説明

粉粒体タンクにおけるキャンバス取付構造

【課題】 タンク本体の底部に敷設されるキャンバスの中央部に集中した粉粒体の排出管による吸込能率を高めることができ、粉粒体排出後の粉粒体の残量を大幅に軽減することができる。
【解決手段】 キャンバス10は、タンク本体1の長手方向の両端部からその中央部に向かって下り勾配に傾斜され、かつ、そのタンク本体1の略全長にわたりその幅方向の両側部から該タンク本体1の底部の中央軸線に向かって下り勾配に傾斜され、その幅方向の傾斜角は、タンク本体1の長手方向の中央部が、その前、後部よりも大きくされ、その中央部に排出管4の吸込口4pが臨んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体タンクの底部に敷設されるキャンバスの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントなどの粉粒体を積載する粉粒体タンクをシャシフレーム上に搭載してなる粉粒体運搬車において、その粉粒体タンク内の底部にキャンバスを敷設し、そのキャンバス上に積載した粉粒体を、キャンバスのメッシュから噴き出す加圧エアにより流動化させて排出管より外部に排出するようにしたものは良く知られている。
【0003】
ところで、かかる粉粒体タンクのキャンバス取付構造では、後記特許文献1に開示されるように、キャンバスは、タンクの長手方向の両端部からその中央部に向かい、かつ、タンクの幅方向両側部からその中央部に向かって下り勾配に傾斜されて、その中央部に排出管の吸込口が臨むようにされ、キャンバス上をエアスライドした粉粒体がその中央部から排出管に吸込まれ易いようにされている。
【特許文献1】実用新案登録第2589410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1に開示されるものでは、タンクの幅方向両側部からその中央部へ向かうキャンバスの傾斜角は、タンクの全長にわたり一定とされているいるため、エアスライドした粉粒体の、排出管の吸込口が臨んでいるキャンバスの中央部への集中が緩慢になり、粉粒体の排出後の残量軽減機能が不充分であるという問題がある。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、粉粒体の排出後の残量軽減効果を高めるようにした、新規な粉粒体タンクにおけるキャンバス取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的達成のため、本請求項1記載の発明は、タンク本体内の底部にキャンバスを敷設し、このキャンバスによりタンク本体内をエア室と、粉粒体収容室とに区画し、エア室よりキャンバスを通って粉粒体収容室に噴き出す加圧エアにより粉粒体を流動化させ、タンク本体にその内外を連通して設けられる排出管から外部に排出するようにした、粉粒体タンクにおいて、前記キャンバスは、タンク本体の長手方向の両端部からその中央部に向かって下り勾配に傾斜され、かつ、そのタンク本体の略全長にわたりその幅方向の両側部から該タンク本体の底部の中央軸線に向かって下り勾配に傾斜され、その幅方向の傾斜角は、タンク本体の長手方向の中央部が、その前、後部よりも大きくされており、その中央部に前記排出管の吸込口が臨んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本請求項1記載の発明によれば、キャンバスは、タンク本体の両側部からその底部の中央軸線に向かう幅方向の傾斜角が、タンク本体の長手方向の前部および後部よりもその中央部の方が大きいので、キャンバス上をスライドする粉粒体は、排出管の吸込口が臨むタンク本体の中央部に集中し易くなり、これにより、キャンバスの中央部に集中した粉粒体の、排出管による吸込能率を高めることができ、粉粒体排出後の粉粒体の残量を大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0009】
図1〜9は、本発明の実施例を示すものであり、図1は、本発明にかかる粉粒体タンクを備えた粉粒体運搬車の全体側面図、図2は、図1の2−2線に沿う拡大断面図、図3は、図2の3−3線に沿う拡大断面図、図4は、図3の4矢視図、図5は、図3の5−5線に沿う断面図、図6は、図5の6矢視仮想線囲い部分の拡大図、図7は、図3の7−7線に沿う拡大断面図、図8は、図4の8−8線に沿う拡大断面図、図9は、パンチプレート群の分解斜視図である。
【0010】
図1において、粉粒体運搬車のシャシフレームCF上には、サブフレームSFが一体に設けられ、このサブフレームSF上に粉粒体タンクPTが搭載されている。粉粒体タンクPTは、前後方向に長い筒状のタンク本体1を備えており、このタンク本体1は、その前後に湾曲状に膨出する前後部端板1f,1rを有して密閉状に形成されており、その底部に収容粉粒体を排出するためのエアスライド構造を備えている。
【0011】
