説明

粉粒体運搬車

【課題】粉粒体運搬車に適したタンク構造を提供する。
【解決手段】粉粒体が収容されるタンク2を搭載する粉粒体運搬車1において、その開口端がタンクの底部に対峙して粉粒体を排出する排出管60と、この排出管60から導かれる粉粒体を搬出する集合排出管72とを備え、この集合排出管72をタンク2内に配置し、排出管60をタンク2内で湾曲させて集合排出管72に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ、グラニュー糖、セメント、石灰類、小麦粉等の粉体、及びプラスチック樹脂ペレット、鉱石等の粗粒体、微粒炭等を輸送して所定の場所に排出する粉粒体運搬車の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の粉粒体運搬車として、例えば図12に示すようなものがある(特許文献1参照)。
【0003】
これについて説明すると、図12に示すように、粉粒体運搬車1のシャシフレーム上には、密閉状のタンク2が搭載される。このタンク2は、粉粒体運搬車1の進行方向すなわち前後方向に長く形成されており、その天井壁にはマンホール蓋6によって開閉されるマンホール5が開口され、このマンホール5からタンク2内に粉粒体が投入収容されるようになっている。タンク2内の下部には3つの粉粒体排出部10が設けられる。粉粒体排出部10に集められた粉粒体は加圧エアにより各排出管11および集合排出管12を通って排出される。
【特許文献1】特開平11−180557号公報
【特許文献2】特開昭57−121526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の粉粒体運搬車にあっては、図13に示すように、タンク2は円筒状のタンクシェル13と、漏斗状のスライド筒14とが結合して設けられ、円筒状タンクシェル13がスライド筒14の全体を覆う構造のため、タンク2の重量が大きくなり、粉粒体の搭載量が減少するという問題点があった。
【0005】
なお、図14に示すように、タンク2の軽量化をはかるためには、半筒状のタンクシェル13と漏斗状のスライド筒14とを結合して設け、スライド筒14がタンクシェル13の外側に露出する構造とするものがあった。しかしながら、この場合、タンク2の剛性を確保することが難しいという問題点があった(特許文献2参照)。
【0006】
また、タンク2内の粉粒体はタンク2の内外に渡って延びる各排出管11およびタンク2の外側に配設される集合排出管12を通って排出される構造のため、各排出管11から集合排出管12までの通路長が長くなり、粉粒体が各排出管11の途中に詰まりやすいという問題点があった。
【0007】
また、例えば特開平10−35890号公報では、タンクの底部に開口して粉粒体を排出するタンク排出口と、このタンク排出口に接続してタンクの外側に延びる排出管とを備える構造が開示されている。しかし、この場合、排出管がタンクの下部に突出して設けられるため、排出管が突出する分だけ車両の全高が高くなり、走行安定性が悪くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、粉粒体運搬車に適したタンク構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、粉粒体が収容されるタンクを搭載する粉粒体運搬車に適用する。
【0010】
そして、タンクは半筒状のタンクシェルと、漏斗状のスライド筒とを結合して設け、スライド筒の大部分がタンクシェルの外側に露出する構造としたことを特徴とするものとした。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、タンクシェルはスライド筒の外表面に対峙するように突出した突出部を有したことを特徴とするものとした。
【0012】
第3の発明は、粉粒体運搬車において、粉粒体が収容されるタンクを搭載する粉粒体運搬車において、タンクの底部に開口して粉粒体を排出するタンク排出口と、このタンク排出口に接続してタンクの外側に延びる排出管とを備え、この排出管をその通路幅がその先端部から基端部にかけて次第に大きくなるように形成したことを特徴とするものとした。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、排出管を略水平方向に延びかつその通路中心線がタンク排出口より上方に位置するように形成したことを特徴とするものとした。
【0014】
第5の発明は、粉粒体運搬車において、その開口端がタンクの底部に対峙して粉粒体を排出する排出管と、この排出管から導かれる粉粒体を搬出する集合排出管とを備え、この集合排出管をタンク内に配置し、排出管をタンク内で湾曲させて集合排出管に接続したことを特徴とするものとした。
