説明

粉砕装置、粉砕システム、及び粉砕流体製造システム

【課題】流体に含まれる粉体を充分に粉砕できる粉砕装置、粉砕システム、及び粉砕流体製造システムを提供すること。
【解決手段】粉体及び液体を含む流体を粉砕する粉砕装置20は、第1臼体30と、この第1臼体30に密接して対向配置された第2臼体40と、を備え、これら第1臼体30及び第2臼体40は駆動部80によって互いに摩擦させられる。流体の混合物が通過する供給孔33を第1臼体30に形成し、これら供給孔33を、第1臼体30の全体に亘って略均等に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体及び液体を含む流体を粉砕する技術に関し、より詳しくは、粉砕装置、粉砕システム、及び粉砕流体製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化及び高性能化に伴って、電子デバイスの実装密度の向上が望まれている。この要望に対して、例えば表面実装型の積層セラミックコンデンサでは、内部電極の卑金属化や、誘電体層の薄層化及び高積層化等によって小型大容量の製品を安価で実現できるようになり、また、コンデンサ、コイル、フィルタ等の受動素子が基板内に内蔵されたモジュールも実現されている。
【0003】
電子デバイスは、一般に、フィラ等の粉体が樹脂バインダ溶液に分散されたスラリーを塗工してグリーンシートを成形したり、同様の手順で作成したペースト印刷し、乾燥、脱バインダ、及び焼成を行ったりして製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、スラリーやペースト中の粉体は、凝集して塊を形成しやすいことが知られる。スラリーやペースト中の粉体の粒子径や形状は、製造される電子デバイスの特性や信頼性に対して大きな影響を与える。このため、凝集した塊を分散させ、所定の粒子径及び形状を与える粉砕作業が必要となる。
【0005】
図11は、従来例に係る粉砕装置500の概略構成図である。図12は、粉砕装置500の稼動状態を示す図である。
【0006】
従来の粉砕装置500は、円板状の第1臼体510及び第2臼体520を備え、これらは互いに密接して対向配置されている。第1臼体510の中央には供給孔511が形成されており、導入部550から導入された液体及び粉体の混合物は、供給孔511を通って第1臼体510及び第2臼体520の空所530に流入する。
【0007】
第1臼体510には図示しない駆動源が接続されており、この駆動源が稼動すると、第1臼体510はその中央を回転軸として回転運動を行う。すると、空所530に流入した混合物は、第1臼体510及び第2臼体520との間で摩擦され、粉砕される。このようにして、粉体が粉砕されてスラリーが形成され、このスラリーは排出部540から外部へと排出される。
【特許文献1】特開平5−116105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述した粉砕装置では、空所に流入する混合物が、供給孔が位置する第1臼体の中央近傍に偏在する。このため、第1臼体の中央近傍では混合物に含まれる粉体が多量に存在し、不充分に粉砕され又は粉砕されなかった粉体が排出されずに蓄積される場合がある。蓄積された粉体は、空所を閉塞したり、空所を広げて第1臼体及び第2臼体を離間させて摩擦による粉砕効率を低減したりする。後者の場合、特に第1臼体の中央近傍以外の部分では、第1臼体及び第2臼体の摩擦の減退が更に著しく、粉砕効率の低減が甚だしいものとなる。
【0009】
また、不充分に粉砕され又は粉砕されなかった粉体が排出されるスラリー中に混入すると、そのスラリーを使用して製造される電子デバイス等の特性や信頼性の低下につながる。
【0010】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、流体に含まれる粉体を充分に粉砕できる粉砕装置、粉砕システム、及び粉砕流体製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、混合物が通過する供給孔を、第1臼体の全体に亘って略均等に形成することで、第1臼体及び第2臼体の空所に満遍なく混合物が流入し、粉砕効率を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0012】
(1) 粉体及び液体を含む流体を粉砕する粉砕装置であって、流体が通過する供給孔が形成された第1臼体と、この第1臼体に密接して対向配置された第2臼体と、前記第1臼体及び前記第2臼体を互いに摩擦させる駆動手段と、を備え、前記供給孔は、前記第1臼体の全体に亘って略均等に位置する粉砕装置。