タンク本体1の底壁1bは、その前後端板より中央部に向かって下向きに傾斜しており、そのタンク本体1の底部にはキャンバス10が敷設され、このキャンバス10により、タンク本体1内は、エア室CAと、その上の粉粒体収容室CPとに区画されており、エア室CAに、シャシフレームCFに設けられるエアコンプレッサ3の吐出口がエア配管2を介して連通され、エアコンプレッサ3からの加圧エアが圧送されるようにされる。
【0012】
また、タンク本体1には、粉粒体収容室CPと外部とを連通する排出管4が設けられ、該排出管4の吸込部は、粉粒体収容室CP内を下向きに湾曲されていて、その吸込口4pは、漏斗状に拡開されて、タンク本体1の中央部においてキャンバス10の最低部上に開口しており、流動化した粉粒体は、この排出管4を通って外部に排出される。
【0013】
また、粉粒体タンクPTの上面には、粉粒体の投入用の数個のマンホール5が開口され、これらのマンホール5は、マンホール蓋6により開閉される。
【0014】
図5〜7に示すように、タンク本体1の側壁内面には、その全域にわたり滑り板11が配設される。この滑り板11は、その上縁がタンク本体1の内面に溶接されている。滑り板11は、タンク本体1の中央部に向かって下り勾配に傾斜する滑り面11Aを備える。そして、滑り面11Aの傾斜角は、タンク本体1内に収容される粉粒体の安息角よりも若干大きくされている。滑り板11には、その下端より略鉛直に屈曲されて下向きに延長するキャンバス支持壁12が一体に形成されていて、その下端は、タンク本体1の底壁1b内面に溶接されている。
【0015】
キャンバス支持壁12の上下中間部には、その全長に亘ってキャンバス支持プレート13が溶接される。このキャンバス支持プレート13は、略平坦なキャンバス支持面13Aと、そこから内方に向かって下向きに傾斜するパンチプレート支持面13Bとを備え、キャンバス支持面13A上に、キャンバス10の外縁部が取り付けられる。しかして、前記キャンバス支持壁12とキャンバス支持プレート13とは、キャンバス10を支持するキャンバス支持フレームFCを構成している。
【0016】
タンク本体1の底壁1bの幅方向の中央部には、中央支持フレーム14が、その全長に亘り固定されており、この中央支持フレーム14は、後の述べるようにキャンバス10の浮き上がりを防止すべく、その上面に、キャンバス10の中間部が固定される。
【0017】
キャンバス支持プレート13および中央支持フレーム14には、キャンバス10を敷設するためのパンチプレート群15が取り付けられる。図2〜8に示すように、パンチプレート群15は、キャンバス支持プレート13と、中央支持フレーム14上に橋架固定される。パンチプレート群15は、図9に示すパンチプレート16と、中央部パンチプレート17とより構成されており、それらのパンチプレート16,17は、左右2列に並列して左右キャンバスプレート13と中央支持フレーム14上に前後に連続して縦列配置される。そして、図6,7に示すように、それらのパンチプレート16,17の外側縁の平坦な支持片16B,17Bは、前記キャンバスプレート13のパンチプレート支持面13B上に載置され、また、それらの内側縁は中央支持フレーム14に係合溶接される。
【0018】
図9に示すように、パンチプレート16は、その前後両縁に下向きに直角に折り曲げられた取付片16A,16Aを、またその外側縁に平坦な支持片16Bを備える。また、中央部パンチプレート17は、その前後両縁に下向きに直角に折り曲げられた取付片17A,17Aを、またその外側縁に平坦な支持片17Bを備え、その上面は外側縁から内側縁に向け、すなわちキャンバス支持プレート13から中央支持フレーム14に向かって下り勾配のスコップ状に形成されていてその前後両縁に下り勾配の傾斜面17C,17Cを有する。
【0019】
図3,8に示すように、パンチプレート16およびパンチプレート17よりなるパンチプレート群15の上面は、タンク本体1の前後端部よりその中央部に向けて下り勾配に傾斜されている。また 図5,6に示すように、パンチプレート16の上面は、タンク本体1の左右両側部からタンク本体1の底部の中央軸線L−Lに向けて、すなわちキャンバス支持プレート13から中央支持フレーム14に向けて水平面に対して所定の傾斜角(たとえば10°〜20°)をもって下り勾配に傾斜しているのに対し、図7に示すように、中央部パンチプレート17の上面は、タンク本体1の左右両側部からタンク本体1の底部の中央軸線L−Lに向けて、すなわちキャンバス支持プレート13から中央支持フレーム14に向けて水平面に対して前記パンチプレート16が水平面に対してなす傾斜角(たとえば10°〜20°)よりも大きい傾斜角(たとえば13°〜25°)をもって下り勾配に傾斜している。したがって、パンチプレート群15上に敷設されるキャンバス10の、タンク本体1の両側部からその底部の中央軸線L−Lに向かう幅方向の傾斜角は、タンク本体1の前、後部(パンチプレート16の傾斜角)よりもその中央部(中央部パンチプレート17の傾斜角)の方が大きい。よって、キャンバス10の中央部は、タンク本体1の長手方向および幅方向のいずれからも他の部分よりも低い位置にあり、そこに、前記排出管4の吸込口4pが臨むようにされる。
【0020】
キャンバス支持プレート13のキャンバス支持面13A上には、これと協働してキャンバス10の外側部を挟持固定する押え板20が設けられる。
