説明

粉粒状物の散布装置

【課題】粉粒状散布機の噴管の水平制御において、過剰な上下動やハンチングの防止を図る。
【解決手段】傾斜センサ64の検出値mに基づき左右噴管14L,14Rを夫々水平姿勢とする噴管角度を算出し、算出噴管角度θ1L,θ1Rを制御目標値として前記左右のアクチュエータ48L,48Rを作動すると共に、前記傾斜センサ64による検出値mが予め設定した所定角度αを超えると、左右噴管14L,14Rの噴管角度を左右噴管14L,14Rの先端側が上向く一定角度βを制御目標値として前記アクチュエータ48L,48Rを作動する制御部15を設けた。または角速度センサ64による検出値ωが予め設定した所定角速度値γを超えると、左右噴管14L,14Rの噴管角度を左右噴管14L,14Rの先端側が上向く一定角度δを制御目標値として前記アクチュエータ48L,48Rを作動する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンクに収容された粒状肥料等の粒体を繰出装置で繰り出しながら、噴管によって繰出粒体を圃場に散布する粉粒状物の散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体の前部に防除ブームを左右ローリング自在に支持して設け、この防除ブームを制御するコントローラに、防除ブームの揺動角を検出する傾斜センサの検出情報、及び本機の左右ローリング角度を検出する角速度センサの検出情報を夫々入力する構成とし、防除ブームを所定のローリング姿勢に維持するように構成している(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−350567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の構成によると、本機側の動きは傾斜センサたけでなく角速度センサにおいても監視されることになって、本機の左右傾斜に関わらず、防除ブームは常に設定姿勢に維持され、作物に対する散布量の均一化が図れるものである。
【0004】
ところで、粉粒状物を散布する構成の散布装置にあっては、長尺の噴管は機体支持部を支点に上下に角度補正するものであるから、頻繁な機体の左右ローリング変動を伴う場合には上記角度補正に追従し難く、ハンチングに陥り易く、所望の水平維持を得難く、その結果粉粒状物が噴管内部で停滞しがちになり、各噴口からの吐出量が大きくばらつくなどの不具合が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み、請求項1に記載の発明は、走行機体に、粉粒状肥料を収容するタンク(10)、左右一対に設けられ該タンク(10)の粉粒状物を繰出す繰出装置(11)、粉粒状物を送風によって搬送する送風装置(12)、粉粒状物を散布する左右の噴管(14L,14R)を備えた粉粒状物の散布装置において、前記噴管(14L,14R)を機体に対しアクチュエータ(48L,48R)の作動によって夫々独立的に上下角度変更可能に設け、機体の対地左右傾斜角度を検出する傾斜センサ(64)と、機体に対する前記左右の噴管(14L,14R)の上下の噴管角度(θL,θR)を夫々検出する噴管角度センサ(65L,65R)とを設け、前記傾斜センサ(64)の検出値(m)に基づき左右噴管(14L,14R)を夫々水平姿勢とする噴管角度を算出し、算出噴管角度(θ1L,θ1R)を制御目標値として前記左右のアクチュエータ(48L,48R)を作動すると共に、前記傾斜センサ(64)による検出値(m)が予め設定した所定角度(α)を超えると、左右噴管(14L,14R)の噴管角度を左右噴管(14L,14R)の先端側が上向く一定角度(β)を制御目標値として前記アクチュエータ(48L,48R)を作動する制御部(15)を設けたことを特徴とする粉粒状物の散布装置とする。
【0006】
上記のように構成すると、機体の左右傾斜角を検出する傾斜センサ(64)の検出に基づき左右噴管(14L,14R)を水平維持すべく左右夫々の噴管角度(θL,θR)が算出され、この算出された角度をもとにアクチュエータ(48L,48R)は機体に対する左右の噴管(14L,14R)を夫々独立的に上下調整しこれらは水平制御される。また、前記傾斜センサ(64)が所定角度(α)以上になると、噴管角度(θL,θR)は左右の噴管(14L,14R)の先端側が上向く一定角度(β)に維持される。
【0007】