【0015】
第6の発明は、第5の発明において、排出管を開閉する排出バルブを備え、この排出バルブをタンク内に配置したことを特徴とするものとした。
【0016】
第7の発明は、第5または第6の発明において、集合排出管をタンクの略中央部を通って車両前後方向に延びるように配置し、集合排出管に接続する排出ホースを車両の略中央部から取り出したことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によると、タンクは半筒状のタンクシェルと、漏斗状のスライド筒とが結合して設けられる構造のため、従来のスライド筒の全体を覆う円筒状タンクシェルが設けられる構造に比べて、タンクシェルが大幅に小型化され、タンクの軽量化がはかれる。
【0018】
第2の発明によると、タンクシェルはスライド筒の外表面に対峙するように突出した突出部を有することにより、タンクの剛性を確保することと、タンクの軽量化をはかることを両立できる。
【0019】
第3の発明によると、タンクの底部に開口しタンクの外側に延びる排出管が設けられる構造のため、従来のタンク内に配設される排出管を粉粒体排出部の底部に対峙させる構造に比べて、タンクから排出管に流入する粉粒体の抵抗が小さく抑えられ、粉粒体の排出を速やかに行うことができる。また、タンク内に排出管が介在しないため、タンク内の清掃を容易に行える。
【0020】
そして、排出管はその通路幅がその先端部から基端部にかけて次第に大きくなるように形成されるため、タンクに対して排出管が下方に大きく突出せず、排出管の通路断面積を十分に確保できる。このため、車両の全高が低く抑えられる。
【0021】
第4の発明によると、排出管は略水平方向に延び、排出管の通路中心線がタンク排出口より上方に位置するように形成されるため、タンクに対して排出管が下方に大きく突出せず、排出管の通路断面積を十分に確保できる。このため、車両の全高が低く抑えられる。
【0022】
第5の発明によると、集合排出管をタンク内を貫通するように配置する構造のため、従来の集合排出管をタンクの外部に配置する構造に比べて、タンク排出口から集合排出管までの通路長を短縮できる。この結果、粒体でも排出管を円滑に流れて集合排出管へと導かれ、粒体が排出管に詰まることを防止できる。
【0023】
第6の発明によると、排出バルブがタンク内に設けられるため、排出バルブに衝突する粒体の速度を低くし、排出バルブの磨耗が抑えられる。
【0024】
第7の発明によると、車両前後方向に延びる集合排出管をタンクの略中央部に通し、排出ホースを車両の略中央部から取り出す構造のため、排出ホースを車両の左右に対して同様に延ばすことが可能となり、搬出作業が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
図1に示すように、粉粒体運搬車1のシャシフレーム上には、密閉状のタンク2が支持フレーム3を介して搭載される。タンク2内は前室、中室、後室に概略仕切られており、タンク2の上部にはマンホール5が開口され、このマンホール5を開閉するマンホール蓋6が設けられる。マンホール5から投入された粉粒体がタンク2内に収容されるようになっている。
【0027】
図2の(a),(b)、図3に示すように、タンク2は下方に開口した半円筒状のタンクシェル21の開口端部と、上方に開口した漏斗状のスライド筒22とが結合して設けられる。このタンクシェル21はスライド筒22の外表面に対峙するように突出した突出部21aを有する。すなわち、タンクシェル21はスライド筒22の全体を覆う従来の円筒状タンクシェル21の下部を削除し、スライド筒22の大部分が外部に露出する構造とする。
【0028】
図6に示すように、タンクシェル21の突出部21aはスライド筒22の外壁面から離れるように突出形成される。なお、この構造に限らず、図7に示すように、タンクシェル21の突出部21aを曲折させてスライド筒22の外壁面に結合しても良い。
【0029】
タンク2内の下部には、長手方向に間隔をあけて前、後および中間の3つの粉粒体排出部10が設けられる。図4に示すように、各粉粒体排出部10の内側にはエアレーションキャンバス11が漏斗状に張られ、このエアレーションキャンバス11を空気圧により粉流体を流動化させることにより粉粒体を粉粒体排出部10の底部に集めるようになっている。
【0030】
図3の(a),(b)、図4に示すように、各粉粒体排出部10の底部にタンク排出口55が開口し、このタンク排出口55に接続してタンク2の外側に延びる各排出管50が設けられる。排出管50は略水平方向に延び、排出管50の通路中心線Oがタンク排出口55より上方に位置するように形成される。つまり、排出管50の通路中心線Oは各粉粒体排出部10の底部より高く配置されている。