【0021】
前記パンチプレート群15上に敷設されるキャンバス10の外側部をキャンバス支持プレート13と押え板20との間に挟んだのち、取付ボルト24を、押え板20を通してウエルドナット22に螺締すれば、キャンバス10の外側部をキャンバス支持プレート13と、押え板20との間に挟持固定することができる。
【0022】
キャンバス10の外側部の、取付ボルト24を含む取付部は、押え板カバー25により覆われる。そして、押え板カバー25のカバー部25Bは、押え板20および取付ボルト24を覆うと共に滑り板11の滑り面11Aと、キャンバス10の上面間を滑らかに連続的に連絡させることができ、それらの間に段差が形成されることがない。したがって、粉粒体収容室CPに収容される粉粒体は、滑り板11より押え板カバー25を通ってキャンバス10へと円滑に流れ、キャンバス10の取付部に粉粒体が滞留することがない。
【0023】
キャンバス10は、加圧エアによる上方への膨らみを防止するため、その幅方向の中央部が固定される。タンク本体1の底壁1bに固定される前記中央支持フレーム14の上面には、図2,4に示すように、中央部パンチプレート17に対応する部分を除いて押付部材27が取り付けられる。この押付部材27には、その長手方向に間隔をあけて複数のボルト孔28が穿設される。また、それらのボルト孔28に対応して中央支持フレーム14の上壁裏面にはウエルドナット29が溶接されている。中央支持フレーム14の上面には、中央部パンチプレート17に対応する部分を除いてキャンバス10を挟んで押付部材27を載置したのち、ボルト孔28およびキャンバス10、中央支持フレーム14を貫通したボルト28をウエルドナット29に螺締することにより、図6、7に示すように、キャンバス10の左右幅方向の中央部を中央支持フレーム14上に固定することができる。
【0024】
つぎに、この実施例の作用について説明する。
【0025】
いま、エアコンプレッサ3を駆動してエア配管2を通してエア室CAに加圧エアを圧送すれば、この加圧エアはキャンバス10のメッシュを通過して粉粒体収容室CP内に噴出し、該室CP内の粉粒体を流動化させる。
【0026】
このとき、キャンバス10上の粉粒体は、滑り板11の滑り面11Aから押え板カバー25を経てキャンバス10上に至るが、該キャンバス10は、タンク本体1の幅方向の傾斜角が、タンク本体1の長手方向の前部および後部よりもその中央部の方が大きいので、キャンバス10上をスライドする粉粒体は、排出管4の吸込口4pが臨むキャンバス10の中央部に集中し易くなる。したがってキャンバス10の中央部の集中した粉粒体の排出管4による吸込能率を高めることができ、粉粒体排出後の粉粒体の残量を大幅に軽減することができる。
【0027】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0028】
たとえば、前記実施例では、本発明キャンバス取付構造を、粉粒体運搬車の粉粒体タンクに実施した場合を説明したが、これを他の粉粒体タンクにも実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる粉粒体タンクを備えた粉粒体運搬車の全体側面図
【図2】図1の2−2線に沿う拡大断面図
【図3】図2の3−3線に沿う拡大断面図
【図4】図3の4矢視図
【図5】図3の5−5線に沿う断面図
【図6】図5の6矢視仮想線囲い部分の拡大図
【図7】図3の7−7線に沿う拡大断面図
【図8】図4の8−8線に沿う拡大断面図
【図9】パンチプレート群の分解斜視図
【符号の説明】
【0030】
1・・・・・・・・タンク本体
4・・・・・・・・排出管
4p・・・・・・・吸込口
10・・・・・・・・キャンバス
CA・・・・・・・・エア室
CP・・・・・・・・粉粒体収容室
L−L・・・・・・・中央軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体(1)内の底部にキャンバス(10)を敷設し、このキャンバス(10)によりタンク本体(1)内をエア室(CA)と、粉粒体収容室(CP)とに区画し、エア室(CA)よりキャンバス(10)を通って粉粒体収容室(CP)に噴き出す加圧エアにより粉粒体を流動化させ、タンク本体(1)にその内外を連通して設けられる排出管(4)から外部に排出するようにした、粉粒体タンクにおいて、
前記キャンバス(10)は、タンク本体(1)の長手方向の両端部からその中央部に向かって下り勾配に傾斜され、かつ、そのタンク本体(1)の略全長にわたりその幅方向の両側部から該タンク本体(1)の底部の中央軸線(L−L)に向かって下り勾配に傾斜され、その幅方向の傾斜角は、タンク本体(1)の長手方向の中央部が、その前、後部よりも大きくされており、その中央部に前記排出管(4)の吸込口(4p)が臨んでいることを特徴とする、粉粒体タンクにおけるキャンバス取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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