説明

粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置と粉粒体貯留サイロ

【課題】粉粒体貯留サイロからブレードで搬出する粉粒体の搬出量変化を抑えることができる搬出装置を提供すること。
【解決手段】粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置1に、貯留サイロの下部に設けた溝部103に沿って走行する走行体10と、前記走行体10と一体的に移動し、前記溝部103の上方で回転して貯留サイロ内の石炭を掻集めて前記溝部103に掻出すブレード21を有する掻出し機20と、前記ブレード21の回転軌跡範囲内における前記溝部103の所定範囲を塞ぐ溝塞ぎ機構50とを備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭、コークス、石灰石等の粉粒体を貯留するサイロにおける移動式の搬出装置と、それを備えた粉粒体貯留サイロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭、コークス、石灰石等の粉粒体を貯留するサイロにおいては、貯留サイロの下部に形成されたコーン部に搬出装置が設けられ、この搬出装置によって貯留サイロの下方に設けられたベルトコンベヤに搬出されている。このベルトコンベヤに搬出された粉粒体は、ベルトコンベヤによって貯留サイロ外の所定場所に搬送されている。
【0003】
例えば、火力発電設備における大型の貯留サイロにおいては、上記コーン部を貯留サイロの一方の端部から他方の端部まで連続して設け、このコーン部の下部に貯留サイロ内の粉粒体を搬出する溝部を設けるとともに、この溝部に沿って移動する移動式の搬出装置を設けて粉粒体を搬出するようにしている。この溝部の下方に沿って上記ベルトコンベヤが設けられ、このベルトコンベヤによって所定の場所に搬送されるようになっている。
【0004】
このような移動式の搬出装置としては、水平面内で回転する弓状に湾曲したブレードによって貯留サイロの下部の貯留物を掻集め、溝部からベルトコンベヤ上に搬出するようにしたものがある。また、このような移動式の搬出装置は、貯留サイロ内を移動して貯留物を搬出することにより、貯留サイロ内の貯留物に大きな貯留差(不均一高さ)が生じないようにしている。
【0005】
この種の先行技術として、例えば、図11に示すように、大径の貯蔵用サイロ101の底面部に複数のシュート107及びコーン部102を設け、このシュート107の下端に備えさせた溝部103に沿って払出し装置104を走行させるようにしたものがある。この払出し装置104によれば、溝部103に沿って走行してシュート107の下方に設けたコンベヤ105にサイロ101内から粉粒体106を払い出している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、他の先行技術として、サイロ下端のホッパを長円形に形成し、そのホッパの下端開口部を、払出開口部を有する長円形の平底板で塞ぎ、その平底板上のサイロ内貯蔵物を上記払出開口部を通じて下方の払出装置に掃き落とす水平回転腕を配置したものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−32433号公報
【特許文献2】特開昭61−235325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したように、水平面内で回転するブレードによって貯留物を掻集めて搬出する場合、ブレードが溝部の上方に来たときに貯留物が大量に搬出され、ブレードが溝部の上方以外に位置する時には貯留物が溝部に搬出される量が減り、ブレードの回転位置によって搬出量に大きな差を生じる。
【0009】
図12は、2枚のブレードで貯留物(石炭)を搬出する搬出装置の場合の、ブレードの搬出量(以下、「掻出し量」ともいう)とベルトコンベヤによる搬送量とを示したグラフである。図示する掻出し量と搬送量は、溝部の上方にブレードが停止した状態から回転させた場合の変化を示している。横軸にブレード回転角を示し、縦軸に粉粒体量(石炭量)の変化を示している。
【0010】
