説明

粒子が充填された不織材料

層が、不織材料から製造された基礎体を有し、基礎体が、繊維と、前記繊維によって形成された第1細孔とを含み、基礎体は部分的に粒子が充填され、粒子は、第1細孔を少なくとも部分的に充填し、粒子が充填された領域を形成する。本発明の目的は、費用効果的な製造後に、層が小さな厚みと高い多孔度、高い温度安定性とを有するように層を構成および改良することである。層は、充填された領域の粒子が第2細孔を形成し、粒子の平均直径が第2細孔の大部分の平均細孔径よりも大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維不織ウェブ布で構成される基礎構造を有し、前記基礎構造は繊維からなると共に、前記繊維によって形成された第1細孔を有し、前記基礎構造は少なくとも部分的に粒子が充填され、当該粒子が前記第1細孔を少なくとも部分的に充填し、且つ、粒子が充填された領域を形成するプライにする。
【背景技術】
【0002】
上述した類のプライ(ply、板状素材)は既に先行技術から公知である。このようなプライは、高エネルギー蓄積効率のバッテリーおよびキャパシタのセパレータとして使用される。バッテリーおよびキャパシタの電荷蓄積は、化学的、物理的または化学吸着のように両者が混合された形で行なわれる。
【0003】
バッテリーまたはキャパシタ内の内部放電を避けるために、反対の電荷をもつ電極どうしは、セパレータまたはスペーサとして知られる電子を伝導しない材料によって機械的に隔離される。同時に、セパレータまたはスペーサは、エネルギー蓄積システムおよびその使用に適合した多孔度(porosity)を備えることで電解液のイオン電荷担体が電極間を移動することを可能にする。
【0004】
先行技術から公知のセパレータは、マイクロメートル範囲の小さな相互連結された開口を有する。浸漬されたセパレータの電解液の導電率を可及的に高く、したがってバッテリーが高い出力密度を有するには、これらの開口は可及的に大きくすべきと言われている。しかし、開口が過大であると、金属デンドライトが、実際に互いに電気的に隔てられる必要のある2つの電極どうしの短絡を引き起こす可能性がある。金属デンドライトは、バッテリー中に不純物として存在し得るリチウムその他の金属からなる。
【0005】
さらに、導電性電極材料の粒子が上記開口の中を移動する可能性がある。これらのプロセスは、電極間の短絡を生じさせ、バッテリーまたはキャパシタの自己放電を大幅に速める可能性がある。
【0006】
短絡によって非常に高い電流の局所流が生じる可能性があり、その場合は熱を放出する。この熱によってセパレータが溶融する可能性があり、その場合セパレータの絶縁/単離作用の著しい低下を引き起こす可能性がある。非常に急速に自己放電するバッテリーは、エネルギー含量が高く、しかも電解液および他の構成要素が燃焼する可能性があるため、安全性のリスクが高い。
【0007】
先行技術から公知のセパレータが持つさらなる不利な点は、昇温時に安定性を欠くことである。ポリエチレンが用いられている場合の融点は約130℃、ポリプロピレンが用いられている場合は約150℃である。
【0008】
短絡の原因には、バッテリー内の過熱によるセパレータの収縮、金属イオン(リチウム、鉄、マンガン、または他の金属不純物)の還元による金属デンドライト成長、電極の粒子由来の屑、電極上の切削屑または破壊された被覆、および加圧下における2つの平坦な電極間の直接接触などがある。
【0009】
EP0892448A2号明細書には遮断機構が開示されている。遮断機構は、例えば初期短絡の近傍でのイオン移動を妨げることで短絡の空中伝播を阻止することによって、短絡による局部加熱に対応する。短絡による熱損失によって、セパレータを溶融させかつ細孔を塞ぐ程までポリエチレンの温度が上がる。ポリプロピレンは融点が高いので機械的には無傷のままである。
【0010】
US2002/0168569A1号明細書には、製造作業において、先ず溶剤で可溶化され、シリカ粒子と混合され、薄膜として適用されるポリ二フッ化ビニルからなるセパレータの構造が記載されている。溶剤を除去すると多孔膜が残る。
【0011】
WO2006/068428A1号明細書には、ポリオレフィンセパレータを用い、さらにゲル状ポリマーおよび無機物粒子を充填した、リチウムイオンバッテリーのためのセパレータの製造について記載されている。
【0012】
WO2004/021475A1号明細書には、オルガノシラン系接着助剤、および、ケイ素、アルミニウムおよび/またはジルコニウム元素の酸化物から得た無機バインダーと結合されたセラミック粒子を用いて薄いシート材料を形成することが記載されている。
【0013】
十分な機械的可撓性を得るために、繊維不織ウェブ布などの支持材料にセラミック粒子を混入させる。これはWO2005/038959A1号明細書に開示されている。
【0014】
金属デンドライト形成の初期段階における短絡を防ぐために、WO2005/104269A1号明細書には、比較的低融点のワックスをセラミックペーストへの添加物として用いることが記載されている。
【0015】
WO2007/028662A1号明細書には、セパレータの機械的性質を改良するために、100℃を超える融点を有するポリマー粒子をセラミック充填剤に添加することが記載されている。ここに記載された材料は、リチウムイオン材料のためのセパレータとして用いることが意図されている。これらのセパレータは膜よりも高い熱安定性を提供するものの、今のところ商業的成功を収めていない。これは、それらの比較的高いコストおよび25μmを超える材料の過度の厚みのためであろう。
【0016】
WO2000/024075A1号明細書には、燃料電池の中で使用可能な膜の製造について記載されている。この膜は、フッ素化炭化水素ポリマーがシリケートバインダーによって固定されたガラス繊維材料からなる。
【0017】
最後に、特開2005−268096号公報には、加熱によってポリエチレン/ポリプロピレン繊維の支持材料の中で熱可塑性樹脂の粒子を一緒に溶融することによって製造されるリチウムイオンバッテリーのためのセパレータが記載されている。このセパレータは0.1〜15μmの細孔直径を有する気泡状の多孔構造を有する。
【0018】
先行技術は、小さな厚みと、高い多孔度および高い熱安定性とを兼ね備え、出力およびエネルギー密度の高いバッテリーの中で広い温度範囲にわたって安全に使用可能な安価なセパレータを示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】EP0892448A2号明細書
【特許文献2】US2002/0168569A1号明細書
【特許文献3】WO2006/068428A1号明細書
【特許文献4】WO2004/021475A1号明細書
【特許文献5】WO2005/038959A1号明細書
【特許文献6】WO2005/104269A1号明細書
【特許文献7】WO2007/028662A1号明細書
【特許文献8】WO2000/024075A1号明細書
