説明

粉粒体およびその改質方法

【課題】鉄道や道路の路盤改良に使用される路盤改良材において、雨天時のハンドリング性を改善する。
【解決手段】ベントナイトを主剤とする膨潤性基材の表面に生分解性の膨潤遅延剤がコーティングされた路盤改良材13を用いる。この膨潤遅延剤は、造膜剤(メチルセルロース、水ガラスなど)、撥水剤(流動パラフィン、硬化油など)、難吸水性鉱物(タルク、クロライトなど)その他である。これにより、路盤改良材13は、初期膨潤が遅延し、膨潤性基材(ベントナイト)が施工中に吸収膨潤しなくなる。路盤改良材13の膨潤遅延剤は、微生物などによって地中で容易に分解され、地球にやさしい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道や道路の路盤改良に使用される路盤改良材その他の粉粒体と、その粉粒体の改質方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベントナイトを主剤とする路盤改良材は、路盤表面において雨水などを吸収して自己膨潤することにより、遮水効果を発揮するとともに、路盤土(路盤の泥土)の流出を物理的に拘束するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ベントナイトは極めて吸収膨潤しやすい材料であることから、特に雨天時において、ベントナイトが施工中に吸収膨潤してしまう恐れがある。この場合、路盤改良材のハンドリング性(施工性)が悪くなるという不都合がある。
【0004】
このような不都合は、路盤改良材に限らず、広く膨潤性基材からなる粉粒体について同様に発生する。
【0005】
本発明は、こうした不都合を解消することが可能な、粉粒体およびその改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、請求項1に係る粉粒体の発明は、膨潤性基材に膨潤遅延剤が施されていることを特徴とする。
また、請求項2に係る粉粒体の発明は、前記膨潤遅延剤は、生分解性を具備していることを特徴とする。
また、請求項3に係る粉粒体の発明は、前記膨潤性基材は、粘土鉱物を主剤とするものであることを特徴とする。
また、請求項4に係る粉粒体の発明は、前記粘土鉱物は、ベントナイトであることを特徴とする。
また、請求項5に係る粉粒体の発明は、前記膨潤遅延剤は、造膜剤、撥水剤および難吸水性鉱物からなる群のいずれか1つ以上であることを特徴とする。
また、請求項6に係る粉粒体の改質方法の発明は、膨潤性基材に膨潤遅延剤を施す膨潤遅延化工程が含まれることを特徴とする。
また、請求項7に係る粉粒体の改質方法の発明は、前記膨潤遅延化工程において、前記膨潤性基材の表面に前記膨潤遅延剤がコーティングされることを特徴とする。
また、請求項8に係る粉粒体の改質方法の発明は、前記膨潤遅延化工程において、前記膨潤性基材に前記膨潤遅延剤が練り込まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粉粒体の初期膨潤が遅延するため、雨天時などにおける粉粒体のハンドリング性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は路盤補修方法の一例を示す工程図であって、(a)は路盤改良材を撒き出す前の状態図、(b)は路盤改良材を撒き出した後の状態図である。
【0010】
省力化軌道1は、図1(a)に示すように、粘性土からなる路盤2を有しており、路盤2の上側には、てん充層5が形成されている。てん充層5の上側には複数本のまくらぎ6が、図1紙面と直角な方向に沿って所定の間隔で配設されており、これらまくらぎ6の上側には2本一対のレール7が、図1紙面と直角な方向に延伸する形で載置されている。さらに、路盤2の上側には多数個のバラスト9が、てん充層5およびまくらぎ6の周囲に敷設されている。
【0011】
そして、この省力化軌道1において、図1(a)に示すように、列車などの交通荷重に起因して路盤2の表面に空洞4が発生した場合には、特定の路盤改良材を空洞4に撒き出す。
【0012】
それには、図1(a)に示すように、地上から空洞4に達するように注入管10を設置し、この注入管10から路盤改良材を注入する。この路盤改良材としては、ベントナイト(粘土鉱物)を主剤とする膨潤性基材の表面に、生分解性の膨潤遅延剤がコーティングされたものを使用する。この膨潤遅延剤は、造膜剤、撥水剤、難吸水性鉱物その他を単独で用いてもよく、2つ以上を混用しても構わない。ここで、造膜剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、水ガラスなどが挙げられる。撥水剤としては、流動パラフィン、硬化油、界面活性剤などが挙げられる。難吸水性鉱物としては、タルク、クロライト、蝋石クレーなどが挙げられる。その他の膨潤遅延剤としては、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、澱粉類などが挙げられる。