図示するように、回転開始時は搬出量ゼロであるが、ブレードの前面によって粉粒体が掻集められて一定量に達すると搬出量が増加し始める。これは、ブレードによって掻集められた粉粒体によって押された粉粒体が溝部から搬出されるからである。そして、2枚のブレードが溝部の上方に位置する直前に最大の掻出し量となり、溝部の上方を通過する時には掻出し量としてはゼロになる。この例では、2枚のブレードが回転軸を中心に対向して設けられているため、180度毎に上記したような掻出し量の変化を生じる。
【0011】
このブレードの掻出し量に対して、ベルトコンベヤによる搬送量は、ブレードの掻出し量増加の変化に少し遅れながら増加するが、ブレードによって掻集められた粉粒体によって押された粉粒体が一定量溝部から掻出されると、ブレードが約120度程度回転したところで搬送量が少し減少する。これは、ブレードの角度によって粉粒体が溝部と平行方向に掻集められるからである。その後、弓状に湾曲した部分に掻集められた粉粒体が溝部から搬出され始めて搬送量が増え、2枚のブレードが溝部の上方に位置する時に最大量の粉粒体が搬送される。その後は、ブレードで粉粒体が所定量掻集められるまでの間が最小となった後、上記したようにブレードで所定量の粉粒体が掻集められ、ブレードの掻出し量増加の変化に少し遅れながら増加する。
【0012】
このベルトコンベヤによる搬送量の変化も、この例では、2枚のブレードが回転軸を中心に対向して設けられているため、180度毎に上記したような搬送量の変化を生じる。従って、ベルトコンベヤ上に掻出される粉粒体は、ブレードが溝部の上方に来たときに大きな山となる。
【0013】
このように、ベルトコンベヤに搬出される粉粒体は、ブレードが溝部の上方を通過する際に多量の粉粒体を溝部に掻出すため、ベルトコンベヤ上には、大量の粉粒体が一時的に積込まれることになる。しかも、ベルトコンベヤの搬送速度によっては、搬送方向上流側のブレードによって掻出された粉粒体の上部に搬送方向下流側のブレードによって掻出された粉粒体が積まれる場合もあり、この場合には更に部分的に大きな粉粒体の山がベルトコンベヤ上に形成されることになる。
【0014】
このベルトコンベヤ上の粉粒体は、ベルトコンベヤの搬送方向下流側に設けられたゲート部によって搬送量が制限されるが、上記したように大きな山となって積まれた粉粒体は、ゲート部において一時的な滞留を生じる。また、ゲート部によって搬送量が制限された粉粒体は、このゲート部を通過した時に落下する場合もある。さらに、大量の粉粒体が一時的に掻出されると、その粉粒体がホッパに一時滞留し、粉粒体の一部がホッパに付着して搬送されない事態も生じる。
【0015】
なお、上記特許文献1,2では、このような課題を解決することはできない。
【0016】
一方、一般的に、設備によって貯留サイロから搬出される粉粒体の量が異なるが、そのような搬出量変化に柔軟に対応できるような設備が望まれている。
【0017】
そこで、本発明は、粉粒体貯留サイロからブレードで搬出する粉粒体の搬出量変化を抑えることができる搬出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明に係る粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置は、貯留サイロの下部に設けた溝部に沿って走行し、該貯留サイロ内の粉粒体を前記溝部から下方に搬出する粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置であって、前記溝部に沿って走行する走行体と、前記走行体と一体的に移動し、前記溝部の上方で回転して貯留サイロ内の粉粒体を回転方向前面で掻集めて前記溝部に掻出すブレードを有する掻出し機と、前記ブレードの回転軌跡範囲内における前記溝部の所定範囲を塞ぐ溝塞ぎ機構とを備えている。これにより、貯留サイロの下部に設けられた溝部の上方でブレードを回転させて貯留物を溝部に掻出す場合に、溝塞ぎ機構によって溝部の開口面積を調整することで、ブレードで掻集められた粉粒体が開口部から徐々に搬出されるため、溝部に掻出される粉粒体の搬出量変化を抑えて安定した粉粒体の搬出を行うことができる。
【0019】