【0013】
(1)の発明によれば、粉砕装置は以下のように動作する。
第1臼体に導入された流体は、供給孔を通過して、第1臼体及び第2臼体の間の空所に流入する。駆動手段によって第1臼体及び第2臼体が互いに摩擦すると、空所に流入した流体は粉砕されることになる。
【0014】
ここで、第1臼体の全体に亘って略均等に供給孔を形成したので、空所に流入する流体の量や圧力も、空所全体に亘って略均等になる。このため、流体の偏在による粉砕効率の低下が抑制されるので、粉体を充分に粉砕できる。
【0015】
(2) (1)記載の粉砕装置において、前記第2臼体は、所定孔径のフィルタを有する粉砕装置。
【0016】
(2)の発明によれば、第2臼体にフィルタを設けたので、粉砕が充分になされた粉体はフィルタを通過する一方、粉砕が充分になされずに残存する塊状物はフィルタを通過せずに空所に残留する。空所に残留した塊状物は継続して粉砕され、フィルタの孔径を下回ると粉体としてフィルタを通過する。このように、フィルタの孔径を基準として、粉砕が充分になされたものと不充分なものとが分離されるので、第2臼体を経た流体の中に粉砕が不充分なものが混入するのを抑制できる。
【0017】
しかも、前述の通り、流入する流体量は空所全体に亘って略均等であるので、フィルタを通過せずに残留する塊状物量も略均等になる。このため、塊状物が偏在することにより、第1臼体及び第2臼体が局地的に離間して粉砕効率が低下するといった現象は抑制される。従って、(1)の発明と同様に、粉体を充分に粉砕できる。
【0018】
(3) (1)又は(2)記載の粉砕装置において、前記駆動手段は、前記第1臼体及び前記第2臼体を、その対向面に対して水平に相対運動させる水平駆動手段を有する粉砕装置。
【0019】
第1臼体及び第2臼体を摩擦させるためには、これらを相対的に運動させればよく、相対的な運動としては、例えば、回転運動、水平運動が挙げられる。しかし、回転運動では、回転の中心部分に向かうにつれて相対運動速度が小さくなり、回転の外周に向かうにつれて相対運動速度が大きくなる。このため、空所内の場所が異なれば、第1臼体及び第2臼体で生じる摩擦エネルギー、ひいては粉砕効率に差異が生じる。従って、均質に粉砕された流体を得るのが困難である。
【0020】
そこで、(3)の発明によれば、駆動手段に水平駆動手段を設けたので、第1臼体及び第2臼体がその対抗面に水平に相対運動する。ここでいう「水平運動」とは、運動するすべての部分の運動速度が略一定となる運動であり、具体的には回転運動を実質的に含まない運動である。従って、空所内のいずれの場所においても、第1臼体及び第2臼体で生じる摩擦エネルギー、ひいては粉砕効率が略均一であるため、均質に粉砕された流体を得ることができる。
【0021】
ここで、対向面に対する水平運動は、その運動のベクトルに、対向面の水平方向に関する成分が存在する限りにおいて、他の方向に関する成分が含まれる運動であってもよい。
【0022】
(4) (3)記載の粉砕装置において、前記水平駆動手段は、前記第1臼体及び前記第2臼体を、相対的に円運動させる円運動駆動手段を有する粉砕装置。
【0023】
(4)の発明によれば、水平駆動手段に円運動駆動手段を設けたので、第1臼体及び第2臼体は、その対向面に対して水平に相対的に円運動する。その過程で、第1臼体及び第2臼体は全方向に等距離ずつ相対運動するため、空所内の流体が経時的に偏在するといった現象が抑制される。よって、長期間に亘って高い粉砕効率を維持できる。
【0024】
(5) (1)から(4)いずれか記載の粉砕装置において、
前記供給孔は、前記第2臼体側に向かって拡径する形状である粉砕装置。
【0025】
(5)の発明によれば、供給孔を第2臼体側に向かって拡径させたので、供給孔に侵入した粉体又は流体は、供給孔を形成する壁面に沿って空所に流入し、供給孔から拡散して放出される。従って、粉体又は流体が空所の広範囲に亘って流入するため、流体の偏在による粉砕効率の低下がより抑制され、粉体をより充分に粉砕できる。
【0026】
(6) (1)から(5)いずれか記載の粉砕装置において、前記第1臼体及び前記第2臼体の少なくとも一方を超音波振動させる振動手段を更に備える粉砕装置。
【0027】
(6)の発明によれば、振動手段を更に設けたので、第1臼体及び/又は第2臼体が超音波振動し、この振動が空所内の流体へと伝導する。これにより、空所内の流体に残存する塊状物の破砕が促進されるので、粉体を迅速且つ充分に粉砕できる。
【0028】