【特許文献9】特開2005−268096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、冒頭に記した類のプライを、安価に製造でき、小さな厚みと高い多孔度および高い熱安定性とを兼ね備えたものとして開発および改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は請求項1の特徴によって本発明によって達成されることがわかった。
【0022】
その請求項1によれば、プライは、充填された領域内の粒子が第2細孔を形成し、粒子の平均直径が大部分の第2細孔の平均細孔径よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
平均細孔径の度数分布は、本発明によって、第2細孔の50%以上が粒子の平均直径より小さい平均細孔径を有するように設定される。本発明者らは、安価な繊維不織ウェブ布の細孔構造を粒子の適切な配列と選択によって改良し得るという知見を得た。特に、本発明のプライの多孔度は、その安定性を低下させることなくポリオレフィン膜に比べて強化可能であることが認識された。多数の粒子の平均直径が、充填された領域の第2細孔の大多数の平均細孔径よりも大きい構成とすることにより、高い多孔度が得られ、したがって繊維不織ウェブ布による電解液の高い吸収が得られる。同時に、形成された細孔構造は、有害な金属デンドライトが中に形成されるのを実質的に不可能にする。本発明は、気泡状ではなくラビリンス状で細長い細孔を備える細孔構造を生じさせる粒子配列を提供する。このような細孔構造では、プライの一方側から他方側まで延びる樹枝状成長を形成するのは実質的に不可能である。これは、バッテリーまたはキャパシタの短絡を防ぐのに有効である。従って、本発明のプライは、出力およびエネルギー密度の高いバッテリーおよびキャパシタのセパレータとして非常に有用である。本発明のプライは広い温度範囲にわたって安全に使用できる。したがって冒頭に記した目的が達成される。
【0024】
粒子は球形でもよい。その場合、繊維不織ウェブ布の第1細孔において球による圧倒的な最密充填が有利に生じる可能性がある。大多数の第2細孔の平均細孔径は本質的に球の充填における幾何学的条件によって決定される。球の最密充填を生じさせる方法は無数にある。それらの方法の共通の特徴は、それらが球の六方晶状の層(hexagonal layers)からなる点である。2つの最も重要な代表例は、球の六方最密充填(層配列A、B、A、B、A、B)および球の立方最密充填(層配列A、B、C、A、B、C、A)である。また、球の立方最密充填は、球の面心立方充填としても公知である。球の最密充填の各々の球は12個の隣接物を有し、それ自体の層に6個、および上下各々に3個を有する。それらは、立方配列において立方八面体(cuboctahedron)を形成し、六方配列においてねじれ立方八面体(anti cuboctahedron)を形成する。球の最密充填の充填密度は74%である。しかし望まれるのは可及的に高い多孔度を得ることである。したがって、繊維不織ウェブ布の第1細孔内の全ての粒子が球の最密充填を形成するのではない。むしろ、粒子がゆるく充填される領域もあり、そのことが高い多孔度を促進する。
【0025】
本発明の別実施形態では、粒子は非球形であるか又は或る比率で非球形粒子がある。この実施形態は特に無機粒子の適用に関連がある。無機粒子は角および縁がある不規則な、亀裂が生じた形状を有する場合が多い。また、このような粒子を、例えば10重量%、20重量%または50重量%までの比率で球形粒子に混合することができる。このようにして、粒子の特性を有利に組み合わせることができる。
【0026】
粒子は基礎構造においてシート状の均質分布を形成し得る。その具体的な形態は、短絡を防ぐための特に有効な方法である。金属デンドライトおよび屑状物は均質に覆われたシート中を実質的に移動不可能である。さらに、このようなシートは電極どうしが加圧によって直接接触することを防ぐ。このような背景に鑑みて、プライが粒子の平均直径よりも小さい平均細孔径を支配的に示すように、繊維不織ウェブ布の全ての第1細孔に粒子を均質に充填することが具体的に考えられる。
【0027】
基礎構造は粒子のコーティングを有することができる。またコーティングは前述した短絡防止をもたらす有利な方法である。プライがコーティングを有するとき、基礎構造は少なくとも部分的に粒子が充填される境界領域を必ず有する。
【0028】
粒子はバインダーによって繊維不織ウェブ布と結合させることができる。このバインダーは有機ポリマーで構成されたものでもよい。有機ポリマーで構成されたバインダーを用いると、十分な機械的可撓性を有するプライを製造可能になる。ポリビニルピロリドンは驚異的に優れたバインダー特性を示す。
【0029】
本発明の好適な実施形態では、バインダーはポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリビニル化合物、ポリオレフィン、ゴム、ハロゲン化ポリマーおよび/または不飽和ポリマーである。
【0030】
バインダーは、ホモポリマーの形態でまたはコポリマーとして使用されうる。有用なコポリマーには、例えばランダムコポリマー、グラジエントコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトポリマーなどがある。コポリマーは、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の異なったモノマーで構成させることができる(ターポリマー、テトラポリマー)。
【0031】
熱可塑性、エラストマー系および/または熱硬化性バインダーを用いることが好適な場合もある。この背景に関連して記載可能な例としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニリデンフルオリド、およびこれらのコポリマー、セルロースおよびその誘導体、ポリエーテル、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびラテックスがある。
【0032】
好適な実施形態ではバインダーは不飽和ポリマーである。不飽和基は、例えば炭素−炭素二重結合もしくは三重結合または炭素−窒素二重結合もしくは三重結合でもよい。好適なものはC=C二重結合である。これらは、例えばジエンの重合によって得られるポリマーの場合のように、ポリマー中に均一に分散されうる。また、このようなポリマーは部分的に水素化することができる。あるいはポリマーの基礎足場(foundational scaffolds)が不飽和基を含有する基に結合させることができる。不飽和ポリマーは一般に良好な付着特性で知られている。
【0033】
本発明の好適な実施形態ではバインダーはポリビニルエーテルである。適切なモノマーは例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、トリフルオロメチルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピルビニルエーテルまたはテトラフルオロプロピルビニルエーテルである。用いられるポリビニルエーテルは例えばホモポリマーまたはコポリマー、特にブロックコポリマーでよい。コポリマーは、種々のモノマービニルエーテルで構成することができ、またはビニルエーテルモノマーと他のモノマーとのコポリマーとすることができる。ポリビニルエーテルは、非常に良好な付着特性および結合特性を有するのでバインダーとして特に有用である。