また、前記ブレードは、該ブレードの回転中心の対称位置に2枚配設され、前記溝塞ぎ機構は、前記ブレードの回転軌跡範囲の搬送方向前後位置の溝部を塞ぐ溝塞ぎ板を備え、該溝塞ぎ板は、前記溝部の所定範囲を塞ぐ複数枚の溝塞ぎ板で構成されていてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「搬送方向」は、搬出装置の「走行方向」でもある。また、この搬出装置の走行方向前後部分を「前後位置」ともいう。このようにすれば、溝塞ぎ板の配置枚数の変更によって溝部を塞ぐ面積を変更することができ、溝部の開口面積を粉粒体の種類や搬出量等に応じて容易に調整することができる。
【0020】
また、前記溝塞ぎ板は、溝部を塞ぐ面積が異なる複数枚の溝塞ぎ板で構成されていてもよい。このようにすれば、溝部を塞ぐ溝塞ぎ板の着脱又は配置替え等によって溝部の塞ぐ面積を容易に変更することができ、粉粒体の搬出量を調整することができる。
【0021】
また、前記溝塞ぎ板は、前記ブレードの回転中心から搬送方向前後位置に対称の開口面積を形成することができる大きさで構成されていてもよい。このようにすれば、ブレードによって溝部に掻出される粉粒体の量を搬送方向前後位置でほぼ同じ量にすることができ、粉粒体の性状に応じてブレードから搬送方向前後位置で掻出される粉粒体の搬出量を同じにすることができる。
【0022】
また、前記溝塞ぎ板は、前記ブレードの回転軌跡範囲における任意の位置に所定の開口面積を形成することができる大きさの溝塞ぎ板で構成されていてもよい。このようにすれば、ブレードの搬送方向前後位置から掻出される量を前後位置で異ならせることもでき、粉粒体の性状等に応じてブレードの搬送方向前後位置から掻出される粉粒体の搬出量を異ならせることができる。
【0023】
また、前記溝塞ぎ板は、搬送方向前後位置の端部に該溝塞ぎ板の上面から上方に突出する漏れ防止板を具備していてもよい。このようにすれば、粉粒体が溝塞ぎ板の搬送方向前後端部から溝部に飛び出すのを溝塞ぎ機構で防止することができる。
【0024】
一方、本発明に係る粉粒体貯留サイロは、上記いずれかの粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置を備えており、これにより、貯留サイロからベルトコンベヤに搬出する粉粒体の搬出量変化を抑えて安定した搬送ができる貯留サイロを構成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、貯留サイロから搬出される粉粒体の搬出量変化を抑えることができるので、ベルトコンベヤによる粉粒体の搬送を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る搬出装置の側面図である。
【図2】図1に示すII−II断面図である。
【図3】図1に示すIII−III矢視図である。
【図4】図2に示すホッパ部分の拡大断面図である。
【図5】(a) は図1の溝塞ぎ板の一種を示す平面図であり、(b) は側面図である。
【図6】図1に示すVI−VI矢視図である。
【図7】図1に示すVII−VII矢視図である。
【図8】(a) 〜(c) は、図3に示す搬出装置の溝塞ぎ板の組合わせ例を示す平面図である。
【図9】(a) 〜(c) は、図3に示す搬出装置の溝塞ぎ板状態における石炭の掻出し量変化を示す平面図である。
【図10】本発明に係る搬出装置による掻出し量と搬送量の変化予想を示すグラフである。
【図11】従来の貯蔵用サイロの一例を示す断面図である。
【図12】従来の搬出装置による掻出し量と搬送量の変化予想を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。以下の実施形態では、上述した図11に示す大型の貯留サイロ101を例にし、粉粒体として石炭を例に説明する。また、移動式搬出装置1としては、複数のサイロ間を移動する時に、ブレードを溝部の上方位置のコーン部下方に位置させた収納状態とできるように、回転軸を中心として2枚のブレードを対称位置に配設した例を説明する。なお、貯留サイロに関する上述した図11と同一の構成には同一符号を付して説明する。
【0028】