(7) (1)から(6)いずれか記載の粉砕装置において、前記第1臼体及び前記第2臼体を互いに接近するように付勢する付勢手段を更に備える粉砕装置。
【0029】
空所に流入した流体は、第2臼体を通過するまでの間、第1臼体及び第2臼体を互いに離間するように作用する。このため、第1臼体及び第2臼体が離間し、結果的に粉砕効率が低下する場合がある。
そこで(7)の発明によれば、付勢手段を設けたので、第1臼体及び第2臼体が互いに接近するように付勢される。これにより、第1臼体及び第2臼体が離間するのが抑制されるので、粉砕効率の低下を抑制できる。
【0030】
(8) 複数の(1)から(7)いずれか記載の粉砕装置を備える粉砕システムであって、前記粉砕装置は、前記第2臼体同士が対向するように配置され、前記粉砕システムは、前記第2臼体同士の間の流路に設けられ、外部に連通する排出部を更に備える粉砕システム。
【0031】
(8)の発明によれば、複数の粉砕装置で粉砕された流体は、それぞれの第2臼体を経て、第2臼体同士で画成される流路へと導出される。その後、流体は、流路に設けた排出部から外部へと排出される。このように、複数の粉砕装置で流路を共有するため、構成を簡素化できる。
【0032】
(9) 液体及び粉体を撹拌し混合する撹拌混合装置と、請求項1から6いずれか記載の粉砕装置と、を備える粉砕流体製造システムであって、前記撹拌混合装置は、内部に流路を有するケーシングと、このケーシング内部に配置され振動源に接続された振動軸及びこの振動軸の周囲に設けられた撹拌羽根を有する撹拌体と、を備え、前記ケーシングから排出される流体を、前記第1臼体の前記第2臼体の反対側に供給する粉砕流体製造システム。
【0033】
(9)の発明によれば、撹拌羽根の振動に伴ってケーシング内部に強力な渦流が発生するため、液体及び粉体が高度に撹拌され混合される。このため、ケーシングから排出され第1臼体に供給される流体は、予め高度に撹拌され、塊状物が低減されている。よって、粉体をより迅速且つ充分に粉砕できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、第1臼体の全体に亘って略均等に供給孔を形成したので、空所に流入する流体の量や圧力も、空所全体に亘って略均等になる。このため、流体の偏在による粉砕効率の低下が抑制されるので、粉体を充分に粉砕できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通するものについては、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る粉砕装置20の全体斜視図である。図2は、図1の透視側面図である。
【0037】
〔粉砕装置〕
流体を粉砕する粉砕装置20は匡体21を備え、この匡体21内には第1臼体30及び第2臼体40が格納されている。これら第1臼体30及び第2臼体40は、僅かな空所55を隔て、互いに密接して対向配置されている。また、第1臼体30又は第2臼体40の少なくとも一方、本実施形態では第1臼体30が駆動手段としての駆動部80に接続されており、この駆動部80によって第2臼体40と摩擦させられる。
【0038】
[匡体]
匡体21は、底部を有する筒状の匡体本体23を備え、この匡体本体23の上端には所定幅のドーナツ状の伸縮部27が内接するように設けられている。この伸縮部27の内周面は、後述する冠部25に連結される。
【0039】
冠部25には後述の導入路67が設けられており、この導入路67から導入領域53に導入された流体としての混合物は、第1臼体30、第2臼体40を経て、スラリーとなって導出領域57に導出される。匡体本体23の側面には、第2臼体40の下方に設けられた排出部75が設けられており、導出領域57に導出されたスラリーは排出部75から外部へと排出される。
【0040】
[第1臼体]
第1臼体30は、円板状の第1臼体本体31を備え、この第1臼体本体31の一方の面には、逆漏斗状の冠部25がその広口を向けて被せられている。冠部25の狭口には導入路67が接続されており、この導入路67から粉体及び液体の混合物が導入領域53に導入される。冠部25の外表面には後述する連結部87が固着され、この連結部87を介して駆動源である回転モータ81に間接的に接続されている。これにより、詳細は後述するが、回転モータ81が駆動すると、第1臼体30が運動することになる。
【0041】
なお、導入領域53とは、冠部25及び第1臼体本体31によって画成される内部空間を指す。混合物としては、例えば電子デバイス用のフィラが挙げられる。
【0042】