又、請求項2に記載の発明は、走行機体に、粉粒状肥料を収容するタンク(10)、左右一対に設けられ該タンク(10)の粉粒状物を繰出す繰出装置(11)、粉粒状物を送風によって搬送する送風装置(12)、粉粒状物を散布する左右の噴管(14L,14R)を備えた粉粒状物の散布装置において、前記噴管(14L,14R)を機体に対しアクチュエータ(48L,48R)の作動によって夫々独立的に上下角度変更可能に設け、機体の対地左右傾斜角度を検出する傾斜センサ(64)と、機体の左右傾斜に基づく角速度を検出する角速度センサ(66)と、機体に対する前記左右の噴管(14L,14R)の上下の噴管角度(θL,θR)を夫々検出する噴管角度センサ(65L,65R)とを設け、前記傾斜センサ(64)の検出値(m)に基づき左右噴管(14L,14R)を夫々水平姿勢とする噴管角度を算出し、算出噴管角度(θ1L,θ1R)を制御目標値として前記左右のアクチュエータ(48L,48R)を作動すると共に、前記角速度センサ(64)による検出値(ω)が予め設定した所定角速度値(γ)を超えると、左右噴管(14L,14R)の噴管角度を左右噴管(14L,14R)の先端側が上向く一定角度(δ)を制御目標値として前記アクチュエータ(48L,48R)を作動する制御部(15)を設けたことを特徴とする粉粒状物の散布装置とする。
【0008】
このように構成すると、機体の左右傾斜角を検出する傾斜センサ(64)の検出に基づき左右噴管(14L,14R)を水平維持すべくアクチュエータ(48L,48R)は機体に対する左右の噴管(14L,14R)を夫々独立的に上下調整し水平制御される。そして、前記角速度センサ(66)が所定角速度(γ)以上になると、噴管角度(θL,θR)は左右の噴管(14L,14R)の先端側が上向く一定角度(δ)に維持される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によると、走行する機体の左右傾斜角度に関わらず左右噴管(14L,14R)は水平姿勢に維持されて所望の散布作業を行ない、上記機体の傾斜角度mが所定値(α)以上に傾くときは、水平制御を行なわず、左右噴管(14L,14R)の先端側が上向く姿勢に固定されるから、作物との接触を防止できる。
【0010】
また請求項2に記載の発明によると、左右噴管(14L,14R)は機体の左右動に連れて揺動するが制御作動に伴うハンチング現象は生じ難く、左右噴管(14L,14R)内に粉粒状体が停滞することが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
まず、図1と図2に示すように、粒状散布装置1は、乗用管理機2の後部に装着される。前部にエンジン3を搭載し、エンジン回転を適宜に変速して前後車輪4,5を伝動する乗用管理機2機体の後部には、左右一対のタンク10,10を装着する。上記粒状散布装置1は、該タンク10、繰出装置11、送風装置12、第1噴管13、第2噴管14、制御部15等からなる。
【0012】
前記一対のタンク10,10の夫々に該タンク10から所定量の散布粒剤を繰出す繰出装置11が設けられる。繰出装置11は複数形態のロール20をロール駆動軸21に構成する公知の構成であり、繰出凹部を同じ容量として周方向に複数形成している。第1ロール20a及び第2ロール20bは軸長が長く、第3ロール20c及び第4ロール20dは軸長が短い構成としている。
【0013】
そして、ロール駆動軸21が正転駆動するときは、ワンウェイクラッチ22,22の連動作用をもって第1,第4ロール20a,20dが駆動されるため、第1〜第4ロール20a〜20d全部が駆動される構成である。逆にロール駆動軸21が逆転駆動するときは、第1,第4ロール20a,20dは停止し、第2ロール20b,又は第3ロール20cが駆動される。
【0014】
一方前記タンク10内は平面視コ型の仕切壁10aを備え、繰出装置11の第1〜第2ロール20a〜20bに対応する区画Aと第3ロール20c〜第4ロール20dに対応する区画Bとに区分される構成となっている。区画Aには一般的な施肥用粒剤用として、区画Bには少量散布が要求される除草剤用として使用されるよう設けられている。従って、ロール駆動軸21が正転するときは、第1ロール20a〜第2ロール20bが回転連動し区画Aの粒剤が多量繰出状態とされ、逆転するときは区画Aの第2ロール20bのみの繰出し状態となる。なお、区画Bに除草剤を投入するときは、この正逆で繰出量が異なり特に逆転連動によって第3ロール20cのみの少量散布がなされる。
【0015】
左右一対のロール駆動軸21,21は夫々に設けられたロール駆動モータ25L,25Rにて独立して駆動回転される構成であり、これらモータ25L,25Rは正・逆転切り替え連動する構成である。