図1,2に示すように、貯留サイロ101の下部に設けられたシュート107の部分には、搬送方向に延びるコーン部102が設けられ、このコーン部102の内部に、コーン部102に沿って搬送方向Xに走行する移動式搬出装置1が設けられている。図2に示すように、コーン部102は、貯留サイロ101内に貯留された石炭(粉粒体)106が溝部103から自然に排出されない所定の安息角で貯留されるように形成されており、貯留サイロ101内に貯留された石炭106は移動式搬出装置1によって強制的に排出されるまでは安定して貯留されている。
【0029】
また、図1,2に示すように、上記移動式搬出装置1は、コーン部102に設けられたレール2上を走行する車輪11を有する走行体10を備えている。この走行体10は、搬送方向前後位置に設けられた駆動機12,13で駆動する減速機14,15によって車輪11が駆動され、この車輪11の駆動制御によってレール2上を自走するようになっている。
【0030】
さらに、上記コーン部102の下部には、このコーン部102と同一方向に延びる溝部103が設けられている。この溝部103の下方には、溝部103から掻出される石炭106を搬送するベルトコンベヤ105が、溝部103と同一方向に延びるように設けられている。
【0031】
また、上記走行体10には、この走行体10と一体的に移動して、貯留サイロ101内の石炭106を上記溝部103から掻出す掻出し機20が設けられている。この掻出し機20には、回転方向前方の中央部が凹むように弓状に湾曲して形成されたブレード21が設けられている。このブレード21は、貯留サイロ101の貯留下面から上方に所定距離を設けた位置、すなわち、溝部103の上端から上方に少し離れた位置で石炭106を掻き集めることができる位置の水平面内で回転するようになっている。また、ブレード21は、走行体10に設けられた駆動機22の動力が減速機23で減速され、回転中心24に設けられた垂直軸回りで回転させられるようになっている。
【0032】
また、移動式搬出装置1には、上記ブレード21によって溝部103に掻出された石炭106を上記ベルトコンベヤ105上に落とすホッパ30が設けられている。このホッパ30は、上記ブレード21の回転範囲を含む走行体10の搬送方向に設けられており、搬送方向に複数に分割(この例では4分割)されている。また、ホッパ30は、上記走行体10に設けられた吊下げフレーム31によって吊下げられている。この吊下げフレーム31は、走行体10の前後両端部位置に設けられた吊下げ部材32と、この吊下げ部材32の間に設けられたホッパフレーム33とを有している。このホッパフレーム33の下部にホッパ本体34が設けられている。また、ホッパ本体34の搬送方向下流側端部には、ベルトコンベヤ105上の石炭106の量を制限するホッパゲート35が設けられている。このホッパゲート35は、ホッパ30からベルトコンベヤ105上に積まれた石炭106の量を平準化して搬送方向Xに送るためのものである。ホッパゲート35は、搬送方向に複数個を設けてもよい。
【0033】
そして、図1,3に示すように、上記ホッパ30に、上記ブレード21の回転軌跡範囲25において上記溝部103を塞ぐ溝塞ぎ機構50が設けられている。図3に示すように、溝塞ぎ機構50は、ブレード21の回転軌跡範囲25の搬送方向前後部分を塞ぐことで、ブレード21の回転中心24から搬送方向前後部分の開口量を調整できるようにしている。この実施形態では、ブレード21の回転中心24から搬送方向前後位置に所定の大きさの開口部60が形成されるように、その開口部60の搬送方向前後位置に複数枚の溝塞ぎ板53,55,56,57が直列で設けられている。この溝塞ぎ機構50によれば、後述するように、ブレード21によって掻集められる石炭106の一部が溝塞ぎ板53,55,56,57の上部に載り、時間差を持って溝部103から搬出されるので、溝部103から搬出される石炭106の変化量を抑えることができる。
【0034】
また、この例では、溝塞ぎ板53の搬送方向前端と後端とに、漏れ防止板58が設けられている。この漏れ防止板58は、溝塞ぎ板53の上面からブレード21の高さ分を超える高さで形成されている。この例では、溝塞ぎ板53に設けているが、吊下げ部材32や走行体10側に設けるようにしてもよい。
【0035】