第1臼体本体31には複数の供給孔33が形成されている。これら供給孔33を介して導入領域53及び空所55が連通されるため、導入領域53に導入された混合物は空所55へと流入する。ここで、供給孔33が第1臼体本体31の全体に亘って略均等の間隔で形成されているため、混合物も空所55の全体に亘って略均等に流入することになる。
【0043】
供給孔33は、第2臼体40側に向かって拡径する形状である。これにより、供給孔33に侵入した混合物は、供給孔33を形成する壁面34に沿って空所55に流入し、供給孔33から拡散して放出される。なお、本実施形態では、供給孔33の一部がテーパ状の形状としたが、これに特に限定されない。
【0044】
供給孔33の孔径や個数は、粉砕するべき流体の量、特性、第2臼体40の透過性等に応じて適宜設定されてよい。また、本実施形態では、すべての供給孔33が互いに略等しい形状、孔径としたが、これに特に限定されない。
【0045】
駆動部80によって駆動される第1臼体30は、第1臼体30及び第2臼体40の対向面に対して水平に、換言すれば第1臼体30及び第2臼体40の面のうち互いに向かい合う側の面に沿って、運動する。即ち、本実施形態における駆動部80は水平駆動手段を構成する。第1臼体本体31は、匡体本体23との間に、第1臼体30が水平運動するための運動領域54を隔てて配置されているため、水平運動時に第1臼体本体31が匡体本体23に接触することはない。
【0046】
[第2臼体]
第2臼体40は、所定孔径の円板状のフィルタ41を備え、このフィルタ41は、外周を囲む枠体42を介して匡体本体23の内壁に固着されている。このため、導出領域57に導出されるスラリーは、すべてフィルタ41を浸透したものになるので、スラリー中の塊状の粉体量が低減される。枠体42の一部は外方向へと突出して伝導部91を形成する。この伝導部91は、匡体本体23を貫通して後述する超音波振動子92の設置位置へと延出する。
【0047】
フィルタ41の広さは、後述の運動時に第1臼体本体31と対向する全範囲よりも広いことが好ましい。また、フィルタ41の孔径は、スラリー中に含まれる粉体の所望の粒子径よりも大きく設定されている。ただし、フィルタ41の孔径は、大きすぎると塊状の粉体も多量に透過することに留意して設定されることが好ましい。
【0048】
フィルタ41の厚みが小さすぎると、フィルタ41が強度不充分のために空所55内の混合物に押し下げられ、第1臼体30との隙間が開く。これにより、粉砕効率が低減する。一方で、フィルタ41の厚みが大きすぎると、スラリーがフィルタ41を通過するのに要する時間が過剰に長くなり、スラリーの製造効率が低下する。
【0049】
[撹拌混合装置]
図3は、撹拌混合装置60の概略構成図である。この図3に示されるように、撹拌混合装置60は、内部に流路を有する装置ケーシング61を有し、この装置ケーシング61の内部には撹拌体63が配置されている。この撹拌体63の振動軸631は振動源62に接続されるとともに、振動軸631の周囲には撹拌羽根としての螺旋羽根632が設けられている。これにより、撹拌体63が装置ケーシング61内で上下動し、粉体や流体を撹拌混合できる。
【0050】
また、装置ケーシング61には、仕切り板65が設けられており、この仕切り板65で装置ケーシング61の内部空間が仕切られて複数の撹拌室64a〜64dが形成されている。なお、仕切り板65の中央には開口が形成され、この開口に振動軸631が挿通されている。
【0051】
振動源62を駆動すると、振動軸631を介して螺旋羽根632が上下振動する。これによって、装置ケーシング61へと導入された原料には、各撹拌室64a〜64d内で強力な渦流が発生する。この渦流によって原料が混合される。
【0052】
一方、装置ケーシング61の上端側には、ろ過フィルタ66が設けられている。装置ケーシング61内部の流路を通って撹拌室64dに移動した撹拌混合物は、ろ過フィルタ66でろ過され、未溶解物又は未溶融物が除去される。また、ろ過フィルタ66の下流には導入路67が設けられており、ろ過フィルタ66でろ過された混合物が導入路67へと流入し、やがて導入領域53へと導入される。導入路67の途中にはポンプ671が設けられ、このポンプ671が混合物を導入領域53へと圧送するため、導入領域53からの混合物の逆流を予防できる。
【0053】
このような撹拌混合装置60は、粉砕装置20と組み合わせて、本発明に係る粉砕流体製造システムを構成する。
【0054】
[付勢部]
粉砕装置20は、匡体本体23の底部及び第2臼体40を連結する付勢手段としての付勢部70を更に備える。付勢部70は第2臼体40を第1臼体30側へと押し上げるため、第1臼体30及び第2臼体40が互いに接近するように付勢される。
