説明

粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法

【課題】降雨等よる粉粒状堆積物の崩れや流出の防止、粉粒状堆積物中の含水量の増加防止や乾燥時の飛散防止に優れる流出防止剤の製造方法を提供する。
【解決手段】混合槽に、少なくともエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、アニオン系湿潤浸透剤、ポリビニルアルコール、撥水剤および水を添加し、混合する粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法。ポリビニルアルコールの添加量が、流出防止剤に対して0.05重量%〜0.7重量%である。アニオン系湿潤浸透剤の添加量が、流出防止剤に対して0.005重量%〜0.05重量%である。流出防止剤の表面張力が28〜45Dyne/cmであり、かつ流出防止剤を乾燥して得られる皮膜の耐水溶出率が15重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法に関し、粉粒状堆積物に強固な結合層を形成して耐水性等を向上させ、降雨等よる粉粒状堆積物の崩れや流出の防止、粉粒状堆積物中の含水量の増加防止や乾燥時の飛散防止に優れる流出防止剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭類などの粉粒状堆積物はコンベアーで搬送され、スタッカー等により屋外貯蔵ヤードに山積貯蔵されるのが一般的である。これら粉粒状堆積物は、乾燥時には風により飛散して粉塵を発生するほか、降雨等により雨水が浸透して含水量が上昇して、崩れ流れることや含水量の増加によるエネルギーロス等の問題が生じる。
【0003】
粉粒状堆積物のこの崩れおよび流出を防止するために、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等のエマルジョン、あるいはゴムラテックス等のコーティング剤として、堆積物に散布して粉粒状堆積物の表面を固める方法(特許文献1)、微粉砕したセメント水溶液を散布した後、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、飽和ポリエステル等の樹脂水溶液を散布して粉粒状堆積物の表面を固める方法(特許文献2)、ポリビニルアルコール水溶液と硬化剤とから成るコーティング剤を散布し乾燥させて固結層(コーティング剤が堆積粒子を固結した層)を形成させる方法(特許文献3)、白色粉末を含有する樹脂溶液を散布しコーティング皮膜を形成する方法(特許文献4)、樹脂と着色剤とからなる表面処理剤を散布する方法(特許文献5)、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンを主剤とした液状組成物を散布する方法(特許文献6)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、従来の方法では、結合層の形成が不十分であったり、或いは形成された結合層における雨水の浸透抑制効果が十分でなかったり、施工に手間がかかるなどの問題点があった。なかでもエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンを用いた流出防止剤は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体の優れた耐水性と接着性により表面の粉粒状堆積物をよく結合し、雨水の浸透抑制効果も比較的優れてはいるが、梅雨時期等の降雨が激しい場合ではその効果は十分ではなく、その改良が求められていた。
【特許文献1】特開昭49−31589号公報
【特許文献2】特開昭58−45285号公報
【特許文献3】特開昭61−236866号公報
【特許文献4】特開平3−157492号公報
【特許文献5】特開平3−138208号公報
【特許文献6】特開昭48−40209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な従来技術の欠点を改善するためになされたものであり、粉粒状堆積物に、該粉粒状堆積物の粉粒体と流出防止剤とからなる結合層を形成し、降雨による粉粒状堆積物の崩れ及び流出防止、粉粒状堆積物中の含水量の増加防止及び乾燥時の飛散防止に対して優れた効果を有する粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、混合槽に、少なくともエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、アニオン系湿潤浸透剤、ポリビニルアルコール、撥水剤および水を添加し、混合することを特徴とする粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法である。