【0034】
本発明の好適な実施形態では、バインダーはフッ素化またはハロゲン化ポリマーである。このポリマーは例えば、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフロオロプロピレン(HFP)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)から形成されてもよく、或いは、このようなモノマーから誘導された単位(unit)を含有することができる。当該ポリマーは例えばホモポリマーまたはコポリマー、特にブロックコポリマーとすることができる。コポリマーは、種々のハロゲン化モノマーで構成されるか或いはハロゲン化モノマーと他のモノマーとのコポリマーとすることができる。ポリマーおよびモノマーは完全にフッ素化または塩素化されても良いし、部分的にフッ素化または塩素化することができる。本発明の特定の実施形態では、コモノマーとしてハロゲン化モノマー、特にHFPおよびCTFEを含む全ポリマーの比率は、1〜25重量%である。ハロゲン化ポリマーは一般に高い熱安定性および耐薬品性また良好な濡れ性で知られている。それらは、繊維不織ウェブの充填に完全にまたは部分的にフッ素化された粒子が用いられるときのバインダーとして特に有用である。コポリマーの使用により、広い温度範囲にわたって熱安定性および加工温度を変えることができる。これにより、バインダーの加工温度を粒子の溶融温度に一致させることができる。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、バインダーはポリビニル化合物である。適切なバインダーは特に、V−ビニルホルムアミドおよびN−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミドモノマーで構成されたもの又はこれらのモノマーを含有するバインダーである。好適なものは特に、対応するホモポリマーおよびコポリマー、例えばブロックコポリマーである。ポリ−N−ビニル化合物は良好な濡れ性で知られている。
【0036】
本発明の好適な実施形態では、バインダーはゴムである。エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムなどのよく知られたゴムを使用することができる。EPDMゴムは特に高い弾性を有し、特に極性有機媒体に対して良好な耐薬品性を有し、広い温度範囲にわたって使用できる。また、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴムまたはニトリルブタジエンゴムから選択されるゴムを用いることができる。これらのゴムは不飽和二重結合を含有し、Rゴムと称される。これらは良好な付着作用で知られている。例えばホモポリマーまたはコポリマー、特にブロックコポリマーを使用できる。
【0037】
また、ペルフルオロカーボンゴム(FFKM)、フルオロカーボンゴム(FKM)またはプロピレン−テトラフルオロエチレンゴム(FPM)、およびそれらのコポリマーなどのフッ素化ゴムを使用することもできる。FFKMが特に好ましい。これらのバインダー、特にFFKMは、高い使用温度範囲、媒体および化学薬品に対する非常に良好な耐性、および非常に低い膨張で知られている。従って、それらは燃料電池の中のように高温の攻撃的な環境での用途に特に有用である。
【0038】
本発明の好適な実施形態では、バインダーはポリエステルまたはポリアミドもしくはそれらのコポリマーである。コポリマーは、種々のポリアミドおよび/またはポリエステルモノマーで構成されてもよく又はこれらのモノマーと他のモノマーとのコポリマーすることもできる。このようなバインダーは非常に良好な結合特性で知られている。
【0039】
また、バインダーはケイ素含有ポリマーおよび/または有機ケイ素ポリマーを含有することができる。1つの実施形態はバインダーとしてシロキサンを利用する。さらなる実施形態はバインダーとしてシリル化合物および/またはシランを利用する。これらのバインダー、特にシリル化合物および/またはシランは、粒子(3)が完全にまたは少なくとも部分的に有機粒子であるときに好適に使用される。
【0040】
バインダーおよび/または粒子の融点は、繊維不織ウェブ布の繊維の融点よりも低くてよい。このようなバインダー/粒子を選択することによって、プライが遮断機構を実現可能となる。遮断機構では、溶融粒子および/またはバインダーが繊維不織ウェブ布の細孔を塞ぎ、その結果、樹枝状成長が細孔中に延びず、したがって短絡が生じ得ない。
【0041】
このような背景に鑑みて、異なる融点を有する複数の粒子の混合物を用いることが考えられる。これは温度の上昇にしたがって段階的に細孔を塞ぐことに使用できる。
【0042】
粒子は、0.01〜10μmの範囲の平均直径を有することができる。この範囲から平均直径を選択すれば、樹枝状成長の形成または屑による短絡を避けるために特に有利であろう。
【0043】
粒子は有機ポリマーで構成することができる。適切なポリマーは例えばポリアセタール、ポリシクロオレフィンコポリマー、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリカルボン酸、ポリカルボキシレート、ゴムおよびハロゲン化ポリマーである。
【0044】
有機ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーとすることができる。適切なコポリマーは例えばランダムコポリマー、グラジエントコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトポリマーである。コポリマーは、2つ、3つ、またはそれ以上の異なったモノマーで構成させることができる(ターポリマー、テトラポリマー)。上述の材料を混合物の形態で加工して粒子を形成することもできる。一般的には、熱可塑性ポリマーおよびポリマー混合物を使用することができ、または架橋ポリマーおよびポリマー混合物、例えばエラストマーおよび熱硬化性物質を使用できる。
【0045】
粒子は、特に、ポリプロピレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロエチレン−プロピレン(FEP)、ポリスチレン、スチレンブタジエンコポリマー、ポリアクリレートまたはニトリルブタジエンポリマーおよび前述のポリマーのコポリマーから製造できる。フッ化ビニリデン(VDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリオキシメチレン(ポリアセタールまたはポリホルムアルデヒドとしても公知のPOM)のホモポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマーが特に好ましい。
【0046】