【0016】
前記一対の繰出装置11,11の下方には機体進行方向に対して後側が互いに斜め内向きに延長された通気筒30,30をのぞませ、該通気筒30,30の連設部は送風装置12を備えた送風筒31に連通されている。そして各通気筒30,30の下流側他端、即ち機体前方側は第1噴管13に連通接続される構成である。
【0017】
上記送風装置12は、乗用管理機2のPTO軸32に電磁クラッチ12bを介して連動する送風ファン12aによって構成され、その噴風は前記送風筒31を経由して通気筒30に入り繰出粒状物を気流に乗せて移送し第1噴管13に至る構成である。
【0018】
前記左右各第1噴管13は、前記タンク10と乗用管理機2機体の上部に設ける搭乗者用シート33との間の空間部に、筒状の軸芯が平面視において機体進行方向に対し外向きに傾斜するよう前記通気筒30に接続されており、左右夫々の第1噴管13には蛇腹管40を介して屈曲自在に第2噴管14を接続する。
【0019】
即ち、蛇腹管40の先端に筒体42を設け、該筒体42はアーム体43を介して縦支軸44周りに回動自在に構成され、該アーム体43と機枠側から横に張り出して設ける支持ブラケット34との間に電動式の伸縮シリンダ45を介在し、電動モータ46の正転による短縮によって第2噴管14を作業姿勢となるよう横向きに拡げ、逆転による伸び出しによって第2噴管14を機体に沿う状態に収納する構成である。35は電動式伸縮シリンダ45による縦軸回りの回動支点を支持するブラケットである。
【0020】
電動モータ46の逆転に伴い第2噴管14を機体に沿う状態に収納したとき、回動支点が機体側に接近する位置に配置することによって、収納状態の第2噴管14を機体側に接近させることができるので、平面視において、機体側に設ける昇降ステップ36の内側に収納することができ、収納時の機体への昇降が容易である。
【0021】
なお、電動式伸縮シリンダ45や電動モータ46は後輪5とタンク10との間に配設されている。走行中泥土が跳ね上げられるが、後輪5の内側に位置するため跳ね上げ箇所から回避でき電動式伸縮シリンダ45や電動モータ46への泥土付着による弊害を生じ難い。
【0022】
上記筒体42には横支軸47を設け、第2噴管14はこの横支軸47を介して連結されていて、上記収納姿勢への動きのほか、該横支軸47周りに回動させることによって上下に回動しうる構成である。即ち、左右夫々の第1噴管13,13に立設するマスト部16,16と第2噴管14L,14Rとの間に、電動式伸縮シリンダ48L,48Rを設け、該伸縮シリンダ48の伸縮に基づき第2噴管14が本機に対して該横支軸47回りに上下回動できローリング作動しうる構成である。
【0023】
また、手元の図外の操作レバーの操作に基づき左側又は右側の第2噴管14L,14Rを垂直姿勢(非作業姿勢)又は水平姿勢(作業姿勢)に切り替えることができる。前記第2噴管14には所定間隔毎に所定口径の噴口50,50…を形成している。
【0024】
次いで上記構成の粒状散布装置1の制御部15について説明する。制御部15は、散布スイッチ51の操作情報、ファンスイッチ52による送風ファン12aの駆動情報、前記タンク10に設ける残量センサ54,54検出信号等を入力する一方、ロール駆動モータ25L,25R夫々へモータ回転出力パルス信号、モータ回転方向切替信号等を出力する(図8)。
【0025】
上記本機コントローラ15Cは車速を検出する手段からの車速データを施肥コントローラ15Aに送信する構成である。
また、施肥コントローラ15Aは、操作パネル55に配設するスイッチ類の情報を入力する。前記図の操作パネル55における液晶表示部56の近傍には、可変スイッチ57、施肥設定スイッチ58、増・減スイッチ59U,59D、累計リセットスイッチ60を配設し、これらの操作スイッチ信号は施肥コントローラ15Aに入力される構成である。なお、液晶表示部56の表示内容は、施肥量設定値、比重値、メモリー値、累計値を夫々表示でき、表示切換スイッチ61のオン操作で順次切換表示すべく出力される。
【0026】
施肥コントローラ15Aは、制御モードが組み込まれている。即ち、キースイッチ62をオンすると共に前記散布スイッチ51をオンすると自動モードに入る。この自動モードは、単位面積当たりの施肥量が一定になるよう、施肥量設定値および車速に対応して繰出装置11のロールを駆動する前記ロール駆動モータ25L,25R夫々にモータ回転出力パルス(ロール駆動モータ回転信号)を出力する構成である。