【0007】
前記アニオン系湿潤浸透剤の添加量が、流出防止剤に対して0.005重量%〜0.05重量%であるのが好ましい。
前記アニオン系湿潤浸透剤が、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩より選ばれる1種又は2種以上からなるのが好ましい。
【0008】
前記ポリビニルアルコールの添加量が、流出防止剤に対して0.05重量%〜0.7重量%であるのが好ましい。
前記流出防止剤の表面張力が28〜45Dyne/cmであり、かつ前記流出防止剤を乾燥して得られる皮膜の耐水溶出率が15重量%以下であるのが好ましい。
【0009】
粉粒状堆積物が石炭又は鉄鉱石の堆積物であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により製造された粉粒状堆積物の流出防止剤はEVAエマルジョンを用いた水系であるため環境への悪影響が少ない。従来の合成樹脂エマルジョン系に比べ、粉粒状堆積物と強固な結合層を形成し、かつ耐水性に優れているため特に降雨等の水による粉粒状堆積物の崩れ、流出防止、及び粉粒状堆積物中の含水量の増加防止に優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法により製造された粉粒状堆積物の流出防止剤(以下単に「流出防止剤」という。)の表面張力は28〜45Dyne/cm、好ましくは30〜45Dyne/cmである。表面張力が高いと流出防止剤の粉粒状堆積物への浸透性の効果が低くなり、逆に表面張力が低いと粉粒状堆積物への浸透性の点では問題ないが、皮膜の耐水性、特に水の撥水性が低下する。浸透性が低下すると流出防止剤は粉粒状堆積物に浸透せず、粉粒状堆積物の表面に流出防止剤を主成分とする薄い膜となってしまう。それに対して適度な浸透性を有すると流出防止剤は粉粒状堆積物に浸透し粉粒状堆積物の表面で粉粒状堆積物と流出防止剤とからなる強固な膜を形成し、降雨時においても水の浸透を防止するとともに表面が崩れることを防止する。一方表面張力が低すぎると流出防止剤は粉粒状堆積物に過度に浸透してしまい強固な膜を形成することができない。また、そのような膜は耐水性が低下する。
【0012】
乾燥して得られる皮膜の水浸漬による溶出率は15重量%以下であるが、更に好ましくは10重量%以下である。溶出率が低いと激しい降雨等にあっても皮膜中の成分が流されず、皮膜の強度の低下が少なくその結果として粉粒状堆積物の崩れ、流出を、また粉粒状堆積物の含水量が増加することを更に防止することができる。
【0013】
流出防止剤の製造にはエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンが使用される。エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(以下「EVAエマルジョン」という。)は粉粒状堆積物との優れた接着性や成膜性等により結合層の形成に効果があるとともに、形成された結合層に雨水に対する耐性を与えると共に、粉粒状堆積物への雨水の浸透抑制に効果を示す。
【0014】
EVAエマルジョンは市販のものを使用できるが、特にEVAエマルジョン中のエチレン−酢酸ビニル系共重合体の組成が重量比でエチレン:酢酸ビニル=5:95〜40:60のものが好適に使用される。更に、第3モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸やそのエステル、マレイン酸やイタコン酸等のジカルボン酸、無水物、エステル、酢酸ビニル以外のビニルエステル、塩化ビニル等のハロゲン系ビニル、スチレン等の芳香族系ビニル、トリアリルシアヌレートのような多官能単量体、アクリルアミドのようなアミド類などの共重合可能な単量体を共重合させたものも使用することができる。
【0015】
また重合に使用される乳化分散剤としてポリビニルアルコール(以下「PVA」という。)を使用したEVAエマルジョンは粉粒状堆積物との結合性や皮膜の強靭性の点で更に好適に使用される。
【0016】