図4に示すように、上記ホッパフレーム33は矩形状に形成された枠体である。このホッパフレーム33には、搬送方向に延びるホッパ支持軸36が設けられている。ホッパ支持軸36は丸パイプ状の断面を有しており、このホッパ支持軸36の下部にバッフルプレート39の上端部が固定されている。この実施形態では、バッフルプレート39の上端部をホッパ支持軸36に固定して回動可能に支持し、バッフルプレート39の下部角度を搬送方向Xと直交する方向に角度調節できるようにしている。バッフルプレート39の角度調節は、角度調節ロッド37をホッパ本体34に固定する位置を固定ナット38で調節することで行われる。
【0036】
また、上記ホッパ支持軸36には、溝部103の幅方向に延びる支持ブラケット51が設けられている。そして、このホッパ支持軸36に支持された支持ブラケット51上に、上記溝塞ぎ機構50が設けられている。この溝塞ぎ機構50の上記溝塞ぎ板53,55,56,57は、上記支持ブラケット51に固定される脚部材52を有している。この溝塞ぎ板53は、上記ブレード21の下端から下方に所定距離を有する位置に設けられる。
【0037】
図5(a),(b) に示すように、上記溝塞ぎ板53は、上記脚部材52の上端に所定の大きさの矩形状の板材54が設けられたものである。脚部材52を上記支持ブラケット51に固定することにより、板材54の上面が溝部103の所定面積を塞ぐようになっている。この板材54の幅方向寸法は、溝部103との間に所定の隙間が形成されるように溝部103の幅寸法よりも若干狭い寸法となっている。板材54と溝部103との間に隙間を形成することで、走行体10が溝部103の長手方向に移動するときに当接しないようにしている。この図では、図3に示す溝塞ぎ板53,55,56,57の中で最も大きい溝塞ぎ板53を示している。また、この溝塞ぎ板53には、搬送方向前端と後端とに位置する部分に上記漏れ防止板58が設けられている。
【0038】
図6に示すように、この実施形態の溝塞ぎ機構50は、搬送方向の寸法が異なる4種類の大きさの溝塞ぎ板53,55,56,57を有している。このように、溝塞ぎ板53,55,56,57の搬送方向寸法を複数種類とすることにより、後述するように、これらの溝塞ぎ板53,55,56,57の組合わせを変更することで、溝部103を塞ぐ面積を変更できるようにしている。これにより、石炭106の搬出量を設備に適した搬出量に調整することが容易にできる。
【0039】
図7に示すように、上記溝塞ぎ板53,55,56,57は、上記走行体10に設けられた支持ブラケット51に固定されるようになっている。この例では、支持ブラケット51を、搬送方向Xに位置調整可能な支持ブラケット51Aと、位置固定の支持ブラケット51Bとで構成している。ブレード21の回転中心24側の支持ブラケット51Aを搬送方向Xに移動させることで、以下のように配置を変更した溝塞ぎ板53,55,56,57を支持できるようにしている。
【0040】
図8(a) 〜(c) は、上記4種類の溝塞ぎ板53,55,56,57の組合わせ例を示したものである。この例では、一部の組合わせ例を説明するが、他の組合わせでもよい。また、溝塞ぎ板53,55,56,57は、4種類以上の種類でも、それ以下の種類でもよく、その場合には、それらの溝塞ぎ板を任意に組合わせるようにすればよい。
【0041】
図8(a) に示す例は、ブレード21(図3)の回転中心24に近い位置に所定面積の開口部60を確保できるようにした例である。この例の場合、最も面積が狭い寸法L1の開口部60となった状態であり、ブレード21によって掻集められる量に対して搬出される石炭量が少ないので、ベルトコンベヤ105によって搬送される搬送量が少ない場合に適している。この場合、溝塞ぎ板53,55,56,57の上部に掻集められた石炭106がブレード21の前後位置から徐々に搬出されるので、ベルトコンベヤ105上に搬出される量の変化も小さく、ベルトコンベヤ105上の石炭量変化を小さく抑えて搬送することができる。
【0042】
図8(b) に示す例は、ブレード21の回転中心24に近い位置の溝塞ぎ板56,57と溝塞ぎ板55の1枚を取外して、上記(a) に示す状態よりも大きな面積となる寸法L2の開口部61を確保するようにした例である。この例の場合、開口面積が大きくなるため、ブレード21によって掻集められて溝部103から徐々に搬出される石炭106の量も多くなり、ベルトコンベヤ105によって搬送される搬送量が多い場合に適している。また、この場合も、溝塞ぎ板53,55の上部に掻集められた石炭106がブレード21の前後位置から徐々に搬出されるので、ベルトコンベヤ105上に搬出される石炭量変化を抑えて搬送することが容易にできる。