【0027】
作業開始前に施肥設定スイッチ58をオンして現在設定の施肥量(反当り施肥量(kg))を表示させ、これからの作業に見合う施肥量であるか否か確認し、相違するときは増スイッチ59U又は減スイッチ59Dによって1kg単位で変更し、再度施肥設定スイッチ58を所定時間以上(例えば2秒以上)オンするとその値A(kg)が記憶される。
【0028】
次いで比重設定を行なう。表示切換スイッチ61をオンし「比重」を選択すると、現在の設定値が表示される。これからの作業に見合う比重値であるか否か確認し、相違するときは増スイッチ59U又は減スイッチ59Dによって0.01単位で変更し、再度施肥設定スイッチ58を所定時間以上(例えば2秒以上)オンするとその値D(g/cm)が記憶される。
【0029】
その後コントローラは、車速データを取り込みながら設定施肥量を散布するに必要な繰出装置11の繰出量制御を行う構成である。繰出量の増減制御は繰出バルブの回転数制御によって行う。
【0030】
次いで、第2噴管14L,14Rの水平制御について説明する。機体の左右中央に機体の対地左右角度を検出する傾斜センサ64を設け、前記横支軸47,47の近傍には機体に対する第2噴管14L,14Rの上下の噴管角度θL,θRを検出する噴管角度センサ65L,65Rを設ける。
【0031】
上記傾斜センサ64による検出値m、及び噴管角度センサ65L,65Rによる噴管角度θL,θRに基づき、前記制御部15は、アクチュエータとしての電動式伸縮シリンダ48L,48Rを伸縮作動させて第2噴管14L,14Rを独立的に上下させながら水平制御する構成である。
【0032】
図6に基づき説明すると、先ず各種設定値を入力し(例えば、散布する粉粒散布肥料の設定施肥量や比重。ステップ101)、ファンスイッチ52及び散布スイッチ51をオンし(ステップ102,103)、機体を前進させる(ステップ104)。制御部15は検出車速に基づき(ステップ105)、左右のロール駆動モータ25L,25Rを回転制御し(ステップ106)、タンク10から繰出装置11を経て繰出される肥料をコントロールしながら第1噴管13,13、第2噴管14L,14Rを経て肥料散布される。
【0033】
上記の散布作業において、ステップ107にて傾斜センサ64によって機体傾斜角が検出され、この検出値mの絶対値|m|が予め設定した所定値α(>0)と比較され(ステップ108)、所定範囲内にあるときは左右の第2噴管14L,14Rは水平制御される。即ち、制御部15は、上記検出値mを基準に、右噴管角度θ1L=fL(m)、左噴管角度θ1R=fR(m)として、検出値mの関数として算出し、噴管角度センサ65L,65Rの検出値θL,θRがこれら算出された噴管角度θ1L,θ1Rに一致すべく、電動式伸縮シリンダ(アクチュエータ)48L,48Rを伸縮作動させる構成である(ステップ109)。
【0034】
また、前記傾斜センサ64の検出値mが所定値αを超えて大きく傾斜するときは、水平制御を中断し、噴管角度θL,θRは予め設定したβ(>0)に固定される。従って左右の第2噴管14L,14Rは先端側が上向く姿勢に電動式伸縮シリンダ(アクチュエータ)48L,48Rを伸縮作動させるものである(ステップ110)。
【0035】
したがって、機体の左右傾斜角度の状況を監視しながら、傾斜角度が所定範囲にあるときは、この傾斜角度を加味して水平制御を実行し、機体の傾きに関係なく圃場に万遍なく肥料散布できる。また機体の傾斜角度が所定に大きくなると、機体の水平制御に伴う噴管上下作動が却ってハンチングを惹き起こすこととなるが、上記の実施例では噴管角度は所定角度に固定されて機体の左右傾斜に関わらず、アクチュエータによる水平制御作動が中断されるため、上記のようにハンチングを防止でき、ハンチングに基づく現象、例えば作物と噴管との接触、噴管内の肥料停滞を防止できる。即ち、先端側が上向く姿勢に固定するから機体が左右変動しても下向き姿勢になり難く生長作物に接触の恐れがない。
【0036】
また、予めタイマ設定した時間が経過するか(ステップ111、112)、機体の傾斜角度が所定範囲に納まると(ステップ113)、作業を中断することなく、ステップ109の水平制御の通常状態に復帰できる。
【0037】
散布スイッチ51及びファンスイッチ52のオン操作が前記第2噴管の水平制御の開始条件とする一方、散布スイッチ51又はファンスイッチ52のいずれかのオフ操作で一連の第2噴管の水平制御を停止する構成としている(ステップ114,115)。
【0038】