本発明の製造方法では、水溶性高分子としてPVAを使用する。使用されるPVAは特に制限はなく市販されているものを用いることができる。例えば脂肪酸ビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られる単独重合体または共重合体、もしくは他の共重合可能な単量体との共重合体などを鹸化して得られるPVA、或いはこれらのPVAを変性した変性PVAが挙げられる。上記PVAにおいて、共重合可能な他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレンなどのオレフィン類:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの重合性モノカルボン酸類:マレイン酸、イタコン酸などの重合性ジカルボン酸類:無水マレイン酸などの重合性ジカルボン酸無水物:重合性モノカルボン酸類や重合性ジカルボン酸類のエステル類、塩類:アクリルアミド、メタクリルアミドなどの重合性酸アミド類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル類:メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル類:アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基を有する単量体:アルキルビニルエーテル類などが挙げられる。
【0017】
PVAの鹸化度は、65〜100モル%が好ましい。65モル%未満では、PVAの親水性が低くなるため液状組成物とするためには溶解性が低下し、良好な皮膜が得られなくなる場合がある。
【0018】
PVAの重合度は100〜4500が好ましい。100未満では得られる皮膜強度が小さく、かつ耐水性も劣る。一方、4500を越えると高粘度液となるため、流出防止剤を製造する上で、作業性に支障をきたす場合がある。
【0019】
PVA以外のメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやその塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのブロックポリマー等のノニオン系やアニオン系の界面活性剤もPVAの効果を阻害しない程度で使用することが出来る。
【0020】
PVAは0.05重量%〜0.7重量%の範囲で使用することが好ましく、更に好ましくは0.05重量%〜0.4重量%の範囲である。また前記の範囲内において更に皮膜強度と水による湿潤状態における皮膜からの成分溶出を抑え、湿潤状態での強度のバランスを図るためにエチレン−酢酸ビニル系共重合体100重量部に対して、PVAを15重量部以下とすることが好ましい。PVAの量が多すぎると耐水性が著しく低下し、これより少ないと粉粒状堆積物と十分な強度を有する固結層を形成できなくなる。逆に少なすぎると流出防止剤の沈降分離を防止するに不十分となる。PVAは粉粒状堆積物の粉粒体と流出防止剤とからなる強固な結合層を形成するのを促進するが、同時にPVA自身が水溶性であることから、降雨が激しくなった場合は雨水に流される危険性がある。従って、乾燥状態での強固な結合層を形成させるPVAも多く含有し過ぎると耐水性を悪化させる。
【0021】
アニオン系湿潤浸透剤は、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩より選ばれる1種または2種以上からなるものが用いられる。アニオン系湿潤浸透剤は、粉粒状堆積物に対して浸透効果が強く、流出防止剤の表面張力を低下させ、粉粒状堆積物との濡れ性を改良し、流出防止剤の粉粒状堆積物への浸透性を良くする。その結果、流出防止剤と粉粒状堆積物の結合層(皮膜)を厚くすることが出来、結合層形成に重要な役割を果たす。上記アニオン系湿潤浸透剤を添加しないと、流出防止剤は粉粒状堆積物に十分浸透せず表面あるいは表面に近いところに止まるため、薄い皮膜にしかならず、耐久性に欠ける結果となる。
【0022】
アルキルスルホコハク酸塩としては、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムが好ましい。アルキルナフタレンスルホン酸塩としては、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0023】
上記アニオン系湿潤浸透剤の中では、アルキルスルホコハク酸塩が好ましく、特にジアルキルスルホコハク酸ナトリウムが好ましい。
アニオン系湿潤浸透剤は流出防止剤の表面張力が28〜45Dyne/cmになるように添加される。その添加量はアニオン系湿潤浸透剤の種類によっても異なるが通常流出防止剤中に0.005重量%〜0.05重量%である。添加量が少ないと流出防止剤の粉粒状堆積物への浸透性の効果が無く、多すぎると浸透性の点では問題ないが、皮膜の耐水性、特に水の撥水性が低下する。
【0024】
流出防止剤の不揮発分は3重量%〜20重量%が好ましく、更に好ましくは5重量%〜15重量%の範囲である。しかし流出防止剤の不揮発分はこれに限定されるものではない。不揮発分が低くともその散布量を多くすることにより、また高い場合は散布量を少なくすることにより調整することができる。しかし不揮発分が低すぎると固結層の耐性、雨水の浸透抑制が低下する傾向となり、高いと粘度が上昇し粉粒状堆積物への浸透性が低下するとともに散布が困難となる。また不揮発分が低い場合、流出防止剤を調整後直ちに散布せず放置しておくと樹脂分が沈降して分離する場合がある。この場合は沈降分離を防止するためにPVAを添加すると良い。