【0043】
図8(c) に示す例は、ブレード21の上流側位置における2枚の溝塞ぎ板55を取外し、溝塞ぎ板56,57を溝塞ぎ板55の1枚分の寸法で上流方向に移動させるとともに、下流側位置における1枚の溝塞ぎ板55と溝塞ぎ板56を取外し、溝塞ぎ板57を溝塞ぎ板56の寸法で下流方向に移動させて支持ブラケット51に固定した例である。この例の場合、ブレード21の回転中心24に対して上流方向と下流方向とで開口面積が異なっている。このような配置として、ブレード21の前後位置から搬出される石炭106に時間的な差を設けるようにしてもよい。この場合、ブレード21によって掻集められて前後位置から溝部103に搬出される石炭106の量や時間を異ならせることが必要に応じてできる。これにより、ベルトコンベヤ105の搬送速度等に応じて溝部103から搬出される量と時間を調整して、ベルトコンベヤ105上に搬出される石炭量変化を更に抑えて搬送することが可能となる。
【0044】
なお、上記図8(a) 〜(c) に示す溝塞ぎ板53,55,56,57の配置例は一例であり、使用条件等に応じて、上記複数枚の溝塞ぎ板53,55,56,57の着脱、及び配置替えによって、開口部60,61,62,63の大きさ(面積)や開口部62,63の位置を任意に調整することができる。
【0045】
図9(a) 〜(c) は、上記図8(a) に示す溝塞ぎ板53,55,56,57の配置による掻出し量の変化を概略的に示す平面図である。
【0046】
図9(a) は、ブレード21が溝部103の上部から90度回転した状態を示している。この状態に至るまでに弓状に湾曲したブレード21によって貯留サイロ101内の石炭106が掻集められる。掻集められた石炭106は、ブレード21の湾曲面に沿って中心部へと集められ、溝塞ぎ板53,55,56,57が設けられていない開口部60から下方へ搬出される。図の90度まで回転した状態に至るまでに掻集められた石炭106は、ブレード21の基部に集められても溝塞ぎ板53,55,56,57が設けられている部分では搬出されず、開口部60まで移動したときに搬出される。
【0047】
従って、ブレード21によって掻集められた全量が溝部103に搬出されるのではなく、搬出される一部の石炭106以外の石炭106は、溝塞ぎ板53,55,56,57の上部に載った状態でブレード21の回転方向に移動させられる。
【0048】
図9(b) は、上記図9(a) の状態から更に45度回転した状態を示している。この状態では、ブレード21の基部が溝塞ぎ板53,55,56,57の上部から離れるため、このブレード21によって掻集められた石炭106が開口部60から搬出される。また、ブレード21の先端部分で掻集められる石炭106は、このブレード21の湾曲した前面によって集められる。この集められた石炭106は、ブレード21の基部における溝部103以外は溝塞ぎ板53,55,56,57によって塞がれているため、溝部103に搬出されることなく掻集められる。
【0049】
図9(c) に示す状態は、上記図9(b) の状態から更に45度回転して、(a) に示す状態から90度回転した状態を示している。この状態では、ブレード21によって掻集められた石炭106で、ブレード21の中央部に集められた石炭106は開口部60から搬出される。また、ブレード21の先端部分で掻集められた石炭106は、溝塞ぎ板53,55,56,57の上部に載せられて溝部103へは搬出されない。これにより、ブレード21が溝部103の上方に位置する時でも、溝部103から大量の石炭106が一度に搬出されるのを抑止することができる。この溝塞ぎ板53,55,56,57の上部に載せられた石炭106は、ブレード21の回転によって溝部103を挟んだ反対側の貯留サイロ101側まで移動させられながら、ブレード21前面の湾曲に沿って基部まで移動させられる。また、ブレード21によって移動させられる石炭106は、溝塞ぎ板53の前端及び後端方向にも移動するが、溝塞ぎ板53の搬送方向前端と後端とに設けられた漏れ防止板58によって溝部103に落ちることはない。そして、ブレード21に基部まで移動させられた石炭106が開口部60に位置すると、溝部103から下方へ搬出される。