【0055】
付勢部70は、本実施形態ではバネ部材で伸縮可能に構成したが、これに限られず、伸縮不能な固定物であってもよい。また、付勢部70は、第1臼体30が運動する範囲、方向等に応じて、混合物によって第2臼体40が押し下げられやすい位置に設けられることが好ましい。この点、第1臼体30及び第2臼体40が相対的に円運動する場合には、空所55のすべての地点において略均等に摩擦が生じるため、付勢部70は匡体本体23の底部及び第2臼体40の全面に亘って略均等に配置すればよい。
【0056】
[駆動部]
駆動部80は、第1臼体30及び第2臼体40を相対的に運動させる。本実施形態では、駆動部80は回転モータ81を備え、その駆動力によって、回転モータ81に接続された回転軸83は軸方向に回転する。回転軸83の周囲には偏心カム84が固着されている。
【0057】
一方、冠部25に設けられた連結部87は、第1臼体本体31及びフィルタ41の対向面に対して水平に延び、その先端近傍にドーナツ状の支持枠88を備える。この支持枠88は連結部87が延びる方向に直交して突出し、連結部87は支持枠88の内壁に設けられた軸受85を介して偏心カム84を軸支する。これにより、回転モータ81が稼動すると、支持枠88及び連結部87が円運動を行い、連結部87に連結された冠部25を介して第1臼体本体31が対向面に対して円運動することになる。このように、駆動部80は、水平駆動手段及び円運動駆動手段を構成する。なお、本実施形態では連結部87が冠部25に連結される構成としたが、第1臼体本体31に直接的に連結される構成であってもよい。
【0058】
ただし、駆動原理は、特に限定されず、例えば磁場の変化で第1臼体30を移動させる方式であってもよい。この場合、匡体21の外部に配置される駆動部からの磁場が匡体21を透過するため、匡体21を貫通して第1臼体30に連結させなくとも、第1臼体30を運動させることができる。これにより、匡体21の内部の密閉性が向上するため、スラリーへの不純物の混入を抑制できる。
【0059】
また、第1臼体30の運動速度は、混合物の組成、スラリー中に含まれる粉体の所望の粒子径、第1臼体30及び第2臼体40の材質(発生する摩擦エネルギーが変化する)等に応じて適宜設定されてよい。第1臼体30の運動速度は、小さすぎると粉砕が不充分となる一方、大きすぎると第1臼体30及び第2臼体40の摩擦熱によって粉体が損傷したり、焦げ付いたりするおそれがある。
【0060】
[振動部]
粉砕装置20は振動手段としての振動部90を更に備え、この振動部90は、伝導部91に設けられた超音波振動子92を有する。この超音波振動子92には発振器93が電気的に接続され、この発振器93から高周波数の電流が超音波振動子92に供給されることで、超音波振動子92が超音波振動を発生する。そして、超音波振動子92で発生した超音波振動は、伝導部91を介して40へと伝導し、空所55内の混合物が激しく振動させる。
【0061】
なお、振動部90は、本実施形態では、第2臼体40を振動させるが、第1臼体30を振動させてもよく、第1臼体30及び第2臼体40の双方を振動させてもよい。
【0062】
[動作]
以上の粉砕装置20の動作を説明する。まず、液体及び粉体からなる混合物が撹拌混合装置60から導入領域53へと導入される。すると、導入領域53に導入された混合物は、供給孔33を通過して空所55へと流入する。空所55に流入した混合物は第2臼体40を押し下げようとする。しかし、第2臼体40が付勢部70によって第1臼体30側に付勢されているので、第1臼体30及び第2臼体40が離間することは抑制される。
【0063】
続いて、回転モータ81が稼動すると、回転軸83が偏心カム84を回転させる。偏心カム84の回転運動は、軸受85で回転エネルギーが相殺されて、支持枠88を円運動させる。すると、連結部87を介して支持枠88に接続された第1臼体30が回転運動することになる。なお、第1臼体30の円運動に伴って、伸縮部27は、冠部25に接近される部分は収縮し、冠部25に離間される部分は伸長する。これにより、第1臼体30は、空所55の密閉性が保持されたまま円運動できることになる。
【0064】
ここで、第1臼体30の運動態様の詳細について、図4を参照して説明する。図4(A)〜(E)は、図1の上方から見たときの粉砕装置20の稼動状態を順に示す図である。
【0065】