【0025】
EVAエマルジョンの添加量は流出防止剤の不揮発分に合せて調整される。その添加量は不揮発分として3重量%〜20重量%が好ましく、更に好ましくは5重量%〜15重量%の範囲である。
【0026】
本発明の流出防止剤には降雨等に対する撥水性を付与するために、撥水剤を使用することが出来る。撥水剤としては、撥水効果だけではなく他の成分と相分離することのないものが良く、例えばワックス類が好ましい。ワックス類としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルバナワックス、高級脂肪酸エステルなどが挙げられ、中でも乳化型のパラフィンワックスエマルジョンなどが好ましい。
【0027】
使用する撥水剤の量はその種類によっても異なるが、粉粒状堆積物に撥水性を与えるのに必要な量であり、添加量が多すぎると浸透性が低下するので、流出防止剤中に2重量%以下が好ましい。
【0028】
本発明の流出防止剤にはアルミナセメント、コールタールやアスファルトタールを市販の乳化剤で乳化した乳化液などを、粉粒状堆積物への雨水の浸透抑制などを目的に必要に応じて併用することも出来る。また、消泡剤、着色顔料などを適宜添加することも出来る。
【0029】
流出防止剤を製造するには、撹拌機付きの混合槽に原料のEVAエマルジョン及びその他の原料を混合する事によって得る事が出来る。この場合例えば溶解しにくいPVA等の水溶性高分子は水溶液の形で添加すると短時間で混合する事ができる。水の量は所定の不揮発分になるよう水分量も含めて適宜調整することができる。あるいは、所定の不揮発分より高い流出防止剤原液を調整し、それを使用前に水で希釈して所定の不揮発分の流出防止剤として使用することもできる。この場合流出防止剤を輸送する際に量を少なくする事ができる。また不揮発分が高いとEVAエマルジョンが分離沈降することを防止することができるので貯蔵するのに有利である。流出防止剤原液の不揮発分の濃度は、例えば20〜70重量%の範囲になるように、更に好ましくは25〜60重量%の範囲になるように調整するとよい。
【0030】
本発明の流出防止剤の散布対象となる粉粒状堆積物とは粉粒状の堆積物であれば特に限定されるものではないが例えば石炭や鉄鉱石の堆積物、特に野積石炭堆積物や野積鉄鉱石堆積物、コークス、鉄鉱石などの粉粒状堆積物や、道路の法面、粉粒状の廃棄物の堆積物等である。これら粉粒状堆積物に本発明の流出防止剤を用いると、粉塵を防止し、降雨による崩れ、流出防止、及び粉粒状堆積物中の含水量の増加防止に効果がある。
【0031】
流出防止剤は粉粒状堆積物に対して、堆積物1m2 当たり不揮発分(水分を除いた残りの組成物をさす)として約20〜500g散布するのが良い。ただしこの量はこれより少なくあるいは多く散布したときに効果がなくなることを意味するものではなく、堆積物の種類、散布の環境等により適宜に変える事ができる。散布は散水車などを用いて、堆積物の全表面に対して均一に散布することが出来る。散布は1回だけでもよいが、2回以上行ってもよい。また、粉粒状堆積物が濡れている場合でも散布は可能である。粉粒状堆積物が乾燥している場合は不揮発分を比較的低くし、逆に水分が多い場合は不揮発分を高くすると比較的均一な皮膜をうる事ができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。
実施例1
撹拌機付き混合槽にEVAエマルジョン(電気化学工業株式会社製のデンカEVA#81、不揮発分56重量%)12.5重量部(エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂として7重量部)、濃度5重量%のPVA(電気化学工業株式会社製のB−33、鹸化度88モル%、重合度3300)水溶液2重量部(PVAとして0.1重量部)、アニオン系湿潤浸透剤(アルキルスルホコハク酸ナトリウム)0.018重量部(純分として0.018重量部)、撥水剤(互応化学株式会社製のダイジットS−8、不揮発分28%)0.11重量部(純分として0.03重量部)、及び水を添加し、全体を100重量部とした、不揮発分は7.2重量%であった。得られた流出防止剤について次の評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
(表面張力の測定)
流出防止剤を23℃雰囲気下でウィルヘルミー式表面張力計(協和界面科学株式会社製)で測定した。
【0034】
(耐水溶出率の測定)