【0050】
このようなブレード21による石炭106の掻集め量の変化と、その掻集められた石炭106の開口部60からの搬出は、2枚のブレード21を回転中心の対称位置に設けているため、ブレード21が180度回転する間に生じる変化が繰り返される。
【0051】
図10は、上記した溝塞ぎ機構50を備えた移動式搬出装置1による掻出し量とベルトコンベヤ105による搬送量の変化を示すグラフである。上記移動式搬出装置1によれば、2枚のブレード21による石炭106の掻出し量とベルトコンベヤ105による石炭106の搬送量(石炭量)とが図示するようになる。この図も、停止状態のブレード21を回転させた場合の変化を示しており、横軸に上述した図12と同一のブレード回転角を示し、縦軸に石炭量の変化を示している。ブレード21による掻出し量の変化は、上述した図12に示す従来と同じであるため、その説明は省略する。
【0052】
図示するように、上記移動式搬出装置1によれば、ブレード21によって掻集められる石炭106の量は回転角の増加と共に増え、2枚のブレード21が溝部103の上方に位置する直前に最大の掻出し量となる。しかし、ベルトコンベヤ105による搬送量は、ブレード21によって掻集められた石炭106が溝塞ぎ板53,55,56,57の上部に載った後、ブレード21の回転によって徐々に溝部103から搬出されるので、約140度回転したところで最大の搬送量となり、その後、徐々に減少する。この例では、約190度程度回転したところで最小量となっている。
【0053】
その後、ブレード21によって掻集められた石炭106がブレード21の前面に溜ると、溝塞ぎ板53,55,56,57の上部に載った石炭106を溝部103に押して搬出する。これによりベルトコンベヤ105の搬送量が増加するが、大幅な増加と減少は無く、大きな変化を抑えた搬送量となる。このように、ブレード21によって掻集められた石炭106の一部が溝塞ぎ板53,55,56,57の上部に載った後、溝部103から搬出されるので、ベルトコンベヤ105によって搬送される量は大きな変化を抑えた量に制限することができる。このようなベルトコンベヤ105による搬送量の変化は、この例でも、2枚のブレード21が回転軸を中心に対向して設けられているため、180度毎に上記したような搬送量の変化を生じるが、大幅な変化を抑えた搬送量とすることができる。
【0054】
また、図示するような石炭106の搬送量の変化は、上記溝塞ぎ板53,55,56,57によって形成する開口部60を搬送方向前後位置で異なったものとすることにより(図8(c) の状態)、搬送方向後部から掻出した石炭106と搬送方向前部から掻出した石炭106とがベルトコンベヤ105上の搬送方向にずれた位置に落下するようにできる。これにより、ベルトコンベヤ105上の石炭量をより平準化することができ、より安定化した石炭106の搬送が可能となる。
【0055】
以上のように、上記移動式搬出装置1によれば、貯留サイロ101の溝部103から下方へ掻出す石炭量(粉粒体量)の変化を抑えることができるので、ベルトコンベヤ105によって搬送される石炭量の変化を抑えて、貯留サイロ101から安定した石炭106の搬出を行うことが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態によれば、溝塞ぎ板53,55,56,57の大きさを複数の大きさにして組合わせることができるようにしているので、これらの溝塞ぎ板53,55,56,57の組合わせ変更、又は取付位置変更で容易に開口部60の面積を変更することができ、種々の粉粒体に応じてベルトコンベヤ105上の搬送量を平準化して、安定化した粉粒体の搬出作業を行うことが可能となる。
【0057】
なお、上記実施形態では、石炭貯留サイロ101を例に説明したが、他の粉粒体の貯留サイロ101であっても同様に適用でき、貯留する粉粒体の性状に応じて溝塞ぎ機構50を設定すればよく、石炭貯留サイロ101に限定されるものではない。
【0058】