図4(A)に示されるように、初期段階では、第1臼体30及び第2臼体40は同軸上に配置されている。続いて駆動部80を稼動させると、駆動部80に接続された第1臼体30は、第2臼体40に対して円運動を開始する。図4(B)〜(D)のように順次移動した後、図4(E)のように初期と同じ位置に戻る。以上の動作を繰り返すことで、第1臼体30及び第2臼体40が互いに摩擦し、空所55内の混合物が粉砕される。
【0066】
この間、発振器93を稼動させると、超音波振動子92が超音波振動し、この振動が伝導部91を介して第2臼体40に伝導する。すると、空所55内の第2臼体40に接触する混合物が激しく振動させられ、混合物に含まれる粉体が破砕される。
【0067】
このようにして粉砕された混合物は、スラリーとなってフィルタ41を浸透する。やがて、フィルタ41を通過したスラリーは、導出領域57へと導出された後、排出部75から外部へと排出される。
【0068】
[作用効果]
本実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0069】
第1臼体30の全体に亘って略均等に供給孔33を形成したので、空所55に流入する混合物の量や圧力も、空所55全体に亘って略均等になる。このため、混合物の偏在による粉砕効率の低下が抑制されるので、粉体を充分に粉砕できる。
【0070】
粉砕が充分になされた粉体は第2臼体40を通過する一方、粉砕が充分になされずに残存する塊状物は第2臼体40を通過せずに空所55に残留する。空所55に残留した塊状物は継続して粉砕され、第2臼体40を構成するフィルタ41の孔径を下回ると粉体としてフィルタを通過する。このように、フィルタ41の孔径を基準として、粉砕が充分になされたものと不充分なものとが分離されるので、第2臼体40を経たスラリーの中に粉砕が不充分なものが混入するのを抑制できる。
しかも、流入する混合物量は空所55全体に亘って略均等であるので、フィルタ41を通過せずに残留する塊状物量も略均等になる。このため、塊状物が偏在することにより、第1臼体30及び第2臼体40が局地的に離間して粉砕効率が低下するといった現象は抑制される。従って、粉体を充分に粉砕できる。
【0071】
第1臼体30及び第2臼体40がその対抗面に水平に相対運動するので、空所55内のいずれの場所においても、第1臼体30及び第2臼体40で生じる摩擦エネルギー、ひいては粉砕効率が略均一である。よって、均質に粉砕されたスラリーを得ることができる。
【0072】
第1臼体30及び第2臼体40は、その対向面に対して水平に相対的に円運動するので、その過程で、第1臼体30及び第2臼体40は全方向に等距離ずつ相対運動する。これにより、空所55内の混合物が経時的に偏在するといった現象が抑制されるため、長期間に亘って高い粉砕効率を維持できる。
【0073】
供給孔33を第2臼体40側に向かって拡径させたので、供給孔33に侵入した混合物は、供給孔33を形成する壁面34に沿って空所55に流入し、供給孔33から拡散して放出される。従って、混合物が空所55の広範囲に亘って流入するため、混合物の偏在による粉砕効率の低下がより抑制され、混合物をより充分に粉砕できる。
【0074】
振動部90を更に設けたので、第2臼体40が超音波振動し、この振動が空所55内の混合物へと伝導する。これにより、空所55内の混合物に残存する塊状物の破砕が促進されるので、粉体を迅速且つ充分に粉砕できる。
【0075】
付勢部70を更に設けたので、第1臼体30及び第2臼体40が互いに接近するように付勢される。これにより、第1臼体30及び第2臼体40が離間するのが抑制されるので、粉砕効率の低下を抑制できる。
【0076】
螺旋羽根632の振動に伴って装置ケーシング61内部に強力な渦流が発生するため、液体及び粉体が高度に撹拌され混合される。このため、装置ケーシング61から排出され第1臼体30に供給される混合物は、予め高度に撹拌され、塊状物が低減されている。よって、粉体をより迅速且つ充分に粉砕できる。
【0077】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る粉砕装置20Aの全体斜視図である。図6は、図5の透視正面図である。本実施形態は、第2臼体40が運動する点において、第1実施形態と異なる。
【0078】
即ち、伝導部91の先端には連結部87Aが更に設けられ、この連結部87Aは支持枠88Aの内壁に設けられた軸受85Aを介して偏心カム84Aを軸支する。この偏心カム84Aは回転軸83Aを囲むように固着され、この回転軸83Aは回転モータ81に接続されている。これにより、回転モータ81Aを稼動させると、連結部87A、伝導部91を介して第2臼体40が回転運動することになる。
【0079】