【0013】
こうして注入管10から路盤改良材が注入されると、図1(b)に示すように、路盤改良材13が空洞4に撒き出される。このとき、路盤改良材13は、その表面に膨潤遅延剤がコーティングされているので、初期膨潤が遅延する。そのため、雨天時において、膨潤性基材(ベントナイト)が施工中に吸収膨潤してしまう恐れはなく、路盤改良材13のハンドリング性を改善することができる。また、施工中に膨潤しない分だけ、多量の路盤改良材13を注入することができ、路盤改良性能の向上につながる。
【0014】
こうしてベントナイトを主剤とする路盤改良材13が空洞4に撒き出されると、この路盤改良材13が徐々に吸水膨潤して空洞4が充填される。ここで、省力化軌道1の路盤補修が終了する。なお、路盤改良材13の膨潤遅延剤は、生分解性を備えているため、路盤補修後に、微生物などによって地中で容易に分解されることとなり、地球にやさしい。
【0015】
なお、上述の実施形態においては、ベントナイトを主剤とする膨潤性基材からなる路盤改良材13を用いる場合について説明したが、路盤改良材13の膨潤性基材は、ベントナイト以外の粘土鉱物を主剤とするものであってもよい。例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイトなどのスメクタイト族や、バーミキュライトなどの層状珪酸(ケイ酸)塩鉱物その他の粘土鉱物を主剤とする膨潤性基材を代用することもできる。
【0016】
なお、上述の実施形態においては、膨潤性基材の表面に膨潤遅延剤がコーティングされた路盤改良材13について説明したが、膨潤性基材を製造する際に、この膨潤性基材に膨潤遅延剤を練り込むようにしても構わない。この場合、余計な工程が増えないので、製造時の作業性を高めることができる。
【0017】
なお、上述の実施形態においては、路盤改良材13について説明したが、膨潤性基材からなるものであれば、路盤改良材13以外の粉粒体(例えば、土木工事用の止水剤など)に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】路盤補修方法の一例を示す工程図であって、(a)は路盤改良材を撒き出す前の状態図、(b)は路盤改良材を撒き出した後の状態図である。
【符号の説明】
【0019】
1……省力化軌道
2……路盤
4……空洞
5……てん充層
6……まくらぎ
7……レール
9……バラスト
10……注入管
13……路盤改良材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤性基材に膨潤遅延剤が施されていることを特徴とする粉粒体。
【請求項2】
前記膨潤遅延剤は、生分解性を具備していることを特徴とする請求項1に記載の粉粒体。
【請求項3】
前記膨潤性基材は、粘土鉱物を主剤とするものであることを特徴とする請求項1または2に記載の粉粒体。
【請求項4】
前記粘土鉱物は、ベントナイトであることを特徴とする請求項3に記載の粉粒体。
【請求項5】
前記膨潤遅延剤は、造膜剤、撥水剤および難吸水性鉱物からなる群のいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の粉粒体。
【請求項6】
膨潤性基材に膨潤遅延剤を施す膨潤遅延化工程が含まれることを特徴とする、粉粒体の改質方法。
【請求項7】
前記膨潤遅延化工程において、前記膨潤性基材の表面に前記膨潤遅延剤がコーティングされることを特徴とする、請求項6に記載の粉粒体の改質方法。
【請求項8】
前記膨潤遅延化工程において、前記膨潤性基材に前記膨潤遅延剤が練り込まれることを特徴とする、請求項6に記載の粉粒体の改質方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−69457(P2007−69457A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258993(P2005−258993)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000104814)クニミネ工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】