【0031】
図5にも示すように、排出管50の通路幅Wはその先端部50bから基端部50aにかけて次第に大きく形成され、排出管50の基端部50aにて通路断面積を確保しながら通路高さを抑えるようにする。排出管50の基端部50aにて通路幅Wは通路高さより大きく形成されている。
【0032】
図4に示すように、排出管50の底面50cは基端部50aから先端部50bにかけて上向きに傾斜して形成される。また、各粉粒体排出部10の外壁部材19が排出管50の上壁部を構成している。
【0033】
図8に示すように、各排出管50は各排出バルブ51を介してタンク2の長手方向に延びる集合排出管52に接続される。排出バルブ51は排出管50内で回動する弁体を有するバタフライ式であり、手動で開閉される。
【0034】
タンク2内の粉粒体は加圧エアにより各排出管50および集合排出管52を通って外部に排出されるようになっている。各粉粒体排出部10には加圧エアを導く配管8が接続され、集合排出管52の上流端には加圧エアを導くエゼクタ管54が接続されている。粉粒体の排出時にタンク2内が加圧されて粉粒体をタンク2内から排出管50へと押し出すとともに、エゼクタ管54から集合排出管52に加圧エアを流して粉粒体を集合排出管52から排出ホース53へと圧送する。
【0035】
本実施の形態では、各排出管50が独立して集合排出管52に接続される。他の実施の形態として、図9に示すように、前方の排出管50と中間の排出管50を合流して集合排出管52に接続しても良い。いずれの場合も、中間の排出管50は左後輪58を避けるように配設され、集合排出管52は左後輪58の上方に配置されている。
【0036】
以上のように構成されて、次に作用について説明する。
【0037】
タンク2は半円筒状のタンクシェル21と、漏斗状のスライド筒22とが結合して設けられる構造のため、従来のスライド筒の全体を覆う円筒状タンクシェルが設けられる構造に比べて、タンクシェル21が大幅に小型化され、タンク2の軽量化がはかれる。
【0038】
タンクシェル21はスライド筒22の外表面に対峙するように突出した突出部21aを有し、この突出部21aの長さを任意に設定することにより、タンク2の剛性を確保することと、タンク2の軽量化をはかることを両立できる。
【0039】
各粉粒体排出部10の底部に開口しタンク2の外側に延びる各排出管50が設けられる構造のため、従来のタンク内に配設される排出管を粉粒体排出部の底部に対峙させる構造に比べて、タンク2から排出管50に流入する粉粒体の抵抗が小さく抑えられ、粉粒体の排出を速やかに行うことができる。また、タンク2内に排出管が介在しないため、タンク2内の清掃を容易に行える。
【0040】
しかし、排出管50がタンク2の下部に突出して設けられるため、排出管50が突出する分だけ車両の全高が高くなる。これに対処して、排出管50は略水平方向に延び、排出管50の通路中心線Oがタンク排出口55より上方に位置するように形成されるため、タンク2に対して排出管50が下方に大きく突出せず、車両の全高を抑えるとともに、排出管50の通路断面積を十分に確保できる。
【0041】
次に図10の(a),(b)、図11の(a),(b)に示す他の実施の形態を説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0042】
排出管60を各粉粒体排出部10の底部に対峙させる一方、各排出管60を集合させる集合排出管72をタンク2内を貫通するように配置し、排出管60をタンク2内でエルボ状に湾曲させて集合排出管72に接続する。
【0043】
集合排出管72はタンク2の略中央部を通って車両前後方向に延び、その途中にタンク2間で外部に露出する部位74を持っている。排出ホース73は集合排出管72の後端に接続され、車両の後略中央部から取り出される。
【0044】
排出管60は下向きに拡がる開口端61を有し、この開口端61が排出バルブ62を介して排出管60に取り付けられる。すなわち、排出バルブ62はタンク2内に設けられる。バタフライ式排出バルブ62はタンク2を貫通するロッド63を介して操作される。
【0045】
以上のように構成されて、タンク2内の粉粒体は加圧エアにより各排出管60および集合排出管72を通って外部に排出される。この粉粒体の排出時にタンク2内が加圧されて粉粒体をタンク2内から排出管60へと押し出すとともに、エゼクタ管54から集合排出管72に加圧エアを流して粉粒体を集合排出管72から排出ホース73へと圧送する。
【0046】