本発明の好適な実施形態では、粒子は、ポリオキシメチレン(POM)などのポリアセタールで構成され、或いは、粒子がポリアセタールを含有している。また、アセタールの例えばトリオキサンとのコポリマーをコモノマーとして使用することも可能である。ポリアセタールはすぐれた寸法安定性および熱安定性で知られている。また、それらは最小の吸水性しか有さない。充填された繊維不織ウェブ布はそれ故に全体として極僅かしか水を吸収しないので、これは本発明によって有利である。
【0047】
本発明のさらなる実施形態では、粒子は、シクロオレフィンコポリマ(COC)で構成される又はこれを含有する。COCの熱的特性は、環状および直鎖オレフィンの導入比を変化させることによって広い範囲で明確に変化させることができ、従って、所望の適用分野に適正化させることができる。したがって、耐熱温度を事実上65〜175℃の範囲に設定することができる。COCは、極度に低い吸水性および非常に良好な電気絶縁性で知られている。
【0048】
本発明のさらなる実施形態では、粒子はポリエステルからなる又はこれを含有する。特に液晶ポリエステル(LCP)が好ましい。これらは例えば、商品名Vectra LCPとしてTiconaから入手可能である。液晶ポリエステルは、高い形状安定性、高い熱安定性および良好な耐薬品性で知られている。
【0049】
本発明のさらなる実施形態では、粒子はポリイミド(PI)またはそれらのコポリマーで構成される又はそれを含有する。適切なコポリマーは例えばポリエーテルイミド(PEI)およびポリアミドイミド(PAI)である。ポリイミドの使用は、それらが高い機械的強度および高い熱安定性を有するので有利である。また、それらは良好な表面特性を示し、親水性から疎水性まで明確に変化させることができる。
【0050】
本発明のさらなる実施形態では、粒子は、ポリエーテルケトン(PEK)またはそれらのコポリマーで構成される又はこれを含有する。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が特に適している。ポリエーテルケトンは温度抵抗が高く、非常に耐化学薬品性である。
【0051】
本発明のさらなる実施形態では、粒子は、ポリカルボン酸またはポリカルボキシレートまたはそれらのコポリマーで構成される又はこれらを含有する。特にホモポリマーおよびコポリマー、中でもブロックコポリマーが適している。ポリマーは特に、メタクリル酸、メタクリレート、メタクリルアミドおよびメタクリル酸エステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、トリフルオロメチルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、ヘキシルメタクリルアミド、2−エチルヘキシルメタクリルアミド、ステアリルメタクリルアミド、ラウリルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、トリフルオロメチルメタクリルアミド、ヘキサフルオロプロピルメタクリルアミド、テトラフルオロプロピルメタクリルアミド、メチルメタクリル酸、エチルメタクリル酸、プロピルメタクリル酸、ブチルメタクリル酸、ヘキシルメタクリル酸、2−エチルヘキシルメタクリル酸、ステアリルメタクリル酸、ラウリルメタクリル酸、シクロヘキシルメタクリル酸、ベンジルメタクリル酸、トリフルオロメチルメタクリル酸、ヘキサフルオロプロピルメタクリル酸およびテトラフルオロプロピルメタクリル酸から調製される。また、対応するアクリレート、アクリルアミドおよびアクリル酸化合物を使用することも可能である。これらのホモポリマーおよびコポリマーを使用することによって、所望の熱的特性、例えばセパレータの遮断、繊維不織ウェブ布およびバインダーへの接着および粒子の濡れ特性を特定の方法で調節可能となる。
【0052】
本発明のさらなる実施形態では、粒子はゴムで構成される又はゴムを含有する。ゴムは架橋されていることが好適である。エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴムなどの一般に知られたゴムを使用できる。EPDMゴムは特に、高弾性であり、特に極性有機媒体に対して良好な耐薬品性を有し、広い温度範囲にわたって使用できる。また、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムまたはニトリル−ブタジエンゴムから選択されたゴムを使用できる。これらのゴムのポリマーは、架橋可能な不飽和二重結合を含有し、Rゴムと称される。これらのゴムは好ましくは架橋されている。それらは例えばホモポリマーまたはコポリマー、特にブロックコポリマーとして使用されうる。
【0053】
また、ペルフルオロカーボンゴム(FFKM)、フルオロカーボンゴム(FKM)またはプロピレンテトラフルオロエチレンゴム(FPM)、およびそれらのコポリマーなどのフッ素化ゴムを使用することもできる。FFKMが特に好ましい。これらのバインダー、特にFFKMは、高い使用温度範囲、媒体および化学薬品に対する非常に良好な耐性、および非常に低い膨張性で知られている。従って、それらは燃料電池の中のような高温の攻撃的環境での用途に特に有用である。
【0054】
本発明の好適な実施形態では、粒子はフッ素化またはハロゲン化ポリマーで構成される又はこれを含有する。このポリマーは、例えばフッ化ビニリデン(VDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘキサフロオロプロピレン(HFP)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)から形成できる。当該ポリマーは例えばホモポリマーまたはコポリマー、特にブロックコポリマーとすることができる。コポリマーは、種々のハロゲン化モノマーで構成することができ、又はハロゲン化モノマーと他のモノマーとのコポリマーであってもよい。ポリマーおよびモノマーは完全にフッ素化または塩素化されてもよく或いは部分的にフッ素化または塩素化されてもよい。本発明の特定の実施形態では、コモノマーとしてハロゲン化モノマー、特にHFPおよびCTFEを含む全ポリマーの比率は1〜25重量%である。ハロゲン化ポリマーは高い熱安定性および耐薬品性、また、良好な濡れ性で知られている。それらは、完全にまたは部分的にフッ素化されたバインダーが用いられるとき特に有用である。コポリマーを使用および選択することにより、広い温度範囲にわたって熱安定性および加工温度を変えることができる。これにより、バインダーの加工温度を粒子の溶融温度に一致させることができる。また、遮断温度を設定することも可能にされる。
【0055】
PTFEとペルフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホン酸(PFSA)とのコポリマーを使用することが特に好ましい。このコポリマーはDuPontから商品名Nafionとして入手可能である。それは良好なカチオンおよびプロトン伝導性を有するので、本発明によって有利である。
【0056】
粒子として有機ポリマーを使用することによって、粒子の問題ない溶融で遮断効果を得ることが可能となる。さらに、破砕されずに所望のサイズに切断し易いプライを製造することが可能である。一般に破砕はプライ中に無機粒子が比較的高比率である時に生じる。このような背景に対して、種々の粒子の混合物またはコア−シェル粒子の混合物を用いることが考えられる。これを用いて、温度の上昇に応じて段階的に細孔を塞ぐことが可能となる。