また、溝塞ぎ機構50の溝塞ぎ板53,55,56,57は、着脱方式の分割構造を例に説明したが、走行方向にスライドさせて開口面積を変化させることができるように構成してもよく、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0059】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置は、貯留サイロから搬出する粉粒体の搬出量変化を抑えて安定した搬出ができるので、例えば、火力発電設備における大型貯留サイロから石炭を搬出する搬出装置として利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 移動式搬出装置
10 走行体
20 掻出し機
21 ブレード
22 駆動機
23 減速機
24 回転中心
25 回転軌跡範囲
30 ホッパ
31 吊下げフレーム
32 吊下げ部材
33 ホッパフレーム
34 ホッパ本体
35 ホッパゲート
36 ホッパ支持軸
39 バッフルプレート
50 溝塞ぎ機構
51 支持ブラケット
52 脚部材
53 溝塞ぎ板
54 板材
55〜57 溝塞ぎ板
58 漏れ防止板
60〜63 開口部
101 貯留サイロ
102 コーン部
103 溝部
105 ベルトコンベヤ
106 石炭(粉粒体)
107 シュート
X 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留サイロの下部に設けた溝部に沿って走行し、該貯留サイロ内の粉粒体を前記溝部から下方に搬出する粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置であって、
前記溝部に沿って走行する走行体と、
前記走行体と一体的に移動し、前記溝部の上方で回転して貯留サイロ内の粉粒体を掻集めて前記溝部に掻出すブレードを有する掻出し機と、
前記ブレードの回転軌跡範囲内における前記溝部の所定範囲を塞ぐ溝塞ぎ機構とを備えさせたことを特徴とする粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置。
【請求項2】
前記ブレードは、該ブレードの回転中心の対称位置に2枚配設され、
前記溝塞ぎ機構は、前記ブレードの回転軌跡範囲の搬送方向前後位置の溝部を塞ぐ溝塞ぎ板を備え、該溝塞ぎ板は、前記溝部の所定範囲を塞ぐ複数枚の溝塞ぎ板で構成されている請求項1に記載の粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置。
【請求項3】
前記溝塞ぎ板は、溝部を塞ぐ面積が異なる複数枚の溝塞ぎ板で構成されている請求項2に記載の粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置。
【請求項4】
前記溝塞ぎ板は、前記ブレードの回転中心から搬送方向前後位置に対称の開口面積を形成することができる大きさで構成されている請求項2又は3に記載の粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置。
【請求項5】
前記溝塞ぎ板は、前記ブレードの回転軌跡範囲における任意の位置に所定の開口面積を形成することができる大きさの溝塞ぎ板で構成されている請求項2又は3に記載の粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置。
【請求項6】
前記溝塞ぎ板は、搬送方向前後位置の端部に該溝塞ぎ板の上面から上方に突出する漏れ防止板を具備している請求項2又は3に記載の粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の粉粒体貯留サイロ用移動式搬出装置を備えた粉粒体貯留サイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−111603(P2012−111603A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262308(P2010−262308)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】