集合排出管72をタンク2内を貫通するように配置する構造のため、従来の集合排出管をタンクの外部に配置する構造に比べて、排出管60からエゼクタ管54までの通路長を短縮できる。この結果、粒体でも排出管60を円滑に流れて集合排出管72へと導かれ、粒体が排出管60に詰まることを防止できる。
【0047】
排出バルブ62はタンク2内で排出管60の開口端61の直下流側に設けられるため、排出バルブ62に衝突する粒体の速度を低くし、排出バルブ62の磨耗が抑えられる。
【0048】
車両前後方向に延びる集合排出管72をタンク2の略中央部に通し、排出ホース73を車両の略中央部から取り出す構造のため、排出ホース73を車両の左右に対して同様に延ばすことが可能となり、搬出作業が容易に行える。
【0049】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態を示す粉粒体運搬車の側面図。
【図2】同じく(a)は(b)のB−B線に沿うタンクの断面図、(b)はタンクの側面図。
【図3】同じく(a)は図2のA−A線に沿う断面図、(b)は排出管の側面図。
【図4】同じく粒体排出部及び排出管の断面図。
【図5】同じく(a)は排出管及び集合排出管等の平面図。
【図6】同じくタンクの概略断面図。
【図7】同じくタンクの概略断面図。
【図8】同じく(a)は排出管及び集合排出管等の平面図、(b)は正面図。
【図9】(a)は他の実施の形態を示すタンクの断面図、(b)はタンクの側面図。
【図10】(a)は他の実施の形態を示すタンクの断面図、(b)はタンクの側面図。
【図11】同じく(a)は前室におけるタンクの断面図、(b)は中室、後室におけるタンクの断面図。
【図12】従来例を示す粉粒体運搬車の側面図。
【図13】同じくタンクの概略断面図。
【図14】同じくタンクの概略断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 粉粒体運搬車
2 タンク
10 粒体排出部
21 タンクシェル
21a 突出部
22 スライド筒
50 排出管
51 排出バルブ
52 集合排出管
53 排出ホース
54 エゼクタ管
55 タンク排出口
60 排出管
62 排出バルブ
72 集合排出管
73 排出ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が収容されるタンクを搭載する粉粒体運搬車において、タンクは下方に開口した半円筒状のタンクシェルの開口端部と、上方に開口した漏斗状のスライド筒とが結合して設けたことを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項2】
前記タンクシェルは前記スライド筒の外表面に対峙するように突出した突出部を有したことを特徴とする請求項1に記載の粉粒体運搬車。
【請求項3】
粉粒体が収容されるタンクを搭載する粉粒体運搬車において、タンクの底部に開口して粉粒体を排出するタンク排出口と、このタンク排出口に接続してタンクの外側に延びる排出管とを備え、この排出管をその通路幅がその先端部から基端部にかけて次第に大きくなるように形成したことを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項4】
前記排出管を略水平方向に延びかつその通路中心線が前記タンク排出口より上方に位置するように形成したことを特徴とする請求項3に記載の粉粒体運搬車。
【請求項5】
粉粒体が収容されるタンクを搭載する粉粒体運搬車において、その開口端が前記タンクの底部に対峙して粉粒体を排出する排出管と、この排出管から導かれる粉粒体を搬出する集合排出管とを備え、この集合排出管をタンク内に配置し、排出管をタンク内で湾曲させて集合排出管に接続したことを特徴とする粉粒体運搬車。
【請求項6】
前記排出管を開閉する排出バルブを備え、この排出バルブを前記タンク内に配置したことを特徴とする請求項5に記載の粉粒体運搬車。
【請求項7】
前記集合排出管を前記タンクの略中央部を通って車両前後方向に延びるように配置し、集合排出管に接続する排出ホースを車両の略中央部から取り出したことを特徴とする請求項5または6に記載の粉粒体運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−22658(P2007−22658A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246656(P2006−246656)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【分割の表示】特願2002−252745(P2002−252745)の分割
【原出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】