【0057】
本発明において有用なバインダーおよび粒子、特に有機粒子は高い熱安定性を有することが好ましい。バインダーおよび/または粒子は、100、150、175または200℃の温度において安定していることがより好ましい。これにより、燃料電池中での使用が可能となる。
【0058】
無機粒子または無機−有機ハイブリッド粒子を用いることも可能である。これらの粒子は400℃未満の温度では溶融しない。また、バッテリー中に存在するプロトン活性が少なくとも部分的に低減されるような基本特性を有するこれらの粒子を選択することがさらに可能である。
【0059】
有用な無機粒子には、例えば金属酸化物、金属水酸化物およびケイ酸塩などがある。これらは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、チタン酸塩および/またはペロブスカイトで構成される又はこれらを含有することができる。また、これらの粒子の混合物または他の材料との混合物を使用することも可能である。
【0060】
本発明の1つの実施形態は無機粒子を有機粒子と混合して用いる。無機粒子は本質的に、亀裂形成または多孔構造を有してもよく、従って、多孔度が、特に粒子混合物の多孔度が高められる。また、それらは高い熱安定性、高い耐薬品性および良好な濡れ性を有する。例えば、粒子(3)の2重量%、5重量%、10重量%、25重量%または50重量%までが無機粒子である有機粒子と無機粒子との混合物を使用することができる。
【0061】
また、球形の無機粒子または球に近い面の均一な配列を有する無機粒子を使用することも可能である。このような粒子は例えば結晶化によって得られる。
【0062】
また、公知の繊維不織ウェブ布とは対照的に、本発明の繊維不織ウェブ布は無機粒子を用いずに得ることもできる。本発明の1つの実施形態では、無機粒子あるいは無機成分を有する無機粒子を含まない。
【0063】
本発明において使用可能な粒子は以下の公知の方法によって獲得できる。適切な特に球形の粒子が重合の反応生成物として得られる方法が知られている。乳化重合または分散重合が好適な方法である。
【0064】
さらなる実施形態では、粒子がポリマーのさらなる加工によって得られる。例えば、ポリマーペレットを粉砕することができる。必要ならばその後で分級などの分離方法を用いて所望の粒度分布を得る。粒子はサイズの異なる粒子の混合物で構成されることが可能である。これによって、多孔度および細孔径分布を変えることができる。
【0065】
繊維不織ウェブ布の繊維は有機ポリマーから、特に、ポリブチルテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミドまたはポリビニルピロリドンから製造することができる。前述のポリマーを含有する二成分繊維を用いることも考えられる。これらの有機ポリマーを使用することにより、最小の熱収縮のみを有するプライを製造することが可能になる。さらに、これらの材料は、バッテリーおよびキャパシタで使用される電解質およびガスに対して実質的に電気化学的に安定している。
【0066】
繊維不織ウェブ布の繊維の平均長さは、その平均直径の少なくとも2倍以上、好ましくは多数倍とすることができる。このような具体的な開発によって、繊維が互いに絡み合うので、特に強い繊維不織ウェブ布を製造することができる。
【0067】
繊維不織ウェブ布の繊維の少なくとも90%が12μm以下の平均直径を有することができる。このような具体的な開発によって、第1細孔として比較的小さな細孔径を有するプライを作製することができる。繊維不織ウェブ布の繊維の少なくとも40%が8μm以下の平均直径を有するときは、さらに微細な多孔度が得られる。
【0068】
プライは、100μmを超えない厚さを特徴とすることができる。この厚さのプライは、まだ問題なく巻き取ることができ、しかも、非常に安全なバッテリー駆動を可能にする。厚さは好ましくは60μm以下とすることができる。この厚さは、巻取り適性を改善させ、しかも安全なバッテリー駆動が可能である。厚さはより好ましくは25μm以下とすることができる。このような厚さを有するプライを用いて、非常に小型のバッテリーおよびキャパシタを形成することができる。さらなる実施形態では、厚さは少なくとも3、5または10μmであり、特に5〜100μmまたは10〜60μmである。
【0069】
プライは少なくとも25%の多孔度を有することができる。この多孔度のプライはその材料密度によって、短絡形成を抑えることに特に有効である。プライは好ましくは少なくとも35%の多孔度を有することができる。この多孔度のプライを用いて高出力密度のバッテリーを製造することができる。本明細書に記載されたプライは、プライの一方側から他方側まで延びた樹枝状成長が形成されないように、非常に高い多孔度と、それに拘わらず非常に小さな第2細孔とを兼ね備えている。このような背景に対して、プライの一方側から他方側まで延びる樹枝状成長が形成され得ないラビリンス状ミクロ構造を第2細孔によって形成させることが考えられる。さらなる実施形態では、多孔度は25〜70%、特に35〜60%である。
【0070】
プライは3μmを超えない細孔径を有することができる。このような細孔径の選択は短絡を避けるときに特に有利である。細孔径は1μm以下であることがより好ましい。このようなプライは、金属デンドライト成長による短絡、電極粒子から出た切削屑による短絡、および加圧による電極どうしの直接接触による短絡を避けるときに特に有利である。
【0071】
プライは長さ方向において少なくとも15ニュートン/5cmの最大引張強さを有することができる。この強さのプライは破損することなくバッテリーの電極上に巻き取ることが特に容易である。
【0072】
本発明のプライの基本重量は10〜60g/m、特に15〜50g/mとすることができる。
【0073】
また、本発明は、本発明のプライを製造するための方法を提供する。この方法では、最初の工程は、粒子(3)の溶液または分散体を、場合によって粒子(3)とバインダーの溶液または分散体を製造する工程である。繊維不織ウェブ布の繊維(1)が分散体でコートされる。次いで、コートされた繊維不織ウェブ布は必要に応じて乾燥および/または加熱される。
【0074】
本発明の好適な実施形態では第1工程は分散体を製造する工程である。この分散体はバインダーと粒子および必要に応じてさらなる添加剤を含有する。
【0075】
添加剤は、分散体のレオロジー、従って加工および/または安定性に作用するように選択されうる。通常の分散体添加剤、すなわち、酸、塩基、界面活性剤、例えばイオン性または非イオン性界面活性剤の他、ポリアクリレート、オリゴエーテル、ポリエーテルおよびポリ電解液などのポリマーなどを用いることができる。用いられる粒子は製造されたままの状態で分散体を形成することができ、或いは、分散体の形態で製造元から入手可能である。必要ならば、それらは先ず分散されなければならない。界面活性剤および乳化剤などの一般的な分散助剤を使用することができる。
【0076】