流出防止剤を23℃の恒温室内で1週間乾燥させ乾燥フィルムを得る。そのフィルムの重量(W1 )を測定後、同室内で48時間水に浸漬させ、取り出し後60℃で24時間乾燥させ(W2 )、水浸漬前の重量からの減量分の比率を耐水溶出率(下記の(1)式参照)とした。
【0035】
【数1】

【0036】
(粉粒状堆積物の表面強度、撥水性試験)
縦、横、深さが30、30、5cmの型枠に石炭を充填し、その石炭表面に該流出防止剤を霧吹き器にて1.3リットル/m2 (1m2 当たり不揮発分として93.6g)散布し、20℃の恒温室で1日乾燥した。型枠の端の部分で石炭表面の強度をバネ式テンションゲージ(A&D株式会社製の測定部分の先端が6φの円柱状)で測定し散水前表面強度とした。次いで測定箇所及び型枠と石炭の境界部分を市販のシーリング剤でシールし再び20℃の恒温室に放置した。1日後、型枠ごとの重量を測定し、その型枠を35°に傾斜させじょうろにて1リットル/分の速度で水を9リットル散布した。直ちに型枠に付着している水を拭き取り重量を測定後、石炭表面の強度をバネ式テンションゲージで測定した。散水前後の重量の差から吸水量を、バネ式テンションゲージの指示値を散水後表面強度とした。
【0037】
実施例2〜7および参考例1
実施例1で使用した流出防止剤の配合量を表1のように変えた以外は実施例1と同様に試験を行った。その試験結果を表1に示した。参考例1の流出防止剤は暫く放置すると樹脂分が沈降分離したが再度撹拌混合して試験したところ物性の低下はみられなかった。
【0038】
比較例1
実施例1で使用したPVAを多くしたことを除いては実施例1と同様に試験を行い、その試験結果を表2に示した。
【0039】
比較例2〜3
実施例1で使用した流出防止剤の配合量を表2のようにかえた以外は実施例1と同様に試験を行い、その試験結果を表2に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、粉粒状堆積物と強固な結合層を形成し、かつ耐水性に優れているため特に降雨等の水による粉粒状堆積物の崩れ、流出防止、及び粉粒状堆積物中の含水量の増加防止に優れた粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合槽に、少なくともエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、アニオン系湿潤浸透剤、ポリビニルアルコール、撥水剤および水を添加し、混合することを特徴とする粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法。
【請求項2】
前記アニオン系湿潤浸透剤の添加量が、流出防止剤に対して0.005重量%〜0.05重量%である請求項1に記載の粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法。
【請求項3】
前記アニオン系湿潤浸透剤が、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸塩より選ばれる1種又は2種以上からなる請求項1または2に記載の粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコールの添加量が、流出防止剤に対して0.05重量%〜0.7重量%である請求項1に記載の粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法。
【請求項5】
前記流出防止剤の表面張力が28〜45Dyne/cmであり、かつ前記流出防止剤を乾燥して得られる皮膜の耐水溶出率が15重量%以下である請求項1乃至4のいずれかの項に記載の粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法。
【請求項6】
粉粒状堆積物が石炭又は鉄鉱石の堆積物である請求項1乃至5のいずれかの項に記載の粉粒状堆積物の流出防止剤の製造方法。

【公開番号】特開2006−328413(P2006−328413A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188494(P2006−188494)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【分割の表示】特願平10−265757の分割
【原出願日】平成10年9月4日(1998.9.4)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【出願人】(597037773)東海商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】