また、図7は、傾斜センサ64に加えて角速度センサ66を備える構成である。角速度センサ66は、機体の傾斜角速度ωを検出でき、この角速度ωが大のときは機体左右動が大きい状態を検出する。そこで、図7においては、角速度ωが所定値γ以上の条件のとき、左右噴管角度θL,θRを所定値δ(一定)にセットする構成とするものである。このように構成すると、機体左右動の角速度ωが大となって水平制御作動によって却ってハンチングを生じる結果、噴管内に粉粒体が停滞することとなるが、これを防止できる。
【0039】
前記操作パネル55には、前記の電動式伸縮シリンダ(アクチュエータ)48L,48Rによる第2噴管14L,14Rの上下制御について、水平制御に加え左右噴管角度を固定する制御を採用するか否かを設定する噴管自動スイッチ68、左右の噴管角度の一定値β,δを任意に設定できる噴管角度調整ダイヤル69、左右の噴管14L,14Rのうちいずれの噴管を角度調整対象とするか、又は同時作動とするかを設定する噴管選択ダイヤル70を備えている。
【0040】
前記図3の繰出装置11は、第1、第2の大ロール20a,20b、及び第3、第4の小ロール20c,20dからなり、通気筒30内における粉粒状物の繰出性の向上を図った改良構成を示すものである。すなわち、大ロール20a,20bと小ロール20c,20dによる散布を同時に行うことが可能であるが、このとき、タンク10内仕切壁10a内に少量散布の除草剤を充填し、タンク10には大量散布の肥料を充填する。除草剤は比重が大で重く、大量散布の肥料は比較的比重の軽い成分からなっているため、通気筒30内に於ける送風搬送の先側に除草剤を繰出させ、後側に肥料を繰出すように構成している。このように構成することにより詰りを少なくさせることができる。また、図9に示すように、通気筒30内に先側が傾斜下方となり後側が傾斜上方となるように傾斜案内板70を設けている(図9(イ))。このように構成すると、この傾斜案内板70は、上部の繰出装置11の大ロール20a,20bから落下する肥料を受けて送風方向に案内し、比較的落下距離を大となした小ロール20c,20d側から落下する除草剤と混合でき、肥料と除草剤との混合状態の良好な均一散布が可能となる。なお、除草剤と肥料との前後配置を逆にすると(図9(ロ))、傾斜案内板70の下方に除草剤が堆積する恐れがあり、ひいては搬送抵抗となって作業に支障をきたすこととなる。又、傾斜案内板70を傾斜上位の端部を中心に上下回動可能に設けることにより(図9(ハ))、一層送風抵抗のない良好な混合状態及び搬送状態を得られる。
【0041】
図10,11は、旋回中の散布制御に関する。直進作業中においては、前記第2噴管14L,14Rは水平制御されるが、圃場の端部に達する直前など旋回動作に移るとこの水平制御を中断する構成である。前輪の操舵角を検出する操舵角センサ71を設け、この操舵角センサの値が所定値σを超えると、前記図5,6のように第2噴管14L,14Rを先端が上向く姿勢に固定するものである。このように構成すると、圃場端の激しい凹凸面を走行する際にも噴管14L,14Rはハンチング動作を回避でき、所定の対機体角度を保持しながら旋回できるため、過剰な散布飛距離としたり作物に接触するなどの恐れを少なくできる。
【0042】
又、図12,図13に示す他の改良例では、この旋回動作に入ったことの検出に基づいて、旋回内側の第2噴管14R(又は14L)を水平制御し、旋回外側の第2噴管14L(又は14R)については、自動的に先端側が上向く所定角度に保持する構成としている(ステップ406)。このように構成すると、旋回内側においては、先端散布区域の重複散布が避けられ散布量の偏りを少なくできる。また、外側散布については、圃場の四隅部への散布が可能となる。
【0043】
さらに、左右の第2噴管14L,14Rそれぞれにロール駆動モータ25L,25Rを対応するものであるから散布量の細かい増減制御を行うことができる。このため、旋回時の左右の第2噴管14L,14Rからの噴出量を調節することができ、旋回速度や熟練度に応じて旋回内側のロール回転数を小に、外側を大に設定変更するとよい。即ち、車速に連動しても旋回内側の第2噴管14R(又は14L)の移動速度V1に対して旋回外側の第2噴管14L(又は14R)の移動速度V2(>V1)が大きいためこの分を加味して補正を掛けるものである(ステップ407,408)。
【0044】