分散体を製造するために、構成成分を一緒に添加し、加熱しながら或いは加熱せずに攪拌することで均質化される。分散体は好ましくは水系分散体である。しかしながら、溶剤中または水−溶剤混合物中の分散体を使用することも可能である。分散体の固形分は好ましくは5重量%〜70重量%、好ましくは20重量%〜65重量%、より好ましくは25重量%〜55重量%である。
【0077】
公知のコーティング方法に従って分散体を繊維不織ウェブ布に適用することができる。具体的な実施形態では、繊維不織ウェブ布は一般的なコーティング方法を用いて好ましくは連続的に或いは半連続的にコートされる。適切な方法は、例えば、ナイフ塗布、噴霧、ロールコーティング、カーテンコート法、ローラー法、例えば2、3および5ローラー法、3ローラー組合せ法、マイクロローラー法、リバースロール法、彫刻ローラー法、浸漬法、スロットダイ法、ナイフ法、ダブルサイド法、コンマバー法、発泡加工(foam application)、または好ましくは含浸である。コーティング速度は、0.5〜1000または0.5〜200m/分、好ましくは20〜200または20〜1000m/分、より好ましくは50〜200、または50〜100m/分とすることができる。次いで、コートされた繊維不織ウェブ布は好ましくは乾燥され、必要に応じて固化(consolidate)される。コーティングは、50〜500℃または50〜200℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜200℃で乾燥することができる。加熱および/または乾燥は接触下(カレンダリング、ドラム乾燥機)で実施可能なだけでなく、非接触で(温風、熱風、赤外線、マイクロ波)、或いは先行技術による他の加熱方法によっても実施可能である。
【0078】
プライをカレンダー法によって機械的に固めてもよい。カレンダー法は、表面の粗さを低減化するのに有効である。繊維不織ウェブ布の表面に使用された粒子はカレンダー加工後には平坦化を示す。
【0079】
本明細書に記載されたプライは短絡を防ぐのに特に有効なので、特にバッテリーおよびキャパシタのセパレータとして使用することができる。
【0080】
また、本明細書に記載されたプライは、良好な濡れ性を示し、液体を輸送することができるので、燃料電池のガス拡散層または膜として使用することができる。
【0081】
したがって本発明の教示を有利に発展および改良する種々の方法がある。一方では従属請求項を参照すべきであり、他方では図面を参照しつつ以下の本発明の好適な例示的実施形態を参照すべきである。
【0082】
また、図面を参照した本発明の好適な例示的な実施形態の説明は、教示の一般に好適な発展および改良を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】粒子が繊維不織ウェブ布の第1細孔内に存在し、粒子が充填された多孔領域を形成するプライの走査電子顕微鏡写真を示す。
【図2】コーティングとして配置された充填された領域の粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図3】充填された領域の粒子の大きく拡大された走査電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
(測定方法)
例示的な実施形態では、以下の測定方法を用いた。
【0085】
平均細孔径はASTME E 1294(自動液体多孔度計を用いる膜フィルターの細孔径の特性の試験方法)に従って測定した。
【0086】
基本重量は、各場合において3つの100×100mmの寸法の試料を打ち抜き、試料を秤量し、測定された値に100を乗じることによって測定した。
【0087】
厚さはElectricモデル2000U精密厚さ測定器を用いて測定した。測定された面積は2cmであり、測定圧力は1000cN/cmであった。
【0088】
多孔度は用いた材料の厚さ、重量および密度から判定された。
【0089】
収縮を判定するために、100×100mmの寸法の試料を打抜き、Mathis Labdryer内に120℃で10分間保管した。次いで、試料の収縮率を測定した。
【実施例1】
【0090】
60%のPTFE分散体(3M製のDyneon TF5032R、平均粒径160nm)の200部に、一定した攪拌の下でCMC(カルボキシメチルセルロース)溶液の50部を添加した。この後に、再び攪拌しながら40%のSBR(スチレンブタジエンゴム)分散体の13.3部と脱イオン水の50部を添加した。溶液を2時間攪拌し、少なくとも24時間に亘って安定性を試験した。得られた溶液のpH9.5における粘度は200cPであった。
【0091】
(コーティング)
30×49.5cmの寸法のPET繊維不織ウェブ布(厚さ:20μm、基本重量:11.6g/m)を上述の溶液に浸し、プレスロール装置(約1m/分の速度、圧力0.7バール)に通し、120℃で乾燥させた。23g/mの基本重量および27 mの厚さを有する含浸済み繊維不織ウェブ布が得られた。計算された多孔度は50.3%であった。
【実施例2】
【0092】
60%のPTFE分散体(3M製のDyneon TF5032R、平均粒径160nm)の200部に、一定した攪拌の下で1%のCMC(カルボキシメチルセルロース)溶液の100部を添加した。この後に、再び攪拌しながら、水性SBR(スチレン−ブタジエンゴム)分散体(40%の固形分、粒径120nm)の10部を添加した。溶液を2時間攪拌し、少なくとも24時間に亘って安定性を試験した。得られた溶液のpH9.8における粘度は17000cPであった。
【0093】
(コーティング)
30×49.5cmの寸法のPET繊維不織ウェブ布(厚さ:20μm、基本重量:11.3g/m)に上述の溶液(ペースト)をナイフコートし、60℃において乾燥させ、次いで120℃において乾燥させた。30g/mの基本重量および32μmの厚さを有する含浸された繊維不織ウェブ布が得られた。計算された多孔度は42.1%であった。
【実施例3】
【0094】
60%のPTFE分散体(3M製のDyneon TF5032R、平均粒径160nm)の200部に、一定した攪拌の下で1%のCMC(カルボキシメチルセルロース)溶液の180部を添加した。この後に、再び攪拌しながら59%のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)分散体(Arkema製のKYNAR301F、平均粒径0.25μm)の50部を添加した。溶液を2時間攪拌し、少なくとも24時間に亘って安定性を試験した。得られた溶液の粘度は350cPであり、pH9.9を示した。
【0095】
(コーティング)
幅15cmのPET繊維不織ウェブ布(厚さ:20μm、基本重量:11.3g/m)を連続的にロールコートし、120℃で乾燥させた。
40g/mの基本重量および42 mの厚さを有する含浸済み繊維不織ウェブ布が得られた。計算された多孔度は47%であった。
【実施例4】
【0096】
57%のPVDF分散体(Arkema製のKYNAR 301F、平均粒径0.25μm)の200部に、ブレード撹拌機を用いて連続攪拌しながら2%のPVP(ポリビニルピロリドン)溶液(BASF製のLuvitecK90)の200部を添加した。溶液を2時間攪拌し、少なくとも24時間に亘って安定性を試験した。得られた溶液の粘度は150cPであり、pH7.1を示した。