ここで、枠体42の周囲には、伸縮部27Aが内接するように設けられている。ただし、枠体42及び伝導部91は、伸縮部27Aを貫通して連結されている。これにより、伝導部91が回転運動及び超音波振動すると、そのエネルギーが直接的に枠体42へと伝導され、結果的にフィルタ41が回転運動及び超音波振動することになる。
【0080】
なお、本実施形態では、冠部25が運動する構成ではないので、匡体21Aの全体を非弾性部材で形成したが、これに特に限定されない。
【0081】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0082】
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態に係る粉砕システム10の全体斜視図である。図8は、図7の透視正面図である。本実施形態は、粉砕装置20a,20bを設けている点において、第2実施形態と異なる。
【0083】
粉砕システム10は、2つの粉砕装置20a,20bを備え、これら粉砕装置20a,20bは、第2臼体40a,40bが導出領域57を隔てて対向するように配置されている。また、粉砕装置20a,20bの匡体21Bは、底部のない筒状の匡体本体23Bを備え、この匡体本体23Bの両端には、伸縮部27a,27bがそれぞれ設けられている。
【0084】
伸縮部27a,27bの内周面の各々は、冠部25a,25bに連結される。これら冠部25a,25bの狭口は撹拌混合装置60に連通され、この撹拌混合装置60から混合物が導入領域53a,53bに導入される。
【0085】
また、第2臼体40a,40bは、互いに付勢部70で連結され、この付勢部70によってそれぞれ第1臼体30a,30b側へと付勢されている。
【0086】
駆動部80a,80bは、第2臼体40a,40bの各々を第1臼体30a,30bに対して運動させる。ここで、第2臼体40a,40bの運動条件(運動範囲、運動速度、運動経路)は、同一であっても異なっていてもよい。ただし、空所55a,55bから導出領域57へと導出されるスラリーを互いに均一化できる点で、第2臼体40a,40bの運動条件は同一であることが好ましい。
【0087】
また、振動部90a,90bも、第2臼体40a,40bの各々を超音波振動させる。ここで、第2臼体40a,40bの振動は、同期されていても、されていなくてもよい。ただし、空所55a,55bから導出領域57へと導出されるスラリーを互いに均一化できる点で、第2臼体40a,40bの運動条件は同一であることが好ましい。同様の観点から、撹拌混合装置60からの導入条件(導入速度、導入圧)も、同一又は異なっていてよいが、同一であることが好ましい。
【0088】
排出部75は、空所55a,55bの間の匡体本体23Bの側面に設けられている。これにより、空所55a,55bから導出領域57へと導出されたスラリーは、導出領域57で合流した後、排出部75から外部へと排出される。本実施形態における導出領域57は流路を構成する。
【0089】
[作用効果]
本実施形態によれば、前述した第2実施形態による作用効果に加えて、以下のような作用効果が得られる。
複数の粉砕装置20a,20bで粉砕されたスラリーは、それぞれの第2臼体40a,40bを経て、第2臼体40a,40b同士で画成される導出領域57へと導出される。その後、スラリーは、導出領域57に設けた排出部75から外部へと排出される。このように、複数の粉砕装置20a,20bで導出領域57を共有するため、構成を簡素化できる。
【0090】
<変形例>
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0091】
例えば、前記実施形態では、第1臼体30が運動する円運動の向きは時計回りとしたが、これに限られず、反時計周りであってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0092】
図9及び図10は、第1臼体30及び第2臼体40の相対運動の変形例を示す図である。図9に示される変形例では、第1臼体30が、第2臼体40に対して水平方向(図9における左右方向)に往復運動を行っている。また、図10に示される変形例では、第1臼体30が、第2臼体40に対して時計回りに回転運動を行っている。このような変形例も本発明に包含されるものである。
【0093】
また、前記実施形態では第1臼体30を運動させる構成としたが、相対的に運動する限りにおいて、第2臼体40を運動させる構成、第1臼体30及び第2臼体40を運動させる構成であってもよい。第2臼体40を運動させるためには、連結部87を例えば匡体本体23に連結すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施形態に係る粉砕装置の全体斜視図である。