上例において旋回動作の検出は操舵角センサの検出によるものとしたが、前後輪操舵モードを選択できる構成の作業車の場合には、旋回中の走行モード切替制御に基づき、例えば直進時前輪操舵(FWS)モードであるが、旋回時は前後輪操舵(4WS)モードに切り替える構成とする場合には、4WSモード切替スイッチ72の操作によるモード切替に伴い前記の旋回内側水平制御、旋回外側上昇固定制御を行わせるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】粒状施肥装置を装着した乗用管理機の平面図
【図2】粒状施肥装置を装着した乗用管理機の側面図
【図3】(イ)繰出装置の背面図、及び(ロ)平断面図
【図4】粒状施肥装置を装着した乗用管理機の背面図
【図5】制御ブロック図
【図6】フローチャート
【図7】フローチャート
【図8】操作パネル部正面図
【図9】通気筒の側断面図であって、(イ)改良構成の側断面図、(ロ)従来構成の側断面図、(ハ)更に改良した構成の側断面図
【図10】作用を示す全体平面図
【図11】フローチャート
【図12】粒状施肥装置を装着した乗用管理機の背面図
【図13】フローチャート
【符号の説明】
【0046】
10,10 タンク
11,11 繰出装置
12 送風装置
13,13 第1噴管
14L 第2噴管
14R 第2噴管
15 制御部
20a 繰出ロール
20b 繰出ロール
20c 繰出ロール
20d 繰出ロール
30,30 通気筒
48L 電動式伸縮シリンダ(アクチュエータ)
48R 電動式伸縮シリンダ(アクチュエータ)
64 傾斜センサ
65L 噴管角度センサ
65R 噴管角度センサ
66 角速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に、粉粒状肥料を収容するタンク(10)、左右一対に設けられ該タンク(10)の粉粒状物を繰出す繰出装置(11)、粉粒状物を送風によって搬送する送風装置(12)、粉粒状物を散布する左右の噴管(14L,14R)を備えた粉粒状物の散布装置において、前記噴管(14L,14R)を機体に対しアクチュエータ(48L,48R)の作動によって夫々独立的に上下角度変更可能に設け、機体の対地左右傾斜角度を検出する傾斜センサ(64)と、機体に対する前記左右の噴管(14L,14R)の上下の噴管角度(θL,θR)を夫々検出する噴管角度センサ(65L,65R)とを設け、
前記傾斜センサ(64)の検出値(m)に基づき左右噴管(14L,14R)を夫々水平姿勢とする噴管角度を算出し、算出噴管角度(θ1L,θ1R)を制御目標値として前記左右のアクチュエータ(48L,48R)を作動すると共に、前記傾斜センサ(64)による検出値(m)が予め設定した所定角度(α)を超えると、左右噴管(14L,14R)の噴管角度を左右噴管(14L,14R)の先端側が上向く一定角度(β)を制御目標値として前記アクチュエータ(48L,48R)を作動する制御部(15)を設けたことを特徴とする粉粒状物の散布装置。
【請求項2】
走行機体に、粉粒状肥料を収容するタンク(10)、左右一対に設けられ該タンク(10)の粉粒状物を繰出す繰出装置(11)、粉粒状物を送風によって搬送する送風装置(12)、粉粒状物を散布する左右の噴管(14L,14R)を備えた粉粒状物の散布装置において、前記噴管(14L,14R)を機体に対しアクチュエータ(48L,48R)の作動によって夫々独立的に上下角度変更可能に設け、機体の対地左右傾斜角度を検出する傾斜センサ(64)と、機体の左右傾斜に基づく角速度を検出する角速度センサ(66)と、機体に対する前記左右の噴管(14L,14R)の上下の噴管角度(θL,θR)を夫々検出する噴管角度センサ(65L,65R)とを設け、前記傾斜センサ(64)の検出値(m)に基づき左右噴管(14L,14R)を夫々水平姿勢とする噴管角度を算出し、算出噴管角度(θ1L,θ1R)を制御目標値として前記左右のアクチュエータ(48L,48R)を作動すると共に、前記角速度センサ(64)による検出値(ω)が予め設定した所定角速度値(γ)を超えると、左右噴管(14L,14R)の噴管角度を左右噴管(14L,14R)の先端側が上向く一定角度(δ)を制御目標値として前記アクチュエータ(48L,48R)を作動する制御部(15)を設けたことを特徴とする粉粒状物の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−178101(P2009−178101A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20785(P2008−20785)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】