【0097】
(コーティング)
幅15cmのPET繊維不織ウェブ布(厚さ:20μm、基本重量:11.3g/m)を連続的にロールコートし、120℃で乾燥させた。
26.5g/mの基本重量および30μmの厚さを有する含浸済み繊維不織ウェブ布が得られた。平均細孔径は0.18μmであり、計算された多孔度は44%であった。
【実施例5】
【0098】
1%のCMC(カルボキシメチルセルロース)溶液の180部に60%酸化アルミニウム分散体(Al2O3)(平均粒径0.7μm)の150部を添加し、30分間攪拌した。この後に、再び攪拌しながら、59%のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)分散体(Arkema製のKYNAR301F、平均粒径0.25μm)の35部を添加した。溶液を2時間攪拌し、少なくとも24時間に亘って安定性を試験した。得られた溶液の粘度は150cPであり、pH9.9を示した。
【0099】
(コーティング)
幅15cmのPET繊維不織ウェブ布(厚さ:20μm、基本重量:11.3g/m)に上述の溶液を連続的にロールコートし、120℃で乾燥させた。
26.6g/mの基本重量および34μmの厚さを有する含浸済み繊維不織ウェブ布が得られた。平均細孔径は0.22μmであり、計算された多孔度は69%であった。
【実施例6】
【0100】
16.7%のPVP溶液(BASF製のLuvitec K90)の50部に、一定した攪拌の下でPVDF粉末(ポリフッ化ビニリデン、Arkema製のKYNAR301F、平均粒径0.25μm)の62部および脱イオン水の87部を添加した。当該バッチを4時間激しく攪拌し、少なくとも24時間に亘って安定性を試験した。得られたコーティングペーストの粘度は3000cPであった。
【0101】
(コーティング)
21cm×29.7cmの寸法のPET繊維不織ウェブ布(厚さ:12μm、基本重量:9.2g/m)を実験室用ナイフコーター(速度20m/分)によってコートし、120℃において乾燥させた。
17g/mの基本重量および25μmの厚さを有する含浸済み繊維不織ウェブ布が得られた。計算された多孔度は53%であった。
【実施例7】
【0102】
16.7%のPVP溶液(K90)の50部に、連続攪拌しながらPVDF粉末(ポリフッ化ビニリデン、Arkema製のKYNAR 301F、平均粒径0.25μm)の13部およびK30 PVP(BASF製のLuvitecK30)の4部を添加した。当該バッチを4時間激しく攪拌し、少なくとも24時間に亘って安定性を試験した。
【0103】
(コーティング)
21cm×29.7cmの寸法のPET繊維不織ウェブ布(厚さ:12μm、基本重量:9.2g/m)を上述の溶液に浸し、プレスロール装置(圧力:1バール)に通し、120℃で乾燥させ、次いで160℃においてカレンダー加工した。
24g/mの基本重量および26μmの厚さを有する含浸された繊維不織ウェブ布が得られた。計算された多孔度は42%であり、平均細孔径は0.19μmであった。
【0104】
【表1】

【実施例8】
【0105】
図1は、繊維不織ウェブ布から構成される基礎構造を有するプライを示し、基礎構造が繊維1からなり、繊維1によって形成された第1細孔2を有し、基礎構造は少なくとも部分的に粒子3が充填され、その粒子3は、第1細孔2を少なくとも部分的に充填し、粒子3が充填された領域4を形成する。
【0106】
図3は充填された領域4の拡大図を示す。図3において、粒子3が充填された領域4で第2細孔5を形成し、粒子3の平均直径は第2細孔5の大多数の平均細孔径より大きい。粒子3は球形であり、領域に球の最密充填を形成する傾向がある。
【0107】
図2は、繊維不織ウェブ布に適用された粒子3のコーティングを示す。
【0108】
図1〜3は、繊維不織ウェブ布を含むプライの走査電子顕微鏡写真を示し、その繊維1はポリエステルから製造される。粒子3は球形を呈し、粒子3が領域に形成する集合が繊維不織ウェブ布の第1細孔2を充填する。繊維1は12μm未満の平均直径を有する。プライは25μmの厚さを有する。プライは170℃の温度で横方向において1%未満の収縮を示す。
【0109】
粒子3の平均直径は200nmである。粒子3はポリフッ化ビニリデンからなり、ポリビニルピロリドンバインダーによって繊維1に固定される。
【0110】
粒子3の平均直径は充填された領域4の粒子3の数から判定される。粒子3は好ましくは狭い分布曲線を、すなわち、低い標準偏差を持つ平均直径を示す。第2細孔5のほとんど、すなわち大多数の平均細孔径は200nm未満である。第2細孔5の平均細孔径とは、細孔5と同じ体積を有する仮想球6の直径を意味する。この仮想球は、隣接粒子3の表面に接触するように、粒子3の間に存在する。細孔の寸法を特徴付ける仮想球6は、黒く縁取られた中空の円として図3に示される。
【0111】
x軸が第2細孔5の平均細孔径を示し、y軸が平均細孔径の数または度数を示す分布曲線は、第2細孔5の50%超が200nmより小さい平均細孔径を有することを示す。
【0112】
本発明の教示の更なる有利な展開および改良については、明細書の一般箇所および添付した特許請求の範囲を参照されたい。
【0113】
純粋に任意に選択された上記の例示的な実施形態は、本発明の教示を説明する役目を果たすに過ぎず、本発明の教示がこの例示的な実施形態に限定されないことを、最後に特に強調しておきたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維不織ウェブ布で構成される基礎構造を有し、前記基礎構造は繊維(1)からなると共に、前記繊維(1)によって形成された第1細孔(2)を有し、前記基礎構造は少なくとも部分的に粒子(3)が充填され、当該粒子(3)は前記第1細孔(2)を少なくとも部分的に充填し、且つ、粒子(3)が充填された領域(4)を形成するプライであって、前記充填された領域(4)内の前記粒子(3)が第2細孔(5)を形成し、前記粒子(3)の平均直径が大多数の前記第2細孔(5)の平均細孔径よりも大きいことを特徴とするプライ。
【請求項2】
前記粒子(3)の形状が球形であることを特徴とする、請求項1に記載のプライ。
【請求項3】
前記粒子(3)が前記基礎構造においてシート状均質分布を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載のプライ。
【請求項4】
前記充填された領域(4)の少なくとも一部が、前記粒子(3)を有する前記基礎構造のコーティングとして構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項5】
前記粒子(3)が、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカルボキシレート、ポリカルボン酸、ポリビニル化合物、ポリオレフィン、ゴム、ハロゲン化ポリマーおよび不飽和ポリマーおよびそれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される有機ポリマーから構成されるバインダーによって前記繊維不織ウェブ布と結合されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項6】
