量%及び高炉セメントB種(密度=3.04g/cm)70質量%の混合物と水とを、表6に記載した配合No.5の条件にしたがい、計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク1mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9に示した。
【0044】
・参考試験例2
普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm)30質量%及び高炉セメントB種(密度=3.04g/cm)70質量%の混合物と水とを、表6に記載した配合No.6の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク1mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9に示した。
【0045】
・参考試験例3
普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm)30質量%及び高炉セメントB種(密度=3.04g/cm)70質量%の混合物と水とを、表6に記載した配合No.7の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク0.7mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9に示した。
【0046】
・参考試験例4
普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm)と水とを、表6に記載した配合No.8の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク1mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9に示した。
【0047】
・参考試験例5
普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm)と水とを、表6に記載した配合No.9の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク1mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9に示した。
【0048】
・参考試験例6
普通ポルトランドセメント(密度=3.16g/cm)と水とを、表6に記載した配合No.10の条件にしたがい計量してホバートミキサーに入れ、均一に混合してセメントミルクを調製した。このセメントミルク0.7mに表7に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1m(1629g)を加えて混合し、スライムを調製した。調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度を測定した。結果を表9に示した。
【0049】
【表6】

【0050】
表6において、
注入率:掘削土1m当たりの注入(混合)したセメントミルクの容量(m)の割合(%)
【0051】
【表7】

【0052】
表7において、
粘土分:粒子径5μm未満の粘土粒子
シルト分:粒子径5μm〜75μm未満のシルト粒子
砂分:粒子径75μm〜2mmの砂粒子
【0053】
試験区分5で調製したスライムの単位容積質量、粘度及び該スライムを硬化させた硬化体の一軸圧縮強度は下記のように測定した。
・単位容積質量:JIS−A1171に準拠し、単位容積質量(kg/L)を測定した。測定値が大きいほど、掘削時の巻き込み空気量が少なく、硬化物の組織が緻密であることを示す。
・粘度:B型粘度計を用い、練り混ぜ直後と30分後に、20℃にて粘度(mPa・s)を測定した。測定値が小さいほど粘度が小さく、流動性が優れていることを示す。施工現場で注入・噴射・混合が可能な流動性を有するスライムとするには、調製したスライムの粘度の値が10000mPa・s以下であることが望まれる。
・一軸圧縮強度試験:JIS−A1108に準拠し、直径50mm×高さ100mmの型枠を用いて成形したスライムの成型品について、材齢1日、7日及び28日の圧縮強度(kN/m)を測定した。
【0054】
【表8】







【0055】
【表9】

【0056】
表9において、
*6:固化せず

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状のセメント系固化材100質量部当たり、粉状の下記の地盤改良用添加剤を0.5〜15質量部の割合で含有して成ることを特徴とする粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物。
地盤改良用添加剤:下記のA成分、B成分及びC成分から成り、且つ該A成分を2〜89.9質量%、該B成分を10〜90質量%及び該C成分を0.1〜8質量%の割合で含有して成る地盤改良用添加剤
A成分:リグニンスルホン酸ナトリウム
B成分:炭酸アルカリ金属塩
C成分:下記のD成分及びE成分から成り、且つ該D成分を50〜70質量%及び該E成分を30〜50質量%の割合で含有して成るポリエーテル系消泡剤
D成分:下記の化1で示されるブロック共重合体
【化1】

(化1において、
:炭素数12〜20の脂肪族炭化水素基
:オキシエチレン単位の繰り返し数4〜10のポリエチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
:オキシプロピレン単位の繰り返し数20〜50のポリプロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基)
E成分:多孔質シリカ微粉末
【請求項2】
B成分が、炭酸ナトリウムである請求項1記載の粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物。
【請求項3】
地盤改良用添加剤が、A成分を15〜79.7質量%、B成分を20〜80質量%及びC成分を0.3〜5質量%の割合で含有して成るものである請求項1又は2記載の粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物。
【請求項4】
粉状の地盤改良用添加剤が、粒子径1〜2000μmの範囲内のものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物。
【請求項5】
粉状のセメント系固化材が、普通ポルトランドセメント及び高炉セメントB種から成り、且つ該普通ポルトランドセメントを10〜40質量%及び該高炉セメントB種を60〜90質量%の割合で含有して成るものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載の粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物。
【請求項6】
ジェットグラウト工法に用いるものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載の粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物。
【請求項7】
粒子径75μm以下のシルト分を50質量%以上含有する土壌又は粒子径5μm以下の粘土分を20質量%以上含有する土壌の地盤改良に用いるものである請求項1〜6のいずれか一つの項記載の粉状の地盤改良用プレミックスセメント組成物。

【公開番号】特開2009−286655(P2009−286655A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140381(P2008−140381)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】