【図2】図1の透視正面図である。
【図3】前記実施形態に係る粉砕流体製造システムを構成する撹拌混合装置の概略構成図である。
【図4】前記実施形態に係る粉砕装置の使用状態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る粉砕装置の全体斜視図である。
【図6】図5の透視正面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る粉砕システムの全体斜視図である。
【図8】図7の透視正面図である。
【図9】本発明の粉砕装置を構成する第1臼体及び第2臼体の運動状態の一変形例を示す図である。
【図10】本発明の粉砕装置を構成する第1臼体及び第2臼体の運動状態の別の変形例を示す図である。
【図11】従来例に係る粉砕装置の透視図である。
【図12】図11の粉砕装置の稼動状態を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
10 粉砕システム
20 粉砕装置
21 匡体
30 第1臼体
33 供給孔
40 第2臼体
55 空所
60 撹拌混合装置
61 装置ケーシング
62 振動源
63 撹拌体
631 振動軸
632 螺旋羽根
67 導入路
70 付勢部(付勢手段)
75 排出部
80 駆動部(駆動手段、水平駆動手段、円運動駆動手段)
90 振動部(振動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体及び液体を含む流体を粉砕する粉砕装置であって、
流体が通過する供給孔が形成された第1臼体と、この第1臼体に密接して対向配置された第2臼体と、前記第1臼体及び前記第2臼体を互いに摩擦させる駆動手段と、を備え、
前記供給孔は、前記第1臼体の全体に亘って略均等に位置する粉砕装置。
【請求項2】
請求項1記載の粉砕装置において、
前記第2臼体は、所定孔径のフィルタを有する粉砕装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の粉砕装置において、
前記駆動手段は、前記第1臼体及び前記第2臼体を、その対向面に対して水平に相対運動させる水平駆動手段を有する粉砕装置。
【請求項4】
請求項3記載の粉砕装置において、
前記水平駆動手段は、前記第1臼体及び前記第2臼体を、相対的に円運動させる円運動駆動手段を有する粉砕装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか記載の粉砕装置において、
前記供給孔は、前記第2臼体側に向かって拡径する形状である粉砕装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれか記載の粉砕装置において、
前記第1臼体及び前記第2臼体の少なくとも一方を超音波振動させる振動手段を更に備える粉砕装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれか記載の粉砕装置において、
前記第1臼体及び前記第2臼体を互いに接近するように付勢する付勢手段を更に備える粉砕装置。
【請求項8】
複数の請求項1から7いずれか記載の粉砕装置を備える粉砕システムであって、
前記粉砕装置は、前記第2臼体同士が対向するように配置され、
前記粉砕システムは、前記第2臼体同士の間の流路に設けられ、外部に連通する排出部を更に備える粉砕システム。
【請求項9】
液体及び粉体を撹拌し混合する撹拌混合装置と、請求項1から7いずれか記載の粉砕装置と、を備える粉砕流体製造システムであって、
前記撹拌混合装置は、内部に流路を有するケーシングと、このケーシング内部に配置され振動源に接続された振動軸及びこの振動軸の周囲に設けられた撹拌羽根を有する撹拌体と、を備え、前記ケーシングから排出される流体を、前記第1臼体の前記第2臼体の反対側に供給する粉砕流体製造システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−272678(P2008−272678A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120038(P2007−120038)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000251211)冷化工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】