前記粒子(3)が、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリルアミドおよびそれらのコポリマー、セルロースおよびその誘導体、ポリエーテル、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ラテックス、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、シロキサン、シリル化合物、シランおよびそれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される有機ポリマーから構成されるバインダーによって前記繊維不織ウェブ布と結合されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項7】
バインダーの融点が前記粒子(3)および/または前記繊維(1)の融点より低いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項8】
前記粒子(3)が0.01〜10μmの範囲の平均直径を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項9】
前記粒子(3)が、ポリアセタール、ポリシクロオレフィンコポリマー、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリカルボン酸、ポリカルボキシレート、ゴム、ハロゲン化ポリマーおよび不飽和ポリマーならびにそれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される有機ポリマーから製造されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項10】
前記粒子(3)が、ポリプロピレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロエチレンプロピレン(FEP)、ポリスチレン、スチレンブタジエンコポリマー、ポリアクリレート、ニトリルブタジエンポリマー、ポリメタクリレート、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、スチレンブタジエンゴム、EPDMゴム、フッ素化ゴムならびに前述の各ポリマーのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される有機ポリマーから製造されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項11】
前記粒子(3)が無機粒子である、または、前記粒子(3)の一部が無機粒子で一部が有機粒子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項12】
前記無機粒子が、金属酸化物、金属水酸化物およびケイ酸塩からなる群から選択される、特に酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、チタン酸塩および/またはペロブスカイトであることを特徴とする請求項11に記載のプライ。
【請求項13】
前記繊維不織ウェブ布の前記繊維(1)がポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリビニリデンフルオリドおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される有機ポリマーから製造されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項14】
前記繊維不織ウェブ布の前記繊維(1)の平均長さが、それらの平均直径の少なくとも2倍以上、好ましくは多数倍であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項15】
前記繊維不織ウェブ布の前記繊維(1)の少なくとも90%が12μm以下の平均直径を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項16】
前記繊維不織ウェブ布の前記繊維(1)の少なくとも40%が8μm以下の平均直径を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項17】
100μm以下、好ましくは60μm以下およびより好ましくは25μmの厚さを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項18】
少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%の多孔度を特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項19】
第1および第2細孔(2、5)がラビリンス状ミクロ構造を形成することを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項20】
前記第2細孔(5)について3μm以下および好ましくは1μm以下の細孔径を特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項21】
長さ方向に関して少なくとも15N/5cmの最大引張強さを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項22】
前記基礎構造がカレンダー加工されていることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のプライ。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれか一項によるプライを製造するための方法であって、
a)先ず、前記粒子(3)の及び必要に応じてバインダーの溶液または分散体を作製する工程、
b)前記繊維(1)を前記分散体でコートする工程、及び
c)コートされた繊維不織ウェブ布を必要に応じて乾燥および/または加熱する工程を含む方法。
【請求項24】
燃料電池、バッテリーまたはキャパシタ内のセパレータとして、ガス拡散層としてまたは膜としての請求項1〜21のいずれか一項に記載のプライの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−538173(P2010−538173A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523332(P2010−523332)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007334
【国際公開番号】WO2009/033627
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510057615)カール・フロイデンベルク・カー・ゲー (19)
【Fターム(参考)】